JP6040735B2 - 超音波探触子 - Google Patents

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本発明は、超音波探触子に関する。
従来、超音波探触子では、指向性の向上やクロストークの低減のために、圧電材が微細加工される。一方で、超音波探触子が接続される超音波画像診断装置本体と超音波探触子との間における超音波の送受信に係る送受信信号の伝達においては、電気的インピーダンスの整合のために素子あたりの静電容量を大きくすることが望まれている。したがって、圧電材は微小素子であっても誘電率が高いことが望まれ、それを実現するために誘電率の高い圧電材料が使用されていた。
一方で、超音波画像診断の価値向上のためには圧電材の送受信感度を向上させることが重要である。その送信感度を向上させる方法として、圧電材の背面側に圧電材の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有するデマッチング(反射)層を配置し、圧電材の背面側に放射する超音波を前方に反射させるようにした超音波探触子を用いるようにしたものがある(例えば、特許文献1〜3)。
米国特許第7621028号明細書 特開2009−213137号公報 特開2005−286701号公報
上記特許文献1〜3に示された技術では、圧電材において、通常のλ/2共振ではなく、λ/4共振が生じるために、中心周波数を揃えるためには、圧電材の厚みをλ/2共振時の半分程度にする必要がある。その結果、圧電材の厚みと抗電界とから決まる圧電体への印加可能電圧は低下するが、上記特許文献3で示されているような低い周波数帯による超音波の送受信では、圧電体への印加可能電圧は超音波画像診断装置本体から出力される最大印加電圧よりも大きいため、圧電材の抗電界が問題になることはなかった。
近年、更なる高性能化のために、高感度に加え、中心周波数の高い(例えば、10MHz以上の)高分解能の超音波探触子の実現が望まれている。上述のデマッチング層を適用した場合、共振周波数が上昇するため、圧電材は従来よりもさらに薄く設計される必要がある。これにより、抗電界から制限される圧電材への印加可能電圧は装置本体側から出力される最大印加電圧と拮抗するようになり、抗電界の大きさが超音波画像診断装置の性能を左右することとなる。
本発明の課題は、超音波画像診断装置本体におけるシステムの駆動電圧を最大限利用することができ、高い中心周波数特性でも高感度化を実現することができる超音波探触子を提供することである。
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、圧電層の超音波の放射面とは反対側の面に該圧電層の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有する反射層が配置され、nλ/4(nは奇数)共振により超音波を送受信する超音波探触子において、
前記圧電層と前記反射層は当接していて、
前記圧電層を構成する圧電材の抗電界が25℃下において1.0MV/m以上であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波探触子において、
前記圧電材の抗電界が60℃下において0.9MV/m以上であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の超音波探触子において、
前記圧電材は、Bサイトを置換する2価又は3価の元素を含むアクセプター添加物を含んでいることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の超音波探触子において、
前記元素は、Fe3+、Co2+及びMn2+の少なくとも1種類以上であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の超音波探触子において、
前記圧電材の誘電率が1800以上であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波探触子において、
前記圧電材のキュリー温度が250℃以上350℃以下であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の超音波探触子において、
出力する超音波の中心周波数が7MHz以上であることを特徴とする。
本発明によれば、超音波画像診断装置本体におけるシステムの駆動電圧を最大限利用することができ、高周波で高い感度特性を有する超音波探触子を提供することができる。
本実施の形態に係る超音波画像診断装置の外観構成を示す斜視図である。 診断装置本体の機能的構成を示すブロック図である。 超音波振動子の構造を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態に係る超音波画像診断装置1は、図1に示すように、超音波探触子2と診断装置本体4とを備えており、これらはケーブル3を介して接続されている。超音波探触子2は、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、その被検体において反射した超音波(反射超音波)を受信する。本実施の形態では、超音波探触子2は、複数の超音波振動子21(図2参照)をアレイ状に配列して構成されている。診断装置本体4は、ケーブル3を介して電気信号の送信信号を送信することによって超音波探触子2に超音波を送信させるとともに、超音波探触子2で受信した超音波から変換された受信信号に基づいて、被検体内の内部状態を断層画像として画像化する。
診断装置本体4は、上部に操作入力部11及び表示部16を備えている。操作入力部11は、各種設定操作等を行うためのスイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備え、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力等が可能である。表示部16は、操作入力部11による操作のための支援画像や、受信信号に基づき作成された超音波画像等が表示される。また、操作入力部11や診断装置本体4の適所には、超音波探触子2を、その不使用時に保持するホルダー7が設けられている。
次に、診断装置本体4の機能的構成について図2を参照しながら説明する。診断装置本体4は、上述した操作入力部11及び表示部16の他、例えば、送信部12、受信部13、信号処理部14、画像処理部15、制御部17及び電圧制御部18を備えている。
送信部12は、制御部17の制御にしたがって、超音波探触子2に送信信号としての送信パルスを生成する回路である。送信部12は、制御部17を介して送信パルスを電圧制御部18に出力する。送信パルスは、電圧制御部18において振幅が増幅されて、超音波探触子2に送信される。
電圧制御部18は、後述する圧電層24のt℃下における抗電界をEc(MV/m)とし、圧電層24の厚みをd(μm)としたとき、下記式(1)を満たすシステムの最大駆動可能電圧Vsにより診断装置本体4を駆動する。
|Vs|=Ec×d×α ・・・(1)
上記式(1)において、αは0<α<1を満たし、t=25(すなわち、25℃下)にあっては、0.5≦α≦0.9を満たす。これにより、診断装置本体4におけるシステムの駆動電圧を最大限利用することができるので、高い感度特性を利用することができる。ここで、αについては、0.7≦α≦0.9とすると、耐電圧特性を向上させることができ、より好ましい。また、Ec25×0.9≦Ec60の関係を満たすと、長時間駆動安定性がさらに向上するので好適である。
なお、システムの最大駆動可能電圧は、上述したものに限定されず適宜に設定することができる。
超音波探触子2は、受信した送信パルスに応じた送信超音波を出力する。このとき、送信部12は、各超音波振動子21からの送信超音波が所定の焦点位置に収束するように送信ビームを形成させる。なお、上述の送信超音波を時間軸方向に伸張した複数の符号化されたパルスで構成してもよい。
受信部13は、制御部17の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路であり、この受信信号を信号処理部14に出力する。
信号処理部14は、受信部13の出力から反射超音波を検出する。
画像処理部15は、制御部17の制御に従って、信号処理部14で処理された受信信号に基づいて、被検体の内部状態の画像のデータ(超音波画像データ)を生成する回路である。
表示部16は、制御部17の制御に従って、画像処理部15で生成された超音波画像データに基づいて被検体の超音波画像を表示する装置である。表示部16は、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置や、プリンター等の印刷装置等で実現される。
制御部17は、マイクロプロセッサー、記憶素子及びその周辺回路等を備えて構成され、これら操作入力部11、送信部12、電圧制御部18、受信部13、信号処理部14、画像処理部15及び表示部16を当該機能に応じてそれぞれ制御することによって超音波画像診断装置1の全体制御を行う回路である。
超音波振動子21は、図3に示すように、例えば、図上正面視下方から、バッキング(背後)層22、デマッチング(反射)層23、圧電層24及び音響整合層25を積層して構成されている。なお、必要に応じて、音響整合層25の上方に音響レンズを積層してもよい。
バッキング層22は、デマッチング層23を支持し、不要な超音波を吸収し得る超音波吸収体である。すなわち、バッキング層22は、圧電層24に対し被検体に超音波を送受信する方向とは反対側に設けられ、圧電層24の被検体の方向の反対側から発生し、バッキング層22に到達した超音波を吸収する。なお、本実施の形態において、バッキング層22を備えない構成としてもよい。
バッキング層22を構成するバッキング材としては、塩化ビニル、ポリビニルブチラール(PVB)、ABS樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、フッ素樹脂(PTFE)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体などの熱可塑性樹脂、天然ゴム、フェライトゴム、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂に酸化タングステンや酸化チタン、フェライト等の粉末を入れてプレス成形した複合材料、さらには複合材料を粉砕したのち、上述した熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等と混合し、硬化させた材料を用いることができる。音響インピーダンスを調整するために、マコールガラス等の無機材料や空隙を有する多孔質材料を用いることもできる。
好ましいバッキング材としては、ゴム系複合材料、及び/又は、エポキシ樹脂複合材からなるものであり、その形状は圧電層24やこれを含む超音波探触子2の形状に応じて、適宜選択することができる。
デマッチング層23は、音響インピーダンスが圧電層24よりも大きい材料により形成されており、圧電層24に対し被検体の方向とは反対側に出力される超音波を反射する。デマッチング層23に適用される材料としては、タングステンやタンタル等、圧電層24とデマッチング層23との音響インピーダンスの差が大きい材料であれば何れのものも適用可能であるが、タングステンカーバイドが好適である。また、タングステンカーバイドと他の材料とを混合してなるものであってもよい。本実施の形態では、デマッチング層23を備えることにより、圧電層24における超音波の送受波に対する感度をさらに向上させることができる。
圧電層24は、複数層あるいは単層の圧電体によって構成されている。圧電体の材料としては、従来から用いられている水晶、圧電セラミックスPZT、PZLTや、圧電単結晶PZN−PT、PMN−PT、LiNbO、LiTaO、KNbO、ZnO、AlNなどの薄膜などの無機圧電材料に加え、ポリフッ化ビニリデンやポリフッ化ビニリデン系共重合体、ポリシアン化ビニリデンやシアン化ビニリデン系共重合体、ナイロン9やナイロン11などの奇数ナイロン、芳香族ナイロン、脂環族ナイロン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシカルボン酸、セルロース系誘導体、あるいはポリウレアなどの有機圧電材料が挙げられる。さらに無機圧電材料と有機圧電材料、無機圧電材料と有機高分子材料を併用したコンポジット材料も挙げられる。
本実施の形態では、上述した無機圧電材料あるいは有機圧電材料に所定の添加物が添加された抗電界の高いものを使用して圧電層24を構成している。PZTのような強誘電性の圧電体では、一度電界を印加したものは、電界を取り去っても元の状態には戻らず、残留分極Prが残る。この残留分極を打ち消すためには、さらに逆向きの電界が必要となり、これに必要な電界を抗電界Ecという。抗電界Ecは、結晶粒内のドメインウォールの移動のしやすさに相関しており、その移動のしやすさは圧電材料の構成元素の種類、すなわち添加物に依存する。
添加物としては大きく2種類に大別できる。1つはLa、Nd、Nb、Ta、WOなどのようなペロブスカイトABOのAサイトを置換する3価の元素(La3+、Nd3+)や、Bサイトを置換する5価や6価の元素(Nb5+、Ta5+、W6+)であり、これらは結晶内部のAサイトに空孔を作り、ドナー添加物と呼ばれる。この空孔の形成により結晶粒内のドメインウォールの移動がしやすくなり、抗電界が低下する。これらはソフト材と呼ばれる。
一方、もう1つは、Fe、CoO、MnOなどBサイトを置換する2価や3価の元素(Fe3+、Co2+、Mn2+)であり、添加物により酸素空孔を作り、アクセプター添加物と呼ばれる。この空孔によりドメインウォールの移動がしにくくなり、抗電界が上昇する。これらはハード材と呼ばれる。したがって、抗電界の制御は、添加物の種類と量で実施することが可能である。本実施の形態では、このようなハード材が添加された圧電材料を使用して圧電層24を構成している。
なお、同様の方法で、単結晶の固溶体の抗電界の制御も可能である。
本実施の形態において適用される圧電材料は、抗電界が25℃下において1.0MV/m以上としている。デマッチング層23が用いられる場合には、圧電体の厚みが半分になり、耐電圧特性が低下する。本実施の形態によれば、高い電圧駆動を可能にすることができるので、診断装置本体におけるシステムの駆動電圧を最大限利用することができ、高い中心周波数特性を有する超音波探触子2で高感度化を実現することができるようになる。このとき、圧電層24の誘電率が1800以上であると、抗電界を安定して得られるので好適である。本実施の形態では、特に、出力する中心周波数が7MHz以上である超音波探触子2に適用すると効果的である。
また、圧電体は、長時間の駆動により発熱する。従来の圧電材料は抗電界が低く、したがってキュリー温度が低い。そのため、熱的安定性が低く、長時間の使用において一定の特性を維持することが困難であり、使用開始当初に有していた診断価値を維持することが困難であった。本実施の形態において適用される圧電材料は、さらに、抗電界が60℃下において0.9MV/m以上としている。そのため、長時間使用しても圧電特性の変化を小さくすることができ、超音波探触子2の動作を安定させることができる。また、本実施の形態において適用される圧電材料のキュリー温度は250℃以上350℃以下であるのが好ましいが、十分高い抗電界と必要十分な誘電率とが得られるものであればこれに限定されない。
上述した圧電材料は、無機圧電材料としては、市販のものを使用することができ、例えば、富士セラミック社製のC−6、C−6H、C−62、C−63、C−64、C−601、C−7.C−8、C−82、C−83H、C−9、C−91,C−91H、C−92H、又は、テイカ社製のL−1A、L−6A、L−201F、L−11、L−9、L−155N、L−145N等が挙げられる。また、有機圧電材料としては、東京センサ社製のPVDFフィルムやクレハ社製のポリ(ビニリデンフルオリド-co-トリフルオロエチレン)フィルム、試薬としてアルドリッチ社製のポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)等が挙げられる。
なお、本実施の形態では、上述した圧電材料にハード材が添加されたものを使用する構成としているが、十分な抗電界が得られるものであれば、添加物の添加されていないものを使用するようにしてもよい。
圧電体の1層あたりの層厚は、設定する中心周波数(波長λ)にもよるが、加工性を考え、5〜200μmの範囲内にあることが好ましい。
有機圧電材料から成る圧電層の形成方法には、塗布によって膜を形成する方法や、蒸着(蒸着重合)によって膜を形成する方法が好ましい。前記の塗布方法としては、たとえばスピンコート法、ソルベントキャスト法、メルトキャスト法、メルトプレス法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、バーコート法等が挙げられる。また、蒸着(蒸着重合)方法としては、数百Pa以下程度の真空度で、単一、または複数の蒸発源よりモノマーを蒸発させ、基板上に付着、反応させることで膜を得ることができる。必要に応じて、適宜基板の温度調整が行われる。
上述のようにして作成された有機圧電体膜への電極層の形成は、先ずチタン(Ti)やクロム(Cr)などの下地金属をスパッタ法により0.02〜1.0μmの厚さに形成し、続いて金属元素を主体とする金属材料またはそれらの合金から成る金属材料に、必要に応じて一部絶縁材料を併せて、スパッタ法等の適当な方法で1〜10μmの厚さに形成することで行われる。その後、分極処理が行われる。前記の金属材料には、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)などが用いられる。電極形成は、上記のスパッタ法以外に、微粉末の金属粉末と低融点ガラスとを混合した導電ペーストを、スクリーン印刷やディッピング法、溶射法等で、塗布することで行うこともできる。
本実施の形態では、圧電層24は、上述した構成により、電圧制御部18から送信信号が与えられるとnλ/4(nは奇数)共振モードで共振して送信超音波を出力する。
このように、本実施の形態では、デマッチング層とともに抗電界の高い圧電材料を用いることにより、十分な耐電圧特性を有し、高感度化を実現することができる。また、抗電界の高い圧電材料を適用することにより、経年劣化を低減することができるので、製品寿命を延ばすことができるようになる。また、抗電界の高い圧電材料を適用することにより、環境による圧電特性の影響を小さくすることができる。
バッキング層22とデマッチング層23との間にはFPC(Flexible Printed Circuits)27が挟持されており、このFPC27によって電圧制御部18からの送信信号が圧電層24に与えられる。また、圧電層24で生成された受信信号は、FPC27によって受信部13に与えられる。
音響整合層25は、圧電層24と被検体との間の音響インピーダンスを整合させ、境界面での反射を抑制するものである。音響整合層25は、圧電層24の、超音波の送受波が行われる方向である被検体側に配置される。音響整合層25は、圧電層24と被検体との概ね中間の音響インピーダンスを有する。
音響整合層25に用いられる材料としては、アルミ、アルミ合金(例えばAL−Mg合金)、マグネシウム合金、マコールガラス、ガラス、溶融石英、コッパーグラファイト、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、ABC樹脂、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ナイロン(PA6、PA6−6)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、PPS(ポリフェニレンスルフィド:ガラス繊維入りも可)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PAI(ポリアミドイミド)、PETP(ポリエチレンテレフタレート)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。好ましくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に、充填剤として、亜鉛華、酸化チタン、シリカやアルミナ、ベンガラ、フェライト、酸化タングステン、酸化イットリビウム、硫酸バリウム、タングステン、モリブデン等を入れて成形したものが適用できる。
音響整合層25は、単層でもよいし複数層から構成されてもよいが、好ましくは2層以上、より好ましくは4層以上である。音響整合層25の層厚は、超音波の波長をλとすると、λ/4となるように定めるのが好ましい。このような音響整合層の厚さとしては、中心周波数に依存するが、通常、概ね20〜500μmの範囲のものが用いられる。音響整合層25は、厚み方向に重層塗布によって形成され、各層でそれぞれ材料構成を異ならせて厚み方向に音響インピーダンスの重みづけを行うことにより、音響インピーダンスを整合させている。なお、音響整合層25における音響インピーダンスの重みづけ方向については、厚み方向に限らず、水平方向であってもよい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、勿論本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、実施例1〜3として、以下のようにして超音波探触子を作製した。
まず、6層の音響整合材を積層して音響整合層を作製した。各層の音響整合材については、それぞれ、エポキシ樹脂とフェライト又はシリコーン樹脂微粉末の混錬硬化物により、下記の条件を満たすように作製した。すなわち、音響放射面側最表層である最上層の音響整合材は音響インピーダンスが1.5MRaylsで厚みが20μmとし、第2層目の音響整合材は音響インピーダンスが2.0MRaylsで厚みが30μmとし、第3層目の音響整合材は音響インピーダンスが3.0MRaylsで厚みが30μmとし、第4層目の音響整合材は音響インピーダンスが6.0MRaylsで厚みが40μmとし、第5層目の音響整合材は音響インピーダンスが9.0MRaylsで厚みが50μmとし、最下層の音響整合材は音響インピーダンスが14.0MRaysで厚みが60μmとした。このようにして作成された各層の音響整合材を上述した順序で積層して、2.94MPaの加圧条件下においてエポキシ接着剤で加熱硬化により接着した後、5.6mm×42.5mmの大きさに成型して音響整合層とした。
次に、下記表1の実施例1の欄に記載の圧電材を用い、これを5.6mm×42.5mm×80μmの大きさに加工した後、電極を形成した。そして、短軸方向の有効開口が4.0mmになるよう背面側の短軸両端近傍に絶縁溝を長手方向に沿って形成してシグナル電極とグランド電極とを形成し、分極処理を行って圧電層を作製した。
その後、タングステンカーバイドを5.6mm×42.5mm×80μmの大きさに成型してこれをデマッチング層とした。そして、上述のようにして作製された圧電層とデマッチング層とを積層して接着し、圧電層に形成された絶縁溝と連通するようにダイシングにより幅40μm、深さ90μmで背面側から長手方向に沿って溝入れして振動層を得た。
その後、パターニングされたFPC、バッキング層及び固定板を予め上述と同様の接着条件で積層して接着しておいたものに対し、上述のようにして作製された振動層と音響整合層とを順に積層して接着した。これにより、圧電層のシグナル電極及びグランド電極は、これらの絶縁状態を維持したまま、デマッチング層を配線としてFPC上に形成されたシグナル電極面及びグランド電極面にそれぞれ接続される。なお、音響整合層は、音響インピーダンスが高い音響整合材が圧電層に接するようにして接着した。そして、このようにして作製された積層体に対し、20μmの厚みを有するブレードで、長手方向(アジマス方向)に0.2mm間隔で振動層を完全に分割するダイシングを行って素子化し、さらに、分割された素子に対し、上述のブレードで約67μm間隔で音響整合層を完全に分割するダイシングを行い、トランスデューサーを作製した。
その後、トランスデューサーの表面に、ポリパラキシリレンによる3μm程度の絶縁層を設け、この絶縁層の音響放射面に音響レンズを積層して接着し、振動部を作製した。
次いで、FPCにコネクタを接続した後、上述のようにして作製された振動部をケースに収納して実施例1の超音波探触子を作製した。
続いて、実施例1の圧電材に換えて下記表1の実施例2及び実施例3の欄に記載の圧電材を用い、実施例1と同様の要領にて実施例2及び実施例3の超音波探触子をそれぞれ作製した。
次に、上述したようにして音響整合層を作製した後、下記表1の比較例1の欄に記載の圧電材を用い、これを5.6mm×42.5mm×130μmの大きさに加工した後、電極を形成した。そして、短軸方向の有効開口が4.0mmになるよう背面側の短軸両端近傍に絶縁溝を長手方向に沿って形成してシグナル電極とグランド電極とを形成し、分極処理を行って圧電層を作製した。
その後、パターニングされたFPC、バッキング層及び固定板を予め上述と同様の接着条件で積層して接着しておいたものに対し、上述のようにして作製された圧電層と音響整合層とを順に積層して接着した。これにより、圧電層のシングル電極及びグランド電極は、これらの絶縁状態を維持したままFPC上に形成されたシグナル電極面及びグランド電極面にそれぞれ接続される。なお、音響整合層は、音響インピーダンスが高い音響整合材が圧電層に接するようにして接着した。そして、このようにして作製された積層体に対し、20μmの厚みを有するブレードで、長手方向(アジマス方向)に0.2mm間隔で振動層を完全に分割するダイシングを行って素子化し、さらに、分割された素子に対し、上述のブレードで約67μm間隔で音響整合層を完全に分割するダイシングを行い、トランスデューサーを作製した。
その後、トランスデューサーの表面に、ポリパラキシリレンによる3μm程度の絶縁層を設け、この絶縁層の音響放射面に音響レンズを積層して接着し、振動部を作製した。
次いで、FPCにコネクタを接続した後、上述のようにして作製された振動部をケースに収納して比較例1の超音波探触子を作製した。
続いて、比較例1の圧電材に換えて下記表1の比較例2及び比較例3の欄に記載の圧電材を用い、比較例1と同様の要領にて比較例2及び比較例3の超音波探触子をそれぞれ作製した。
上述のようにして作製された実施例1〜3及び比較例1〜3の超音波探触子の送信感度及び耐久性について下記の条件によって評価した。測定系は、汎用のファンクションジェネレーター(Agilent社製33220A)、パワーアンプ(HP社製8447D)、ハイドロホン(Sonora社製804)及びオシロスコープ(Tektronix社製TPS5032)によって構築し、脱気した水中に上記ハイドロホンを設置した。そして、超音波探触子は、超音波探触子の焦点距離とハイドロホンの焦点距離とが合い、且つ、ハイドロホンの受信感度が最も高くなる位置に固定した。そして、Vpp80[V]のバースト波駆動にて信号の送信を行い、送信感度の比較を行った。その結果を表1に示す。なお、下記表1中の圧電材は何れも富士セラミック社製のものを使用した。
Figure 0006040735
表1から明らかなように、素子容量に起因する伝送ロスと抗電界に起因する駆動電圧のトレードオフがある比較例1〜3に比べ、実施例1〜3では、それらを両立して高い送受信感度を有していることがわかった。
次に、上述のようにして作製された実施例1及び比較例3の超音波探触子の送信感度について下記の条件でそれぞれ測定し、評価した。測定系は、汎用のファンクションジェネレーター(Agilent社製33220A)、パワーアンプ(HP社製8447D)、ハイドロホン(Sonora社製804)及びオシロスコープ(Tektronix社製TPS5032)によって構築し、脱気した水中に上記ハイドロホンを設置した。そして、超音波探触子は、超音波探触子の焦点距離とハイドロホンの焦点距離とが合い、且つ、ハイドロホンの受信感度が最も高くなる位置に固定した。そして、各超音波探触子に対し、下記表2に記載の駆動電圧のバースト波を入力し、それぞれの送信感度を評価した。その結果を表2に示す。
Figure 0006040735
表2から明らかなように、実施例1の超音波探触子の送信感度は駆動電圧に依存して増加しており、システムの駆動電圧帯を十分に利用することができることがわかった。これに対し、比較例3の超音波探触子は、駆動電圧が50V(100Vpp)までは駆動電圧に依存して送信感度が増加しているが、60V(120Vpp)以上では許容電圧を超える電圧が与えられたことによる感度の低下が生じ、70V(140Vpp)の駆動電圧にあっては脱分極によるノイズが発生していることがわかった。このように、実施例1の超音波探触子は、比較例3の超音波探触子に比べて高感度化が可能であることがわかった。
次に、上述した測定条件にて、実施例1及び比較例3の超音波探触子に対してそれぞれ50V(100Vpp)の駆動電圧で連続して駆動を行い、駆動開始後5分、10分、20分及び30分経過後の測定開始直後の送信感度に対する相対感度について測定した。その結果を表3に示す。
Figure 0006040735
表3から明らかなように、実施例1の超音波探触子の送信感度は、長時間の駆動にもかかわらず、ほぼ一定の感度特性を有していることがわかった。すなわち、連続して駆動することに伴う圧電材の温度上昇にかかわらず、ほぼ一定の感度特性を維持していることがわかった。これに対し、比較例3の超音波探触子は、時間の経過とともに感度が低下していることがわかった。すなわち、連続して駆動することに伴う圧電材の温度上昇により感度が低下していることがわかった。このように、実施例1の超音波探触子は、熱的安定性が高く、高い感度特性を長時間維持することができることがわかった。
以上説明したように、本実施の形態によれば、圧電層24の超音波の放射面とは反対側の面に圧電層24の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有するデマッチング層23が配置され、nλ/4(nは奇数)共振により超音波を送受信する超音波探触子2において、抗電界が25℃下において1.0MV/m以上である圧電材を用いて圧電層24を構成する。その結果、デマッチング層が用いられても厚みに依存されずに高い電圧駆動を可能にすることができるので、診断装置本体におけるシステムの駆動電圧を最大限利用することができ、高い中心周波数特性を有する超音波探触子で高感度化を実現することができるようになる。また、長時間使用しても特性の変化が小さいので、経年劣化の小さい超音波探触子を提供することができるようになる。
また、本実施の形態によれば、抗電界が60℃下において0.9MV/m以上である圧電材を用いて圧電層24を構成したので、高温時でも圧電特性の劣化が小さく、長時間使用しても圧電特性の変化を小さくすることができ、動作の安定した超音波探触子を提供することができる。
また、本実施の形態によれば、圧電材は、Bサイトを置換する2価又は3価の元素を含むアクセプター添加物を含んでいるので、圧電材の抗電界を上昇させることができるようになる。
また、本実施の形態によれば、アクセプター添加物は、Fe3+、Co2+及びMn2+の少なくとも1種類以上を含んでいるので、圧電材の抗電界をより上昇させることができるようになる。
また、本実施の形態によれば、誘電率が1800以上である圧電材を用いて圧電層24を構成したので、抗電界が安定して得られるようになる。
また、本実施の形態によれば、キュリー温度が250℃以上350℃以下である圧電材を用いて圧電層24を構成したので、圧電材を効率的に用いることができるようになる。
また、本実施の形態によれば、出力する超音波の中心周波数を7MHzとしたので、圧電材を効率的に用いることができるようになる。
なお、本発明の実施の形態における記述は、本発明に係る超音波画像診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。超音波画像診断装置を構成する各機能部の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
1 超音波画像診断装置
2 超音波探触子
4 診断装置本体
21 超音波振動子
23 デマッチング層(反射層)
24 圧電層

Claims (7)

  1. 圧電層の超音波の放射面とは反対側の面に該圧電層の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有する反射層が配置され、nλ/4(nは奇数)共振により超音波を送受信する超音波探触子において、
    前記圧電層と前記反射層は当接していて、
    前記圧電層を構成する圧電材の抗電界が25℃下において1.0MV/m以上であることを特徴とする超音波探触子。
  2. 前記圧電材の抗電界が60℃下において0.9MV/m以上であることを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
  3. 前記圧電材は、Bサイトを置換する2価又は3価の元素を含むアクセプター添加物を含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波探触子。
  4. 前記元素は、Fe3+、Co2+及びMn2+の少なくとも1種類以上であることを特徴とする請求項3に記載の超音波探触子。
  5. 前記圧電材の誘電率が1800以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の超音波探触子。
  6. 前記圧電材のキュリー温度が250℃以上350℃以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波探触子。
  7. 出力する超音波の中心周波数が7MHz以上であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の超音波探触子。
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