JP6037295B2 - マルチライダーシステム - Google Patents
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Description
また、本発明の乱気流事故防止方法は、上記構成に加え、乱気流域が回避できないと判断された場合には、レーザ放射方位を垂直方向にスキャンして気流の二次元ベクトルを計測し、舵面自動制御用に気流情報を出力すること(動揺低減モード)ができるようにしたものである。
また、本発明のマルチライダーシステムは、各々の光学式遠隔気流計測装置における放射レーザの光軸指向方向を独立に走査させる機構を備えることにより、計測領域を左右方向または上下方向に広げることを可能とした。
更に、本発明のマルチライダーシステムは、各々の光学式遠隔気流計測装置における放射レーザの光軸指向方向を上下にずらした形態で同時にレーザ光を左右方向に走査して放射する機構を備えることにより、1回の計測機会で風速の上下方向成分を計測することを可能とした。
また、多重化したライダーによるレーザ放射を同一方向ではなく、各々の光軸を左右方向または上下方向に独立して指向させることにより、計測領域を広範囲とすることができ、乱気流域をより認識しやすくなる。
動揺低減制御に利用する機体前方気流の情報を得る場合、気流の鉛直面内の二次元ベクトル情報が必要となるが、上下二方向以上を同時に計測することにより、一軸をスキャンする方法よりも高速で気流情報を得ることができ、効果的な舵面制御を行なうことができる。
また、本発明のマルチライダーシステムは、上記の計測領域拡大または計測周期短縮を実現するものであると共に、システムをマルチ化したことにより不具合時の冗長性が増大する効果がある。
基準光源1で発生した微弱な単一波長レーザ光は、光アンプ2により増幅される。増幅されたレーザ光は光学望遠鏡3を通して大気中に放射されるが、スキャナ4により放射方位を変更することが可能である。大気中に放射された各々の光学望遠鏡3から放射された同じ波長のレーザ光は大気中に浮遊するエアロゾルで散乱され、戻ってきた光を各々の光学望遠鏡3で受信する。この受信光はエアロゾルの移動速度に応じてドップラー効果に基づく波長変化が生じているため、光受信機5では基準光源1からの参照光と受信光とを合成してうなり周波数を求める。このうなり周波数がドップラーシフトであり、光軸方向風速成分に比例した数値であるため、信号処理器6で風速を求めるとともにその変化量から乱気流の程度を算出する。検知した乱気流は表示器7に表示してパイロットが飛行中に監視できるようにする。以上は一般的なドップラーライダーの原理を説明したものであるが、光アンプ2、光学望遠鏡3、スキャナ4、光受信機5をそれぞれ三組とし、光学系20を構成することにより、以下に示す利点が生ずることになる。
積分された信号の信号対雑音比Dは、一般に式1で表され、SNRはレーザ光の散乱強度に比例し、積分数Nと併せて信号対雑音比Dに大きく影響する。
D=SNR×√N …… [1]
ただし、
SNR:受信信号1パルスの信号対雑音比
N:受信信号の積分数
すなわち、有効な信号は受信信号の積分により単純に加算されるが、不要なノイズは受信信号の積分により相殺されて小さくなるため、受信信号の積分により等価的に信号対雑音比が受信信号の積分数の平方根倍に向上したことを意味する。遠方の計測ほど信号強度が小さくなるというドップラーライダーの特性から、信号対雑音比が向上することにより結果的に計測有効距離が拡張され、乱気流を早めに検知することができるようになる。
レーザ放射方位を上下方向にずらした場合には、気流の前後方向および上下方向の成分、を1回の計測機会で求めることができる。光軸をスキャンする方法と比較すると短い周期で気流情報を更新することができ、機体の動揺を低減させるための舵面制御の入力として有効に活用することができる。この目的で使用する場合には、レーザ放射光軸を横方向に走査する必要はない。
W1=Wcos(α+θ)
W2=Wcos(α−θ) …… [2]
ただし、
W:気流ベクトル
W1:上向きライダーによる計測値
W2:下向きライダーによる計測値
α:気流ベクトルと機体軸とのなす角で、気流が安定している場合には迎角と一致する。
θ:計測中心方向と上向きライダーおよび下向きライダーがなす角
したがって、αは式3で求めることができる。
α=(cos−1(W1/W)+cos−1(W2/W))/2 …… [3]
Wは式4のいずれによっても求めることができ、実用上は両式の平均値を採用する。
W=W1/cos(α+θ)
W=W2/cos(α−θ) …… [4]
以上のように求めたWおよびαをオートパイロットの入力として活用する。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が現在開発中のドップラーライダーでは、レーザパルスの周波数が4kHzであり、4000パルス、すなわち1秒間の受信光積分時間で1データを取得し、約9kmの計測レンジを目指している。ドップラーライダーを図3に示すように二重化した場合には、レーザ光の散乱強度が2倍となるために前記SNRが2倍となり、さらに積分回数Nが2倍となるため、式1で説明した信号対雑音比Dが約2.8倍となる。Dは、計測距離の2乗にほぼ反比例する性質があるため、この2重化の効果により有効計測距離が約1.7倍の15km程度となることが期待される。現時点の技術ではレーザ出力の増大が極めて困難なため、有効計測距離を延ばす抜本的な方法として期待できる。加えて、ドップラーライダーの1式に不具合があった場合でも、もう一方のドップラーライダーが使用できるため冗長性が向上する効果も期待できる。
実施例1で述べたとおり、計測に1秒間の積分時間を要するとした場合、光学系の方位スキャン機能を付加した際に、片道スキャン時間を4秒間とすると方位分解能はスキャン角度の4分の1となる。スキャン角度を大きくすると方位分解能が低下し、片道スキャン時間を長くすると航空機の進行に対応できなくなり、積分時間を短くすると計測ノイズが増加する。したがって、図4に示すように二組のドップラーライダーにより分担する方位を独立してスキャンし、総合的な観測領域を拡大する。具体的な使用法としては、方位Aへの直線飛行時は観測領域Aを二組のドップラーライダーで監視し、飛行方位をBに変更しようとした場合に一方のドップラーライダーで観測領域Bを監視し、乱気流の有無を確認する。
高度変更を予定している場合も同様であり、図5に示すように水平飛行中は水平面内の通常観測面を二組のドップラーライダーで監視し、飛行高度を下げようとした場合に一方のドップラーライダーを下方に向け、下方観測面を監視することにより、降下に先立ち低高度の乱気流の有無を確認する。上昇の場合も同様である。
図6は小型で五組の送信系と、1個の受信望遠鏡で光学系20を構成する例を示す。送信系は送信望遠鏡8および光ファイバアンプで構成される。この例の場合、受信望遠鏡が1個であるため独立スキャンはできないが、有効計測距離と冗長性の増大効果が期待できる。なお、光ファイバアンプ(FA)はレーザ出力が低い欠点があるものの小型省電力の製品が生産されており、多重化しても低価格で実用化できる利点がある。さらに小型省電力で低価格のレーザダイオード(LD)を大量に使用することも考えられる。
光学系20を五組装備した場合には、スキャンすることなしに図7のように5方位を同時に観測することができ、積分時間を長くしても方位分解能が低下しない。
舵面制御の入力情報計測用として使用する場合には、500m程度前方の気流が計測できれば充分なため、乱気流域監視用と比較して受信光の積分時間を短くすることができる。
受信光の積分時間を0.1秒とすれば、10Hzの計測周期となるが、この計測周期であれば、乗り心地を改善するような細かい制御から、事故が生ずるような大きな揺れまでを低減させることが可能である。航空機が1〜2秒後に遭遇する気流を計測することにより、対気速度および迎角の変化の予測ができるので、その情報をFMS(フライトマネージメントシステム)に入力することにより、自動的に舵面を制御して機体の動揺を低減させるようにする。
3 光学望遠鏡 4 スキャナ
5 光受信機 6 信号処理器
7 表示器 8 送信望遠鏡
9 受信望遠鏡 10 光送受信機
11 信号処理・制御・表示器 20 光学系
100 マルチライダーシステム 200 機体
Claims (6)
- 1つの航空機に搭載され、レーザ光を大気中に放射し、大気中に浮遊する微小なエアロゾル粒子によって散乱された散乱光を受信してドップラー効果による周波数変化量を測定することによって風速を測定するドップラーライダー方式の光学式遠隔気流計測を行うシステムであって、
単一波長のレーザ光を発生する一つの基準光源と、
前記基準光源で発生したレーザ光に基づく前記2つ以上のレーザ光を2つ以上の光アンプ及び各光アンプに接続された2つ以上の光学望遠鏡のそれぞれを介して同一の放射方位に放射し、戻ってきた光を前記2つ以上の光学望遠鏡及び各光学望遠鏡に接続された2つ以上の光受信機を介して受信し、それぞれを受信信号とする第1のモードを少なくとも有する放射・受信手段と、
前記第1のモードでは、前記放射・受信手段からの各前記受信信号を積分し、積分後の受信信号から遠隔領域の風速を求める信号処理器と
を具備するマルチライダーシステム。 - 請求項1に記載のマルチライダーシステムであって、
前記放射・受信手段より放射される2つ以上のレーザ光の各放射方位を独立に変化させるスキャナを更に有し、
前記放射・受信手段は、前記基準光源で発生したレーザ光に基づく前記2つ以上のレーザ光を2つ以上の光アンプ及び各光アンプに接続された2つ以上の光学望遠鏡のそれぞれを介して、分担する方位に対して独立してスキャンさせて放射し、戻ってきた光を前記2つ以上の光学望遠鏡及び各光学望遠鏡に接続された2つ以上の光受信機を介して受信し、各前記光受信機では前記基準光源からの参照光と前記受信した光とを合成してうなり周波数を求める第2のモードを更に有し、
前記信号処理器は、前記第2のモードでは、前記放射・受信手段からの各前記うなり周波数からスキャンした領域の気流を計測する
マルチライダーシステム。 - 請求項2に記載のマルチライダーシステムであって、
直線飛行時は2つ以上のレーザ光で飛行方向の観測領域の気流を計測し、
飛行方位を変更しようとした場合には、2つ以上のレーザ光のうち1つのレーザ光を変更しようとする方向に変え、この方向の観測領域の気流を計測して乱気流の有無を確認する
マルチライダーシステム。 - 請求項2又は3記載のマルチライダーシステムであって、
水平飛行中は水平面内の観測領域を2つ以上のレーザ光で気流を計測し、
飛行高度を下げようとした場合に、2つ以上のレーザ光のうち1つのレーザ光を下方に向け、下方の観測領域の気流を計測し、降下に先立ち低高度の乱気流の有無を確認し、一方、飛行高度を上げようとした場合に、2つ以上のレーザ光のうち1つのレーザ光を上方に向け、上方の観測領域の気流を計測し、上昇に先立ち高高度の乱気流の有無を確認する
マルチライダーシステム。 - 請求項1に記載のマルチライダーシステムであって、
前記放射・受信手段より放射される1つのレーザ光を前記同一の放射方位より上又は下にずらした放射方位に放射させる手段を更に有し、
前記放射・受信手段は、前記基準光源で発生したレーザ光に基づく前記2つ以上のレーザ光のうち1つのレーザ光を前記同一の放射方位より上又は下の放射方位にずらして光アンプ及び当該光アンプに接続された光学望遠鏡を介して放射し、
残りのレーザ光を、光アンプ及び当該光アンプに接続された光学望遠鏡を介して前記同一の放射方向に放射し、
戻ってきた光を前記2つ以上の光学望遠鏡及び各光学望遠鏡に接続された2つ以上の光受信機を介して受信し、各前記光受信機では前記基準光源からの参照光と前記受信した光とを合成してうなり周波数を求める第3のモードを更に有し、
前記信号処理器は、前記第3のモードでは、前記放射・受信手段からの各前記うなり周波数から気流の上又は下方向の成分を前記同一の放射方位の成分とともに1回の計測機会で計測し、
該計測結果をオートパイロットの動揺低減舵面制御用に用いる
マルチライダーシステム。 - 請求項1に記載のマルチライダーシステムであって、
前記信号処理器は、前記求めた遠隔領域の風速の変化量から乱気流の程度を算出する
マルチライダーシステム。
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