JP6036157B2 - エポキシド類の製造方法 - Google Patents

エポキシド類の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6036157B2
JP6036157B2 JP2012232054A JP2012232054A JP6036157B2 JP 6036157 B2 JP6036157 B2 JP 6036157B2 JP 2012232054 A JP2012232054 A JP 2012232054A JP 2012232054 A JP2012232054 A JP 2012232054A JP 6036157 B2 JP6036157 B2 JP 6036157B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
catalyst
alkali metal
reaction
gas
glycols
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012232054A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014084279A (ja
Inventor
笹尾 康行
康行 笹尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
AGC Inc
Original Assignee
Asahi Glass Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Glass Co Ltd filed Critical Asahi Glass Co Ltd
Priority to JP2012232054A priority Critical patent/JP6036157B2/ja
Publication of JP2014084279A publication Critical patent/JP2014084279A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6036157B2 publication Critical patent/JP6036157B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Epoxy Compounds (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

本発明はグリコール類からエポキシド類を製造する方法に関する。
近年、カーボンニュートラルの考えから植物油などの天然油脂を原料にしたバイオディーゼルの製造がおこなわれ、加水分解副生成物であるグリセリンの有効利用が求められている。
また、自動車用のシートや断熱材や防音材などに用いられるポリウレタン製品の原料であるポリエーテルポリオールは、プロピレンオキシドやエチレンオキシド等のエポキシド類から合成され、エポキシド類も再生可能なカーボンニュートラル原料とすることが求められている。
1,2−グリコール類からエポキシド類を気相反応合成により製造する方法は周知である。
例えば特許文献1の実施例には、アルカリ金属ケイ酸塩を425℃以上の温度で、空気中で加熱した触媒を用いて、398℃以上の高温でプロピレングリコールを窒素ガスと同伴させて反応させてプロピレンオキシドを合成する方法が記載されている。
特許文献2の実施例には、燐水素カリウム燐酸カリウム塩を触媒として用い、398℃以上の高温でプロピレングリコールを酢酸とともに、窒素ガスと同伴させて反応させてプロピレンオキシドを合成する方法が記載されている。
特許文献3は、シリカからなる担体にアルカリ金属塩を加熱担持させた触媒を用いて、プロピレングリコールからプロピレンオキシドを合成する方法が記載されている。触媒を製造する際の加熱温度は500〜600℃であり、反応温度は375〜500℃に限定されている。同伴ガスは窒素が用いられている。
特開昭59−170083号公報 特開昭59−170082号公報 中国特許出願公開第101773822号明細書
エポキシド類の製造にあっては、反応生成物のうちエポキシド類が占める割合を示す選択率が高いことが望ましい。
本発明は、グリコール類からエポキシド類を生成させる反応における、エポキシド類の選択率を向上させることができる、エポキシド類の製造方法を提供する。
本発明は下記[1]〜[6]である。
[1] 触媒の存在下、グリコール類の気相脱水反応により、エポキシド類を製造する方法であって、前記触媒が、アルカリ金属(A)を含有する塩を含む触媒、またはアルカリ金属(A)を含有する塩が担体に担持された担持体からなる触媒であり、触媒が充填された反応器に、グリコール類と、二酸化炭素を含有する同伴ガスとを導入し、該グリコール類の曇点以上500℃以下の反応温度で反応させることを特徴とするエポキシド類の製造方法。
[2] 反応器に導入する二酸化炭素の、グリコール類に対する供給割合が、二酸化炭素/グリコール類のモル比で0.1/1以上である、[1]記載のエポキシド類の製造方法。
[3] 前記アルカリ金属(A)を含有する塩が、下記組成式(1)で表わされる複合塩である、[1]記載のエポキシド類の製造方法。
aAO・bMO・SiO…(1)
[式中、Aはアルカリ金属の1種以上を表し、Mは2価の陽イオンとなる金属の1種以上を表し、0.15≦a≦1.9、0.1≦b≦1.5、a+b≦2である。]
[4] 前記触媒が、ケイ素を含む担体に、ケイ素と金属と酸素とを含有する複合塩が担持された担持体からなり、前記金属が、アルカリ金属(A)の1種以上と、2価の陽イオンとなる金属(M)の1種以上からなり、前記アルカリ金属(A)と前記金属(M)の含有比率を酸化物で示したAO/MOの組成比が、0.1以上、19.0以下である、[1]記載のエポキシド類の製造方法。
[5] 前記アルカリ金属(A)を含有する塩がアルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属炭酸塩、またはアルカリ金属炭酸水素塩からなる、[1]記載のエポキシド類の製造方法。
[6] 前記反応工程の前に、前記触媒を乾燥させる乾燥工程を有し、該乾燥工程が、前記反応器に触媒を充填して、不活性ガス、炭酸ガス、またはこれらの混合ガスの気流下にて、前記反応温度以上の温度で乾燥させる工程を有する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のエポキシド類の製造方法。
本発明によれば、グリコール類からエポキシド類を生成させる反応における、エポキシド類の選択率を向上させることができる。
本発明において反応器内のガス流中におけるグリコール類の曇点は、同伴ガス流が存在するときのグリコール類のモル濃度から計算される蒸気分圧を示す時の、蒸気圧曲線から求められるグリコール類の温度として得られる値である。常圧におけるモル濃度が100モル%のグリコール類の曇点は、通常そのグリコール類の沸点と同じである。
本発明において触媒の組成は、ICP(誘導結合高周波プラズマ)発光分析法、蛍光X線分析法、原子吸光分析法等により元素分析行うことにより測定できる。
本発明の触媒におけるAOとMOとSiOの含有比率は、該触媒の製造に用いた各原料の仕込み量から算出される含有比率と同じとみなすことができる。
<グリコール類からエポキシド類を製造する方法>
本発明のエポキシド類の製造方法は、触媒の存在下、グリコール類の気相脱水反応により、エポキシド類を製造する方法である。具体的には、触媒が充填された反応器に、グリコール類と、二酸化炭素を含有する同伴ガスとを導入し、所定の反応温度で反応させる反応工程を有する方法である。
触媒は、アルカリ金属(A)を含有する塩を含む触媒、またはアルカリ金属(A)を含有する塩が担体に担持された担持体からなる触媒である。触媒については後述する。
グリコール類は、1,2−グリコールなど、隣り合う2個のメチレン基において、それぞれ1個の水素原子が水酸基に置換したグリコール構造を有する化合物であればよく、特に限定されない。同一分子内に2つ以上のグリコール構造を有してもよい。グリコール類は、沸点が350℃以下のものが常圧で反応する場合はより好ましいが、反応圧力を常圧以下の減圧下で行うことで曇点を下げることが可能であり、限定されるものではない。
具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、プロペングリコール等のアルキレングリコール類;スチレングリコール等のフェニル基を含有するグリコール類;シクロへキセングリコール等の脂環式グリコール類;等があげられる。
生成するエポキシドは、前記グリコール構造の2つの水酸基から脱水反応より生じたエポキシド構造を有する化合物である。
具体例としてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、プロぺンオキシド、スチレンオキシド、シクロへキセンオキシド等が挙げられる。
グリコール類からエポキシド類を製造する反応に用いられる反応装置は特に限定されず、公知の装置を適宜用いることができる。例えば、固定床式または流動床式の装置を好適に用いることができる。該反応はバッチ式でも、連続式でも行うことができる。該反応時の圧力は特に限定されず、加圧下、常圧下、減圧下のいずれでも行うことができる。ただし、加圧することにより原料グリコール類が凝集して反応温度が曇点以下にならないような配慮が必要である。
触媒の使用量は、特に限定されない。しかし、管式連続反応装置の場合は十分な反応時間と線速度を確保するため20mm以上の充填長さ(高さ)が好ましく、50mm以上がより好ましい。生産量に応じて管の断面積と長さは調整可能であるので、十分な反応熱の制御が可能であれば特に制限はしない。また、並列で複数の反応管を並べてもよいし、バッチ式で攪拌機や気流を用いて触媒を流動させてもよい。
本発明において、同伴ガスは二酸化炭素を含有する。ガス状の二酸化炭素(炭酸ガス)、または、二酸化炭素(CO)と不活性ガスとからなる混合ガスが好ましい。不活性ガスとしては窒素ガス、アルゴン、キセノン、ヘリウム等が挙げられる。特に経済性の点で窒素ガスが好ましい。
反応器に、グリコール類と、二酸化炭素を含有する同伴ガスとを導入する際の、二酸化炭素のグリコール類に対する供給割合は、二酸化炭素/グリコール類のモル比で0.1/1以上が好ましく、0.5/1以上がより好ましい。
グリコール類1モルに対して二酸化炭素(CO)を0.1モル以上同伴させることにより、グリコール類からエポキシド類を生成させる反応における、エポキシド類の選択率を向上させることができる。
同伴ガス全体に対する二酸化炭素(CO)の含有量は特に限定されず、1モル%以上100モル%以下とすることができる。炭酸ガスを用いることによる触媒活性向上効果が安定して得られやすい点では、25モル%以上100モル%以下が好ましい。
グリコール類および同伴ガスの流量は、反応器における滞留時間(グリコール類と触媒との接触時間)が所望の値となるように設定される。滞留時間は0.1〜120秒が好ましく、1〜60秒がより好ましい。
同伴ガスの流量は、グリコール類1モルに対して同伴ガスが0.1モル以上であることが好ましい。該同伴ガスの割合が0.1モル以上であると原料ガスの曇点が安定すると同時に、生成ガス中のエポキシドの副反応が抑制されやすく選択率が向上しやすい。同伴ガスの割合の上限は、特に限定されないが、グリコール類1モルに対して100モル以下が好ましく、生成物の回収などの経済性を考えると10モル以下がより好ましい。
反応工程における反応温度は、該反応器内のガス流中における前記グリコール類の曇点以上、かつ500℃以下とする。反応温度がグリコール類の曇点以上であると原料ガス組成が安定し反応時間が安定し選択性も安定する。500℃以下であると反応の副生成物が減少し選択率が向上する。
触媒がアルカリ金属ケイ酸塩である場合の反応温度は180〜400℃が好ましく、200〜350℃がより好ましい。触媒がアルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩の場合の反応温度は180〜350℃が好ましく、200〜330℃がより好ましい。
触媒として、上記複合塩(I)を含む触媒または複合塩(I)が担体に担持された担持体からなる触媒を用いる場合、反応温度が比較的低くても良好な触媒活性が得られるため、省エネルギーで環境にやさしい点で好ましい。この場合の反応温度はグリコール類の曇点以上400℃以下が好ましく、200〜330℃がより好ましい。
反応器の出口から排出される生成ガス中に、反応生成物であるエポキシド類が含まれている。反応生成物の捕集は公知の方法で行うことができる。例えば、生成ガスを、反応生成物が液化するのに充分な温度まで冷却する方法や、生成ガスをガス状のまま公知の精製工程へ供する方法等を用いることができる。
本実施形態によれば、後述の実施例に示されるように、アルカリ金属(A)を含有する塩を含む触媒、またはアルカリ金属(A)を含有する塩が担体に担持された担持体からなる触媒に、グリコール類を接触させる際の同伴ガスとして、二酸化炭素を含有するガスを用いることにより、同伴ガスが不活性ガスのみからなる場合に比べてエポキシド類の選択率を向上させることができる。
かかる効果が得られる理由は明らかではないが、同伴ガス中のCO成分が、触媒のアルカリ金属元素との作用によって触媒上に留まり、グリコール類からエポキシド類を生成する反応における助触媒として働いていると推測される。
<触媒>
本発明における触媒は、グリコール類から、プロピレンオキシド(以下、POと記すこともある。)、エチレンオキシド(以下、EOと記すこともある。)、スチレンオキシドに代表されるエポキシド類を、1段階反応にて生成させる反応に用いられる触媒である。
触媒は、アルカリ金属元素(A)を含有する塩を含む触媒、またはアルカリ金属元素(A)を含有する塩が担体に担持された担持体からなる触媒である。
[アルカリ金属元素(A)を含有する塩を含む触媒]
アルカリ金属元素(A)を含有する塩は、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、または下記のケイ素と金属元素と酸素とを必須成分として含有する複合塩(I)が好ましい。
アルカリ金属元素(A)は触媒の活性点として作用する。アルカリ金属元素はリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムであり、入手のしやすさ、およびプロピオンオキシドの高選択率が得られやすい点でナトリウム、カリウム、セシウムが好ましく、カリウム、セシウムがより好ましい。
[複合塩(I)]
複合塩(I)中の金属元素は、アルカリ金属元素(A)の1種以上と、2価の陽イオンとなる金属元素(M)(以下、単に金属元素(M)とも言う)の1種以上からなる。
プラス2価の価数を有する金属元素(M)は、複合塩を難水溶化し、触媒活性の向上、触媒活性持続性の向上に寄与する。
金属元素(M)は、複合塩を難水溶化し、触媒活性持続性の向上に寄与する。
金属元素(M)は、例えばアルカリ土類金属(カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム)のほか、ベリリウム、マグネシウム、スズ、亜鉛、鉄などの2価の陽イオンとなり得る金属類を用いることができる。金属元素(M)を含有させることにより複合塩を難水溶化する効果が良好に得られやすい点で、アルカリ土類金属、マグネシウム・スズ・亜鉛・鉄が好ましい。その中でも触媒合成の利便性や触媒活性持続の点でカルシウム、バリウム、マグネシウム、スズ、亜鉛がより好ましい。
複合塩(I)は下記組成式(1)で表わされる。
aAO・bMO・SiO…(1)
式(1)において、Aはアルカリ金属元素(A)の1種以上を表し、Mは金属元素(M)の1種以上を表す。
本発明において、組成式(1)は、複合塩(I)の必須成分であるケイ素、アルカリ金属元素(A)、および金属元素(M)の含有比率を、酸化物表記で示したものである。
複合塩(I)は、式(1)に含まれる元素以外に、複合塩(I)の製造に用いた原料に由来する元素を含有してよい。
該触媒(担持体を含まない)中における、「aAO・bMO・SiO」の含有量は、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。
式(1)において、0.15≦a≦1.9、0.1≦b≦1.5、かつa+b≦2である。すなわち、SiOの1モルに対して、AOが0.15モル以上、1.9モル以下であり、MOが0.1モル以上、1.5モル以下、かつAOとMOの合計が2モル以下の割合で存在する。
aが0.15以上であると十分な触媒活性が得られやすい。bが0.1以上かつaが1.9以下であると、金属元素(M)を含有させることによる触媒活性の持続効果が充分に得られやすい。bが1.5以下であると、活性点となるアルカリ金属元素(A)の良好な含有量を確保できる。
複合塩(I)が、ケイ素、アルカリ金属元素(A)、および金属元素(M)以外の元素を含む場合、a+bが2より大きくなり得るが、a+bが2以下であると良好な反応率が得られやすい。
a、bの好ましい範囲は、0.2≦a≦1.7、0.2≦b≦1.0、かつa+b≦2であり、より好ましい範囲は、0.3≦a≦1.5、0.3≦b≦0.8、かつa+b≦2である。
[担持体からなる触媒]
アルカリ金属元素(A)を含有する塩を担体に担持させた担持体における担体は、公知の触媒担体から適宜選択して用いることができる。具体例としては、珪藻土などの粘土鉱物類を乾燥したもの、シリカ、モレキュラーシーブス、アルミナ、ジルコニア、活性炭等が挙げられる。
ケイ素と金属元素と酸素とを含有する複合塩(I)が、担体に担持された担持体は、複合塩(I)がケイ素を含まない担体に担持された担持体(II)、またはケイ素と金属元素と酸素とを含有する複合塩がケイ素を含む担体に担持された担持体(III)のいずれかである。
[ケイ素を含まない担体に担持された担持体(II)]
担持体(II)は、ケイ素と金属元素と酸素とを必須成分とする複合塩が担体に担持されたものであり、該担体はケイ素を含まない。かかる担体は公知の触媒担体から適宜選択して用いることができる。具体例としては岩塩などのケイ素を含有しない粘土鉱物類を乾燥したもの、アルミナ、ジルコニア、活性炭等が挙げられる。
担持体(II)における複合塩は、好ましい態様も含めて前記複合塩(I)と同じである。
担持体(II)における担体の含有量は、複合塩1質量部に対して0.5〜100質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。
[ケイ素を含む担体に担持された担持体(III)]
担持体(III)は、ケイ素と金属元素と酸素とを必須成分とする複合塩が担体に担持されたものであり、該担体はケイ素を含む。ケイ素を含む担体の具体例としては珪藻土などのケイ酸含有粘土鉱物類を粉砕乾燥したもの、シリカ、シリカゲル、モレキュラーシーブス、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
担持体(III)において、ケイ素と金属元素と酸素とを必須成分とする複合塩を構成しているケイ素には、複合塩の製造に用いた原料に由来するケイ素の他に、担体中のケイ素も含まれる。複合塩と担体とが接すると、担体中のケイ素が複合塩に作用すると考えられる。
なお、担体中に2価の陽イオンとなる金属元素が存在しても、該金属元素は複合塩に作用しないので、複合塩を構成する金属元素(M)に含めない。また、担体中にアルカリ金属元素が微量(例えばシリカゲルなどには金属ナトリウムなどが1質量%以下)含まれている場合があるが、複合塩を構成するアルカリ金属元素(A)には含めない。
担持体(III)において、担体中のケイ素は金属元素に対して十分に多く存在する。したがって担持体(III)における複合塩は、アルカリ金属元素(A)と金属元素(M)の含有比率が、酸化物表記で、MOに対するAOの組成比(AO/MOのモル比)が0.1以上、19.0以下を満たせばよい。このモル比の範囲は、複合塩(I)におけるa/bの範囲と同じである。
<触媒の製造方法>
アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩は、市販品から入手可能である。これらの化合物を反応器に充填して反応工程に供する。
アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属炭酸塩、またはアルカリ金属炭酸水素塩を担体に担持させた担持体は、公知の方法により製造できる。
複合塩(I)は下記第1〜3の方法により製造できる。複合塩(I)を担体に担持させた担持体は、下記第4の方法により製造できる。
[第1の方法:複合塩(I)の製造方法]
複合塩(I)は、ケイ素源およびアルカリ金属元素(A)源としてアルカリ金属ケイ酸塩を用い、金属元素(M)源としてM(OH)もしくはMX2/nで示される二価金属塩を用い、これらを水性媒体中で反応させて難水溶性の複合塩を生成する方法で製造することができる。上記Xは、ハロゲン原子、硫酸根、硝酸根、クロム酸根、リン酸根、乳酸根、グルコン酸根、およびクエン酸根からなる群から選ばれる1種以上であり、nはXの価数の絶対値を表す。酸根とは、酸の分子から1個以上の水素原子を除いた原子団を意味する。
具体的には、アルカリ金属ケイ酸塩を含む水溶液に、M(OH)またはMX2/nの水溶液を添加して、複合塩を含有する水分散液を得、該水分散液を乾燥させて(乾燥工程)、触媒を製造する。M(OH)とMX2/nを併用してもよい。
アルカリ金属元素(A)源として、前記アルカリ金属ケイ酸塩のほかに、KOHなどのアルカリ金属水酸化物を用いることが好ましい。アルカリ金属水酸化物を用いると活性点として作用するアルカリ金属元素(A)の含有量を制御しやすい点で好ましい。アルカリ金属水酸化物は前記アルカリ金属ケイ酸塩を含む水溶液に含有させることができる。
ケイ素源としてはアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を用いることが好ましい。
各原料の添加量は、仕込み比率が前記式(1)を満たすように設定される。
M(OH)またはMX2/nの水溶液は滴下によりアルカリ金属ケイ酸塩水溶液に添加することがより好ましい。
本方法において、金属元素(M)源としてMX2/nを用いた場合、金属元素(M)が難水溶性の複合塩の形成に消費され、残ったXがアルカリ金属(A)と水溶性の塩(AnX、nはXの価数の絶対値を表す。)を形成する。したがって仕込み比率には、AO・bMO・SiOの他にAnXが含まれる。AnXは水溶性の塩となるため、難溶性の複合塩から奪われるアルカリ金属(A)を、アルカリ金属水酸化物を用いて補充することが好ましい。例えば、MX2/nを添加する工程よりも前、または該工程の後に、アルカリ金属水酸化物を添加して、複合塩中のアルカリ金属元素(A)を調整することが好ましい。
乾燥工程では、150℃以下の、減圧下または常圧の雰囲気中で、水分を除去して水分含有量が0〜30質量%の固体触媒を得る。
前記減圧下または常圧の雰囲気中で水分を除去する際の雰囲気圧力は0.0001〜0.2MPa絶対単位の範囲が好ましく、0.0001〜0.15MPa絶対単位(真空を0MPaとして常圧は0.1013MPaとする)がより好ましい。
また、上記の乾燥工程で得た固体触媒をグリコール類からエポキシド類を生成する反応に用いる際に、大気中、不活性ガス、炭酸ガス、またはこれらの混合ガスの気流下にて、グリコール類からエポキシド類を生成する反応の反応温度以上の温度でさらに乾燥させることが好ましい。この工程は、反応器に固体触媒を充填する前に行ってもよく、または充填してから行ってもよい。グリコール類を脱水反応する反応時に触媒活性が安定しやすい点で、反応器に固体触媒を充填した後にガスを流通させながら乾燥させることがより好ましい。流通させるガスは、不活性ガス、炭酸ガス、またはこれらの混合ガスであることがさらに好ましい。
この反応温度以上の温度で乾燥させる工程における乾燥温度の上限は特に限定されないが、複合塩(I)は400℃以下の低温で乾燥させても良好な触媒活性が得られる。省エネルギーで環境への負荷が少ない点で、該乾燥温度を400℃以下とし、反応温度をそれより低く設定することが好ましい。
後述の実施例に示されるように、該反応温度以上で乾燥させる工程の雰囲気ガスが炭酸ガス、または炭酸ガスと不活性ガスの混合ガスであると、触媒活性がより向上する。雰囲気ガス中の炭酸ガスが触媒中のアルカリ金属を炭酸塩化すると考えられる。
炭酸ガスと不活性ガスの混合ガスを用いる場合、該混合ガスに対する炭酸ガスの含有量は特に限定されないが、炭酸ガスを用いることによる触媒活性向上効果が良好に得られやすい点では、複合塩中のアルカリ金属元素(A)1モルに対して、炭酸ガスを0.1モル以上さらに好ましくは1以上の炭酸ガス絶対量を流通させることが好ましい。
反応温度以上の温度で乾燥させる方法は、特に限定されないが、例えば電気炉や熱媒槽等を用いて反応器ごと加熱する方法が好ましい。乾燥時に前記反応温度以上で加熱することにより、反応温度での触媒活性の変動が抑制されやすい。また本発明における複合塩は、乾燥温度が400℃以下の比較的低温であっても良好な触媒活性が得られるため、省エネルギーで環境にやさしい。
前記反応温度以上の温度で乾燥させる時間は、特に限定されないが30分〜12時間程度が好ましく、1〜5時間程度が触媒活性の安定化と省エネルギーの面でより好ましい。
該反応温度以上の温度で乾燥させる前に、必要に応じて、該反応温度より低い温度で加熱乾燥してもよい。
[第2の方法:複合塩(I)の製造方法]
本方法が第1の方法と大きく異なる点は、アルカリ金属ケイ酸塩を含む水溶液に、M(OH)またはMX2/nの水溶液を添加して、難水溶性の複合塩を生成させるところまでは第1の方法と同様に行うが、その後、さらにアルカリ金属元素(A)源としてアルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩を添加し、反応させて複合塩を生成させる点である。この製造方法によると、アルカリ金属、2価の陽イオンとなる金属、ケイ素、および炭酸根(CO)を含有する複合塩が得られる。
すなわち、アルカリ金属ケイ酸塩を含む水溶液に、M(OH)またはMX2/nの水溶液を添加して反応液を得る工程と、該反応液にアルカリ金属炭酸塩の水溶液またはアルカリ金属炭酸水素塩の水溶液を滴下して、複合塩を含有する水分散液を得る工程と、該水分散液を乾燥させて(乾燥工程)、触媒を製造する。
アルカリ金属炭酸塩の水溶液またはアルカリ金属炭酸水素塩の水溶液は滴下により添加することが好ましい。
本方法においても各原料の添加量は、仕込み比率が前記式(1)を満たすように設定される。
本方法において、仕込み比率には、AO・bMO・SiOの他にAnXおよびCOが含まれる。触媒中にかかるアルカリ金属の炭酸塩または炭酸水素塩に由来するCO存在すると、グリコール類からエポキシド類を生成する反応における選択率が向上しやすい。
乾燥工程は第1の方法と同様である。
[第3の方法:複合塩(I)の製造方法]
本方法が第2の方法と異なる点は、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩を、M(OH)またはMX2/nの水溶液を添加する前の、アルカリ金属ケイ酸塩を含む水溶液に添加する点である。
その他は第2の方法と同様に行うことができる。
複合塩の難溶性がより安定化しやすい点では第2の方法が好ましく、グリコール類からエポキシド類を生成する反応における選択率を安定的に向上しやすい点では第3の方法が好ましい。
[第4の方法:担持体(II)または担持体(III)の製造方法]
担持体(II)または担持体(III)は、第1または第2の方法において、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に担体を投入した後に、前記M(OH)またはMX2/nの水溶液を添加したのち、水分を除去し乾燥(乾燥工程)する方法、
第3の方法において、アルカリ金属ケイ酸塩を含む水溶液に担体を投入した後、アルカリ金属炭酸塩の水溶液またはアルカリ金属炭酸水素塩の水溶液を添加したのち、水分を除去し乾燥(乾燥工程)する方法、または
第1、第2、または第3の方法において、複合塩を含有する水分散液を得た後、アルカリ金属水酸化物および担体を投入し、必要に応じて前記M(OH)またはMX2/nの水溶液を添加したのち、水分を除去し乾燥(乾燥工程)する方法で製造できる。
また、上記乾燥工程を経て得られた担持体(II)または担持体(III)を、グリコール類からエポキシド類を精製する反応に用いる際に、大気中、不活性ガス、炭酸ガス、またはこれらの混合ガスの気流下にて、グリコール類からエポキシド類を精製する反応の反応温度以上の温度でさらに乾燥させることが好ましい。この工程は、反応器に担持体(II)または担持体(III)からなる触媒を充填する前に行ってもよく、また充填してから行ってもよい。グリコール類を脱水反応する反応時に触媒活性が安定しやすい点で、反応器に充填した後にガスを流通させながら乾燥させることがより好ましい。流通させるガスは、不活性ガス、炭酸ガス、またはこれらの混合ガスであることがさらに好ましい。
この反応温度以上の温度で乾燥させる工程における乾燥温度の上限は特に限定されないが、400℃以下の低温で乾燥させても良好な触媒活性が得られる。省エネルギーで環境への負荷が少ない点で、該乾燥温度を400℃以下とし、反応温度をそれより低く設定することが好ましい。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
下記の例において、グリコール類からエポキシド類を製造する反応は以下の方法で行った。
反応器としては、外径3/8インチ、厚さ1mm、長さ200mmのSUS316L製のチューブの、長さ方向の中央部に、外径1/8インチ、厚さ0.028インチ、長さ500mmのSUS316L製の鞘管を取り付けたものを用いた。反応器は、定温に制御可能な電気炉(長さ300mmの長筒状電気炉、内部実行長さ250mm長)で加熱されるようになっている。
反応器の入口には外径1/4インチ、厚さ1mmのSUS316L製のチューブ配管(入口配管)が接続されている。該入口配管にはリボンヒーターが巻かれ、所定の温度に加熱できるようになっている。該入口配管には1/4インチT継ぎ手を介してグリコール類を導入できるようになっている。
反応器の出口には外径1/4インチ1mm厚のSUS316L製のチューブ配管(出口配管)が接続されている。該出口配管には1/4インチT継ぎ手を介してガスサンプリング部が設けられている。
まず、触媒が充填された反応器、および入口配管を所定の温度に加熱し、入口配管にマスフローコントローラーを介して同伴ガスを導入した。反応器と入口配管の温度が安定した後、入口配管に1/4インチT継ぎ手を介して、ポンプで流量制御したグリコール類を導入して気化させ、反応器にグリコールガスを同伴ガスとともに導入してグリコール類からエポキシド類を製造する反応を行った。
下記の例で用いた触媒原料は以下の通りである。
・ケイ酸カリウム水溶液:KO含有量8質量%、SiO含有量19.5質量%含有。
・KOHペレット試薬:KOH含有量85質量%。
・炭酸水素カリウム水溶液:KHCO含有量1mmol/g。
・塩化カルシウム水溶液:CaCl含有量2mmol/g。
・水酸化カルシウム水溶液:Ca(OH)含有量0.02mmol/g。
反応器内の触媒を乾燥させる工程において、電気炉の中心温度を乾燥温度とした。エポキシド類の製造工程において、電気炉の中心温度を反応温度とした。
滞留時間は、グリコールガスと触媒との接触時間を意味し、下記の方法で求めた値である。
反応器において、触媒が充填されている部分(反応長)に存在する空間の体積Vを、触媒充填量w、触媒比重ρ、および触媒が充填されている部分(反応長)の体積V0より、V=V0−w×ρ(ml)として算出する。
原料はすべて理想気体とみなして、モル流量と反応温度より体積流量s(ml/sec)を計算し、通過時間=V/s(sec)を求める。
以下の例において触媒比重はシリカの比重と同じとみなした。
反応成績として、反応率と選択率を評価した。反応率は供給したグリコール類に対する、反応に消費されたたグリコール類の割合(単位:質量%)である。選択率は反応生成物の全体に対する、生成した目的化合物の割合(単位:質量%)である。
反応率の測定方法:出口ガスをガスクロマトグラフィーで分析し、該出口ガスに含まれる各化合物の含有比率(モル%)を求め、供給したグリコール類に対する、反応に消費されたグリコール類の割合を反応率として求めた。
選択率の測定方法:上記の各化合物の含有比率(モル%)より、未反応のグリコール類以外の生成物合計を100モル%とした時の、エポキシド類(目的化合物)の生成量の割合(モル%)を選択率として求めた。
[実施例1]
炭酸カリウムを反応器に13.13g充填し130mm反応長(充填高さ)とした。これを長さ300mmの長筒状電気炉にいれて、窒素気流下(流量:30ml/min)にて120℃にて1時間保持した後、350℃(乾燥温度、以下同様。)で2時間保持して乾燥させた。こうして乾燥触媒が充填された反応器を得た。
得られた反応器を325℃(反応温度、以下同様。)に制御しつつ、プロピレングリコールを0.0682mmol/minで流し、炭酸ガスをその4倍モル量で流し、滞留時間を14秒に調整した。すなわち、反応器に供給される二酸化炭素/プロピレングリコールのモル比は4/1である。反応器内のガス流中におけるプロピレングリコールの曇点(以下同様。)は常圧の1/5の蒸気圧分率を示す時のプロピレングリコールの温度であり、約145℃である。プロピレングリコールを流し始めた時点を反応開始時とし(以下同様。)、反応開始から3時間後の安定した状態で、反応率30%、PO(プロピレンオキシド)選択率71%であった。
主な反応条件と反応成績を表1に示す(以下、同様)。
[実施例2]
実施例1において反応温度を350℃に変更した。そのほかは実施例1と同じ条件で反応を行ったところ、反応率42%、PO選択率72%であった。
[比較例3]
実施例1において、反応工程における同伴ガスを、プロピレングリコールに対して4倍モル量の窒素ガスに変更した。そのほかは実施例1と同じ条件で反応を行ったところ、反応率29%、PO選択率58%であった。
[実施例4]
実施例1において触媒を炭酸水素カリウムの13.13gに変更し、反応温度を300℃に変更した。そのほかは実施例1と同じ条件で反応を行ったところ、反応率26%、PO選択率74%であった。
[比較例5]
実施例3において、反応工程における同伴ガスを、プロピレングリコールに対して4倍モル量の窒素ガスに変更した。そのほかは実施例3と同じ条件で反応を行ったところ、反応率23%、PO選択率63%であった。
Figure 0006036157
表1に示されるように、触媒として炭酸カリウムを用いた場合、同伴ガスが窒素ガスである比較例3に比べて、炭酸ガスを同伴ガスとした実施例1は選択率が向上した。反応率も向上した。
実施例1より反応温度を高くした実施例2は、実施例1よりも反応率および選択率がいずれも向上した。
触媒として炭酸水素カリウムを用いた場合も、同伴ガスが窒素ガスである比較例5に比べて、炭酸ガスを同伴ガスとした実施例4は選択率が向上した。反応率も向上した。
[実施例11]
本例では仕込み比率0.5KO・0.5CaO・SiOで複合塩を製造した。
(複合塩を含有する水分散液を得る工程)
2000mlガラス製ビーカーに20.86gのケイ酸カリウム溶液と、2.14gのKOHペレットを加え、外周50mmの6枚ばねディスクタービン翼を用いて400rpm回転数にて攪拌混合した。これに水酸化カルシウム水溶液の1692.5gを15分かけて滴下して難水溶性の塩を析出させ、さらに30分混合して複合塩の水分散液を得た。
得られた複合塩の水分散液を16時間静置した後に上澄みを除去して、809.72gの沈降液(複合塩の水分散液)を得た。
(乾燥工程)
得られた沈降液(複合塩の水分散液)を500mlガラス製なす型フラスコに移し、エバポレーターを用いて80℃、5mmHg(658Pa)で2時間真空乾燥させて8.22gの固体触媒を得た。
この固体触媒を反応器に6.05g充填し80mm反応長(充填高さ)とした。これを長さ300mmの長筒状電気炉にいれて、窒素気流下(流量:30ml/分)にて120℃で1時間保持した後、350℃(乾燥温度、以下同様)で2時間保持して乾燥させた。こうして乾燥触媒が充填された反応器を得た。
(プロピレンオキシドの製造)
得られた反応器を290℃に制御しつつ、プロピレングリコールを0.1591mmol/minで流し、炭酸ガスをその2倍モル量で流し、滞留時間を12秒に調整した。すなわち、反応器に供給される二酸化炭素/プロピレングリコールのモル比は2/1である。反応器内のプロピレングリコールの曇点は、実施例1と同様に計算され約155℃である。反応開始から3時間後の安定期の反応成績(反応率および選択率)を測定した。結果を表2に記載する(以下同様)。
[比較例12]
実施例11における同伴ガスをプロピレングリコールに対して2倍モル量の窒素ガスに変更した。それ以外は実施例11と同様に行った。
[実施例13]
(エチレンオキシドの製造)
実施例11と同様にして乾燥触媒が充填された反応器を得た。得られた反応器を290℃に制御しつつ、エチレングリコールを0.1591mmol/minで流し、炭酸ガスをその2倍モル量で流し、滞留時間を12秒に調整した。すなわち、反応器に供給される二酸化炭素/エチレングリコールのモル比は2/1である。エチレングリコールの曇点は実施例1と同様に計算され約155℃である。反応開始から3時間後の安定期の反応成績(反応率および選択率)を測定した。
[比較例14]
実施例13における同伴ガスをエチレングリコールに対して2倍モル量の窒素ガスに変更した。それ以外は実施例13と同様に行った。
Figure 0006036157
表2に示されるように、反応温度290℃でプロピレンオキシドを製造する場合、または反応温度273℃でエチレンンオキシドを製造する場合のいずれにおいても、同伴ガスが窒素ガスである比較例12,14に比べて、炭酸ガスを同伴ガスとした実施例11、13の方が選択率が向上した。
[比較例21、実施例22、比較例23]
本例では、球状シリカ(AGCSIテック社製、製品名:H−201)を担体として用い、担持体からなる触媒を製造した。
本例における複合塩の、担体を含まない仕込み比率は1.5KO・1CaO・SiO・2KCl、担体を含む仕込み比率は1.5KO・1CaO・3SiO・2KClであり、CaOに対するKOのモル比は1.5である。
(複合塩を含有する水分散液を得る工程)
300mlポリプロピレン製ビーカーに15.41gのケイ酸カリウム溶液と、1.57gのKOHペレットと、83.77gの水を加え、外周50mmの6枚ばねディスクタービン翼を用いて300rpm回転数にて攪拌混合した。これに塩化カルシウム水溶液の12.5gを15分かけて滴下して難水溶性の塩を析出させて、さらに30分混合した。これにKOHペレットの13.2gのと、球状シリカの6.01g加え、外周50mmの6枚ばねディスクタービン翼を用いて300rpm回転数にて攪拌混合した。この後、塩化カルシウム水溶液の12.5gを15分かけて滴下して難水溶性の塩を析出させ、さらに30分混合して、複合塩がケイ素を含む担体に担持された担持体を含有する水分散液を得た。
(乾燥工程)
得られた水分散液を500mlガラス製なす型フラスコに移し、エバポレーターを用いて80℃、5mmHg(658Pa)で2時間真空乾燥させて固体触媒を得た。この固体触媒を反応器に11.06g充填し140mm反応長とした。これを長さ300mmの長筒状電気炉にいれて、窒素気流下(流量:30ml/min)にて120℃にて1時間保持した後、350℃で2時間保持して乾燥させた。こうして乾燥触媒が充填された反応器を得た。(プロピレンオキシドの製造)
得られた反応器を330℃に制御しつつ、プロピレングリコールを0.2046mmol/minで流した。
本例では同伴ガスを切り替えながら反応成績の測定を行った。主な反応条件と結果を表3に記載する。
まず、同伴ガスとして窒素をプロピレングリコールに対して2倍モル量で流し、滞留時間を6.5秒に調整した。プロピレングリコールの曇点は約155℃である。反応開始から3時間後の安定期の反応成績を比較例21の結果として測定した。
続いて、反応開始から4時間経過後に同伴ガスを同流量の炭酸ガス(CO)に切り替え、滞留時間を6.5秒に調整した。すなわち、反応器に供給される二酸化炭素/プロピレングリコールのモル比は2/1である。切り替えてから3時間後(反応開始から7時間後)の安定期の反応成績を、実施例22の結果として測定した。
続いて、反応開始から8時間経過後に、同伴ガスを再び同流量の窒素ガスに切り替え、滞留時間を6.5秒に調整した。切り替えてから3時間後(反応開始から11時間後)の安定期の反応成績を、比較例23の結果として測定した。
表にはガスを切り替えてからの経過時間を記載する。
[実施例24、比較例25]
比較例21の乾燥工程において、長筒状電気炉内で加熱乾燥する際の雰囲気ガスを炭酸ガスに変更した。すなわち、比較例21と同様にして固体触媒を得、これを反応器に9.86g充填し、140mm反応長とした。これを長さ300mmの長筒状電気炉にいれて、炭酸ガス気流下(流量:30ml/min、複合塩中のカリウム(K)1モルに対して二酸化炭素(CO)は約6モルに相当)にて120℃で1時間保持した後、350℃で2時間保持して乾燥させた。こうして乾燥触媒が充填された反応器を得た。
(プロピレンオキシドの製造)
得られた反応器を330℃に制御しつつ、プロピレングリコールを0.2046mmol/minで流した。
本例では同伴ガスを切り替えながら反応成績の測定を行った。主な反応条件と結果を表3に記載する。
まず、同伴ガスとして炭酸ガスをプロピレングリコールに対して2倍モル量で流し、滞留時間を6.5秒に調整した。すなわち、反応器に供給される二酸化炭素/プロピレングリコールのモル比は2/1である。プロピレングリコールの曇点は約155℃である。反応開始から3時間後の安定期の反応成績を実施例24の結果として測定した。
続いて、反応開始から4時間経過後に同伴ガスを同流量の窒素ガスに切り替え、滞留時間を6.5秒に調整した。切り替えてから3時間後(反応開始から7時間後)の安定期の反応成績を、比較例25の結果として測定した。
表にはガスを切り替えてからの経過時間を記載する。
Figure 0006036157
表3に示されるように、本発明の複合塩をシリカに担持させた担持体を触媒として用いた場合、同伴ガスが窒素ガスである比較例21、23に比べて、同伴ガスが炭酸ガスである実施例22の方が、選択率が高い。また同伴ガスが窒素ガスである比較例25に比べて、同伴ガスが炭酸ガスである実施例24の方が、選択率が高い。
また、比較例23、25のように、同伴ガスを炭酸ガスから窒素ガスに切り替えると選択率が低下することから、同伴ガスが炭酸ガスであるとき、CO成分は触媒を変質させずに触媒上に留まり、グリコール類からエポキシド類を生成する反応における助触媒として働くと推測される。そして、同伴ガスが窒素ガスに切り替わると、触媒上に留まっていたCO成分が除去されると考えられる。
また、例21〜23と例24、25とを比べると、乾燥時に炭酸ガスと接触させた例24、25の方が、プロピレンオキシド選択率が高い。
[比較例31]
特開昭59−170083号公報(特許文献1)に記載の実施例1の触媒を製造した。
市販のケイ酸カリウム粉末(KO・SiO)を用い、空気中にて450℃加熱を12時間実施した後、0.5〜2.8mm篩分けして触媒を得た。これを反応器に5.02g充填し80mm反応長とした。
これを長さ300mm長筒状電気炉にいれ、反応器を398℃に制御しつつ、プロピレングリコールを1.5345mmol/minで流し、同伴ガスとして窒素ガスをその2倍モル量で流し、滞留時間を1.2秒に調整した。
反応開始から1時間後の反応率は82%、PO選択率は81%と高かったが、20時間後の値は反応率79%、選択率64%であった。
主な条件と結果を表4に示す(以下、同様。)。
[比較例32]
比較例31において、プロピレングリコール1.5345mmol/minに代えて、プロピレングリコール/酢酸=38モル/1.5モルの混合物を1.5345mmol/minで流し、同伴ガスとして窒素ガスをその2倍モル量で流し、滞留時間を1.2秒に調整した。反応開始から22時間後の反応率は89%、PO選択率は64%であった。
[実施例33]
実施例33は比較例32の反応プロセスに引続いて、以下の操作を行った。比較例31の条件でプロピレングリコールと、同伴ガスとして窒素ガスを流した後、比較例31における同伴ガスをプロピレングリコールに対して2倍モル量の炭酸ガスに変更した。それ以外は比較例31と同様に行った。
Figure 0006036157
表4に示されるように、触媒としてケイ酸カリウムを用いた場合、同伴ガスが窒素ガスである比較例31では、初期の選択率は良好であるが、20時間後における選択率が低い。
比較例32は、特開昭59−170082号公報(特許文献2)に記載されているように、プロピレングリコールを酢酸とともに、窒素ガスと同伴させた例であるが、選択率は低い。なお、比較例32における反応率は、酢酸との反応に消費されたプロピレングリコールも含まれるため見かけ上高くなっている。
実施例33で用いた触媒は、比較例32の試験を行った後の劣化した触媒であるが、炭酸ガスを同伴ガスにすると酢酸を加えた比較例32よりも、選択率が向上する。

Claims (6)

  1. 触媒の存在下、グリコール類の気相脱水反応により、エポキシド類を製造する方法であって、前記触媒が、アルカリ金属(A)を含有する塩を含む触媒、またはアルカリ金属(A)を含有する塩が担体に担持された担持体からなる触媒であり、触媒が充填された反応器に、グリコール類と、二酸化炭素を含有する同伴ガスとを導入し、該グリコール類の曇点以上500℃以下の反応温度で反応させることを特徴とするエポキシド類の製造方法。
  2. 反応器に導入する二酸化炭素の、グリコール類に対する供給割合が、二酸化炭素/グリコール類のモル比で0.1/1以上である請求項1に記載のエポキシド類の製造方法。
  3. 前記アルカリ金属(A)を含有する塩が、下記組成式(1)で表わされる複合塩である、請求項1記載のエポキシド類の製造方法。
    aAO・bMO・SiO…(1)
    [式中、Aはアルカリ金属の1種以上を表し、Mは2価の陽イオンとなる金属の1種以上を表し、0.15≦a≦1.9、0.1≦b≦1.5、a+b≦2である。]
  4. 前記触媒が、ケイ素を含む担体に、ケイ素と金属と酸素とを含有する複合塩が担持された担持体からなり、
    前記金属が、アルカリ金属(A)の1種以上と、2価の陽イオンとなる金属(M)の1種以上からなり、
    前記アルカリ金属(A)と前記金属(M)の含有比率を酸化物で示したAO/MOの組成比が、0.1以上、19.0以下である、請求項1記載のエポキシド類の製造方法。
  5. 前記アルカリ金属(A)を含有する塩がアルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属炭酸塩、またはアルカリ金属炭酸水素塩からなる、請求項1記載のエポキシド類の製造方法。
  6. 前記反応工程の前に、前記触媒を乾燥させる乾燥工程を有し、
    該乾燥工程が、前記反応器に触媒を充填して、不活性ガス、炭酸ガス、またはこれらの混合ガスの気流下にて、前記反応温度以上の温度で乾燥させる工程を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエポキシド類の製造方法。
JP2012232054A 2012-10-19 2012-10-19 エポキシド類の製造方法 Active JP6036157B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012232054A JP6036157B2 (ja) 2012-10-19 2012-10-19 エポキシド類の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012232054A JP6036157B2 (ja) 2012-10-19 2012-10-19 エポキシド類の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014084279A JP2014084279A (ja) 2014-05-12
JP6036157B2 true JP6036157B2 (ja) 2016-11-30

Family

ID=50787686

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012232054A Active JP6036157B2 (ja) 2012-10-19 2012-10-19 エポキシド類の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6036157B2 (ja)

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA1231957A (en) * 1983-03-09 1988-01-26 Robert G. Gastinger Method for the manufacture of epoxides from 1,2- glycols
CA1231956A (en) * 1983-03-09 1988-01-26 Robert G. Gastinger Method for the manufacture of epoxides from 1,2- glycols
US4703027A (en) * 1986-10-06 1987-10-27 Texaco Inc. Molybdenum/alkali metal/ethylene glycol complexes useful as epoxidation catalysts
CA2051593A1 (en) * 1990-09-20 1992-03-21 Stephen Wayne King Process for the preparation of cyclic ethers

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014084279A (ja) 2014-05-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4267015B2 (ja) エチレンオキシド製造用触媒およびエチレンオキシドの製造方法
KR101790254B1 (ko) 에폭시화 스타트업 방법
TWI374773B (en) Process for the production of an olefin oxide
US10799856B2 (en) Ferrite-based catalyst, preparation method therefor, and method for preparing butadiene using same
TWI333951B (en) Method of improving the operation of a manufacturing process
TW200530212A (ja)
JP3005647B2 (ja) 光触媒及びその製造方法とそれを用いた水素の製造方法
JP2014517827A5 (ja)
TW201217350A (en) Improved EO process control
JP2008105006A (ja) 二酸化炭素吸収材、二酸化炭素分離装置および改質装置
JP6432527B2 (ja) トリフルオロエチレンの製造方法
JP6036157B2 (ja) エポキシド類の製造方法
JP6024378B2 (ja) 触媒、触媒の製造方法、およびエポキシド類の製造方法
KR101987482B1 (ko) 알킬 메타크릴레이트의 제조 방법
JP5143610B2 (ja) エチレンオキシド製造用触媒の製造方法
KR20200022398A (ko) 화학 축열재와 그 제조 방법, 및 화학 열 펌프와 그 운전 방법
JP5570277B2 (ja) エチレンオキシド製造用触媒およびエチレンオキシドの製造方法
JP2011236146A (ja) 炭酸ジアリールの製造方法およびポリカーボネートの製造方法
CN1120050C (zh) 一种乙二醇单醚或二乙二醇单醚的合成方法
JP5563937B2 (ja) 塩素の製造方法
JP2017124366A (ja) アンモニア分解用触媒、及び当該触媒を用いた水素の製造方法
JPH04338393A (ja) アルコキシシランの製造方法
JP4895251B2 (ja) メタクリル酸エステル製造用触媒の製造方法
JP2013234138A (ja) オキシラン化合物の製造方法
CN103360345B (zh) 一种高效银催化剂催化乙烯氧化制环氧乙烷的方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150820

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160628

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20160824

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161004

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20161017

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6036157

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250