ところが、従来のワーク吸着装置には、以下の解決すべき問題点が存在する。すなわち、従来のワーク吸着装置では、保持ヘッドから減圧ポンプに向かって吸引される空気に含まれている液体を第1タンクにおいて空気から分離させると共に、第1タンク内に一定量の液体が貯液されたときに、この液体を第1タンクから第2タンクに移送させた後に第2タンクから装置の外部に排水する構成が採用されている。この場合、従来のワーク吸着装置では、前述したように、三方弁(連結ライン)を介して第2タンクをバッファタンクに連通させて第2タンク内を真空状態にすることで、第1タンクから第2タンクに液体を短時間で移送させようとしている。
このため、従来のワーク吸着装置では、三方弁を介して第2タンクをバッファタンクに連通させたときに第2タンク内を瞬時に真空状態とする(第2タンク内の真空圧を短時間で低下させる)ために、バッファタンクの容量を第2タンクの容積よりも大容量とする(具体的には、第2タンクの容量:500mlに対し、バッファタンクの容量:30lとする)構成が採用されている。したがって、従来のワーク吸着装置では、大容量の大きなバッファタンクを必要とする分だけ、装置の小型化が困難となっているという問題点がある。
また、従来のワーク吸着装置では、第2タンクとバッファタンクとを連通させて第2タンク内を真空状態とすることで第1タンクから第2タンクに液体をスムーズに移動させようとしている。しかしながら、第2タンクに移動させるべき液体が貯液されている第1タンクは、減圧ラインを介してバッファタンクに連通させられているため、従来のワーク吸着装置では、第2タンク内の空気をバッファタンクに吸引して第2タンク内を真空状態にしたとしても、第2タンク内の真空圧が第1タンク内の真空圧よりも高くなる(第1タンク内の真空圧が第2タンク内の真空圧よりも低くなる)ことはない。
それどころか、従来のワーク吸着装置では、バッファタンクと連結するための連結ラインに配設された三方弁の存在に起因する圧損が生じ、これにより、第2タンク内の真空圧がバッファタンク内の真空圧よりも低くなる(第1タンク内の真空圧の方が第2タンク内の真空圧よりも高い状態となる)分だけ、減圧ラインを介してバッファタンクに直接連通させられていている第1タンク内の真空圧よりも第2タンク内の真空圧の方が低くなる傾向がある。したがって、従来のワーク吸着装置では、真空圧が高い第1タンク(気液分離槽)から真空圧が低い第2タンク(貯液槽)に液体をスムーズに移送させるのが困難となっているという問題点もある。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、小型化を図りつつ、気液分離槽内の液体を気液分離槽から貯液槽にスムーズに移送し得る気液分離装置および吸引システムを提供することを主目的とする。
上記目的を達成すべく、請求項1記載の気液分離装置は、吸引装置によって気体を吸引する吸引対象と当該吸引装置との間に配設されて当該吸引対象から当該吸引装置に吸引される当該気体に含まれている液体を分離させて除去する気液分離装置であって、前記吸引対象から前記吸引装置に吸引される前記気体が通過可能に第1の配管を介して当該吸引対象に接続され、かつ第2の配管を介して当該吸引装置に接続された気液分離槽と、第3の配管を介して前記気液分離槽に接続されると共に当該気液分離槽において前記気体から分離された前記液体を貯液可能に構成された貯液槽と、前記第3の配管に配設されて前記気液分離槽から前記貯液槽への前記液体の流入の許容および規制を実行する第1の開閉弁と、前記貯液槽に接続されて当該貯液槽からの前記液体の排出の許容および規制を実行する第2の開閉弁と、前記気液分離槽に接続されて当該気液分離槽内への大気の導入の許容および規制を実行する第3の開閉弁と、前記貯液槽に接続されて当該貯液槽内への大気の導入の許容および規制を実行する第4の開閉弁と、前記第1の配管、前記第2の配管および前記気液分離槽のうちの少なくとも1つと前記貯液槽とを相互に接続する第4の配管に配設されて当該貯液槽内に導入された大気の前記吸引装置に向かっての吸引の許容および規制を実行する第5の開閉弁と、前記第1の開閉弁の開閉動作、前記第3の開閉弁の開閉動作、および前記第5の開閉弁の開閉動作を少なくとも制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記各開閉弁が閉塞されている状態において予め規定された第1の条件が満たされたときに予め規定された第1の時間に亘って前記第5の開閉弁を開口制御することで前記貯液槽内の大気を前記吸引装置に向かって吸引させて当該貯液槽内を真空状態とする第1の処理と、予め規定された第2の条件が満たされたときに予め規定された第2の時間に亘って前記第3の開閉弁を開口制御することで前記気液分離槽内に大気を導入させて当該気液分離槽内の真空圧を低下させ、かつ予め規定された第3の時間に亘って前記第1の開閉弁を開口制御することで前記気液分離槽から前記貯液槽に前記液体を流入させる第2の処理とを繰り返して実行する。
なお、本明細書においては、「大気圧よりも低い圧力(負圧)」を「真空圧」という。また、絶対真空に近い真空圧となっている状態を「真空圧が高い状態(高真空状態)」といい、大気圧に近い真空圧となっている状態を「真空圧が低い状態(低真空状態)」といい、絶対真空に近い真空圧から大気圧に近い真空圧に変化すること(変化させること)を「真空圧が低下する(真空圧を低下させる)」といい、大気圧に近い真空圧から絶対真空に近い真空圧に変化すること(変化させること)を「真空圧が上昇する(真空圧を上昇させる)」という。
請求項2記載の気液分離装置は、請求項1記載の気液分離装置において、前記制御部は、前記第2の処理において前記第1の開閉弁の開口制御に先立って前記第3の開閉弁を開口制御する。
請求項3記載の気液分離装置は、請求項1または2記載の気液分離装置において、前記制御部は、前記第2の開閉弁の開閉動作、および前記第4の開閉弁の開閉動作を制御可能に構成されると共に、前記第2の処理の完了後に予め規定された第3の条件が満たされたときに、予め規定された第4の時間に亘って前記第4の開閉弁を開口制御して前記貯液槽への大気の導入を許容させると共に予め規定された第5の時間に亘って前記第2の開閉弁を開口制御して前記排出口からの前記液体の排出を許容させる第3の処理を前記第1の処理に先立って実行する。
請求項4記載の気液分離装置は、請求項1から3のいずれかに記載の気液分離装置において、前記気液分離槽内に貯液された前記液体の量を検出する貯液量検出センサを備え、前記制御部は、前記貯液量検出センサからのセンサ信号に基づいて前記気体から分離されて前記気液分離槽内に貯液された前記液体の量が予め規定された量に達したと判別したときに、前記第1の条件が満たされたとして前記第1の処理を開始する。
請求項5記載の吸引システムは、請求項1から4のいずれかに記載の気液分離装置と前記吸引装置とを備えて前記気体から前記液体を分離させて除去しつつ前記吸引対象から当該気体を吸引可能に構成されている。
請求項1記載の気液分離装置では、各開閉弁が閉塞されている状態において第1の条件が満たされたときに、制御部が、第1の時間に亘って第5の開閉弁を開口制御することで貯液槽内の大気を吸引装置に向かって吸引させて貯液槽内を真空状態とする第1の処理と、第2の条件が満たされたときに第2の時間に亘って第3の開閉弁を開口制御することで気液分離槽内に大気を導入させて気液分離槽内の真空圧を低下させ、かつ第3の時間に亘って第1の開閉弁を開口制御することで気液分離槽から貯液槽に液体を流入させる第2の処理とを繰り返して実行する。また、請求項5記載の吸引システムでは、上記の気液分離装置と吸引装置とを備えて気体から液体を分離させて除去しつつ吸引対象から気体を吸引可能に構成されている。
したがって、請求項1記載の気液分離装置、および請求項5記載の吸引システムによれば、第3の開閉弁から気液分離槽への大気の導入によって気液分離槽内の真空圧を貯液槽内の真空圧よりも低下させることで真空圧が低い気液分離槽から真空圧が高い貯液槽に向かって気液分離槽内の液体を確実に移送させることができるため、貯液槽内の真空圧を短時間で上昇させるために従来のワーク吸着装置のような大容量の大きなバッファタンクを備える必要がなくなる結果、気液分離装置を小型化することができると共に気液分離槽内の液体を気液分離槽から貯液槽に確実かつスムーズに移送することができる。また、この気液分離装置、および吸引システム1によれば、第1の開閉弁を開口制御した際に、真空圧が低い気液分離槽から真空圧が高い貯液槽に向かって気液分離槽内の液体が移送されるため、例えば、気液分離槽よりも貯液槽が僅かに高い位置に設置されていたとしても、気液分離槽と貯液槽との間に生じている差圧によって液体がスムーズに移送されるため、気液分離槽に対する貯液槽の設置位置(気液分離槽に対する貯液槽の高さ)などの設計上の制限がなくなる分だけ、一層小型化を図ることが可能となる。
また、請求項2記載の気液分離装置によれば、第2の処理において第1の開閉弁の開口制御に先立って第3の開閉弁を開口制御することにより、第1の開閉弁を開口制御したときに、気液分離槽内の真空圧が貯液槽内の真空圧よりも確実に低くなっているため、気液分離槽内の液体を貯液槽に向かって一層スムーズに移送させることができる。
さらに、請求項3記載の気液分離装置によれば、第2の処理の完了後に第3の条件が満たされたときに、制御部が、第4の時間に亘って第4の開閉弁を開口制御して貯液槽への大気の導入を許容させると共に第5の時間に亘って第2の開閉弁を開口制御して排出口からの液体の排出を許容させる第3の処理を第1の処理に先立って実行することにより、第2の処理によって気液分離槽から貯液槽内に移送した液体が第3の処理によって貯液槽から周期的に排出されるため、ある程度小さい容量の貯液槽を用いたとしても次の第2の処理において気液分離槽内の液体を貯液槽内に確実に移送することができる結果、気液分離装置を一層小型化することができる。
また、請求項4記載の気液分離装置によれば、制御部が、貯液量検出センサからのセンサ信号に基づいて気体から分離されて気液分離槽内に貯液された液体の量が規定量に達したと判別したときに、第1の条件が満たされたとして第1の処理を開始することにより、気液分離槽内の液体を貯液槽に移送させる前に気液分離槽内に過度に大量の液体が貯液されて、この液体が第2の配管を介して吸引装置に吸引される事態を好適に回避することができる。これにより、例えば、吸引装置としてドライ式の吸引装置を採用した場合に、吸引装置が故障したり動作不良を招いたりする事態を好適に回避することができる。
以下、添付図面を参照して、気液分離装置および吸引システムの実施の形態について説明する。
最初に、吸引システム1の構成について、添付図面を参照して説明する。
図1に示す吸引システム1は、「吸引システム」の一例であって、真空ポンプ2および気液分離装置3を備え、射出成型機、吸着保持装置、真空包装機、並びに、箱体および袋体等の各種容器内の空気を脱気する工具等の各種吸引対象(図示せず)から真空ポンプ2によって空気(「気体」の一例)を吸引する(吸引対象に対して真空圧を供給する)ことができるように構成されている。この場合、本例の吸引システム1では、特に限定されるものではないが、一例として、ドライ式のクローポンプで真空ポンプ2が構成されている。また、気液分離装置3は、「気液分離装置」の一例であって、気液分離槽11、貯液槽12、制御部13および電磁弁SV1〜SV5を備え、上記の吸引対象と真空ポンプ2との間に配設されて吸引対象から真空ポンプ2に吸引される気体に含まれている液体を分離させて除去することができるように構成されている。
気液分離槽11は、「気液分離槽」の一例であって、吸引対象から真空ポンプ2に吸引される気体が通過可能に「第1の配管」の一例である配管Paを介して吸引対象に接続され、かつ「第2の配管」の一例である配管Pbを介して真空ポンプ2に接続されている。この場合、本例の吸引システム1では、後述するように、気液分離槽11内に貯液される液体の液量を検出するための液面検出センサ11a(「貯液量検出センサ」の一例)が気液分離槽11に取り付けられている。なお、この種の装置において採用される「気液分離槽」の構成は公知のため、気液分離槽11の内部構造等に関する図示および説明を省略する。貯液槽12は、「貯液槽」の一例であって、「第3の配管」の一例である配管P1を介して気液分離槽11に接続され、気液分離槽11において気体から分離された液体を貯液可能に構成されている。なお、本例の吸引システム1では、一例として、上記の貯液槽12が気液分離槽11よりも下方に位置するように設置されている。
電磁弁SV1は、「第1の開閉弁」の一例であって、配管P1に配設されており、後述するように、制御部13によって開閉させられる(開口制御および閉塞制御される)ことによって気液分離槽11から貯液槽12への液体の流入の許容および規制を実行する。電磁弁SV2は、「第2の開閉弁」の一例であって、貯液槽12から液体を排水するための配管P2に配設されて貯液槽12に接続され、後述するように、制御部13によって開閉させられることによって貯液槽12からの液体の排出の許容および規制を実行する。電磁弁SV3は、「第3の開閉弁」の一例であって、配管P3を介して気液分離槽11に接続され、後述するように、制御部13によって開閉させられることによって気液分離槽11内への大気の導入の許容および規制を実行する。
電磁弁SV4は、「第4の開閉弁」の一例であって、配管P1における電磁弁SV1の配設部位よりも貯液槽12側の部位に配管P4を介して接続されて貯液槽12に接続され、後述するように、制御部13によって開閉させられることによって配管P4,P1を介しての貯液槽12内への大気の導入の許容および規制を実行する。電磁弁SV5は、「第5の開閉弁」の一例であって、配管P5(「第4の配管」の一例)に配設され、後述するように制御部13によって開閉させられることによって貯液槽12内に導入されている大気の真空ポンプ2による吸引の許容および規制を実行する。この場合、本例の吸引システム1(気液分離装置3)では、電磁弁SV5が配設されている配管P5の一端部が配管P2における電磁弁SV2の配設部位よりも貯液槽12側の部位に接続され、かつ、配管P5の他端部が配管Paに接続されている(「少なくとも1つ」が「第1の配管」の構成の例)。
制御部13は、吸引システム1(気液分離装置3)を総括的に制御する。具体的には、制御部13は、図示しない操作部のスタートスイッチが操作されたときに、吸引対象からの空気の吸引処理、および気液分離処理(液体の分離除去処理)を開始して、真空ポンプ2を制御して空気の吸引を開始させると共に、電磁弁SV1〜SV5のすべてを閉塞制御する。また、制御部13は、後述する「第1の処理」から「第3の処理」までの各処理をこの順で繰り返して実行する。
より具体的には、制御部13は、「予め規定された第1の条件」が満たされたときに、「予め規定された第1の時間(一例として、後述する時間T2)」に亘って電磁弁SV5を開口制御することにより、貯液槽12内の大気を真空ポンプ2に向かって吸引させて貯液槽12内を真空状態とする処理を「第1の処理」として実行する。この場合、上記の「第1の条件」としては、一例として、「気液分離処理の開始時点から10分が経過したとき」、「第3の処理を完了した時点から10分が経過したとき」、および「液面検出センサ11aからセンサ信号が出力されたとき(気液分離槽11内に規定量の液体が貯液されたとき)」との条件が規定される。また、上記の「第1の時間」としては、一例として、10秒との時間が規定される。なお、この「第1の時間」としては、貯液槽12内を充分に高い真空状態とすることができる充分に長い時間に規定するのが好ましい。
また、制御部13は、「予め規定された第2の条件」が満たされたときに、「予め規定された第2の時間(一例として、後述する時間T4)」に亘って電磁弁SV3を開口制御することにより、気液分離槽11内に大気を導入させて気液分離槽11内の真空圧を僅かに低下させ(真空破壊させ)、かつ「予め規定された第3の時間(一例として、後述する時間T5)」に亘って電磁弁SV1を開口制御することで気液分離槽11から貯液槽12に液体を流入させる処理を「第2の処理」として実行する。この際に、制御部13は、上記の「第2の処理」において電磁弁SV1の開口制御に先立って電磁弁SV3を開口制御する。具体的には、本例の吸引システム1では、「第2の処理」において、一例として、まず、電磁弁SV3を開口制御し、上記の「第2の時間」が経過した時点において電磁弁SV3を閉塞制御するのと同時に電磁弁SV1を開口制御する。
この場合、上記の「第2の条件」としては、一例として、「第1の処理を完了した時点から1秒が経過したとき」との条件が規定される。なお、この「第2の条件」としては、「第1の処理を完了したとき(後述する経過時間T3を0秒とする例)」との条件、「第1の処理を開始してから予め規定された時間が経過したとき」との条件、および「第1の処理を開始したとき」との条件などを規定することもできる。また、上記の「第2の時間」としては、0.5秒から2.0秒の範囲内の時間(例えば1.0秒との時間)が規定される。なお、この「第2の時間」としては、電磁弁SV3が過剰に長い時間に亘って開口されて気液分離槽11内の真空圧が極度に低下するのを回避するために、気液分離槽11内の真空圧や、電磁弁SV3の開口面積などに応じて配管Pa内の真空圧が過剰に低下することのない(吸引対象の真空圧に大きな影響が及ぶことのない)充分に短い時間(少なくとも、「第3の時間」よりも充分に短い時間)に規定するのが好ましい。さらに、上記の「第3の時間」としては、一例として、10秒との時間が規定される。なお、この「第3の時間」としては、気液分離槽11内の液体を貯液槽12内に充分に移送させることができる充分に長い時間に規定するのが好ましい。
さらに、制御部13は、上記の「第2の処理」の完了後に「予め規定された第3の条件」が満たされたときに、「予め規定された第4の時間(一例として、後述する時間T7)」に亘って電磁弁SV4を開口制御して貯液槽12への大気の導入を許容させると共に、「予め規定された第5の時間(一例として、後述する時間T7)」に亘って電磁弁SV2を開口制御して貯液槽12の排出口からの液体の排出を許容させる処理を「第3の処理」として実行する。
この場合、上記の「第3の条件」としては、一例として、「第2の処理を完了した時点から1秒が経過したとき」との条件が規定される。また、上記の「第4の時間」としては、一例として、10秒との時間が規定され、上記の「第5の時間」としては、一例として、10秒との時間が規定される。なお、上記の「第4の時間」および「第5の時間」としては、貯液槽12内の液体を充分に排出することができる充分に長い時間に規定するのが好ましい。また、制御部13は、上記の「第3の処理」が完了した後に「予め規定された第1の条件」が満たされたときに、上記の「第1の処理」を再び実行する。
また、本例の吸引システム1では、制御部13が液面検出センサ11aからのセンサ信号を監視することにより、上記の「第1の処理」を完了した状態において、気液分離槽11内に貯液された液体の量が「予め規定された量」に達したと判別したときにも、上記の「第1の条件」が満たされたとして「第1の処理」を開始する。
次に、吸引システム1による吸引対象からの空気の吸引処理、および気液分離装置3による気液分離処理(液体の分離除去処理)について、添付図面を参照しつつ説明する。
この吸引システム1では、前述したように、操作部のスタートスイッチが操作されて吸引処理および気液分離処理(液体の分離除去処理)の開始を指示されたときに、制御部13が、真空ポンプ2を制御して空気の吸引を開始させると共に、電磁弁SV1〜SV5のすべてを閉塞制御する。この際には、真空ポンプ2によって配管Pb、気液分離槽11および配管Paを介して吸引対象から空気が吸引される結果、配管Pb、気液分離槽11および配管Pa内が真空状態となる(吸引対象への真空圧の供給)。また、吸引対象において空気と共に液体(冷却水、冷却油および大気中の水分などの各種液体)が吸引されて、液体が混合された空気が配管Pa内に吸引されたときには、この空気が気液分離槽11内を通過させられる際に、空気中に含まれている液体が分離されて気液分離槽11内に滴り落ちる。これにより、液体が含まれていない空気が真空ポンプ2に吸引される結果、真空ポンプ2の作動不良や故障が回避される。
一方、図2に示すように、制御部13は、スタートスイッチが操作された時点t0からの経過時間T1が10分に達した時点t1に「第1の条件」が満たされたと判別して電磁弁SV5を開口制御する。この際には、貯液槽12内の空気(大気)が配管P5を介して配管Paに向かって吸引される結果、貯液槽12内が配管Pa内と同程度の真空圧、すなわち、気液分離槽11内と同程度の真空圧となる。また、時点t1からの経過時間T2(第1の時間)が10秒に達した時点t2において、制御部13は、電磁弁SV5を閉塞制御する。これにより、「第1の処理」が完了し、貯液槽12内が高真空状態に維持される。なお、上記の電磁弁SV5の閉塞制御については、「第2の処理」を開始する以前に行えばよく、上記の経過時間T2を10秒よりも長く規定することもできる。
一方、制御部13は、上記の「第1の処理」を完了した時点t2からの経過時間T3が1秒に達した時点t3において「第2の条件」が満たされたと判別して、電磁弁SV3を開口制御する。この際には、配管P3を介して気液分離槽11内に大気が導入される結果、気液分離槽11内の真空圧が僅かに低下する(真空破壊される)。この結果、気液分離槽11内の真空圧が貯液槽12内の真空圧よりも低い状態となる。
また、電磁弁SV3を開口制御してからの経過時間T4が1.0秒に達した時点t4において、制御部13は、電磁弁SV3を閉塞制御すると共に、電磁弁SV1を開口制御する。この際には、上記したように気液分離槽11内の真空圧が貯液槽12内の真空圧よりも僅かに低い状態、言い換えれば、貯液槽12内の真空圧が気液分離槽11内の真空圧よりも高い状態となっているため、真空圧が低い気液分離槽11から真空圧が高い貯液槽12に向かって気液分離槽11内の液体が配管P1(電磁弁SV1)を介して貯液槽12内にスムーズに移送される。また、前述したように、本例の吸引システム1では、貯液槽12が気液分離槽11よりも下方に位置するように設置されているため、高所に位置する気液分離槽11内の液体が低所に位置する貯液槽12に向かって一層スムーズに移送される。さらに、電磁弁SV1を開口制御した時点t4からの経過時間T5が10秒に達した時点t5において、制御部13は、電磁弁SV1を閉塞制御する。これにより、「第2の処理」が完了し、気液分離槽11から貯液槽12への液体の移送が完了する。
なお、上記の例では、電磁弁SV3を閉塞制御するのと同時に電磁弁SV1を開口制御しているが、「第2の処理」において電磁弁SV3を閉塞制御するタイミングと電磁弁SV1を開口制御するタイミングとは、同時に限定されない。具体的には、電磁弁SV3を閉塞制御した後に極く僅かな時間が経過した時点において電磁弁SV1を開口制御したり、電磁弁SV3を閉塞制御するのに先立って電磁弁SV1を開口制御し、その後に電磁弁SV3を閉塞制御したりすることもできる。
この場合、上記のような開口制御および閉塞制御を行うときには、電磁弁SV3を開口させてから閉塞させるまでの時間(すなわち、電磁弁SV3を開口制御している時間)を「第2の時間」とし、かつ、電磁弁SV1を開口させてから閉塞させるまでの時間(すなわち、電磁弁SV1を開口制御している時間)を「第3の時間」とする。なお、電磁弁SV3の閉塞制御の後に電磁弁SV1を開口制御する場合には、電磁弁SV1の開口に先立って真空ポンプ2による空気の吸引によって気液分離槽11の真空圧が常態の真空圧(高い真空圧)に復帰する以前に電磁弁SV1を開口する必要がある。また、電磁弁SV1の開口制御の後に電磁弁SV3を閉塞制御する場合には、配管P3(電磁弁SV3)から大量の空気(大気)が気液分離槽11内に吸引されて気液分離槽11内の真空圧が過度に低下するのを回避する必要がある。
また、上記の例とは相違するが、本例の吸引システム1(気液分離装置3)では、気液分離処理の開始時点から10分が経過する以前に、気液分離槽11に配設されている液面検出センサ11aからセンサ信号が出力されたとき(すなわち、気液分離槽11内に規定量の液体が貯液されたとき)に、制御部13は、「第1の条件」が満たされたと判別して、上記の「第1の処理」を開始し、続いて、上記の「第2の処理」を実行する。これにより、この吸引システム1では、気液分離槽11内に貯液された液体が貯液槽12内に移送されることなく気液分離槽11内に規定量を大幅に超える液体が継続して貯液される事態が回避される。
一方、制御部13は、上記の「第2の処理」を完了した時点t5からの経過時間T6が1秒に達した時点t6に「第3の条件」が満たされたと判別して、電磁弁SV4,SV2を開口制御する。この際には、電磁弁SV4の開口制御に伴い、配管P4,P1を介して貯液槽12内に大気が吸引されることで貯液槽12内が大気圧になると共に、電磁弁SV2の開口制御に伴い、貯液槽12内に貯液されている液体が配管P2を介して装置の外部に排水される。また、電磁弁SV4,SV2を開口制御した時点t6からの経過時間T7(第4の時間、および第5の時間)が10秒に達した時点t7において、電磁弁SV4,SV2を閉塞制御する。これにより、「第3の処理」が完了し、貯液槽12内からの液体の排出が完了する。
なお、電磁弁SV4,SV2を開口制御するタイミングや、電磁弁SV4,SV2を閉塞制御するタイミングは、上記の例のような「同時」に限定されない。具体的には、電磁弁SV4,SV2を開口制御するタイミングについては、電磁弁SV4の開口制御に先立って電磁弁SV2を開口制御したり、電磁弁SV4の開口制御の後に電磁弁SV2を開口制御したりすることもできる。また、電磁弁SV4,SV2を閉塞制御するタイミングについては、電磁弁SV2の閉塞制御に先立って電磁弁SV4を閉塞制御したり、電磁弁SV2の閉塞制御の後に電磁弁SV4を閉塞制御したりすることもできる。
また、制御部13は、上記の「第3の処理」が完了した時点t7からの経過時間T8が10分に達した時点t1a(または、液面検出センサ11aからセンサ信号が出力された時点)において、前述した時点t1の到来時と同様にして、時点t2aまで「第1の処理」を実行する。これにより、貯液槽12内が再び高真空状態となり、時点t3aから時点t5aまで実行される「第2の処理」において(具体的には、時点t4a〜時点t5aの間に)気液分離槽11内から貯液槽12内に液体をスムーズに移動させることが可能な状態となる。この後、制御部13は、上記の「第2の処理」以降の各処理を繰り返して実行する。これにより、吸引対象から真空ポンプ2に吸引される空気に含まれる液体が気液分離装置3によって好適に除去される。
このように、この気液分離装置3では、各電磁弁SV1〜SV5が閉塞されている状態において「第1の条件」が満たされたときに、制御部13が、「第1の時間」に亘って電磁弁SV5を開口制御することで貯液槽12内の大気を真空ポンプ2に向かって吸引させて貯液槽12内を真空状態とする「第1の処理」と、「第2の条件」が満たされたときに充分に短い「第2の時間」に亘って電磁弁SV3を開口制御することで気液分離槽11内に大気を導入させて気液分離槽11内の真空圧を低下させ、かつ「第3の時間」に亘って電磁弁SV1を開口制御することで気液分離槽11から貯液槽12に液体を流入させる「第2の処理」とを繰り返して実行する。また、この吸引システム1では、上記の気液分離装置3と真空ポンプ2とを備えて気体から液体を分離させて除去しつつ吸引対象から気体を吸引可能に構成されている。
したがって、この気液分離装置3、および吸引システム1によれば、電磁弁SV3から気液分離槽11への大気の導入によって気液分離槽11内の真空圧を貯液槽12内の真空圧よりも低下させることで真空圧が低い気液分離槽11から真空圧が高い貯液槽12に向かって気液分離槽11内の液体を確実に移送させることができるため、貯液槽12内の真空圧を短時間で上昇させるために従来のワーク吸着装置のような大容量の大きなバッファタンクを備える必要がなくなる結果、気液分離装置3を小型化することができると共に気液分離槽内の液体を気液分離槽から貯液槽に確実かつスムーズに移送することができる。
また、この気液分離装置3では、制御部13が、「第2の処理」において電磁弁SV1の開口制御に先立って電磁弁SV3を開口制御することにより、電磁弁SV1を開口制御したときに、気液分離槽11内の真空圧が貯液槽12内の真空圧よりも確実に低くなっているため、気液分離槽11内の液体を貯液槽12に向かって一層スムーズに移送させることができる。
さらに、この気液分離装置3および吸引システム1によれば、「第2の処理」の完了後に「第3の条件」が満たされたときに、制御部13が、「第4の時間」に亘って電磁弁SV4を開口制御して貯液槽12への大気の導入を許容させると共に「第5の時間」に亘って電磁弁SV2を開口制御して貯液槽12の排出口からの液体の排出を許容させる「第3の処理」を「第1の処理」に先立って実行することにより、「第2の処理」によって気液分離槽11から貯液槽12内に移送した液体が「第3の処理」によって貯液槽12から周期的に排出されるため、ある程度小さい容量の貯液槽12を用いたとしても次の「第2の処理」において気液分離槽11内の液体を貯液槽12内に確実に移送することができる結果、気液分離装置3(吸引システム1)を一層小型化することができる。
また、この気液分離装置3および吸引システム1によれば、制御部13が、液面検出センサ11aからのセンサ信号に基づいて気体から分離されて気液分離槽11内に貯液された液体の量が規定量に達したと判別したときに、「第1の条件」が満たされたとして「第1の処理」を開始することにより、気液分離槽11内の液体を貯液槽12に移送させる前に気液分離槽11内に過度に大量の液体が貯液されて、この液体が配管Pbを介して真空ポンプ2に吸引される事態を好適に回避することができる。これにより、例えば、真空ポンプ2としてドライ式の「吸引装置」を採用した場合に、真空ポンプ2が故障したり動作不良を招いたりする事態を好適に回避することができる。
なお、「気液分離装置」および「吸引システム」の構成は、上記の気液分離装置3および吸引システム1の構成の例に限定されない。例えば、貯液槽12が気液分離槽11よりも下方に位置するように設置した構成の吸引システム1を例に挙げて説明したが、気液分離槽11よりも貯液槽12を僅かに高い位置に設置することもできる。このような構成を採用した「気液分離装置」および「吸引システム」(図示せず)においても、前述した気液分離装置3および吸引システム1と同様にして、電磁弁SV1を開口制御した際に、真空圧が低い気液分離槽11から真空圧が高い貯液槽12に向かって気液分離槽11内の液体が移送される。したがって、気液分離槽11よりも貯液槽12が僅かに高い位置に設置されていたとしても、気液分離槽11と貯液槽12との間に生じている差圧によって液体がスムーズに移送されるため、気液分離槽11に対する貯液槽12の設置位置(気液分離槽11に対する貯液槽12の高さ)などの設計上の制限がなくなる分だけ、一層小型化を図ることが可能となる。
また、従来のワーク吸着装置におけるバッファタンクに相当する要素(吸引対象から空気を吸引するための配管内等の真空圧が短時間で大きく変動して空気の吸引量が大きく変動するのを回避するための要素)を設けることなく構成した気液分離装置3および吸引システム1を例に挙げて説明したが、上記の配管Pa,Pbの少なくとも一方にバッファタンクを接続することもできる(図示せず)。このような構成を採用する場合においても、貯液槽12内の空気を吸引するためにバッファタンクの容量を大容量とする必要がないため、吸引対象からの空気の吸引量(吸引対象における真空圧)の大きな変動を回避し得る必要最低限の容量のバッファタンクを配設するだけで済む結果、「気液分離装置」および「吸引システム」が大型化する事態を回避することができる。
さらに、例えば、「第4の配管」としての配管P5を「第1の配管」としての「配管Pa」に接続して貯液槽12を配管Paに連通させる構成を例に挙げて説明したが、「少なくとも1つ」は「第1の配管」に限定されず、「第2の配管」としての配管Pbや気液分離槽11に配管P5を接続する構成(図示せず)を採用することもできる。この場合、気液分離槽11から貯液槽12内に移送した液体の一部が、「第4の配管」から「第2の配管」を介して真空ポンプ2(吸引装置)に吸引される事態が生じるのを回避するために、上記の「少なくとも1つ」については、「第1の配管」または「気液分離槽」のいずれかを採用するのが好ましい。また、配管P5を、配管P2を介して貯液槽12に接続した例について説明したが、配管P5を貯液槽12に対して直接接続する構成(図示せず)を採用することもできる。さらに、配管P4を、配管P1を介して貯液槽12に接続した例について説明したが、配管P4を貯液槽12に対して直接接続する構成(図示せず)を採用することもできる。
また、「気液分離処理の開始時点から10分が経過したとき」との条件、「第3の処理を完了した時点から10分が経過したとき」との条件、および「気液分離槽11内に貯液された液体の量が予め規定された量に達したと判別したとき(液面検出センサ11aからセンサ信号が出力されたとき」との条件を「第1の条件」として「第1の処理」を実行する例について説明したが、このような構成に代えて、「気液分離処理の開始時点から10分が経過したとき」との条件、および「第3の処理を完了した時点から10分が経過したとき」との条件だけを「第1の条件」として「第1の処理」を実行する構成や、「気液分離槽11内に貯液された液体の量が予め規定された量に達したと判別したとき」との条件との条件だけを「第1の条件」として「第1の処理」を実行する構成を採用することもできる。
さらに、制御部13が、「第1の処理」、「第2の処理」および「第3の処理」をこの順で繰り返して実行する構成を例に挙げて説明したが、「気液分離装置」および「吸引システム」の構成はこれに限定されない。例えば、「貯液槽」の容量をある程度大容量とすることが可能であれば、「第1の処理」および「第2の処理」を複数回(例えば2回)実行した後に「第3の処理」を実行する構成を採用することができる。また、「第3の処理」については、「制御部」が実行せずに、上記の例における電磁弁SV4,SV2に代わる手動操作の「開閉弁」(図示せず)を利用者が任意のタイミングで開口または閉塞することで貯液槽12内の液体を排出する構成を採用することもできる。加えて、制御部13が真空ポンプ2および気液分離装置3の各電磁弁SV1〜SV5を制御する構成を例に挙げて説明したが、気液分離装置3の各電磁弁SV1〜SV5の開閉を制御する「制御部」を、真空ポンプ2の動作を制御する「制御部」とは別個に設けることもできる。