JP6029731B2 - 超音波探触子 - Google Patents
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このハーモニックイメージングや光音響イメージングに適した超音波探触子として、例えば、特許文献1に開示されているように、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)等の無機圧電体を用いた複数の無機圧電素子とポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の有機圧電体を用いた複数の有機圧電素子とを積層形成したものが提案されている。
無機圧電素子により高出力の超音波ビームを送信し、有機圧電素子により高調波の信号を高感度に受信することができる。また、無機圧電体素子により通常の超音波の受信信号を取得すると共に、有機圧電素子により光音響イメージングの広帯域な信号を高感度に受信することが出来る。
また、無機圧電素子に有機圧電体を積層する場合、互いの電極位置がビーム送信方向に対して一致していないと、フォーカスずれや受信効率の低下を招く。従って、無機圧電素子と積層された有機圧電素子の電極位置は、ビーム送信方向に対して出来る限り一致していることが望ましいが、従来の構成や製造方法では正確に一致させることは困難であった。
さらに、有機圧電体は温度上昇によって徐々に結晶化度が低下する為、キュリー点よりかなり低い温度に使用上限温度がある。例えば代表的なポリフッ化ビニリデン(PVDF)では使用上限温度は80℃であり、ポリフッ化ビニリデン三フッ化エチレン共重合体(P(VDF-TrFE))では100℃である。従ってプロセス中に、この温度以上をかけると強誘電性が劣化し、脱分極される。強誘電性の劣化回復手段として再分極が有効な手段であるが、有機圧電体の抗電界(Ec)は極めて大きく、400kV/cm〜450kV/cm程度である。従って、一度脱分極された有機圧電体をデバイス上で再分極するのは極めて高い電圧を印加する必要があり、プロセス上困難である。以上のことから、無機圧電体に有機圧電体を積層する場合、なるべく低い温度プロセス、少ない熱履歴回数で作製する必要があるが、従来の構成や製造方法では殆ど熱履歴をかけないプロセスは困難であった。
また、複数の無機圧電素子を構成する各断片、または、複数の無機圧電素子と第1の音響整合層をそれぞれ構成する各断片、または、複数の無機圧電素子と第1の音響整合層と第2の音響整合層の下側有機層をそれぞれ構成する各断片をさらに複数のサブダイスに分離するように、積層方向に向かって延びるサブダイス形成溝を備えることができる。
また、複数の有機圧電素子は、複数の無機圧電素子から送信された超音波を受信する受信デバイスとして利用され、上側有機層は、受信した超音波エコーを受信信号として回路上で効率良く取得し、かつ、S/Nを向上するために、所定の電気容量を有する厚さで形成され、上側有機層の厚さと下側有機層の厚さの和は、複数の無機圧電素子から送信される超音波に対して所望の音響整合が行われるような値に形成されるのが好ましい。
また、複数の無機圧電素子は、互いに分離された複数の無機圧電体と、複数の無機圧電体の両面にそれぞれ配置された複数の信号電極層および複数の接地電極層とを有するのが好ましい。
また、複数の有機圧電素子の上に配置された音響レンズをさらに備えることができる。また、複数の有機圧電素子と音響レンズの間に、複数の有機圧電素子を保護する保護層をさらに備えることもできる。
また、被検体に向けて照射光を照射する光照射部をさらに有し、光照射部から照射光が照射されることで被検体から誘発された超音波を複数の有機圧電素子または複数の無機圧電素子で受信することができる。
また、超音波を送受信する無機圧電素子の電極位置と超音波受信専用の有機圧電素子のビーム送信方向の位置を正確に合致させ、さらに、デバイス完成後にも有機圧電素子の特性を高く維持させることも可能となる。
図1および図2に、この発明の実施の形態に係る超音波探触子の構成を示す。
バッキング材1の表面上に複数の無機圧電素子2がピッチPで配列形成されている。複数の無機圧電素子2は、互いに分離された複数の無機圧電体21を有し、それぞれの無機圧電体21の一方の面に信号電極層22が接合され、他方の面に接地電極層23が接合されている。すなわち、それぞれの無機圧電素子2は、専用の無機圧電体21と信号電極層22と接地電極層23から形成されている。
このような複数の無機圧電素子2の上に第1の音響整合層3が接合されている。第1の音響整合層3は、複数の断片に分断され、複数の無機圧電素子2と同じピッチPで配列されている。
この時、各無機圧電素子2に対し1本または2本のサブダイス形成溝を形成して、2つまたは3つのサブダイスを形成することが好ましい。このように、複数のサブダイスを形成することにより、複数の無機圧電素子2の圧電乗数を向上させ、超音波探触子の送受信感度を向上させることができる。
下側有機層42は、複数の断片に分断され、複数の無機圧電素子2と同じピッチPで第1の音響整合層3の上に配列されている。一方、上側有機層41は、シート状の形状を有し、複数の断片に分断されることなく、下側有機層42の全体にわたって延在している。上側有機層41の厚さと下側有機層42の厚さの和は、複数の無機圧電素子から送信される超音波に対して所望の音響整合が行われるような値に形成される。例えば、上側有機層41の厚さと下側有機層42の厚さの和が複数の無機圧電素子2から送信される超音波の基本波(無機圧電体21の最大感度の−6dB帯域の中心周波数)の波長λに対してλ/4共振条件を満たす厚さの近傍となるように形成することにより、上側有機層41と下側有機層42を併せた第2の音響整合層4が複数の無機圧電素子から送信される超音波に対して優れた音響透過率を有することができる。
さらに、複数の有機圧電素子5の上に保護層7を介して音響レンズ8が接合されている。
第1の音響整合層3は、複数の無機圧電素子2からの超音波ビームを効率よく被検体内に入射させるためのもので、無機圧電素子2の音響インピーダンスと生体の音響インピーダンスの中間的な値の音響インピーダンスを有する材料から形成される。
第2の音響整合層4は、複数の無機圧電素子2からの超音波ビームを効率よく被検体内に入射させるためのもので、下側有機層42は、有機材料、または、有機材料と無機材料の複合材料から構成されている。例えば、下側有機層42は、上側有機層41において用いられた、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリフッ化ビニリデン三フッ化エチレン共重合体(P(VDF-TrFE))等のフッ化ビニリデン(VDF)系材料を含む有機材料から形成することができる。また、下側有機層42は、例えばエポキシ樹脂にジルコニア粒子を分散させた、有機材料と無機材料の複合材料から形成することもできる。
なお、上側有機層41と下側有機層42は、互いに同じまたは近い音響インピーダンスを有する材料で形成されるのが好ましく、例えば互いの音響インピーダンスが±10%の範囲内のものであれば超音波の音響整合に影響を与えずに第2の音響整合層4を構成することができる。さらに、下側有機層42は、上側有機層41より大きな音響インピーダンスを有し、且つ、第1の音響整合層3より小さな音響インピーダンスを有する材料で形成することもできる。
保護層7は、有機圧電素子5の接地電極層43を保護するもので、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)により形成される。なお、接地電極層43の保護に支障がなければ、保護層7を除いて形成し、複数の有機圧電素子5の上に音響レンズ8を直接接合することもできる。
音響レンズ8は、屈折を利用して超音波ビームを絞り、エレベーション方向の分解能を向上させるもので、シリコンゴム等から形成されている。
動作時には、例えば、複数の無機圧電素子2が超音波の送信専用の振動子として、複数の有機圧電素子5が超音波の受信専用の振動子として使用される。
複数の無機圧電素子2の信号電極層22と接地電極層23の間にそれぞれパルス状または連続波の電圧を印加すると、それぞれの無機圧電素子2の無機圧電体21が伸縮してパルス状または連続波の超音波が発生する。これらの超音波は、第1の音響整合層3、第2の音響整合層4、保護層7および音響レンズ8を介して被検体内に入射し、互いに合成され、超音波ビームを形成して被検体内を伝搬する。
このようにして、複数の有機圧電素子5から出力された受信信号に基づいて、高調波画像を生成することができる。ここで、複数の無機圧電素子2と複数の有機圧電素子5は、積層方向に互いに位置合わせして同じピッチPで配列形成されているため、超音波ビームの送信位置と同じ配列位置で被検体からの超音波エコーを受信することができ、高精度に高調波画像を生成することができる。
このようにして複数の無機圧電素子2から得られた基本波成分に対応する受信信号と、有機圧電素子5から得られた高調波成分に対応する受信信号とに基づいて、基本波成分と高調波成分を複合したコンパウンド画像を生成することができる。
まず、図3(A)に示されるように、バッキング材1の表面全域にわたって延びる無機圧電素子層91aを接着剤等によりバッキング材1の表面上に接合する。この無機圧電素子層91aは、バッキング材1の全面にわたって延びる無機圧電体層91の両面に、全面にわたってそれぞれ導電層92および93が形成されたものである。
次に、図3(B)に示されるように、無機圧電素子層91aの全域にわたって延びる音響整合層94を、例えば80℃〜100℃の温度で導電層93の上に接合する。この時、複数の無機圧電体21にサブダイスを形成する場合には、無機圧電素子層91a、または、無機圧電素子層91aから音響整合層94の各層を積層方向にダイシングすることにより、サブダイス形成溝を形成することができる。
そして、図3(C)に示されるように、音響整合層94の上に有機層95が接合される。この有機層95は、音響整合層94の全面にわたって延びるだけの大きさを有し、音響整合層94に対向する面とは反対側の表面には全面にわたって導電層96が予め形成されている。
このように、導電層96から無機圧電素子層91aまでの各層をピッチPでダイシングすることにより、各層が簡便に複数の断片に分離されると共に分離された各層のそれぞれの断片を積層方向に位置合わせすることができる。そして、複数の有機圧電素子5の信号電極層44と、複数の無機圧電素子2の信号電極層22および接地電極層23とを互いに正確に位置合わせすることができる。
さらに、上側有機層41の下側に積層された各層、すなわち信号電極層22、無機圧電体21、接地電極層23、第1の音響整合層3、下側有機層42および信号電極層44を順次接着するまでの間は、上側有機層41が存在しないため、これらの層を互いに高温で接着して高い接着力で積層させることができる。
このようにして複数の信号電極層44の上に上側有機層41が積層された後、複数の有機圧電素子5の接地電極層43の上に保護層7を介して音響レンズ8を接合することにより、図1および図2に示した超音波探触子が製造される。
また、複数の無機圧電素子2と複数の有機圧電素子5が互いに位置を合わせて配列されているため、高精度な高調波画像およびコンパウンド画像を生成することができる。
さらに、超音波探触子を製造する際に有機圧電素子5の有機圧電体として機能する上側有機層41を高温に曝すことが少ないため、上側有機層41が脱分極するのを抑制することができる。
ここで、複数の有機圧電素子5の電気容量は、上記のように有機圧電体の厚さを小さく設定することで高めることはできるが、それだけでは、まだ十分な強度を有する受信信号を得ることが難しく、有機圧電素子用アンプ10により増幅する必要がある。このとき、有機圧電素子5から有機圧電素子用アンプ10に伝送される間に受信信号が減衰するのを防ぐために、有機圧電素子用アンプ10を有機圧電素子5の信号線電極層44の近傍に接続または直結させるのが好ましい。
また、超音波プローブ内にマルチプレクサを配置することで超音波プローブから引き出される信号線の本数を減少させることができる。例えば、無機圧電素子用A/Dコンバータ9および有機圧電素子用A/Dコンバータ11の後段にマルチプレクサを配置し、無機圧電素子用A/Dコンバータ9と有機圧電素子用A/Dコンバータ11から引き出された2本の信号線を1本にまとめることができる。
同様に、表面上に接地電極層43が予め形成された上側有機層41を複数の信号電極層44の上に接合したが、複数の信号電極層42の上に上側有機層41を接合した後、上側有機層41の表面上に接地電極層43を形成してもよい。
光照射部31は、互いに異なる波長を有する複数の照射光Lを被検体に向けて順次照射するもので、半導体レーザ(LD)、発光ダイオード(LED)、固体レーザ、ガスレーザ等から構成することができる。光照射部31は、例えば、パルスレーザ光を照射光Lとして用い、パルス毎に順次波長を切り換えながら被検体に向けてパルスレーザ光を照射する。
例えば、光照射部31から約750nmの波長を有する照射光Lと、約800nmの波長を有する照射光Lを順次被検体に照射する。ここで、ヒトの動脈に多く含まれる酸素化ヘモグロビン(酸素と結合したヘモグロビン:oxy-Hb)は、波長800nmの照射光Lよりも波長750nmの照射光Lに対して、高い分子吸収係数を有する。一方、静脈に多く含まれる脱酸素化ヘモグロビン(酸素と結合していないヘモグロビンdeoxy-Hb)は、波長800nmの照射光Lよりも波長750nmの照射光Lに対して、低い分子吸収係数を有する。このため、動脈および静脈に波長800nmの照射光Lおよび波長750nmの照射光Lをそれぞれ照射すると、動脈および静脈の分子吸収係数に応じた強度の光音響波Uがそれぞれ放出されることになる。
動脈または静脈から放出された光音響波Uは、上記の実施の形態と同様にして、超音波探触子の複数の有機雑電素子5で受信される。
なお、照射光Lの照射により被検体から誘発される光音響波Uは、複数の無機圧電素子2で受信することもできる。
Claims (14)
- バッキング材と、
前記バッキング材の表面上に配列された複数の無機圧電素子と、
前記複数の無機圧電素子の上に配置された第1の音響整合層と、
前記第1の音響整合層の上に配置された第2の音響整合層と
を備え、
前記第2の音響整合層は、複数の有機圧電素子を構成する上側有機層と、前記上側有機層と併せて前記複数の無機圧電素子に対する音響整合を行うための下側有機層とからなり、
前記複数の有機圧電素子は、
シート状の前記上側有機層と、
前記上側有機層の表面上にわたって延在する接地電極層と、
前記下側有機層に対向する前記上側有機層の裏面上に配列された複数の信号電極層と
を有し、
前記複数の信号電極層から前記複数の無機圧電素子までの各層を複数の断片に分離するように、積層方向に向かってそれぞれ同じピッチで平行に延びる複数の分離部をさらに備えることにより、前記複数の有機圧電素子と前記複数の無機圧電素子が互いに同じピッチで配列されることを特徴とする超音波探触子。 - 前記上側有機層は、前記下側有機層より薄く形成される請求項1に記載の超音波探触子。
- 前記複数の無機圧電素子を構成する各断片、または、前記複数の無機圧電素子と前記第1の音響整合層をそれぞれ構成する各断片、または、前記複数の無機圧電素子と前記第1の音響整合層と前記第2の音響整合層の前記下側有機層をそれぞれ構成する各断片をさらに複数のサブダイスに分離するように、積層方向に向かって延びるサブダイス形成溝を備えた請求項1または2に記載の超音波探触子。
- 前記複数の有機圧電素子は、前記複数の無機圧電素子から送信された超音波を受信する受信デバイスとして利用され、
前記上側有機層は、受信した超音波エコーを受信信号に変換するために、所定の電気容量を有する厚さで形成され、
前記上側有機層の厚さと前記下側有機層の厚さの和は、前記複数の無機圧電素子から送信される超音波に対して所望の音響整合が行われるような値に形成される請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波探触子。 - 前記上側有機層と前記下側有機層は、互いに±10%の範囲内の音響インピーダンスを有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波探触子。
- 前記下側有機層は、前記上側有機層より大きな音響インピーダンスを有し、且つ、前記第1の音響整合層より小さな音響インピーダンスを有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波探触子。
- 前記複数の無機圧電素子は、
互いに分離された複数の無機圧電体と、
前記複数の無機圧電体の両面にそれぞれ配置された複数の信号電極層および複数の接地電極層と
を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の超音波探触子。 - 前記複数の無機圧電体は、Pb系のペロブスカイト構造酸化物から構成される請求項7に記載の超音波探触子。
- 前記上側有機層は、有機材料のみから構成され、
前記下側有機層は、有機材料、または、有機材料と無機材料の複合材料から構成される請求項1〜8のいずれか一項に記載の超音波探触子。 - 前記上側有機層および前記下側有機層は、フッ化ビニリデン系材料から構成される請求項9に記載の超音波探触子。
- 前記複数の有機圧電素子の上に配置された音響レンズをさらに備えた請求項1〜10のいずれか一項に記載の超音波探触子。
- 前記複数の有機圧電素子と前記音響レンズの間に、前記複数の有機圧電素子を保護する保護層をさらに備えた請求項11に記載の超音波探触子。
- 前記複数の有機圧電素子にそれぞれ直結された有機圧電素子用アンプをさらに備えた請求項1〜12のいずれか一項に記載の超音波探触子。
- 被検体に向けて照射光を照射する光照射部をさらに有し、
前記光照射部から照射光が照射されることで被検体から誘発された超音波を前記複数の有機圧電素子または前記複数の無機圧電素子で受信する請求項1〜13のいずれか一項に記載の超音波探触子。
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