以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大、縮小、あるいは誇張して表示している。また、説明に必要な構成要素以外は図示を省略する場合がある。
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
(第1の実施形態)
<電気光学装置>
ここでは、電気光学装置として、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor:TFT)を画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば、後述する投射型表示装置(プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
まず、第1の実施形態に係る電気光学装置としての液晶装置について、図1および図2を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る液晶装置の構成を示す概略図である。詳しくは、図1(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図であり、図1(b)は図1(a)のH−H’線に沿った概略断面図である。また、図2は、第1の実施形態に係る液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。
図1(a)および(b)に示すように、第1の実施形態に係る液晶装置1は、第1基板としての素子基板20と、素子基板20に対向配置された第2基板としての対向基板30と、素子基板20と対向基板30との間に配置された電気光学物質層としての液晶層40とを備えている。本実施形態では、対向基板30が本発明の電気光学装置用基板としてのプリズム基板10を備えている。
液晶装置1は、例えば、TN(Twisted Nematic)モードやVA(Vertical Alignment)モードで動作する。液晶装置1は、対向基板30側から入射した光を変調して素子基板20側に射出する透過型の液晶装置である。
図1(a)および(b)に示すように、素子基板20は対向基板30よりも一回り大きく、両基板は、額縁状に配置されたシール材42を介して接合されている。液晶層40は、素子基板20と対向基板30とシール材42とによって囲まれた空間に封入された、電気光学物質としての正または負の誘電異方性を有する液晶で構成されている。
シール材42は、例えば熱硬化性または紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤からなる。シール材42には、素子基板20と対向基板30との間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。額縁状に配置されたシール材42の内側には、対向基板30に設けられた額縁状の遮光層32が配置されている。遮光層32は、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなる。
遮光層32の内側は、複数の画素Pが配列された表示領域Eとなっている。表示領域Eは、液晶装置1において、実質的に表示に寄与する領域である。なお、図1(a),(b)では図示を省略したが、表示領域E内においても、複数の画素Pを平面的に区画する遮光部(図3に示す非開口領域D2)が、格子状に設けられている。
素子基板20の1辺部のシール材42の外側には、1辺部に沿ってデータ線駆動回路51および複数の外部接続端子54が設けられている。また、その1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材42の内側には、検査回路53が設けられている。さらに、これらの2辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材42の内側には、走査線駆動回路52が設けられている。
検査回路53が設けられた1辺部のシール材42の内側には、2つの走査線駆動回路52を繋ぐ複数の配線55が設けられている。これらデータ線駆動回路51、走査線駆動回路52に繋がる配線は、複数の外部接続端子54に接続されている。また、対向基板30の角部には、素子基板20と対向基板30との間で電気的導通をとるための上下導通部56が設けられている。なお、検査回路53の配置はこれに限定されず、データ線駆動回路51と表示領域Eとの間のシール材42の内側に沿った位置に設けてもよい。
以下の説明では、データ線駆動回路51が設けられた1辺部に沿った方向をX方向とし、この1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向とする。図1(a)のH−H’線の方向は、Y方向に沿った方向である。また、X方向およびY方向と直交し図1(b)における上方に向かう方向をZ方向とする。なお、本明細書では、液晶装置1の対向基板30の表面の法線方向(Z方向)から見ることを「平面視」という。
図1(b)に示すように、素子基板20の液晶層40側には、画素P毎に設けられたスイッチング素子としてのTFT24(図2参照)と、光透過性を有する画素電極28と、信号配線(図示しない)と、画素電極28を覆う配向膜29とが設けられている。画素電極28は、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの光透過性を有する導電膜からなる。
対向基板30は、後述するプリズム15(図4参照)が設けられた電気光学装置用基板としてのプリズム基板10を備えている。対向基板30の液晶層40側には、遮光層32と、層間層33と、共通電極34と、共通電極34を覆う配向膜35とが設けられている。
遮光層32は、図1(a)および(b)に示すように、平面的に走査線駆動回路52、複数の配線55や検査回路53と重なる位置に額縁状に設けられている。遮光層32は、対向基板30側から入射する光を遮蔽して、これらの駆動回路を含む周辺回路の光による誤動作を防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮蔽して、表示領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
図1(b)に示す層間層33は、遮光層32を覆うように形成されている。層間層33は、例えばシリコン酸化膜(SiO2)などの絶縁膜で形成され、光透過性を有している。層間層33は、遮光層32などに起因する凹凸を緩和し、共通電極34が形成される液晶層40側の面が平坦となるように設けられている。層間層33の形成方法としては、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
共通電極34は、例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの光透過性を有する導電膜からなり、層間層33を覆うとともに、図1(a)に示すように対向基板30の四隅に設けられた上下導通部56により素子基板20側の配線に電気的に接続されている。
配向膜29および配向膜35は、液晶装置1の光学設計に基づいて選定される。配向膜29および配向膜35は、例えば、ポリイミドなどの有機材料を成膜して、その表面をラビングすることにより、液晶分子に対して略水平配向処理が施されたものや、SiOx(酸化シリコン)などの無機材料を気相成長法を用いて成膜して、液晶分子に対して略垂直配向させたものが挙げられる。
液晶層40を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。例えば、ノーマリーホワイトモードの場合、各画素Pの単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少する。ノーマリーブラックモードの場合、各画素Pの単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加し、全体として液晶装置1からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が射出される。
図2に示すように、表示領域Eには、走査線2とデータ線3とが互いに絶縁され交差するように形成されている。走査線2が延在する方向がX方向であり、データ線3が延在する方向がY方向である。画素Pは、走査線2とデータ線3との交差に対応して設けられている。画素Pのそれぞれには、画素電極28と、スイッチング素子としてのTFT24(Thin Film Transistor:薄膜トランジスター)とが設けられている。
TFT24のソース電極(図示しない)は、データ線駆動回路51から延在するデータ線3に電気的に接続されている。データ線3には、データ線駆動回路51(図1参照)から画像信号(データ信号)S1、S2、…、Snが線順次で供給される。TFT24のゲート電極(図示しない)は、走査線駆動回路52から延在する走査線2の一部である。走査線2には、走査線駆動回路52から走査信号G1、G2、…、Gmが線順次で供給される。TFT24のドレイン電極(図示しない)は、画素電極28に電気的に接続されている。
画像信号S1、S2、…、Snは、TFT24を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線3を介して画素電極28に所定のタイミングで書き込まれる。このようにして画素電極28を介して液晶層40に書き込まれた所定レベルの画像信号は、対向基板30に設けられた共通電極34(図1(b)参照)との間に形成される液晶容量で一定期間保持される。
なお、保持された画像信号S1、S2、…、Snがリークするのを防止するため、データ線3に沿って平行するように形成された容量線4と画素電極28との間に蓄積容量5が形成され、液晶容量と並列に配置されている。このように、各画素Pの液晶に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより液晶の配向状態が変化する。これにより、液晶層40(図4参照)に入射した光が変調されて階調表示が可能となる。
次に、画素Pの平面的な配置とプリズム基板10の構造について、図3および図4を参照して説明する。図3は、画素の配置を示す概略平面図である。図4は、画素およびプリズム(反射部)の構造を示す概略断面図である。詳しくは、図4は、図3のA−A’線に沿った概略断面図である。
図3に示すように、画素Pは、表示領域Eに、X方向およびY方向にマトリックス状に配置されている。表示領域Eにおいて、遮光部により光が遮蔽された領域を非開口領域D2という。非開口領域D2は、X方向とY方向とに延在する格子状に設けられている。また、非開口領域D2に囲まれた光が透過する領域を、開口領域D1という。非開口領域D2により、平面視で四角形(略正方形)に区画された開口領域D1が、画素Pの領域(画素領域)である。
X方向に延在する非開口領域D2には、走査線2(図2参照)が設けられている。また、Y方向に延在する非開口領域D2には、データ線3(図2参照)が設けられている。走査線2およびデータ線3は、遮光性の導電材料で形成されており、これらによって液晶装置1の遮光部が構成される。なお、対向基板30の遮光層32を、非開口領域D2に重なるように格子状に設けて、遮光部の一部としてもよい。
素子基板20に設けられた画素電極28は、平面視で四角形(略正方形)であり、外縁部が非開口領域D2に平面的に重なるように配置されている。本実施形態では、非開口領域D2の幅は、X方向およびY方向において同じ幅に設定されている。また、非開口領域D2には、対向基板30に設けられた溝12(プリズム15)が配置されている。
図3においては図示を省略したが、非開口領域D2の交差部付近には、画素P毎にTFT24が配置されている。TFT24を非開口領域D2に配置することにより、TFT24への光の入射が抑制される。
図4に示すように、素子基板20は、基板21と、走査線2と、絶縁層23と、TFT24と、絶縁層25と、データ線3と、絶縁層27と、画素電極28と、配向膜29とを備えている。基板21は、例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料からなる。
走査線2は、例えば、Al(アルミニウム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、Cr(クロム)などの金属材料の少なくとも一つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、ナイトライド、あるいはこれらを積層したものからなり、遮光性を有している。
絶縁層23は、基板21と走査線2とを覆うように設けられている。絶縁層23は、例えばシリコン酸化膜(SiO2)などの絶縁膜で形成され、光透過性を有している。TFT24は、絶縁層23上に設けられている。TFT24は、画素電極28を駆動するスイッチング素子である。図示を省略するが、TFT24は、半導体層、ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極で構成されている。
半導体層は、例えば、多結晶シリコン膜からなり、島状に形成されている。半導体層には、不純物イオンが注入されて、ソース領域、チャネル領域、およびドレイン領域が形成されている。チャネル領域とソース領域、または、チャネル領域とドレイン領域との間には、LDD(Lightly Doped Drain)領域が形成されていてもよい。
ゲート電極は、素子基板20において平面視で半導体層のチャネル領域と重なる領域に絶縁層25の一部(ゲート絶縁膜)を介して形成されている。図示を省略するが、ゲート電極は、下層側に配置された走査線2にコンタクトホールを介して電気的に接続されており、走査信号が印加されることによってTFT24をオン/オフ制御している。
なお、TFT24の構造としては、このような所謂トップゲート構造に限らず、絶縁層23を介して半導体層のチャネル領域と重なり合った走査線2の部分がゲート電極として機能する、所謂ボトムゲート構造を採用してもよい。
絶縁層25は、絶縁層23とTFT24とを覆うように設けられている。絶縁層25は、例えばシリコン酸化膜(SiO2)などの絶縁膜で形成され、光透過性を有している。絶縁層25は、TFT24の半導体層とゲート電極との間を絶縁するゲート絶縁膜を含む。絶縁層25により、TFT24によって生じる表面の凹凸が緩和される。
絶縁層25上には、データ線3が設けられている。データ線3は、走査線2と同様の材料で形成され、遮光性を有している。TFT24は、遮光性を有する走査線2およびデータ線3との間に挟まれるように配置されている。これにより、TFT24の半導体層に光が入射することによりスイッチング動作が不安定になることを抑制している。なお、遮光部として、走査線2およびデータ線3の他に、遮光性の材料で形成された遮光層を、TFT24の下層および上層の少なくとも一方に別途設ける構成としてもよい。
なお、図示を省略するが、絶縁層25上には、データ線3と配線層を異ならせて容量線4が設けられている。絶縁層25とデータ線3と容量線4とを覆うように、絶縁層27が設けられている。絶縁層27は、例えばシリコン酸化膜(SiO2)などの絶縁膜で形成され、光透過性を有している。
画素電極28は、絶縁層27上に、画素Pに対応して設けられている。画素電極28は、開口領域D1に平面的に重なるように配置されている。画素電極28は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの光透過性を有する導電膜からなる。画素電極28は、絶縁層25や絶縁層27に設けられたコンタクトホール(図示しない)を介して、TFT24の半導体層におけるドレイン領域に電気的に接続されている。配向膜29は、画素電極28を覆うように設けられている。
対向基板30は、上述した通り、プリズム基板10と、遮光層32(図1(b)参照)と、層間層33と、共通電極34と、配向膜35とを備えている。対向基板30が備えるプリズム基板10の構成について、以下に説明する。
<電気光学装置用基板>
電気光学装置用基板としてのプリズム基板10は、基板としての基板本体11と、基板本体11の第1面11a側に設けられたプリズム(反射部)15と、第1面11a上に積層された第1封止層13および第2封止層14とを有している。基板本体11は、例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料からなる。
プリズム15は、基板本体11の第1面11a側に形成された溝12を有している。溝12は、液晶層40に向かって開くように、断面視でV字状に形成されている。溝12の断面は、第1面11aに開口する開口部12cを底辺とし、V字状の2つの傾斜面12aを2辺とする略二等辺三角形形状をなしている。溝12の内部は、中空状態の中空部12bとなっている。
溝12は、平面視で、非開口領域D2に重なるように形成されている。すなわち、溝12は、格子状に形成されており、X方向においては走査線2(図2参照)に重なり、Y方向においてはデータ線3(図2参照)に重なるように配置されている。
溝12の略二等辺三角形形状の頂点は、非開口領域D2の幅方向の中心に位置している。溝12の幅(略二等辺三角形形状の底辺の長さ)は、非開口領域D2の幅と同じか、あるいはやや幅広に設定されている。本実施形態では、溝12の幅は、例えば、1μm〜2μm程度である。溝12の深さ(Z方向における長さ)は、例えば、20μm〜30μm程度である。
第1封止層13は、基板本体11の第1面11aを覆い、溝12の開口部12cを塞ぐように形成されている。第1封止層13は、溝12に対してオーバーハング状態であり、例えば、溝12の開口部12cから内部に入り込まないように形成されている。なお、第1封止層13は、開口部12cから僅かに(例えば、1μm程度まで)溝12の内部に入り込んで形成されていてもよい。
第1封止層13には、溝12の開口部12cと重なる位置に、開口部12cよりも小さな開口面積で中空部12bに連通する貫通孔13aが設けられている。貫通孔13aは、平面視で、格子状の非開口領域D2の交差部に配置されている(図3参照)。貫通孔13aの平面形状は、例えば円形であるが、他の形状であってもよい。第2封止層14は、第1封止層13を覆って形成され、貫通孔13aを塞いでいる。第1封止層13および第2封止層14は、シリコン酸化膜などの絶縁膜で形成され、光透過性を有している。
溝12は第1封止層13および第2封止層14によって封止されており、溝12の内部に中空状態の中空部12bを構成している。中空部12bは、例えば、真空に近い状態となっている。プリズム15は、基板本体11の第1面11aとは反対側の第2面11bから入射する光を、基板本体11と溝12との境界面(傾斜面12a)において、液晶層40側に向けて反射する。なお、中空部12bは、空気層となっていてもよい。
ここで、第1封止層13は、開口部12cから溝12の内部に入り込まないように形成されているか、僅かに溝12の内部に入り込んで形成されているので、特許文献1に記載の電気光学装置用基板と比べて、プリズム15の反射面として機能する傾斜面12aをより大きくできる。
<電気光学装置用基板の作用>
続いて、図4を参照して、液晶装置1に入射した光がどのように集光され射出されるかについて説明する。液晶装置1において、対向基板30(プリズム基板10)側から入射した光は、液晶層40によって画素P毎に光変調された後、素子基板20側に射出される。ここで、液晶装置1には、様々な入射角度の光が入射する。例えば、画素Pの領域(開口領域D1)の平面的な中心を通過する光軸に沿って入射した入射光L1は、そのまま画素Pの領域内で直進し、液晶層40を通過して素子基板20側に射出される。
一方、入射光L1よりも外側から入射した入射光L2は、そのまま直進した場合、画素Pの領域(開口領域D1)から外れて遮光部(データ線3)で遮光されてしまう。液晶装置1では、このような入射光L2を、プリズム15で反射させることにより画素Pの領域に向かわせる。このように、液晶装置1では、プリズム15により入射光を画素Pの領域に向けて効率よく導くので、入射光の利用効率を高めることができる。
プリズム15は、入射光を基板本体11と溝12との境界面(傾斜面12a)において全反射させる機能を有する。入射光を全反射させるため、プリズム15の光学条件として、基板本体11の屈折率をR1とし、中空部12bの屈折率をR2とし、傾斜面12aの法線に対する入射光の入射角度をθとした場合、R1>R2、かつ、sinθ>R2/R1を満たす必要がある。
例えば、基板本体11の材料として石英を用いている場合、基板本体11の屈折率R1は1.46であるので、中空部12bの屈折率R2は、例えば1.4以下であればよい。本実施形態では、中空部12bが真空に近い状態であるので、基板本体11の屈折率R1に対して中空部12bの屈折率R2は極めて小さくなる。したがって、入射角度θの広い角度範囲にわたって、入射光を傾斜面12aで全反射させることができる。
プリズム15の傾斜面12aが、基板本体11の第2面11bの法線方向となす角度の設計については、入射光の角度分布や、後述するプロジェクター100の投射レンズ117(図13参照)の取り込み角度(F値)などに基づいて決定される。本実施形態では、傾斜面12aが基板本体11の第2面11bの法線方向となす角度は、例えば、1°〜3°程度である。
なお、液晶装置1における素子基板20や対向基板30には、屈折率が異なる絶縁膜や導電膜などが存在し、入射光はこれらの絶縁膜や導電膜と液晶層40とを透過する。したがって、プリズム15の光学条件として、液晶装置1の構成において最も光の利用効率が高くなる光学条件を見出すことが望ましい。また、プリズム15における溝12の深さ、開口部12cの幅、および傾斜面12aの角度は、最も光の利用効率が高くなる光学条件に基づいて決定されることが望ましい。
<電気光学装置用基板の製造方法>
次に、第1の実施形態に係る電気光学装置用基板としてのプリズム基板10の製造方法について、図5、図6、および図7を参照して説明する。図5、図6、および図7は、第1の実施形態に係る電気光学装置用基板の製造方法を示す概略断面図である。なお、図5、図6、および図7の各図は、図3のA−A’線に沿った概略断面図に相当する。
なお、図示しないが、プリズム基板10の製造工程では、プリズム基板10を複数枚取りできる大型の基板(マザー基板)で加工が行われ、最終的にそのマザー基板を切断して個片化することにより、複数のプリズム基板10が得られる。したがって、以下に説明する各工程では個片化する前のマザー基板の状態で加工が行われるが、ここでは、マザー基板の中の個別のプリズム基板10に対する加工について説明する。
まず、図5(a)に示すように、石英などからなる光透過性を有する基板本体11の第1面11aに、マスク層71を形成する。マスク層71としては、次の工程で形成する溝12を深く形成するため、例えば、W(タングステン)やWSi(タングステンシリサイド)などの金属材料からなるハードマスクを用いることが好ましい。そして、マスク層71に、フォトリソグラフィ技術を用いて開口部71aを形成する。開口部71aは、平面視で図3に示す非開口領域D2に対応して形成される。
次に、マスク層71の開口部71aを介して、基板本体11にエッチング処理を施す。これにより、図5(b)に示すように、基板本体11の第1面11aに、開口部12cと傾斜面12aとを有する溝12が形成される。エッチング処理としては、例えば、高密度プラズマを形成可能なICP(ICP-RIE/Inductive Coupled Plasma-RIE)ドライエッチング装置によるドライエッチングなどを用いる。
エッチングガスとしては、例えば、フッ素系ガスに酸素や一酸化炭素等を混合したガスを用いる。例えば、基板本体11とマスク層71とのエッチング選択比を4以上:1とすると、マスク層71の厚さに対して4倍以上の深さを有する断面V字形状の溝12を形成できる。溝12を形成した後、基板本体11からマスク層71を除去する。
次に、図5(c)に示すように、基板本体11の第1面11aを覆い、溝12の内部を埋めて開口部12cを塞ぐ犠牲層72を形成する。犠牲層72の材料としては、例えば、シリコンを用いることができる。犠牲層72を形成する方法としては、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いることができる。なお、犠牲層72の材料として樹脂材料を用い、スピンコート法などにより塗布して犠牲層72を形成してもよい。
次に、図6(a)に示すように、犠牲層72のうちの溝12の内部よりも外側の部分、すなわち図6(a)における第1面11aよりも上方の部分を除去する。犠牲層72の上方の部分を除去する方法としては、例えば、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理が挙げられるが、ドライエッチングを用いてもよいし、CMP処理を施した後ドライエッチングを施すこととしてもよい。これにより、犠牲層72のうちの、第1面11aよりも上方の部分が除去され、溝12の内部を埋める部分が残される。
なお、この工程において犠牲層72の上方の部分を除去する際、基板本体11の第1面11aが僅かに研磨またはエッチングされるまでCMP処理やドライエッチングを施すこととしてもよい。このようにすれば、溝12の開口部12cが傾斜面12aに対してY方向における外側に広がって形成されている場合に、開口部12cの広がった部分を除去して溝12の断面をV字形状とすることができる。
また、基板本体11の第1面11aが僅かにエッチングされるまでドライエッチングを施す場合、図6(a)に2点鎖線で示すように、溝12の内部を埋める犠牲層72の上面が第1面11aよりも僅かに低く窪んで、第1面11aと犠牲層72との間に段差が生じてもよい。このようにすれば、第1面11aと犠牲層72との僅かな段差により、平面視で溝12を視認しやすくなるので、例えば、プリズム基板10を有する対向基板30と素子基板20とを貼り合わせる工程などで、溝12を位置合わせの基準とすることができる。
次に、図6(b)に示すように、基板本体11の第1面11aおよび犠牲層72(溝12)を覆うように第1封止層13を形成する(第1封止層形成工程)。第1封止層13は、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC2H5)4)を用いた減圧CVD法や、テトラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法などにより形成したSiO2などのシリコン酸化膜で構成される。このとき、図6(a)に2点鎖線で示すように、第1面11aと犠牲層72との間に段差があると、溝12の開口部12cにおける基板本体11と第1封止層13との接触面積を大きくできる。
次に、図6(c)に示すように、第1封止層13の犠牲層72(溝12)と重なる位置に、犠牲層72に到達する貫通孔13aを形成する。貫通孔13aは、フォトリソグラフィ法などにより、その開口面積が溝12の開口部12cよりも小さくなるように形成する。より具体的には、貫通孔13aの開口部の径が溝12の開口部12cのY方向における幅よりも小さくなるように貫通孔13aを形成する。これにより、貫通孔13a内に、犠牲層72が露出する。
次に、図7(a)に示すように、基板本体11の上下(Z方向)を反転させて、基板本体11の第2面11bを覆うように、保護層73を形成する。保護層73は、例えば、プラズマCVD法などを用いて、SiO2などのシリコン酸化膜で形成する。保護層73の膜厚は、犠牲層72とのエッチング選択比やエッチング時間に基づいて適宜設定される。本実施形態では、保護層73の膜厚は、例えば、0.1μm〜2μm程度である。
保護層73は、次の犠牲層除去工程において、基板本体11の第2面11bを保護するためのものである。したがって、保護層73は、犠牲層除去工程で用いるエッチングガスに対して耐性を有することが好ましい。より具体的には、犠牲層除去工程における犠牲層72と保護層73とのエッチング選択比が5000:1程度であることが好ましい。
本実施形態のように保護層73をSiO2で形成すれば、エッチングガスとして以下に述べるフッ素系ガスを用いる場合、犠牲層72の材料であるシリコンに対して高いエッチング選択比が得られる。なお、保護層73の材料は、犠牲層72の材料であるシリコンに対して高いエッチング選択比が得られるものであれば、例えば、アルミニウム(Al)など他の材料であってもよい。
次に、図7(b)に示すように、溝12の内部に埋め込まれた犠牲層72を除去する(犠牲層除去工程)。犠牲層除去工程では、第1封止層13の貫通孔13aを介して、例えば、三フッ化塩素(ClF3)や二フッ化キセノン(XeF2)などのフッ素系ガスをエッチングガスとするドライエッチング処理を施す。これにより、犠牲層72が選択的にエッチングされて溝12の内部から除去される。
ここで、基板本体11の第2面11bに保護層73が設けられていない場合は、犠牲層除去工程において、基板本体11の第2面11bもエッチングガスに晒されることとなる。そうすると、犠牲層72に対して基板本体11のエッチング選択比が高い場合であっても、第2面11bは僅かながらエッチングされるので、第2面11bに微小な凹凸が生じてしまう。その結果、微小な凹凸によって入射光が乱反射され、第2面11bが白濁した状態となって、基板本体11の内部へ透過する光の量が低下してしまうこととなる。
本実施形態では、犠牲層除去工程の前に、基板本体11の第2面11bを保護層73で覆うので、犠牲層除去工程において、第2面11bを保護してエッチングガスに晒されないようにすることができる。また、保護層73は、犠牲層72に対してエッチング選択比が高いので、犠牲層72が溝12の内部から除去されるまで基板本体11の第2面11bを覆ってエッチングガスから保護することができる。これにより、第2面11bに微小な凹凸が生じて基板本体11の内部へ透過する光の量が低下することを防止できる。
また、保護層73で覆うことにより、工程中で第2面11bが露出しないので、第2面11bに治具などが接触して傷などの損傷を受けることを防止できる。保護層73は、犠牲層除去工程の後で、例えば、ドライエッチングやフッ酸を用いたウエットエッチングなどにより基板本体11の第2面11bから除去する。
次に、図7(c)に示すように、再び基板本体11の上下(Z方向)を反転させて、第1封止層13を覆うとともに貫通孔13aを塞ぐ第2封止層14を形成する。第2封止層14は、例えば、第1封止層形成工程と同様に減圧CVD法などを用いてシリコン酸化膜で形成する。これにより、第1封止層13の貫通孔13aが塞がれ、溝12の内部が中空状態で封止されて中空部12bが形成される。この結果、基板本体11にプリズム15が形成される。
本実施形態では、第2封止層14の形成が真空に近い状態に減圧された雰囲気中で行われるため、貫通孔13aを覆って第2封止層14が形成されると、プリズム15の中空部12bは真空に近い状態で封止される。このように、プリズム15の中空部12bは第2封止層14を形成する雰囲気と同じ状態となるため、第2封止層14を空気中で形成すれば、中空部12bは空気層となる。以上により、プリズム基板10が完成する。
対向基板30は、図4に示すように、プリズム基板10を基材として第2封止層14上に遮光層32(図1参照)を形成し、第2封止層14と遮光層32とを覆う層間層33を形成し、層間層33上に共通電極34と配向膜35とを順次形成することで得られる。対向基板30を製造するこれらの各工程は、公知の技術を用いることができるので、説明を省略する。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)基板本体11の第1面11aに形成した溝12の内部を埋める犠牲層72を形成した後、第1面11aおよび犠牲層72を第1封止層13で覆うので、溝12の内部への第1封止層13の入り込みが抑えられる。そして、第1封止層13の貫通孔13aを介して犠牲層72を除去した後、第1封止層13を覆って形成する第2封止層14で溝12の開口部12cよりも開口面積が小さい貫通孔13aを塞ぐので、容易に貫通孔13aを第2封止層14で塞ぐことができる。これにより、特許文献1に記載の電気光学装置用基板の製造方法と比べて、溝12の開口部12cをより確実に塞ぎながら溝12の内部を中空状態の中空部12bとすることができるので、プリズム15の反射面として機能する傾斜面12aをより大きくできる。
(2)犠牲層72を除去する犠牲層除去工程の前に、基板本体11の第2面11bを保護層73で覆うので、ガスを用いたドライエッチングにより犠牲層72を除去する犠牲層除去工程において、第2面11bを保護してガスに晒されないようにすることができる。これにより、第2面11bがガスによりエッチングされないので、第2面11bが白濁した状態となって基板本体11内部へ透過する光の量が低下することを防止できる。また、工程中で第2面11bが露出しないので、第2面11bに治具などが接触して傷などの損傷を受けることを防止できる。これらの結果、入射光が基板本体11を良好に透過し光の利用効率が高いプリズム15を有するプリズム基板10を製造できる。
(3)保護層73は、犠牲層除去工程でドライエッチングに用いるガスに対して耐性を有するので、犠牲層除去工程においてエッチングされにくい。したがって、犠牲層除去工程において、保護層73により基板本体11の第2面11bをより確実に保護することができる。
(第2の実施形態)
<電気光学装置用基板の製造方法>
次に、第2の実施形態に係る電気光学装置用基板の製造方法について、図8、図9、および図10を参照して説明する。図8、図9、および図10は、第2の実施形態に係る電気光学装置用基板の製造方法を示す概略断面図である。なお、図8、図9、および図10の各図は、図3のA−A’線に沿った概略断面図に相当する。
第2の実施形態に係る電気光学装置用基板の製造方法は、第1の実施形態と同じ構成のプリズム基板10を製造する方法であって、第1の実施形態に対して基板本体11の第2面11bに導電層(第1導電層74および第2導電層75)を形成する点が異なっているが、その他の構成はほぼ同じである。なお、第1の実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2の実施形態では、プリズム基板10を製造する各工程において、基板本体11の第2面11b側を静電チャック(静電吸着)により固定して、第1面11a側の加工を行う。そのため、基板本体11の第2面11bに、導電層としての第1導電層74および第2導電層75が設けられる。
図8(a)に示すように、基板本体11の第2面11bには、マスク層71を形成する工程の前に、第1導電層74が形成されている。第1導電層74は、例えば、シリコンにより0.3μm〜0.5μm程度の膜厚で形成される。第1導電層74が形成された第2面11b側を静電チャックにより固定して、図8(a)に示すように基板本体11の第1面11aにマスク層71を形成した後、図8(b)に示すように、基板本体11にエッチング処理を施して溝12を形成する。
次に、図8(c)に示す犠牲層72を形成する工程では、基板本体11の第1面11a側に犠牲層72を形成するとともに、第2面11b側に犠牲層72と同じ材料のシリコンで第1導電層74上に第2導電層75を積層して形成する。第2導電層75の膜厚は、例えば、2μm程度である。これにより、基板本体11をより確実に固定することができる。
次に、第1導電層74および第2導電層75が形成された第2面11b側を静電チャックにより固定した状態で、図9(a)に示すように犠牲層72の外側の部分を除去し、第1面11aおよび犠牲層72を覆うように第1封止層13を形成した後、図9(b)に示すように第1封止層13の犠牲層72と重なる位置に貫通孔13aを形成する。
次に、図9(c)に示すように、基板本体11の上下(Z方向)を反転させて、第2面11b側に、第2導電層75を覆うように保護層73を形成する。
次に、図10(a)に示すように、溝12の内部に埋め込まれた犠牲層72を除去する(犠牲層除去工程)。ここで、保護層73が設けられていない場合は、犠牲層除去工程において基板本体11の第2面11b側の第2導電層75がエッチングガスに晒されることとなる。第2導電層75は犠牲層72と同じシリコンで形成されているため、第2導電層75も犠牲層72とともにエッチングされ除去されてしまう。
また、犠牲層除去工程において、第2導電層75が除去されて第1導電層74が露出すると、第1導電層74も、犠牲層72と同じシリコンで形成されているため、犠牲層72とともにエッチングされることとなる。第1導電層74および第2導電層75が除去されてしまうと、以降の工程で、基板本体11を静電チャックにより固定することができなくなってしまう。
第2の実施形態に係る電気光学装置用基板の製造方法では、犠牲層除去工程の前に第2導電層75を保護層73で覆うので、犠牲層除去工程において、第1導電層74および第2導電層75をエッチングガスから保護することができる。
次に、図10(c)に示すように、再び基板本体11の上下(Z方向)を反転させて、第1封止層13を覆うとともに貫通孔13aを塞ぐ第2封止層14を形成する。なお、第1導電層74および第2導電層75は、対向基板30を製造する各工程、例えば、プリズム基板10上に、遮光層32、層間層33、および共通電極34を形成する工程においても、静電チャックによる固定に利用できる。第1導電層74および第2導電層75は、これらの工程が終了した後、除去すればよい。
第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
(1)基板本体11の第2面11bに第1導電層74および第2導電層75を形成するので、基板本体11の第2面11bを静電チャックにより固定して、第1面11a側の加工を行うことが可能となる。また、第1導電層74および第2導電層75を覆って保護層73を形成するので、犠牲層除去工程において第1導電層74および第2導電層75が除去されないように保護することができる。
(第3の実施形態)
<電気光学装置用基板の製造方法>
次に、第3の実施形態に係る電気光学装置用基板の製造方法について、図11を参照して説明する。図11は、第3の実施形態に係る電気光学装置用基板の製造方法を示す概略断面図である。なお、図11の各図は、図3のA−A’線に沿った概略断面図に相当する。
第3の実施形態に係る電気光学装置用基板の製造方法は、第1の実施形態と同じ構成のプリズム基板10を製造する方法であって、第1の実施形態に対して、保護層76を第1封止層形成工程において第1封止層13と同じ材料で形成する点が異なっているが、その他の構成はほぼ同じである。なお、第1の実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第3の実施形態では、図11(a)に示すように、第1封止層形成工程において、基板本体11の第1面11aに第1封止層13を形成するとともに、第2面11bに第1封止層13と同じ材料のシリコン酸化膜で保護層76を形成する。保護層76を形成することにより、図11(b)に示す第1封止層13に貫通孔13aを形成する工程の後、図11(c)に示す犠牲層除去工程において、基板本体11の第2面11bをエッチングガスから保護することができる。
第3の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
(1)基板本体11の第2面11bを保護する保護層76を、第1封止層13を形成する工程において第1封止層13と同じ材料で形成することができる。これにより、第1の実施形態に係る電気光学装置用基板の製造方法と比べて、保護層76を形成する工程を別途必要としないので、生産性を向上することができる。なお、第3の実施形態に係る電気光学装置用基板の製造方法は、第2の実施形態にも適用することができる。
(第4の実施形態)
<電気光学装置>
次に、第4の実施形態に係る電気光学装置としての液晶装置について、図12を参照して説明する。図12は、第4の実施形態に係る液晶装置の構造を示す概略断面図である。なお、図11の各図は、図3のA−A’線に沿った概略断面図に相当する。
第4の実施形態に係る液晶装置1Aは、第1の実施形態に係る液晶装置1に対して、素子基板20がプリズム基板10を備えている点が異なっているが、その他の構成はほぼ同じである。なお、第1の実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
図11に示すように、液晶装置1Aは、素子基板20の基材としてプリズム基板10を備えている。素子基板20は、プリズム基板10(第2封止層14)上に、走査線2と、絶縁層23と、TFT24と、絶縁層25と、データ線3と、絶縁層27と、画素電極28と、配向膜29とを備えている。なお、第2封止層14と走査線2との間に、シリコン酸化膜などからなる平坦化層が設けられていてもよい。液晶装置1Aにおいても、プリズム15の溝12は、平面視で非開口領域D2に重なるように配置されている。
液晶装置1Aの対向基板30は、例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料からなる基板31上に、遮光層32(図1(b)参照)と、層間層33と、共通電極34と、配向膜35とを備えている。
液晶装置1Aにおいては、素子基板20(プリズム基板10)側から入射した光が、液晶層40によって画素P毎に光変調された後、対向基板30側に射出される。画素Pの領域(開口領域D1)の平面的な中心を通過する光軸に沿って入射した入射光L1は、そのまま画素Pの領域内で直進し、液晶層40を通過して対向基板30側に射出される。
また、入射光L1よりも外側から入射し、そのまま直進した場合、画素Pの領域(開口領域D1)から外れて遮光部(走査線2)で遮光されてしまう入射光L2は、プリズム15で反射することにより、画素Pの領域に向かう。このように、液晶装置1Aにおいても、プリズム15により入射光を画素Pの領域に向けて効率よく導くので、入射光の利用効率を高めることができる。
(第5の実施形態)
<電子機器>
次に、第5の実施形態に係る電子機器について図13を参照して説明する。図13は、第5の実施形態に係る電子機器としてのプロジェクターの構成を示す概略図である。
図13に示すように、第5の実施形態に係る電子機器としてのプロジェクター(投射型表示装置)100は、偏光照明装置110と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー104,105と、3つの反射ミラー106,107,108と、5つのリレーレンズ111,112,113,114,115と、3つの液晶ライトバルブ121,122,123と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム116と、投射レンズ117とを備えている。
偏光照明装置110は、例えば超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット101と、インテグレーターレンズ102と、偏光変換素子103とを備えている。ランプユニット101と、インテグレーターレンズ102と、偏光変換素子103とは、システム光軸Lに沿って配置されている。
ダイクロイックミラー104は、偏光照明装置110から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー105は、ダイクロイックミラー104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
ダイクロイックミラー104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー106で反射した後にリレーレンズ115を経由して液晶ライトバルブ121に入射する。ダイクロイックミラー105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ114を経由して液晶ライトバルブ122に入射する。ダイクロイックミラー105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ111,112,113と2つの反射ミラー107,108とで構成される導光系を経由して液晶ライトバルブ123に入射する。
光変調素子としての透過型の液晶ライトバルブ121,122,123は、クロスダイクロイックプリズム116の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ121,122,123に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調され、クロスダイクロイックプリズム116に向けて射出される。
クロスダイクロイックプリズム116は、4つの直角プリズムが貼り合わされて構成されており、その内面には赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ117によってスクリーン130上に投射され、画像が拡大されて表示される。
液晶ライトバルブ121は、上述した各実施形態のプリズム基板10を有する液晶装置1または液晶装置1Aが適用されたものである。液晶ライトバルブ121は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ122,123も同様である。
第5の実施形態に係るプロジェクター100の構成によれば、複数の画素Pが高精細に配置されていても、入射光の利用効率が向上するプリズム基板10を有する液晶装置1または液晶装置1Aを備えているので、品質が高く明るいプロジェクター100を提供することができる。
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。変形例としては、例えば、以下のようなものが考えられる。
(変形例1)
上記実施形態に係る液晶装置1,1Aは、画素電極28および共通電極34が光透過性を有する導電膜で形成された透過型の液晶装置であったが、本発明はこのような形態に限定されない。液晶装置1,1Aの画素電極28または共通電極34をアルミニウムなどの光反射性を有する導電膜で形成して、反射型の液晶装置としてもよい。画素電極28を光反射性導電膜で形成すれば、対向基板30側から入射した光が、素子基板20側(画素電極28)で反射して対向基板30側から射出される間に光変調される。共通電極34を光反射性導電膜で形成すれば、素子基板20側から入射した光が、対向基板30側(共通電極34)で反射して素子基板20側から射出される間に光変調される。
(変形例2)
上記の実施形態の電子機器(プロジェクター100)では、液晶装置1,1Aが適用された3枚の液晶ライトバルブ121,122,123を備えていたが、本発明はこのような形態に限定されない。電子機器は、2枚以下の液晶ライトバルブ(液晶装置1,1A)を備えた構成であってもよいし、4枚以上の液晶ライトバルブ(液晶装置1,1A)を備えた構成であってもよい。
(変形例3)
上記実施形態に係る液晶装置1,1Aを適用可能な電子機器は、プロジェクター100に限定されない。液晶装置1,1Aは、例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、または電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として好適に用いることができる。
(変形例4)
上記実施形態では、電気光学装置用基板(プリズム基板10)を備えた電気光学装置として、液晶装置を例に説明したが、本発明はこのような形態に限定されない。例えば、電気泳動型表示装置において、表示光量の増大を図ることを目的に電気光学装置用基板(プリズム基板10)を備える構成としてもよい。また、有機エレクトロルミネッセンス装置のように自発光素子有する電気光学装置において、混色等を防止することなどを目的に電気光学装置用基板(プリズム基板10)を備える構成としてもよい。