以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明するが、具体的な実施形態の説明に先立って、本発明について説明する。
本発明は、複数の計量器を備える計量装置において、計量器のスパン異常や零点異常などの異常を判定するものである。
複数の計量器の異常を判定するに当たって、個別の物品1個の重量で比較するには、同じ物品を全ての計量器で測定する以外に方法はなく、計量装置の運転中には同じ物品を測定できないので、上述の従来例と同様に、各計量器によって多数の物品の重量を測定した結果を用いて異常を判定する。
仮に、いずれの計量器にも異常がないとすれば、同じ物品群の多数を、各計量器でそれぞれ計量した場合、各計量器の前記多数の物品の重量の平均値は、個別の物品の重量のばらつきによる平均値のばらつき量の範囲内に存在する。
計量装置は、同じ仕様の複数の計量器を備え、同じ条件で同じ物品群の、重量がほぼ正規分布する物品の多数の重量をそれぞれ測定する。また、複数の計量器は、所定の計量精度内に調整されており、計量誤差は無視できるとする。
全体の計量器の台数に比べて少数の台数、例えば、特定の1台の計量器に、スパン異常などの異常が生じて重量値が増加するとする。この場合、前記特定の1台の計量器によって計量された多数の物品の重量値の平均値の、全ての計量器によってそれぞれ計量された多数の物品の重量値の全体についての平均値に対する偏差は、他の多くの1台の計量器によって計量された多数の物品の重量値の平均値の、全ての計量器によってそれぞれ計量された多数の物品の重量値の全体についての平均値に対する標準的な偏差(標準偏差)に比べて、異常による変動分だけ大きくシフトすることになる。
今、n台の計量器を備える計量装置において、各計量器1〜nによってそれぞれ測定した同一物品群のN個の物品の計量値の平均重量値をそれぞれWa(1)、Wa(2)、…Wa(i)、…Wa(n)とする。すなわち、計量器1によって、同一物品群の物品を1個ずつN回計量したN個分の物品の平均重量値をWa(1)、計量器2によって、同一物品群の物品を1個ずつN回計量したN個分の物品の平均重量値をWa(2)、…計量器iによって、同一物品群の物品を1個ずつN回計量したN個分の物品の平均重量値をWa(i)…、計量器nによって、同一物品群の物品を1個ずつN回計量したN個分の物品の平均重量値をWa(n)とする。
これら全体の平均重量値をWatとする。すなわち、各計量器1〜nによってそれぞれ計量されたN個分の物品の各平均重量値Wa(1)、Wa(2)、…Wa(i)、…Wa(n)の全体について平均重量値を下記のようにWatとする。
Wat={Wa(1)+Wa(2)+…Wa(i)+Wa(n)}/n
ここで、物品の重量分布の性質から判断して、例えば、標準偏差に基づく±4σを超える重量値を得た場合には、この重量値は異常判定の評価対象から除外する。つまり、平均演算の対象から除外する飽和領域を予め設定しておくことが好ましい。この設定範囲は、運転中にも物品の重量の標準偏差の変化に応じて自動的に変化させればよい。
各計量器1〜nによるN個の物品の平均重量値Wa(1)、Wa(2)、…Wa(i)、…Wa(n)の全体の平均重量値Watとの偏差の絶対値を
ea1=|Wa(1)−Wat|
ea2=|Wa(2)−Wat|
………………………………………
eai=|Wa(i)−Wat|
………………………………………
ean=|Wa(n)−Wat|
……(1)
とおく。
各計量器1〜nでそれぞれ測定したN個の物品の重量の平均値Wa(1)、Wa(2)、…Wa(i)、…Wa(n)の標準偏差saを求める。
計量装置の大部分の計量器は正常であるので、多くの計量器による重量値の平均値Watの値は正常値であると考える。全ての計量器は、重量のばらついた異なる個別物品を測定するので、各計量器の平均重量値Wa(1)、Wa(2)、…Wa(i)、…Wa(n)は、それぞれ計量器が正常であってもばらつきを持っており、標準的なばらつきを表す値が標準偏差saである。
或る特定の計量器iが異常になると、平均重量値Wa(i)は異常による増減割合と同じ割合で増減し、全体についての平均重量値Watからの標準的な偏差の範囲を超えた偏差となる。
したがって、特定の計量器が異常状態になりつつある、あるいは、異常状態となったことを報知するには、定期的に所定の個数Nをそれぞれの計量器が測定する度に、上記の各計量器についての偏差絶対値ea1〜eanと標準偏差saを求め、偏差絶対値ea1〜eanのそれぞれと標準偏差saとを比較する。
例えば、計量器1について、判定値としての偏差絶対値ea1と、基準値として、ばらつき量である標準偏差saに係数、例えば2を乗じた値2・saとを比較し、
ea1>2・sa ……(2)
であれば、計量器1について、例えば異常予告の報知を行い、
ea1>3・sa ……(3)
であれば、計量器1について異常状態として報知する。
一般的に外部からの係数Qを設定入力できる手段を設け、
eai/sa>Q ……(4)
とし、Qの値を計量装置の機種、扱う物品の種類、判定に用いるパラメータの性質などに応じて予め設定できるようにすることが、使用者にとって選択裁量が大きく好ましい。上記(2)式の異常予告の報知の場合はQ=2、上記(3)式の異常状態の報知の場合はQ=3としている。なお、Qは整数でなく、1を超える実数であってもよい。
異常判定の評価条件を上記のように設定すれば、物品群全体の重量ばらつきが増減すると、各計量器の平均値Wa(1)、Wa(2)、…Wa(i)、…Wa(n)のばらつきの大きさも全体の計量器の平均値Watの標準偏差saもそれに応じて増減するので、一旦設定したQの値を物品の重量分布の変化に合わせて変更したり、異なる種類の物品を計量する場合でも変更する必要がない。
異常判定の評価を行うタイミングとして、計量装置において、各計量器が同時に必ずしも同数N個の物品を計量するとは限らず、種々の計量個数をとる場合が多い。
各計量器の計量個数Nが等しく揃うことが好ましいが、個数差がNの値に比べて無視できる小さい数値以内であれば、結果に影響はない。
また、いずれの計量器も少なくともN個以上の物品重量を測定した場合を評価のタイミングの条件にすればより適切であり、評価区間の開始時点から全ての計量器の計量個数がN個に到達するまで待つようにしてもよい。この場合、先にN個に到達した計量器は、平均値を計算して待機する。
上記は評価区間を、計量個数によって設定する事例を述べたが、全ての計量器は、運転中は並列に動作し、同一時間にほぼ同一個数の物品を計量するので、各計量器が十分多くの個数を計量する所定の時間を見込んで入力手段より設定するようにしてもよい。
上記の異常予告と異常状態の報知は、偏差レベル差で区別したが、異常予告の状態が複数回連続すると、異常状態を報知するというように確率に関するレベルで区別してもよい。この場合、異常判定の閾値であるQの値は、1回のみによる異常予告の場合より小さい値に設定できる。
また、必ずしも連続でなくても、複数の区間中で異常予告の状態である区間が大きい比率を占めれば、異常状態であるとして報知してもよい。
また、全体の平均重量値Watとして1〜nすべての計量器における平均重量値を平均したものを用いているが、各計量器の偏差を求めるとき、例えば、計量器iの偏差を求めるときには、全体の計量器の平均重量値を求めるに際してWa(1)〜Wa(n)の値の中から当該計量器iの平均値Wa(i)を除外して求めた平均値Wat(e・1)をもって
eai=|Wa(i)−Wat(e・1)| ……(5)
としてもよい。
また、評価の基準として、上記では偏差の大きさを扱ったが、例えば、次のように、
ra1=|{Wa(1)/Wat}−1|
ra2=|{Wa(2)/Wat}−1|
……………………………………………
rai=|{Wa(i)/Wat}−1|
……………………………………………
ran=|{Wa(n)/Wat}−1|
……(6)
とおいて、{Wa(1)/Wat}、{Wa(2)/Wat}、{Wa(i)/Wat}、{Wa(n)/Wat}の標準偏差sa´を求め、ばらつき量である標準偏差sa´に係数Qを掛けた値と、判定値としてのra1、ra2、…rai、…ranとを上記と同様にそれぞれ大小比較して異常を判定するようにしてもよい。
次に、上記本発明を適用した具体的な実施形態について説明する。
図1は、本発明の一つの実施形態に係る計量装置としての重量選別機の概略構成を示す平面図である。
この実施形態の重量選別機1は、被計量物を複数、この例では16台の計量器S1〜S16によって回転しながら計量し、重量ランクに応じた排出位置(1)〜(8)に排出する回転式の多段階重量選別機である。回転台2の周囲には、周方向に沿って等間隔に16台の計量器S1〜S16が配置され、回転台2は、回転中心Oの回りに駆動装置(図示せず)によって所定の速度で矢符A方向へ回転駆動され、この回転台2の回転に伴って各計量器S1〜S16も同方向に一体に回転する。
同一種類の被計量物群、例えば、秋刀魚等の被計量物13は、供給コンベヤ4から計量器S1〜S16に供給される。この供給コンベヤ4は、個別に被計量物13が載置される載置領域が桟等によって区切られており、矢符Bで示される方向へ被計量物13を搬送する。回転する計量器1台と供給コンベヤ4の載置領域の1個が同期して動作し、個々の載置領域に載置された1個の被計量物13が、供給コンベヤ4の搬送終端の下方位置に回転移動してきた各計量器S1〜S16へ順次供給される。
回転台2の下部の周辺には、計量器S1〜S16の荷重をそれぞれ検出する16台のロードセル等の荷重センサ51〜516がそれぞれ設置されており、各計量器S1〜S16は、荷重センサ51〜516を介して回転台2の下部に取付けられている。物品供給範囲において、供給コンベヤ4から計量器S1〜S16に供給された被計量物13は、重量計量範囲内にて重量が測定され、その重量値に応じて予め設定された境界重量値によって、重量ランクが判別され、円周方向に沿う(1)〜(8)の排出位置の対応する排出位置にて、計量器S1〜S16から被計量物13が排出される。
図2は、図1の重量選別機1の制御構成を示すブロック図である。
上述の各計量器S1〜S16の荷重をそれぞれ検出する荷重センサ51〜516のアナログ荷重信号は、計量器用制御ユニット61〜616にそれぞれ入力される。
各計量器用制御ユニット61〜616は、荷重センサ51〜516から出力されたアナログ荷重信号を増幅すると共に、高周波ノイズを除去するアンプ7と、このアンプ7から出力されたアナログ荷重信号をデジタル荷重信号に変換するA/D変換器8と、A/D変換された荷重信号を読み込んで、主として機械系の振動ノイズをフィルタリングしてノイズの除去された荷重信号をシリアルコントローラ9へ送るCPU10とを備えている。
16台の各計量器用制御ユニット61〜616で生成された荷重信号は、それぞれの計量器用制御ユニット61〜616に設けられたシリアルコントローラ9からシリアルラインL1を介して集中制御ユニット11のシリアルコントローラ12へ送られる。
集中制御ユニット11のCPU18には、後述のパルスジェネレータ(PG)17から原点パルスRpとタイミングパルスTpとが与えられ、これらパルスTp,Rpに基づいて、計量器S1〜S16の回転位置を認識する。集中制御ユニット11では、計量器用制御ユニット61〜616からの全ての計量器S1〜S16の荷重信号を集め、それぞれの計量器S1〜S16による荷重信号から所定のタイミングで重量値を取得する。
また、集中制御ユニット11のCPU18は、取得した重量値から重量ランクを判別し、重量ランクに対応する排出位置にて被計量物を排出させたり、各計量器S1〜S16の異常を後述のように判定する異常判定手段としての機能を有する。
集中制御ユニット11のCPU18は、取得した重量値や判別した重量ランクなどを集中制御ユニット11のシリアルコントローラ19を介して遠隔制御ユニット20に送信し、遠隔制御ユニット20では、シリアルラインL2を介してシリアルコントローラ21で受信する。
回転側である集中制御ユニット11と固定側である遠隔制御ユニット20との通信は、図示しないロータリコネクタによって行われ、また、遠隔制御ユニット20側へ供給されている電源が、図示しない給電用のスリップリングを介して集中制御ユニット11側へ給電される。なお、集中制御ユニット11と遠隔制御ユニット20とに無線の送受信回路を設けて無線通信させるようにしてもよい。
遠隔制御ユニット20は、CPU22を備えると共に、上記の重量ランク決定用の境界重量値や後述の異常判定用の設定値N,Qを設定するための各種スイッチ等が設けられた設定手段としての入力設定器23と、集中制御ユニット11から送られてきたデータ等を表示する報知手段としての表示器24とを備えている。
図1の回転中心O回りに回転する回転台2の回転軸(図示せず)には、該回転軸と同心に一体に回転する図3に示される円板14が取り付けられている。
この円板14の外周部には、円周方向に沿って等間隔に16個の透孔h1〜h16が形成されると共に、円板14の中心と一つの透孔h1とを結ぶ延長線上に、透孔h1〜h16よりも幅広の1個の切欠h0が形成されている。この回転円板14は、回転台2と一体に矢符A方向へ回転する。
この円板14の透孔h1〜h16および切欠h0をそれぞれ検出するために、図4に示すように、2組の投光、受光素子Ph11,Ph12;Ph21,Ph22が、図示しない取付具によって固定的に設置される。
一方の投光、受光素子Ph11,Ph12は、円板14の各透孔h1〜h16を検出するように、他方の投光、受光素子Ph21,Ph22は、円板14の切欠h0を検出するように取り付けられる。
また、円板14は、図3に示す回転中心Oと透孔h1の回転方向A側の周縁とを結ぶ仮想延長線a1と、図1に示す回転中心Oと計量器S1の回転方向A側の端縁とを結ぶ仮想延長線a1とが、一致するように回転台2の回転軸に取り付けられる。
2組の投光、受光素子Ph11,Ph12;Ph21,Ph22は、この仮想延長線a1の位置を通過する円板14の透孔h1〜h16および切欠h0をそれぞれ検出する。
円板14および2組の投光、受光素子Ph11,Ph12;Ph21,Ph22によって、円周上における計量器S1〜S16の回転位置を集中制御ユニット11に認識させるための上述のパルスジェネレータ(PG)17が構成される。
このパルスジェネレータ(PG)17からのパルスは、集中制御ユニット11のCPU18に入力され、図5で示されるパルス信号に波形整形される。
図5(a)は、計量器S1〜S16と共に円板14が回転中心O回りに1回回転するのに伴って、投光、受光素子Ph21,Ph22によって円板14の切欠h0が検出されて1回出力される原点パルスRpである。図5(b)は、円板14が1回回転するのに伴って、投光、受光素子Ph11,Ph12によって円板14の透孔h1〜h16が検出されて16回出力されるタイミングパルスTpである。なお、この図5には、後述のシステム状態P1〜P16に対応する期間の一部P16,P1〜P3が併せて示されている。
円板14の透孔h1が、仮想延長線a1上にあるときには、透孔h1よりも幅の広い切欠h0も仮想延長線a1上にあるので、原点パルスRpが出力されている期間内に、透孔h1に対応するタイミングパルスTp1も出力されることになる。
この図5において、円板14の透孔h1に対応するタイミングパルスTp1が立ち上がるタイミングが、該円板14の透孔h1が図1,図3に示す仮想延長線a1に到達したタイミングに対応する。この時点では、計量器S1は、図1に示される位置にあり、計量器S16は、仮想延長線a1から回転方向Aに22.5度ずれた図1に示す仮想延長線a2の位置にある。
図5(a)の原点パルスRpは、円板14の透孔h1に対応するタイミングパルスTp1が立ち上がるときのみ立ち上がる。切欠h0の幅によって図5(a)の原点パルスRpは、図5(b)のタイミングパルスTpの立ち上がりにやや先行して立ち上がり、タイミングパルスTpの立下りよりやや遅れて立ち下がる。
次に、円板14の透孔h2が仮想延長線a1の位置に到達すると、タイミングパルスTp2が立ち上がり、このとき、計量器S2が図1の計量器S1の位置に到達しており、計量器1は図1の計量器S16の位置に到達している。以下、同様に、円板14の透孔h3,h4,h5,…h16が、仮想延長線a1の位置に到達する度に、タイミングパルスTp3,Tp4,…Tp16が立ち上がり、計量器S3,S4,S5,…S16が、図1の計量器S1の位置に順次到達する。その後、1回転して、再び、円板14の透孔h1に対応するタイミングパルスTp1が立ち上がると共に、円板14の切欠h0に対応する原点パルスRpが立ち上がる。
これらのパルスRp,Tpは、そのパルス幅より十分短い時間間隔のタイミングで集中制御ユニット11のCPU18に読み込まれ、上記の計量器S1〜S16の円周上での所定の位置a1〜a16へ到達するタイミングが認識され、図6に示す各計量器S1〜S16の到達位置に応じたシステム状態を判別する。
この図6は、各システム状態P1〜P16において、各計量器S1〜S16が、図1の仮想延長線a1〜a16のいずれの位置へ移動しているかを示すものである。
この図6において、P1〜P16は、第1〜第16の各システム状態を、S1〜S16は各計量器を、計量器到達位置a1〜a16は、図1に示される各仮想延長線a1〜a16の位置をそれぞれ示している。
第1システム状態P1は、図5に示すように、原点パルスRpが立ち上がっている期間内のタイミングパルスTp1の立ち上がりのタイミングからタイミングパルスTp2の立ち上がりまでの期間に対応する。この期間では、図6に示すように、計量器S1が、図1に示される仮想延長線a1の位置から仮想延長線a2の位置まで移動する期間であって、この期間では、計量器S16が、図1に示される仮想延長線a2の位置から仮想延長線a3の位置まで、計量器S15が、図1に示される仮想延長線a3の位置から仮想延長線a4の位置まで、以下同様に、計量器S2が、図1に示される仮想延長線a16の位置から仮想延長線a1の位置まで移動する。
各計量器S1〜S16の回転中心O回りの22.5度ずつの回転に応じて、タイミングパルスTpが出力され、システム状態は、第2システム状態P2、第3システム状態P3、第4システム状態P4、……、第16システム状態p16と変遷し、1回転して、原点パルスRpとタイミングパルスTpとが共に出力されて、再び、第1システム状態P1に戻り、上記と同様にシステム状態が、第2システム状態P2、第3システム状態P3、第4システム状態P4、……、第16システム状態P16と変遷し、再び、第1システム状態S1に戻るという変遷を繰り返す。
各システム状態P2、P3、P4、…P16についても各計量器S1〜S16は、第1システム状態P1と同様の動作を行なう。
例えば、第2システム状態P2は、図5に示すように、タイミングパルスTp2の立ち上がりのタイミングから次のタイミングパルスTp3の立ち上がりまでの期間に対応するものである。この期間では、図6に示すように、計量器S2が、図1の仮想延長線a1の位置に到達してから仮想延長線a2の位置まで移動する期間であって、この期間では、計量器S1が、図1の仮想延長線a2の位置から仮想延長線a3の位置まで、計量器S16が、図1の仮想延長線a3の位置から仮想延長線a4の位置まで、以下同様に、計量器S3が、図1の仮想延長線a16の位置から仮想延長線a1の位置まで移動する。
また、例えば、第16システム状態P16は、図6に示すように、計量器S16が、図1の仮想延長線a1の位置に到達してから仮想延長線a2の位置まで移動する期間に対応し、この期間では、計量器S15が、図1の仮想延長線a2の位置から仮想延長線a3の位置まで、計量器S14が、図1の仮想延長線a3の位置から仮想延長線a4の位置まで、以下同様に、計量器S1が、図1の仮想延長線a16の位置から仮想延長線a1の位置まで移動する。
言い換えると、計量器S1、計量器S2、……、計量器S16のそれぞれが仮想延長線a1の位置に到達してから仮想延長線a2の位置に到達するまでの期間を、それぞれシステム状態P1、システム状態P2、……、システム状態P16とするものである。
この図6のシステム状態の時間遷移を、集中制御ユニット11のCPU18にて作成することで、計量器S1〜S16のそれぞれが円周上での所定の位置a1〜a16への到達するタイミングが認識されるが、認識方法は、図7に示すプログラムを、タイミングパルスTpのHレベルの幅より十分短い時間間隔にて他のプログラムに対する最優先度で繰返し実行することで行われる。
図7は、システム状態P1〜P16を判別するための処理を示すフローチャートであり、集中制御ユニット11のCPU18によって実行される。内蔵のクロック生成回路の、例えば、1msecのクロックパルスによってCPU18に割り込みをかけ、最優先処理にて実行する。上述のパルスTp,Rpは、回転台2の回転を最速にしても、1msecより十分長いパルス幅であるように、円板14の切欠h0および透孔h1〜h16の幅が形成されている。
先ず、タイミングパルスTpがハイレベルであるか否かを判断し(ステップn1)、ハイレベルでないときには、システム状態の移行タイミングではないので、システム状態移行フラグF1を「0」にリセットする(ステップn9)。
ステップn1において、タイミングパルスTpがハイレベルであるときには、システム状態の移行タイミングであるとして、システム状態移行フラグF1が「0」であるか否かを判断し(ステップn2)、該フラグF1が「0」であるときには、ステップn3に移り、原点パルスRpがハイレベルであるか否かを判断し、ハイレベルであるときには、第1システム状態P1への移行タイミングであるとして、いずれのシステム状態であるかを示すカウンタCpに、第1システム状態であることを示す「1」をセットしてステップn5に移る(ステップn4)。また、原点パルスRpがハイレベルでないときには、第1システム状態P1以外の他のシステム状態への移行タイミングであるとして、カウンタCpの計数値に「1」を加算してステップn5に移る(ステップn8)。
ステップn5では、システム状態移行フラグF1を「1」にセットし、ステップn6では、カウンタCpの計数値のシステム状態が開始したことを示すシステム状態開始フラグF2に「1」をセットし、ステップn7に移る。ステップn7では、集中制御ユニット11のシリアルコントローラ12から入力した各計量器S1〜S16の荷重信号によって各計量器S1〜S16別に荷重信号を記憶しているレジスタWRの内容を更新する。
この実施形態では、複数の計量器S1〜S16のスパン異常や零点異常などの計量器の異常を判定するものであり、具体的には、上述の(4)式に基づいて、異常を判定するようにしている。
すなわち、各計量器S1〜S16によってそれぞれ計量した被計量物13のN個の計量値の平均重量値Wa(1)、Wa(2)、…Wa(i)、…Wa(16)をそれぞれ算出する。
更に、これら全体の平均重量値Watを次式に従って算出する。
Wat={Wa(1)+Wa(2)+…Wa(i)+Wa(16)}/16
また、上記平均重量値Wa(1)、Wa(2)、…Wa(i)、…Wa(16)と全体の平均重量値Watとの偏差の絶対値
ea1=|Wa(1)−Wat|
ea2=|Wa(2)−Wat|
………………………………………
eai=|Wa(i)−Wat|
………………………………………
ea16=|Wa(16)−Wat|
を算出する。
次に、上記平均重量値Wa(1)、Wa(2)、…Wa(i)、…Wa(16)の標準偏差saを求める。
そして、各計量器S1〜S16についての偏差絶対値ea1〜ea16を標準偏差saで除算した値と設定された係数値Qとをそれぞれ比較して各計量器S1〜S16の異常を判定する。
eai/sa>Q ……(4)
この(4)式が成立する場合に、その計量器iは異常であると判定する。
このQの値及びNの値は、入力設定器23から設定する。
図8は、かかる異常判定処理等を示すフローチャートであり、集中制御ユニット11のCPU18において実施される。
これは、例えば、10msecの一定の時間間隔で実施されるが、図7の処理に対して優先度は2番目の処理である。
先ず、システム状態の開始を示すシステム状態開始フラグF2が「1」であるか否かを判断し(ステップn101)、システム状態開始フラグF2が「1」であるときには、システム状態の開始であるとして、該フラグF2を「0」にリセットし(ステップn102)、システム状態を示すカウンタCpの値に対応した計量器の番号、例えば、第1システム状P1態であるときには、仮想延長線a1の位置に到達した計量器S1、第2システム状態P2であるときには、仮想延長線a1に位置に到達した計量器S2、第3システム状態P3であるときには、仮想延長線a1の位置に到達した計量器S3の荷重信号Wa(i)を荷重信号レジスタWRから呼び出す(ステップn103)。呼び出した荷重信号を重量値に換算し、予め定められている境界重量値に基づいて、重量ランクを判定し(ステップN104)、異常判定のために計量器別に計量した回数と重量値をそれぞれ加算する(ステップn105)。
次にいずれの計量器S1〜S16の計量回数もN回以上になったか否か、すなわち、全ての計量器S1〜S16が、被計量物13をN個分計量したか否かを判断し(ステップn107)、N回以上になったときには、各計量器S1〜S16別にN個の被計量物13の平均重量値を算出し(ステップn108)、上述のように、偏差の絶対値を算出して上記(4)式に従って、異常を判定し、計算結果と判定結果とを表示器24に表示する(ステップn109)。次に、計量回数と重量値加算用の各レジスタをリセットして終了する(ステップn110)。
以上の処理を、例えば計量器S1における重量測定について説明すると、 計量器S1が仮想延長線a1の位置に到達したとき、供給コンベヤ4から計量器S1へ供給された被計量物13の荷重信号は、計量器S1が図1における物品供給位置bから仮想延長線a1の位置に到達した時点、すなわち、第1システム状態P1が開始された時点で十分安定しているので、上述の図7と図8に示す処理によって、計量器S1が仮想延長線a1の位置に到達したときの荷重信号を取得して被計量物13の重量を取得する。
図8の処理において、システム状態開始フラグF2が「1」であると、そのときのカウンタCpの値に応じた計量器番号の荷重信号を荷重信号レジスタWRから読み出す。荷重信号レジスタWRには、計量器S1〜S16までの最新の荷重信号が記憶されている。これらは計量器用制御ユニット61〜616内にてフィルタリングされ、電気的に安定な信号になっている。
計量器S1が仮想延長線a1の位置に到達したときは、カウンタCp=1であるからCp=1に応じて選択される荷重信号は計量器S1による荷重信号である。
この荷重信号から重量値が算出され、重量ランクを定義付けるための境界重量値に基づいて、計量器S1の被計量物13の重量ランクが判別される。そして、計量器S1が判別された重量ランクに対応する排出位置に到達すると、計量器S1から被計量物13が排出される。
以上は計量器S1の例であるが、他の計量器S2〜S16についても同様である。
各計量器の異常の判定のために、計量された重量値及び計量回数(計量個数)も計量器別に加算される。いずれの計量器にも常に被計量物13が載置されない場合があるので、重量値の計量個数がN個に到達したものから順に平均値を算出する。
通常、Nは十分大きい値を設定するので、いずれかの計量器の重量値がNに到達すると、他の計量器については、その時点の回数で平均値を算出しても各計量器及び全体の計量器の重量値の平均値に対する影響は小さいのでそのようにしてもよい。
以上のようにして全ての計量器S1〜S16についての平均値Wa(1)〜Wa(16)が求まると、全体平均値Watと(1)式におけるea1〜ea16と、標準偏差saを求め、これらのデータを遠隔制御ユニット20に送り、表示器24に表示させる。
また、予め設定された係数Qの値に基づいて、異常予告レベル或いは異常警報レベルが成立する計量器があれば、遠隔制御ユニット20に送り、遠隔制御ユニット20の表示器24に表示させる。
また、異常報知については、異常予告レベルに、例えば、N個への到達を1区間として、3回の区間の間連続して異常予告レベルに到達した場合に、異常警報レベルと判定してもよい。すなわち、発生レベルより発生確率の大小に重きを置いて判定する方法を採用してもよい。
異常予告を判定する場合もレベル判定であれば、評価区間における大きい環境変化の影響を受け、荷重センサが異常傾向でないにもかかわらず、異常の予告が判定されることが起こり得るとすれば、異常警報レベルの扱い同様に、例えば、eai>saが3回区間連続成立すれば、異常予告判定としてもよい。
また、eai>2・saの1回成立とeai>saの3回区間の連続成立のいずれかにて異常予告するというように並列動作でもよい。
次に、具体的に数値の一例を挙げて説明する。
重量選別機1で重量を測定する被計量物13の重量が正規分布し、標準偏差=40gであるとする。重量選別機1は、16台の計量器S1〜S16を備えており、全体で毎分160個の計量処理能力で運転されるとし、1台の計量器当たり2500個の計量値の平均値をもって異常判定の評価を行うものとする。
1台の計量器としては、160/16=10個/分=600個/時の重量値を得る。N=2500、すなわち、4時間あまりの運転による測定区間毎に異常を判定することになる。
個別の被計量物13の標準偏差σ=40(g)であるからN個の平均重量値の標準偏差σa=σ/N1/2、また16台の全体の計量器S1〜S16の平均重量値Watの標準偏差σaa=σ/(16・N)1/2、
したがって、計量器iに関する偏差ea(i)の標準偏差saは、(1)式において
eai=|Wa(i)−Wat|
であるから、
sa=(σa2+σaa2)1/2
=[(σ2/N)+{σ2/(16・N)}]1/2
={17/(16・N)}1/2・σ
=(17/16)1/2・(1/N)1/2・σ
=(4.1231/4)・(1/50)・40
=0.8246(g)
従って、Q=2が設定されているとすれば、計量器iについての平均重量値の、全体の計量値の平均重量値からの偏差の絶対値ea(i)の値が、
Q・sa=2・sa=1.65(g)を超えると、異常予告がされる。
そして、被計量物13の重量分布のばらつきが増え、標準偏差がσ=50(g)になると、sa=1.01(g)であるからea(i)の値が2.02(g)を超えると、異常予告が報知される。したがって、ばらつきが増えると、それに応じて異常予告レベルも上がる。単にばらつきが増えても、基準値(Q・sa)を超えなければ異常予告を報知しない。
より小さい異常を判定するには、より大きいNを設定し、より大きいサンプル重量値でもってsaの値を小さくして評価すればよい。
この実施形態では、スパン異常、零点異常を区別することなく、計量器の異常として判定したけれども、零点が確実に正常に調整されているのであれば、計量器の異常は、スパン異常として判定することができる。
次に、参考例として、計量器への異物の着脱が繰り返され、零点調整がそれに追従できない場合などにおいて生じる零点異常の判定について説明する。
自動零点調整または手動零点調整の指示されたタイミングの物品重量値Wn(i)は計量台上が無負荷の場合であり、指示されたタイミングで零点重量Wz(i)が、
Wz(i)−Wn(i) → Wz(i)
と演算される。
荷重センサや計量機構が異常になると、度々自動零点調整また手動零点調整の指示タイミングでWn(i)≠0である値がWz(i)に正負いずれかの値で累積され、大きな値になる。
累積された零点重量値が所定の値以上に到達すれば、零点異常と判定する事例はあるが、所定の値をいくらに決めるかの基準が明確でなく、所定の値の選択によっては、異常でなくても異常判定したり、反対に異常であっても報知されないことが起こり、実用的でない。
上記の重量値に関する異常判定と同様に、1台の計量器の零点異常を判定するために他の多くの計量器を参照すると共に、各計量器の正常な累積零点重量値のばらつき量に基づいて、異常な累積零点重量値を判定する手法を用いる。
上述のように急な温度変化などの環境変化によって零点が異常でなくても各計量器の累積零点重量値がばらつくことはあり、異常判定の評価基準はその時々の正常な各計量器の累積零点重量値のばらつき量に基づいて設定しなければならない。
零点異常を判定する場合には、所定の間隔で各計量器の累積零点重量値、すなわち、その時点における零点重量値Wz(1)、Wz(2)、……Wz(n)をそれぞれ読み出す。零点異常は、零点の正負いずれかの方向に移動量が特別大きい場合であるから、異常判定のパラメータとしては、絶対値|Wz(1)|、|Wz(2)|、……、|Wz(n)|に変換した値を用いて評価する。
これら絶対値の平均値Wzatを求めて、上記実施形態の異常判定と同様の論理によって零点異常を判定する。すなわち、前記絶対値と平均値Wzatの差を下記のように算出し、
za1=|Wz(1)|−Wzat
za2=|Wz(2)|−Wzat
………………………………………
zai=|Wz(i)|−Wzat
………………………………………
zan=|Wz(n)|−Wzat
更に、絶対値|Wz(1)|、|Wz(2)|、……、|Wz(n)|の標準偏差saを求め、
zai/sa>Q
によって、零点異常を判定する。
なお、零点に関して零点の時間経過における変化量、すなわち、零点変化率について正常、異常を判定する場合でも、同様に処理すればよい。
計量装置における重量値に関する異常判定に用いるパラメータには、上記に掲げたもの以外に、電源投入時に読み込む初期重量値、各計量器の重量ばらつき量など種々の評価対象が存在し、これらすべてのパラメータについて同様に処理すればよい。
上述の実施形態では、多段階の重量選別機に適用して説明したけれども、重量選別機に限らず、組合せ秤に適用してもよい。次に、組合せ秤に適用した場合について説明する。
自動供給式の組合せ秤の場合、図9に示すように、図示しない被計量物が上方から供給される円錐状の分散フィーダ25の外周には、等間隔に複数の直進式の振動フィーダ26が設置され、各振動フィーダ26によって分散フィーダ25からの被計量物を外周側へ搬送し、次段の複数の各供給ホッパ27にそれぞれ投入する。複数の供給ホッパ27では一時的に被計量物を保持し、その下方に設置された複数の各計量ホッパ28にそれぞれ投入する。各計量ホッパ28では、投入された被計量物の重量が計量され、その計量値に基づいて組合せ演算して目標重量に近い計量ホッパ28の組合せを選択し、選択された計量ホッパ28から被計量物を集合シュート29に排出する。
かかる組合せ秤では、各供給ホッパ27を経由して各計量ホッパ28に目標重量に近い被計量物が供給されるように、直進式の振動フィーダ26の所定の送力パラメータ、例えば、振幅、駆動時間などが設定される。
この場合、被計量物の性状と直進フィーダ26上の被計量物の体積などを要因として、直進式の振動フィーダ26を、所定の送力パラメータにて駆動しても供給ホッパ27、すなわち、計量ホッパ28へ供給される被計量物の体積はばらつき、ばらつきの標準偏差は目標供給量の30%程度の値を示す。
供給目標重量を、例えば、20(g)とすると、標準偏差σ=6(g)である。
例えば、12台の計量ホッパ28を備え、標準的に4台の計量ホッパ28内の被計量物の組合せで組合せ商品を作成し、組合せ処理能力120個/分で運転されているものとする。
1個の組合せ商品は4台の計量ホッパ28の被計量物によって作成されるので、120個の商品は120×4=480台/分の重量値が用いられるので、各計量ホッパ28が均等に選択されたとすれば、1台あたり毎分40個の計量値が選択される。すなわち、1時間当たりで2400個が計量される。
計量値を評価する運転区間を、1時間あまりの運転による個数であるN=2500に設定し、計量ホッパ28別に平均値を求めること、計量ホッパiに関する偏差ea(i)の標準偏差saは、上記の計算によれば、
sa=(σa2+σaa2)1/2
=[(σ2/N)+{σ2/(12・N)}]1/2
=(13/12)1/2・(1/N)1/2・σ
=(3.6056/3.4641)・(1/50)・6
=0.1249(g)
である。より精密に、安定に評価するには、Nをより大きい値に設定し、評価・判定のための運転区間をもっと長く取ればよい。
偏差ea(i)の標準偏差saは小さいので、異常予告レベル値としてはQ=3を設定し、異常状態の報知レベルを、Q=4とする。計量する被計量物の種類を変更して標準偏差が異なっても対応できる。