JP6024276B2 - 静電荷像現像用トナー及びその製造方法 - Google Patents
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例えば、乳化重合凝集法についての提案がなされている(特許文献1及び2参照)。
また、前記乳化凝集法の抱える界面活性剤の使用における問題点を改良した技術についての提案もなされている(特許文献3及び4参照)。
また、小粒径トナーとした場合の粉体流動性、転写性に優れるとともに、耐熱保存性、低温定着性、及び耐ホットオフセット性のいずれにも優れた乾式トナーについての提案もなされている(特許文献6、7及び8参照)。
これらの提案のトナーの製造方法は、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーを有機溶媒及び水系媒体中でアミンと重付加反応させる高分子量化工程と、加温等による有機溶媒を除去する工程とを含むものであり、特に特許文献8には、反応開始剤の分解物や残留溶媒などの量を効率よく抑制し、臭気などがなく、粒子径が均一で粒度分布の狭いトナーを得るために有機溶剤除去工程時における有機溶媒の除去方法について詳細に述べられている。
また、重合トナーの製造時における液面コントロールにより、粒度分布をシャープにしたり、効率的に残留重合性単量体を除去する方法が提案されている(特許文献9及び10参照)。
即ち、本発明は、低温定着性と耐熱保存性とを両立し、長期使用においても高画質が得られる静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供することを目的とする。
なお、本発明の静電荷像現像用トナー及びその製造方法においては、高画像品質の確保に必要とされるトナー特性(低温での離型性、フィルミングの発生抑制、小粒径、且つ狭い粒度分布等)を達成することを目標とする。
以降、「静電荷像現像用トナー」を「トナー」と略称することがある。
即ち、上記課題は、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子の表面に樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層Bを有する静電荷像現像用トナーであって、
前記樹脂微粒子層Aはアニオン性の樹脂微粒子(A)を含有し、前記樹脂微粒子層Bは体積平均粒子径が10〜200nmでガラス転移温度が40〜80℃であるスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含有すると共に、樹脂微粒子層Aは少なくとも樹脂微粒子層Bの外側に形成されていることを特徴とする静電荷像現像用トナーにより解決される。
前記樹脂微粒子層Aはアニオン性の樹脂微粒子(A)を含有し、前記樹脂微粒子層Bは体積平均粒子径が10〜200nmでガラス転移温度が40〜80℃であるスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含有すると共に、樹脂微粒子層Aは少なくとも樹脂微粒子層Bの外側に形成され、
且つ、前記トナーは、結着樹脂及び着色剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散してトナー材料液を形成する工程(I)と、
前記トナー材料液、樹脂微粒子(A)およびスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含むトナー材料液の乳化乃至分散液を形成する工程(II)と、
前記トナー材料液の乳化乃至分散液から有機溶媒を除去してトナー母体粒子を形成する工程(III)と、
前記形成され水中に分散したトナー母体粒子を水で洗浄して伝導度を調整する工程(IV)と、
前記洗浄され水中に分散したトナー母体粒子を攪拌下に加熱処理する工程(V)と、
を含む工程により製造されることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法により解
決される。
前記樹脂微粒子層Aはアニオン性の樹脂微粒子(A)を含有し、前記樹脂微粒子層Bは体積平均粒子径が10〜200nmでガラス転移温度が40〜80℃であるスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含有すると共に、樹脂微粒子層Aは少なくとも樹脂微粒子層Bの外側に形成されていることを特徴とするものである。
また、前記トナーは、結着樹脂及び着色剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散してトナー材料液を形成する工程(I)と、
前記トナー材料液、樹脂微粒子(A)およびスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含むトナー材料液の乳化乃至分散液を形成する工程(II)と、
前記トナー材料液の乳化乃至分散液から有機溶媒を除去してトナー母体粒子を形成する工程(III)と、
前記形成され水中に分散したトナー母体粒子を水で洗浄して伝導度を調整する工程(IV)と、
前記洗浄され水中に分散したトナー母体粒子を攪拌下に加熱処理する工程(V)と、
を含む工程により製造される。
本発明において、「スチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)」を「樹脂微粒子(B)」、「アニオン性の樹脂微粒子(A)」を「樹脂微粒子(A)」、「トナー母体粒子」を「トナー粒子」、と略称することがある。
また、「トナー材料液」を「(油相)」、「水系媒体」を「水相」、「トナー材料液の乳化乃至分散体」を「液滴」と呼称することがある。また、前記(I)〜(V)を含む工程により製造される静電荷像現像用トナーを、「重合法によるトナー」あるいは「重合トナー」と称することがある。
また、後述するように、樹脂微粒子(A)が、アニオン性のビニル系樹脂であることが好ましく、特にスチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルから成る共重合体であることが好ましい。
上記のようにして得られたトナーは、着色剤及び結着樹脂を含有するトナー材料を核としたトナー粒子本体の表面に、樹脂微粒子(B)が付着した被覆層を形成し、更にその被覆層の外側に樹脂微粒子(A)が付着した層構造を形成している。なお、トナーの体積平均粒子径は、乳化工程における水系媒体の攪拌等の乳化乃至分散条件により調整される。
このタイミングではトナー組成物の液滴に有機溶媒が存在しているため、樹脂微粒子(B)は液滴表面に付着した後に液滴表面からある程度進入し、有機溶媒が除去された後にトナー表面に付着固定化されるといった望ましい形態を実現することができる。
すなわち、次の有機溶媒を除去する工程(III)で、トナー材料を核としたトナー粒子本体の表面に樹脂微粒子(B)が付着するように添加すればよい。
洗浄され水中に分散したトナー母体粒子を攪拌下に加熱処理する工程(V)においては、加熱処理の温度を、後述のように、前記結着樹脂のガラス転移温度(Tg)の±10℃以内に設定するのが好ましい。これにより、BET比表面積が十分に低下せずトナーの付着力が増大する。
一方、前記結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、20℃以上50℃未満が好ましく、より好ましくは20〜35℃である。Tgが20℃未満ではトナーの保存温度帯での十分な耐熱保存性が得られず、トナー粒子同士の凝集が発生してしまう。Tgが50℃以上では耐熱保存性が発現できるもののトナーの低温定着性を阻害する場合がある。
しかし、本発明の製造方法により得られるトナーは、樹脂微粒子(B)が比較的大きくトナー粒子本体に埋没しにくい。樹脂微粒子(B)としては、スチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体であることが好まく、特にスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体を含む架橋樹脂の微粒子であることが好ましい。このような樹脂微粒子(B)は、架橋されていて比較的硬いことから、現像器内での機械的ストレスによってトナー粒子表面で変形することなく、スペーサ効果も保持するため、外添剤の埋没も防止され、上述の付着力維持にはさらに適している。特に、スチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体ではスチレン単独での微粒子よりも架橋密度の制御が比較的容易であることや、反応条件/触媒等でブタジエンのcis-trans比率の制御が可能であることから調整弾性の付与/調整も容易となることから好ましい。
つまり、乳化工程(II)において、乳化前又は乳化後に樹脂微粒子(B)が添加された時にトナー材料の液滴に有機溶媒が存在しているため、樹脂微粒子(B)は液滴表面に付着した後に溶解してしまう場合があるが、トナー粒子を構成する結着樹脂成分がポリエステル樹脂であり、樹脂微粒子(B)がスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体を含む架橋樹脂を含有する樹脂微粒子である場合、双方の樹脂同士の相溶性が悪いために樹脂微粒子(B)はトナー材料の液滴と相溶せずに付着した状態で存在する。したがって、樹脂微粒子(B)が液滴表面からある程度進入し、有機溶媒が除去された後にトナー表面に付着固定化されるといった望ましい形態を実現することができる。
なお、「相溶性」であるか「非相溶性」であるかは、未変性な結着樹脂を有機溶媒に対して50%の重量比率で溶解させ、その溶液に各種溶液を加えたときに、二層に分離した場合は非相溶性、分離しない場合は相溶性であると目視で判断して行う。
例えば、トナー粒子表面に樹脂微粒子(B)が付着固定化した構造を取るには、トナー材料を有機溶媒に溶解または分散し、このトナー前駆体の溶解または分散液をアニオン性界面活性剤とアニオン性の樹脂微粒子(A)(体積平均粒子径が5〜50nm程度)が含まれる水系媒体中で乳化乃至分散し、有機溶媒を除去した後に加熱処理を施してトナーを製造する際に、有機溶媒を除去前に水系媒体中へ体積平均粒子径が10〜200nmでガラス転移温度が40〜80℃であるスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン樹脂微粒子(B)を添加する。
また、ポリエステル系樹脂の結着樹脂中の含有量が50質量%未満であると、加熱定着時にトナーを均一に融解させることが困難であることから、低温定着性を阻害する場合がある。
また、前記結着樹脂中に結晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。結晶性ポリエステルを含むことにより、低温定着性やトナー画像の光沢性等の向上を図ることができる。
あるいは、前記結着樹脂として活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂を含むことができる。活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂を含むことにより、後述のように、樹脂微粒子(B)や外添剤の埋没を抑制することができ、またトナーの加熱定着時の流動性を調節することができる。
本発明における製造工程とトナー材料液、水系媒体を用いることにより、樹脂微粒子(B)の添加時期に影響されず図1に示すような構造を形成する。2層構造を形成する詳細理由については明確ではないが、以下のように推定している。
即ち、前記樹脂微粒子Bは、前記アニオン性界面活性剤を含む水系媒体中で凝集体を生成する性質を有することから、本発明の製造方法において樹脂微粒子Bが添加された時に、乳化時又は乳化後に水相側に存在していた樹脂微粒子Bがトナー材料の液滴表面に移動し、容易にトナー材料の液滴表面に付着することができる。すなわち、前記アニオン性界面活性剤を含む水系媒体中では、前記樹脂微粒子Bが不安定で、通常であれば凝集してしまうところ、トナー材料の液滴があるとトナー材料の液滴との引力が強い場合、異種粒子の複合体が形成されると考えられる。
前記樹脂微粒子層Aはアニオン性の微粒子(A)を含有し、樹脂微粒子層Bはスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含有すると共に、樹脂微粒子層Aは少なくとも層Bの外側に形成され、
且つ、前記トナーは、結着樹脂及び着色剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散してトナー材料液を形成する工程(I)と、
前記トナー材料液、樹脂微粒子(A)およびスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含むトナー材料液の乳化乃至分散液を形成する工程(II)と、
前記トナー材料液の乳化乃至分散液から有機溶媒を除去してトナー母体粒子を形成する工程(III)と、
前記形成され水中に分散したトナー母体粒子を水で洗浄して伝導度を調整する工程(IV)と、
前記洗浄され水中に分散したトナー母体粒子を攪拌下に加熱処理する工程(V)と、
を含む工程により製造されることを特徴とするものである。
本発明のトナー製造方法は、前記工程(IV)で伝導度が調整される。これにより調整され洗浄されたトナー母体粒子分散液の伝導度(工程(V)の分散液)が0.1μS/cm〜1000μS/cmであることが好ましく、特に0.1μS/cm〜50μS/cmが好ましい。伝導度が50μS/cmよりも高い場合には、加熱処理を施してもBET比表面積が十分に低下せず、トナー表面上の凹部に外添剤が移動し、トナーの付着力が増大する。また、伝導度が0.1μS/cmよりも低い場合には、トナー粒子同士の凝集が発生し、トナーの体積平均粒径(Dv)と数平均粒経(Dn)の比[(Dv)/(Dn)]が高くなり、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなる恐れがある。
加熱温度が結着樹脂のTgよりも10℃を超える場合には、BET比表面積が十分に低下せず、トナー表面上の凹部に外添剤が移動し、トナーの付着力が増大する。また、加熱温度が結着樹脂のTgよりも15℃以上高い場合には、トナー粒子同士の凝集が著しく、トナーの体積平均粒径(Dv)と数平均粒経(Dn)の比[(Dv)/(Dn)]が高くなり、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなる。
例えば、有機溶媒を除去してトナー粒子を形成した後、該トナー粒子を含む水を40〜60℃で加熱処理し、樹脂微粒子(B)を付着固定化する。乳化ないし分散においては、必要に応じて、油滴を安定化させ、所望の形状を得つつ粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
得られた複合体はそのままでも強固な接着力を示すが、乳化後樹脂微粒子がトナー材料の液滴表面に移動し、トナー材料の液滴表面に付着した後に加熱工程を経ることによってより強固にトナー表面に固定化できる。固定化させる温度はトナー材料に用いた結着樹脂のガラス転移点よりも高い温度が好ましい。
前記アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセリールボレイト脂肪酸エステル等が挙げられる。
トナー材料として、例えば、未変性ポリエステル樹脂と結着樹脂前駆体(活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂)を含むことができる。工程(II)においてトナー材料の液滴中に活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂が含まれることにより、得られるトナーの機械的強度が高まり樹脂微粒子(B)や外添剤の埋没を抑制することができる。活性水素基含有化合物がカチオン性の極性を有す場合には樹脂微粒子(B)を静電的に引き寄せることもできる。またトナーの加熱定着時の流動性を調節でき定着温度幅を広げることもできる。
活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂中30質量%以下であることが好ましい。含有量が30質量%を超えると、活性水素基含有化合物及び該化合物と反応させた際に生じる3次元網目構造の含有量が多くなる。即ち、架橋密度が高くなりすぎてしまう。これにより加熱圧着定着時にトナーの溶融粘度が上がりすぎてしまい、低温定着性の発現が困難となる。
また、結着樹脂成分として結晶性ポリエステル樹脂を含むことができる。後述のように、トナー材料中に結晶性ポリエステル樹脂を含むことにより、低温定着性が向上する。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、低温定着性と耐熱保存性とを両立し、帯電性、解像度等のトナー特性を高いレベルで維持することができる点から、結着樹脂中で1質量%以上20質量%未満であることが好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、低温定着性に劣ることがあり、20質量%以上であると、トナー表面における前記定着助剤の面積が増大し、流動性に劣ることがある。
本発明によって製造されたトナーと共に用いるキャリアの粒径は、重量平均粒径が15〜40μmであることが好ましく、15μmよりも小さい場合には、転写工程においてキャリアも一緒に転写されてしまうキャリア付着が起こりやすくなり、逆に40μmよりも大きい場合には、キャリア付着は起りにくいものの、高画像濃度を得るためにトナー濃度を高くした場合、地汚れが発生しやすくなる恐れがある。また、潜像のドット径が小さい場合、ドット再現性のバラツキが大きくなり、ハイライト部の粒状性が悪くなる恐れもある。
<重量平均粒径(Dw)、体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)>
トナーの重量平均粒径(Dw)、体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Multisizer 3 Version3.51)にて解析を行なった。具体的にはガラス製100mlビーカーに10wt%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩ネオゲンSC−A;第一工業製薬性)を0.5ml添加し、各トナー0.5g添加しミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mlを添加した。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II本多電子社製)で10分間分散処理した。前記分散液を前記マルチサイザーIIIを用いて、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター製)を用いて測定を行なった。測定は装置が示す濃度が8±2%に成るように前記トナーサンプル分散液を滴下した。本測定法は粒径の測定再現性の点から前記濃度を8±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
[本発明のトナー及びその製造に用いる原料]
〔樹脂微粒子(A)〕
本発明で用いられる樹脂微粒子(A)用の樹脂としては、アニオン性の樹脂で水系媒体中で水性分散液を形成しうる樹脂であれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができる。
アニオン性の樹脂微粒子(A)用の樹脂としては、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂でもよく、例えば、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、微細な球状の樹脂微粒子の水性分散液が得られ易い点で、ビニル樹脂(ビニル系樹脂)、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種で形成されるのが好ましい。なお、ビニル系樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーであり、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、などが挙げられる。特に、ビニル系樹脂として、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルから成る共重合体は好ましく用いられる。
なお、粒子径はSEM、TEM、光散乱法などによって測定できる。好ましくはレーザー散乱測定法による堀場製作所製LA−920によって、測定レンジにはいるように適切な濃度に希釈して測定すればよい。粒子径は体積平均径として求められる。
(1)ビニル樹脂(ビニル系樹脂)の場合、ビニルモノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法及び分散重合法から選択されるいずれかの重合反応により、直接、樹脂微粒子(A)の水性分散液を製造する方法
(2)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加ないし縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液を適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱、又は硬化剤を添加して硬化させて、樹脂微粒子(A)の水性分散液を製造する方法
(3)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加ないし縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法
(4)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子(A)を得た後、適当な分散剤の存在下、水中に分散させる方法
(5)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子(A)を得た後、該樹脂微粒子を適当な分散剤の存在下、水中に分散させる方法
(6)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、又は予め溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子(A)を析出させ、次に溶剤を除去して樹脂微粒子を得た後、樹脂微粒子(A)を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法
(7)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は減圧等によって溶剤を除去する方法
(8)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法
樹脂微粒子(B)は樹脂微粒子(A)と同様な方法で作成できる。樹脂微粒子(B)の一次粒子の体積平均粒子径が10〜200nmであることは乳化粒子(トナー材料液の液滴)の粒子径と粒子径分布を制御するのに重要であり、さらに好ましくは50〜150nmの粒子径である。なお、樹脂微粒子(B)の粒子径と粒子径分布は樹脂微粒子(A)と同様な方法で測定でき、粒子径は体積平均径として求められる。
樹脂微粒子(B)としては、先に挙げたアニオン性界面活性剤溶液と混合されたときに不安定で凝集する性質を持つものの方が、トナー材料の液滴表面に付着しやすくなる。そのためには、先に述べた製法でノニオン界面活性剤や両性界面活性剤、カチオン界面活性剤を用いたり、樹脂中にアミン基、アンモニウム塩基などのカチオン性基を導入することによっても作成できるが、これに限定されるものではない。
両性界面活性剤としては、例えば、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。
樹脂微粒子(B)のエマルションとしては、合成したものを用いることもできるし、市販品[例えば、東ソー社製 Nipol 433C(スチレン・ブタジエンラテックス;体積平均粒子径100nm、Tg50℃)等]を用いてもよい。
但し、前述のように樹脂微粒子(B)の体積平均粒子径は0〜200nmで、ガラス転移温度(Tg)は40〜80℃であるものである。
本発明のトナーの製造で用いられるアニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤が好適に挙げられる。
フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。
本発明のトナーの製造方法に用いるトナー材料に含まれる結着樹脂としては、特に制限はなく、ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ジエン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、クマリン樹脂、アミドイミド樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等、公知の結着樹脂を用いることができる。
本発明で用いるポリエステル系樹脂としては、下記一般式(1)で表される1種若しくは2種以上のポリオールと、下記一般式(2)で表される1種若しくは2種以上のポリカルボン酸との反応により得られるものが挙げられる。
A−(OH)m ・・・(1)
[式中、Aは炭素数1〜20のアルキル基、アルキレン基、置換基を有していてもよい芳香族基若しくはヘテロ環芳香族基を表す。mは2〜4の整数を表す。]
B−(COOH)n ・・・(2)
[式中、Bは炭素数1〜20のアルキル基、アルキレン基、置換基を有していてもよい芳香族基若しくはヘテロ環芳香族基を表す。nは2〜4の整数を表す。]
トナー材料の組成分である結着樹脂として、結晶性樹脂(例えば、結晶性ポリエステル樹脂)を含有することができる。結晶性樹脂(例えば、結晶性ポリエステル樹脂)を含有することにより、加熱定着時に結晶性樹脂を融解させトナーの粘弾性を一気に低下させることが可能となる。これによりトナーの定着下限温度を低下させることができる。
このような結晶性ポリエステル樹脂は、例として、アルコール成分として炭素数2〜12の飽和脂肪族ジオール化合物、特に1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1、−8オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12ドデカンジオール、及びこれらの誘導体と、少なくとも酸性分として二重結合(C=C結合)を有する炭素数2〜12のジカルボン酸、もしくは、炭素数2〜12の飽和ジカルボン酸、特にフマル酸、1,4−ブタン二酸、1,6−ヘキサン二酸、1、−8オクタン二酸、1,10−デカン二酸、1,12ドデカン二酸及びこれらの誘導体を用いて合成される結晶性ポリエステルが好ましい。
中でも、吸熱ピーク温度と吸熱ショルダー温度の差をより小さくする点で、特に1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1、−8オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12ドデカンジオールのいずれか一種類のアルコール成分と、フマル酸、1,4−ブタン二酸、1,6−ヘキサン二酸、1、−8オクタン二酸、1,10−デカン二酸、1,12−ドデカン二酸のいずれか一種類のジカルボン酸成分のみで構成されることが好ましい。
〈活性水素基含有化合物〉
本発明のトナー材料中に活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂が含まれることにより、得られるトナーの機械的強度が高まり、樹脂微粒子(B)や外添剤の埋没を抑制することができる。活性水素基含有化合物がカチオン性の極性を有す場合には、樹脂微粒子(B)を静電的に引き寄せることもできる。また、トナーの加熱定着時の流動性を調節でき定着温度幅を広げることもできる。なお、活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂は、結着樹脂前駆体であるとも言える。
活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(以下「プレポリマー」)としては、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を少なくとも有しているものであれば特に制限はなく、公知の樹脂等の中から適宜選択することができ、例えば、ポリオール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、これらの誘導体樹脂、等を用いることができる。これらの中でも、溶融時の高流動性、透明性の点で、ポリエステル樹脂が特に好ましい。なお、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、着色剤、離型剤、帯電制御剤、無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、金属石鹸、等が挙げられる。
本発明に使用するトナー用の着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が50〜120℃の低融点の離型剤が好ましい。低融点の離型剤は、前記樹脂と分散されることにより、離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これによりオイルレス(定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布しない)でもホットオフセット性が良好である。
帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のもの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機微粒子は、トナー粒子に流動性、現像性、帯電性等を付与するための外添剤として使用する。この無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
流動性向上剤とは、表面処理を行って疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止する剤のことであり、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、等が挙げられる。シリカ、酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためにトナーに添加される剤のことであり、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子、などが挙げられる。ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01〜1μmのものが好適である。
磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト、等を用いることができる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
[本発明のトナー製造方法の例]
本発明のトナーの製造方法においては、結着樹脂及び/又は結着樹脂前駆体と、着色剤とを主成分としたトナー材料を有機溶媒中に溶解又は分散させて形成した溶解物又は分散物を、樹脂微粒子(A)及び樹脂微粒子(B)を同時又は非同時に含む水系媒体中で乳化乃至分散させて乳化乃至分散液を調製して造粒(液滴化)し、乳化乃至分散したトナー材料を含む液滴状のトナー前駆体に樹脂微粒子(B)を付着させた後に有機溶媒を除去し、トナー粒子を形成した後に該トナー粒子を含む水を加熱処理することにより所望のトナーを製造する。前述のように、結着樹脂成分としては、未変性の結着樹脂(例えば、未変性ポリエステル樹脂)、結着樹脂前駆体(活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂、結晶性樹脂(例えば、結晶性ポリエステル樹脂)を選択することができる。
例えば、結着樹脂として、未変性の結着樹脂と、活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを含むトナー材料の溶解ないし分散液を、水系媒体中に乳化ないし分散させ、水系媒体中で活性水素基含有化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを反応させた接着性基材を含むトナー前駆体粒子を生成させて、樹脂微粒子(B)を付着させることにより所望のトナーを製造することができる。
以下に例示するプロセスは結着樹脂として、未変性の結着樹脂と、活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを含むトナー材料を例として説明する。
もちろん、未変性の結着樹脂と結晶性樹脂を結着樹脂成分として用いることもでき、この場合に、活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を含んでも、含まなくてもよい。
トナー材料の溶解ないし分散液は、トナー材料を溶媒に溶解ないし分散させて調製する。トナー材料としては、トナーを形成可能である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結着樹脂もしくは活性水素基含有化合物、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)と着色剤を含み、さらに必要に応じて、離型剤、帯電制御剤等の上記その他の成分を含んでいてもよい。トナー材料の溶解ないし分散液は、トナー材料を有機溶媒に溶解ないし分散させて調製することが好ましい。なお、有機溶媒は、トナーの造粒時ないし造粒後に除去することが好ましい。
トナー材料を溶解ないし分散する有機溶媒としては、トナー材料を溶解ないし分散可能な溶媒であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナーの造粒時ないし造粒後の除去の容易性の点で沸点が150℃未満のものが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を用いることができる。また、エステル系溶剤が好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。有機溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー材料100質量部に対し40〜300質量部が好ましく、60〜140質量部がより好ましく、80〜120質量部がさらに好ましい。なお、トナー材料の溶解ないし分散液の調製は、有機溶媒中に、活性水素基含有化合物、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体、未変性ポリエステル樹脂、離型剤、着色剤、帯電制御剤、等のトナー材料を、溶解ないし分散させることにより行うことができる。また、トナー材料の中で、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)以外の成分は、後述する水系媒体の調製において、水系媒体中に添加混合してもよいし、あるいは、トナー材料の溶解ないし分散液を水系媒体に添加する際に、溶解ないし分散液と共に水系媒体に添加してもよい。
水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶剤、これらの混合物、などを用いることができるが、これらの中でも、水が特に好ましい。水と混和可能な溶剤としては、水と混和可能であれば特に制限はなく、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類、などを用いることができる。アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。また、低級ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
トナー材料の溶解ないし分散液の水系媒体中への乳化ないし分散は、トナー材料の溶解ないし分散液を水系媒体中で攪拌しながら分散させることが好ましい。分散の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の分散機などを用いて行うことができる。分散機としては、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機などが挙げられる。このトナーの製造方法においては、乳化ないし分散の際、活性水素基含有化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と、を伸長反応ないし架橋反応させると、接着性基材が生成する。樹脂微粒子(B)は乳化中または乳化後に水系媒体に加えても良い。高速せん断分散機にて分散させながら行うか乳化後低速攪拌に切り替えて添加するか適宜トナーへの樹脂微粒子(B)の付着性、固定化状況を見ながら行われる。
結着樹脂成分中には紙等の記録材に対し接着性を示す接着性基材が含まれることが必要であり、このような接着性基材として活性水素基含有化合物及び活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを水系媒体中で反応させて成る接着性ポリマーを含むことが好ましい。接着性基材の重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3,000以上が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましく、7,000〜500,000が特に好ましい。何故なら、重量平均分子量が、3,000未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがあるからである。
測定条件
サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(フタあり)
サンプル量:5mg
リファレンス:アルミニウム製サンプルパン(アルミナ10mg)
雰囲気:窒素(流量50ml/min)
温度条件
開始温度:20℃
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
保持時間:なし
降温温度:10℃/min
終了温度:20℃
保持時間:なし
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
(1)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物
(2)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(3)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(4)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(5)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーを、ヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(6)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(7)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをエチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(8)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物
(9)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸/ドデセニルコハク酸無水物の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(10)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をトルエンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物
乳化ないし分散により得られた乳化スラリーから、有機溶媒を除去する[前記工程(III)]。有機溶媒の除去は、(1)反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法、(2)乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去する方法、等が挙げられる。有機溶媒の除去が行われるとトナー粒子が形成される。
有機溶媒を除去しトナー粒子を形成した後、形成されたトナー粒子に対しイオン交換水で洗浄を行い、所望の伝導度を有する分散液を作成する[前記工程(IV)]。
前記分散液を加熱処理する[前記工程(V)]。加熱処理は、(1)静止状態で加熱処理する方法、(2)攪拌下で加熱処理する方法、等が挙げられ、加熱処理が行われると表面が平滑なトナー粒子が形成される。また、加熱処理はトナー粒子がイオン交換水で分散されている場合は、洗浄前に実施しても洗浄後に実施してもよい。
形成されたトナー粒子に対し乾燥等を行い、さらにその後、所望により分級等を行う。該分級は、例えば、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行う。なお、乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよい。
例えば、電子写真感光体を帯電手段により帯電させる帯電工程と、前記帯電された電子写真感光体上に露光手段により静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像を形成された電子写真感光体上に本発明のトナーを含む現像手段によりトナー像を形成する現像工程と、前記電子写真感光体上に形成されたトナー像を一次転写手段により中間転写体上に転写する一次転写工程と、前記中間転写体上に転写されたトナー像を二次転写手段により記録材上に転写する二次転写工程と、前記記録材上に転写されたトナー像を熱及び圧力定着部材を含む定着手段により記録材上に定着させる定着工程と、前記一次転写手段によりトナー像を中間転写体上に転写した電子写真感光体の表面に付着している転写残トナーをクリーニング手段によりクリーニングするクリーニング工程とを備えたプロセスにより画像形成(フルカラー)が実施できる。このフルカラー画像形成方法においては、二次転写工程におけるトナー像の記録材への転写の線速度、所謂印字速度は100〜1000mm/secであり、二次転写手段のニップ部での転写時間は0.5〜60msecであることが好ましい。
なお、以下、実施例6とあるのは本発明に含まれない参考例6を示す。
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)16質量部、スチレン83質量部、メタクリル酸83質量部、アクリル酸ブチル110質量部、及び過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。さらに、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)である[樹脂微粒子(A1)]の水性分散液を得た。[樹脂微粒子(A1)]は、体積平均粒径(堀場製作所製:LA−920で測定)が38nm、重量平均分子量が420,000、Tgが63℃であった。
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683質量部、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(カチオンDS、花王製)10質量部、スチレン144質量部、アクリル酸ブチル50質量部及び過硫酸アンモニウム1.0質量部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度65℃まで昇温し10時間反応させた。さらに、0.5質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部を加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−アクリル酸ブチルの共重合体)[樹脂組成略称:スチレン/アクリル]である[樹脂微粒子(B1)]の水性分散液を得た。[樹脂微粒子(B1)]は、体積平均粒径(堀場製作所製 LA−920で測定)が60nm、Tgが63.0℃であった。下記表1に樹脂微粒子(B1)の粒径とTg及び樹脂組成略称を示す。
−樹脂微粒子(B2)−
樹脂微粒子(B2):東ソー社製Nipol433C(スチレン・ブタジエンラテックス[樹脂組成略称:スチレン/ブタジエン]、体積平均粒子径100nm、Tg150℃)
−樹脂微粒子(B3)−
樹脂微粒子(B3):東ソー社製Nipol LX415A(スチレン・ブタジエンラテックス[樹脂組成略称:スチレン/ブタジエン]、体積平均粒子径40nm、Tg27℃)
−樹脂微粒子(B4)−
樹脂微粒子(B4):東ソー社製Nipol 2507H(スチレン・ブタジエンラテックス[樹脂組成略称:スチレン/ブタジエン]、体積平均粒子径250nm、Tg58℃)
−樹脂微粒子(B5)−
樹脂微粒子(B5):東ソー社製Nipol LX303A(ポリスチレンラテックス[樹脂組成略称:ポリスチレン]、体積平均粒子径160nm、Tg100℃)
下記表1に樹脂微粒子(B2)〜(B5)の粒径とTg及び樹脂組成略称を示す。
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683質量部、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(カチオンDS、花王製)10質量部、スチレン160質量部、アクリル酸ブチル20質量部及び過硫酸アンモニウム0.5質量部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度65℃まで昇温し10時間反応させた。さらに、0.2質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部を加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−アクリル酸ブチルの共重合体)[樹脂組成略称:スチレン/アクリル]である[樹脂微粒子(B6)]の水性分散液を得た。[樹脂微粒子(B1)]は、体積平均粒径(堀場製作所製:LA−920で測定)が50nm、Tgが93.0℃であった。下記表1に樹脂微粒子(B6)の粒径とTg及び樹脂組成略称を示す。
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに、1,10−デカン二酸2,300g、1、8−オクタンジオール2,530g、ハイドロキノン4.9gを入れ、180℃で10時間反応させた後、200℃に昇温して3時間反応させ、さらに8.3kPaにて2時間反応させて[結晶性ポリエステル樹脂]を得た。
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物66.0質量部、プロピレングリコール2.3質量部、無水トリメリット酸2.4質量部、及びジブチルスズオキシド0.2質量部を投入し、常圧下、170℃で1時間反応させた。次に、アジピン酸31.5質量部を投入し常圧下、230℃で4時間反応させた後に10mmHg〜15mmHgの減圧下、5時間反応させ、ポリエステル樹脂C1を得た。得られたポリエステル樹脂C1のガラス転移点は、28.9℃であった。下記表2にポリエステル樹脂C1の組成分を、下記表3にガラス転移温度(Tg)を示す。なお、ポリエステル樹脂C1は前記樹脂微粒子(B2)〜(B6)と非相溶性である。
ポリエステル樹脂C1の合成において、下記表2に示す通り、ポリエステル樹脂組成分の配合量を変更した以外は、ポリエステル樹脂C1と同様にして、ポリエステル樹脂C2〜C5をそれぞれ合成した。得られたポリエステル樹脂C2〜C5について、ポリエステル樹脂C1と同様にして、ガラス転移点について測定した。下記表2にポリエステル樹脂C2〜C5の組成分を、下記表3にそれぞれのガラス転移温度(Tg)を示す。なお、ポリエステル樹脂C2〜C5は前記樹脂微粒子(B2)〜(B6)と非相溶性である。
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物64.9質量部、ビスフェノールAプロピレンエチレンオキシド2モル付加物10.8質量部及びジブチルスズオキシド0.2質量部、アジピン酸3.8質量部、イソフタル酸21.0質量部を投入し常圧下、230℃で4時間反応させた後に10mmHg〜15mmHgの減圧下、5時間反応させ、マスターバッチ用樹脂を得た。
水1000質量部、及びカーボンブラック(「Printex35」;デグサ社製、DBP吸油量=42ml/100g、pH=9.5)540質量部、及び前記マスターバッチ用樹脂1200質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。該混合物を二本ロールで150℃にて30分混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、[マスターバッチ]を調製した。
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81質量部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を仕込み、常圧下で、230℃にて8時間反応させた。次いで、10mHg〜15mHgの減圧下で、5時間反応させて、中間体ポリエステルを合成した。得られた中間体ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量(Mw)が9,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.5、水酸基価が49であった。次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前記中間体ポリエステル411質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、及び酢酸エチル500質量部を仕込み、100℃にて5時間反応させて、[プレポリマー](前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体)を合成した。得られた[プレポリマー]は、遊離イソシアネート含有量が1.60質量%であり、プレポリマーの固形分濃度(150℃、45分間放置後)が50質量%であった。
<トナーaの製造>
−水系媒体相の調製−
水660質量部、前記[樹脂微粒子(A1)]の水性分散液25質量部、48.5質量%ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液(「エレミノールMON−7」;三洋化成工業製)25質量部、及び酢酸エチル60質量部を混合撹拌し、乳白色の液体(水相)を得た。さらに[樹脂微粒子(B2)]を50質量部加えて[水系媒体相]を得た。[水系媒体相]を光学顕微鏡で観察すると数百μmの凝集体が見られた。[水系媒体相]を、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、回転数8,000rpmで攪拌すると該凝集体がほぐれ、数μmの小凝集体に分散できることを光学顕微鏡によって確認した。したがって、この後行われるトナー材料の乳化工程においても[樹脂微粒子(B2)]は、分散してトナー材料成分の液滴に付着することが期待できた。このように[樹脂微粒子(B2)]は、凝集を生じるがせん断によってほぐれることがトナー表面に均一に付着させる上で重要である。
金属製2L容器に[結晶性ポリエステル樹脂]100g、及び酢酸エチル400gを入れ、75℃で加熱溶解させた後、氷水浴中で27℃/分の速度で急冷した。これにガラスビーズ(3mmφ)500mlを加え、バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ社製)で10時間粉砕を行ない、[結晶性ポリエステル分散液]を得た。
ビーカー内に[ポリエステル樹脂C1]100質量部、酢酸エチル130質量部を、攪拌し溶解させた。次いで、カルナウバワックス(分子量=1,800、酸価=2.5、針入度=1.5mm(40℃))10質量部、及び[マスターバッチ]10質量部、[結晶性ポリエステル分散液]10質量部を仕込み、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」;アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、及び0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製し、[トナー材料相](トナー材料の溶解乃至分散液)を調製した。
[水系媒体相]150質量部を容器に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、回転数12,000rpmで攪拌し、これに[トナー材料相]100質量部を添加し、10分間混合して[乳化乃至分散液](乳化スラリー)を調製した。
脱気用配管、攪拌機及び温度計をセットしたフラスコに、[乳化乃至分散液]100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃にて12時間減圧下、脱溶剤し[脱溶剤スラリー]とした。
[脱溶剤スラリー]全量を減圧濾過した後、得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合、再分散(回転数12,000rpmにて10分間)した後、濾過した。更に、得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後、濾過する操作を3回行い、再分散したスラリーの伝導度が0.1μS/cm以上且つ10μS/cm以下になったところで[洗浄スラリー]とした。
攪拌機及び温度計をセットしたフラスコに、得られた[洗浄スラリー]を攪拌周速20m/分で60分間攪拌しながら40℃で加熱処理し、[ポリエステル樹脂C1]表面に付着した[樹脂微粒子(B1)]を固定化処理した後、濾過して[濾過ケーキ]を得た。
得られた[濾過ケーキ]を順風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、[トナー母体粒子a]を得た。
得られたトナー母体粒子の薄膜切片をTEMで調べた結果、図1に示すように、樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層Bが形成されており、樹脂微粒子層Aは少なくとも樹脂微粒子層Bの外側に形成されていることが確認された。
[トナー母体粒子a]100質量部に対して、体積平均粒径100nmの疎水性シリカ0.6質量部と、体積平均粒径20nmの酸化チタン1.0質量部と、体積平均粒径15nmの疎水性シリカ微粉体0.8質量部とをヘンシェルミキサーにて混合し、[トナーa]を得た。下記表4にトナーaに用いた樹脂微粒子(A)、樹脂微粒子(B)及び結着樹脂に用いたポリエステル樹脂Cの種類をまとめて示す。
<トナーb〜トナーfの製造>
実施例1において、下記表4に示す通りにトナー材料の組合せを変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜6の[トナーb]〜[トナーf]を作製した。下記表4にトナーb〜トナーfに用いた樹脂微粒子(A)、樹脂微粒子(B)及び結着樹脂に用いたポリエステル樹脂Cの種類をそれぞれまとめて示す。
<トナーgの製造>
実施例4のトナー材料相の調製時において[プレポリマー]10質量部を更に添加した以外は、実施例4と同様にして、実施例7の[トナーg]を作製した。下記表4にトナーgに用いた樹脂微粒子(A)、樹脂微粒子(B)及び結着樹脂に用いたポリエステル樹脂Cの種類をそれぞれまとめて示す。
<トナーh〜トナーmの製造>
実施例1において、下記表に示す通り、トナー材料の組合せを変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜6の[トナーh]〜[トナーm]を作製した。下記表4にトナーh〜トナーmに用いた樹脂微粒子(A)、樹脂微粒子(B)及び結着樹脂に用いたポリエステル樹脂Cの種類をそれぞれまとめて示す。
次に、上記作製した実施例1〜7([トナーa]〜[トナーg])及び比較例1〜6([トナーh]〜[トナーm])の各トナーから成る[現像剤](二成分現像剤)を用いて、下記評価方法と評価基準に則って低温定着性、耐熱保存性の評価を行った。結果を下記表5に示す。なお、トナー粒子の体積平均粒径(Dv)及び体積平均粒径(Dv)と数平均粒経(Dn)の比(Dv/Dn)の測定結果を併せて表5に示す。
定着ローラとして、テフロン(登録商標)ローラを使用した複写機(MF−200、株式会社リコー製)の定着部を改造した装置を用いて、タイプ6200紙(株式会社リコー製)をセットし、定着ローラの温度を5℃刻みで変化させて、複写テストを行った。定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ローラの温度の最小値を定着下限温度とした。
定着下限温度は、消費電力が抑えられることから、低いことが好ましく、140℃以上では問題の発生する可能性が高いので140℃以上を×として判定した。
〔評価基準〕
◎:低温定着性が120℃未満
〇:低温定着性が120以上130未満
△:低温定着性が130℃以上140未満
×:低温定着性が140℃以上
50mlのガラス容器にトナーを充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した後、24℃に冷却し、針入度試験(JIS K2235−1991)により、針入度を測定し、下記基準により耐熱保存性を評価した。なお、針入度が大きい程、耐熱保存性が優れていることを意味し、針入度が5mm未満であるもの(×)は、使用上、問題が発生する可能性が高い。
〔評価基準〕
◎:針入度が12mm以上
○:針入度が8mm以上12mm未満
△:針入度が5mm以上8mm未満
×:針入度が5mm未満
各トナー粒子の体積平均粒径(Dv)、個数平均粒径(Dn)及び体積平均粒径(Dv)と数平均粒経(Dn)の比(Dv/Dn)は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Mutlisizer3 Version3.51)にて解析を行った。具体的には、ガラス製100mlビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩、ネオゲンSC−A、第一工業製薬株式会社製)を0.5mL添加し、各トナー0.5gを添加し、ミクロスパーテルでかき混ぜ、次いで、イオン交換水80mlを添加した。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II、本多電子株式会社製)で10分間分散処理した。前記分散液を前記「マルチサイザーIII」により、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定を行った。装置が示す濃度が8%±2%になるように前記トナーサンプル分散液を滴下した。本測定法は、粒径の測定再現性の点から前記濃度を8%±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
一方、体積平均粒子径が40nmでガラス転移温度が27℃であるスチレン−ブタジエン樹脂微粒子(B3)を含有する樹脂微粒子層Bを有する比較例1では、低温定着性は120℃未満で優れているのに対して、耐熱保存性は針入度が5mm未満で実用に供しないレベルである。
また、体積平均粒子径が250nmでガラス転移温度が58℃であるスチレン−ブタジエン樹脂微粒子(B4)を含有する樹脂微粒子層Bを有する比較例2では、耐熱保存性は針入度が12mm以上で優れているのに対して、低温定着性は140℃以上で実用に供しないレベルである。
また、体積平均粒子径が160nmでガラス転移温度が100℃であるポリスチレン樹脂微粒子(B5)を含有する樹脂微粒子層Bを有する比較例3では耐熱保存性は針入度が12mm以上で優れているのに対して、低温定着性は140℃以上で実用に供しないレベルである。
また、体積平均粒子径が60nmでガラス転移温度が90℃であるスチレン−アクリル共重合体(B1)を含有する樹脂微粒子層Bを有する比較例4では耐熱保存性は針入度が12mm以上で優れているのに対して、低温定着性は140℃以上で実用に供しないレベルである。
また、樹脂微粒子A(A1)のみを用いた比較例5、及び樹脂微粒子B(B2)のみを用いた比較例6の場合には、いずれも低温定着性は120℃未満で優れているのに対して、耐熱保存性は針入度が5mm未満で実用に供しないレベルである。
低温定着性と耐熱保存性とを両立する本発明のトナー(実施例1〜7)は、小粒径でDv/Dnが(1.00〜1.30)の範囲にあることから、保存安定性、低温定着性、及び耐ホットオフセット性のいずれにも優れたトナーとなりやすく、トナー母体粒子の表面に樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層B(樹脂微粒子層Aは少なくとも樹脂微粒子層Bの外側)を有するトナーであることから、フィルミングの発生等を抑制することができる。
Claims (9)
- 結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子の表面に樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層Bを有する静電荷像現像用トナーであって、
前記樹脂微粒子層Aはアニオン性の樹脂微粒子(A)を含有し、前記樹脂微粒子層Bは体積平均粒子径が10〜200nmでガラス転移温度が40〜80℃であるスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含有すると共に、樹脂微粒子層Aは少なくとも樹脂微粒子層Bの外側に形成されていることを特徴とする静電荷像現像用トナー。 - 前記樹脂微粒子(A)が、アニオン性のビニル系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記アニオン性のビニル系樹脂が、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩から成る共重合体であることを特徴とする請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記樹脂微粒子(A)の体積平均粒子径が5〜50nmであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記スチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)と前記結着樹脂とが非相溶性であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記結着樹脂がポリエステル系樹脂であり、該ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が20℃以上50℃未満であり、結着樹脂中の含有量が50質量%以上100質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記結着樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記トナーの体積平均粒径(Dv)と数平均粒経(Dn)の比(Dv)/(Dn)が1.00〜1.30であることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子の表面に樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層Bを有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記樹脂微粒子層Aはアニオン性の樹脂微粒子(A)を含有し、前記樹脂微粒子層Bは体積平均粒子径が10〜200nmでガラス転移温度が40〜80℃であるスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含有すると共に、樹脂微粒子層Aは少なくとも樹脂微粒子層Bの外側に形成され、
且つ、前記トナーは、結着樹脂及び着色剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散してトナー材料液を形成する工程(I)と、
前記トナー材料液、樹脂微粒子(A)およびスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含むトナー材料液の乳化乃至分散液を形成する工程(II)と、
前記トナー材料液の乳化乃至分散液から有機溶媒を除去してトナー母体粒子を形成する工程(III)と、
前記形成され水中に分散したトナー母体粒子を水で洗浄して伝導度を調整する工程(IV)と、
前記洗浄され水中に分散したトナー母体粒子を攪拌下に加熱処理する工程(V)と、
を含む工程により製造されることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
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