JP6022339B2 - 水硬性粉体の製造方法 - Google Patents
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えば水酸化カルシウム等の結晶を緻密化することで、接水から1日後の圧縮強度を向上させると推定される。さらに、レゾルシノールの適度なキレート作用により、C3Aの水和
反応、すなわち、エトリンガイトからモノサルフェートへの移行を促進し、接水から1日及び7日後の圧縮強度を向上させると推定される。したがって、レゾルシノールは、C3
S及びC3Aの両者の水和率向上に対し、相乗的効果が得られ、さらに粉砕時に存在させ
ることで、水硬性粉体の表面近傍に存在することとなり、各鉱物に対して効率的に水和反応を促進し、水硬性化合物に対し非常に少ない添加量でも効果が発現するものと推定される。
(A)成分はレゾルシノールであり、市販のものを用いることができる。
(B)成分は、グリセリン及びグリセリンのエチレンオキサイド付加物からなる群から選ばれる1種以上の化合物である。粉砕到達時間を低減する観点並びに1日後及び7日後の圧縮強度を向上させる観点から、グリセリンとグリセリンのエチレンオキサイド付加物を併用して用いることもできる。
本発明の水硬性粉体の製造方法では、(A)成分と(B)成分の質量比((A)成分/(B)成分)は、1/99以上、45/55以下である。粉砕到達時間を低減する観点並びに1日後及び7日後の圧縮強度を向上させる観点から、(A)成分と(B)成分の質量比((A)成分/(B)成分)は、5/95以上、更に8/92以上、更に15/85以上が好ましく、そして、40/60以下、更に35/65以下、更に30/70以下、更に25/75以下が好ましい。
(A)成分と(B)成分の合計の存在量は、粉砕到達時間を低減する観点並びに1日後及び7日後の圧縮強度を向上させる観点から、水硬性化合物100質量部に対して、0.0011質量部以上が好ましく、0.011質量部以上がより好ましく、0.017質量部以上が更に好ましく、0.025質量部以上が更に好ましい。また、(A)成分と(B)成分の合計の存在量は、同様の観点から、水硬性化合物100質量部に対し、0.24質量部以下が好ましく、0.12質量部以下がより好ましく、0.095質量部以下が更に好ましく、0.060質量部以下が更に好ましく、0.040質量部以下が更に好ましい。
水硬性化合物とは、水と反応して硬化する性質をもつ物質、及び単一物質では硬化性を有しないが2種以上を組み合わせると水を介して相互作用により水和物を形成し硬化する化合物をいう。一般に、水硬性化合物はアルカリ土類金属の酸化物とSiO2、Al2O3
、Fe2O3、TiO2、P2O5、ZnOなどの酸化物が常温又は水熱条件下で水和物を形
成する。水硬性化合物の成分は、例えば、セメントでは、成分として3CaO・SiO2
(C3S:エーライト)、2CaO・SiO2(C2S:ビーライト)、3CaO・Al2O3(C3A:カルシウムアルミネート)、4CaO・Al2O3・Fe2O3(C4AF:カル
シウムアルミノフェライト)を含んでいる。水硬性化合物としては、例えば、セメントに含有される鉱物(C3S、C2S、C3A、C4AF)、スラグ、フライアッシュ、石灰石、鉄滓、石膏、アルミナ、焼却灰、生石灰、消石灰等が挙げられ、水硬性粉体の原料として用いることができる。
(A)成分及び(B)成分を存在させて粉砕を行うには、水硬性化合物、例えばクリンカーを含む原料に(A)成分及び(B)成分を添加して行うことが好ましい。添加する方法としては、所定比率で(A)成分及び(B)成分を含有する液状物、好ましくは水溶液を、滴下、噴霧等により供給する方法が挙げられる。(A)成分及び(B)成分は、それぞれを液状物、好ましくは水溶液として、別々に水硬性化合物に添加しても良いし、両者を混合した後に水硬性化合物に添加してもよい。水硬性化合物を含む原料への(A)成分及び(B)成分の添加は、最終的に使用される全量を一括で添加してもよいし、分割して添加してもよい。また、連続的又は間欠的に添加してもよい。
工程(I)−1:水硬性化合物と(A)成分及び(B)成分を混合する工程
工程(I)−2:工程(I)−1で得られた混合物を粉砕する工程
また、工程(I)−1は、水硬性粉体の生産性を向上させる観点から、更に下記の工程(I)−11及び工程(I)−12を含むことが好ましい。
工程(I)−11:(A)成分及び(B)成分を混合して粉砕用添加剤組成物を得る工程工程(I)−12:工程(I)−11で得られた粉砕用添加剤組成物と水硬性化合物を混合する工程
工程(I)−11は、下記の工程(I)−11’でもよく、粉砕用添加剤組成物と水硬性化合物と均一に混合する観点から、工程(I)−11’が好ましい。
工程(I)−11’:(A)成分、(B)成分及び水を混合して粉砕用添加剤組成物を得る工程
なお、粉砕用添加剤組成物の好ましい態様については、後述する。
て製造される。本発明に係る(A)成分及び(B)成分は、前記水硬性化合物、好ましくはクリンカー粉砕の際の粉砕用添加剤組成物として、好適には仕上粉砕での粉砕用添加剤組成物として用いられる。
例えば、
レゾルシノール((A)成分)と、グリセリン及びグリセリンのエチレンオキサイド付加物からなる群から選ばれる1種以上((B)成分)との存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程であって、前記(A)成分と前記(B)成分の質量比((A)成分/(B)成分)が、1/99以上、45/55以下である工程(I)、並びに
工程(I)で得られた水硬性粉体と水とを混合して水硬性組成物を得る工程(II)、
を有する水硬性組成物の製造方法が挙げられる。この製造方法では、工程(I)は、前記工程(I)−1及び工程(I)−2、又は前記工程(I)−11及び工程(I)−12、又は前記工程(I)−11’及び工程(I)−2を含むことができる。
レゾルシノール((A)成分)と、グリセリン及びグリセリンのエチレンオキサイド付加物からなる群から選ばれる1種以上((B)成分)との存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程であって、前記(A)成分と前記(B)成分の質量比((A)成分/(B)成分)が、1/99以上、45/55以下である工程(I)、
工程(I)で得られた水硬性粉体と水とを混合して水硬性組成物を得る工程(II)、並びに
工程(II)で得られた水硬性組成物を硬化させる工程(III)、
を有する水硬性組成物の硬化体の製造方法が挙げられる。この製造方法では、工程(I)は、前記工程(I)−1及び工程(I)−2、又は前記工程(I)−11及び工程(I)−12、又は前記工程(I)−11’及び工程(I)−2を含むことができる。
本発明は、レゾルシノール((A)成分)と、グリセリン及びグリセリンのエチレンオキサイド付加物からなる群から選ばれる1種以上((B)成分)とを含有し、前記(A)成分と前記(B)成分の質量比((A)成分/(B)成分)が、1/99以上、45/55以下である、水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物を提供する。前記工程(I)−11や前記工程(I)−11’で得られた粉砕用添加剤組成物が、この粉砕用添加剤組成物であってもよい。
工程(I)−1:水硬性化合物と(A)成分及び(B)成分を混合する工程
工程(I)−2:工程(I)−1で得られた混合物を粉砕する工程
工程(I)−11:(A)成分及び(B)成分を混合して粉砕用添加剤組成物を得る工程工程(I)−12:工程(I)−11で得られた粉砕用添加剤組成物と水硬性化合物を混合する工程
工程(I)−11’:(A)成分、(B)成分及び水を混合して粉砕用添加剤組成物を得る工程
工程(I)−12:工程(I)−11で得られた粉砕用添加剤組成物と水硬性化合物を混合する工程
工程(I)で得られた水硬性粉体と水とを混合して水硬性組成物を得る工程(II)、を有する水硬性組成物の製造方法。
工程(I)で得られた水硬性粉体と水とを混合して水硬性組成物を得る工程(II)、並びに
工程(II)で得られた水硬性組成物を硬化させる工程(III)、
を有する水硬性組成物の硬化体の製造方法。
・レゾルシノール:和光純薬工業(株)製
・フェノール:シグマアルドリッチジャパン社製
・トリエタノールアミン:東京化成工業(株)製
・ジエチレングリコール:和光純薬工業(株)製
・グリセリン:和光純薬工業(株)製
・グリセリンEO1モル付加物:グリセリンエチレンオキサイド(平均1モル)付加物、下記製造例1により得た。
・グリセリンEO0.55モル付加物:グリセリンエチレンオキサイド(平均0.55モル)付加物、下記製造例2により得た。
・グリセリンEO0.75モル付加物:グリセリンエチレンオキサイド(平均0.75モル)付加物、下記製造例3により得た。
・グリセリンEO3モル付加物:グリセリンエチレンオキサイド(平均3モル)付加物、下記製造例4により得た。
2リットルのオートクレーブにグリセリンと水酸化カリウムをそれぞれ230.3g、1.4g仕込み、約600rpmの撹拌速度で130℃になるまで昇温した。次いで130℃、1.3kPa条件で30分間脱水を行った。その後、155℃になるまで昇温した。上記反応混合物にエチレンオキサイドを110.1g(グリセリン1モルに対し、エチレンオキサイド1モル相当)反応させた。この時の反応条件は温度155℃、圧力0.1〜0.3MPa(ゲージ圧)であった。反応終了後、温度を80℃まで冷却し、グリセリンエチレンオキサイド(平均1モル)付加物を得た。付加されたエチレンオキサイドの分布は、未反応グリセリン(EO=0モル):36.1%、EO=1モル:37.0%、EO=2モル:19.1%、EO=3モル:6.1%、EO=4モル:1.3%、EO=5モル:0.2%(%は質量基準、以下同様)であった。
カラム:frontier UA−1 長さ15m、内径250μm、カラム膜厚0.15μm
キャリアガス:ヘリウム
カラム温度:昇温条件;開始温度60℃、終了温度350℃、昇温速度10℃/分
検出器:FID
検出温度:350℃
製造例1において、グリセリンと反応させるエチレンオキサイドを60.6g(グリセリン1モルに対し、エチレンオキサイド0.55モル相当)とした以外は同様にして、グリセリンエチレンオキサイド(平均0.55モル)付加物を得た。付加されたエチレンオキサイドの分布は、未反応グリセリン(EO=0モル):57.4%、EO=1モル:31.8%、EO=2モル:9.0%、EO=3モル:1.6%、EO=4モル:0.2%であった。
製造例1において、グリセリンと反応させるエチレンオキサイドを82.6g(グリセリン1モルに対し、エチレンオキサイド0.75モル相当)とした以外は同様にして、グリセリンエチレンオキサイド(平均0.75モル)付加物を得た。付加されたエチレンオキサイドの分布は、未反応グリセリン(EO=0モル):47.1%、EO=1モル:35.4%、EO=2モル:13.5%、EO=3モル:3.3%、EO=4モル:0.6%、EO=5モル:0.1%であった。
製造例1において、グリセリンと反応させるエチレンオキサイドを330.5g(グリセリン1モルに対し、エチレンオキサイド3モル相当)とした以外は同様にして、グリセリンエチレンオキサイド(平均3モル)付加物を得た。付加されたエチレンオキサイドの分布は、未反応グリセリン(EO=0モル):2.9%、EO=1モル:11.3%、EO=2モル:22.4%、EO=3モル:26.1%、EO=4モル:19.7%、EO=5モル:10.7%、EO=6モル:4.6%、EO=7モル:1.7%、EO=8モル:0.5%、EO=9モル:0.2%であった。
(A)成分と(B)成分は、(A)成分と(B)成分と水とを含有する粉砕用添加剤組成物として用いた。実施例の組成物は水溶液であった。
表1の実施例1−1〜1−7、表2の実施例3−1〜3−3、表3の実施例4−1〜7−1、表5の実施例9−1〜9−8に示す(A)成分、(B)成分及び水を、(A)成分及び(B)成分が表に記載の質量比になるように、25℃にて混合し、固形分濃度30質量%の水溶液として粉砕用添加剤組成物を得た。
いずれの粉砕用添加剤組成物も濁り等はなく、均一な水溶液が得られた。
また、実施例1−4の粉砕用添加剤組成物については、固形分濃度50質量%の水溶液である粉砕用添加剤組成物も調製した。この粉砕用添加剤組成物も濁り等はなく、均一な水溶液であった。
[水硬性化合物]
(1)クリンカー
成分が、CaO:約65%、SiO2:約22%、Al2O3:約5%、Fe2O3:約3%、MgO他:約3%(質量基準)となるように、石灰石、粘土、けい石、酸化鉄原料等を組み合わせて焼成したものを、クラッシャー及びグラインダーにより一次粉砕して得た、普通ポルトランドセメント用クリンカー(3.5mmふるい通過物)を用いた。
なお、上記成分は、C3Sが62.7質量%、C2Sが16.1質量%、C3A8.5質量%、C4AFが8.4質量%である。
(2)二水石膏
試薬特級(和光純薬工業社製)を用いた。
・クリンカー:1000g
・二水石膏:52.7g(水硬性粉体中5.0質量%相当)
・粉砕用添加剤組成物:クリンカー100質量部に対する各成分の固形分添加量がそれぞれ表1〜5に記載の量になるように、30質量%濃度の粉砕用添加剤組成物を配合した。
容量18リットル、外径300mmのステンレスポットに、水硬性化合物及び粉砕用添加剤組成物を入れ、ボールミル「AXB−15」(株式会社セイワ技研製)を用い、粉砕した。ステンレスボールは30mmφ(呼び1・1/4)を30個、20mmφ(呼び3/4)を70個の合計100個のボールを使用し、ボールミルの回転数は40rpmとした。粉砕開始から60分、70分、80分後に、粉砕物を一部取り出し、ブレーン値を測定した。
粉砕到達時間は、目標ブレーン値を3300±100cm2/gに到達するまでの時間とした。粉砕開始から60分、70分、80分後のサンプルについてブレーン値を測定し、目標ブレーン値3300cm2/gに達する時間をマイクロソフト社製マイクロソフト
エクセル2003の二次回帰式により求めた。その時間を最終到達時間(粉砕到達時間)として粉砕を終了した。
ブレーン値の測定は、セメントの物理試験方法(JIS R 5201)に定められるブレーン空気透過装置を使用した。
セメントの物理試験方法(JIS R 5201)附属書2(セメントの試験方法−強さの測定)に従って、圧縮強度を測定した。結果を表1〜5に示す。
用いたセメントは、前記で得られたブレーン値3300±100cm2/gのものであ
る。
表1の比較例1−1〜1−8、比較例2、表2の比較例3−1〜3−3、表3の比較例4−1〜7−1、表4の比較例8−1、比較例8−3及び比較例1−10については、粉砕後に表に示す所定量の添加剤を添加した。
コンクリート製品や構造物の製造の観点から、圧縮強度が大きいほど優れる。
2) 比較例1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、1−7、1−8、2の圧縮強度を100とした時の圧縮強度である(同じ試験群で比較例の圧縮強度を100として実施例と対比する。ただし、試験群1−8は、比較例1−8の圧縮強度を、試験群2は、比較例2の圧縮強度を、それぞれ100とする。)。
2) 比較例3−1、1−4、3−2又は3−3の圧縮強度を100とした時の圧縮強度である(同じ試験群で比較例の圧縮強度を100として実施例と対比する。)。
2) 比較例4−1、5−1、6−1、1−4又は7−1の圧縮強度を100とした時の圧縮強度である(同じ試験群で枝番号のある比較例の圧縮強度を100として実施例と対比する。)。
また、(A)成分のレゾルシノールを粉砕時に添加することが、粉砕後に添加するよりも、1日後及び7日後の圧縮強度の向上に効果的であることが解る。さらに、実施例1−3と比較例1−8の対比から明らかなように、レゾルシノールを粉砕後に添加した場合、1日後の圧縮強度を粉砕時に添加した場合と同等にするには、添加量が10倍以上必要であることがわかる。
2) 比較例8−1、8−3、1−10又は1−4の圧縮強度を100とした時の圧縮強度である(同じ試験群で枝番号のある比較例の圧縮強度を100として実施例と対比する。)。
Claims (3)
- レゾルシノール〔以下、(A)成分という〕と、グリセリン及びグリセリンのエチレンオキサイド付加物からなる群から選ばれる1種以上〔以下、(B)成分という〕との存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を有し、
前記(A)成分と前記(B)成分の質量比((A)成分/(B)成分)が、1/99以上、45/55以下であり、
前記(A)成分の存在量が、水硬性化合物100質量部に対して、0.0001質量部以上、0.05質量部以下であり、
前記(B)成分の存在量が、水硬性化合物100質量部に対して、0.001質量部以上、0.20質量部以下である、
水硬性粉体の製造方法。 - 前記(B)成分が、グリセリンにエチレンオキサイドを0.5モル以上、6モル以下付加して得られるグリセリンのエチレンオキサイド付加物である、請求項1記載の水硬性粉体の製造方法。
- レゾルシノール〔以下、(A)成分という〕と、グリセリン及びグリセリンのエチレンオキサイド付加物からなる群から選ばれる1種以上〔以下、(B)成分という〕とを含有し、前記(A)成分と前記(B)成分の質量比((A)成分/(B)成分)が、1/99以上、45/55以下である、水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物であって、
水硬性化合物を粉砕する際に、前記(A)成分の量が、水硬性化合物100質量部に対して、0.0001質量部以上、0.05質量部以下、前記(B)成分の量が、水硬性化合物100質量部に対して、0.001質量部以上、0.20質量部以下となるように使用される、水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物。
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