発明の詳細な説明
(関連出願の相互参照)
本出願は、2011年12月16日に出願された米国特許仮出願第61/576584号に対する優先権を主張するものであり、その開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
(技術分野)
メルカプト含有ビスアンヒドロヘキシトール誘導体、及びこれらの誘導体化合物の硬化性組成物及び硬化済み組成物の両方における使用が記載されている。
(背景)
メルカプタン化合物は、エポキシ樹脂用硬化剤として使用されてきた。しかしながら、様々な高分子材料の調製に使用される多くの反応物質と同様、既知のメルカプタン化合物のほとんどは、石油系原料から調製される。現在の消費需要、法的考察、及び石油系原材料の資源の減少によって、高分子材料の調製における原料としての代替的な材料源の必要性が生じている。
いくつかの植物系メルカプタン化合物が知られている。例えば、大豆油は、米国特許第7,910,666号(Byersら)、米国特許第7,713,326号(Carstensら)、及び米国特許出願公開第2005/0197390 A1号(Byersら)に記載されるようにメルカプタン化されている。
様々なビスアンヒドロヘキシトールの誘導体(即ち、イソソルビド、イソマンニド、イソイジドの誘導体、又はこれらの混合物)が知られている。例えば、米国特許第6,608,167号(Hayestら)には、様々なポリエステルの調製におけるモノマーとしてのビス(2−ヒドロキシエチル)イソソルビドの使用が記載されている。米国特許出願公開第2010/0130759号(Gillet)には、ポリアミドの調製においてモノマーとして使用され得る、末端−CH2NH2基を有する様々なビスアンヒドロヘキシトール誘導体が記載されている。米国特許第7,365,148号(Onoら)には、ビスアンヒドロヘキシトールから調製されるポリカーボネートが記載されている。イソソルビドジグリシジルエーテルは、米国特許第3,272,845号(Zechら)に記載されている。
(要約)
2つの末端メルカプト基を有するビスアンヒドロヘキシトール誘導体(即ち、イソソルビド誘導体、イソマンニド誘導体、イソイジド誘導体、又はこれらの混合物)が提供される。加えて、これらのメルカプト含有ビスアンヒドロヘキシトール誘導体を含む硬化性組成物、硬化性組成物から調製される硬化済み組成物、及び硬化済み組成物を含有する物品が提供される。より詳細には、硬化性組成物は、エポキシ系製剤である。硬化済み組成物は、例えば構造用接着剤として、又はコーティングとして使用され得る。
第1の態様では、2つの末端メルカプト基を有するビスアンヒドロヘキシトール誘導体が提供される。これらのメルカプタン化合物は、式(I)のものである。
HS−L−Y−O−Q−O−Y−L−SH
(I)
式(I)中、各Y基は独立して単結合又はカルボニルであり、各L基は独立してアルキレン又はヘテロアルキレンである。Q基は、式(I−1)、式(I−2)、又は式(I−3)の二価基である。
各アスタリスクは、二価基Qと式(I)の化合物の残り部分との結合点を示す。
第2の態様では、(a)エポキシ樹脂と、(b)第1硬化剤と、を含む硬化性組成物が提供される。第1硬化剤は、上述されるような式(I)のメルカプタン化合物である。
第3の態様では、第1基材と、第1基材に隣接して配置される硬化済み組成物と、を含む物品が提供される。硬化済み組成物は、(a)エポキシ樹脂と、(b)第1硬化剤と、を含む硬化性組成物の反応生成物を含有する。第1硬化剤は、上述されるような式(I)のメルカプタン化合物である。
上記の課題を解決するための手段は、本発明の各実施形態又はあらゆる実施を説明することを意図していない。以下の発明を実施するための形態及び実施例は、これらの実施形態をより具体的に例証する。
(発明の詳細な説明)
2つの末端メルカプト基を有するビスアンヒドロヘキシトール誘導体が提供される。これらのメルカプト含有ビスアンヒドロヘキシトール誘導体(即ち、メルカプタン化合物)を含む硬化性組成物も提供される。より詳細には、硬化性組成物はエポキシ系配合物であり、メルカプト含有ビスアンヒドロヘキシトール誘導体は、エポキシ樹脂の硬化剤として作用する。加えて、硬化性組成物から調製される硬化済み組成物、及び硬化済み組成物を含む物品が提供される。硬化済み組成物は、例えば構造用接着剤として、又はコーティングとして使用され得る。
第1の態様では、式(I)のメルカプタン化合物が提供される。
HS−L−Y−O−Q−O−Y−L−SH
(I)
式(I)中、各Y基は独立して単結合又はカルボニルであり、各L基は独立してアルキレン又はヘテロアルキレンである。Q基は、式(I−1)、式(I−2)、又は式(I−3)の二価基である。
各アスタリスクは、二価基Qと式(I)の化合物の残り部分との結合点を示す。式(I)のメルカプタン化合物において、2つのY基、2つのL基、及び2つの−O−Y−L−SH基は、同じであっても異なっていてもよい。
本明細書で使用するとき、用語「メルカプタン」は、1つ以上のメルカプト基を有する化合物を指す。メルカプトは、一価の−SH基である。式(I)のメルカプタン化合物は、2つのメルカプト基を有する。
メルカプタン化合物は、メルカプト含有ビスアンヒドロヘキシトール誘導体である。ビスアンヒドロヘキシトールには、3つの立体異性体があり、イソソルビド、イソマンニド、及びイソイジドである。Q基が式(I−1)のものである際、式(I)のメルカプタン化合物は、式(IA)のイソソルビド誘導体である。
Q基が式(I−2)のものである際、式(I)のメルカプタン化合物は、式(IB)のイソマンニド誘導体である。
Q基が式(I−3)のものである場合、式(I)のメルカプタン化合物は、式(IC)のイソイジド誘導体である。
式(IA)、式(IB)、及び式(IC)のメルカプタン化合物は、立体異性体である。各立体異性体は、個々に存在するか、又は他の立体異性体の1つ以上との混合物中に存在し得る。
式(I)中のY基がカルボニル基である際、メルカプタン化合物は式(II)のものである。
HS−L−(CO)−O−Q−O−(CO)−L−SH
(II)
本明細書で使用するとき、用語「カルボニル」は、二価基−(CO)−を指し、ここで炭素原子及び酸素原子は二重結合で連結されている。式(II)のメルカプタン化合物は、式−O(CO)−L−SHの基を2つ含有するエステルである。
式(I)中のY基が単結合である際、メルカプタン化合物は式(III)のものである。
HS−L−O−Q−O−L−SH
(III)
式(III)のメルカプタン化合物は、以下の式の基を2つ含有するエーテルである:−O−L−SH。
式(I)、式(II)、及び式(III)のいくつかの変形例において、L基はアルキレンである。本明細書で使用するとき、用語「アルキレン」は、アルカンのラジカルである二価基を指す。アルキレンは、直鎖、分枝状、環状、二環式又はこれらの組み合わせであり得る。アルキレンは通常、1〜30個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレンは、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一炭素原子上(即ち、アルキリデン)であっても、異なる炭素原子上であってもよい。
式(I)、式(II)、及び式(III)の他の変形例では、L基はヘテロアルキレンである。本明細書で使用するとき、用語「ヘテロアルキレン」は、チオ(−S−)、オキシ(−O−)、又は−NRa−(式中、Raは水素又はアルキルである)で置換される1つ以上の−CH2−基を有する二価のアルキレンを指す。ヘテロアルキレンは、直鎖、分枝状、環状、二環式又はこれらの組み合わせであってよく、最大30個の炭素原子及び最大20個のヘテロ原子を含み得る。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキレンは、最大20個の炭素原子及び最大12個のヘテロ原子、最大10個の炭素原子及び最大6個のヘテロ原子、最大6個の炭素原子及び最大4個のヘテロ原子、又は最大4個の炭素原子及び最大3個のヘテロ原子を含む。好適なRaアルキル基は、典型的には、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。
L基がヘテロアルキレンである際、1つ以上のヘテロ原子が酸素原子である(即ち、ヘテロアルキレンは1つ以上のオキシ基を含有する)ことが多く、L基はエーテル基又はポリエーテル基である。式(I)の化合物のいくつかの例は、式(IV)の化合物で示されるように、単一のオキシ基を有するヘテロアルキレン基Lを有する。
HS−L2−O−L1−Y−O−Q−O−Y−L1−O−L2−SH
(IV)
式(I)中のヘテロアルキレン基Lは、式(IV)中の−L1−O−L2−のエーテル基である。L1及びL2の各基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基である。
式(I)及び式(II)の両方の化合物の例としては、HS−CH2−(CO)−O−Q−O−(CO)−CH2−SH、HS−CH(CH3)−(CO)−O−Q−O−(CO)−CH(CH3)−SH、及びHS−CH2CH2−(CO)−O−Q−O−(CO)−CH2CH2−SHが挙げられるが、これらに限定されない。
Q基は、式(I−1)、式(I−2)又は式(I−3)のものであり得る。いくつかの実施形態では、Q基は式(I−1)のものであり、式(I)及び式(II)のメルカプタン化合物はイソソルビド誘導体である。
式(I)及び式(III)の両方の化合物の例としては、
HS−CH2CH2CH2−O−Q−O−CH2CH2CH2−SHが挙げられるが、これに限定されない。Q基は、式(I−1)、式(I−2)又は式(I−3)のものであり得る。いくつかの実施形態では、Q基は式(I−1)のものであり、式(I)及び式(III)のメルカプタン化合物はイソソルビド誘導体である。
エステルである式(II)のメルカプタン化合物は、当該技術分野において既知の任意の方法を使用して調製され得る。例えば、反応スキームAで示されるもののような一段階合成法が使用され得る。
この合成方法を使用して、式(V)のビスアンヒドロヘキシトールは、式(VI)の化合物と反応する。式(VI)の化合物のいくつかの例としては、メルカプト酢酸(式中、Lは−CH2−に等しい)、2−メルカプトプロピオン酸(式中、Lは−CH(CH3)−に等しい)、3−メルカプトプロピオン酸(式中、Lは−CH2CH2−に等しい)、3−メルカプトイソ酪酸(式中、Lは−CH(CH3)CH2−に等しい)、4−メルカプト酪酸(式中、Lは−CH2CH2CH2−に等しい)、及び4−メルカプトペンタン酸(式中、Lは−CH2CH2CH(CH3)−に等しい)が挙げられるが、これらに限定されない。
硫酸、p−トルエンスルホン酸、又はメタンスルホン酸などの強酸触媒が、通常はこの合成法に使用される。
エーテルである式(III)のメルカプタン化合物は、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して調製され得る。例えば、反応スキームBに示されるような方法が使用され得る。
この反応スキームにおいて、式(VII)の不飽和ハロゲン化物化合物は、最初に、式(V)のビスアンヒドロヘキシトールと反応して、式(VIII)の中間化合物を得る。式(VII)の好適な化合物は、式中、L3が、1〜12個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、又は1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレンであるものを含む。式(VII)中のX基は、ブロモ、クロロ、又はヨードなどのハロである。例えば、式(VII)の化合物は、臭化アリル又は塩化アリルであり得る(式中、L3は−CH2−基である)。次に、式(VIII)の中間化合物が、硫化水素と反応する。典型的には、3種の異性体生成物(式IXa、IXb、及びIXcの化合物)の混合物が得られる。式(I)及び(III)中のL基は、式(IXa)〜(IXc)の生成物中の−L3−CH2CH2−基又は−L3−CH(CH3)−基に等しい。このタイプの反応は、例えば、Patai,S.,The Chemistry of the Thiol Group,Part 1,Wiley,New York,pp 169〜269(1974)に更に記載されている。
あるいは、反応スキームCは、エーテルである式(III)のメルカプタン化合物を合成するのに使用され得る。この反応スキームにおいては、通常、生成物は式(IXc)の単一異性体である。
反応スキームBと同様、式(VII)の化合物は、最初に式(V)のビスアンヒドロヘキシトールと反応して、式(VIII)の第1中間化合物を得る。式(VII)の好適な化合物は、反応スキームBに関して上述されるのと同じである。次に、式(VIII)の第1中間体をチオ酢酸(CH3−(CO)SH)と反応させて式(X)の第2中間体を形成する。式(X)の第2中間体は、水酸化ナトリウムなどの強塩基と反応することで脱保護化されて、式(IXc)の生成物を得る。式(I)及び(III)中のL基は、式(IXc)の生成物中の−L3−CH2CH2−基に等しい。このタイプの反応は、例えば、Patai S.,The Chemistry of the Thiol Group,Part 1,Wiley,New York,pp 169〜269(1974)に更に記載されている。
反応スキームA、B、及びCに示されるように、式(I)の様々な化合物の全ては、式(V)のビスアンヒドロヘキシトールを使用することに基づいている。式(V)の単一立体異性体又は立体異性体の混合物は、これらの反応スキームのいずれかで使用され得る。ビスアンヒドロヘキシトールの様々な立体異性体は、典型的には、コーンスターチから得られるもののような糖から調製される。例えば、イソソルビドは、D−グルコースから(例えば、水素添加後に酸触媒で脱水することによって)形成されることができ、イソマンニドはD−マンノースから形成されることができ、イソイジドはL−イドースから形成されることができる。石油系原料ではなく植物系原料を使用することは、多くの用途において望ましい可能性がある。つまり、石油系原料とは対照的に、植物系原料は再生可能である。
式(I)の化合物は、通常は室温で液体である。別の言い方をすれば、式(I)の化合物は、室温で液晶ではない。
他の態様では、(a)エポキシ樹脂及び(b)式(I)のメルカプタン化合物を含む硬化剤、を含有する硬化性組成物が提供される。硬化性組成物は、典型的には、コーティング組成物として基材の少なくとも1つの表面に適用された後、硬化される。他の実施形態では、硬化済み組成物は、2つの表面と一緒に接着するための構造用接着剤として使用され得る。構造用接着剤は、例えば、様々な表面を一緒に接着する際に、溶接体又は機械的締結具などの従来の接合手段と置き換えるために、又はこれを補完するために使用され得る。
硬化性組成物は、多くの場合、二液型組成物の形態である。エポキシ樹脂は、通常、硬化性組成物の使用前には硬化剤から分離されている。即ち、エポキシ樹脂は典型的には硬化性組成物の第1部分にあり、硬化剤は典型的には第2部分にある。第1部分は、エポキシ樹脂と反応しないか、又はエポキシ樹脂の一部分のみと反応する他の構成成分を含み得る。同様に、第2部分は、硬化剤と反応しないか、又は硬化剤の一部分のみと反応する他の構成成分を含み得る。強化剤、油置換剤又は充填剤などの様々な任意の構成成分は、第1部分、第2部分、又は第1部分と第2部分との両方に含まれ得る。第1部分及び第2部分が一緒に混合される際、様々な構成成分が反応して、硬化済み組成物が形成される。
第1部分に含まれるエポキシ樹脂は、1分子当たり少なくとも1つのエポキシ官能基(即ち、オキシラン基)を含有する。本明細書で使用するとき、用語「オキシラン基」は、以下の二価基を指す。
アスタリスクは、オキシラン基と他の基との結合部位を示す。オキシラン基がエポキシ樹脂の末端位置にある場合、オキシラン基は通常、水素原子に結合している。
エポキシ樹脂は、1分子当たり少なくとも1つのオキシラン基を有し、多くの場合、1分子当たり少なくとも2つのオキシラン基を有する。例えば、エポキシ樹脂は、1分子当たり1〜10個、2〜10個、1〜6個、2〜6個、1〜4個、又は2〜4個のオキシラン基を有することができる。オキシラン基は、多くの場合、グリシジル基の一部分である。
エポキシ樹脂は、硬化前に所望の粘度特性をもたらし、硬化後に所望の機械的特性をもたらすように選択される、単一材料又は材料の混合物であり得る。エポキシ樹脂が材料の混合物である場合、混合物中のエポキシ樹脂のうちの少なくとも1つは、典型的には、1分子当たり少なくとも2つのオキシラン基を有するように選択される。例えば、混合物中の第1エポキシ樹脂は2〜4個のオキシラン基を有することができ、混合物中の第2エポキシ樹脂は1〜6個のオキシラン基を有することができる。これらの例のいくつかにおいては、第1エポキシ樹脂は、2〜4個のグリシジル基を有するグリシジルエーテルであり、第2エポキシ樹脂は、1〜6個のグリシジル基を有するグリシジルエーテルである。
オキシラン基ではないエポキシ樹脂分子の部分(即ち、エポキシ樹脂分子からオキシラン基を除いたもの)は、芳香族、脂肪族又はこれらの組み合わせであってよく、直鎖、分枝状、環状又はこれらの組み合わせであってよい。エポキシ樹脂の芳香族及び脂肪族部分は、ヘテロ原子、又はオキシラン基と反応しない他の基を含み得る。つまり、エポキシ樹脂は、ハロ基、エーテル結合基におけるようなオキシ基、チオエーテル結合基におけるようなチオ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、ホスホノ基、スルホノ基、ニトロ基、ニトリル基などを含み得る。エポキシ樹脂は、ポリジオルガノシロキサン系材料などのシリコーン系材料でもあり得る。
エポキシ樹脂は任意の好適な分子量を有することができるが、重量平均分子量は、通常、少なくとも100グラム/モル、少なくとも150グラム/モル、少なくとも175グラム/モル、少なくとも200グラム/モル、少なくとも250グラム/モル、又は少なくとも300グラム/モルである。重量平均分子量は、最大50,000グラム/モルであることができ、又は高分子エポキシ樹脂については更に大きくてもよい。重量平均分子量は、多くの場合、最大40,000グラム/モル、最大20,000グラム/モル、最大10,000グラム/モル、最大5,000グラム/モル、最大3,000グラム/モル、又は最大1,000グラム/モルである。例えば、重量平均分子量は、100〜50,000グラム/モルの範囲、100〜20,000グラム/モルの範囲、100〜10,000グラム/モルの範囲、100〜5,000グラム/モルの範囲、200〜5,000グラム/モルの範囲、100〜2,000グラム/モルの範囲、200〜2,000グラム/モルの範囲、100〜1,000グラム/モルの範囲、又は200〜1,000グラム/モルの範囲であり得る。
好適なエポキシ樹脂は、典型的には、室温(例えば、約20℃〜約25℃)で液体である。しかしながら、好適な溶媒中に溶解できるエポキシ樹脂を使用することもできる。多くの実施形態では、エポキシ樹脂はグリシジルエーテルである。グリシジルエーテルの例は、式(XI)のものであることができる。
式(XI)中、R
1基は、芳香族、脂肪族又はこれらの組み合わせであるp価の基である。R
1基は、直鎖、分枝状、環状又はこれらの組み合わせであり得る。R
1基は、任意に、ハロ基、オキシ基、チオ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、ホスホノ基、スルホノ基、ニトロ基、ニトリル基などを含み得る。変数pは1以上の任意の好適な整数であることができるが、pは、多くの場合、1〜10の範囲、2〜10の範囲、又は2〜6の範囲、又は2〜4の範囲の整数であり得る。
式(XI)のエポキシ樹脂のいくつかの例では、変数pは2に等しく(即ち、エポキシ樹脂はジグリシジルエーテルである)、R1は、アルキレン(即ち、アルキレンはアルカンの二価のラジカルであり、アルカン−ジイルと称され得る)、ヘテロアルキレン(即ち、ヘテロアルキレンはヘテロアルカンの二価のラジカルであり、ヘテロアルカン−ジイルと称され得る)、アリーレン(即ち、アレーン化合物の二価のラジカルであり、これは芳香族炭化水素である)、ヘテロアリーレン(即ち、ヘテロアレーン化合物の二価のラジカルであり、これは酸素、硫黄、又は窒素から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族化合物である)、又はこれらの組み合わせを含む。好適なアルキレン基は、多くの場合、1〜20個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。好適なヘテロアルキレン基は、多くの場合、2〜50個の炭素原子、2〜40個の炭素原子、2〜30個の炭素原子、2〜20個の炭素原子、2〜10個の炭素原子、又は2〜6個の炭素原子を有し、1〜10個のヘテロ原子、1〜6個のヘテロ原子、又は1〜4個のヘテロ原子を有する。ヘテロアルキレン中のヘテロ原子は、オキシ、チオ又は−NH−基から選択され得るが、オキシ基であることが多い。好適なアリーレン基は、多くの場合、6〜18個の炭素原子、又は6〜12個の炭素原子を有する。例えば、アリーレンはフェニレン又はビフェニレンであり得る。好適なヘテロアリーレン基は、多くの場合、3〜18個の炭素原子、又は3〜12個の炭素原子を有する。R1基は更に、任意で、ハロ基、オキシ基、チオ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、ホスホノ基、スルホノ基、ニトロ基、ニトリル基などを含み得る。変数pは、通常、2〜4の範囲の整数である。
式(XI)のいくつかのエポキシ樹脂はジグリシジルエーテルであり、式中、R1は、(a)アリーレン基又は(b)アルキレン、ヘテロアルキレン若しくはこれらの両方と組み合わせたアリーレン基を含む。R1基は、ハロ基、オキシ基、チオ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、ホスホノ基、スルホノ基、ニトロ基、ニトリル基などの任意の基を更に含み得る。これらのエポキシ樹脂は、例えば、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物を過剰なエピクロロヒドリンと反応させることにより、調製することができる。少なくとも2つのヒドロキシル基を有する有用な芳香族化合物の例としては、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、p,p’−ジヒドロキシジベンジル、p,p’−ジヒドロキシフェニルスルホン、p,p’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシフェニルスルホン、及びp,p’−ジヒドロキシベンゾフェノンが挙げられるが、これらに限定されない。更に他の例としては、ジヒドロキシジフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルメチルプロピルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルプロピレンフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルブチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルトリルエタン、ジヒドロキシジフェニルトリルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルジシクロヘキシルメタン及びジヒドロキシジフェニルシクロヘキサンの、2,2’、2,3’、2,4’、3,3’、3,4’及び4,4’異性体が挙げられる。
いくつかの市販の式(XI)のジグリシジルエーテルエポキシ樹脂は、ビスフェノールAから誘導される(即ち、ビスフェノールAは、4,4’−(プロパン−2,2−ジイル)ジフェノールである)。例としては、商品名EPON(例えば、EPON 828、EPON 872、及びEPON 1001)でHexion Specialty Chemicals,Inc.(Houston,TX,USA)から入手可能なもの、商品名D.E.R.(例えば、D.E.R.331、D.E.R.332、及びD.E.R.336)でDow Chemical Co.(Midland,MI,USA)から入手可能なもの、及び商品名EPICLON(例えば、EPICLON 850)でDainippon Ink and Chemicals,Inc.(Chiba,Japan)から入手可能なものが挙げられるが、これらに限定されない。その他の市販のジグリシジルエーテルエポキシ樹脂は、ビスフェノールFから誘導される(即ち、ビスフェノールFは、2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタンである)。例としては、商品名D.E.R.(例えば、D.E.R.334)でDow Chemical Co.から入手可能なもの、及び商品名EPICLON(例えば、EPICLON 830)でDainippon Ink and Chemicals,Inc.から入手可能なものが挙げられるが、これらに限定されない。
式(XI)のその他のエポキシ樹脂は、ポリ(アルキレンオキシド)ジオールのジグリシジルエーテルである。これらのエポキシ樹脂は、ポリ(アルキレングリコール)ジオールのジグリシジルエーテルと呼ぶこともできる。変数pは2に等しく、R1は、酸素ヘテロ原子を有するヘテロアルキレンである。ポリ(アルキレングリコール)部分は、コポリマー又はホモポリマーであってよく、多くの場合、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン単位を含む。例としては、ポリ(エチレンオキシド)ジオールのジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレンオキシド)ジオールのジグリシジルエーテル、及びポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールのジグリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。このタイプのエポキシ樹脂は、約400グラム/モル、約600グラム/モル、又は約1000グラム/モルの重量平均分子量を有する、ポリ(エチレンオキシド)ジオールから又はポリ(プロピレンオキシド)ジオールから誘導されるものなどがPolysciences,Inc.(Warrington,PA,USA)から市販されている。
式(XI)の更に他のエポキシ樹脂は、アルカンジオールのジグリシジルエーテルである(R1はアルキレンであり、変数pは2に等しい)。例としては、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、及びHexion Specialty Chemicals,Inc.(Columbus,OH,USA)から商品名EPONEX 1510で市販されているものなどの水素添加ビスフェノールAから形成される脂環式ジオールのジグリシジルエーテルが挙げられる。
更に他のエポキシ樹脂としては、少なくとも2つのグリシジル基を有するシリコーン樹脂、及び少なくとも2つのグリシジル基を有する難燃性エポキシ樹脂(例えば、Dow Chemical Co.(Midland,MI,USA)から商品名D.E.R 580で市販されているものなどの少なくとも2つのグリシジル基を有する臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂)が挙げられる。
植物系エポキシ樹脂が使用され得る。好適な植物系エポキシ樹脂は、例えば、商品名EX−313、EX−512及びEX−521でNagase Chem Tex(Tokyo,Japan)から市販されている。更に、イソソルビドジグリシジルエーテルなどのビスアンヒドロヘキシトール系エポキシ樹脂は、米国特許第3,272,845号(Zechら)に記載されるように合成することができる。ソルビトールポリグリシジルポリエーテルは、商品名ERISYS GE−60でCVC Thermoset Specialties(Moorestown,NJ,USA)から市販されている。植物系エポキシ樹脂と式(I)の植物系硬化剤との組み合わせが、いくつかの用途において望ましい場合がある。炭水化物から誘導される植物系エポキシ樹脂は、親水性である傾向があり、式(I)の親水性化合物と容易に適合する。
エポキシ樹脂は、多くの場合、材料の混合物である。例えば、エポキシ樹脂は、硬化前に、所望の粘度又は流量特性をもたらす混合物であるように選択され得る。混合物は、より低い粘度を有する反応性希釈剤と呼ばれる少なくとも1つの第1エポキシ樹脂と、より高い粘度を有する少なくとも1つの第2エポキシ樹脂と、を含み得る。反応性希釈剤は、エポキシ樹脂混合物の粘度を低下させる傾向を有し、多くの場合、飽和している分枝状主鎖又は飽和若しくは不飽和である環状主鎖のいずれかを有する。例としては、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、及びトリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルは、Hexion Specialty Chemicals(Columbus,OH,USA)から商品名HELOXY MODIFIER 107で、及びAir Products and Chemical Inc.(Allentonwn,PA,USA)から商品名EPODIL 757で市販されている。その他の反応性希釈剤は、様々なモノグリシジルエーテルなどの官能基(即ち、オキシラン基)を1つのみ有する。いくつかのモノグリシジルエーテルの例としては、1〜20個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を持つアルキルグリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかのモノグリシジルエーテルの例は、Air Products and Chemical,Inc.(Allentown,PA,USA)から商品名EPODILで市販されており、例えば、EPODIL 746(2−エチルヘキシルグリシジルエーテル)、EPODIL 747(脂肪族グリシジルエーテル)、及びEPODIL 748(脂肪族グリシジルエーテル)である。
エポキシ樹脂は、多くの場合、1つ以上のグリシジルエーテルを含む。グリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂は、他のタイプのエポキシ樹脂よりも反応性が高い傾向がある。実施形態によっては、複数の異なる種類の硬化剤(例えば、式(I)の化合物である第1硬化剤、及び第2硬化剤)が使用されるような場合などは、他の反応性の低いエポキシ樹脂が使用され得る。これらの反応性の低いエポキシ樹脂は、例えば、エポキシアルカン、エポキシフッ素化アルカン、及びグリシジルエステルなどのエポキシエステルであり得る。
好適なグリシジルエステルは、式(XII)のものである。
式(XII)中、R
2基は、1〜18個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレンである。式(XII)の化合物のいくつかの例では、R
2はメチレンである。各R
3基は、独立して、1〜12個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝状アルキルである。式(XI)の化合物の1つの例は、Hexion Specialty Chemicals(Columbus,OH,USA)から商品名CARDURA N10で市販されている。この材料は、10個の炭素原子を有する高度に分岐した第3級カルボン酸(ネオデカン酸)のグリシジルエステルである。
その他の好適なエポキシ樹脂は、式(XIII)のエポキシアルカン又はエポキシフッ素化アルカンから選択され得る。
式(XIII)中、R
4基はアルキル又はフッ素化アルキルである。アルキル又はフッ素化アルキル基は、直鎖、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであり得る。アルキル又はフッ素化アルキル基は、多くの場合、3〜20個の炭素原子、4〜20個の炭素原子、4〜18個の炭素原子、4〜12個の炭素原子、又は4〜8個の炭素原子など、少なくとも3個の炭素原子を有する。式(XII)の化合物の例としては、1H,1H,2H−ペルフルオロ(1,2−エポキシ)ヘキサン、3,3−ジメチル−1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシデカン及び1,2−エポキシシクロペンタンが挙げられるが、これらに限定されない。
更に他の好適なエポキシ樹脂は、環状テルペンオキシドである。例としては、リモネンオキシド、リモネンジオキシド、及びα−ピネンオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
硬化性組成物は、典型的には、エポキシ樹脂と硬化剤とを併せた重量に対して、少なくとも20重量%のエポキシ樹脂を含む。例えば、硬化性組成物は、少なくとも25重量パーセント、少なくとも30重量パーセント、少なくとも40重量パーセント、又は少なくとも50重量パーセントのエポキシ樹脂を含み得る。硬化性組成物は、多くの場合、最大90重量パーセントのエポキシ樹脂を含む。例えば、硬化性組成物は、最大80重量パーセント、最大75重量パーセント、最大70重量パーセント、最大65重量パーセント、又は最大60重量パーセントのエポキシ樹脂を含み得る。いくつかの硬化性組成物の例は、20〜90重量%、20〜80重量%、20〜70重量%、30〜90重量%、30〜80重量%、30〜70重量%、30〜60重量%、40〜90重量%、40〜80重量%、40〜70重量%、50〜90重量%、50〜80重量%、又は50〜70重量%のエポキシ樹脂を含有する。
エポキシ樹脂は、通常硬化性組成物の第2部分にある硬化剤と反応することにより硬化する。硬化剤は、式(I)のメルカプタン化合物を含む。エポキシ樹脂は、典型的には、保管中又は硬化性組成物の使用前に、硬化剤から分離されている。硬化性組成物の第1部分と第2部分とを一緒に混合する際、式(I)の化合物中のメルカプト基は、エポキシ樹脂中のオキシラン基と反応する。この反応によってオキシラン基が開環し、硬化剤はエポキシ樹脂に結合する。
硬化温度に応じて、硬化剤に様々な濃度が使用され得る。多くの実施形態では、低硬化温度が使用される場合、硬化性組成物には、式(I)のメルカプタン化合物がより多く含まれる。室温で硬化反応が起こる場合、硬化性組成物中のメルカプタン水素当量とエポキシ当量との比は、多くの場合、少なくとも0.5:1、少なくとも0.8:1、又は少なくとも1:1である。この比は、最大2:1、最大1.5:1、最大1.2:1、又は最大1.1:1であり得る。例えば、この比は、0.5:1〜2:1の範囲、0.5:1〜1.5:1の範囲、0.8〜2:1の範囲、0.8:1〜1.5:1の範囲、0.8:1〜1.2:1の範囲、0.9:1〜1.1:1の範囲、又は約1:1であり得る。
あるいは、少なくとも80℃などの高い硬化温度で使用される際、硬化性組成物に含まれる式(I)のメルカプタン化合物は、少なくてよい。硬化性組成物中の硬化剤の量は、多くの場合、エポキシ樹脂の一部分とのみ反応するモル量で存在する。例えば、メルカプタン水素当量とエポキシ当量との比は、多くの場合、1:1未満であり、例えば、0.2:1〜0.8:1の範囲、0.2:1〜0.6:1の範囲、又は0.3:1〜0.5:1の範囲である。硬化剤と反応しない任意のエポキシ樹脂は、高温で単独重合を起こす傾向がある。
硬化性組成物は、典型的には、エポキシ樹脂と第1硬化剤とを併せた重量に対して、少なくとも20重量%の第1硬化剤を含む。例えば、硬化性組成物は、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、又は少なくとも50重量%の第1硬化剤を含み得る。硬化性組成物は、多くの場合、最大90重量%の第1硬化剤を含む。例えば、硬化性組成物は、最大80重量%、最大75重量%、最大70重量%、最大65重量%、又は最大60重量%の第1硬化剤を含み得る。硬化性組成物のいくつかの例は、20〜90重量%、20〜80重量%、20〜70重量%、30〜90重量%、30〜80重量%、30〜70重量%、30〜60重量%、40〜90重量%、40〜80重量%、40〜70重量%、50〜90重量%、50〜80重量%、又は50〜70重量%の第1硬化剤を含有する。
いくつかの硬化性組成物は、エポキシ樹脂と第1硬化剤とを併せた重量に対して、20〜80重量%のエポキシ樹脂及び20〜80重量%の第1硬化剤を含有する。例えば、硬化性組成物は、30〜70重量%のエポキシ樹脂及び30〜70重量%の第1硬化剤、又は40〜60重量%のエポキシ樹脂及び40〜60重量%の第1硬化剤を含み得る。
いくつかの実施形態では、第2硬化剤は、式(I)の第1硬化剤と混和される。第2硬化剤は、エポキシ樹脂と反応する少なくとも1つの基を有する。第2硬化剤は、多くの場合、(a)少なくとも1つの第1級アミノ基又は少なくとも1つの第2級アミノ基を有するアミン化合物、(b)イミダゾール、イミダゾリン、又はこれらの塩、(c)第3級アミノ、第2級若しくは第3級アルキル、ニトロ、ハロ、ヒドロキシル、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの基で置換されるフェノール、(d)ビスフェノール、(e)酸無水物、(f)カルボン酸、(g)メルカプタン、あるいは(h)これらの混合物である。
第2硬化剤は、様々な理由で第1硬化剤と併せることができる。例えば、第2硬化剤は、硬化済み組成物の可撓性を調節するのに加えられ得る。異なる第2硬化剤によって、可撓性を異なる範囲に調節することができる。可撓性は、以下で説明されるように、重なり剪断強度を測定することで特徴付けられ得る。重なり剪断強度が増大するにつれて、硬化済み組成物はより剛性になる傾向がある。同様に、重なり剪断強度が減少するにつれて、硬化済み組成物はより可撓性になる傾向がある。
更に、第2硬化剤を加えることで、酸塩基中和反応が生じ得る。より詳細には、第2硬化剤は塩基性であってよく、式(I)の酸性の第1硬化剤と反応し得る。このタイプの反応は、特に式(I)のメルカプタン化合物で起こりやすく、ここでYはカルボニル基である。この中和反応は、発熱反応であり得る。生じた熱は、通常は1つ以上のグリシジルエーテル基を含有するエポキシ樹脂よりも反応性が低いエポキシ樹脂を硬化するのに有利に使用され得る。例えば、熱は、エポキシアルカン及びエポキシエステルを硬化するのに使用され得る。
いくつかの好適な第2硬化剤は、少なくとも1つの第1級アミノ基又は少なくとも1つの第2級アミノ基を有するアミン化合物である。つまり、第2硬化剤は、少なくとも1つの式−NR5Hの基(式中、R5は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、又はアルキルヘテロアリールから選択される)を有する。好適なアルキル基は、多くの場合、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。アルキル基は、環状、分枝状、直鎖、又はこれらの組み合わせであることができる。好適なアリール基は、通常、フェニル基又はビフェニル基のように6〜12個の炭素原子を有する。好適なアルキルアリール基は、アリールで置換されたアルキル、又はアルキルで置換されたアリールのいずれかであることができる。上述と同じアリール基及びアルキル基をアルキルアリール基で用いることができる。好適なヘテロアリール基は、酸素、窒素、又は硫黄などのヘテロ原子を有する芳香族基である。ヘテロアリールは、多くの場合、最大10個の炭素原子及び最大4個のヘテロ原子、最大6個の炭素原子及び最大3個のヘテロ原子、又は最大4個の炭素原子及び最大2個のヘテロ原子を有する。好適なアルキルヘテロアリール基は、ヘテロアリールで置換されたアルキル又はアルキルで置換されたヘテロアリールのいずれかであり得る。上述と同じヘテロアリール及びアルキル基は、アルキルヘテロアリール基で使用され得る。第2硬化剤がエポキシ樹脂と反応する際、オキシラン基は開環し、アミン化合物とエポキシ樹脂とを結合する共有結合が形成される。この反応により、式−OCH2−CH2−NR5−(式中、R5は水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、又はアルキルアリールに等しい)の二価基が形成される。アミノ基ではないアミン化合物第2硬化剤の部分は、任意の好適な芳香族基、脂肪族基、又はこれらの組み合わせであり得る。
硬化剤として有用ないくつかのアミン化合物は、式−NR5Hの単一のアミノ基を有するもののような植物系アミンである。例としては、デヒドロアビエチルアミン(DHAA)、2−アミノメチルフラン(FA)、及びメチレンビスフリルアミン、エチリデンビスフリルアミン、及び2−プロピリデンビスフリルアミンなどのジフリルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。ジフリルアミンは、CawseらのMakromol.Chem.,185,pp.697〜707(1984)及び米国特許第5,292,903号(Connerら)に記載されるように合成することができる。これらの植物系アミンを式(I)の生物系エポキシ化合物と組み合わせて使用して、再生可能な硬化性組成物を得ることができる。
いくつかのアミン化合物第2硬化剤は、式(XIII)のものである。これらの化合物のいくつかにおいては、少なくとも2つの第1級アミノ基、少なくとも2つの第2級アミノ基、又は少なくとも1つの第1級アミノ基及び少なくとも1つの第2級アミノ基がある。
各R
5基は、上述するように、独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、又はアルキルヘテロアリールである。各R
6は、独立して、アルキレン、ヘテロアルキレン、又はこれらの組み合わせである。好適なアルキレン基は、多くの場合、1〜18個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。好適なヘテロアルキレン基は、2つのアルキレン基の間に少なくとも1つのオキシ、チオ又は−NH−基を有する。好適なヘテロアルキレン基は、多くの場合、2〜50個の炭素原子、2〜40個の炭素原子、2〜30個の炭素原子、2〜20個の炭素原子、又は2〜10個の炭素原子を有し、最大20個のヘテロ原子、最大16個のヘテロ原子、最大12個のヘテロ原子、又は最大10個のヘテロ原子を有する。ヘテロ原子は、多くの場合、オキシ基である。変数qは少なくとも1に等しい整数であり、最大10以上、最大5、最大4、又は最大3であり得る。
式(XIII)のいくつかのアミン硬化剤は、アルキレン基から選択されるR6基を有することができる。例としては、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン(isophorene diamine)とも呼ばれる)、N’,N’−1.5−ビスフラニル−2−メチルメチレン−ペンタン−1,5−ジアミン(TEKA)などが挙げられるが、これらに限定されない。その他のアミン硬化剤は、酸素ヘテロ原子を有するヘテロアルキレンなどの、ヘテロアルキレン基から選択されるR6基を有し得る。例えば、硬化剤は、アミノエチルピペラジン、4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン(TTD)(TCI America(Portland,OR,US)から入手可能)、又はポリ(エチレンオキシド)ジアミン、ポリ(プロピレンオキシド)ジアミンなどのポリ(アルキレンオキシド)ジアミン(ポリエーテルジアミンとも呼ばれる)、又はこれらのコポリマーなどの化合物であり得る。市販のポリエーテルジアミンは、商品名JEFFAMINEで、Huntsman Corporation(The Woodlands,TX,USA)から市販されている。
更に他のアミン硬化剤は、ポリアミン(即ち、ポリアミンは、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選択される少なくとも2つのアミノ基を有するアミンを指す)を別の反応物質と反応させて、少なくとも2つのアミノ基を有するアミン含有付加物を形成することにより、形成され得る。例えば、ポリアミンは、エポキシ樹脂と反応して、少なくとも2つのアミノ基を有する付加物を形成し得る。高分子ジアミンがジカルボン酸と、ジアミンとジカルボン酸との2:1以上のモル比で反応する場合、2つのアミノ基を有するポリアミドアミンが形成され得る。このようなポリアミドアミンは、例えば、米国特許第5,629,380号(Baldwinら)に記載されるように調製することができる。別の例では、高分子ジアミンが2つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂と、ジアミンとエポキシ樹脂との2:1以上のモル比で反応する場合、2つのアミノ基を有するアミン含有付加物が形成され得る。多くの場合、モル過剰の高分子ジアミンが用いられるため、硬化剤は、アミン含有付加物と未使用(未反応)の高分子ジアミンとの両方を含む。例えば、ジアミンと2つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂とのモル比は、2.5:1超、3:1超、3.5:1超、又は4:1超であり得る。エポキシ樹脂を使用して硬化性組成物の第2部分中にアミン含有付加物を形成する場合であっても、追加のエポキシ樹脂が硬化性組成物の第1部分に存在する。
その他の第2硬化剤は、イミダゾール、イミダゾリン、又はこれらの塩であり得る。例としては、2−メチルイミダゾール、2−ヒドロキシプロピルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかのイミダゾールの例は、商品名CUREZOL及びIMICUREでAir Products and Chemicals Inc.(Allentown,PA,USA)から、並びに商品名EPICURE P−101でMomentive Specialty Chemicals(Houston,TX,USA)から市販されている。
更に他の第2硬化剤は、第3級アミノ、第3級アルキル、第2級アルキル、ニトロ、ハロ、ヒドロキシル、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの基で置換されたフェノールである。第3級アミノ基で置換されたフェノールの例は、式(XIV)のものであり得る。
式(XIV)中、各R
7及びR
7基は、独立して、アルキルである。変数vは、2又は3に等しい整数である。R
9基は、水素又はアルキルである。R
7、R
8及びR
9に好適なアルキル基は、多くの場合、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。式(XIV)の第2硬化剤の1つの例は、商品名ANCAMINE K54でAir Products Chemicals,Inc.(Allentown,PA,USA)から市販されているトリス−2,4,6−(ジメチルアミノメチル)フェノールである。式(VII)ではないフェノールのその他の例としては、4−tert−ブチルフェノール、ノニルフェノール、2−ニトロフェノール、4−ニトロフェノール、2−クロロフェノール、4−クロロフェノール、及びカテコールが挙げられるが、これらに限定されない。
ビスフェノール第2硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA(即ち、4,4’−(プロパン−2,2−ジイル)ジフェノール)、ビスフェノールF(即ち、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、及び2,2’−ビスフェノールが挙げられる。好適な酸無水物第2硬化剤としては、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸などが挙げられる。好適なカルボン酸第2硬化剤としては、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、サリチル酸、吉草酸、2,4−ジクロロ安息香酸などが挙げられる。
硬化性組成物と、第1硬化剤及び第2硬化剤の両方との硬化反応が室温で起こる場合、第1硬化剤と第2硬化剤とを組み合わせた水素当量とエポキシ当量との比は、多くの場合、少なくとも0.5:1、少なくとも0.8:1、又は少なくとも1:1である。この比は、最大2:1、最大1.5:1、最大1.2:1、又は最大1.1:1であり得る。例えば、この比は、0.5:1〜2:1の範囲、0.5:1〜1.5:1の範囲、0.8〜2:1の範囲、0.8:1〜1.5:1の範囲、0.8:1〜1.2:1の範囲、0.9:1〜1.1:1の範囲、又は約1:1であり得る。
しかしながら、硬化温度が高温である場合(例えば、少なくとも80℃、少なくとも100℃、少なくとも120℃、又は少なくとも150℃)、より少量の第1硬化剤と第2硬化剤との組み合わせが使用されることが多い。硬化性組成物中の硬化剤の量は、多くの場合、エポキシ樹脂の一部分とのみ反応するのに十分なモル量で存在する。例えば、第1硬化剤と第2硬化剤とを併せた水素当量とエポキシ当量との比は、多くの場合、1:1未満であり、例えば、0.2:1〜0.8:1の範囲、0.2:1〜0.6:1の範囲、又は0.3:1〜0.5:1の範囲である。第1硬化剤又は第2硬化剤のいずれとも反応しない任意のエポキシ樹脂は、高温で単独重合する傾向がある。
第1硬化剤及び第2硬化剤の任意のモル比が使用され得る。いくつかの実施形態では、第2硬化剤の水素当量と第1硬化剤の水素当量との比は、0.1:1〜10:1の範囲であることが多い。例えば、比は、0.2:1〜8:1の範囲、0.5:1〜6:1の範囲、1:1〜6:1の範囲、又は2:1〜6:1の範囲であり得る。
いくつかの硬化性組成物は、20〜80重量%のエポキシ樹脂及び20〜80重量%の第1硬化剤と第2硬化剤との組み合わせを含有する。例えば、硬化性組成物は、30〜70重量%のエポキシ樹脂及び30〜70重量%の第1硬化剤と第2硬化剤との組み合わせ、又は40〜60重量%のエポキシ樹脂及び40〜60重量%の第1硬化剤と第2硬化剤との組み合わせを含み得る。この量は、エポキシ樹脂と第1硬化剤と第2硬化剤との総重量に基づいている。
硬化性組成物は、任意で強化剤を含んでもよい。強化剤は、硬化済み組成物の強靭性を高めることができる硬化性エポキシ樹脂以外のポリマーである。強化剤は、エポキシ樹脂を有する硬化性組成物の第1部分、硬化剤を有する硬化性組成物の第2部分、又は硬化性組成物の第1部分及び第2部分の両方に加えられ得る。典型的な強化剤としては、コア−シェル型ポリマー、ブタジエンニトリルゴム、アクリルポリマー及びコポリマーなどが挙げられる。
いくつかの強化剤は、コア−シェル型ポリマーである。シェル高分子材料は、典型的には、コア高分子材料にグラフト化される。コアは、通常、0℃未満のガラス転移温度を有するエラストマー材料である。シェルは、通常、25℃を超えるガラス転移温度を有する高分子材料である。ガラス転移温度は、動機械的熱分析(DMTA)又は同様の方法を使用して測定され得る。
コア−シェル型高分子強化剤のコアは、多くの場合、ブタジエンポリマー又はコポリマー、スチレンポリマー又はコポリマー、アクリロニトリルポリマー又はコポリマー、アクリレートポリマー又はコポリマー、あるいはこれらの組み合わせから調製される。これらのポリマー又はコポリマーは、架橋されていても架橋されていなくてもよい。いくつかのコアの例は、架橋又は非架橋のいずれかであるポリメチルメタクリレートである。その他のコアの例は、架橋又は非架橋のいずれかであるブタジエン−スチレンコポリマーである。
コア−シェル型高分子強化剤のシェルは、多くの場合、スチレンポリマー又はコポリマー、メタクリレートポリマー又はコポリマー、アクリロニトリルポリマー又はコポリマー、あるいはこれらの組み合わせから形成される。シェルは、エポキシ基、酸性基又はアセトアセトキシ基で更に官能化されてもよい。シェルの官能化は、例えば、グリシジルメタクリレート又はアクリル酸で共重合化することにより、又はヒドロキシ基をtert−ブチルアセトアセトキシなどのアルキルアセトアセトキシと反応させることにより、達成され得る。これらの官能基の付加の結果、シェルは架橋されて高分子マトリックスになり得る。
好適なコア−シェル型ポリマーは、多くの場合、少なくとも10ナノメートル、少なくとも20ナノメートル、少なくとも50ナノメートル、少なくとも100ナノメートル、少なくとも150ナノメートル、又は少なくとも200ナノメートルに等しい平均粒径を有する。平均粒径は、最大400ナノメートル、最大500ナノメートル、最大750ナノメートル、又は最大1000ナノメートルであり得る。平均粒径は、例えば、10〜1000ナノメートルの範囲、50〜1000ナノメートルの範囲、100〜750ナノメートルの範囲、又は150〜500ナノメートルの範囲であり得る。
コア−シェル型ポリマーの例、及びこれらの調製は、米国特許第4,778,851号(Hentonら)に記載されている。市販のコア−シェル型ポリマーは、例えば、Rohm & Haas Company(Philadelphia,PA,USA)から商品名PARALOID(例えば、PARALOID EXL 2600及びPARALOID EXL 2691)で、並びにKaneka(Belgium)から商品名KANE ACE(例えば、KANE ACE B564、KANE ACE MX120、KANE ACE MX257、及びKANE ACE MX153)で得ることができる。
更に他の強化剤は、アミノ末端材料又はカルボキシ末端材料をエポキシ樹脂と反応させて、硬化済み組成物の他の構成成分から相が分離した付加物を調製することにより、調製することができる。かかる強化剤を調製するのに使用され得る好適なアミノ末端材料は、3M Corporation(Saint Paul,MN,USA)から商品名DYNAMAR POLYETHERDIAMINE HC 1101で市販されているものが挙げられるが、これに限定されない。これは、直鎖高分子材料である。好適なカルボキシ末端材料としては、Emerald Chemical(Alfred,ME,USA)から市販されているもののようなカルボキシ末端ブタジエンアクリロニトリルコポリマーが挙げられる。
様々な金属塩などの様々な任意の促進剤を加えてもよい。有用な金属塩としては、例えば、カルシウム(Ca+2)塩、マグネシウム(Mg+2)塩、ビスマス(Bi+3)塩、セリウム(Ce+3)塩、鉄塩(Fe+3)、鉛(Pb+1)塩、銅(Cu+2)塩、コバルト(Co+2)塩、ランタン(La+3)塩、リチウム(Li+1)塩、インジウム(In+3)塩、タリウム(Th+4)塩、ベリリウム(Be+2)塩、バリウム(Ba+2)塩、ストロンチウム(Sr+2)塩、及び亜鉛(Zn+2)塩が挙げられる。多くの実施形態では、促進剤は、カルシウム塩、マグネシウム塩、又はランタン塩であるように選択される。好適な金属塩のアニオンとしては、NO3 −、CF3SO3 −、ClO4 −、BF4 −、CH3C6H4SO3 −、及びSbF6 −が挙げられるが、これらに限定されない。
充填剤など他の任意成分を硬化性組成物に加えてもよい。充填剤は、硬化性組成物の第1部分に、硬化性組成物の第2部分に、又は硬化性組成物の第1部分と第2部分との両方に加えることができる。充填剤は、多くの場合、接着を促進するため、耐腐食性を改善するため、レオロジー特性を制御するため、硬化中の収縮を低減させるため、硬化を加速するため、汚染物質を吸収するため、耐熱性を改善するため、又はこれらの組み合わせのために、加えられる。充填剤は、無機材料、有機材料、又は、無機材料及び有機材料の両方を含有する複合材料であり得る。充填剤は、任意の好適な寸法及び形状を有することができる。いくつかの充填剤は、球、楕円、板形状を有する粒子の形態である。その他の充填剤は、繊維の形態である。
いくつかの充填剤は、繊維ガラス(例えば、グラスウール及びガラス長繊維)、鉱物綿(例えば、岩綿及びスラグウール)及び耐火性セラミック繊維などの無機繊維である。いくつかの無機繊維の例としては、SiO2の混合物、Al2O3、又はこれらの組み合わせが挙げられる。無機繊維は、CaO、MgO、Na2O、K2O、Fe2O3、TiO2、その他の酸化物又はこれらの混合物を更に含むことができる。無機繊維の例は、Lapinus Fibres BV(Roermond,The Netherlands)から商品名COATFORCE(例えば、COATFORCE CF50及びCOATFORCE CF10)で市販されている。無機繊維のその他の例は、ウォラストナイト(即ち、ケイ酸カルシウム)から調製され得る。
他の繊維は、アラミド繊維、及びポリエチレン繊維などのポリオレフィン繊維、といった有機繊維である。これらの有機繊維は、未処理であってもよく、あるいは、これらの疎水性又は親水性を変えるために処理してもよい。例えば、一部の有機繊維は、これらを疎水性にするために又はこれらの疎水性を高めるために、特別処理される。繊維は、フィブリル化してもよい。ポリオレフィン繊維の例としては、EP Minerals(Reno,NV,USA)から商品名SYLOTHIX(例えば、SYLOTHIX 52及びSYLOTHIX 53)で得られるもの、EP Mineralsから商品名ABROTHIX(例えば、ARBOTHIX PE100)で得られるもの、MiniFIBERS,Inc.(Johnson City,TN,USA)から商品名SHORT STUFF(例えば、SHORT STUFF ESS2F及びSHORT STUFF ESS5F)で得られるもの、並びにInhance/Fluoro−Seal,Limited(Houston,TX,USA)から商品名INHANCE(例えば、INHANCE PEF)で得られるものなどの高密度ポリエチレン繊維が挙げられる。アラミド繊維の例は、Inhance/Fluoro−Seal,Ltd.(Houston,TX,USA)から商品名INHANCE(例えば、INHANCE KF)で市販されている。
その他の好適な充填剤としては、シリカ−ゲル、ケイ酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、ヒュームドシリカ、ベントナイト、有機粘土などの粘土、アルミニウム三水和物、ガラス微小球、中空ガラス微小球、高分子微小球及び中空高分子微小球が挙げられる。充填剤はまた、酸化第二鉄、レンガ粉、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料であり得る。これらの充填剤のいずれも、硬化性又は硬化済み組成物との相溶性を高めるために表面改質することができる。
充填剤の例としては、商品名SHIELDEX(例えば、SHIELDEX AC5)でW.R.Grace(Columbia,MD,USA)から市販されている合成アモルファスシリカと水酸化カルシウムとの混合物、商品名CAB−O−SIL(例えば、CAB−O−SIL TS 720)でCabot GmbH(Hanau,Germany)から得られる、疎水性表面を調製するためのポリジメチルシロキサンで処理したヒュームドシリカ、商品名AEROSIL(例えば、AEROSIL VP−R−2935)でDegussa(Dusseldorf,Germany)から得られる疎水性ヒュームドシリカ、CVP S.A.(France)から得られるガラスビーズIV等級(250〜300マイクロメートル)、及び商品名APYRAL 24ES2でNabaltec GmbH(Schwandorf,Germany)から得られるエポキシシラン−官能化(2重量%)アルミニウム三水和物が挙げられる。
硬化性組成物は、任意の接着促進剤を含み得る。接着促進剤の例としては、様々なシラン化合物が挙げられるが、これらに限定されない。接着促進剤に好適であるいくつかのシラン化合物は、硬化性組成物中の1つ以上の構成成分と反応できるアミノ基又はグリシジル基を有する。かかるシラン化合物の1つは、Dow Corning(Midland,MI,USA)から商品名SILANE Z6040で市販されているグリシドキシプロピルトリメトキシシランである。接着促進剤のその他の例としては、米国特許第6,632,872号(Pelleriteら)に記載されているもののような様々なキレート剤、及びAdeka Corporation(Tokyo,Japan)から商品名EP−49−10N及びEP−49−20で得られるもののような様々なキレート変性エポキシ樹脂が挙げられる。
溶媒は任意に、硬化性組成物に含まれ得る。溶媒は通常、硬化性組成物と混和性であるように選択される。溶媒は、硬化性組成物の第1部分若しくは第2部分のいずれかの粘度を低下させるために加えられるか、又は硬化性組成物中に含まれる様々な構成成分のうちの1つと共に加えられ得る。溶媒の量は、典型的には最小限にされ、多くの場合、硬化性組成物の総重量に基づいて15重量パーセント未満である。溶媒は、多くの場合、硬化性組成物の総重量に基づいて12重量パーセント未満、10重量パーセント未満、8重量パーセント未満、6重量パーセント未満、4重量パーセント未満、2重量パーセント未満、1重量パーセント未満、又は0.5重量パーセント未満である。好適な有機溶媒としては、硬化性組成物に可溶であり、かつ硬化中又は硬化後に除去されて硬化済み組成物を形成できるものが挙げられる。有機溶媒の例としては、トルエン、アセトン、種々アルコール及びキシレンが挙げられるが、これらに限定されない。
硬化性組成物は、典型的には、第1部分及び第2部分の形態である。第1部分は通常、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂に反応しない他の構成成分とを含む。第2部分は通常、硬化剤と、硬化剤と反応しない任意のその他の構成成分とを含む。各部分の構成成分は、典型的には、各部分内の反応性を最小限にするように選択される。
硬化性組成物の様々な部分を一緒に混合して、硬化済み組成物を形成する。これらの部分は、典型的には、硬化性組成物の使用直前に一緒に混合される。混合物中に含まれる各部分の量は、オキシラン基と硬化剤水素原子との所望のモル比をもたらすように選択され得る。
硬化性組成物は、室温にて硬化され、室温に続けて高温(例えば、少なくとも80℃、少なくとも100℃、少なくとも120℃、又は少なくとも150℃)で硬化され、又は高温で硬化され得る。いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、室温にて少なくとも3時間にわたって、少なくとも6時間にわたって、少なくとも12時間にわたって、少なくとも18時間にわたって、少なくとも24時間にわたって、少なくとも48時間にわたって、又は少なくとも72時間にわたって硬化され得る。他の実施形態では、硬化性組成物は、室温にて任意の好適な長さの時間にわたって硬化し、続いて、例えば、180℃で最長10分、最長20分、最長30分、最長60分、最長120分、又は更には120分超など、高温にて更に硬化され得る。
他の態様では、第1基材と、第1基材に隣接して配置された硬化済み組成物と、を含む物品が提供される。硬化済み組成物は、(a)エポキシ樹脂と(b)第1硬化剤と、を含む硬化性組成物の反応生成物を含有する。第1硬化剤は、上述のような式(I)のメルカプタン化合物である。硬化性組成物を適用し得る好適な基材としては、金属(例えば、鋼、鉄、銅、アルミニウム、又はこれらの合金)、炭素繊維、ガラス繊維、ガラス、エポキシ繊維複合体、木材、高分子材料、及びこれらの混合物が挙げられる。
硬化済み組成物は、構造用接着剤などの接着剤として使用され得る。硬化済み組成物は、接合する2つの部分の間(即ち、2つの基材の2つの表面の間)に硬化性組成物を適用し、接着剤を硬化させて接着された接合部を形成することにより、溶接又は機械的締結具を補助する又は完全に省くために使用され得る。いくつかの実施形態では、基材の少なくとも1つは金属である。他の実施形態では、基材の両方が金属である。あるいは、硬化済み組成物は、基材上にポリマーコーティングをもたらすのに使用され得る。
接着剤として用いるとき、硬化済み組成物は、溶接又は機械的締結で補強してよい。溶接は、点溶接、連続シーム溶接、又は接着剤組成物と組み合わせることが可能な任意のその他の溶接技術によって行って、機械的にしっかりした接着を形成することができる。いくつかの実施形態では、構造用接着剤は、車両組み立て、建築用途、又は様々な家庭用器具及び工業用器具において使用される。
硬化性組成物は、液体、ペースト、スプレー、又は加熱時に液化できる固体として適用することができる。適用は、連続性ビーズとして、又は有用な接着形成をもたらす点、縞、対角線若しくは任意のその他の幾何形状としてであり得る。いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、液体又はペースト状である。
別の態様では、複合物品の製造方法が提供される。この方法は、二液型硬化性組成物を基材に適用する工程と、基材に接触させながら二液型硬化性接着剤を硬化させて複合物品を形成する工程と、を含む。得られる硬化済み組成物は、基材のポリマーコーティングとして機能してもよい。
更に他の態様では、基材間の接着接合の形成方法が提供される。この方法は、二液型硬化性組成物を2つ以上の基材のうちの少なくとも1つの表面に適用する工程と、二液型硬化性組成物が2つ以上の基材の間に位置するように基材を接合する工程と、硬化性組成物を硬化させて2つ以上の基材間に接着接合を形成する工程と、を含む。
いくつかの既知のエチレングリコールジチオグリコレート(EGDTG)などの石油系ジメルカプタン化合物と比較して、式(I)の植物系メルカプタン化合物、とりわけ式(II)の植物系メルカプタンエステル化合物は、重なり剪断強度が高い硬化済み組成物の形成がもたらされる傾向がある。
化合物、硬化性組成物、又は物品である様々な項目が提供される。
項目1は、式(I)の化合物である。
HS−L−Y−O−Q−O−Y−L−SH
(I)
この式中、各Yは独立して単結合又はカルボニル基であり、各Lは独立してアルキレン又はヘテロアルキレンである。Q基は、式(I−1)、式(I−2)、又は式(I−3)の二価基である。
項目2は、化合物が25℃で液体である、項目1に記載の化合物である。
項目3は、式(I)の化合物が式(II)のものである、項目1に記載の化合物である。
HS−L−(CO)−O−Q−O−(CO)−L−SH
(II)
項目4は、式(II)の化合物が以下のものである、項目3に記載の化合物である。
HS−CH2−(CO)−O−Q−O−(CO)−CH2−SH、
HS−CH(CH3)−(CO)−O−Q−O−(CO)−CH(CH3)−SH、又は
HS−CH2CH2−(CO)−O−Q−O−(CO)−CH2CH2−SH。
項目5は、式(I)の化合物が式(III)のものである、項目1に記載の化合物である。
HS−L−O−Q−O−L−SH
(III)
項目6は、式(III)の化合物が以下のものである、項目5に記載の物品である。
HS−CH2CH2CH2−O−Q−O−CH2CH2CH2−SH
項目7は、(a)エポキシ樹脂及び(b)式(I)の第1硬化剤を含む硬化性組成物である。
HS−L−Y−O−Q−O−Y−L−SH
(I)
この式中、各Yは独立して単結合又はカルボニル基であり、各Lは独立してアルキレン又はヘテロアルキレンである。Q基は、式(I−1)、式(I−2)、又は式(I−3)の二価基である。
項目8は、(a)少なくとも1つの第1級アミノ基又は少なくとも1つの第2級アミノ基を有するアミン化合物、(b)イミダゾール、イミダゾリン、又はこれらの塩、(c)第3級アミノ、第2級若しくは第3級アルキル、ニトロ、ハロ、ヒドロキシル、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの基で置換されるフェノール、(d)ビスフェノール、(e)酸無水物、(f)カルボン酸、(g)メルカプタン、あるいは(h)これらの混合物、を含む第2硬化剤を更に含む、項目7に記載の硬化性組成物である。
項目9は、式−NR5Hの基(式中、R5は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、又はアルキルヘテロアリールである)を有する第2硬化剤を更に含む、項目7に記載の硬化性組成物である。
項目10は、式(I)の第1硬化剤が式(II)のものである、項目7〜9のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
HS−L−(CO)−O−Q−O−(CO)−L−SH
(II)
項目11は、式(I)の第1硬化剤が式(III)のものである、項目7〜9のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
HS−L−O−Q−O−L−SH
(III)
項目12は、硬化性組成物が、エポキシ樹脂を含む第1部分及び式(I)の化合物を含む第2部分を有する、項目7〜11のいずれか一項に記載の硬化性組成物である。
項目13は、第1基材と、第1基材に隣接して配置された硬化済み組成物と、を含む物品である。硬化済み組成物は、(a)エポキシ樹脂及び(b)式(I)の第1硬化剤を含む硬化性組成物の反応生成物を含む。
HS−L−Y−O−Q−O−Y−L−SH
(I)
式(I)中、各Yは独立して単結合又はカルボニル基であり、各Lは独立してアルキレン又はヘテロアルキレンである。Q基は、式(I−1)、式(I−2)、又は式(I−3)の二価基である。
項目14は、式(I)の第1硬化剤が式(II)のものである、項目13に記載の物品である。
HS−L−(CO)−O−Q−O−(CO)−L−SH
(II)
項目15は、式(I)の第1硬化剤が式(III)のものである、項目13に記載の物品である。
HS−L−O−Q−O−L−SH
(III)
項目16は、(a)少なくとも1つの第1級アミノ基又は少なくとも1つの第2級アミノ基を有するアミン化合物、(b)イミダゾール、イミダゾリン、又はこれらの塩、(c)第3級アミノ、第2級若しくは第3級アルキル、ニトロ、ハロ、ヒドロキシル、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの基で置換されるフェノール、(d)ビスフェノール、(e)酸無水物、(f)カルボン酸、(g)メルカプタン、あるいは(h)これらの混合物、を含む第2硬化剤を更に含む、項目13〜15のいずれか一項に記載の物品である。
項目17は、硬化性組成物が、式−NR5Hの基(式中、R5は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、又はアルキルヘテロアリールである)を有する第2硬化剤を更に含む、項目13〜15のいずれか一項に記載の物品である。
項目18は、硬化性組成物が基材上のコーティングである、項目13〜17のいずれか一項に記載の物品である。
項目19は、物品が2つの基材を有し、硬化性組成物が、その2つの基材を一緒に接着する構造用接着剤である、項目13〜17のいずれか一項に記載の物品である。
これらの実施例で引用される特定の材料及びそれらの量、並びにその他の条件及び詳細は、本開示を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は単に例示を目的としたものであり、添付の特許請求の範囲に限定することを意味するものではない。
使用される溶媒及びその他の試薬は、特に記載のない限り、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から得ることができる。
使用材料
臭化アリルは、Alfar Aesar(Ward Hill,MA,USA)から得た。
工業銘柄トリス−2,4,6−ジメチルアミノメチル−フェノール触媒第3級アミン添加剤は、商品名ANCAMINE K54(K54)で、Air Products and Chemicals Inc.(Allentown,PA,USA)から得た。
化合物2−アミノメチルフラン(FA)は、Alfar Aesar(Ward Hill,MA,USA)から得た。
化合物2,2’アゾビス(2−メチルブチロニトリル)は、商品名VAZO 67でDuPont(Wilmington,DE,USA)から市販されているフリーラジカル開始剤である。
デヒドロアビエチルアミン(DHAA)はロジン酸誘導体であり、TCI America(Portland,OR,USA)から得た。
ジペンテンジメルカプタン(DPDM)は、Chevron Philips Chemical(The Woodlands,TX,USA)から得た。
DTAは、137のアミン水素当量を有する多官能性ダイマージアミンである。これは、Croda,USA Inc.(Edison,NJ,USA)から市販されている。
エチレングリコールジチオグリコレート(EGDTG)
は、Pfaltz & Bauer,Inc.(West Chester,PA,USA)から得た。
188のエポキシ当量を有するビスフェノールAのジグリシジルエーテルは、商品名EPON 828樹脂で、Shell Chemical(Houston,TX,USA)から得た。
141のエポキシ当量を有するグリセロールポリグリシジルエーテルは、商品名EX−313で、Nagase ChemTex(Tokyo,Japan)から得た。
米国特許第3,272,845号(Zechら)に記載される方法に従って、イソソルビドジグリシジルエーテル(IDGE)を合成した。
イソソルビドは、Roquette America Inc.(Geneva,IL,USA)から得た。
ジペンテンジエポキシドであるリモネン二酸化物(LDO)は、
Arkema Inc.(King of Prussia,PA,USA)から得た。
メルカプト酢酸は、Alfa Aesar(Ward Hill,MA,USA)から得た。
化合物2−メルカプトプロピオン酸及び3−メルカプトプロピオン酸は、Alfa Aesar(Ward Hill,MA,USA)から得た。
メタンスルホン酸は、Alfa Aesar(Ward Hill,MA,USA)から得た。
化合物2−メチルペンタメチレンジアミンは、商品名DYTEK AでInvista(Wilmington,DE,USA)から市販されている。
CELITEは、珪藻土濾過助剤に対するFluka,Sigma−Aldrich Corp.(St.Louis,MO,USA)の商品名である。
白金(IV)酸化物、PtO2は、Alfa Aesar(Ward Hill,PA,USA)から得た。
138.2グラム/当量のアミン水素当量を有する化合物N’,N’−1,5−ビスフラニル−2−メチルメチレン−ペンタン−1,5−ジアミン(TEKA)を合成した。
パール圧力容器(Parr Instrument Co.,Moline,IL,USA)中で、白金酸化物(200ミリグラム)をエタノール(200mL)に加えた。容器を真空化し、3回水素を充填した。60ポンド/平方インチ(psi)(0.41MPa)まで水素で容器を再充填した後、1時間振動させて触媒を前還元した。次に、容器を真空化し、窒素で3回再充填した。フルフラール(35.00グラム、0.36モル)及びDYTEK A(21.23グラム、0.18モル)を加えた。容器を真空化し、水素で3回再充填した。次に、60(psi)(0.41MPa)まで水素で容器を充填し、室温で1週間振動させた。容器を真空化し、窒素で3回再充填し、次に、10重量%の炭素担持白金(100ミリグラム)を加えた。容器を真空化し、水素で3回再充填した。次に、60psi(0.41MPa)まで水素で容器を充填し、3日間振動させた。容器を真空化し、窒素で3回再充填した。次に、混合物をCELITEで濾過し、真空下で一晩濃縮して茶色の油として(50.72グラム)所望の生成物が生じた。
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PETMP)は、Sigma Aldrich(Milwaukee,WI,USA)から得た。
168のエポキシ当量を有するポリグリセロールポリグリシジルエーテルは、商品名EX−512でNagase ChemTex(Tokyo,Japan)から得た。
183のエポキシ当量を有するポリグリセロールポリグリシジルエーテルは、商品名EX−521でNagase ChemTex(Tokyo,Japan)から得た。
195のエポキシ当量を有するソルビトールポリグリシジルポリエーテルは、商品名ERISYS GE−60でCVC Thermoset Specialties(Moorestown,NJ,USA)から得た。
チオ酢酸は、Alfar Aesar(Ward Hill,MA,USA)から得た。
重なり剪断接着の生成
洗浄済みの冷間圧延鋼パネルを使用して、重なり剪断接着試験片を作製した。パネルをトルエンで3回、続けてアセトンで3回洗浄した。パネルは、Q−Lab Corporation(Cleveland,OH,USA)から得たものであり、直角の角部を有し、寸法が4インチ×1インチ×0.063インチ(10.2cm×2.54cm×0.16cm)のリン酸鉄(B−1000)鋼パネル(「RS」鋼タイプ)であった。ASTM仕様書D 1002−05に記載されるように試験片を作製した。木製のスクレーパを使用して、幅約0.5インチ(1.27cm)及び厚さ約0.010インチ(0.254mm)の接着ストリップを2枚の鋼パネルの各々の1縁部に適用した。ガラスビーズ(直径約250マイクロメートル)を接着剤全体にわたって振りかけ、スペーサとして供した。接着体を閉じ、1インチ(2.54cm)のバインダークリップを使用して挟みつけて、圧力をかけて接着剤を広げた。接着剤を(実施例で記載するように)硬化させた後、接着体を、0.1インチ/分(2.54mm/分)のクロスヘッド変位速度を使用して、Sintech引張試験機(MTS(Eden Prairie,MN,USA)から得た)で室温にて破壊させて、試験した。破壊荷重を記録した。接着面幅は、ノギスにて測定した。引用された重なり剪断強度は、破壊荷重を測定した接着面積で除して算出した。平均及び標準偏差は、特に記載のない限り、少なくとも3回の試験の結果から算出した。
接着剤調製
FlackTek,Inc.(Landrum,SC,USA)から入手できるDAC400高速ミキサーを使用して、プラスチック製カップ中で完全にエポキシ樹脂と硬化剤(メルカプト含有化合物、又はメルカプト含有化合物とアミノ含有化合物との混合物)とを混合することで、全接着剤サンプルを調製した。特に指定のない限り、重なり剪断接着試験片は、上述のように接着剤から調製した。特に記載のない限り、最低16時間サンプルを室温で硬化させた後、150℃で更に1時間硬化させた。
硬化温度測定
TA Instruments(New Castle,DE,USA)から入手可能なDSC Q200モデル計器を使用して、示差走査熱量計法によって硬化温度を測定した。約10ミリグラムのサンプルを気密性アルミニウムDSCパンに載置し、クリンプして密閉した。3℃/分の速度で30℃〜350℃まで、窒素流下(50mL/分)でサンプルを加熱した。生じた熱流量対温度曲線の最大ピークにおける温度を、硬化温度として記録した。
実施例1:イソソルビドビス−チオグリコレート(ISTG)
イソソルビド(60.00グラム、0.41モル)、メルカプト酢酸(83.21グラム、0.90モル)、トルエン(300mL)、及びメタンスルホン酸(1.00グラム、10ミリモル)の混合物を加熱還流した。ディーンスターク蒸留トラップを使用して、トルエン/水の共沸混合物から水を分離した。4時間の還流後、合計15mLの水をトラップ内に回収した。反応混合物を冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(2×200mL)及び食塩水(100mL)で洗浄した。硫酸マグネシウムで溶液を乾燥させた後、減圧下で濃縮した。生成物は無色の油であった。(収量:106.10グラム)。
実施例2:イソソルビドビス−(2−メルカプト)プロピオネート(ISBMP)
イソソルビド(60.90グラム、0.42モル)、2−メルカプトプロピオン酸(96.00グラム、0.90モル)、トルエン(300mL)、及びメタンスルホン酸(1.00グラム、10ミリモル)の混合物を加熱還流した。ディーンスターク蒸留トラップを使用して、トルエン/水の共沸混合物から水を分離した。24時間の還流後、合計15mLリットルの水をトラップ内に回収した。反応混合物を冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(3×300mL)及び食塩水(100mL)で洗浄した。硫酸マグネシウムで溶液を乾燥させた後、減圧下で濃縮した。生成物として黄色の油を得た。(収量:116.23グラム)。
実施例3:イソソルビドビス−(3−メルカプト)プロピオネート(ISTMP)
イソソルビド(61.70グラム、0.42モル)、3−メルカプトプロピオン酸(97.00グラム、0.91モル)、トルエン(300mL)、及びメタンスルホン酸(1.00グラム、10ミリモル)の混合物を加熱還流した。ディーンスターク蒸留トラップを使用して、トルエン/水の共沸混合物から水を分離した。18時間の還流後、合計15mLの水をトラップ内に回収した。反応混合物を冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(3×300mL)及び食塩水(100mL)で洗浄した。硫酸マグネシウムで溶液を乾燥させた後、減圧下で濃縮した。生成物としてオレンジ色の油を得た。(収量:125.93グラム)。
実施例4:ビス−(3−メルカプトプロピルオキシ)イソソルビド(ISBMPE)
イソソルビド(100.06グラム、0.68モル)及び臭化アリル(238.50グラム、1.98モル)の撹拌した混合物に、水酸化ナトリウム(54.73グラム、1.37モル)水溶液(60mL)を2時間かけて滴加した。滴加中に温度は80℃まで上昇し、次いで5時間70℃に維持した。反応混合物を水(120mL)で希釈した後、酢酸エチルで抽出(3×300mL)した。組み合わせた有機相を水で洗浄し、減圧下で濃縮した。粗油生成物を真空下(0.1mmHgで95〜100℃)で蒸留して、無色の油(117.31グラム)としてビスアリルオキシイソソルビドを得た。
ビスアリルオキシイソソルビド(40.00グラム、0.18モル)、チオ酢酸(使用前に蒸留したもの、34.66グラム、0.46モル)、及び2,2’アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(0.10グラム)の混合物を窒素下で撹拌した。混合物はすぐに発熱し、室温で2時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈した後、重炭酸ナトリウム(100mL)で洗浄した。有機相を減圧下で濃縮して、黄色の油を得た。油を水酸化ナトリウム(40.00グラム、1.00モル)と水(40mL)との溶液と混合した後、90℃まで4時間加熱した。冷却後、混合物を水(100mL)で希釈し、酢酸エチルで抽出(2×100mL)した。組み合わせた有機相を水(100mL)で洗浄し、減圧下で濃縮した。黄色い油を得た(収量:46.44グラム)。
実施例5〜8及び比較実施例C1
表1に示すように、様々なメルカプタンをソルビトールポリグリシジルポリエーテル(ERISYS GE−60)と反応させた。本表における全配合処方は、等モル量のメルカプタン及びエポキシ樹脂を含有している。硬化済み組成物の重なり剪断(OLS)強度測定による結果、及びピーク発熱硬化温度(得られる場合)も表1に含まれる。
実施例9〜13
表2に示すように、メルカプタン化合物ISTGを様々なエポキシ樹脂中の硬化剤としても使用した。本表中の全配合処方は、等モル量のメルカプタン及びエポキシ樹脂を含有する。硬化済み組成物の重なり剪断強度測定からの結果も表2に含まれる。
実施例14〜18
アミン及びメルカプタンを含む硬化剤パッケージを、表3に示されるような配合処方において使用した。エポキシ樹脂はERISYS GE−60であり、メルカプタン化合物はISTGであり、アミン硬化剤は2−アミノメチルフラン(FA)であった。本表の全配合処方は、等モル量のエポキシ樹脂及び硬化剤パッケージを含有し、つまり、エポキシ樹脂のモルは、メルカプタンのモルとアミンのモルとの合計に等しい。様々な硬化済み組成物の重なり剪断強度を測定し、表3に示す。
実施例19〜33及び比較実施例C2〜C11
アミンとメルカプタンとの様々な組み合わせを、ERISYS GE−60エポキシ樹脂を硬化するのにも使用した。表4に、生じた硬化済み配合物の組成及び重なり剪断強度値をまとめている。比較実施例C2〜C6は、アミン硬化剤のみで硬化したERISYS GE−60の組成及びOLS強度を示している。比較実施例C7〜C11は、ERISYS GE−60の硬化剤パッケージとしてアミンとEGDTGとの組み合わせを使用する組成を示す。アミンとメルカプタンとのモル比は、全配合処方において4.0で保持した。加えて、表4における全配合処方は、等モル量のエポキシ樹脂及び硬化剤パッケージを含有し、つまり、エポキシ樹脂のモルは、メルカプタンのモルとアミンのモルとの合計に等しい。
実施例34〜39及び比較実施例C12〜C14
表5には、アミンのみ、及び異なる当量比のアミン/メルカプタン硬化剤パッケージで硬化したLDOにおける重なり剪断強度値を示す。上述するように重なり剪断試験片を調製し、周囲条件下で24時間硬化した後、180℃で20分間更に硬化した。
実施例40〜42並びに比較実施例C15及びC16
表6に、室温における様々な硬化性組成物の硬化時間を示す。