JP6018915B2 - 28位がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基である五環系トリテルペン化合物の製造方法 - Google Patents

28位がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基である五環系トリテルペン化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、28位がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基である五環系トリテルペン化合物の製造方法、ならびに、該方法に使用可能な酵素および該酵素をコードするDNAに関する。
本発明はまた、上記化合物の生産用の細胞およびトランスジェニック植物に関する。
トリテルペンは6つのイソプレン単位で形成された天然物で、自然界で100以上の骨格が報告されている(非特許文献1)。植物に見られるトリテルペンでもっとも多いものはオレアナン型(βアミリン、タラキセロール、ゲルマニコール、オレアノール酸等)で、続いてウルサン型(αアミリン、ウルソール酸等)、ルパン型(ルペオール、ベツリン酸等)などの五環系トリテルペンがある。トリテルペンには、抗癌作用や抗炎症作用を示す生理活性物質が知られ、新しい医薬品の重要な化学構造プールになっている(非特許文献2)。28位にカルボキシル基を有する五環系トリテルペン化合物の代表として挙げられるオレアノール酸やウルソン酸についても生理活性があることが報告されている(非特許文献3、4)。特許文献としては、28位にカルボキシル基を有する五環系トリテルペンについて、エージング対応用の皮膚外用剤(特許文献1)、グルタチオン産生促進作用(特許文献2)、疲れ目の改善または予防のための経口投与組成物(特許文献3)、ヒアルロニダーゼ阻害剤(特許文献4)、メタボリックシンドロームの予防および改善(特許文献5)、エンドセリン受容体拮抗物質(特許文献6)、TGF−β阻害剤(特許文献7)、抗掻痒剤(特許文献8)等が報告されている。このようにオレアノール酸などの28位にカルボキシル基を有する五環系トリテルペン化合物の重要性が脚光を浴びる一方で、そのような化合物は、植物でしか生産されず、天然物(植物の根や果皮)から単に抽出して利用されている。例えば、オレアノール酸の供給元のホームページ上の情報によるとMP Biomedicals社(米国)はオタネニンジン(Panax ginseng)、Changsha Nutramax 社はオリーブ(Olea europaea)、リンドウ科植物(Swertia mileensis)、セリ科植物(Astrantia major)、ウコギ科タラノキ(Aralia chinensis)、ウリ科植物(Hemsleya)をあげており、いずれも植物からの抽出物であるとしている。抽出法については米国特許(特許文献9)や欧州特許(特許文献10)に報告がある。また、βアミリン等からの有機合成による変換も極めて困難であり工業としては成り立っておらず、オレアノール酸などの28位にカルボキシル基を有する五環系トリテルペン化合物を効率的に合成する手法が求められていた。
しかしながら、28位にカルボキシル基を有する五環系トリテルペン化合物の合成酵素、つまりはオレアナン型、ウルサン型又はルパン型等の五環系トリテルペンの28位メチル基をカルボキシル基に変換し得る酵素はこれまで全く不明であった。また、酵素反応はきわめて特異的であり、オレアナン型、ウルサン型又はルパン型の酵素同士に関係があると示唆する報告もなかった。関連の研究では、オレアノール酸合成酵素の基質であるβアミリンを作る酵素および該酵素の遺伝子は同定されている(非特許文献5)。ソヤサポゲノールBの生合成酵素であるオレアナン型トリテルペンの24位を水酸化する酵素および該酵素の遺伝子(非特許文献6)、グリチルリチンの生合成酵素であるオレアナン型トリテルペンの11位を酸化する酵素および該酵素の遺伝子(非特許文献7)は同定されている。しかしオレアノール酸またはその誘導体を多く蓄積するとされるオリーブ、ビート、チクセツニンジンらは、分子生物学的解析が進んでおらず、またオレアノール酸の蓄積に関する生化学的な研究も行われておらず、解析する手がかりがなかった。やや分子生物学的な解析が進んでいるブドウを用いた解析でも候補遺伝子を抽出することもできなかった。
本発明者らはタルウマゴヤシ(Medicago truncatula)の二次代謝産物の酸化全般に興味を持ち解析を進めてきた。オレアナン型トリテルペン骨格に酸化反応が起こりうる部位は11位、16位、23/24位、28位、30位で、さらに、メチル基の酸化によっては、ホルミル基(−CHO)やヒドロキシメチル基(CHOH)、さらにカルボキシル基まで酸化が進行する場合もある(非特許文献8)。23/24位、28位、30位の酸化の場合はヒドロキシメチル基への変換とその後のカルボキシル基への変換までが1段階であるのか2段階であるのかは不明であった。さらに、二次代謝の酸化にかかわる酵素としては、少なくともチトクロームP450型モノオキシゲナーゼ、ジオキシゲナーゼ、NADPH−flavinリダクターゼの3種の可能性が考えられる。このうちP450型遺伝子は、すでにゲノム配列が明らかになっているシロイヌナズナでは246種類、イネでは356種類が存在しており、植物ゲノム遺伝子の1%を占める最大酵素ファミリーである。植物の二次代謝のみならず、植物ホルモンや脂質の生合成・代謝に必須な経路を分担し、活性も水酸化のみならずエポキシ化、O−脱メチル反応、N−脱メチル反応、スルホキシド化、NO合成の反応を行うことが、近年の研究で一部明らかになってきているが、大部分のP450の機能は不明のままである(非特許文献9、10)。P450遺伝子の大部分はゲノム配列を計算機で解析することだけで発見されたものが多く生理的機能は不明なことが多い(非特許文献10、p.84)。
非特許文献11では、タルウマゴヤシの培養細胞に幾つかの処理を施してサポニン含量の変化が報告されている。該文献の表1ではジャスモン酸メチル処理によって、ヘデラゲニン(五環系トリテルペン化合物であり、さらに23位が水酸化されている。)、ソヤサポゲノールE(非五環系トリテルペン化合物であり、2位と24位が水酸化され、かつ、22位が酸化されている。)、バヨゲニン(五環系トリテルペン化合物であり、さらに2位と23位が水酸化されている。)、メジカゲン酸(五環系トリテルペン化合物であり、さらに2位が水酸化され、かつ、24位がカルボキシル化されている。)、ザンハ酸(五環系トリテルペン化合物であり、さらに2位と16位が水酸化され、かつ、24位がカルボキシル化されている。)、ソヤサポゲノールE(非五環系トリテルペン化合物であり、2位、22位、24位が水酸化されている。)等の増加を報告している。しかしジャスモン酸メチルは防御反応と密接に関連したホルモンであり、他の二次代謝産物やカルス形状の変化も起きていることが予想される。非特許文献12では、これらジャスモン酸メチルによって誘導されるP450を184個、さらにゲノム未解読領域の37領域をプローブとして追跡し、そのうちの約10%がジャスモン酸メチルによって誘導されることが報告され、さらに、その10%のうちの誘導例として、Mtr.8618.1.S1(CYP93E2)遺伝子、CYP72ファミリーであるMedtr4g032760、Medtr4g032910、Mtr.37299.1.S1_at、Mtr.37298.1.S1の4つの遺伝子、Mtr.43018.1.S1(CYP716A12)遺伝子が網羅的解析から見出されているがそれらの機能は不明である。また、この文献では、Supplemental Data Set 4 online に掲載されている184個と37プローブすべてのデータのうち特定していない幾つかが、培養細胞に処理を施して変化した二次代謝産物の生合成に関わる遺伝子の候補と結論付けているものの、サポニン合成やオレアノール酸等28位がカルボキシル基である五環系トリテルペン合成との関係については明らかにされていない。
特開2010−138154号公報 特開2010−105937号公報 特開2008−007417号公報 特開2006−124322号公報 特開2005−097216号公報 特開2003−252843号公報 特開2000−159793号公報 特開平11−012178号公報 米国特許第6700014号明細書 欧州特許第0894517号明細書
Xuら, Phytochemistry, 2004, 65:261−291 Kushiroら, J. Am. Chem. Soc., 2000, 122:6816-6824 Liu, J Ethnopharmacol. 1995, 49:57−68 Liu, J Ethnopharmacol. 2005, 100:92−104 Kushiroら, Eur J Biochem. 1998, 256:238−244 渋谷ら, FEBS J. 2006, 273:948−959 關ら, Proc Natl Acad Sci USA 2008, 105:14204−14209 「医薬品天然物化学原書第2版」海老塚豊監訳(2004)南江堂 水谷正治、蛋白質核酸酵素 2007, 52:1454−1464,三共出版 「P450の分子生物学 第2版」石村巽,藤井義明,大村恒雄編(2009) 講談社 Suzukiら, Planta. 2005, 220:696−707 Naoumkinaら, Plant Cell 2010, 22:850−866
本発明の目的は、植物由来のオレアノール酸等の28位がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基である五環系トリテルペン化合物を製造する方法、ならびに、該五環系トリテルペン化合物を生産する細胞およびトランスジェニック植物を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その際、著量ではないがトリテルペンサポニン関連化合物を蓄積するタルウマゴヤシに着目し、トリテルペンを合成するβアミリン遺伝子を発現している際に協調的に発現する遺伝子2種(CYP93E2とCYP716A12)をin silicoで探しだした。該候補遺伝子を前駆体であるβアミリンを蓄積する酵母において発現させることによって、CYP93E2は既存の反応であるオレアナン型トリテルペンの24位をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する遺伝子であることがわかったが、もうひとつの候補遺伝子CYP716A12は、予想しなかったことであるが、今まで見つかっていない五環系トリテルペンの28位をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を持つ酵素をコードする遺伝子であることを今回見出した。そして、この遺伝子を利用することによって、これまで微生物で生産することができなかったオレアノール酸等の28位にカルボキシル基を有する五環系トリテルペン類を効率よく生産することが可能となった。さらにまた上記五環系トリテルペン類を蓄積する植物から、同一の機能を有する遺伝子を取得し、酵母における生産系で酵素活性が同等もしくはそれ以上であることを今回明らかにした。また、28位がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基である五環系トリテルペン化合物生産性のトランスジェニック植物や微生物を作製することや、元々ある該遺伝子の発現を比較および解析し個体や組織を選抜することによって、28位がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基である五環系トリテルペン化合物の蓄積量を改変することが可能になることを示した。さらに、驚くべきことに、CYP716A12はオレアナン型のみならず、ウルサン型やルパン型の五環系トリテルペンについても28位をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換することができた。タルウマゴヤシはオレアナン型トリテルペンを主に蓄積しており、オレアナン型を基質とする酵素を有していたことに蓋然性がある。しかしオレアナン型とウルサン型又はルパン型は、E環部分の構造が大きく異なる。28位に酵素活性を持つCYP716A12が、28位と隣接するE環部分の違いを認識しないことを示しており、今までの植物P450の特異性の解析からは著しく外れた結果であり、想定外の結果といわざるを得ない。これらの知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
したがって、本発明は、以下の特徴を包含する。
(1) 五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を有するタンパク質。
(2) マメ科、ナス科、ブドウ科、アカザ科またはモクセイ科またはアカネ科に属する植物に由来する、上記(1)記載のタンパク質。
(3) タルウマゴヤシ、トマト、ミヤコグサ、ブドウ、ビート、オリーブまたはコーヒーに由来する、上記(1)または(2)記載のタンパク質。
(4) 以下の(a)〜(c)からなる群から選択される、上記(1)記載のタンパク質。
(a) 配列番号2〜8のいずれかに示すアミノ酸配列を含むタンパク質
(b) 配列番号2〜8のいずれかに示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質
(c) 配列番号2〜8のいずれかに示すアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
(5) 五環系トリテルペンがオレアナン型、ウルサン型またはルパン型トリテルペンである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のタンパク質。
(6) チトクロームP450に属する、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のタンパク質。
(7) 以下の(a)〜(f)からなる群から選択されるDNAを含有する組換え体DNA。
(a) 配列番号2〜8のいずれかに示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b) 配列番号2〜8のいずれかに示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c) 配列番号2〜8のいずれかに示すアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNA
(d) 配列番号10〜16のいずれかに示す塩基配列を含むDNA
(e) 配列番号10〜16のいずれかに示す塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNA
(f) 配列番号10〜16のいずれかに示す塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列を含み、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNA
(8) 上記(7)記載の組換え体DNAを含む形質転換体。
(9) 形質転換体が微生物または植物を宿主として得られる形質転換体である、上記(8)記載の形質転換体。
(10) 微生物が酵母である、上記(9)記載の形質転換体。
(11) 28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンまたはその誘導体を生成する能力を有する、上記(8)〜(10)のいずれかに記載の形質転換体。
(12) 上記(8)〜(11)のいずれかに記載の形質転換体を培地に培養し、培養物中に(4)記載のタンパク質を生成、蓄積させ、該培養物より該蛋白質を採取することを含む、上記タンパク質の製造法。
(13) 上記(8)〜(11)のいずれかに記載の形質転換体の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、および基質としての五環系トリテルペンまたはその誘導体を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンまたはその誘導体を生成、蓄積させ、該媒体から28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンまたはその誘導体を採取する、28位にメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンまたはその誘導体の製造法。
(14) 培養物の処理物が、培養物の濃縮物、培養物の乾燥物、培養物を遠心分離して得られる菌体、該菌体の乾燥物、該菌体の凍結乾燥物、該菌体の界面活性剤処理物、該菌体の超音波処理物、該菌体の機械的摩砕処理物、該菌体の溶媒処理物、該菌体の酵素処理物、該菌体の蛋白質分画物、該菌体の固定化物あるいは該菌体より抽出して得られる酵素標品であることを特徴とする、上記(13)記載の製造法。
(15) (1)記載のタンパク質および基質としての五環系トリテルペンまたはその誘導体を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンまたはその誘導体を生成、蓄積させ、該媒体から28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンまたはその誘導体を採取する、28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンまたはその誘導体の製造法。
(16) 基質としての五環系トリテルペンが、βアミリン、αアミリン、又はルペオールである、上記(13)〜(15)のいずれかに記載の製造法。
(17) 以下の(a)〜(f)からなる群から選択されるDNA。
(a) 配列番号4、6〜8のいずれかに示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b) 配列番号4、6〜8のいずれかに示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c) 配列番号4、6〜8のいずれかに示すアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNA
(d) 配列番号12、14〜16のいずれかに示す塩基配列を含むDNA
(e) 配列番号12、14〜16のいずれかに示す塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNA
(f) 配列番号12、14〜16のいずれかに示す塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列を含み、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNA
本発明の五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシル基またはカルボキシル基に変換する酵素活性を有するタンパク質により、有用な生理活性を示す、28位がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基である五環系トリテルペン化合物、とりわけオレアノール酸、ウルソール酸、ベツリン酸、およびそれらの置換誘導体を大量かつ安価に生産できる。本発明によれば、五環系トリテルペン化合物の28位のメチル基をカルボキシル基に変換する活性を有する酵素タンパク質とそれをコードするDNAの活性発現の調整を行うことができ、該遺伝子の活性が増強された植物および微生物を作製する方法、オレアノール酸などの28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンの生産が変更された植物が提供される。本発明により上記五環系トリテルペン化合物、とりわけオレアノール酸、ウルソール酸、ベツリン酸、およびそれらの置換誘導体の過剰発現に特徴がある植物の作出が可能である。
βアミリンの28位のメチル基がヒドロキシメチル基に変換されたエリトロジオールと、さらに28位のメチル基がカルボキシル基に変換されたオレアノール酸の構造式。 タルウマゴヤシCYP93E2発現酵母のGCチャート。 タルウマゴヤシCYP716A12発現酵母のGCチャート。 タルウマゴヤシCYP716A12発現酵母のマススペクトル(MS)。 タルウマゴヤシCYP93E2とCYP716A12発現酵母のGCチャート。 図4のピーク1のMS。 ブドウ相同遺伝子発現酵母のGCチャート。 ブドウ相同遺伝子発現酵母のマススペクトル(MS)。 ビート相同遺伝子発現酵母のGCチャート。 ビート相同遺伝子発現酵母のマススペクトル(MS)。 オリーブ相同遺伝子発現酵母のGCチャート。 オリーブ相同遺伝子発現酵母のマススペクトル(MS)。 コーヒー相同遺伝子発現酵母のGCチャート。 コーヒー相同遺伝子発現酵母のマススペクトル(MS)。 ブドウ品種「キャンベル・ベリーA」の葉と果皮(CTAB)でのオレアノール酸合成酵素遺伝子の発現を示す電気泳動図。 ルペオールの28位のメチル基がヒドロキシメチル基に変換されたベツリンと、さらに28位のメチル基がカルボキシル基に変換されたベツリン酸の構造式。 ルペオールを発現する酵母においてのタルウマゴヤシCYP716A12発現のGCチャート。 ルペオールを発現する酵母においてのタルウマゴヤシCYP716A12発現のマススペクトル(MS)。 ルペオールを発現する酵母においてのブドウ相同遺伝子発現のGCチャート。 ルペオールを発現する酵母においてのブドウ相同遺伝子発現のマススペクトル(MS)。 ルペオールを発現する酵母においてのビート相同遺伝子発現のGCチャート。 ルペオールを発現する酵母においてのビート相同遺伝子発現のマススペクトル(MS)。 ルペオールを発現する酵母においてのオリーブ相同遺伝子発現のGCチャート。 ルペオールを発現する酵母においてのオリーブ相同遺伝子発現のマススペクトル(MS)。 ルペオールを発現する酵母においてのコーヒー相同遺伝子発現のGCチャート。 ルペオールを発現する酵母においてのコーヒー相同遺伝子発現のマススペクトル(MS)。 αアミリンの28位のメチル基がヒドロキシメチル基に変換されたウバオールと、さらに28位のメチル基がカルボキシル基に変換されたウルソール酸の構造式。 αアミリンを発現する酵母においてのタルウマゴヤシCYP716A12発現のGCチャート。 αアミリンを発現する酵母においてのタルウマゴヤシCYP716A12発現のマススペクトル(MS)。 αアミリンを発現する酵母においてのブドウ相同遺伝子発現のGCチャート。 αアミリンを発現する酵母においてのブドウ相同遺伝子発現のマススペクトル(MS)。 αアミリンを発現する酵母においてのビート相同遺伝子発現のGCチャート。 αアミリンを発現する酵母においてのビート相同遺伝子発現のマススペクトル(MS)。 αアミリンを発現する酵母においてのオリーブ相同遺伝子発現のGCチャート。 αアミリンを発現する酵母においてのオリーブ相同遺伝子発現のマススペクトル(MS)。 αアミリンを発現する酵母においてのコーヒー相同遺伝子発現のGCチャート。 αアミリンを発現する酵母においてのコーヒー相同遺伝子発現のマススペクトル(MS)。
以下、本発明を詳細に説明する。
1. 五環系トリテルペン化合物の28位メチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する酵素タンパク質(「28位酸化酵素」)
本発明の酵素タンパク質は、五環系トリテルペン化合物の28位メチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する酵素活性を有するタンパク質であり、オレアナン型、ウルサン型又はルパン型などの五環系トリテルペン化合物の28位メチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する能力を有するタンパク質である(図1、11及び13)。本明細書では、そのような変換能を、「28位酸化酵素活性」、そのような変換能を有する酵素タンパク質を「28位酸化酵素」と言う。
上記酵素を含む植物には、例えばマメ科のタルウマゴヤシ(Medicago truncatula)、ナス科のトマト(Solanum lycopersicum)、マメ科のミヤコグサ(Lotus japonicus)、モクセイ科のオリーブ(Olea europea)、アカザ科のビート(Beta vulgaris)、アカネ科のコーヒー(Coffea Arabica)、ブドウ科のブドウ(Vitis spp.)等の植物種が含まれる。また、本発明の酵素は、膜結合型チトクロームP450モノオキシダーゼの1種であることが今回初めて明らかになった。
上記酵素を含む他の植物には、オレアナン型、ウルサン型又はルパン型の五環系トリテルペン化合物を天然で生成する植物、例えばクローブ、センブリ、ゲンチアナ、カリン、ウメ、タイム、ナツメ、キンモクセイ、ネズミモチ、サンシュユ、カキ、ビワ、レンギョウ、サンザシ、チクセツニンジン、サトウダイコンなどのオレアノール酸を生成する植物、クローブ、タイソウ、ナツメ、カキ、カバノキ科植物などのベツリン酸を生成する植物などが含まれる。
本発明の酵素により得られる28位がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基である五環系トリテルペン化合物は、植物によって合成されるトリテルペンまたはその誘導体が含まれ、例えばオレアノール酸(3β−hydroxyolean−12−en−28−oic acid)、オレアノン酸(3−oxoolean−12−en−28−oic acid)ウルソール酸(3β−hydroxyurs−12−en−28−oic acid)、ベツリン酸(3β−hydroxylup−20(29)−en−28−oic acid)、それらの塩、それらの誘導体などが挙げられる。
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニアや、脂肪族アミン、芳香族アミン、飽和アミン、不飽和アミンなどの有機アミンとのアンモニウム塩などが含まれる。カルボン酸塩は、本発明方法による目的トリテルペン化合物の生成の間に形成されてもよいし、あるいは、該化合物の生成後に中和処理により塩形成を行ってもよい。
誘導体は、上記五環系トリテルペン化合物の、例えば1位、2位、11位、12位、29位、30位などの、生合成中間体2,3−オキソスクアレンを原料とするその環化反応および28位酸化酵素活性に影響の少ないと思われる位置の水素原子が、別の置換基、例えば低級アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、水酸基、エステル基(アセトキシ、プロパノイルオキシなど)、アシル基(ホルミル、アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシなど)、アミノ基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノ基(メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノなど)、アミド基、低級アルキルアミド基(アセタミドなど)、オキソ基、シアノ基、ニトロ基、低級アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオなど)、スルフォニル基(メシル、エチルスルホニルなど)などの官能基で置換された化合物、28位カルボキシル基の(低級)アルキルエステル化または(低級)アルキル−もしくは(低級)ジアルキル−アミド化化合物などを含む。さらに、これらの部位の水酸基、ヒドロキシメチル基またはカルボキシル基にブドウ糖などの単糖や複数の糖がつくトリテルペンサポニンでもかまわない。
本発明の28位水酸化酵素の基質となる好ましいトリテルペン化合物としては、βアミリン(olean−12−en−3β−ol)、αアミリン(urs−12−en−3β−ol)、ルペオール(lup−20(29)−en−3β−ol)、これらの誘導体などの五環系トリテルペン化合物が挙げられる。置換誘導体の置換位置および置換基は、上記例示と同様である。本発明の方法により、28位酸化酵素の作用によって基質となる化合物から28位のメチル基がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換された五環系トリテルペン化合物が得られる。
これら基質は2,3−オキシドスクアレンから、βアミリン合成酵素の作用によってβアミリンが合成され、ルペオール合成酵素の作用によってルペオールが合成され、ならびに、αアミリン合成酵素の作用によってαアミリンが合成される(P.M.Dewick, Medicinal Natural Product, 3rd ed., John Wiley & Sons, 2009)。これらの合成酵素に関する配列情報およびクローニングについては、種々の植物の例えば根や種子由来のcDNAライブラリーからクローニングされて配列決定されており、すでに公知である。βアミリン合成酵素については、H. Hayashi et al., Biol. Pharma. Bull. 24(8):912−916 (2001)、T. Kushiro et al., Eur. J. Biochem. 256:238−244 (1998)、米国特許No. 7,186,884、WO 2003/095615、EMBL Accession No. AY095999およびAAM23264.1(Glycine max)などに記載されている。ルペオール合成酵素については、J. B. Herrera et al., Phytochemistry 49(7):1905−1911 (1998)、T. Kushiro et al., J.Am. Chem. Soc. 122(29):6816−6824 (2000)、GenBank (NCBI) Accession No. NM_179572およびNo. NM_106546 (Arabidopsis thaliana)などに記載されている。αアミリン合成酵素については、M. Morita et al., Eur. J. Biochem. 267:3453−3460 (2000)などに記載されている。これらの合成酵素は、例えばオオムギ、マメ、ピーナッツ、シュガービート、コムギ、オートムギ、馬鈴薯、ニンニク、タマネギ、アスパラガス、茶、イネ、ライムギ、ダイズ、イチゴ、ヒマワリ、トマトなどの植物に存在することが知られている(米国特許No. 7,186,884)ので、必要に応じて、これらの植物から上記文献記載のクローニング手法を用いて上記のβアミリン合成酵素、αアミリン合成酵素およびルペオール合成酵素をコードするDNAを取得し、周知のDNA組換え技術、PCR法などを使用して該DNAを微生物細胞または植物細胞に導入して該合成酵素を発現するようにすることも可能である。このようにして得られた形質転換細胞または植物細胞から再生されたトランスジェニック植物は、これにさらに28位酸化酵素をコードするDNAを発現可能に組み込むことによって、オレアノール酸、ウルソール酸、ベツリン酸などの、28位がカルボキシル化された五環系トリテルペンを生成可能になる。
本発明で使用可能な28位酸化酵素は、以下のものに限定されないが、例えばタルウマゴヤシ、トマト、ミヤコグサ、オリーブ、ビート、コーヒーおよびブドウ由来のものであり、それぞれ、例えば配列番号2〜8に示されるアミノ酸配列を含む酵素を包含する。さらに、本発明で使用可能な該酵素は、配列番号2〜8に示されるアミノ酸配列に部分的に変異を有するアミノ酸配列を含み、かつ、オレアノール酸合成酵素活性を有するタンパク質を包含する。
上記の特定のアミノ酸配列を含むオレアノール酸合成酵素のなかで、配列番号4及び6〜8のいずれかのアミノ酸配列を含む酵素、並びに、該酵素をコードするDNA、具体的に配列番号12及び14〜16のいずれかに示される塩基配列を含むDNAは、全長配列及び機能についてこれまで知られていなかったために、新規である。
ここで、「部分的に変異を有するアミノ酸配列」としては、配列番号2〜8に示されるアミノ酸配列において1もしくは複数、好ましくは1もしくは数個、例えば、1〜10個、好ましくは1〜7個、さらに好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1個もしくは2個、のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列、または該アミノ酸配列と、BLAST、FASTAなどの相同性検索のための公知のアルゴリズム(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータを使用する。)を用いて計算したときに、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも97%、98%もしくは99%の配列同一性を有しているアミノ酸配列が挙げられる。因みに、上記配列番号2〜8に示されるアミノ酸配列を含む酵素タンパク質間の配列同一性は約70〜約80%である。
本明細書で使用する「配列同一性」は、例えば2つのアミノ酸配列または塩基(ヌクレオチド)配列をアラインメントしたとき(ただしギャップを導入してもよいしギャップを導入しなくてもよいが、好ましくはギャップを導入する。)、ギャップを含むアミノ酸または塩基の総数に対する同一アミノ酸または塩基の数の割合(%)を指す。
本発明の28位酸化酵素は、植物体から単離された天然の28位酸化酵素および遺伝子工学的手法により製造された組換え28位酸化酵素を含む。
2. 28位酸化酵素をコードするDNA
本明細書中で使用する「DNA」という用語は、ゲノムDNA、遺伝子、cDNAおよび化学修飾DNAを包含するものとする。
本発明で使用する28位酸化酵素をコードするDNAは、ある特定の五環系トリテルペン化合物、とりわけオレアナン型、ウルサン型又はルパン型の五環系トリテルペン化合物の28位のメチル基を酸化してヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を有する酵素をコードするDNAである。
上記の28位酸化酵素をコードするDNAは、例えば上記配列番号2〜8に示されるアミノ酸配列をそれぞれコードする塩基配列を含むものであり、具体的には配列番号10〜16に示される塩基配列を含むものである。
本発明で使用可能な28位酸化酵素をコードするDNAはまた、配列番号10〜16に示される各塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、あるいは、配列番号10〜16に示される塩基配列と、BLAST、FASTAなどの相同性検索のための公知のアルゴリズム(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータを使用する。)を用いて計算したときに、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するDNA、あるいは、これらのDNAによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1もしくは複数、好ましくは1もしくは数個、例えば、1〜10個、好ましくは1〜7個、さらに好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1個もしくは2個、のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであるが、ただし28位酸化酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを包含する。
これらのDNAは、配列番号10〜16に示される塩基配列を含むDNAのホモログ(相同体)、アナログ(類似体)または変異体である。このようなDNAは、タルウマゴヤシ、トマト、ミヤコグサ、オリーブ、ビート、コーヒーおよびブドウの他に、オレアノール酸、ウルソール酸またはベツリン酸を産生する植物、例えば前述のクローブ、センブリ、ゲンチアナ、カリン、ウメ、タイム、ナツメ、キンモクセイ、ネズミモチ、サンシュユ、カキ、ビワ、レンギョウ、サンザシ、チクセツニンジン、サトウダイコン、クローブ、タイソウ、ナツメ、カキ、カバノキ科植物などの植物の根、種子などからハイブリダイゼーション、PCR増幅などによって得ることが可能である。
本明細書中で使用する「ストリンジェントな条件」という用語は、例えば、「1×SSC、0.1% SDS、37℃」程度の条件であり、より厳しい(中ストリンジェントな)条件としては「0.5×SSC、0.1% SDS、42℃」程度の条件であり、さらに厳しい(高ストリンジェントな)条件としては「0.1〜0.2×SSC、0.1% SDS、65℃」程度の条件である。ハイブリダイゼーションの後でさらに、例えば0.1×SSC、0.1% SDS、55〜68℃で洗浄を行う操作を含んでもよく、この操作によってストリンジェンシーを高めることができる。ここで、1×SSCバッファーは、150 mM塩化ナトリウム、15 mMクエン酸ナトリウム、pH7.0である。
ハイブリダイゼーション条件やPCR反応の手順については、例えばF.M. Ausbel et al., Short Protocols in Molecular Biology, 3rd ed., John Wiley & Sons, 1995などに記載されている。
さらに、本発明で使用可能な28位酸化酵素をコードするDNAは、配列番号10〜16に示す塩基配列において遺伝暗号の縮重に基く配列(縮重配列)を含むDNAも包含する。
本発明のDNAは、上記のとおり、28位酸化酵素活性を有するタンパク質、すなわち以下の(a)〜(c):
(a) 配列番号2〜8のいずれかに示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b) 配列番号2〜8のいずれかに示すに示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、28位酸化酵素活性を有するタンパク質;
(c) 配列番号2〜8のいずれかに示すアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、28位酸化酵素活性を有するタンパク質;
のいずれかからなる群から選択されるタンパク質をコードする。
さらに具体的には、上記DNAは、以下の(d)〜(g):
(d) 配列番号10〜16のいずれかに示す塩基配列を含むDNA;
(e) 配列番号10〜16のいずれかに示す塩基配列を含むDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、28位酸化酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA;
(f) 配列番号10〜16のいずれかに示す塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列を含み、かつ、28位酸化酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA;
(g) 配列番号10〜16のいずれかに示す塩基配列において縮重配列を含むDNA;
のいずれかからなる群から選択される。
3. 組換えベクター
本発明のDNAは、それを発現可能にするために、制御配列を含む適切なベクターに挿入される。このようにして得られた組換え体DNAが組換えベクターである。
ベクターとしては、原核または真核生物の細胞で使用可能なあらゆるベクターを意図し、例えば細菌(エシェリシア属、シュードモナス属、バチルス属、ロドコッカス属など)、糸状菌(アスペルギルス属、ニューロスポラ属、フザリウム属、トリコデルマ属、ペニシリウム属など)、担子菌(白色腐朽菌など)、酵母(サッカロマイセス属、ピチア属、カンジダ属など)等の微生物用ベクター、植物細胞用ベクター、昆虫細胞用ベクターなどを使用できる。
例えば、細菌用ベクターとしては、pBR、pUC、pET、pBluescriptシリーズのベクター類などが挙げられ、酵母用ベクターとしては、非限定的にpDR196、pYES−DEST 52、Yip5、Yrp17、Yep24などが挙げられ、植物細胞用ベクターとしては、非限定的にpGWB vector、pBiEl2−GUS、pIG121−Hm、pBI121、pBiHyg−HSE、pB119、pBI101、pGV3850、pABH−Hm1などが挙げられ、昆虫細胞用ベクターとしては、非限定的にpBM030、pBM034、pBK283などが挙げられる。
本発明において使用されるベクターには、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、シャインダルガルノ配列、リボソーム結合配列、シグナル配列等の遺伝子の発現、調節、分泌に関する構成要素が組込まれ、必要に応じて、選択マーカー(例えば、薬剤耐性遺伝子、レポーター遺伝子)を含有する。
プロモーターには、lacプロモーター、trpプロモーター、recAプロモーター、tacプロモーター、λPLプロモーター、T7プロモーター、CaMV35Sプロモーター、ADH1プロモーター、GALプロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーターなどが非限定的に含まれる。
薬剤耐性遺伝子には、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子などが含まれる。レポーター遺伝子には、lacZ遺伝子、GFP遺伝子、GUS遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子などが含まれる。その他の選択マーカーには、例えばNPTII遺伝子、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子などが含まれる。
遺伝子の発現、調節、分泌に関する構成要素は、その性質に応じて、それぞれが機能し得る形で組換えベクターに組み込まれることが好ましい。そのような操作は、当業者であれば適切に行うことができる。
4. 形質転換体
本発明の形質転換体は、本発明の組換えベクターを保持する形質転換体である。形質転換体は、28位酸化酵素をコードするDNAを挿入した組換えベクターを、目的DNAが発現し得るように宿主細胞中に導入することにより得ることができる。
宿主細胞は、ベクターに適したものを使用すればよい。例えば、細菌、糸状菌、酵母等の微生物細胞、植物細胞、昆虫細胞(Sf9など)、動物細胞などが挙げられる。好ましくは、酵母、糸状菌、昆虫細胞または植物細胞である。
上記の宿主細胞が、αアミリン、βアミリン、ルペオールなどの五環系トリテルペン化合物の生合成系を有している細胞、あるいは、該生合成系を有していない細胞であっても外因的に(または外来的に)αアミリン合成酵素、βアミリン合成酵素、ルペオール合成酵素などのトリテルペン合成酵素をコードするDNAが発現可能に組み込まれた細胞のいずれかである場合には、上記の形質転換によってさらにオレアノール酸合成酵素をコードするDNAが発現可能に含まれるため、これらの細胞を適当な基質を含む培地で培養することによってウルソール酸、オレアノール酸、ベツリン酸を生産することができる。
αアミリン、βアミリン、ルペオールなどの五環系トリテルペン化合物の生合成系を有している細胞には、植物細胞やある特定の酵母細胞、糸状菌細胞のように本来該生合成系を備えている細胞が含まれる。また、上記の生合成系を有していない細胞には、該生合成系に関わる酵素類のゲノム領域を外因的に含む細胞などが包含される。外因的ゲノム領域は、通常、植物由来であり、例えばプラスミド、ファージミド、BAC、PAC、YAC、ウイルスなどのベクターに挿入されて宿主細胞内に移入されうる。
いずれにしても、上記例示の細胞の形質転換によって、該細胞は、場合により誘導的に、オレアノール酸合成酵素を過剰発現する。宿主細胞が真核細胞の場合には、オレアノール酸合成酵素をコードするDNAの5’端にシグナル配列を連結することによって細胞外への該酵素の分泌を可能にする。
組換えベクターの導入方法は、微生物にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではないが、例えばカルシウムイオンを用いる方法[Cohen, S.N.et al.:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69:2110 (1972)]、エレクトロポレーション法、トリペアレンタルメイティング(tri−parental mating)法、アグロバクテリウム法、プロトプラストもしくはスフェロプラスト融合法、パーティクルガン法などが含まれる。
さらにまた、形質転換植物体(「トランスジェニック植物」とも称する。)を作出する方法として、ウイルスベクター、アグロバクテリウムのTiプラスミド、Riプラスミド等をベクターとして用いるアグロバクテリウム法が好適に使用できる。宿主植物としては、特に限定されないが、例えばイネ、ムギ、トウモロコシ等の単子葉植物、ダイズ、ナタネ、トマト、バレイショ等の双子葉植物が挙げられる。形質転換植物体は、オレアノール酸合成酵素をコードするDNAを含むベクターで形質転換された植物細胞から植物体を再生させることにより得ることができる。植物細胞からの植物体の再生は公知の方法、例えばカルス培養等により行うことができる。
5. 本発明のタンパク質の製造法
本発明のタンパク質は、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載された方法等を用い、例えば以下の方法により、本発明のタンパク質をコードするDNAを宿主細胞中で発現させて、製造することができる。本発明のタンパク質をコードするDNAをもとにして、必要に応じて、本発明のタンパク質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製する。また、該タンパク質をコードする部分の塩基配列を、宿主の発現に最適なコドンとなるように、塩基を置換することにより、該タンパク質の生産率を向上させることができる。
該DNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換え体DNAを作製する。該組換え体DNAを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、本発明のタンパク質を生産する形質転換体を得ることができる。
宿主細胞としては、細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞等、植物細胞等、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込が可能で、本発明のDNAまたは本発明の製造法に用いられるDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
細菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合は、本発明のDNAまたは本発明の製造法に用いられるDNAを有する組換え体DNAは、原核生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、本発明のDNAまたは本発明の製造法に用いられるDNA、転写終結配列より構成された組換え体DNAであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
発現ベクターとしては、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもベーリンガーマンハイム社製)、pHelix1(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)、pKK233−2(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX−1(プロメガ社製)、pQE−8(キアゲン社製)、pET−3(ノバジェン社製)、pKYP10(特開昭58−110600)、pKYP200[Agric.Biol.Chem.,48,669(1984)]、pLSA1[Agric.Biol.Chem.,53,277(1989)]、pGEL1[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,82,4306(1985)]、pBluescriptII SK(+)、pBluescript II KS(−)(ストラタジーン社製)、pTrS30[エシェリヒア・コリJM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製]、pTrS32[エシェリヒア・コリJM109/pTrS32(FERM BP−5408)より調製]、pPAC31(WO98/12343)、pUC19[Gene,33,103(1985)]、pSTV28(宝酒造社製)、pUC118(宝酒造社製)、pPA1(特開昭63−233798)等を例示することができる。
プロモーターとしては、エシェリヒア・コリ等の宿主細胞中で機能するものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
本発明のDNAまたは本発明の製造法に用いられるDNAを発現ベクターに結合させた組換え体DNAにおいては、転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
原核生物としては、エシェリヒア属、セラチア(Serratia)属、バチルス属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物等をあげることができる。
組換え体DNAの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69,2110(1972)]、プロトプラスト法(特開昭63−248394)、エレクトロポレーション法[Nucleic Acids Res.,16,6127(1988)]等をあげることができる。
酵母菌株を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEp13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)、pHS19、pHS15等を用いることができる。
プロモーターとしては、酵母菌株中で機能するものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal 1プロモーター、gal 10プロモーター、ヒートショックポリペプチドプロモーター、MFα1 プロモーター、CUP 1プロモーター等のプロモーターをあげることができる。
宿主細胞としては、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、シワニオマイミセス(Schwanniomyces)属、ピチア(Pichia)属、またはキャンディダ(Candida)属等に属する酵母菌株をあげることができ、具体的には、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomycescerevisiae)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomycespombe)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyceslactis)、トリコスポロン・プルランス(Trichosporonpullulans)、シワニオマイセス・アルビウス(Schwanniomycesalluvius)、ピチア・パストリス(Pichiapastoris)、キャンディダ・ウティリス(Candidautilis)等をあげることができる。
組換え体DNAの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Methods Enzymol.,194,182(1990)]、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81,4889(1984)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]等をあげることができる。
動物細胞を宿主として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社より市販)、pAGE107(特開平3−22979)、pAS3−3(特開平2−227075)、pCDM8[Nature,329,840(1987)]、pcDNAI/Amp(インビトロジェン社製)、pREP4(インビトロジェン社製)、pAGE103[J.Biochem,101,1307(1987)]、pAGE210、pAMo、pAMoA等を用いることができる。
プロモーターとしては、動物細胞中で機能するものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーターあるいはメタロチオネインのプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等をあげることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
宿主細胞としては、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、ヒトの細胞であるナマルバ(Namalwa)細胞またはナマルバKJM−1細胞、ヒト胎児腎臓細胞、ヒト白血病細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、HBT5637(特開昭63−299)等をあげることができる。
マウス・ミエローマ細胞としては、SP2/0、NSO等、ラット・ミエローマ細胞としてはYB2/0等、ヒト胎児腎臓細胞としてはHEK293(ATCC CRL−1573)、ヒト白血病細胞としてはBALL−1等、アフリカミドリザル腎臓細胞としてはCOS−1、COS−7等をあげることができる。
組換え体DNAの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Cytotechnology,3,133(1990)]、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,84,7413(1987)]、Virology,52,456(1973)に記載の方法等をあげることができる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えばBaculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual,W.H.Freeman and Company,New York(1992)、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Molecular Biology,A Laboratory Manual、Bio/Technology,6,47(1988)等に記載された方法によって、タンパク質を生産することができる。
即ち、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、タンパク質を生産させることができる。
該方法において用いられる遺伝子導入ベクターとしては、例えば、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(いずれもインビトロジェン社製)等をあげることができる。
バキュロウイルスとしては、例えば、夜盗蛾科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。
昆虫細胞としては、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodopterafrugiperda)の卵巣細胞、トリコプルシア・ニ(Trichoplusiani)の卵巣細胞、カイコ卵巣由来の培養細胞等を用いることができる。
スポドプテラ・フルギペルダの卵巣細胞としてはSf9、Sf21(バキュロウイルス・イクスプレッション・ベクターズ ア・ラボラトリー・マニュアル)等、トリコプルシア・ニの卵巣細胞としてはHigh5、BTI−TN−5B1−4(インビトロジェン社製)等、カイコ卵巣由来の培養細胞としてはボンビクス・モリ(Bombyxmori)N4等をあげることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への上記組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,84,7413(1987)]等をあげることができる。
植物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクター等をあげることができる。
プロモーターとしては、植物細胞中で機能するものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、イネアクチン1プロモーター等をあげることができる。
宿主細胞としては、タバコ、ジャガイモ、トマト、ニンジン、ダイズ、アブラナ、アルファルファ、イネ、コムギ、オオムギ等の植物細胞等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)を用いる方法(特開昭59−140885、特開昭60−70080、WO94/00977)、エレクトロポレーション法(特開昭60−251887)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(特許第2606856、特許第2517813)等をあげることができる。
酵母、動物細胞、昆虫細胞または植物細胞により発現させた場合には、糖あるいは糖鎖が付加されたタンパク質を得ることができる。
以上のようにして得られる形質転換体を培地に培養し、培養物中に本発明のタンパク質を生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、該タンパク質を製造することができる。
本発明のタンパク質を製造するための上記形質転換体の宿主としては、細菌、糸状菌、酵母等の微生物細胞、植物細胞、昆虫細胞(Sf9など)、動物細胞などが挙げられる。好ましくは、酵母、糸状菌、昆虫細胞または植物細胞である。
上記形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
エシェリヒア・コリ等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、該生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、該生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類等を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体、およびその消化物等を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
培養は、通常振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。
また、培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地[J.Am.Med.Assoc.,199,519(1967)]、イーグル(Eagle)のMEM培地[Science,122,501(1952)]、DMEM培地[Virology,8,396(1959)]、199培地[Proc.Soc.Biol.Med.,73,1(1950)]またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等を用いることができる。
培養は、通常pH6〜8、25〜40℃、5%CO存在下等の条件下で1〜7日間行う。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
昆虫細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているTNM−FH培地(ファーミンジェン社製)、Sf−900 II SFM培地(ライフ・テクノロジーズ社製)、ExCell400、ExCell405[いずれもJRHバイオサイエンシーズ社製]、Grace’s Insect Medium[Nature,195,788(1962)]等を用いることができる。
培養は、通常pH6〜7、25〜30℃等の条件下で1〜5日間行う。
また、培養中必要に応じて、ゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
植物細胞を宿主として得られた形質転換体は、細胞として、または植物の細胞や器官に分化させて培養することができる。該形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているムラシゲ・アンド・スクーグ(MS)培地、ホワイト(White)培地、またはこれら培地にオーキシン、サイトカイニン等、植物ホルモンを添加した培地等を用いることができる。
培養は、通常pH5〜9、20〜40℃の条件下で3〜60日間行う。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ハイグロマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
上記のとおり、本発明のタンパク質をコードするDNAを発現ベクターに連結した組換え体DNAを保有する微生物、昆虫細胞、動物細胞、あるいは植物細胞由来の形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、本発明のタンパク質を生成蓄積させ、該培養物より該タンパク質を採取することにより、該タンパク質を製造することができる。
本発明のタンパク質の生産方法としては、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、あるいは宿主細胞外膜上に生産させる方法があり、選択した方法に応じて、生産させるタンパク質の構造を変えることができる。
本発明のタンパク質が宿主細胞内あるいは宿主細胞外膜上に生産される場合、ポールソンらの方法[J.Biol.Chem.,264,17619(1989)]、ロウらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,4,1288(1990)]、または特開平05−336963、WO94/23021等に記載の方法を準用することにより、該タンパク質を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。
すなわち、遺伝子組換えの手法を用いて、本発明のタンパク質の活性部位を含むタンパク質の手前にシグナルペプチドを付加した形で生産させることにより、該タンパク質を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。
また、特開平2−227075号公報に記載されている方法に準じて、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等を用いた遺伝子増幅系を利用して生産量を上昇させることもできる。
さらに、遺伝子導入した動物または植物の細胞を再分化させることにより、遺伝子が導入された動物個体(トランスジェニック非ヒト動物)または植物個体(トランスジェニック植物)を造成し、これらの個体を用いて本発明のタンパク質を製造することもできる。
本発明のタンパク質を生産する形質転換体が動物個体または植物個体の場合は、通常の方法に従って、飼育または栽培し、該タンパク質を生成蓄積させ、該動物個体または植物個体より該タンパク質を採取することにより、該タンパク質を製造することができる。
動物個体を用いて本発明のタンパク質を製造する方法としては、例えば公知の方法[Am.J.Clin.Nutr.,63,639S(1996)、Am.J.Clin.Nutr.,63,627S(1996)、Bio/Technology,9,830(1991)]に準じて遺伝子を導入して造成した動物中に本発明のタンパク質を生産する方法があげられる。
動物個体の場合は、例えば、本発明のDNAまたは本発明の製造法に用いられるDNAを導入したトランスジェニック非ヒト動物を飼育し、本発明のタンパク質を該動物中に生成、蓄積させ、該動物中より該タンパク質を採取することにより、該タンパク質を製造することができる。該動物中の該タンパク質を生成、蓄積させる場所としては、例えば、該動物のミルク(特開昭63−309192)、卵等をあげることができる。この際に用いられるプロモーターとしては、動物で機能するものであればいずれも用いることができるが、例えば、乳腺細胞特異的なプロモーターであるαカゼインプロモーター、βカゼインプロモーター、βラクトグロブリンプロモーター、ホエー酸性プロテインプロモーター等が好適に用いられる。
植物個体を用いて本発明のタンパク質を製造する方法としては、例えば本発明のタンパク質をコードするDNAを導入したトランスジェニック植物を公知の方法[組織培養,20(1994)、組織培養,21(1995)、Trends Biotechnol.,15,45(1997)]に準じて栽培し、該タンパク質を該植物中に生成、蓄積させ、該植物中より該タンパク質を採取することにより、該タンパク質を生産する方法があげられる。
本発明のタンパク質を生産する形質転換体を用いて製造された本発明のタンパク質を単離・精製する方法としては、通常の酵素の単離、精製法を用いることができる。
例えば、本発明のタンパク質が、細胞内に溶解状態で生産された場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液にけん濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。
該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常の酵素の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化成社製)等レジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(ファルマシア社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
また、該タンパク質が細胞内に不溶体を形成して生産された場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈殿画分より、通常の方法により該タンパク質を回収後、該タンパク質の不溶体をタンパク質変性剤で可溶化する。
該可溶化液を、タンパク質変性剤を含まないあるいはタンパク質変性剤の濃度がタンパク質が変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、該タンパク質を正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
本発明のタンパク質またはその糖修飾体等の誘導体が細胞外に分泌された場合には、培養上清に該タンパク質またはその糖付加体等の誘導体を回収することができる。
即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより可溶性画分を取得し、該可溶性画分から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
また、本発明のタンパク質を他のタンパク質との融合タンパク質として生産し、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを利用して精製することもできる。例えば、ロウらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,4,1288(1990)]、特開平5−336963、WO94/23021に記載の方法に準じて、本発明のタンパク質をプロテインAとの融合タンパク質として生産し、イムノグロブリンGを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
また、本発明のタンパク質をFlagペプチドとの融合タンパク質として生産し、抗Flag抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,4,1288(1990)]。更に、該タンパク質自身に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製することもできる。
上記で取得されたタンパク質のアミノ酸配列情報を基に、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法により、本発明のタンパク質を製造することができる。また、Advanced ChemTech社、パーキン・エルマー社、Pharmacia社、Protein Technology Instrument社、Synthecell−Vega社、PerSeptive社、島津製作所等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
6. 28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有するトリテルペン化合物の製造方法
本発明は、無細胞系で、あるいは細胞又は植物を用いて、外因性の28位酸化酵素活性を有するタンパク質存在下または28位酸化酵素をコードするDNAの発現下で、αアミリン、βアミリン、ルペオールなどの五環系トリテルペン化合物の28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する方法を提供する。
本明細書で使用される「外因性」とは、細胞または植物が本来もつ酵素またはその遺伝子自体ではなく、該細胞または植物に、あるいは上記の五環系トリテルペン化合物原料の反応系に、人為的に該酵素またはそれをコードするDNAを導入することを意味する。
本発明はまた、上記の変換方法によって28位のメチル基がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換された五環系トリテルペン化合物を生成し、該化合物を回収することを含む、28位のメチル基がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換された五環系トリテルペン化合物の製造方法を提供する。
本発明では、28位酸化酵素は、粗製、半精製もしくは精製された、あるいは多糖類、多孔性ポリマー、多孔性無機物(例えばガラス、鉱物、セラミックス等)などの支持体などに共有結合もしくは非共有結合によって固定化された、酵素として反応系で使用されてもよいし、該酵素を産生する細胞または植物体自体が反応系で使用されてもよい。
本発明で使用可能な28位酸化酵素は膜結合型チトクロームP450モノオキシダーゼの一種であり、上述の製造法で得ることができる。
DNA組換え技術によって、高い酵素活性を持ったタンパク質の発現が可能であるため、形質転換微生物(例えば、酵母、糸状菌)や昆虫細胞の培養液に上記28位酸化酵素の基質、例えばαアミリン、βアミリン、ルペオール、またはそれらの置換誘導体、を添加することにより、28位がヒドロキシメチル化またはカルボキシル化された五環系トリテルペン化合物を生産することができる。例えば、形質転換微生物の培養液にβ−アミリン等の五環系トリテルペン類を基質として投与することにより、28位がヒドロキシメチル化またはカルボキシル化された五環系トリテルペン化合物を効率的に大量に生産することが可能である。
特に酵母がサイトゾルにDMAPP(ジメチルアリルピロリン酸)を生合成する経路(メバロン酸経路)を有していることや、大腸菌にメバロン酸経路を導入することやスクワレンエポキシダーゼ、オキシドスクワレン環化酵素で前駆体や基質を生産・増強することを可能にしたことが報告されている[原田と三沢2009 Appl Microbiol Biotechnol 84:1021−31,仲野ら2007 Biosci. Biotech. Biochem. 71:2543−2550]。例えば、Saccharomyces cerevisiaeのGIL77株(T. Kushiro et al., Eur. J. Biochem. 256:238−244 (1998))又はその変異株をβアミリン合成酵素をコードするDNAを発現可能に含むプラスミドで形質転換するとき、βアミリンを産生することが知られている(H. Hayashi et al., Biol. Pharm. Bull. 24:912−916 (2001))。これらの方法を利用して他の遺伝子(例えば基質生合成酵素遺伝子)と28位酸化酵素をコードするDNAを同時に発現させることによって、28位がヒドロキシメチル化またはカルボキシル化された五環系トリテルペン化合物を生産することが可能となる。類似の膜結合型チトクロームP450モノオキシダーゼを発現し代謝物を得た例としては、大腸菌ではChangら[2007 Nat. Chem. Biol. 3:274−277]の報告がある。また、酵母では関ら[2008 PNAS 105:14204−14209]の報告があるので、このような方法を組み合わせることで目的の五環系トリテルペン化合物を生産することが可能となる。また、トランスジェニック植物において28位酸化酵素を過剰発現させて目的の五環系トリテルペン化合物を生成し、根や種子等から回収することもできる。
(1)酵素的製造法
無細胞系では、上記形質転換体の培養液から28位酸化酵素を含有する無細胞抽出液を調製し、その一部を、αアミリン、βアミリン、ルペオール、またはそれらの置換誘導体などの五環系トリテルペン化合物を含有するバッファーに加えて変換反応を行うことによって、28位がヒドロキシメチル化またはカルボキシル化された五環系トリテルペン化合物を製造することができる。
収穫した細胞の懸濁液、あるいは適量のバッファー中の形質転換植物を、ホモジナイザー、超音波破砕機あるいはフレンチプレス等により破砕後、遠心分離して無細胞抽出液を得る。バッファーには、ポリペプチドの失活を防ぐため、抗酸化剤、酵素の安定化剤、ポリフェノール吸着剤、金属配位子などを添加することができる。さらに比活性を高めるにはポリペプチドを精製することが有効であり、超遠心機による遠心分離法、硫安等による塩析方、ゲル濾過法、イオン交換クロマトグラフィー法、アフィニティクロマトグラフィー法、電気泳動法などの手法を単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。得られたポリペプチドを含むバッファーに、基質となる上記の五環系トリテルペンおよび補酵素を添加してインキュベートする。補酵素としてはNADHあるいはNADPHが利用でき、グルコース−6−リン酸とグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを用いたNADPH再構成系も併用できる。また、形質転換体が産生するNADPH-P450リダクターゼ以外のNADPH - P450リダクターゼを外部から加えて酸化反応を行うことも可能である。
上記製造法において、本発明のタンパク質は、基質として用いるトリテルペン1mgあたり0.01〜100mg、好ましくは0.1mg〜10mg添加する。
上記製造法において、基質として用いる五環系トリテルペンは、0.1〜500g/L、好ましくは0.2〜200g/Lの濃度になるように反応水性媒体に初発または反応途中に添加する。上記製造法で用いられる水性媒体としては、28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンの生成反応を阻害しない限り、いかなる成分、組成の水性媒体であってもよく、例えば、水、りん酸塩、炭酸塩、酢酸塩、ほう酸塩、クエン酸塩、トリスなどの緩衝液などをあげることができる。また、メタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、アセトアミドなどのアミド類を含有していてもよい。
28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンの生成反応は水性媒体中、pH5〜11、好ましくはpH6〜10、20〜50℃、好ましくは25〜45℃の条件で2〜150時間、好ましくは6〜120時間行う。
(2)形質転換体または微生物の培養物もしくは培養物の処理物を酵素源として用いる製造法
形質転換体または微生物の培養物もしくは培養物の処理物を酵素源として用いる28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンの製造法としては、本発明のタンパク質を生産する能力を有する形質転換体の培養物もしくは培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、および五環系トリテルペンを水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に28位ヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンを生成、蓄積させ、該媒体から28位ヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンを採取する製造法をあげることができる。
上記製造法に用いられる形質転換体としては、上記4.や5.の方法により製造することができる、本発明のタンパク質を生産する形質転換体をあげることができる。さらに宿主が産生するNADPH-P450リダクターゼ以外のNADPH-P450リダクターゼを外部から加えることも可能である。
培養物の処理物としては、培養物の濃縮物、培養物の乾燥物、培養物を遠心分離して得られる菌体、該菌体の乾燥物、該菌体の凍結乾燥物、該菌体の界面活性剤処理物、該菌体の超音波処理物、該菌体の機械的摩砕処理物、該菌体の溶媒処理物、該菌体の酵素処理物、該菌体のタンパク質分画物、該菌体の固定化物あるいは該菌体より抽出して得られる酵素標品などをあげることができる。
上記製造法において、基質として用いる五環系トリテルペンの種類、使用濃度および添加時期、並びに生産される28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンは、上記(1)の酵素的製造法のものと同様である。
また、微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源とした製造法において用いられる水性媒体としては、上記(1)の酵素的製造法に用いられる水性媒体に加え、酵素源として用いた形質転換体または微生物の培養液も水性媒体として用いることができる。
また必要に応じて、水性媒体中に界面活性剤あるいは有機溶媒を添加してもよい。界面活性剤としては、ポリオキシエチレン・オクタデシルアミン(例えばナイミーンS−215、日本油脂社製)などの非イオン界面活性剤、セチルトリメチルアンモニウム・ブロマイドやアルキルジメチル・ベンジルアンモニウムクロライド(例えばカチオンF2−40E、日本油脂社製)などのカチオン系界面活性剤、ラウロイル・ザルコシネートなどのアニオン系界面活性剤、アルキルジメチルアミン(例えば三級アミンFB、日本油脂社製)などの三級アミン類など、五環系トリテルペンの生成を促進するものであればいずれでもよく、1種または数種を混合して使用することもできる。界面活性剤は、界面活性剤は、通常0.1〜50g/lの濃度で用いられる。有機溶剤としては、キシレン、トルエン、脂肪族アルコール、アセトン、酢酸エチルなどが挙げられ、通常0.1〜50ml/lの濃度で用いられる。
培養物または該培養物の処理物を酵素源として用いる場合、該酵素源の量は、当該酵素源の比活性等により異なるが、例えば、基質として用いる五環系トリテルペン1mgあたり湿菌体重量として5〜1000mg、好ましくは10〜400mg添加する。
28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンの生成反応は水性媒体中、pH5〜11、好ましくはpH6〜10、20〜50℃、好ましくは25〜45℃の条件で2〜150時間、好ましくは6〜120時間行う。
上記(1)または(2)の製造法において、水性媒体中に生成、蓄積した28位ヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有するトリテルペンの採取は、活性炭やイオン交換樹脂などを用いる通常の方法あるいは、有機溶媒による抽出、結晶化、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等により行うことができる。
7. 28位酸化酵素遺伝子の変異、多型または遺伝子発現変異の選抜
本発明による28位がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基である五環系トリテルペン化合物の製造方法においては、植物において28位酸化酵素遺伝子の突然変異、一塩基多型(SNP)等の多型、または遺伝子発現変異の存在を検出し、そのような変異や多型をもつ該遺伝子のなかから、28位酸化酵素活性が高く28位がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基である五環系トリテルペン化合物の生産性を高める変異型遺伝子を選抜することができる。そのような変異は、28位酸化酵素遺伝子を有する、かつ、五環系トリテルペン化合物生産能をもつ植物において、放射線、UV照射、変異原等の化学処理などの人工的突然変異処理、あるいは自然突然変異、によって誘導することができる。
上記の変異型オレアノール酸合成酵素遺伝子の選抜のための方法には、ゲノムDNAやmRNAを変異個体、様々な品種や育成個体の植物から単離し、mRNAの場合には逆転写しcDNAを合成したのち、DNA増幅技術の使用によりゲノムDNAまたはcDNAからオレアノール酸合成酵素遺伝子を含有する遺伝子断片を増幅する工程と、このDNA中に突然変異の存在を決定する工程が含まれる。DNAやRNAを抽出する方法には市販のキット(例えばDNeasyやRNeasy(キアゲン社)など)が使用できる。cDNAを合成する方法も市販キット(例えばスーパースクリプト ファーストストランド システム(インビトロジェン社)など)を使うことができる。
DNA増幅技術の使用により遺伝子断片を増幅する方法としては、いわゆるPCR法やLAMP法などの技術を用いることができる。これらは継続的なポリメラーゼ反応により特異的なDNA配列の増幅(つまり、コピー数を増やすこと)を達成するためにポリメラーゼを使用することを基にした、一群の技術である。この反応は、クローニングの代わりに使用することができるが、必要であるのは、核酸配列に関する情報のみである。DNAの増幅を行うために、増幅しようとするDNAの配列に相補的なプライマーを設計する。次にそのプライマーを自動DNA合成により作製する。DNA増幅方法は、当技術分野で周知であり、本明細書中で与えられる教示及び指示に基づき、当業者であれば容易に行うことができる。いくつかのPCR法(ならびに関連技術)は、例えば、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、同第4,965,188号、およびInnisら編、PCR Protocols:A guide to Method and Applicationsで述べられている。
上記DNA中に突然変異や多型の存在を決定する工程では、塩基配列の決定(アプライドバイオシステムズ社)や、ミスマッチペアの片側を切断する酵素を用いて突然変異体を検出するTILLING法(Till et al., 2003, Genome Res 13:524−530)など変異遺伝子と正常遺伝子の相同性を利用し検出する方法を用いればよい。これらは該技術から得られた配列データを遺伝子部分に関する28位酸化酵素をコードする遺伝子の塩基配列、例えば配列番号10〜16に示されるような塩基配列と比較することによって行うことができる。
mRNA量の違いを決定する工程では、上記cDNAに対し、配列既知の28位酸化酵素をコードする遺伝子の塩基配列に基づいて作製したプライマーを利用してリアルタイムPCR法(ロシュ・ダイアグノスティックス社製のライトサイクラーなど)等の定量的PCRを採用すればよい。その後、例えば、ブドウ品種「キャンベル ベリーA」から得られたcDNAの量と比較することでmRNA量の違いを決定することができる。
特に好ましい実施形態において、上述したような28位酸化酵素遺伝子変異の存在の決定方法を、オリーブ(Olea europea)から得られた材料に適用する。
上記の突然変異および/または多型を決定する方法により、28位酸化酵素をコードする遺伝子の突然変異や多型を塩基レベルで同定することができ、さらに28位酸化酵素をコードする遺伝子に突然変異および/または多型を有する植物体を選抜し、変異型28位酸化酵素をコードする遺伝子を得ることができる。
また、突然変異や多型の決定やmRNA量の違いの決定により、28位酸化酵素をコードする遺伝子の発現能または28位酸化酵素の活性が変化している植物を選抜することが可能になる。ここで、28位酸化酵素をコードする遺伝子の発現能または28位酸化酵素の活性の変化とは、人為的突然変異等の突然変異による遺伝子の発現能または28位酸化酵素の活性の改変および多型による遺伝子の発現能または28位酸化酵素の活性が異なっていることを意味する。
ある植物の28位酸化酵素活性の突然変異による改変は、その植物の種に含まれる既存品種に対する改変をいい、既存品種には野生型も含まれる。既存の品種は、28位酸化酵素をコードする遺伝子が改変された植物を得るためのすべての品種をいい、交配、遺伝子操作等の人為的操作により作出された品種を含む。また、活性の改変において、すべての既存品種に対して、活性が変化している必要はなく、特定の既存品種に対して改変されていれば、「28位酸化酵素の活性が改変された植物」に含まれる。「28位酸化酵素の活性が改変された植物」は、人為的操作を受けず自然状態で突然変異により活性が改変された植物も含み、上記の選抜方法により、自然状態で活性が変化した植物を選抜することができ、新たな品種として確立することもできる。また、ある既存品種に変異誘発処理を行い、28位酸化酵素の活性が改変された植物を作出した場合、比較対象は変異誘発処理を行った既存品種でもよいし、それ以外の他の既存品種でもよい。また、自然状態で選抜された活性が変化した植物又は変異誘発処理により活性が変化した植物を交配することにより、28位酸化酵素をコードする遺伝子の変異が固定された新品種として得ることもできる。
例えば、植物がオリーブ(Olea europea)の場合、既存品種として、「ネバディロブロンコ」、「マンザニロ」、「ミッション」、「レッチーノ」等がある。ここで、28位酸化酵素をコードする遺伝子の発現能または28位酸化酵素の活性が既存品種に対して改変された植物とは、既存品種に対して28位酸化酵素をコードする遺伝子の発現能が増強あるいは減少した植物を含み、さらに、28位酸化酵素の活性が既存品種に対して上昇あるいは低下した植物を含む。本発明は、このような28位酸化酵素をコードする遺伝子の発現能または28位酸化酵素の活性が既存品種に対して改変された植物体も包含する。
このようにして得られた28位酸化酵素をコードする遺伝子に突然変異や多型を有する植物は、本発明の方法によって、28位がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基である五環系トリテルペン化合物の製造のために使用することができる。
(実施例)
以下、本発明を、実施例を示してより詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
共発現解析を用いたトリテルペンサポニン生合成関連候補P450の選抜
タルウマゴヤシの遺伝子共発現解析データベース(http://bioinfo.noble.org/gene-atlas/v2/correlation_search_form.php、Version: V2 (July 2009)# of Experiments: 64, # of GeneChips: 156)を利用して、β-アミリン合成酵素遺伝子(プローブID = Mtr.32384.1.S1_s_at)と共発現係数0.8以上を示す遺伝子配列プローブ221見つかった。このうちプローブ配列の相同性を検索していったところ、シトクロームP450モノオキシゲナーゼ遺伝子断片を示すものとして、CYP93E2(プローブID = Mtr.8618.1.S1_at、共発現係数0.791)とCYP716A12(プローブID = Mtr.43018.1.S1_at、共発現係数0.8566)をβ-アミリン合成酵素遺伝子と共発現をしている可能性のあるP450遺伝子として見出し以下の解析を進めた。ただし、より高い共発現計数を持つプローブID=Mtr.37298.1.S1_at(共発現係数0.9441)はCYP72クランに属すると考え解析を行わなかった。
タルウマゴヤシCYP93E2遺伝子の単離
タルウマゴヤシ、エコタイプR108-1を人工気象器内(23℃、日長16時間)で育成し、発芽後4週間目の植物の葉、茎、根からそれぞれトータルRNAを調製した。得られたトータルRNAを1μg用いて、SMART RACE cDNA amplification kit (Clontech社)を用いて添付のプロトコルに従いファーストストランドcDNA合成を行った。
3種のファーストストランドcDNA各2μlを鋳型として、CYP93E2(GenBankアクセション番号、ABC59085)のポリペプチド(514アミノ酸)のN末端とC末端に相当する箇所のオリゴDNA、すなわち配列番号17(caccATGCTTGAAATCCAAGGCTACGTAGTATT)と配列番号18(TTAGGCAGAAGAGAATGGAACAAAATGTGGAAC)、をプライマーに用い、アニール温度58℃でPCR(30サイクル、TOYOBO社製 KOD plus ver.2 polymeraseを使用)を行った。なお、pENTRTM/D-TOPO(登録商標)エントリーベクター(Invitrogen社)へのクローニングの際に必要であることから、配列番号17のプライマーには、5’末端に4塩基(cacc)が人工的に付加されている。PCRの結果、いずれのファーストストランドcDNAを鋳型に用いた場合にも、約1.5kbのDNA断片が同程度増幅された。茎由来のファーストストランドcDNAから増幅されたDNA断片をpENTRTM/D-TOPOエントリーベクターにクローニング(エントリークローンの作製)し、得られた3個の独立クローンについてポリヌクレオチド配列を決定した。これにより得られた配列は、配列番号9であり、それから推定されるポリペプチド配列(配列番号1)は、GenBankに登録されているABC59085のアミノ酸配列に対して99%の同一性を有していた。
タルウマゴヤシCYP716A12遺伝子の単離
実施例2で作製した3種のファーストストランドcDNA各2μlを鋳型として、CYP716A12(GenBankアクセション番号、ABC59076)のポリペプチド(479アミノ酸)のN末端とC末端に相当する箇所のオリゴDNA、すなわち配列番号19(caccATGGAGCCTAATTTCTATCTCTCCCT)と配列番号20(TTAAGCTTTGTGTGGATAAAGGCGA)、をプライマーに用い、アニール温度58℃でPCR(30サイクル、TOYOBO社製 KOD plus ver.2 polymeraseを使用)を行った。なお、pENTRTM/D-TOPO(登録商標)エントリーベクター(Invitrogen社)へのクローニングの際に必要であることから、配列番号19のプライマーには、5’末端に4塩基(cacc)が人工的に付加されている。PCRの結果、いずれのファーストストランドcDNAを鋳型に用いた場合にも、約1.5kbのDNA断片が同程度増幅された。茎由来のファーストストランドcDNAから増幅されたDNA断片をpENTRTM/D-TOPOエントリーベクターにクローニングし、得られた3個の独立クローンについてポリヌクレオチド配列を決定した。これにより得られた配列は、配列番号10であり、それから推定されるポリペプチド配列(配列番号2)は、GenBankに登録されているABC59076のアミノ酸配列に対して99%の同一性を有していた。
ミヤコグサβ-アミリン合成酵素(OSC1)遺伝子cDNAの酵母発現ベクターpYES3-ADH-OSC1の構築
マメ科のモデル植物としてEST及びゲノム解析が進んでいるミヤコグサ(Lotus japonicus)を用いて、β-アミリン合成酵素(OSC1)遺伝子の酵母発現ベクターを構築した。ミヤコグサOSC1遺伝子cDNA導入プラスミド(Sawai et al. (2006) Plant Sci 170: 247-257)をKpnI、XbaIで消化し、OSC1 cDNA領域を切り出した。pAUR123(TaKaRa社)も同様にKpnI、XbaIで消化し、DNA ligation Kit Ver. 2.1(TaKaRa社)で両者をライゲーションし、pAUR123-OSC1を得た。pAUR123-OSC1のPADH1からTADH1領域を配列番号21(GGATGATCCACTAGTGGATCCTCTAGCTCCCTAACATGTAGGTGG)及び配列番号22(TAATGCAGGGCCGCAGGATCCGTGTGGAAGAACGATTACAACAGG)の両プライマーを用いて、KOD-Plus-DNAポリメラーゼ(TOYOBO社)により94℃で2分間処理した後、(94℃20秒間→55℃40秒間→68℃90秒間)×20サイクルからなるPCRを行った。その後、68℃で2分間保温した。また、pYES3/CT(Invitrogen社)の1番から960番塩基(PGAL1からCYC1TT)を除く領域を配列番号23(TGCGGCCCTGCATTAATGAATCGGCCAACG)及び配列番号24(ACTAGTGGATCATCCCCACGCGCCCTGTAG)の両プライマーを用いてKOD-Plus- DNAポリメラーゼ(TOYOBO社)により前記と同様にPCRを行った。両PCR産物をIn-Fusion Dry-Down PCR Cloning Kit(clontech社)を用いて結合し、ミヤコグサOSC1酵母発現ベクターpYES3-ADH-OSC1を得た。
ミヤコグサチトクロームP450還元酵素を含む酵母発現ベクターpELC-MCS2-GWの構築
ミヤコグサESTデータベース(かずさDNA研究所)を検索し、シロイヌナズナチトクロームP450還元酵素とアミノ酸レベルで70%以上の相同性を有する核酸配列を選抜した。全長コード領域を含むと思われるESTクローン(accession no. AV778635)をかずさDNA研究所より入手し、DNA配列を決定した(以下、LjCPR1とする)。LjCPR1導入プラスミド(pBluescript SK (-))を鋳型にして、配列番号25(GGGCGGCCGCACTAGTATCGATGGAAGAATCAAGCTCCATGAAG)及び配列番号26(TTAATTAATCACCATACATCACGCAAATAC)の両プライマーを用い、KOD-Plus- DNAポリメラーゼ(TOYOBO社)により94℃で2分間処理した後、(94℃20秒間→60℃40秒間→68℃120秒間)×15サイクルからなるPCRを行った。その後、68℃で2分間保温した。PCR産物をTAget Clone -Plus-(TOYOBO社)を用いて、pT7Blue T-vector(Novagen社)とライゲーションした。塩基配列を確認後、NotI、PacIで消化し、また酵母発現用ベクターpESC-LEU(Stratagene社)も同様にNotI, PacIで消化した。その後、DNA ligation Kit Ver. 2.1(TaKaRa社)を用いて両者をライゲーションし、LjCPR1の酵母発現ベクターpESC-LjCPR1を得た。次に、pAM-PAT-GWベクター(Max Planck InstituteのBekir Ulker博士とImre E. Somssich博士より贈与)を制限酵素XhoI及びSpeIで二重消化し、Gateway conversion cassette(Invitrogen社)を含むDNA断片を切り出した。得られたDNA断片を、pESC-LjCPR1をSalIとNheIの二重消化して得られる2つの断片のうち大きい断片と連結することによってpELC-MCS2-GWを構築した。pELC-MCS2-GWの構築には、大腸菌DB3.1株(Invitrogen社)を使用した。
LjCPR1とCYP93E2の酵母同時発現ベクターpELC-CYP93E2の構築
実施例2で作製した、配列番号9に示すポリヌクレオチドを有するプラスミド(エントリークローン)とpELC-MCS2-GWとを混合し、Gateway LR Clonase II Enzyme Mix(Invitrogen社)を用いて塩基配列特異的な組み換え反応(attL x attR反応)により、配列番号9で示すDNA断片をpELC-MCS2-GWに移し替えることでLjCPR1と配列番号9に示す遺伝子の同時発現ベクターpELC-CYP93E2を得た。
LjCPR1とCYP716A12の酵母同時発現ベクターpELC-CYP716A12の構築
実施例3で作製した、配列番号10に示すポリヌクレオチドを有するプラスミド(エントリークローン)とpELC-MCS2-GWとを混合し、Gateway LR Clonase II Enzyme Mix(Invitrogen社)を用いて塩基配列特異的な組み換え反応(attL x attR反応)により、配列番号10で示すDNA断片をpELC-MCS2-GWに移し替えることでLjCPR1と配列番号10に示す遺伝子の同時発現ベクターpELC-CYP716A12を得た。
OSC1とCYP93E2を同時発現する形質転換酵母の作製
INVSc1株(Invitrogen社)(MATa his3D1 leu2 trp1-289 ura3-52 MATAlpha his3D1 leu2 trp1-289 ura3-52)の形質転換は、Frozen-EZ Yeast Transformation II(Zymo Research社)を用いて行った。最初に、酵母INVSc1株をpYES3-ADH-OSC1で形質転換し、続いて、得られた形質転換酵母をpELC-CYP93E2あるいはコントロールとしてpESC-LjCPR1で形質転換した。
OSC1とCYP716A12を同時発現する形質転換酵母の作製
実施例8と同様に、酵母INVSc1株をpYES3-ADH-OSC1で形質転換し、続いて、得られた形質転換酵母をpELC-CYP716A12で形質転換した。
形質転換酵母(pYES3-ADH-OSC1、pELC-CYP93E2)における生成物の確認
pYES3-ADH-OSC1、pELC-CYP93E2の2つのベクターを保持する酵母を5mlのSC-Trp/Leu培地30℃、135rpm、1日間培養した。培養した酵母を3000g、10分間遠心することにより集菌し、ガラクトース(20mg/ml)、塩化ヘミン(13μg/ml)を添加した10mlのSC-Trp/Leu-グルコース培地に懸濁し、30℃、135rpm、2日間培養した。酵母培養液に5mlの酢酸エチルを加え混合した後、酢酸エチル抽出物を回収した。この操作を3回繰り返した。酢酸エチル抽出物を減圧下で濃縮した。pYES3-ADH-OSC1、pESC-LjCPR1の2つのベクターを保持する酵母についても同様に、培養、抽出を行なった。酢酸エチル区は溶媒を乾燥除去した後、N−メチル−N−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミドを加え、80℃で30分間加熱し、トリメチルシリルエーテル体に誘導体化しGC-MS分析の試料とした。変換物の同定は標品をGCの保持時間ならびにMSスペクトルを比較することで決定した。
pYES3-ADH-OSC1及びpELC-CYP93E2の2つのベクターを保持する酵母の抽出物(図2、OSC1/LjCPR1/CYP93E2と示したGCチャート)からは、β-アミリン(点線矢印)に加えて、特異的な2本のピーク(ピーク1とピーク2)が検出された。その内、ピーク1のマススペクトルは24-ヒドロキシβ-アミリン(24-OH-β-amyrin)のマススペクトルと非常に良く一致した。ピーク2はマススペクトルパターンから、さらに酸化された化合物である24のacid(β-amyrin-24-oic acid)であった。一方、pYES3-ADH-OSC1及びpESC-LjCPR1の2つのベクターを保持する酵母の抽出物(図2、OSC1/LjCPR1と示したGCチャート)からはβ−アミリン(点線矢印)は検出されたがピーク1およびピーク2に相当する化合物は検出されなかった。以上の結果から、CYP93E2は、β-アミリン合成酵素(OSC1)を発現する酵母において生じるβ-アミリンの24位を水酸化、さらに酸化し、24-OH-β-amyrinとβ-amyrin-24-oic acidを生成し得ることが明らかとなった。
形質転換酵母(pYES3-ADH-OSC1、pELC-CYP716A12)における生成物の確認
pYES3-ADH-OSC1、pELC-CYP716A12の2つのベクターを保持する酵母について、実施例10に示した方法により培養、抽出ならびに、抽出物の分析を行なった。pYES3-ADH-OSC1及びpELC-CYP716A12の2つのベクターを保持する酵母の抽出物(図3、OSC1/LjCPR1/CYP716A12と示したGCチャート)からは、β-アミリン(点線矢印)に加えて、特異的な2本のピーク(ピーク1とピーク2)が検出された。その内、ピーク2のマススペクトルはオレアノール酸の標品のマススペクトルと非常に良く一致した。これにより、ピーク2は、オレアノール酸に相当することが判明した。ピーク1はマススペクトルパターンから、β-アミリンの28位が水酸化されたエリトリジオールであった。
一方、pYES3-ADH-OSC1及びpESC-LjCPR1の2つのベクターを保持する酵母の抽出物(図3、OSC1/LjCPR1と示したGCチャート)からはβ−アミリン(矢印)は検出されたがピーク1およびピーク2に相当する化合物は検出されなかった。以上の結果から、CYP716A12は、β-アミリン合成酵素(OSC1)を発現する酵母において生じるβ-アミリンの28位メチル基をカルボキシル基に変換し、オレアノール酸を生成し得ることが明らかとなった。
このことは以下のことから驚くべきことである。いままでにトリテルペンの酸化の過程ではCYP93、CYP88、CYP72のファミリーにのみ活性が確認されており、CYP716ファミリーに属するものではなかった。さらにP450の命名を行っているNelson博士のHP(http://drnelson.uthsc.edu/cytochromeP450.html)のJune 22, 2010更新版によると機能推定や同定されているCYP716ファミリーには3つの配列(CYP716A14 Artemisia annua putative taxadiene 5-alpha-hydroxylase、CYP716D4 Stevia rebaudiana ent-kaurenoic acid 13-hydroxylase、CYP716D6 Artemisia annua putative taxane 13-alpha-hydroxylase)がある。いずれもトリテルペンではなくジテルペンの骨格に水酸化を行う酵素をコードするとしている。またCYP716A12をNCBIのblastPで相同検索すると、トップ100の配列の中で酵素活性が特定されているものは上記3配列のほかにQ8W4T9.1 Taxane 13-alpha-hydroxylase (97%領域においてE value= 2e-104以下同じ)、AAU93341.1 taxadiene 5-alpha hydroxylase(94% 3e-101)、AAN52360.1 5-alpha-taxadienol-10-beta-hydroxylase(94% 2e-97)、AAO66199.1 taxane 14b-hydroxylase(95% 3e-95)、AAS89065.2 taxoid 2-alpha-hydroxylase(93% 1e-92)、Q9AXM6.1 5-alpha-taxadienol-10-beta-hydroxylase(94% 4e-92)、AAT47183.1 taxoid 10-beta hydroxylase(94% 1e-91)、AAV54171.1 taxoid 2-alpha-hydroxylase(97% 3e-91)等で、酵素の種類はこれだけであった。いずれもこれらはトリテルペンではなくジテルペンを酸化する酵素をコードするとしている。これらの情報からはCYP716ファミリーの遺伝子がトリテルペンの酸化能を有するとは考えられなかった。
OSC1とCYP93E2およびCYP716A12を同時発現する形質転換酵母の作製
実施例3において作製した、配列番号10に示すポリヌクレオチドを有するプラスミド(エントリークローン)とデスティネーションベクターpYES-DESTTM52(Invitrogen社)を混合し、Gateway LR Clonase II Enzyme Mix(Invitrogen社)を用いて塩基配列特異的な組み換え反応(GATEWAYTM attL × attR反応)により、配列番号10で示すDNA断片をpYES-DESTTM52に移し替えることで配列番号10に示す遺伝子の酵母発現ベクターpDEST52-CYP716A12を得た。次に、実施例10において作製した、pYES3-ADH-OSC1とpELC-CYP93E2の2つのベクターを保持する酵母にpDEST52-CYP716A12、又は空ベクターに相当するpYES2(Invitrogen社)で形質転換した。
形質転換酵母(pYES3-ADH-OSC1、pELC-CYP93E2、pDEST52-CYP716A12)における生成物の確認
pYES3-ADH-OSC1、pELC-CYP93E2、pDEST52-CYP716A12の3つのベクターを保持する酵母を5mlのSC-Trp/Leu/Ura培地30℃、135rpm、1日間培養した。培養した酵母を3000g、10分間遠心することにより集菌し、ガラクトース(20mg/ml)、塩化ヘミン(13μg/ml)を添加した10mlのSC-Trp/Leu/Ura-グルコース培地に懸濁し、30℃、135rpm、2日間培養した。酵母培養液に5mlの酢酸エチルを加え混合した後、酢酸エチル抽出物を回収した。この操作を3回繰り返した。酢酸エチル抽出物を減圧下で濃縮した。pYES3-ADH-OSC1、pELC-CYP93E2、pYES2の3つのベクターを保持するコントロールの酵母についても同様に、培養、抽出を行なった。酢酸エチル区は溶媒を乾燥除去した後、N−メチル−N−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミドを加え、80℃で30分間加熱し、トリメチルシリルエーテル体に誘導体化しGC-MS分析の試料とした。
pYES3-ADH-OSC1、pESC-CYP93E2、pDEST52-CYP716A12の3つのベクターを保持する酵母の抽出物(図4:bAS/CPR/CYP93E2/CYP716A12と示したGCチャート)からは、β-アミリンに加えて、(実施例10)と(実施例11)で示した24-OH-β-amyrin、β-amyrin-24-oic acid、エリトリジオール、オレアノール酸のピークの他に特異的な4本のピークが検出された。その内、ピーク1のマススペクトル(図5)はヘデラゲニンの標品のマススペクトルと非常に良く一致した。
一方、対照実験として行ったpYES3-ADH-OSC1、pESC-CYP93E2、pYES2の3つのベクターを保持する酵母の抽出物(図4:OSC1/CPR/CYP93E2と示したGCチャート)からは28位に水酸化もしくはさらに酸になったものは検出されなかった。以上の結果から、β-アミリン合成酵素(OSC1)を発現する酵母において、CYP93E2とCYP716A12を同時発現させることによって、β-アミリンを基本骨格にもつオレアノール酸および類縁トリテルペノイドを生成し得ることが明らかとなった。
CYP716A12相同遺伝子の公開データベースからの配列抽出
本発明のオレアナン型トリテルペンの28位のメチル基を酸化する活性を有する酵素が、タルウマゴヤシに限定されないことを検証するために、相同性検索により、数種の植物の公開ESTデータベースに登録されている塩基配列の中から、CYP716A12の全長コード領域と高い塩基配列同一性を示すポリヌクレオチド配列を探索した。
トマトの完全長cDNAデータベースである(http://www.pgb.kazusa.or.jp/kaftom/blast.html)からLEFL3159E12を見出した。LEFL3159E12から推定される全長コード領域は配列番号11であり、それから推定されるポリペプチド配列は配列番号3である。配列番号3はCYP716A12のアミノ酸配列に対して74.2%の同一性を有していた。
ミヤコグサの公開ESTデータベース(http://est.kazusa.or.jp/en/plant/lotus/EST/blast.html)から、ミヤコグサcDNA断片の部分配列に相当するAV768711を見出した。AV768711の配列を含むcDNAクローン(MWL008g03)を、ナショナルバイオリソースプロジェクトミヤコグサ・ダイズから入手し、MWL008g03に含まれるミヤコグサ由来cDNAの全長配列を決定した。MWL008g03から推定される全長コード領域は配列番号12であり、それから推定されるポリペプチド配列は配列番号4である。配列番号4はCYP716A12のアミノ酸配列に対して79.5%の同一性を有していた。
ブドウの公開されているゲノム情報をNCBI(The National Center for Biotechnology Information advances science and health)が持つBlast検索サイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi?)を利用して、ゲノム配列から予想される遺伝子配列accession no. XM_002268434.1 (Vitis vinifera hypothetical protein LOC100251813)を見出した。この配列は全長をコードすることが予想できた。
ビートの公開されているcDNAデータ情報をDFCI(Dana-Farber Cancer Institute, Harvard School of Public Health)が持つGene Index Projectサイト(http://compbio.dfci.harvard.edu/tgi/tgipage.html)を利用してBeet Release 2.0 (May 19, 2008)の情報から1つの遺伝子断片であるTC8082を見出した。一方、NCBIのBlast検索サイトでビートの公開されているESTデータ情報から1つの遺伝子断片であるaccession no. FG344256.1(SF_01-a06 Bv_T1 Beta vulgaris subsp. vulgaris cDNA clone SF_01-a06 reverse, mRNA sequence.)を見出した。両方の配列とも全長の遺伝子を含んでいないが、相同性の解析から、TC8082はN末端配列を、FG344256.1はC末端配列を、それぞれ含むことが予想できた。
オリーブの公開されているESTデータ情報をNCBIのBlast検索サイトでオリーブの公開されているデータ情報から1つの遺伝子断片であるaccession no. GO244188.1(OEAA-070810_Plate3p13.b1 cDNA library from Olive leaves and fruits Olea europaea cDNA, mRNA sequence)を見出した。本配列は全長の遺伝子を含んでいないが、相同性の解析から、C末端配列を含むことが予想できた。
コーヒーの公開されているESTデータ情報をNCBIのBlast検索サイトでオリーブの公開されているデータ情報から1つの遺伝子断片であるaccession no. GT020247.1(TransId-279278 CarCatBudEnri2 Coffea arabica cDNA clone CarCatBudEnri2_59-D09-PAL17d similar to Cytochrome P450 monooxygenase CYP716A12 - Medicago truncatula (Barrel medic), mRNA sequence.)を見出した。本配列は全長の遺伝子を含んでいないが、相同性の解析から、C末端配列を含むことが予想できた。
CYP716A12相同遺伝子の全長配列の取得
実施例14で得た配列のうち、オレアノール酸を含むことが報告されているブドウ(CasadoとHeredia1、J. Exp. Bot.,50, 175-182, 1999)、ビート(Connolly、Phytochemistry, 37, 1994, 1667-1670)、オリーブ(Bianchiら、Phytochemistry, 32, 1992, 49-52)と、ウルソール酸を蓄積することが知られているコーヒー(Jagerら、Molecules 2009, 14, 2016-2031)から全長配列を取得を試みた。
ブドウについては、食料品店で購入した生食用に販売されているブドウ(品種レッドグローブ)の果皮を液体窒素にて破砕した。CTAB(Cetyltrimethylammonium bromide)法(Changら、1993. Plan Mol Biol Rep 11: 113-116)を用いて全RNAを抽出した。全cDNAの合成はスーパースクリプト ファーストストランド システム(インビトロジェン社)を用いて行った。このcDNAを鋳型に用い、(実施例14)のN末端とC末端に相当する箇所をプライマー配列番号27(U910:caccATGGAGGTGTTCTTCCTCTC)と配列番号28(U911:CTATGGTTTGCGAGGATGGA)、で、アニール温度55℃でPCR(30サイクル、タカラバイオ社製 PrimeSTAR HS DNA Polymeraseを使用)によって遺伝子を増幅した。これをpENTRTM/D-TOPOエントリーベクター(Invitrogen社)へクローニングした。得られた8個の独立クローンについてポリヌクレオチド配列を決定した。これにより得られた配列は、配列番号13であり、それから推定されるポリペプチド配列(配列番号5)は、GenBankに登録されているXM_002268434.1のアミノ酸配列に対して100%の同一性を有していた。CYP716A12のアミノ酸配列に対しては75.3%の同一性を有していた。このベクターをpTOPO-PSGrapeとした。
ビートについては、デトロイトダークレッド(タキイ種苗社)の種子を市販の培養土に播種後、一週間後の全草を液体窒素にて破砕した。RNAの抽出はRNeasy(キアゲン社)で行い、全cDNAの合成はスーパースクリプト ファーストストランド システム(インビトロジェン社)を用いて行った。(実施例14)のN末端とC末端に相当する箇所をプライマー配列番号29(U908:caccATGGAGCTCTTCTTCCTTT)と配列番号30(U909:TTAAGCAGCAACAATTTGAGGAT)、で、アニール温度55℃でPCR(30サイクル、タカラバイオ社製 PrimeSTAR HS DNA Polymeraseを使用)によって遺伝子を増幅した。これをpENTRTM/D-TOPOエントリーベクター(Invitrogen社)へクローニングした。得られた8個の独立クローンについてポリヌクレオチド配列を決定した。これにより得られた配列は、配列番号14であり、それから推定されるポリペプチド配列(配列番号6)は、CYP716A12のアミノ酸配列に対しては71.2%の同一性を有していた。このベクターをpTOPO-PSBeetとした。
オリーブについては、品種ネバディロブロンコの葉を液体窒素にて破砕した。RNAの抽出はRNeasy(キアゲン社)で行い、全cDNAの合成はGeneRacerTM キット(インビトロジェン社)を用いて行った。(実施例14)の一部配列からプライマー(配列番号31 U912:ATTCCCCAGGAGCTTTTGAT)とGeneRacerTM キット付属の5’raceプライマーを用いてN末端配列を決定した。N末端とC末端に相当する箇所をプライマー配列番号32(U916:caccATGGAGTTCTTCTATGTCTCTCTTC)と配列番号33(U907: TTAAGCATTAAGGGGATAAAGAC)、で、アニール温度55℃でPCR(30サイクル、タカラバイオ社製 PrimeSTAR HS DNA Polymeraseを使用)によって遺伝子を増幅した。これをpENTRTM/D-TOPOエントリーベクター(Invitrogen社)へクローニングした。得られた8個の独立クローンについてポリヌクレオチド配列を決定した。これにより得られた配列は、配列番号15であり、それから推定されるポリペプチド配列(配列番号7)は、CYP716A12のアミノ酸配列に対しては78.0%の同一性を有していた。このベクターをpTOPO-PSOliveとした。
コーヒーについては、品種ブルーマウンテンの葉を液体窒素にて破砕した。RNAの抽出はRNeasy(キアゲン社)で行い、全cDNAの合成はGeneRacerTM キット(インビトロジェン社)を用いて行った。(実施例14)の一部配列からプライマー(配列番号34 U914:CGCTCACAAACAATCTGGAA)とGeneRacerTM キット付属の5’raceプライマーを用いてN末端配列を決定した。N末端とC末端に相当する箇所をプライマー配列番号35(U917:caccATGGAGTTTTTCTATGTCTCTTTG)と配列番号36(U906: TTAGGCCTTGTGTGGAAAAA)で、アニール温度55℃でPCR(30サイクル、タカラバイオ社製 PrimeSTAR HS DNA Polymeraseを使用)によって遺伝子を増幅した。これをpENTRTM/D-TOPOエントリーベクター(Invitrogen社)へクローニングした。得られた8個の独立クローンについてポリヌクレオチド配列を決定した。これにより得られた配列は、配列番号16であり、それから推定されるポリペプチド配列(配列番号8)は、CYP716A12のアミノ酸配列に対しては71.3%の同一性を有していた。このベクターをpTOPO-PSCoffeeとした。
OSC1とCYP716A12相同遺伝子を同時発現する形質転換酵母の作製
実施例15で作製した、各4つのプラスミド(pTOPO-PSGrape, pTOPO-PSBeet, pTOPO-PSOlive, pTOPO-PSCoffee)とpELC-MCS2-GWとをそれぞれ混合し、Gateway LR Clonase II Enzyme Mix(Invitrogen社)を用いて塩基配列特異的な組み換え反応(attL x attR反応)により、それぞれをpELC-MCS2-GWに移し替えることでLjCPR1とそれぞれの遺伝子の同時発現ベクターpELC-Grape, pELCBeet, pELC-Olive, pELC-Coffeeを得た。実施例8と同様に、酵母INVSc1株をpYES3-ADH-OSC1で形質転換し、続いて、得られた形質転換酵母をpELC-Grape、pELCBeet、pELC-Olive、またはpELC-Coffeeで形質転換した。
形質転換酵母(pYES3-ADH-OSC1とpELC-Grape、pYES3-ADH-OSC1とpELC-Beet、pYES3-ADH-OSC1とpELC-Olive、pYES3-ADH-OSC1とpELC-Coffee)における生成物の確認
pYES3-ADH-OSC1、pELC-CYP716A12の2つのベクターを保持する酵母について、実施例10に示した方法により培養、抽出ならびに、抽出物の分析を行なった。pYES3-ADH-OSC1とpELC-Grape、pYES3-ADH-OSC1とpELC-Beet、pYES3-ADH-OSC1とpELC-Olive、pYES3-ADH-OSC1とpELC-Coffeeの各々2つのベクターを保持する4種の酵母の抽出物(図6〜図9、OSC1/LjCPR1/Grape、OSC1/LjCPR1/Beet、OSC1/LjCPR1/Olive、OSC1/LjCPR1/Coffeeと示したGCチャート)からは、β-アミリン(点線矢印)に加えて、特異的な2本のピーク(ピーク1とピーク2)が検出された。その内、ピーク2のマススペクトルはオレアノール酸の標品のマススペクトルと非常に良く一致し、ピーク2はオレアノール酸に相当することが判明した。ピーク1はマススペクトルパターンから、β-アミリンの28位が水酸化されたエリトリジオールであった。
以上の結果から、オレアノール酸を蓄積するブドウ、ビート、オリーブから得られたCYP716A12の相同遺伝子産物は、β-アミリン合成酵素(OSC1)を発現する酵母において生じるβ-アミリンの28位のメチル基をカルボキシル基に変換し、オレアノール酸を生成し得ることが明らかとなった。その活性はタルウマゴヤシの遺伝子よりもはるかに高活性であることも示すことができた。一方、五環系トリテルペン化合物であるウルソール酸を蓄積するコーヒーでもβ-アミリンの28位のメチル基をカルボキシル基に変換し、オレアノール酸を生成し得ることが明らかとなった。
ブドウ組織での遺伝子発現解析
ブドウ品種「キャンベル ベリーA」の葉と果皮(CTAB)を用いて全RNAを抽出した。cDNAはSuperScript IIIファーストストランド合成システム(インビトロジェン)で合成した。ブドウのオレアノール酸合成酵素遺伝子である配列番号13に基づいてプライマー(CACTTTCTGGCTAGCTTGCCG(配列番号37):U919とCATGAATATCTCATCTTTTG(配列番号38):U920)を作製しRT-PCR(条件:95℃5分、(95℃30秒、55℃30秒、72℃3分)を25回、72℃5分)を行った。ブドウにおいてオレアノール酸は果皮に対して葉ではその含量が1/10以下であることが知られている(GRNCAREVICとRADLER (1971) A review of the surface lipids of grapes and their importance in the drying process. Am. J. Enol. Vitic. 22 : 80-86.)。図10に示すように果皮では葉に対してのオレアノール酸合成酵素遺伝子の発現が高いことがわかった。このようにオレアノール酸含量の高い組織の同定が遺伝子の発現解析で可能であり、オレアノール酸化合物と組成との相関を解析することで、組織含量の増加のみならず、品種評価、QTLなどの遺伝子解析が可能になり、遺伝子発現マーカーを作製することができることが示された。
ウラルカンゾウ由来ルペオール合成酵素(GuLUS)遺伝子cDNAの酵母発現ベクターpYES-ADH-GuLUSの構築
最初に、ウラルカンゾウ由来ルペオール合成酵素(GuLUS1)遺伝子の導入に使用したpYES3/CT(AUR)-Gateway-1ベクターを以下に示す方法により作製した。
pAUR123(TaKaRa社)の5968番から6959番塩基(PADH1からTADH1領域)を配列番号39(GGATGATCCACTAGTGGATCCTCTAGCTCCCTAACATGTAGGTGG)及び配列番号40(TAATGCAGGGCCGCAGGATCCGTGTGGAAGAACGATTACAACAGG)の両プライマーを用いて、KOD-Plus-DNAポリメラーゼ(TOYOBO社)により94℃で2分間処理した後、(94℃20秒間→55℃40秒間→68℃90秒間)×20サイクルからなるPCRを行った。その後、68℃で2分間保温した。また、pYES3/CT(Invitrogen社)の1番から960番塩基(PGAL1からCYC1TT)を除く領域を配列番号41(TGCGGCCCTGCATTAATGAATCGGCCAACG)及び配列番号42(ACTAGTGGATCATCCCCACGCGCCCTGTAG)の両プライマーを用いてKOD-Plus- DNAポリメラーゼ(TOYOBO社)により前記と同様にPCRを行った。両PCR産物をIn-Fusion Dry-Down PCR Cloning Kit(clontech社)を用いて結合し、pYES3/CT(AUR)ベクターを得た。得られたpYES3/CT(AUR)ベクターを制限酵素SmaIで切断し、Gateway Vector Conversion System Reading frame B (Invitrogen社)と連結することでpYES3/CT(AUR)-Gateway-1ベクターを構築した。
次に、ウラルカンゾウ(G.uralensis)のストロンからトータルRNAを調製した。得られたトータルRNAを1μg用いて、SMART RACE cDNA amplification kit (Clontech社)を用いて添付のプロトコルに従いファーストストランドcDNA合成を行った。得られたファーストストランドcDNA各2μlを鋳型として、スペインカンゾウから単離されていたルペオール合成酵素遺伝子のmRNA配列(AB116228、Hayashiら2004 Biol. Pharm. Bull. 27: 1086-1092)の5’の非翻訳領域および翻訳終止コドンを含む箇所に設計したPCRプライマー配列番号43(5’側=CACCGTACTACTAGGCGAGGCAATTAAAGCG)と配列番号44(3’側=TGGTCAATAACTGTGAGCACACAAGACT)を用いて、アニール温度53℃でPCR(30サイクル、TOYOBO社製 KOD plus ver.2 polymeraseを使用)を行った。なお、pENTRTM/D-TOPOエントリーベクター(Invitrogen社)へのクローニングの際に必要であることから、配列番号追加1のプライマーには、5’末端に4塩基(cacc)が人工的に付加されている。PCRの結果増幅された約2.3kbのDNA断片をpENTRTM/D-TOPOエントリーベクターにクローニング(エントリークローンの作製)し、得られた3個の独立クローンについてポリヌクレオチド配列を決定した。これにより得られた配列は、配列番号45であり、それから推定されるポリペプチド配列(配列番号46)は、スペインカンゾウのルペオール合成酵素のアミノ酸配列に対して99%の同一性を有していた。
ウラルカンゾウ由来ルペオール合成酵素(GuLUS)遺伝子を有するプラスミド(エントリークローン)とpYES3/CT(AUR)-Gateway-1ベクターとを混合し、Gateway LR Clonase II Enzyme Mix(Invitrogen社)を用いて塩基配列特異的な組み換え反応(attL x attR反応)により、配列番号追加3で示すDNA断片をpYES3/CT(AUR)-Gateway-1に移し替えることでウラルカンゾウGuLUS遺伝子酵母発現ベクターpYES3-ADH-LUSを得た。
GuLUSとCYP716A12、GuLUSとブドウ、ビート、オリーブ、コーヒーから得られたCYP716A12の相同遺伝子を同時発現する形質転換酵母の作製と形質転換酵母(pYES3-ADH-LUSとpELC-CYP716A12, pELC-Grape, pELC-Beet, pELC-Olive, pELC-Coffee)における生成物の確認
実施例8と同様に、酵母INVSc1株をpYES3-ADH-LUSで形質転換し、続いて、得られた形質転換酵母をpELC-CYP716A12, pELC-Grape, pELC-Beet, pELC-Olive, pELC-Coffeeで形質転換し、GuLUSとCYP716A12、GuLUSとブドウ、ビート、オリーブ、コーヒーから得られたCYP716A12の相同遺伝子を同時発現する形質転換酵母を得た。これらの2つのベクターを保持する酵母について、実施例10に示した方法により培養、抽出ならびに、抽出物の分析を行なった。pYES3-ADH-LUS及びpELC-CYP716A12の2つのベクターを保持する酵母の抽出物(図12、LUS/CPR/CYP716A12と示したGCチャート)からは、ルペオール(点線矢印)に加えて、特異的な2本のピーク(ピーク1、ピーク2)が検出された。その内、ピーク1のマススペクトルはベツリンの標品のマススペクトルと非常に良く一致した。これにより、ピーク1は、ベツリンに相当することが判明した。また、ピーク2のマススペクトルはベツリン酸の標品のマススペクトルと非常に良く一致した。これにより、ピーク2は、ベツリン酸に相当することが判明した。
一方、pYES3-ADH-LUS及びpESC-LjCPR1の2つのベクターを保持する酵母の抽出物(図12、LUS/CPRと示したGCチャート)からはルペオール(点線矢印)は検出されたがピーク1、ピーク2に相当する化合物は検出されなかった。同様にタルウマゴヤシのCYP716A12の代わりにブドウ(図13)、ビート(図14)、オリーブ(図15)、コーヒー(図16)から得られたCYP716A12の相同遺伝子でもベツリン(ピーク1)とベツリン酸(ピーク2)が得られた。以上の結果から、CYP716A12および相同遺伝子は、ルペオール合成酵素(LUS)を発現する酵母において生じるルペオールの28位のメチル基をカルボキシル基に変換し、ベツリン酸を生成し得ることが明らかとなった。
オリーブ由来αアミリン合成酵素(OeOEA)遺伝子cDNAの酵母発現ベクターpYES-ADH-OeOEAの構築
αアミリンのみを生成する遺伝子は知られていない。しかし我々はSaimaruらの報告(Chem. Pharm. Bull. 55 :784-788 (2007))から、当該遺伝子は、主にαアミリンを生成することを読み取り本遺伝子を使うこととした。(実施例15)で得られた得られたファーストストランドcDNAを鋳型として、同論文からN末端とC末端に相当する箇所をプライマー配列番号47(U921:caccATGTGGAAGCTTAAGATTGCTG)と配列番号48(U922: TTACAGGCTTTGAGATGACCA)、で、アニール温度55℃でPCR(30サイクル、タカラバイオ社製 PrimeSTAR HS DNA Polymeraseを使用)によって遺伝子を増幅した。これをpENTRTM/D-TOPOエントリーベクター(Invitrogen社)へクローニングした。得られた8個の独立クローンについてポリヌクレオチド配列を決定した。これにより得られた配列は、配列番号49であり、それから推定されるポリペプチド配列(配列番号50)は、同論文のアミノ酸配列に対しては99.7%の同一性を有していた。
オリーブ由来αアミリン合成酵素(OeOEA)遺伝子を有するプラスミド(エントリークローン)とpYES3/CT(AUR)-Gateway-1ベクターとを混合し、Gateway LR Clonase II Enzyme Mix(Invitrogen社)を用いて塩基配列特異的な組み換え反応(attL x attR反応)により、配列番号追加3で示すDNA断片をpYES3/CT(AUR)-Gateway-1に移し替えることでオリーブOeOEA遺伝子酵母発現ベクターpYES3-ADH-OEAを得た。
OeOEAとCYP716A12、GuLUSとブドウ、ビート、オリーブ、コーヒーから得られたCYP716A12の相同遺伝子を同時発現する形質転換酵母の作製と形質転換酵母(pYES3-ADH-OEAとpELC-CYP716A12, pELC-Grape, pELCBeet, pELC-Olive, pELC-Coffee)における生成物の確認
実施例8と同様に、酵母INVSc1株をpYES3-ADH-OEA, pELC-Grape, pELC-Beet, pELC-Olive, pELC-Coffeeで形質転換し、続いて、得られた形質転換酵母をpELC-CYP716A12で形質転換し、OeOEAとCYP716A12、GuLUSとブドウ、ビート、オリーブ、コーヒーから得られたCYP716A12の相同遺伝子を同時発現する形質転換酵母を得た。これらの2つのベクターを保持する酵母について、実施例10に示した方法により培養、抽出ならびに、抽出物の分析を行なった。pYES-ADH-OeOEA及びpELC-CYP716A12の2つのベクターを保持する酵母の抽出物(図18、CPR/aAS/CYP716A12と示したGCチャート)からは、αアミリン(点線矢印)に加えて、特異的な2本のピーク(ピーク1、ピーク2)が検出された。その内、ピーク1のマススペクトルはウバオールの標品のマススペクトルと非常に良く一致した。これにより、ピーク1は、ウバオールに相当することが判明した。また、ピーク2のマススペクトルはウルソール酸の標品のマススペクトルと非常に良く一致した。これにより、ピーク2は、ウルソール酸に相当することが判明した。
一方、pYES-ADH-OeOEA及びpESC-LjCPR1の2つのベクターを保持する酵母の抽出物(図12、CPR/aASと示したGCチャート)からはαアミリン(点線矢印)は検出されたがピーク1、ピーク2に相当する化合物は検出されなかった。同様にタルウマゴヤシのCYP716A12の代わりにブドウ(図19)、ビート(図20)、オリーブ(図21)、コーヒー(図22)から得られたCYP716A12の相同遺伝子でもウバオール(ピーク1)とウルソール酸(ピーク2)が得られた。以上の結果から、CYP716A12および相同遺伝子は、αアミリン合成酵素(aAS)を発現する酵母において生じるαアミリンの28位のメチル基をカルボキシル基に変換し、ウルソール酸を生成し得ることが明らかとなった。
比較例1
ブドウからのオレアノール酸合成遺伝子候補の特定
実施例18のとおりブドウではオレアノール酸は果皮に多く含まれている。果皮のESTデータベースとして前述のDCFI(Release 7.0 (April 17, 2010))にはGreen Grape Skin Triplex2 Library (326 EST) 、Ripe Grape Skin Triplex2 Library (588 EST)、Green Grape Berry Skins Lambda Triplex2 Library (226 EST)、Ripe Grape Berry Skins Lambda Triplex2 Library (79 EST)が登録されている。この中からはP450として考えられる遺伝子断片、さらにはCYP716A16に相同な遺伝子は見出すことはできなかった。
本発明の28位酸化酵素及びそれをコードする遺伝子を用いる、薬理活性のある五環系トリテルペン化合物の生産方法は、天然からの抽出法に比べて大量生産を可能にするため有用である。
配列番号17〜44、47、48: プライマー

Claims (9)

  1. 形質転換体の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、および基質としての五環系トリテルペンまたはその誘導体を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンまたはその誘導体を生成、蓄積させ、該媒体から28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンまたはその誘導体を採取する、28位にメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンまたはその誘導体の製造法であって、
    該形質転換体が、以下の(a)〜(e):
    (a) 配列番号2〜8のいずれかに示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA;
    (b) 配列番号2〜8のいずれかに示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNA;
    (c) 配列番号2〜8のいずれかに示すアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を有するタンパク質をコードするP450のDNA;
    (d) 配列番号10〜16のいずれかに示す塩基配列を含むDNA;および
    (e) 配列番号10〜16のいずれかに示す塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列を含み、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を有するタンパク質をコードするP450のDNA、
    からなる群から選択されるDNAを含有する組換え体DNAを含む形質転換体であり、
    該誘導体は、五環系トリテルペン化合物の、1位、2位、11位、12位、29位および30位から選択される1つ以上の水素原子が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水酸基、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ホルミル、アセチル、プロピオニル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、アミノ基、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、アミド基、アセタミド、オキソ基、シアノ基、ニトロ基、メチルチオ、エチルチオ、メシルおよび/またはエチルスルホニルで置換されており、ならびに/あるいは28位カルボキシル基がアルキルエステル化またはアルキル−もしくはジアルキル−アミド化されており、1位、2位、11位、12位、29位および30位が水酸基で置換されている場合と28位がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基である場合、該水酸基、該ヒドロキシメチル基および該カルボキシル基から選択される1つ以上にブドウ糖が付加されていてもよい、製造法。
  2. 形質転換体が微生物または植物を宿主として得られる形質転換体である、請求項1記載の製造法。
  3. 微生物が酵母である、請求項2記載の製造法。
  4. 培養物の処理物が、培養物の濃縮物、培養物の乾燥物、培養物を遠心分離して得られる菌体、該菌体の乾燥物、該菌体の凍結乾燥物、該菌体の界面活性剤処理物、該菌体の超音波処理物、該菌体の機械的摩砕処理物、該菌体の溶媒処理物、該菌体の酵素処理物、該菌体の蛋白質分画物、該菌体の固定化物あるいは該菌体より抽出して得られる酵素標品であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製造法。
  5. タンパク質および基質としての五環系トリテルペンまたはその誘導体を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンまたはその誘導体を生成、蓄積させ、該媒体から28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンまたはその誘導体を採取する、28位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を有する五環系トリテルペンまたはその誘導体の製造法であって、
    該タンパク質が、以下の(a)〜(c):
    (a) 配列番号2〜8のいずれかに示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (b) 配列番号2〜8のいずれかに示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を有するタンパク質;および
    (c) 配列番号2〜8のいずれかに示すアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換する活性を有するタンパク質、
    からなる群から選択されるタンパク質であり、
    該誘導体は、五環系トリテルペン化合物の、1位、2位、11位、12位、29位および30位から選択される1つ以上の水素原子が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水酸基、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ホルミル、アセチル、プロピオニル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、アミノ基、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、アミド基、アセタミド、オキソ基、シアノ基、ニトロ基、メチルチオ、エチルチオ、メシルおよび/またはエチルスルホニルで置換されており、ならびに/あるいは28位カルボキシル基がアルキルエステル化またはアルキル−もしくはジアルキル−アミド化されており、1位、2位、11位、12位、29位および30位が水酸基で置換されている場合と28位がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基である場合、該水酸基、該ヒドロキシメチル基および該カルボキシル基から選択される1つ以上にブドウ糖が付加されていてもよい、製造法。
  6. 基質としての五環系トリテルペンが、βアミリン、αアミリン又はルペオールである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造法。
  7. 以下の(a)〜(e)からなる群から選択されるDNA:
    (a) 配列番号6〜8のいずれかに示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA;
    (b) 配列番号6〜8のいずれかに示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換するタルウマゴヤシの遺伝子よりも高い活性を有するタンパク質をコードするDNA;
    (c) 配列番号6〜8のいずれかに示すアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換するタルウマゴヤシの遺伝子よりも高い活性を有するタンパク質をコードするDNA;
    (d) 配列番号14〜16のいずれかに示す塩基配列からなるDNA;および
    (e) 配列番号14〜16のいずれかに示す塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換するタルウマゴヤシの遺伝子よりも高い活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  8. 以下の(a)〜(c)からなる群から選択されるタンパク質:
    (a) 配列番号6〜8のいずれかに示すアミノ酸配列からなるタンパク質;
    (b) 配列番号6〜8のいずれかに示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換するタルウマゴヤシの遺伝子よりも高い活性を有するタンパク質;および
    (c) 配列番号6〜8のいずれかに示すアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、五環系トリテルペンの28位のメチル基をヒドロキシメチル基またはカルボキシル基に変換するタルウマゴヤシの遺伝子よりも高い活性を有するタンパク質。
  9. 請求項8に記載のタンパク質を含む、五環系トリテルペンの28位のメチル基のヒドロキシメチル基またはカルボキシル基への変換用組成物。
JP2012531963A 2010-09-01 2011-09-01 28位がヒドロキシメチル基またはカルボキシル基である五環系トリテルペン化合物の製造方法 Active JP6018915B2 (ja)

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