JP6018645B2 - 測定装置 - Google Patents

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Description

本開示は、測定装置に関し、特に、サンプル表面の仕事関数特性を測定するための装置及び関連する方法に関する。
プローブと表面との接触電位差を測定することができる測定デバイスが公知である。例は、材料の特性を調べるのに用いられる非接触非破壊測定デバイスである、ケルビンプローブである。ケルビンプローブは、一般に、試験片と標準材料(通常は振動チップ)との仕事関数差を測定するために用いられる。仕事関数は、表面状態の敏感な指標であり、吸着又は蒸着した層、表面構成、表面帯電、酸化物層欠陥、並びに表面及びバルク汚染、並びに多くの他の因子の影響を受ける。仕事関数は、真空状態で電子が材料の境界の外にただ存在できるように電子を材料から取り出すために材料の表面に適用されなければならない最小量のエネルギーとして定義することができる材料特性である。
表面の仕事関数を測定するための技術は、2つの導電性材料を電気的に接触させることと、1つの材料から他の材料への電荷の流れを定量することを含む。導電性材料のうちの一方は、通常は、仕事関数に関する文献値を有する標準材料であり、他方の導電性材料は、この標準材料に対して測定されることを必要とする仕事関数の値を有する。
異なる仕事関数の値を有する2つの導電性材料が互いに電気的に接続されるときに、より低い仕事関数を有する材料中の電子がより高い仕事関数を有する材料に流れる。導電性材料が平行板コンデンサの板を形成するように組み立てられる場合、これらの板上に等しい反対の表面電荷が生じる。
コンデンサの板間に発生した電位差は接触電位と呼ばれ、これは、板上の表面電荷が消失するまでコンデンサに外部バッキング電位(backing potential)を印加することによって測定されることがある。この点で、一般にヌル出力と呼ばれるバッキング電位は接触電位差(contact potential difference:CPD)に等しい。これは、CPDを測定するための「ヌルに基づく」技術と呼ぶことができる。CPDは、標準材料と試験片表面との接触電位の測定される変化として定義することができる。
表面を分析するのに光電効果を利用することも公知である。この効果は、光電子分光法としても知られている光電子放出分光法を含む技術の基礎である。電子の光電子放出に依拠する技術は、本明細書では「PE」(photo emission(光電子放出))技術と称される。この技術によれば、通常は紫外(UV)光源からの光が金属又は半導体などの(導電性)材料上に入射する。光の入射粒子(フォトン)は、電子が材料の表面付近から出ていくことを可能にするのに十分なエネルギーを有する。電子が材料から出ていくのに必要なエネルギーは(光電)仕事関数と呼ばれる。放出された電子は、材料の特徴を判定するためにエネルギー又は角度によって検出及び分解(resolve)することができる。
はじき出された電子を例えば材料の表面付近に存在する金属電極によって検出できる場合、入ってくるフォトンのエネルギーを変化させることによって材料の仕事関数を求めることができる。不十分なエネルギーを有するフォトンは電子を遊離させず、一方、十分なだけのエネルギーのあるフォトンはいくつかの電子を遊離させ、仕事関数よりもはるかに多くのエネルギーのあるフォトンは多くの電子を遊離させるであろう。この技術は、仕事関数の値を直接もたらすという点で絶対技術と呼ばれる。現在のPE機器は、通常は、5〜10分の測定持続時間で約0.050〜0.100eVの分解能に分解することができる。
本開示の第1の態様によれば、プローブと表面との接触電位差を測定することができる測定デバイスと、使用中に表面上に提供される又は表面を形成するサンプルからの光電子放出をトリガするための放射を放出するように構成される光源と、を備える測定装置であって、プローブ及び表面が気体環境に露出又は収容されることを特徴とする測定装置が提供される。
随意的に、気体環境は空気を含む。
随意的に、装置は、プローブ及び/又は表面を収容するハウジングをさらに備え、ハウジング内の環境は、制御された相対湿度を有するガス又は空気、若しくは窒素などの制御されたガスを有する気体環境を提供するように制御される。
随意的に、測定デバイスはケルビンプローブを含む。
随意的に、装置は、プローブに印加される電位を或る電圧範囲を通して変化させる手段をさらに備える。
随意的に、光源から放出される放射は一定の強度(DC)である。
随意的に、光源から放出される放射は変調される(ACである)。
随意的に、装置は光チョッパを備える。
随意的に、ピークツーピーク電流データが、選択的にウィンドウを平均する様態で得られる。
随意的に、実効ノイズを低減させるのに位相情報を用いることができる。
随意的に、CPD電圧がオフヌル線形外挿技術によって求められる。
随意的に、プローブは、相対仕事関数測定を行うためにプローブ及び表面が表面に垂直な方向の動き成分をもって互いに対して発振する第1のモードと、検出された光電子放出から導出される絶対仕事関数測定を行うためにプローブが表面に垂直な方向に表面と固定関係にある、連続測定のための第2のモードで選択的に動作可能である。
本開示の第2の態様によれば、プローブと表面との接触電位差を測定することができる測定デバイスと、使用中に表面上に提供される又は表面を形成するサンプルからの光電子放出をトリガするための放射を放出するように構成される光源と、を備える測定装置であって、プローブが、相対仕事関数測定を行うためにプローブ及び表面が表面に垂直な方向の動き成分をもって互いに対して発振する第1のモードと、検出された光電子放出から導出される絶対仕事関数測定を行うためにプローブが表面に垂直な方向に表面と固定関係にある、連続測定のための第2のモードで選択的に動作可能であることを特徴とする測定装置が提供される。
随意的に、装置は、第1のモード及び第2のモードで同時に又は準同時に測定を行うように構成される。
「準同時に」という用語は、第1の周波数を有する1つの動作モードの信号を生成すること及び第2の異なる周波数を有する別の動作モードの信号を生成することを指す。これは、例えば、接触電位差に基づく相対仕事関数測定のための異なる周波数でチップを振動させながら、光電子放出に基づく絶対仕事関数測定のための第1の周波数で光をチョッピングすることによって達成することができる。連続してより高い周波数を用いることによって、この準同時の様態で複数のモードをエンコードすることができる。
随意的に、光源は紫外広帯域光源である。
随意的に、光源は、1つ以上の発光ダイオードを含む。
随意的に、複数のLEDを、それらの強度特徴、位相特徴、及び変調周波数特徴のうちの1つ又は複数に関して個々に自動的に又は選択的に制御することができる。
随意的に、装置は、光源から放出される放射をフィルタする波長セレクタを備える。
随意的に、装置は、可視範囲及び/又は赤外範囲内の放射を放出する光源を備える。
随意的に、光源は、表面光起電力技術を行うための単一周波数の光を放出するように構成される。代替的に広帯域光源を用いることができる可能性がある。その場合、広帯域光源は、どのような形態のフィルタリングもなしに使用することができる。
随意的に、表面光起電力分光法を行うために、光源から放出される光の周波数を変化させてもよい。代替的に広帯域光源を用いることができる可能性がある。その場合、広帯域光源は、どのような形態のフィルタリングもなしに使用することができる。随意的に、装置は、サンプルの表面にわたるパラメータをマッピングするためにサンプルをプローブチップに対して走査するための機構を備える。
随意的に、装置は、チョッパを有するUV光源及びチョッパを有する可視/赤外光源を備え、2つの異なる光源を用いる測定を同時又は準同時の様態で行うことができるようにUV光源のチョッピング周波数を可視/赤外光源のチョッピング周波数とは異なるように選択することができる。
随意的に、装置は、(バルク)金属、金属合金半導体、絶縁体、液体、ポリマー、複合材、導電性ポリマー、生物学的組織、薄膜を有する又は有さない粉体又は液体表面を含むサンプルと共に用いることができる。
随意的に、プローブのチップは、円形の幾何学的形状を有し、サンプル表面上に入射する光の量を反射によって増大させるために除去される1つ以上の区域を備える。
随意的に、装置は、プローブチップが正電圧に一定に保たれ、且つ表面と固定関係に保たれ、フォトンのエネルギーが走査され、光電子放出電流がDCモードか又はACモードのいずれかで検出され、DOS(表面状態密度)情報が積分電流を微分することによって得られる、表面状態密度(DOS)分光法を行うように構成される。
随意的に、装置は、フォトンエネルギーが結果的に光電子放出を引き起こすエネルギーに一定に保たれ、且つプローブチップが表面と固定関係に保たれ、チップ電位が或る電圧範囲を通して走査され、光電子放出電流がDCモードか又はACモードのいずれかで検出され、DOS情報が積分電流を微分することによって得られる、表面状態密度(DOS)分光法を行うように構成される。
本開示の第3の態様によれば、プローブと表面との接触電位差を測定するステップと、表面上に提供される又は表面を形成するサンプルからの光電子放出をトリガするための放射を放出するステップとを含む、表面を分析する方法であって、プローブ及び表面が気体環境に露出又は収容されることを特徴とする方法が提供される。
本開示はまた、装置の種々の構成及び能力並びにその使用に対応する方法を含むことも理解されるであろう。これらの方法は、前述の装置の特徴から及び添付の図面に伴う以下の説明から導出することができる。
本開示の第4の態様によれば、表面を分析する方法であって、プローブと表面との接触電位差を測定するステップと、表面上に提供される又は表面を形成するサンプルからの光電子放出をトリガするために放射を放出するステップと、相対仕事関数測定を行うためにプローブ及び表面が表面に垂直な方向の動き成分をもって互いに対して発振する第1のモードと、検出された光電子放出から導出される絶対仕事関数測定を行うためにプローブが表面に垂直な方向に表面と固定関係にある、連続測定のための第2のモードで装置を選択的に動作させるステップと、を含む方法が提供される。
本開示の第5の態様によれば、コンピュータ上で実行するときにコンピュータを前述の装置及び方法に関する制御機構として機能させる命令でエンコードされるコンピュータプログラム製品が提供される。
コンピュータプログラム製品は、1つ以上の命令又はコードとしてコンピュータ可読媒体上に格納されてもよく、又は伝送されてもよい。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体と、1つの場所から別の場所へのコンピュータプログラムの伝達を容易にする任意の媒体を含む通信媒体との両方を含む。記憶媒体は、コンピュータによってアクセス可能な任意の利用可能な媒体であってもよい。単なる例として、こうしたコンピュータ可読媒体は、命令又はデータ構造の形態の所望のプログラムコードを搬送又は記憶するのに用いることができ、且つコンピュータによってアクセス可能な、RAM、ROM、EEPROM、CD−ROM、又は他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、又は他の磁気記憶装置、又はあらゆる他の媒体を含むことができる。また、あらゆる接続が、厳密にはコンピュータ可読媒体と呼ばれる。例えば、ソフトウェアが同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者線(DSL)、若しくは赤外線、無線、及びマイクロ波などの無線技術を用いてウェブサイト、サーバ、又は他のリモート光源から伝送される場合、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL、若しくは赤外線、無線、及びマイクロ波などの無線技術が媒体の定義に含まれる。本明細書で用いられる場合のディスク(disk及びdisc)は、コンパクト・ディスク(disc)(CD)、レーザディスク(disc)、光学ディスク(disc)、デジタルバーサタイルディスク(disc)(DVD)、フロッピー(登録商標)ディスク(disk)、及びブルーレイディスク(disc)を含み、ディスク(disk)は普通はデータを磁気的に再生するが、ディスク(disc)はデータをレーザで光学的に再生する。上記の組合せもコンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるであろう。コンピュータプログラム製品のコンピュータ可読媒体に関連する命令又はコードは、コンピュータによって、例えば、1つ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)、汎用マイクロプロセッサ、ASIC、FPGA、又は他の等価な集積論理回路又はディスクリート論理回路などの1つ以上のプロセッサによって実行されてもよい。
本発明を、付属の図面を参照しながら単なる例としてここで説明する。
既存の走査型ケルビンプローブ構成の概略図である。 類似のシステムの代替的な概略図である。 超高真空(UHV)PE測定システムの例を示す図である。 図3のシステムで用いられる場合のUHVケルビンプローブヘッドの詳細を示す図である。 さらに例示的なUHV PEシステムを示す図である。 光電子放出の種々の選択される態様を示す説明図である。 図6の説明図に示された構成のサンプル及び検出器電極に関する電子エネルギーダイアグラムを示す図である。 図6及び図7に示されたタイプの構成に関する入ってくるフォトンのエネルギーの関数としての検出器電極における光電子放出電流の平方根を示す金属に関する理想空気光電子放出特徴を示す図である。 光電子放出測定への「オフ−ヌル」手法の金属に関する空気光電子放出特徴を示す図である。 光電子放出測定モードでの作動のためのチップ及び接触電位測定装置を備えるデュアルモード検出システムを示す図である。 図10のシステムで用いられる光源の態様を示す図であり、図11Aは、モノクロメータ型波長セレクタに合焦される広帯域UV光源を示し、図11Bは、サンプルが光源ハウジングの中に収容される類似の構成を示し、図11Cは、光源のために必要とされる又は用いられる雰囲気とは独立してサンプル雰囲気が制御され、光を透過させるために筐体の末端部に適切なウィンドウが設けられる構成を示す。 図10のシステムで用いられる光源の代替的な実施形態を示す図であり、図12Aは、フィルタ型波長セレクタに合焦される広帯域UV光源を示し、図12Bは、サンプルが光源ハウジング内に存在する類似の構成を示し、図12Cは、光源のために必要とされる又は用いられる雰囲気とは独立してサンプル雰囲気が制御され、光を透過させるために筐体の末端部に適切なウィンドウが設けられる構成を示す。 ディスクリートの回転干渉フィルタの例を示す図である。 使用できる代替的なタイプのフィルタを示す図である。 使用できる代替的なタイプのフィルタを示す図である。 複数の光源を備える実施形態を示す図である。 デュアル光源を備える代替的な実施形態を示す図である。 複合型のUV光及び可視/IR光注入システムを装備するケルビンプローブシステムの種々の異なる検出モードに関する周波数分離特徴を示す図である。 空気光電子放出に関する検出器電極で適用される利得と、チップとサンプルとの両方の電圧(バイアス)とを示す図である。 DC UV光ビームを照射されているサンプルの真上に吊るされる振動ケルビンプローブに関するほぼ2周期の出力信号を示す図である。 本発明に係る制御システム全体の概略図である。 理想清浄金属に関する真空準位、光電仕事関数、及びフェルミ準位の定義を示す図である。 理想清浄金属サンプルに関する光電子放出を示す図である。 理想清浄半導体に関するエネルギーダイアグラムを示す図である。 酸化物コーティングを有し且つ界面電荷を有さない半導体に関するエネルギーダイアグラムを示す図である。 酸化物コーティング及び負の界面電荷を有する半導体に関するエネルギーダイアグラムを示す図である。 照射エネルギーが半導体のバンドギャップエネルギーよりも大きいか又はこれに等しい状態の、照射下の半導体に関するエネルギーダイアグラムを示す図である。 照射されない半導体PN接合の接触電位差測定の態様を示すエネルギーダイアグラムを示す図である。 照射エネルギーが半導体のバンドギャップエネルギーよりも大きいか又はこれに等しい状態の、照射される半導体PN接合の表面電圧分光法を示す図である。 本発明の一実施形態に係る測定装置の態様を示す図である。 種々の測定モードのまとめを示す図である。 種々の測定モードのまとめを示す図である。
ケルビンプローブシステムの概要が図1に示される。ホストコンピュータ2000が、データバス(例:XT/AT)を介して種々のサブシステム(2002、2004、2006)と通信する。デジタル振動子2002が、ボイスコイル2008の周波数、振幅、及びプローブトリガ信号2003を設定する。ボイスコイル2008は、I/V変換器及びチップ2009の振動を駆動する。データ収集システム(data acquisition system:DAS)2004(例えば、ナショナルインスツルメンツPCI−1200ボード又はPCI6025Eナショナルインスツルメンツカードに基づく)が、ピークツーピーク(ptp)出力信号Vptpをバッキング電位Vの関数として測定し、サンプルの平行移動(x、y、及び粗くz)がパラレルポートインターフェース2006を介して制御され、これはサンプルステージ2012を動かすステージドライバ2010に制御信号を送信する。
ケルビンプローブシステムの概要が図1に示される。ホストコンピュータ2000が、データバス2001(例:XT/AT)を介して種々のサブシステム(2002、2004、2006)と通信する。デジタル振動子2002が、ボイスコイル2008の周波数、振幅、及びプローブトリガ信号2003を設定する。ボイスコイル2008は、I/V変換器及びチップ2009の振動を駆動する。データ収集システム(data acquisition system:DAS)2004(例えば、ナショナルインスツルメンツPCI−1200ボード又はPCI6025Eナショナルインスツルメンツカードに基づく)が、ピークツーピーク(ptp)出力信号Vptpをバッキング電位Vbの関数として測定し、サンプルの平行移動(x、y、及び粗くz)がパラレルポートインターフェース2006を介して制御され、これはサンプルステージ2012を動かすステージドライバ2010に制御信号を送信する。
図2は、同様の構成部品が同様の参照番号で示される類似のシステムの代替的な概略図である。プローブ信号の増幅2016も示される(これは、図1の構成にも存在していてもよい)。
図3は、ケルビンプローブ3010が光電分光システムに関する検出器として超高真空(ultra high vacuum:UHV)環境で用いられる、PE測定システムの例を示す。ホストコンピュータ3000が、データバス3008(例:XT/AT)を介して種々のサブシステム(3002、3004、3006)と通信する。光源3008のための電源装置3002が提供される。ケルビンプローブ3010は、デジタル振動子3004によって制御され、双方向データ伝送のためにデータ収集システム及びDAC3006と接続される。サンプル、サンプルホルダ、及びサンプルヒータ(組立体3012)が超高真空(UHV)筐体3014に内蔵される。PE測定を行うための他の計器は、イオンゲージ3016、コールドフィンガ3018、及び質量分析計3020を含む。
図4は、図3のシステムで用いられる場合のケルビンプローブ3010のためのUHVプローブヘッドの或るさらなる詳細を示す。UHVケルビンプローブ4000は、2/3/4インチのフランジ4004を介してUHVチャンバ4002上に設置される。同じく設置されるのは、(x,y,z)ステージ(組立体4006)上のサンプルホルダ/サンプルヒータである。UHVチャンバ4002は、石英ビューポートを介してサンプルに照射するQTHランプなどのPE源を装備する。UHVケルビンプローブ4000は、ベローズ及びアクチュエータを備える100mm手動トランスレータ4008上に設置される。UHVチャンバのベース圧力は<1E−10mBarであり、残留ガス組成は、H及びH(80%)、CO(5%)、CO(5%)、及び種々雑多な他のガス(10%)であろう。0〜300amu質量分析計を用いて質量スペクトルが監視される。システム圧力はヌードイオンゲージを用いて監視される。
このシステムは、種々の金属サンプル上に堆積されるCs層に関する光電子放出を監視するのに用いることができる。Vの仕事関数が低い<2.0eVので、可視光を用いることができる。代替的に、4.8eVを下回る仕事関数のサンプルに関して水銀光源を使用することができる。
図5はさらなる例示的なUHVシステムを示す。このシステムは、サンプル自体の仕事関数を測定するのではなくケルビンプローブのチップの仕事関数を測定するのに用いられる。当業者にはシステムがどのように機能するかが図から分かるであろう。システムは、以下の構成部品、すなわち、四重極質量分析計5000、電子ビーム蒸着装置5002、パルスノズル弁5004、Ar、O、H、CO、Nの導入用のガス導入システム5006、高速導入ロードロック5008、312.6nm帯域通過フィルタ5012及び光学レール5014を有するHg、Zn、Cdスペクトルランプ5010、イオンゲージ5016、ホストコンピュータ5018、及びX−Y−Z平行移動ステージ5020を備える。サンプル5022は、プローブ5022によって検出されるように構成され及び移動可能である。プローブ5022は、I−V変換器及び前置増幅器を有するPEプローブ、又はプローブ振動子、前置増幅器、AD変換器、DA変換器を有する(走査型)ケルビンプローブとすることができる。
図5はさらなる例示的なUHVシステムを示す。このシステムは、サンプル自体の仕事関数を測定するのではなくケルビンプローブのチップの仕事関数を測定するのに用いられる。当業者にはシステムがどのように機能するかが図から分かるであろう。システムは、以下の構成部品、すなわち、四重極質量分析計5000、電子ビーム蒸着装置5002、パルスノズル弁5004、Ar、O2、H2、CO2、N2の導入用のガス導入システム5006、高速導入ロードロック5008、312.6nm帯域通過フィルタ5012及び光学レール5014を有するHg、Zn、Cdスペクトルランプ5010、イオンゲージ5016、ホストコンピュータ5018、及びX−Y−Z平行移動ステージ5020を備える。サンプル5021は、プローブ5022によって検出されるように構成され及び移動可能である。プローブ5022は、I−V変換器及び前置増幅器を有するPEプローブ、又はプローブ振動子、前置増幅器、AD変換器、DA変換器を有する(走査型)ケルビンプローブとすることができる。
サンプル100及びチップ102は真空中にあってもよく、この場合、それらは真空にされたハウジング内に収容される。真空の品質は決して完璧であるはずがない。本明細書で用いられる場合の「真空」は、専用の真空ポンプ又はシステムが提供されるときにはいつでも存在する。真空は、或る実施形態では、例えば10−7Pa以下の圧力を有し得る所謂超高真空(UHV)であってもよいが、他のあまり完全でない真空がこの文脈での「真空」の意味の範疇に入る。
代替的に、サンプル100及びチップ102は、気体環境に露出又は収容されてもよい。気体環境は、専用の真空ポンプ又はシステムが存在しないか又はスイッチがオフに切り換えられるときにはいつでも存在する。気体環境は、大気圧に等しい、大気圧よりも低い、又は大気圧よりも高いことがある周囲雰囲気(空気)であってもよく、若しくは制御された相対湿度を有するガス、又はNなどの制御されたガスであってもよい。これらは単なる例として言及される。用いられる気体環境のタイプは、関係する特定の用途の要件に依存するであろう。
空気の特別な場合は、必要な雰囲気を提供するのに別個のハウジングを必要としないが、実際には、ハウジングは、サンプルを望ましくない電磁干渉又は他の信号から遮蔽するために設けられてもよい。一般に、制御されたガス又は制御された相対湿度を有するガスが用いられる場合、この環境を提供するためにサンプル100及びチップ102のためのハウジングが設けられるであろう。しかしいくつかの場合には、別個の筐体及び筐体の環境を操作するための関連する制御機構を設ける必要なしにチップとサンプルとの間の雰囲気を全体的に制御できるように、HVAC又は他の環境制御を用いて機器を含む部屋の環境を制御することが可能であろう。
ビーム「A」の場合、フォトンエネルギーはサンプルの仕事関数Φよりも小さく、どの励起した電子も材料から離れるのに十分なエネルギーを有さず、そのためケルビンプローブチップ102で検出される電流への寄与は存在しない。例示的な実装では、ケルビンプローブチップ102は、サンプル100の外面から50μm〜10mm離間されてもよい。本明細書で単なる例として言及される1つの特定のチップは、1.8mmの直径を有し、サンプル100から1〜3mm離れた位置に存在する。
ビーム「B」の場合、フォトンエネルギーはサンプルの仕事関数Φに等しく、これはビームがサンプル100の表面から光電子を遊離させるのに十分なエネルギーを有することを意味する。表面電界(表面から数十ナノメートル延びる)から自由になると、こうした電子は、チップ102とサンプル100との間のあらゆる電界の影響を受ける。
チップ電位Vチップがゼロである場合、電子(及びそれに付着するあらゆる空気/気体分子)は、サンプル100とチップ102との接触電位差(CPD)(すなわち仕事関数の差)、すなわちeVcpd=e(Φ−Φチップ)によって生じた電界に従ってドリフトすることになり、ここで「e」は電子電荷であり、Φ、Φチップは、それぞれサンプル100及びチップ102の仕事関数である。例として、サンプル100が仕事関数5.1eVの金であり、チップ102が仕事関数4.0eVのアルミニウムである場合、チップ表面が正に帯電しており且つサンプル表面が負に帯電している状態でのチップ102とサンプル100との電圧差は1.1ボルトとなるであろう。電子は、正のチップ102に引き寄せられ、電流を構成することになり、電流は増幅器104を介して増幅され、データ収集システム(DAS)に出力され、これは出力電圧Voutを受ける。チップ102の仕事関数がサンプル100の仕事関数よりも小さいこのような場合、光電子がチップ102にドリフトするであろう。しかしながら、サンプル100の仕事関数がチップ102の仕事関数よりも大きい場合、電界が負に帯電した電子に関して逆バイアスされ、電流が検出されないであろう。
ビーム「C」の場合、フォトンのエネルギーは多数の電子を遊離させるのに十分に高く、電子の一部は、KE=(Eph−eΦ)に従うかなりの運動エネルギー(kinetic energy:KE)をもって出ていく又ははじき出されることになる。このときエネルギーがサンプル仕事関数よりも高いので、結果的に、最大KEをもってはじき出される、サンプルにおける最も高いエネルギー、すなわちフェルミエネルギーでの電子、及びより低い又はさらにはゼロのKEをもってはじき出される、フェルミ準位を下回るエネルギーでの表面の下の或る距離におそらく存在する他の電子、に対応する電子のエネルギー分布が生じる。これらのはじき出された電子のエネルギー分析は、はじき出された電子の数が、サンプルの中で電子が占有したエネルギー準位とフェルミ準位との差の平方根との直線性を有することを示すであろう。この電子分布は、サンプル状態密度(density of states)又はDOS(サンプル)と呼ばれ、これは、材料及びその表面状態の「指標」として作用する。
したがって、図6では、ビーム「C」は、ほとんど出力電流に寄与し、該電流の特徴は、入ってくるフォトンのエネルギー及びDOS(サンプル)に依存する。
光電子放出の十分な説明はまた、チップ102とサンプル100との間に存在する接触電位差、及びサンプルとチップとの両方のDOSを考慮に入れることになる(以下の図7参照)。チップ電位Vチップが非常に大きく、例えば5〜10ボルトであり、サンプル100に対して正である場合、2つの表面がそれらのCPDによって逆バイアスされるか又はされないかのいずれであろうとも、これは2つの表面間のあらゆるCPDを支配するであろう。一般に、これは、入ってくるフォトンのエネルギーの関数として光電子放出効果を測定するのに用いられる条件である。
図7は、図6のサンプル−チップ構成の電子エネルギーダイアグラムを示す。図は、図示されるサンプル100、電極102の表現と共に、垂直スケールでプロットされる電子エネルギーを示す。ここでは、サンプル100は、最も高い占有エネルギー準位を表わすフェルミ準位EFサンプルと、この例ではE真空と呼ばれる真空エネルギー準位とのエネルギー差として定義されるサンプルの仕事関数Φよりも大きいフォトンエネルギーを有する光のビームによって照射される。入ってくるフォトンは、フェルミ準位での電子を、遷移「2A」として示されるE真空よりも上の位置にはじき出すことができる。入ってくるフォトンが十分なエネルギーを有するならば、これは表面状態密度(EDOS)内のエネルギー準位での電子を遷移「2B」によって表されるE真空に促進することができる。「2A」と「2B」との間の他の遷移も可能である。
図7は、サンプルのフェルミ準位とチップのフェルミ準位が共に並べられる例を示す。チップの仕事関数がサンプルを上回る場合、電子はチップに到達するのに介在するスペースにわたってドリフトしなければならない。仕事関数の差を上回る適切なエネルギーを有する電子だけが到達し、したがってチップ電流を構成することになる。
入射フォトンのエネルギーが表面状態密度から電子を遊離させるのに十分なエネルギーで一定である場合、或る範囲の運動エネルギーを有する電子がはじき出される。所与の状態からの電子に関する運動エネルギーは、入射フォトンのエネルギーと、電子状態と真空とのエネルギー差(仕事関数よりも大きいか又はこれに等しい)との差によって求められる。
eVチップ=Kmaxとなるようにチップ電位を調整することによって、サンプルとチップとの間のギャップを電子が横切るのを阻止することができ、ここで、eは電子電荷であり、Kmaxは電子の運動エネルギーである。これは、阻止電位として知られており、チップに電子が到達するのを単に阻止するのに必要な電位である。この式は、真空に関して当てはまる。空気(又は類似の気体環境)中では、電子の運動エネルギーは空気分子との衝突に起因して失われる。
はじき出された電子のエネルギースペクトルを観測するために、チップ電位を、例えば−10から+10ボルトまでの間の或る電圧範囲を通して小さい電圧増分で変化するように制御して、選択される各エネルギーを下回るすべての電子を阻止することができる。制限するエネルギーの関数としての電流は、はじき出された電子のエネルギースペクトルの積分である。したがって、エネルギースペクトルを回収するために、この測定の導関数がとられる。このはじき出された電子のエネルギースペクトルの積分を測定するような方法でエネルギースペクトルを導き出すことは、電子エネルギースペクトルを直接測定する、阻止電位ではなく加速によって電子エネルギーを測定する既存の技術とは異なる。これは、ケルビンプローブ空気光電子分光法(Kelvin probe Air Photoelectron Spectroscopy:KP−APS)と呼ばれる新しいタイプの光電子分光法である。
角度分解光電子分光法(ARPES)を行うことも可能である。低い運動エネルギーを有する電子は、サンプル表面に垂直な方向にのみ出ていくことができ、一方、高い運動エネルギーの電子は、表面に対し垂直から大きい角度をなして出ていくことができる。ARPESは、電子を角度の関数として測定する。
図8は、入ってくるフォトンのエネルギーの関数としての光電子放出電流の平方根(Iチップ1/2を示す理想空気光電子放出特徴を示す。Eを下回る電子エネルギーでの状態密度における特定のエネルギー準位EDOS(図7参照)での電子の数の理論上の関係性が、E1/2として変化し、ここでEは(E−EDOS)を表すので、Φに対応する閾値(Eth)の後は線形出力が予想される。閾値の位置は、普通は、Eを下回るフォトンエネルギーに関する平均検出器ノイズレベルと電子放出率を表わす線との交点として表される。電子放出率の勾配は、Δ(Iチップ1/2/ΔEであり、ここで、ΔEはフォトンエネルギー差を表し、Δ(Iチップ1/2は、光電子放出電流の関連する変化を表す。
図8の空気光電子放出特徴は単なる例であることを理解されたい。Eに伴う電子の数の変化は、サンプル材料のタイプに従う異なる指数に従って変化するであろう。図8に示される1/2の指数は、金属の場合にあてはまる。しかしながら、指数は、他の材料に関して異なることがある(例えば1/3)。指数は、異なる半導体に関して異なることがある。所与のサンプルにどの指数が適用されることになろうとも、光電子放出電流を示すy軸は、線形電子放出率勾配を生じるように該指数に従ってスケール変更することができる。
フォトンエネルギーがサンプルの仕事関数を超えて増加するのに伴って、サブ表面状態からの付加的な電子が検出される。これは、フォトンエネルギーの関数としての光電子放出電流の勾配を変える影響をもつ。検出される放出率が利用可能な状態の積分であるため勾配が変化し、したがって、フォトンエネルギーに関する導関数(勾配)をとることによって状態密度を回収することができる。
照射器によって提供される光ビームは、一定の強度(DC)であるか又は変調される(AC)かのいずれかとすることができる。後者の場合、(Iチップ1/2パラメータは、信号強度のピーク・谷値を表す。光チョッパが一定の位相時間信号を表す外部「トリガ」パルスを生じるように設計される場合、データ収集システムは、選択的にウィンドウを平均する様態で(例えばボックスカー又は位相フィルタ型積分器(phase filtered integrator)を用いて)ピークツーピーク電流データを収集し、したがって高い信号対雑音(S/N)比を与えることができる。
さらに、図8の位置E,i 1/2によって表わされるピーク及び谷の位置が高い信号レベルで記録される場合、この位相情報は、ノイズの影響を実質的に低減させて、結果的に低減された検出器ノイズレベル、E thでの交点のより正確な報告、したがって改善された絶対サンプル仕事関数値をもたらすのに用いることができる。この補正方法は、空気/ガス中で行われる光電子放出測定の精度を高める。
図9は、光電子放出測定への「オフ−ヌル」手法の空気光電子放出特徴を示す。
ケルビンプローブでは、サンプルとチップとの仕事関数の差は、ゼロ又は「ヌル」信号、すなわちV=Vcpdに調整することによってフェルミ準位がもっていかれるレベルである「均衡点」を生じるのに必要なDC電位に等しく且つ反対である。オフ−ヌル技術では、均衡点は直接測定されず、むしろ線形外挿によって求められる。
オフ−ヌル技術を新しいシステムに適用する例が図9に示される。ここで、図では組{(E,i 1/2)、(E,i 1/2)、(E,i 1/2)、(E,i 1/2)}に対応する、閾値を上回る、例えば2〜4の多くの異なるフォトンエネルギーで、及び閾値(DCに関してEth、ACに関してE th)を下回るか又は入ってくるビームが例えば光シャッタを用いることによってサンプルと相互作用するのを防止された状態であるかのいずれかの1つのフォトンエネルギー(E,i 1/2)での、電子放出率が測定される。この特徴は、一定の強度(DC)の照射か又は変調された(AC)照射のいずれかの下で行うことができ、後者の場合、(E,i 1/2)に関するより正確なE th測定値を推論することができる。
補正されるノイズレベルは所与のシステムに関して一定のままとなるであろう。したがって、ノイズ値を記憶し、その後の計算に再測定せずに用いることができる。異なるフォトンエネルギーの組を迅速に又はさらには準同時に測定することができる。5つの組(EA〜EE)が測定される上記の例では、毎分6から20組までの間の測定を行うことが可能な場合がある。これは、光電子閾値(したがってΦ)の変化を既存のシステムよりも密接に、すなわち、より頻繁に追跡すること可能にする。
光電子閾値を検出するために、一次光ビームのエネルギー(波長)が走査される。これは、より低いエネルギーからより高いエネルギーへ又はこの逆に行うことができる。前者の利点は、損傷を与える可能性があるフォトンにサンプルが最小限の時間だけ曝されることである。エネルギーに依存する陰イオン電流(negative ion current)Inicは、相対光源強度の差に合わせて調整する、すなわち一定の光束を正規化することができ、図9に示された[(Inic−1/2,Eph)]のデータセットは、検出器ノイズレベル及び放出率を記述する直線を求めることを可能にする。
最適直線(光電子閾値を上回る放出率データの)を達成して3つの出力パラメータ、すなわち光電子閾値の交点、放出率の勾配、及びRをもたらすために、さらなる数学的分析をデータセットに適用することができ、ここでRはピヤソン相関係数であり、通常は0.85〜0.99の範囲内である。
上記の測定プロセスは、50点の波長データセットに対して通常は1〜2分かかる。これは、放出率曲線上に2〜3点だけが記録され、且つバックグラウンドが例えば5〜10データセットごとに記録された場合には、かなり短縮することができる。これは、高い光電仕事関数分解能をなお保持しながら、例えば0.4Hzの光電子閾値(光電仕事関数)のこれまで超えられなかった測定速度を可能にする。
このシステムを用いる光電子閾値の繰返し測定は、10〜20mVの精度を与える。
時間に依存する現象を記録することの他に、複数のUV光源の高速切り換え(図16参照)又は高速回転フィルタ(図13B参照)を用いることで、リアルタイムの仕事関数トラッキングが可能となり、且つ導電性サンプルの1Dラインスキャン又は2Dサンプル仕事関数トポグラフィが可能となり得る。このとき仕事関数データを平均し、標準偏差を計算することができるので、結果的に生じる誤差は、既存のPEシステムでの誤差よりも小さくなるであろう。達成可能な誤差の低減は、0.050〜0.100eVから0.010〜0.030eVへの誤差の減少であることが判っている。
サンプルが負にバイアスされる、例えば−30から−70V以上にバイアスされる場合、チップで検出されるサンプルからの光電子放出電流を増加させることができる。これは、図30に示すようにチップに関するものとサンプルに関するものとの2つのデジタル・アナログ(DAC)変換器を提供することによって達成されてもよい。サンプルの電気的ポテンシャルがチップに対して正にされる場合に、光電子電流を低減させる又はなくすことも可能である。
この手順中に、UV光のフォトンが金属チップに当たってチップの周りに電子雲を生じる可能性がある。チップの電位が正であるので、これらの電子はすぐに再吸着され、測定される電流への正味変化をもたらさない。しかしながら、チップ電位が負の値、例えば−10Vに維持される場合、フォトンエネルギー走査は、相互作用、すなわちチップの面及び辺に関係するチップ表面の光電子閾値をもたらすであろう。チップの辺からの寄与は、チップの面だけが関係するように照射ビームをサンプル表面から反射させることによって最小にすることができる。サンプル表面で発生するいかなる帯電した大気イオンもチップとサンプルとの間の電界によってはじかれることになるので、サンプルからの光電子放出電流は検出されないであろう。
光の強さが補正されたInicデータの、フォトンエネルギーに関する微分は、電子がはじき出されているエネルギーバンド(価電子帯)の形状の情報をもたらすであろう。図32は、価電子帯極大(valence band maxima:VBM)を下回る満たされたエネルギー状態を示す。入射フォトンエネルギーが十分であるならば、これらの状態は放出された電子の「雲」に寄与することになり、その結果、チップで大気イオン電流として集められるであろう。したがって、チップ電流は、VBMを下回る状態密度のフォトンエネルギーの重畳を表す。
このオフ−ヌルAC技術は、光電子分光法の新しい、より一層速い、且つより正確な測定モードを構成する。
PE技術とは対照的に、接触電位差測定技術は、絶対値をもたらすのではなく、プローブチップの仕事関数に対するサンプルの仕事関数の測定をもたらす。接触電位差測定技術を行うための例示的なデバイスがケルビンプローブである。
ケルビンプローブ(KP)は、相対仕事関数を良好な精度、例えば0.001〜0.003eVに測定することができるが、これは電子(もっと正確に言えばチップとサンプルとを接続する電子回路における電子の流れ)を直接測定しないという点で間接的技術である。サンプルの実仕事関数を計算するために、振動電極(チップ)が既知の標準に対して校正される必要があり、又は代替的にチップ又は参照サンプルのいずれかに対して光電仕事関数測定が行われる必要がある。
光電子(サンプル内部の異なる深さで発生し得る)は、表面仕事関数に打ち勝つことができる場合には材料を出る(又は材料からはじき出される)ことができる。低い仕事関数(サンプル組成変化、表面幾何学的形状又は構造、汚染など)を暗に示すあらゆる条件が光電子放出率を高めるであろう。はじき出された電子は、次いで、空気/気体分子と衝突し、チップ(正電圧に保つことができる)の方にドリフトして、チップ電流を生じることができ、これは電圧に変換し、増幅させることができる。
図10は、光電子放出測定装置及び接触電位測定装置を備えるデュアルモード検出システムを示す。デュアルモードシステムは、気体環境中又は真空中にあるプローブチップ及びサンプルを備えてもよい。図の右側は、ケルビンプローブなどの接触電位測定プローブとして機能するプローブチップ502を示す。プローブチップ502は、接触電位測定システム504の一部として提供され又はこれに結合される。
図の左側は、光電子放出検出技術に関する検出器電極として機能する同じプローブチップ502を示す。該モードのプローブチップ502は、光電子放出測定システム508の一部として提供され又はこれに結合される。光源からの放射をサンプル514の表面上の目標領域512に合焦するために、光学素子510が提供されてもよい。放射の例示的な形態は紫外(UV)光である。光学素子510及び/又は光源は、測定システム508の一部を形成する又は測定システム508内に組み込まれてもよい。
図の目的は、物理的構造ではなく異なるモードを例証することであり、そのため、プローブチップ502の2つの別個の表現が存在するが、それらは異なるチップを表わしておらず、実際には異なる動作モードでの同じチップを表す。チップ及び検出回路は異なるモード間で変化しないが、分析ルーチンは、サンプル電圧及びチップ電圧の変化に伴い及び照射の性質の変化に伴い変化する。
例証する目的で、アルミニウム基板518上に金の層516(厚さ約30nm)を備え得るサンプル514が示される。これらの例示的な材料及び寸法は、本発明の範囲を決して制限するものではなく、それらは多くの可能な例からの1つの可能な例を示す役目を果たす。
光電子放出モードでは、UV光ビームがサンプル514上のスポット512に合焦され、UV光フォトンは、サンプル514のバルクにおいて光電子を生じるのに十分なエネルギーを有し、それらのエネルギーが表面仕事関数に打ち勝つのに十分である場合、表面を出て、空気/気体分子(普通は表面から約3ミクロン以内)に衝突し、これらに付着し、非振動チップ506によって電流として集められるであろう。合焦された「スポット」によって照射される領域が、光電子放出が起こる唯一の領域であるので、空間分解能はサンプル上の光学スポットのサイズによって支配される。スポットサイズは、直径数ミリメートルであってもよいが、より小さくすることができ、1ミクロンほどの小ささであってもよい。深さ分解能は、サンプルタイプ及び入ってくるフォトンのエネルギーに依存するであろう。
光電子放出プロセスは、周囲条件下、制御された周囲ガス(Nなど)、可変相対湿度(RH)、且つまた真空中で行われるであろう。十分に低い真空度の場合には、放出された電子は、直接チップに移動することができるが、(空気/ガス中などでは)それらはチップとサンプルとの間のあらゆる電界の影響を受ける。
CPD測定モードでは、チップ502が振動し、これはチップ−サンプル構成のキャパシタンスを変調させる。この技術では、遮蔽されたハウジングの中にチップから或る距離(例えば100mm)に存在する低電圧ボイスコイル型駆動要素を用いて、チップを比較的大きい発振振幅(2mmまで)で振動させることができる。示される電気力線522の方向にチップとサンプルは電気的に接触しているとみなされ、チップ502の仕事関数は、サンプル514の上側層516の仕事関数よりも小さい。
データは以下のように処理されてもよい。2つ以上の(Vptp,V)データセットが記録され、Vptpはチップの仕事関数及びサンプルの仕事関数の平均仕事関数の差に比例するので直線が生じる。V軸との交点が求められ、これはVcpdを提供し、勾配が計算され、これはキャパシタンスの部分変化(fractional change)(d −1/2に比例する、ここでdは平均間隔である)の情報を提供する。
cpdデータは、1〜3mVの精度である場合があり、勾配データは、2通りに有用である。プローブが後退させられ、サンプルが帯電するときに、プローブチップを、正確にサンプルとの或る間隔にサブミクロン分解能に精度よく再位置決めすることができる。この様態では、設計によって既に低減されていることがある寄生容量効果が一定に保たれる。第2に、ラインスキャン又は仕事関数トポグラフィ中の間隔を維持するために、ボイスコイルドライバのdc成分か又はプローブ位置のz軸のいずれかへのデジタルフィードバック信号として勾配データを用いることができる。
高い変調指数に関して、Vptpの大きさが、ロックイン増幅器システムによって生じる個々のフーリエ成分の大きさよりも5〜20倍大きいものとなり得るので、システムは、第1のフーリエ級数成分(ω)か、又は第2のフーリエ級数成分(ω)のいずれかではなくVptp信号(すべての周波数の和)を用いることに注目されたい。
ヌルに基づくシステムは、検出システムが2つの板(チップとサンプル)間にゼロ電界域が存在するように板のうちの1つのdc電位を調整するので、エラーをおこしやすい。しかしながら、ドライバシステムはエネルギーを必要とし、圧電ドライバシステムでは、これは、検出回路から通常は数mm離れている表面上の比較的高い駆動電圧(通常は10〜300V)を含み、この駆動電圧の「クロストーク」が検出システムを混乱させるであろう、すなわちdcフィードバック電位は、真のVcpdと誤ったドライブクロストーク(ノイズ)とのバランスをとろうとして出力を不安定なものにする。
現在の構成では、例えばUV光源に対するシャッタを単純に用いることによってPE検出モードとCPD検出モードとの間で切り換えることが実行可能である。チップとサンプルとの両方のdc電位(Vチップ、Vサンプル)は、測定アルゴリズムによって自動的に制御される別個のデジタル・アナログ変換器(DAC)に接続される。PE信号及びCPD信号が、2つの、すなわち光シャッタ及びボイスコイルドライバの、独立した周波数から導出されるので、両方のデータセットを同時に又は独立してのいずれかで測定することが可能である。
ここで描かれる図では、ケルビンプローブ−サンプル構成の配向、照射角度、及びサンプル法線に対するチップの角度に或る程度の自由度が設けられている。伝統的な(振動チップ)ケルビンプローブモードでは、理想構成は、チップが表面に平行な平面内で振動する構成であるが、この方法は、振動が平行ではない、例えばサンプル表面に対して45度をなす、又は分離が変化するようにチップの動きがサンプル表面に垂直な成分を有する限り実際には任意の角度をなす場合に、依然として良好に働く。分離距離はまた、チップ502の直径及び発振振幅に依存するが、概して面平行構成に関する一般的指針として、サンプル面積がチップよりもかなり大きいと仮定すると、チップ直径の半分となるであろう。
KP−APSモードでは、チップ506とサンプル514との間隔はさほど重要ではないが、KP−APS測定において結果的に生じる電界を補正するにはサンプルとチップとの接触電位差(CPD)が分かっていることが重要である。寄生容量効果があるため、測定されるCPDは間隔に依存する。
KP−APSでは、光注入角度は、サンプルにおけるフォトンの浸入深さ、したがって出ていく光電子の深さ情報に影響することになり、ゆえに光注入角度を制御することによって深さに依存する情報(例えば、PEモードでの研究中のコーティング厚さ)を抽出することができる。
電子に対して下向きに作用する重力はおよそ8.94×10−30Nであり、負に帯電した酸素分子に関しては5.26×10−25Nであるので、水平面及び垂直面におけるサンプル及びチップの配向は重要ではない。しかしながら、説明に役立つ例として、3mm分離されたチップとサンプルとの+10ボルトの電位差に起因する負電荷を帯びた電子又は空気分子に対する力は5.4×10−15Nである。したがって、電界の相互作用は、重力の相互作用を大いに支配し(すなわち、1010)、間隔が変化する又は(正)電圧が減少する場合であっても、これは依然として、介在するスペースにおける電荷キャリアのドリフトを支配的に選択する。外部空気流が存在する場合又は空気の対流が一役買うようにサンプルが十分に加熱される場合にも、測定の精度が低下することがある。一般に、サンプル環境の筐体は、外部空気流を避けるように制御されるべきである。熱対流は、サンプル514をケルビンプローブチップ502の下の水平面内に設置することによって緩和させることができる。
はじき出された電子が高い平均自由行程を有する場合の(高又は超高)真空中で行われる紫外光電子放出分光法(UPS)は周知の技術であり、紫外光源は、通常は、材料(金属)仕事関数の範囲、例えば2〜6eVよりも著しく高いエネルギー範囲21.2〜40.8eVのヘリウム(He)光源である。高いフォトンエネルギーは薄層を改質することがあり、結果的に表面帯電又は損傷を生じることがある。さらに、ヘリウム放電源は、汚染する又は他の方法でサンプルの仕事関数を変化させることがある気体生成物を生じることがある。サンプルは(超高)真空条件に適合する必要がある。非常に薄い有機(ポリマー)膜を用いる現代の半導体技術では、これは実に問題である。UPSは、高分解能の表面仕事関数情報を生成するのに通常は用いられず、精度は(0.25〜2.00)eVほどの低さとなることがある。これは空間的に分解された表面仕事関数マップを形成するのに普通は用いられず、UPSは空気中では機能せず、そしてまた速くもないであろう。
図10に示すようなケルビンプローブ空気光電子放出システム(KP−APS)は、周囲(大気圧)条件−(空気、制御されたガス、相対湿度、及び真空)の下で作動することができる。このシステムの利点は、高精度相対仕事関数測定のためのケルビンプローブとして、及びサンプル上に入射する紫外光ビームを用いる、絶対仕事関数プローブとして、「デュアル」モードで機能できることである。2つのモードの同時測定を行うこと又は各測定モードを順次に(サンプルの同じ部分又は異なる部分に対して順番に)行うことが可能である。すべての方法は、サンプルを空間的に走査している間に行うことができる。異なる信号が周波数によって選択される場合の両方のモードを用いる同時測定が図18で説明される。
空気中の電子の平均自由行程は少し小さい(数ミクロン)ので、光によりはじき出された電子をサンプル表面から比較的遠くに例えば0.5〜3mmの距離に存在するチップによって集めることができることは期待されないであろう。しかしながら、これは事実とは異なり、光ビーム中のフォトンが電子を第1の場所に遊離させるのに十分なエネルギーを有するならば、電子、又は空気中の気体分子(他の方法では帯電しない)に付着する電子がサンプル表面からケルビンプローブチップに移動して検出可能な電流を与えることができる。
作動(一定のチップ電位でフォトンエネルギーを変化させる及び一定のフォトンエネルギーでチップ電位を変化させるKP−APSモードでの)が、いくつかの方法で検証されており、検出される電流の符号は、電子又は負に帯電した気体分子の符号と一致する。さらに、測定される電流の大きさは、理論によって期待される大きさと一致する、すなわち、フォトンエネルギーに対してプロットされる検出される電流の平方根は導体(金属)に関して直線となり、半導体に関して立方根となるであろう。最後に、光電仕事関数(処理された検出電流とゼロレベル(又はノイズレベル)との交点として求められる)は文献データと一致する。
図10のシステムを構成する種々の構成部品をここで説明する。
用いられる光源は、通常は、7.75〜3.1eVのフォトンエネルギーに対応する160〜400nmの波長のUVフォトンを出力することができる重水素(D2)ランプなどの紫外(UV)広帯域光源であろう。同じく光電子放出を引き起こすことができるUV発光ダイオード(LED)又はUVダイオードレーザなどの代替的なディスクリート光源を用いることも可能である。
可視スペクトルの光は、UVスペクトルの光よりも低いエネルギーを有し、そのため、アルカリ金属、例えばCs、Na、Kなどの低い仕事関数を有する材料又はGdなどの低い仕事関数の金属からの電子だけを遊離させるであろう。3.5〜1.0eVのフォトンエネルギー、すなわち可視及び赤外に対応する波長350〜1200nmの石英タングステンハロゲン(QTH)光源が、これに関する適切な光源である。
以下では、特に明記しない限り、「光」はUV波長を表すとみなされることになる。さらに、「白色光極大」は、光源からのすべての波長の透過に対応する。一般に、光源は、空気中の酸素に対するUV光の作用に起因するオゾン(O3)の生成を防ぐために窒素ガスで満たされる筐体に内蔵されるであろう。さらに、光学系(光源、波長セレクタ、チョッパ、シャッタ、N雰囲気、及び合焦組立体のうちのいくつか又はすべてを含み得る)のすべての構成部品は、ケルビンプローブパラメータ(振動の振幅、平均チップ−サンプル間隔、チップ電位、サンプル電位、サンプルホルダ電位、サンプル(x,y,z)位置、サンプル温度、サンプル相対湿度、サンプル周囲のうちのいくつか又はすべてを含み得る)と共に、自動制御が可能である。
D2ランプから放出される光は、波長(又はエネルギー)セレクタを通過することができる。これは、例えば、回折格子、プリズム、線形フィルタ、又はディスクリート(干渉)フィルタの形態をとることができる。一般に、エネルギーセレクタの選択は、使用される光学構成に応じて例えば5〜20nmの半値全幅(FWHM)に対応する透過強度及び波長分布を定めるであろう。
光はまた、随意的な光チョッパを通過することができ、光チョッパはチョッパホイールの周波数での変調された光出力を生じることになる。光シャッタが、随意的に低周波数光ビーム変調を提供することができる
光学系からの光は、例えばUV光を透過させるように特別に選択された光学レンズの組を通して試験されるべきサンプル表面上に直接合焦することができ、又はこれは代わりにUV光ファイバに結合することができ、UV光ファイバは、光を、光源を収容する筐体からサンプルを収容する筐体に透過させる。UV光ファイバの使用は、サンプル上に入射するフォトンの最大エネルギーを低減させることがある。
図11Aは、モノクロメータ型波長セレクタ602に合焦される重水素ランプなどの広帯域UV光源600を示す。モノクロメータの半値全幅は通常は5〜20nmであり、この波長は、ステッパモータ及び関連するコントローラ(図示せず)によって自動的に制御されてもよい。選択された波長が、随意的に光チョッパ604を通過し、次いで可撓性UV光ファイバ606に合焦される。ファイバ606は、次いで、例えば暗筐体、相対湿度筐体、制御されたガス筐体、又は真空チャンバの形態をとり得る測定筐体に光を透過することができる。
図11Aでは、構成部品は、空気又は代替的に窒素などのガスで満たすことができる筐体608の中に収容される。窒素雰囲気を用いることで、オゾンの生成及び関連するUV光の吸着が防がれる。
チョッパ604の目的は、周波数ωPEを有する変調されたUV光出力をもたらすことである。チョッパ604が用いられない場合、一定の光の強さ、所謂DC光が生じる。チョッパ604と最後の光学合焦組立体「C」との間に存在する光シャッタ(図示せず)は、ビームが自動的に又は選択的にオン及びオフに切り換えられることを可能にする。
図11Bは、同様の構成部品が同様の参照番号で示される類似の構成を示す。しかしながら、ここでは、サンプル610は、光筐体608に内蔵される(及び窒素雰囲気を共有する)。この場合(及び他の類似の場合)、図11Aの光ファイバにおいて又は大気中の空気によって起こる可能性がある何らかの望ましくない吸収が減少するので、高エネルギーフォトンの記録される強度が増加する。
サンプル雰囲気が、光源のために必要とされる又は用いられる雰囲気とは独立して制御される、図11Cに示されるさらなる変形が可能である。光を透過させるために筐体の末端部に適切なウィンドウを設けることができる可能性がある。
別の光学構成は、1つ以上の干渉フィルタを通過する広帯域光源となるであろう。干渉フィルタは、固定波長を選択することになり、自動又は選択操作が可能であり得る線形又は回転ホルダ上に設置されてもよい。
図12は、フィルタ型波長セレクタ702に合焦される重水素ランプなどのUV光源であり得る広帯域光源700を示す。フィルタ702の半値全幅は通常は10〜20nmであり、フィルタ702は、その設計波長での入射光のおよそ20%から90%までの間を透過させるであろう。フィルタ702は、波長選択を提供するために所定位置に回転できる多くの干渉フィルタ(図13A、13B参照)の形態をとることができる。代替的に、フィルタは、ディスクリートか又は可変(連続)のいずれかの線形幾何学的形状(図14参照)を有してもよく、この場合、線形出力波長は平行移動位置によって決まる。回転機構と平行移動機構との両方において、高強度「白色光」スペクトルの直接通過を可能にするために、1つのスロットを開いた状態に保つことが有用である。光は、次いで、随意的に光チョッパ704を通過する。光源筐体708はN雰囲気で満たされてもよい。
図12Aの実施形態では、光は、可撓性UV光ファイバ712を用いてサンプル710筐体に伝導される。
図12Bは、同様の構成部品が同様の参照番号で示される図12Aの構成と類似の構成を示す。しかしながら、図12Bでは、サンプル710は筐体708内に存在する。
サンプル雰囲気が、光源のために必要とされる又は用いられる雰囲気とは独立して制御される、図12Cに示されるさらなる変形が可能である。光を透過させるために筐体の末端部に適切なウィンドウを設けることができる可能性がある。
図13は、図12A及び図12Bに示された例示的な実施形態で用いられ得るタイプのディスクリートの回転干渉フィルタの例を示す。図13Aでは、波長選択は、光源からのUV光出力の経路内のディスクリートの干渉フィルタ800を回転させることによって行われる。異なるフィルタ設計が用いられてもよいが、図13Aの例では、12スロット回転フィルタが提供される。これは回転速度ωで回転する。図13Bは、低減した数のフィルタ(ここでは4つ)が適用される代替的な実施形態のフィルタ802を示す。フィルタの数は、2から4までの間であるのが有利である場合があり、この範囲は、前述の高速オフヌル光電子閾値手法に特に適する。この場合、限られたフィルタの組が、高速光電流測定を可能にする速度ω(ここでω>ω)で回転されてもよい。2フィルタホイールを提供することが可能である。例えば図13Aのようなより大きいフィルタホイールは、異なるフィルタの組からの1つの選択を提供するように機能することができ、一方、例えば図13Bのようなより小さいホイールは、データが高速で記録される間に連続的に回転できる可能性がある。
図14及び図15は、使用できる代替的なタイプのフィルタを示す。図14Aは、白色光極大位置902を含む14スロット線形ディスクリートフィルタ900を示し、一方、図14Bは、同じく白色光極大位置906を含む連続フィルタ904を示す。図15は、白色光位置1002を有する可視400〜700nm線形可変フィルタ(LVF)1000の例を示す。
光源がUVLedからなる場合、適切にバイアスされる電圧波形を用いて各LEDの光の強さ及び変調周波数を制御することができる。光学変調周波数は、DC(すなわち変調なし又はゼロHzの変調)から数kHzまでの範囲とすることができる。2〜4個のLEDが例えば異なる変調周波数(ωL1、ωL2、ωL3、ωL4)で準同時に用いられる場合、すべての検出される電流への各波長(エネルギー)での寄与を測定することができ、電子放出率及び光電子閾値がリアルタイムで計算される。
図16は、複数のUV LED光源(各光源にはLED1〜LED4が付される)を示し、各光源は、強さ、位相、及び変調周波数(ωL1、ωL2、ωL3、ωL4)の個々の自動又は選択制御が可能である。各UV LEDからの光出力は、UV光学系1100、1102、1104、1106を介してサンプル1108に透過され、あらゆる光電子がチップ1110によって検出される。すべてのLEDが同時に用いられる場合、検出される全電流は各寄与の和となるであろう。すべての検出される電流が周波数によって(以下の図18に示されるKP、PE、及び表面光起電力(surface photo−voltage:SPV)情報と類似の様態で)逆重畳される場合に、各エネルギーの光電子強度を求めることができ、エネルギー対強度の平方根の線形プロットにより、光電子閾値又はサンプルの仕事関数が求められる。
ここで本開示の種々の態様及び実施形態を概して参照すると、小さい、例えば直径100μm〜3mmのUVファイバが用いられる場合、これをサンプル表面の真上(図示されるような配向に)存在するケルビンプローブチップの下の領域を照射するように設置することができる。ケルビンプローブチップは、高利得増幅器及びボイスコイルにより作動される懸垂システムに接続されてもよい。チップ電位は、例えば−10〜10ボルトの電圧範囲に自動的に導かれてもよい。ファイバからの光出力を合焦して、サンプルの下の光の強さ、光により発生した電子の関連する放出、及び空間分解能を増加させることができる。
光電子放出の場合、空間分解能は、1ミクロン〜10mmの範囲であってもよい。スポットの外形はサンプル表面に対する照射角度に依存するであろう。照射角はまた、UV光がサンプルに侵入する深さ、したがって光電子がサンプルの内部で生成されることになる深さを変化させる効果を有する。
図17は、UV光源及び可視及び/又は赤外光源を備えるデュアル光源が提供される場合の付加的な実装オプションを示す。この配置は、「エネルギー選択型」デバイスである。
フォトンエネルギーが表面の仕事関数に等しいか又はそれよりも大きい場合に、UV光が光電子放出をもたらすであろう。サンプルが半導電性である場合、サンプルの照射は、結果的にフォトンの強度及びエネルギーに依存する表面電位を生じる半導体をもたらすことができる。単一周波数又は白色光が用いられる場合、これは表面光起電力(SPV)と呼ばれる。光の周波数が変化する場合、この技術は表面光起電力分光法(Surface Photovoltage Spectroscopy:SPS)と呼ばれる。
光起電力分光計の特徴は光電子放出に関して既に説明した特徴と類似しているが、通常は、光源スペクトルは可視領域及び赤外領域にある。SPV及びSPSは、一定の強度(DC)の検出モードと変調された強度(AC)の検出モードとの両方を有する。DCモードでは、ケルビンプローブが振動し、表面電位の変化を直接記録する。ACモードでは、ケルビンプローブは振動せず、ピークツーピーク出力信号が記録される。両方のモードにおいて、信号は、入ってくるフォトンのエネルギーの関数として記録することができる。DCモード及びACモードは、半導体内の光により誘起されるキャリア移動度に応じて差の情報をもたらすことがある。
図17Aは、DC又は可変周波数(ωPE)の7.75から3.1eVまでの間のエネルギー選択可能な光を発生させる及びこのビームをUVファイバ設置機構によって決定される角度でサンプル表面の方に透過させることができる重水素(D2)光源1200に基づくUV光学系を示す。この機器は、適切な制御されたケルビンプローブ検出システムと共に、研究中のサンプルの光電仕事関数、電子放出率、及び状態密度を高速で求めるのに用いることができる。サンプルが光ビームの下に位置決めされる(走査される)場合、これらのパラメータは、光スポットの空間分解能と共にマッピングすることができる。
図17Bは、可視/赤外ファイバを用いてサンプルに伝導されるエネルギー3.5〜1.0eVのDC又は可変周波数(ωSPV)の光を発生させることができる石英−タングステン−ハロゲン(QTH)光源に基づく可視−赤外光源1202を示す。半導体表面(又はコーティング)及び太陽電池などの半導体デバイスに関して、この機器は、適切な制御されたケルビンプローブ検出システムと共に、半導体表面電位(SP)、半導体表面光起電力(SPV)、半導体表面光起電力分光法(SPS)、半導体バンドの屈曲、及び太陽電池に関しては開回路光起電力の変化を高速で求めるのに用いることができる。サンプルが振動チップの下に位置決めされる(走査される)場合、これらのパラメータはチップ直径の空間分解能と共にマッピングすることができる。
UV光源の光学チョッピング周波数(ωPE)が表面光起電力光源の周波数(ωSPV)とは異なるように選択される場合、2つの測定を同時又は準同時の様態で行うことができる。
図18は、複合UV及び可視/IR光注入システムを装備するケルビンプローブシステムの検出モードをまとめる周波数/出力信号振幅プロットを示す。DC成分は、ケルビンプローブDC SPV/SPS及びDC PE測定を含む。ケルビンプローブCPD測定はωKPで、AC SPV/SPS測定はωSPV又はωSPSで、及び光電子放出測定はωPEで行われる。それぞれの振動周波数及びチョッピング周波数は、ユーザが選択可能(use−selectable)であり、そのためそれらは適切なデジタル又はアナログフィルタリングによって容易に分離されるように十分に別々に保つことができる。原則として、システムはすべてのモードの準同時の様態が可能である。この複合システムは、空気/ガス中での測定のために用いることができる。こうしたシステムの利点は、サンプル(表面)仕事関数及び表面電位の変化を、表面の下のnm〜μm領域で生じる材料組成及び性能と関係付けることができることである。
ここで、前述のPE測定技術は、金属又は金属被覆サンプルの光電子閾値(又は光電仕事関数又はフェルミ準位)と半導体サンプルの価電子帯極大(VBM)を測定するであろう。光電子放出方法は、フェルミ準位Eでの半導体に自由電子が存在しないので半導体の仕事関数を直接測定することができない。
空気中の半導体に関して、VBMは、外側酸化物層にわたるエネルギー、電子親和力に関係するエネルギー、及びバンドギャップエネルギーに(それぞれ)対応する3つのエネルギーステップ(PE並びにこのパラグラフでは議論されていない他のプロセスに関する情報を含む、図31のまとめ図で表される場合のeV+eΧ+E)を表す。しかしながら、暗条件下での半導体仕事関数eΦは、最初の2つの上述の要素に加えて、半導体表面電位に関係するエネルギー、及び伝導帯とフェルミ準位とのエネルギー差からなる、すなわちeV+eΦ+eV+eVである。
ここで半導体が「白色」光源のみによって(直接又は図17Bのデバイスなどのエネルギー選択型デバイスを介して)照射される場合、低強度光照射に伴う半導体仕事関数の変化のCPD分析が半導体表面電位eVをもたらすであろう。半導体バンドギャップにわたるフォトンの吸着が、移動可能な正孔及び電子を生じる。半導体表面が負に帯電する場合、正孔が引き寄せられることになり、表面電荷を一時的にヌルにする傾向がある。その結果、半導体エネルギーバンドが平坦になり、表面電位がゼロに低下する。要約すれば、CPD変化、すなわちCPD(≧Eフォトンによる照射)−CPD(暗)が半導体表面電位を生じる。これは表面光起電力測定Vspvと呼ばれる。
上記の測定が、図17Bの光源などの、ここでは可変フォトンエネルギー光源を用いて繰り返される場合、Vspvが最初に検出されるフォトンエネルギーは、半導体エネルギーギャップEに等しい。この分析では、半導体バンドギャップ内に表面状態は存在しないとみなされる。これが事実と異なる場合(例えば図32に示すように)、表面光起電力分光(SPS)と呼ばれる結果的に生じるフォトンエネルギースペクトルは、半導体バンドギャップと酸化物層の表面状態との両方の情報を含むであろう。
ゆえに、要約すれば、PE測定は、以下を含む種々の測定モードを提供することができる。
1.半導体の光電子閾値。空気(又は他の気体環境)光電子放出測定を用いて、価電子帯極大(VBM)と真空エネルギー(E真空)とのエネルギー差を立証することができる。
2.金属に関する光電仕事関数。
3.金属及び半導体に関する光電子放出分光法又は状態密度。
CPD測定は、以下を含む種々の測定モードを提供することができる。
A.CPD(暗)
金属振動チップの仕事関数とサンプル(半導体又は金属)仕事関数との仕事関数の差
B.半導体に関するCPD(照射)−CPD(暗):
1.半導体の表面電位の変化。
2.半導体のエネルギーギャップ。
3.表面状態のスペクトル。
上記の方法の1つの例示的用途は、半導体PN接合を測定することであり、これは太陽電池などの種々の製品をテストするのに有用な場合がある。半導体サンプルがPN接合又は太陽電池の形態をとる場合、CPD測定は、電池の開回路電圧VOCが求められることを可能にする。理想では、VOCは、接合を構成するn領域とp領域とのフェルミ準位の差を表す。
時には、半導体デバイスは、例えば現代の有機光起電力(OPV)太陽電池の場合に、複数のPN接合を備えるであろう。CPD技術を用いて測定される表面光起電力スペクトルの試験は、太陽によって放出される光スペクトルに対応する照射の下での太陽電池の電気的挙動に関する情報が得られることを可能にする。これは表面光起電力分光法(SPS)と呼ばれる。SPSの精度は、光源をチョッピングし、チップ電極を振動させるのではなく結果的に生じるVptpを測定することによって高められることがある。
システムの別の構成部品は、サンプル用のホルダ又は筐体である。
サンプルは、ファラデーケージの機能を果たす、すなわち外部電界及び磁場の侵入を最小にする、筐体の中に収容されてもよい。サンプル筐体は、遮光性とすることができてもよく、周囲として空気又は窒素などの制御されたガスを有していてもよい。筐体は、放射がサンプル上に反射するのを避けるのに十分なだけその壁がサンプルから離れているような寸法を有していてもよい。壁はまた、スプリアス反射を低減させる一助とするために暗色にされてもよい。空気の相対湿度が制御されてもよく、随意的にチャンバは真空にされてもよく、図17のRHSを参照されたい。サンプルは可変温度ヒータステージ上に設置されてもよい。一般に、サンプル温度及び環境条件はサンプル仕事関数に影響する(変更する)であろう。
サンプルは、地面に対して自動的に電気的にバイアスする、例えば−70〜+10ボルト(DC)にすることができる金属サンプルプレート又はステージ上に設置されてもよい。サンプル設置プレートは、自動(x,y,z)走査プラットフォーム上に存在してもよい。
サンプルは、CPDトポグラフィか又は光電子放出閾値トポグラフィのいずれかを提供するために走査することができる。CPDモードでのサンプルとチップとの分離(図30に示される場合のd)は、Vptp対Vチップデータセットの勾配を用いて制御することができる。通常は、変調指数は、最適なCPD測定のために必要とされる0.5〜0.8の範囲である。光電子放出測定はチップとサンプルのz方向の分離に依存して変化せず、チップは、CPDについては同じ位置とすることができ、又はさらには、必要に応じて、例えば1〜4mmさらに離れた位置とすることができる。サンプル電位とチップ電位との両方を、そのプログラムされた動作が(選択された)測定モードに依存する独立したデジタル・アナログ変換器に接続してもよい。
サンプルは、例えば金属ばねクリップ又は導電性グルー付きアルミニウムテープを用いてサンプルテーブル上に取り付けられてもよい。固定機構の機能は、サンプルを定位置に機械的に保持し、サンプル上面又はサンプル表面付近の導電層との密接した電気的接触をもたらすことである。金属又は半導体ウェーハなどの導電性サンプルの場合には、サンプル設置プレートとの堅固な機械的接触が電気的接触に適することがある。一般に、サンプル設置機構は、低い外形を有することになり、理想的にはいかなる測定にも影響を及ぼさない様態でサンプル周辺に存在することになる。
サンプルは、(バルク)金属、金属合金、半導体、絶縁体、液体、ポリマー、又は複合材からなるであろう。絶縁性基板、半導体基板、又は導電性基板が、同じく絶縁性、(半)導電性であり得る1つ以上の層で覆われてもよい。サンプルはまた、導電性ポリマー又は生物学的組織を含んでもよい。粉体サンプル又は液体サンプルの場合には、サンプルは、チップの下の適切な容器の中に保持することができる。例えば抵抗加熱又はペルチェ接合を用いる冷却/加熱を用いるサンプルヒータ/冷却ステージをサンプルの下に配置することができる。サンプルは、清浄であるか又は汚染されている(意図的であるか又はそうでないかのいずれか)ことがある。サンプル表面上の粒子状物質などの物理的ごみは、サンプル自体が粉体でない限り回避されるべきである。サンプルは、薄膜を有する又は有さない液体表面であってもよい。
サンプルホルダ及びサンプルは、種々の随意的な特徴のうちの複数の特徴を含んでいてもよく、前述の特性が一緒に存在していてもよいことが理解されるであろう。多様な選択肢が言及されているので、特徴が組み合わされ得る種々の組み合わせを列挙することは実際的ではない。しかしながら、どの選択肢が技術的観点から相互に排他的であるか、及び本開示がどのこうした相互に排他的な特徴の組合せを包含することも意図されないことが当業者には分かるであろう。
前述の種々の態様及び実施形態では類似の検出器が用いられ、検出器の設計をここで説明する。
好ましい実施形態における検出器は、研究されるべき表面の上に吊るされる平坦な金属チップを備える。こうした検出器は、ケルビンプローブと呼ばれる。チップは、振動するか又は静止状態に保たれてもよい。チップサイズは変えることができるが、好ましい範囲は、直径5ミクロンから20mmまでである(異なるサンプルサイズに対して異なるチップサイズが選択されてもよく、典型的なサンプルは数mmから350mmまでの間の特徴的な直径を有することがあるが、本発明は、もちろんこのサイズ範囲に限定されない)。チップ直径がCPD測定における空間分解能を定義する。チップは円形の幾何学的形状を有してもよく、これは、サンプル表面上に入射する光の量を反射によって増大するために除去される1つ以上の区域を有してもよい。チップは照射ビームに対して半透明であってもよい。代替的に、チップは、5.65eVの白金(Pt)又は約4.0eVのアルミニウムなどの高い又は低い仕事関数の材料から製作することができる。チップはまた、別の材料の薄層で覆うことができる。
金属チップ(積分前置増幅器ステージを備えてもよい)は、チップをサンプル表面の真上に配置することができる自動ステージ上に設置される。既存の機器を用いて、チップとサンプルとの間隔を317nmの増分で調整することができる。金属電極は、電流前置増幅器(電流−電圧構成の演算増幅器)に接続されてもよい。前置増幅器の実効利得は、フィードバックレジスタの大きさに応じて10E6から10E10までの間となるであろう。増幅器の入力ピンへの振動チップの直接接続は、時間的に変化するケルビン信号を、外部ノイズの影響をあまり受けにくいものにする。
チップ信号は、30から3000までの間の利得を有する1つ以上のさらなる電圧に敏感な増幅器で処理することができる。電圧増幅器は、ケルビンプローブの機械的振動周波数又は照射UV光システムのチョッパ周波数での離散的信号を分離できるように、ローパス又はハイパスフィルタリングを含んでもよい。プローブ間隔変調器か又は光学的光変調器のいずれかの参照信号を用いるボックスカー積分としてノイズリダクションを行うことができる。
電子システムの全利得は3E7及び3E13から変化し、これは異なるチップ直径、チップ幾何学的形状、サンプル幾何学的形状、サンプル構造及びサンプル温度、チップとサンプルとの間隔、サンプル電気的特徴、環境の特徴(空気、制御されたガス、相対湿度、真空)、及びサンプルの周りにスペースを必要とする他の技術の集積を考慮に入れる。チップの電圧は、+10ボルトから−10ボルトまでの間で(ミリボルトの分解能に)自動的に調節可能である。
チップ/増幅器は、50から300Hzまでの間の共振周波数を有するボイスコイルドライバ上に存在してもよい。チップの発振振幅は、ボイスコイル変位システム(ドライバ)に印加される正弦AC波形を用いて0から5000ミクロン(ピークツーピーク)までの間のミクロン分解能で調整することができる。懸垂システムは、2つ以上のステンレス鋼ダイヤフラムスプリングからなる。真空実装の場合には、チップ増幅器は真空フィードスルーの大気側に存在する。
図19は、空気光電子放出に関して適用される利得を示す。一定の(DC)又は変調された(AC)強度のUV光ビーム1600が導電性サンプル1602上に入射する。フォトンエネルギー(Eph=hf、ここで「h」はプランク定数であり、「f」は光の周波数である)がサンプル1602の光電仕事関数に等しいか又はそれよりも大きい場合、光電子がはじき出されることになり、サンプル表面と(非振動)ケルビンプローブチップ1604との間のスペースを横切ることができる。チップ1604で記録される電流は、チップ1604が接地電位(Vチップ)に対して正電圧に保たれる場合及びサンプル1602が接地電位に対して負電位(V)に保たれる場合に増加するであろう。チップ1604によって集められた電子は、電流−電圧変換器1606を利得Aで及び電圧増幅器1608を利得Bで通過し、この場合、全利得ABは、3E7〜3E13の範囲内である。例えば、最初の5fAの陰イオン電流は増幅器出力で100mVの信号に変換されるであろう。この陰イオン検出システムは、6.25×10〜6.25×1011カウント毎秒の範囲の陰イオンの流れに対応する、下限fA〜上限100nAの入力信号に適応することができる。これらの高いカウント速度は、サンプル表面が乏しい電子放出特徴を呈する又は半導体である場合には別個の利点である。データ収集システム(DAS)は、信号をリアルタイムで平均し、ノイズリダクションを行い、処理し、及び記録する。
信号対ノイズ比を増加させるための信号処理を以下の方法で行うことができる。
1.多数の例えば200の一連の非同期測定を10kHzの比較的高い収集速度で行うことによる。この手順は、例えば50回繰り返され、電圧データが合算及び平均される。該シナリオでの全収集時間は0.1秒である。
2.一次光ビームに挿入される光チョッパによって提供される周期トリガ信号を用いる同期測定。データ収集システムは、照射と暗との遷移に起因する信号変化(又はピークツーピーク)を繰返し測定する。これは、1秒に100〜500回平均することができる。同期性の検出又は「ボックスカー」検出の使用は、本質的に信号平均のボックスカー性質のため及び事実上絶対測定ではなく示差測定であるため、非同期性の検出と比べて優れた信号対ノイズ比を有するので、光電子閾値の高められた分解能を提供するであろう。
両方の測定モードにおいて、精度は、最初の陰イオン電流<<0.001fAに対応する、1×10−5ボルトとなるであろう。
図20は、Eph>eΦとなり、KPチップが正電位に保たれているようにDC UV光ビームを照射されているサンプルの真上に吊るされる振動ケルビンプローブに関するほぼ2周期の出力信号を示す。CPD、したがってKP仕事関数(適切なチップ校正を仮定する)を計算するのにピークツーピーク出力電圧を用いることができ、電子放出率、したがって光電仕事関数の勾配を求めるのにDCオフセット(異なる正のチップ電位での)の2つ以上の測定を用いることができる。これらの仕事関数は、材料の深さが不均一である場合には発散することになり、ゆえに、この複合システムは、表面コーティングの不均一性を調べるのに用いることができる。
システムの種々の動作モードに関する信号処理の態様をここで説明する。
例示的モード1:ケルビンプローブ処理−サンプル暗、チップ振動
ここでは、ケルビンプローブ(KP)が振動させられ、導電性表面よりも上に短い距離に吊るされる。チップ又はサンプル上の電圧が自動的に制御される。2つ以上の設定電圧が2つ以上のピークツーピーク出力信号高さを生成する。このデータは、サブミクロン分解能の平均間隔の変化、そしてこれとは別に0.001〜0.003ボルト以内の振動電極とサンプルとの接触電位差(CPD)を求めるのに用いることができる。CPDは、チップ及びサンプル表面にわたる平均仕事関数の差によって生成される。CPD測定は、30ヘルツまでの高速で行うことができる。
ケルビンプローブは、非常に高い表面感度を持っており、これは上側の1〜3つの原子層で起こるサンプル表面の非常に小さい変化に対して敏感である。非走査の場合には、堆積、吸着、表面粗さなどのために最上部のいくつかの層で起こるプロセスに起因するあらゆるサンプル仕事関数の変化を、時間の関数として記録することができる。チップが既知の仕事関数の参照面に対して最初に校正されている場合、CPDデータを、絶対仕事関数値をもたらすように調整することができる。寄生容量効果があるため、2つの材料がケルビンプローブで比較される場合、平均間隔が同一(数ミクロン以内)であることと、すべての他のシステムパラメータが一定のままであることが望ましい。
チップが表面にわたって走査される場合、サンプルトポグラフィ及び接触電位差が、チップ直径の空間分解能と共にマッピングされるであろう。
例示的モード2:ケルビンプローブ処理−半導体サンプル、サンプル照射、チップ振動
サンプルが半導体である場合、半導体の表面電位の変化(光吸着に起因する)を研究することができる。この場合、光学系は、半導体の表面での又はバルクにおける電子遷移をもたらすべく電荷キャリア(電子及び正孔)を刺激する光を注入するのに用いることができる。この場合、光の強さ、光シャッタ(暗/明及び明/暗遷移をもたらすため)、及び光波長の自動制御が、サンプルの電気的特徴に関する詳細な情報をもたらすことができる。
例示的モード3:ケルビンプローブ処理−半導体サンプル、サンプル照射、チップ非振動
この場合、ケルビンプローブは振動しないが、半導体材料とのAC光注入の相互作用によってピークツーピーク信号が生じる。上記の例示的モード2と類似の測定が行われる。この場合、チップとサンプルとの間のCPDは分からないが、相対的な意味で、この方法は分光学データに対してより敏感であり得る。
例示的モード4:光電子放出プロセス−チップ非振動、DC UV光源
ここでは、非振動ケルビンプローブがサンプル表面の上に吊るされ、光電子放出(PE)電流が、入ってくる光のエネルギーの関数として記録される。チップ電位は、0から10ボルトまでの間に調整することができるが、測定中は固定される。抽出電位は、光によりはじき出された電子をチップとサンプルとの間の空隙にわたって「ドリフト」させるのに用いることができる。
データは、ノイズを低減させ、光電(絶対)仕事関数、光電子放出率、及び信頼限界(R)を含む材料データをもたらすように処理される。導電性材料に関しては、処理は、エネルギーに対する電流データの平方根を、半導体に関しては立方根をプロットすることを含む。
PEデータは、KPのみの深さよりも大きい深さからの情報を含む可能性があり、ゆえにCPD及びPE仕事関数データ間のあらゆる差がサブ表面層に関する情報を提供することがある。光電子放出は、表面上の最も低い仕事関数に対して敏感であり、通常はチップの仕事関数は関係しない。
この測定モードは、高速の仕事関数情報を与えるために2つ以上の光エネルギーで行うことができる(図9参照)。これは、光電子分光法によって状態密度情報を与えるために、より低速で行うことができる。
例示的モード5:光電子放出プロセス−チップ非振動、AC光源
このモードはDCモードと類似しているが、AC信号は、高速及び高いS/N比を提供するボックスカー積分によって検出することができる。この測定モードは、高速の仕事関数情報を与えるために2つ以上の(two or mode)フォトンエネルギーで行うことができる(図9参照)。これは、光電子分光法によって状態密度情報を与えるために、より低速で行うことができる。このモードは、高い信号レベルで提供される信号位相情報を用いて検出器オフセットの改善された測定を与える。
例示的モード6:光電子放出プロセス−チップ非振動、AC又はDC光源、チップ電位走査
これは、固定のフォトンエネルギー(Eph>eΦ)又は白色光照射で行われる。チップ電位が走査され、DC又はPTP信号(DC及びAC UV照射に対応する)が、サンプル及びチップの仕事関数、並びにサンプル及びチップの状態密度の情報を提供する。
PE及びCPD測定で生成される情報間の差は、速度、絶対仕事関数又は間接(相対)仕事関数、仕事関数分解能、空間分解能、及び情報の深さを含む。PE技術では、この方法は、照射される領域の最小仕事関数、KP/CPDモードでは振動チップの下の平均仕事関数に対して敏感である。両方の方法は、空気中で或る範囲のサンプルタイプに対して動作する。KP/CPD方法は、高い直列抵抗によって比較的影響されないので、乏しい導電性を呈するサンプルに優先的に適用できることがある。
本開示は表面状態密度(DOS)を測定するための新しい分光法も提供することが分かるであろう。
第1のDOS測定方法において、KPチップは、正電圧に一定に保たれ、振動しない。フォトンのエネルギーが走査され、光電子放出電流がDCモードか又はACモードのいずれか(すなわち光チョッパが用いられるか又は用いられないかのいずれか)で検出され、これは、光電子閾値(仕事関数)を与え、上記の仕事関数を上回るエネルギーに関しては、(積分)電流を微分することによって得られる状態密度情報を与え、ここで、積分電流は、任意のエネルギーでの検出される電流である。プロットは、図8及び図9のI1/2対Ephグラフと類似の形態である。
第2のDOS測定方法において、フォトンエネルギーは、結果的に光電子放出を引き起こすエネルギーに一定に保たれる。チップは振動していない。例えば−10〜10Vのチップ電位が1〜10mVの増分で走査され(一例では200ステップが用いられてもよいが、より多くのステップを用いることもできる)、光電子放出電流がDCモードか又はACモードのいずれか(すなわち光チョッパが用いられるか又は用いられないかのいずれか)で検出される。この新しい特徴では、プロットはI1/2であり、チップ電位に対してプロットすることができる。生成される情報は、サンプル仕事関数、チップ仕事関数、サンプル状態密度、及びチップ状態密度を含む。各場合に、状態密度情報は(積分)電流を微分することによって得られ、ここで、積分電流は、任意のエネルギーでの検出される電流である。
図21は、PE測定のためのUV分光計制御部と、SPV/SPS測定のための可視、赤外分光計と、データ収集システムと、信号処理制御部と、ケルビンプローブ制御パラメータと、サンプル及びチップ位置決め制御部と、環境及びサンプル/サンプルステージパラメータを含むサンプル筐体制御部とを含む、制御システム全体の概略図を示す。図示されていないのは、チップとサンプルとの間隔及びサンプル上のチップの位置を示す光学顕微鏡システムである。すべての制御サブシステムは、USB、シリアルバス又は他の通信バスを介してメインPC又はマイクロコントローラホストシステムと対話する。
したがって、要約すると、本開示は多くの重要な利点を提供する。
・光電子放出(PE)による絶対仕事関数の測定は、空気中で、可変相対湿度(RH)で、制御されたガスの下で、又は真空中で行われる。
・APSは、高い信号レベル及び比較的短いデータ収集時間で動作する。これは、本質的に、十分な信号を収集するのに長い積分時間を必要とする現在の技術よりもはるかに速い。
・加えて、APSは、現在利用可能であるよりも実質的に速い高速データ(仕事関数)収集モードを有し、すなわち、PE仕事関数データは、現在のシステムでの5〜10分に比べて、10秒以内に生成することができる。結果的に得られる時間平均のPE仕事関数は、現在いわれている(0.050〜0.100)Vよりも実質的に高い精度(0.010〜0.020)Vのデータを生成する。
・高速モードは、信号レベルが高いように2つ以上の光エネルギーでの放出電流IE測定によって特徴づけられる。放出データは、IEcorrをもたらすようにあらゆる検出器オフセット及びランプ出力の線形化に関して補正される。次いで、放出電流の平方根がとられる。(IEcorr1/2対E光を通る直線が、サンプル電子放出率に対応する線の勾配と共に計算される。直線とゼロ電流(又は検出器暗−オフセット)に対応するベースラインとの交点が、光電子閾値又は仕事関数を表す。高い(離散的)信号レベルから推定されるように、それについての精度が改善される。離散点の数が2つ以上に制限されるので、この方法は高速である。
・KP−APSは、DC(一定の光の強さ)モードか又はACモード(より高い周波数ωIでのチョップされた光の強さ)のいずれかで動作し、ACモードでは、利点は、ボックスカー積分技術に起因して信号対ノイズ比が高いことである。さらに、ACモードでは、システムは、閾値付近のノイズを低減させてPEシステムをより正確なものにするために位相情報(高い信号レベルで生成される)をインテリジェントに用いる。
・APSは、光電子放出分光法(照射エネルギーが開始値と終了値との間で例えば100〜200ステップで走査される)により、支障をきたす又は他の方法でサンプル表面を改質する恐れが少ない比較的低エネルギーの光放射を用いて、材料の局所状態密度、すなわちフェルミ準位に近いエネルギー準位のデータを提供する。
・APSは、光電子放出率の情報を提供し、これにより、Δ(PE信号)1/2/ΔE光として定義されるPE勾配を生成することができる。PE信号は、DCモードか又はACモードのいずれかで測定されてもよい。
・APSは高い空間分解能を有し、スポットサイズは50ミクロン〜10mmの範囲内とすることができる。光がチップの下に合焦されたままであると仮定すると、チップの下のサンプルを動かすことによってPE仕事関数ラインスキャン又はトポグラフィを生成することができる。これは、サンプルの広範囲に照射する現在のシステムよりも高い電位を与え、走査能力を有さない。
・空気光電子放出システムは、デュアルPE−ケルビンプローブモードを有する。
・KP−APSは、いくつかのモード、すなわち、光電子放出モード、光電子放出分光モード、ケルビンプローブCPD仕事関数測定モード、ケルビンプローブ表面電位測定モード、表面光起電力測定モード、及び表面光起電力分光測定モードを有する。こうした測定は、光を周波数ωでチョッピングし、チップを異なる周波数ωチップで振動させることによって準同時に行うことができる。これらのモードは空気中で組み合わせることができる。
・KP−APSは、独立した又は準同時のCPD及びPE仕事関数測定のいずれかが可能である。
・CPD及びPEによって生成される仕事関数間のあらゆる差は、以下に起因することがある。
A.材料、薄膜、又は層の組成。ケルビンプローブは、おそらく原子の最上部の1〜3層に対して敏感であるが、光注入は、約10〜1000層の情報を与えることができる。
例えば、アルミニウム(約4.0eV)などの低い仕事関数の材料上に堆積された金(5.1eV)などの高い仕事関数の材料の薄層(30nm)の場合には、CPD測定は、最上部の金原子に関する情報だけを生成することになるが、PE絶対仕事関数測定は、複合膜に関する情報を生成し、例えば中間仕事関数を生じるであろう。したがって、PEデータは、仕事関数、組成、及び厚さに依存する。デュアル測定は、この情報をデコードする一助となる。
B.サンプル表面プロフィール−平坦でない表面は、より高い曲率半径を呈することがあり、あらゆる突出部の周りの関連する高電界が実効仕事関数を低減させることがある。
C.KPは、チップの下の平均仕事関数を測定する。PEは照射される領域の最も低い仕事関数を測定した。
・サンプル又はサンプルホルダに外部電圧が印加されない、すなわちそれらが接地されていると仮定すると、例えば−10〜10ボルトのチップ電位が走査され、PE電流が測定される場合の分光法を適用することができる。照射は、単色エネルギー又は広帯域のいずれかとすることができる。この方法は、サンプル及びチップの状態密度、並びにチップとサンプルとの両方の表面の仕事関数を効果的に調べる。
・UV光がチップ上のみに合焦され、チップがPtなどの高い仕事関数の材料で作製される、又はサンプルからの光電子放出が起こらないようにチップがサンプルから十分に取り出される場合、光注入(チップ仕事関数よりもエネルギーが高い)とチップ静電電位との組合せを用いてチップの(絶対)光電仕事関数を求めることができる。
特徴のまとめ
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用語、定義、及び好ましい実施形態に関するさらなる説明
本発明の理解をさらに助けるために、図22〜図32は、用いられる用語の付加的な説明を与える。
図22は、清浄金属仕事関数を示す。金属中の電子2200が斜線によって表される。清浄金属の光電仕事関数Φは、電子を金属内の最高飽和準位(フェルミ準位と呼ばれる)から金属の「すぐ外側」の位置に取り出すのに必要な最小エネルギーである。すぐ外側とは、通常は30nmである、すなわち電子に対して作用する鏡像力(mirror force)の範囲を越えるものであり、これはE真空準位によって示される。金属が空気(O、N、及びHOを含むガス)などの気体環境に曝される場合、電子は急停止するが、空気分子を帯電させて陰イオンを生じることがある。
この場合、理論的には、光電仕事関数はフェルミ準位に等しく、接触電位差(CPD)測定に(1つの電極として)関係するのは金属フェルミ準位であることが示唆される。CPD測定では、これは分散面、すなわち測定される各電極の対向面の平均仕事関数であり、最小仕事関数ではないことに注目されたい。2つの測定は、関係するコンデンサが理想的なものである、すなわち寄生容量が存在せず、Vcpd測定に関係する2つの表面が完全に均一である場合にのみ一致するであろう。関係する電子は伝導電子であり、通常は端に、すなわち表面領域に存在することにさらに注目されたい。
図23は、理想清浄金属に関する光電子放出を示し、金属中の電子2300が斜線によって表される。フォトンエネルギーEph≧Φを有する入射UV光2302(持続波であるか又は周波数ωpeでチョップされるかのいずれか)が光電子放出を引き起こす。UVフォトンが金属表面内に吸着される場合、これは電子が金属を出ていくことを促進できる。金属は、通常は接地されるか又は一定電位に保たれ、そうしなければすぐに正に帯電することになり、さらなる電子が表面を出ていかないであろう。
電子は、通常は3μmの平均自由行路領域内の分子又は空気と相互作用して陰イオン2304を生じる。これらのイオンは、図の右下に示される正にバイアスされた(金属の)チップの方に自由にドリフトする。電子エネルギーの方向は上向きであり、そのため正に帯電しており、チップは金属のフェルミ準位よりも下に描かれる。チップ電圧Vチップはかなり低く、例えば5〜10Vであり、これはデータ収集システムの一部であるDACによって制御されてもよい。同様に、イオン電流効果は、コンピュータ制御されたDACを再び用いて金属サンプルを負にバイアスすることによって増大させることができる。
チップ出力信号は上述のように増幅される。このシステムは、高い信号レベル、したがって高速高精度測定を可能にする。信号処理は、光の強さ、バックグラウンドノイズレベルの波長依存変化を平均する自動調整を含んでもよく、次いで、平方根が求められてもよく、ピヤソン相関係数、放出率、及び光電仕事関数を求めることができる。
図24は、理想清浄(暗)半導体に関するエネルギー準位を示す。金属中の電子2400(左手側)及び半導体中の電子2402(右手側)は、前述のように斜線によって表される。半導体は、清浄であってゼロの表面電荷を呈するとみなされる。半導体は、伝導帯E及び価電子帯Eと呼ばれる2つのエネルギー準位/帯によって特徴づけられ、この場合、価電子帯の上部は電子で満たされるとみなされる。EとEとの間のバンドギャップのエネルギーはEと呼ばれる。半導体フェルミ準位Eは、通常はドーピング準位と呼ばれ、伝導帯とフェルミ準位とのエネルギー差はeVによって与えられ、ここで、「e」は電子電荷を表し、Vは、ドーピングレベルによって決まる電圧である(添字nは負電荷キャリアを指す)。
フェルミ準位での移動可能な電子は存在しないので、光電子放出は、半導体仕事関数Φ半導体を直接求めることができず、むしろこの表面の光電子閾値は、Φ半導体と、フェルミ準位と価電子帯とのエネルギー差、すなわちeVとの和である。
伝導帯と真空準位とのエネルギー差がeΧであり、ここでeΧは電子親和力と呼ばれ、これは、通常は不変の材料パラメータである。
図は、金属及び半導体のフェルミ準位の品質を示す。しかしながら、一般に、これは事実と異なるが、半導体仕事関数の変化を明瞭に示すために用いられている(図4参照)。
図25は、酸化物コーティングを有し且つ正味表面電荷を有さない半導体(暗)に関するエネルギーダイアグラムを示す。金属中の電子2500(左手側)及び半導体中の電子2502(右手側)は、前述のように斜線によって表される。この図では、半導体は、ワイドギャップ誘電体によって示される薄い酸化物コーティングを有する。この効果は、半導体仕事関数を寄与eVだけ増加させることであり、ここで、eVは、酸化物にわたる電圧を表し、図示されるように、酸化物表面での基本ダイポール(電荷の層)に起因するであろう。
半導体仕事関数はeVに等しい量だけ増加し、半導体の光電子閾値も増加した。金属−半導体構成にわたる接触電位差Vcpdが存在することが観測され、ここでVcpd=eVである。
酸化物と半導体との界面での変化はなく、すなわちQ=0である。半導体電子親和力Χも変化せず、半導体内のエネルギーバンドは平坦なままであり、バンドギャップEは影響されない。
この場合、半導体仕事関数Φ半導体が(Φ半導体+eV)に増加し、光電子放出閾値はまた、Φ半導体+eVに等しい。接触電位の変化Vcpd=Vである。
図26は、帯電した酸化物コーティング及び表面電荷≦0を有する半導体(暗)を示す。金属中の電子2600(左手側)及び半導体中の電子2602(右手側)は、前述のように斜線によって表される。この図は空気中の半導体の現実的な表現である。この場合、酸化物内に負電荷が存在し、これは半導体の表面領域において正電荷を誘起する効果を有する。これは、半導体の表面領域付近の電荷キャリアが所謂二重層における電界の影響を受けることを意味する。この場合、半導体における正電荷の効果は、エネルギーバンドを下向きに曲げることである。バルクにおけるフェルミ準位の位置(表面から程遠い)は、主として半導体ドーピングによって決定されるので、不変のままである。
正味の効果は、半導体のフェルミ準位、したがって仕事関数をeVに等しい量だけ減少させることであり、ここで、Vは、半導体表面電位と呼ばれる。しかしながら、価電子帯極大の位置の影響を受ける光電子放出閾値は変化しない。
要約すると、半導体仕事関数に対して敏感なCPD技術によって酸化物コーティングの電荷を求めることができる。しかしながら、それらは、価電子帯極大のエネルギーが不変のままである場合、光電子閾値測定を用いて求めることができない。
図27は、Eph≧Eでの照射下の半導体を示す。暗の場合及び照射される場合の電子2700及び2702がそれぞれ斜線で示される。この図は、半導体バンドギャップエネルギーよりも高いフォトンエネルギーの低強度光によって照射されるときに、半導体内の光吸着が、半導体電荷を減らす又はヌルにする傾向がある自由キャリアを生じることを示す。これは、結果的に平坦なエネルギーバンドダイヤグラムをもたらし、したがって、照射された場合と照射されていない場合とのCPDの差が表面電位V、すなわちΔVcpd=eVをもたらす。
図28は、照射されない半導体PN接合の(i)接触前、(ii)接触後、及び(iii)均衡点でのCPD測定を示す。半導体サンプルは、n型領域が金属振動電極(ケルビンプローブ)に面する状態のPN接合によって表される。図28(i)では、半導体のフェルミ準位Efsは接触部にわたって連続しており、金属におけるフェルミ準位Φよりも低いとみなされる。電気的に接触すると2つのフェルミ準位が等しくなる。電子は金属に伝導される際に負電荷を帯び、同様に半導体表面は等しい大きさの正電荷を帯びる。結果として生じる2つの表面間の電圧は接触電位差Vcpdと呼ばれ、その値は本明細書で説明される制御されたチップ電位及び信号検出回路を用いて確かめられる。接合のn型領域とp型領域との間にエネルギー差eVbiが存在し、ここで、Vbiは組込み(built−in)電位と呼ばれる。
図29は、Eph≧Eでの照射される半導体PN接合の表面光起電力分光法を示す。接合(太陽電池)がバンドギャップエネルギーを上回る光を照射されない場合、n型表面領域がしばしば非常に薄い、例えば<100nmであるので、移動可能な電子及び正孔が主にp型バルク領域に生じる。結果的に生じる電荷の流れは、組込み電位を減少させる傾向があり、その結果、n領域及びp領域におけるエネルギーバンドが互いにより近づく。半導体フェルミ準位のシフトはeVOCであり、ここでVOCは開回路電圧と呼ばれ、これはケルビンプローブによって直接測定される。現代の有機光起電力(OPV)太陽電池の場合、通常、複数のpn接合が関与する。CPD技術を用いて測定される表面光起電力スペクトルの試験は、太陽によって放出される光スペクトルに対応する照射下での太陽電池の電気的挙動に関する情報が得られることを可能にする。
図30は、前述の実施形態で用いられ得る測定構成の概略図を示す。ここで、この構成は、PE測定及び照射されるCPD測定のためのチョッパ及びシャッタと共に、2つの独立にコンピュータ制御される光源3000、3002を備える。光ビームの注入角度(θ)は、例えば、PEモードでのコーティング厚さを研究するために制御することができる。
サンプル3004は、上にチップ3008(コレクタ)が位置決めされる状態で、x,y,zステージ3006上に設置される。サンプル3004は、CPDトポグラフィか又は光電子放出閾値トポグラフィのいずれかを提供するために走査することができる。CPDモードでのサンプルとチップとの分離(d)は、Vptp対Vチップデータセットの勾配を用いて制御することができる。
筐体の壁は、サンプル−チップ構成から少なくとも距離xだけ離れており、スプリアス反射をなくすために暗色にされてもよい。距離xは、任意の特定のサンプル及び/又はチップの特定の幾何学的形状に応じて選択されてもよい。しかしながら、距離が225mm以上のときに広範囲のサンプルを分析することができる。金属製の筐体の壁は接地され、したがって、この配置はファラデーケージを形成する。チャンバ内のすべての金属部品が接地される。
図31は、半導体PET/CPD/SPV/SPSに関する測定モードのまとめを示すエネルギーダイアグラムを示し、電子3100は前述のように表される。図面では、
光電子閾値=価電子帯極大=eV+eΧ+E
CPD(暗)=半導体仕事関数eΦ=eV+eΧ+eV+eV
SPV=CPD(照射される)−CPD(暗)=半導体表面電位eV
SPS=CPD(照射される、可変波長)、半導体バンドギャップE
ΔCPD(酸化物被覆表面−清浄表面)=eV
Φ=半導体仕事関数
=半導体フェルミ準位
e=電子電荷
Χ=半導体電子親和力
=半導体バンドギャップエネルギー
=半導体表面電位
eV=酸化物層又は大気のコーティングを表わす他の層にわたるエネルギー差
eV=伝導帯とフェルミ準位とのエネルギー差
eV=価電子帯とフェルミ準位とのエネルギー差
図32は、半導体PET/CPD/SPV/SPSに関する測定モードのまとめを示すエネルギーダイアグラムを示し、電子3200は前述のように表される。図面では、2つの異なる分光学的方法、すなわち、VBMを下回るエネルギー準位からの電子を遊離させるのにUV光が用いられる場合の表面光電子放出分光法(この技術は金属と半導体との両方に適用することができる)と、半導体バンドギャップ内の表面状態に電子が出入りするのを促進させるのに外部照射が用いられる場合の表面光起電力分光法が概説される。
本発明の範囲から逸脱することなく上記に種々の改善及び修正を加えることができる。

Claims (25)

  1. 測定装置であって、
    ケルビンプローブとサンプル表面との接触電位差を測定することができる測定デバイスと、
    使用中に前記サンプル表面上に提供される又は前記サンプル表面を形成するサンプルからの光電子放出をトリガするための放射を放出するように構成される光源と、
    前記光源から放出される放射をフィルタする波長セレクタと、
    を備え、
    前記ケルビンプローブ及び前記サンプル表面が気体環境に露出又は収容され、
    前記ケルビンプローブが、相対仕事関数測定の実行のための前記ケルビンプローブ及び前記サンプル表面が前記サンプル表面に垂直な方向の動き成分をもって互いに対して振動する第1のモードと、検出された光電子放出から導出される絶対仕事関数測定の実行のための前記ケルビンプローブが前記サンプル表面に垂直な方向に前記サンプル表面と固定関係にある、連続フォトンエネルギー測定のための第2のモードで選択的に動作可能である、測定装置。
  2. 前記気体環境が空気を含む、請求項1に記載の装置。
  3. 前記ケルビンプローブ及び/又は前記サンプル表面を収容するハウジングをさらに備え、前記ハウジング内の前記環境が、制御された相対湿度を有するガス又は空気、若しくは窒素のような制御されたガスを有する気体環境を提供するように制御される、請求項1又は請求項2に記載の装置。
  4. 前記ケルビンプローブに印加される電位を或る電圧範囲を通して変化させる手段をさらに備える、請求項1から3までのいずれかに記載の装置。
  5. 前記光源から放出される放射が一定の強度(DC)である、請求項1から4までのいずれかに記載の装置。
  6. 前記光源から放出される放射が変調(AC)される、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の装置。
  7. 前記光源から放出される放射を光チョッパのチョッパホイールの周波数で変調するための光チョッパを備える、請求項6に記載の装置。
  8. 前記光源から放出される放射の信号強度を表すピークツーピーク電流データが、時間ウィンドウ中の信号強度を平均する方法で得られる、請求項6又は請求項7に記載の装置。
  9. 前記光源から放出される放射の信号位相情報を用いて、実効ノイズを低減させる、請求項6から請求項8までのいずれかに記載の装置。
  10. CPD電圧がオフヌル線形外挿技術によって求められる、請求項1から9までのいずれかに記載の装置。
  11. 前記第1のモード及び前記第2のモードで同時に又は準同時に測定を行うように構成される、請求項1から10までのいずれかに記載の装置。
  12. 前記光源が紫外広帯域光源である、請求項1から11までのいずれかに記載の装置。
  13. 前記光源が、1つ以上の発光ダイオードを含む、請求項1から12までのいずれかに記載の装置。
  14. 複数のLEDを、それらの強度特徴、位相特徴、及び変調周波数特徴のうちの1つ又は複数に関して個々に自動的に又は選択的に制御することができる、請求項13に記載の装置。
  15. 可視範囲及び/又は赤外範囲内の放射を放出するための光源を備える、請求項1ないし11、13、および14のいずれかに記載の装置。
  16. 前記光源が、サンプル表面光起電力技術の実行のために使用されてもよい単一周波数の光を放出するように構成される、請求項15に記載の装置。
  17. サンプル表面光起電力分光法を行うために、前記光源から放出される光の周波数は可変であってもよい、請求項15に記載の装置。
  18. 前記サンプルの前記サンプル表面にわたるパラメータをマッピングするために前記サンプルをケルビンプローブチップに対して走査するための機構を備える、請求項1から17までのいずれかに記載の装置。
  19. チョッパを有するUV光源と、チョッパを有する可視/赤外光源とを備え、2つの異なる光源を用いる測定を同時又は準同時の様態で行うことができるように、前記UV光源に対するチョッパのチョッピング周波数を、前記可視/赤外光源に対するチョッパのチョッピング周波数とは異なるように選択することができる、請求項1から18までのいずれかに記載の装置。
  20. (バルク)金属、金属合金、半導体、絶縁体、液体、ポリマー、複合材、導電性ポリマー、生物学的組織、薄膜を有する又は有さない粉体又は液体サンプル表面のうちのいずれか1つを含むサンプルとともに使用される、請求項1から19までのいずれかに記載の装置。
  21. 前記ケルビンプローブのチップが、円形の幾何学的形状を有し、前記チップが、前記サンプル表面上に入射する光の量を反射によって増大させるために除去される、前記円形の幾何学的形状中の任意の大きさ及び形状の1つ以上の区域を備える、請求項1から20までのいずれかに記載の装置。
  22. ケルビンプローブチップが正電圧に一定に保たれ、且つサンプル表面と固定関係に保たれ、フォトンのエネルギーが走査され、光電子放出電流がDCモードか又はACモードのいずれかで検出され、DOS(表面状態密度)情報が積分電流を微分することによって得られる、表面状態密度(DOS)分光法を行うように構成されている、請求項1から21までのいずれかに記載の装置。
  23. フォトンエネルギーが結果的に光電子放出を引き起こすエネルギーに一定に保たれ、且つケルビンプローブチップがサンプル表面と固定関係に保たれ、チップ電位が或る電圧範囲を通して走査され、光電子放出電流がDCモードか又はACモードのいずれかで検出され、DOS情報が積分電流を微分することによって得られる、表面状態密度(DOS)分光法を行うように構成されている、請求項1から請求項21までのいずれかに記載の装置。
  24. サンプル表面を分析する方法であって、ケルビンプローブとサンプル表面との接触電位差を測定するステップと、前記サンプル表面上に提供される又は前記サンプル表面を形成するサンプルからの光電子放出をトリガするための放射を放出するステップと、光源から放出される放射を波長セレクタを通してフィルタリングするステップと、を含み、前記ケルビンプローブ及び前記サンプル表面が気体環境に露出又は収容され、前記ケルビンプローブが、相対仕事関数測定の実行のための前記ケルビンプローブ及び前記サンプル表面が前記サンプル表面に垂直な方向の動き成分をもって互いに対して振動する第1のモードと、検出された光電子放出から導出される絶対仕事関数の実行のための前記ケルビンプローブが前記サンプル表面に垂直な方向に前記サンプル表面と固定関係にある、連続フォトンエネルギー測定のための第2のモードで選択的に動作可能である、方法。
  25. コンピュータ上で実行するときに、前記コンピュータを請求項1から請求項23までのいずれかに記載の装置又は請求項24に記載の方法のすべてを制御する制御機構として機能させる命令でエンコードされるコンピュータプログラム。
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