JP6017356B2 - 無灰炭の製造方法 - Google Patents

無灰炭の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6017356B2
JP6017356B2 JP2013061888A JP2013061888A JP6017356B2 JP 6017356 B2 JP6017356 B2 JP 6017356B2 JP 2013061888 A JP2013061888 A JP 2013061888A JP 2013061888 A JP2013061888 A JP 2013061888A JP 6017356 B2 JP6017356 B2 JP 6017356B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solvent
coal
distillation
ashless coal
tank
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013061888A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014185264A (ja
Inventor
吉田 拓也
拓也 吉田
憲幸 奥山
憲幸 奥山
繁 木下
繁 木下
康爾 堺
康爾 堺
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2013061888A priority Critical patent/JP6017356B2/ja
Publication of JP2014185264A publication Critical patent/JP2014185264A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6017356B2 publication Critical patent/JP6017356B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、石炭から灰分を除去した無灰炭(改質炭とも呼ばれる)を得るための無灰炭の製造方法に関する。
無灰炭の製造方法として、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載の無灰炭の製造方法は、石炭と溶剤とを混合してスラリーを調製し、得られたスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出し、石炭成分が抽出されたスラリーを、溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液部と、溶剤に不溶な石炭成分を含む非溶液部とに分離した後、分離された溶液部から溶剤を分離して無灰炭を得る、というものである。特許文献1に記載の無灰炭の製造方法では、溶液部と非溶液部との分離に重力沈降法を採用するに際し、一般炭に粘結炭を混合した石炭を無灰炭の原料として用いることを特徴としている。
特開2009−227718号公報
特許文献1にも記載されているように、無灰炭は、製鉄用コークスの原料として特に重要な品質である軟化溶融性に優れ、原料石炭が軟化溶融性を有しなくとも、得られた無灰炭は良好な軟化溶融性を有する。そのため、製鉄用コークス製造用の粘結剤として無灰炭を使用することが提案されている。
また、無灰炭を、製鉄用電気炉・キャパシタなどの電極材料として使用することも提案されている。
製鉄用コークス製造用の原料(粘結剤)として無灰炭を使用する場合、その軟化溶融性は良好である(高い)ことが要求される。一方、製鉄用電気炉・キャパシタなどの電極材料として無灰炭を使用する場合、その軟化溶融性は低いほうが好ましい。このように、用途により無灰炭に必要とされる軟化溶融性が異なる。
しかしながら、特許文献1には、無灰炭の軟化溶融性をコントロールする方法は記載されていない。より詳細には、無灰炭の製造工程中の条件設定により、無灰炭の軟化溶融性をコントロールすることは特許文献1に記載されていない。
ここで、原料石炭の軟化溶融性を分析するなどして、その結果をもとに原料石炭の炭種を選択したり、異なる軟化溶融性の石炭を原料石炭に混ぜたりすることで、無灰炭の軟化溶融性をコントロールすることはでき得る。しかしながら、これら方法は、いずれも原料石炭の物性のみに依存する方法であり、所望の軟化溶融性を有する無灰炭を得るための原料石炭が、無灰炭の用途により決定されてしまうので好ましくない。例えば、石炭の産地で無灰炭を製造する場合、原料(石炭)の炭種を種々選択できる余地がないからである。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、無灰炭の製造工程中の条件設定により、無灰炭の軟化溶融性を容易に調整する方法を提供することである。
本発明は、無灰炭の軟化溶融性の調整方法であって、溶剤に可溶な石炭成分が溶解した溶液から溶剤を分離する蒸留工程において、所望の軟化溶融性を有する無灰炭となるように蒸留温度を調節することで、前記溶液から溶剤を分離してなる無灰炭の軟化溶融性を調整することを特徴とする。
また、本発明を無灰炭の製造方法としてとらえることもできる。その場合、本発明は、石炭と溶剤とを混合して得られるスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する抽出工程と、前記抽出工程で得られたスラリーを、溶剤に可溶な石炭成分が溶解した溶液と、溶剤に不溶な石炭成分が濃縮した固形分濃縮液とに分離する分離工程と、前記分離工程で分離された溶液から溶剤を分離する蒸留工程と、を備える、無灰炭の製造方法である。この無灰炭の製造方法は、所望の軟化溶融性を有する無灰炭を得るための前記蒸留工程における蒸留温度を決定する蒸留温度検討段階を有し、前記蒸留温度検討段階にて決定した蒸留温度で前記蒸留工程を行うことで、前記溶液から溶剤を分離してなる無灰炭の軟化溶融性を調整することを特徴とする。
本発明によると、無灰炭の製造工程中の条件設定により、無灰炭の軟化溶融性を容易に調整することができる。
本発明の一実施形態に係る無灰炭の製造方法を説明するための無灰炭製造設備を示すブロック図である。 フラッシュ蒸留(フラッシュ蒸留槽内の圧力:常圧)後の試料の軟化溶融性の測定結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、無灰炭の製造工程を、順を追って説明しつつ、その説明の中で、無灰炭(HPC)の軟化溶融性の調整方法について触れることとする。
図1に示すように、無灰炭製造設備100は、無灰炭製造工程の上流側から順に、石炭ホッパ1・溶剤タンク2、スラリー調製槽3、移送ポンプ4、予熱器5、抽出槽6、重力沈降槽7、フィルターユニット8、フラッシュ蒸留槽9、および薄膜蒸留槽11を備えている。なお、副産物として得られる副生炭(RC)は、重力沈降槽7の下流側に配置された、フラッシュ蒸留槽10、および乾燥機12にて、溶剤不溶成分濃縮液(固形分濃縮液)から溶剤が蒸発分離させられることで得られる。
ここで、無灰炭の製造方法は、蒸留温度検討段階、抽出工程、分離工程(溶剤可溶成分分離工程)、および蒸留工程(溶剤分離工程)を有する。以下、蒸留温度検討段階および各工程について説明する。なお、本製造方法において原料とされる石炭に、特に制限はなく、抽出率(溶剤に抽出される石炭の可溶成分の割合)の高い瀝青炭を用いてもよいし、より安価な劣質炭(亜瀝青炭、褐炭)を用いてもよい。また、無灰炭とは、実質的に灰分を含まない改質炭のことをいい、具体的には、灰分が5重量%以下、好ましくは3重量%以下のもののことをいう。
(蒸留温度検討段階)
蒸留温度検討段階は、所望の軟化溶融性を有する無灰炭を得るために、上記した蒸留工程(溶剤分離工程、詳しくは後述する)における蒸留温度を決定するための段階である。なお、抽出工程、分離工程(溶剤可溶成分分離工程)、および蒸留工程は、無灰炭を製造するために毎回行われる一連の連続する工程であるが、この蒸留温度検討段階は、毎回行われる一連の連続する工程として行われる必要はない。この蒸留温度検討段階は、例えば、無灰炭の製造において同じ原料(石炭)を使用し続ける場合は、少なくとも1回行えばよいものである。
蒸留温度検討段階は、より具体的には、原料(石炭)について、蒸留温度と、その原料(石炭)から得られる無灰炭の軟化溶融性との関係の基礎データを取得し、取得した基礎データに基づいて蒸留工程での蒸留温度を決定する段階である。後に説明する図2に示したデータは、基礎データの一例である。蒸留温度検討段階にて決定した蒸留温度で蒸留工程を行う、すなわち、所望の軟化溶融性を有する無灰炭となるように蒸留温度を調節する。これにより、溶液(溶剤に可溶な石炭成分が溶解した溶液)から溶剤を分離してなる無灰炭の軟化溶融性を調整するのである。
実験により検証した結果を後述するが、本発明者らは、無灰炭の軟化溶融性に関して鋭意検討した結果、溶剤に可溶な石炭成分が溶解した溶液から溶剤を分離する蒸留工程においてその蒸留温度を調節することで、得られる無灰炭の軟化溶融性を所望のものに調整することができることを見出したのである。
なお、蒸留温度検討段階で用いる溶剤は、抽出工程で使用する溶剤を用いる。また、蒸留温度検討段階での圧力設定は、蒸留工程での圧力設定と同じとする。
(抽出工程)
抽出工程は、石炭と溶剤とを混合して得られるスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する工程である。本実施形態において、この抽出工程は、石炭と溶剤とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリー調製工程で得られたスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する(溶剤に溶解させる)抽出本工程(溶剤可溶成分抽出工程)とに分かれている。
<スラリー調製工程>
スラリー調製工程は、図1中、スラリー調製槽3で実施される。原料である石炭が石炭ホッパ1からスラリー調製槽3に投入されるとともに、溶剤タンク2からスラリー調製槽3に溶剤が投入される。スラリー調製槽3に投入された石炭および溶剤は、攪拌機3aで混合されて石炭と溶剤とからなるスラリーとなる。
溶剤に対する石炭の混合比率は、例えば、乾燥炭基準で10〜50重量%であり、より好ましくは、20〜35重量%である。
<抽出本工程>
抽出本工程は、図1中、予熱器5および抽出槽6で実施される。スラリー調製槽3にて調製されたスラリーは、移送ポンプ4によって、予熱器5に供給されて所定温度まで加熱された後、抽出槽6に供給され、攪拌機6aで攪拌されながら所定温度で保持されて抽出が行われる。
石炭と溶剤とを混合して得られるスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出するにあたっては、石炭に対して大きな溶解力を持つ溶媒、多くの場合、芳香族溶剤(水素供与性あるいは非水素供与性の溶剤)と石炭とを混合して、それを加熱し、石炭中の有機成分を抽出することになる。
非水素供与性溶剤は、主に石炭の乾留生成物から精製した、2環芳香族を主とする溶剤である石炭誘導体である。この非水素供与性溶剤は、加熱状態でも安定であり、石炭との親和性に優れている。そのため、この非水素供与性溶剤を用いると抽出率が高まる。また、この非水素供与性溶剤は、蒸留などの方法で容易に回収可能な溶剤である。非水素供与性溶剤の主な成分としては、2環芳香族であるナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレン等が挙げられ、その他の非水素供与性溶剤の成分として、脂肪族側鎖を有するナフタレン類、アントラセン類、フルオレン類、また、これらにビフェニルや長鎖脂肪族側鎖を有するアルキルベンゼンが含まれる。
なお、上記の説明では非水素供与性化合物を溶剤として用いる場合について述べたが、テトラリンを代表とする水素供与性の化合物(石炭液化油を含む)を溶剤として用いてもよいことは勿論である。水素供与性溶剤を用いた場合、無灰炭の収率が向上する。
また、溶剤の沸点は特に制限されるものではない。抽出本工程および分離工程での圧力低減、抽出本工程での抽出率、蒸留工程などでの溶剤回収率などの観点から、例えば、180〜300℃、特に240〜280℃の沸点(常圧下)の溶剤が好ましく使用される。
抽出本工程でのスラリーの加熱温度は、溶剤可溶成分が溶解され得る限り特に制限されず、溶剤可溶成分の十分な溶解と抽出率の向上の観点から、例えば、300〜420℃であり、より好ましくは、360〜400℃である。
また、加熱時間(抽出時間)もまた特に制限されるものではないが、十分な溶解と抽出率の向上の観点から、例えば、10〜60分間である。加熱時間は、図1中、予熱器5および抽出槽6での加熱時間を合計したものである。
なお、抽出本工程は、窒素などの不活性ガスの存在下で行う。抽出槽6内の圧力は、抽出の際の温度や用いる溶剤の蒸気圧にもよるが、1.0〜2.0MPaが好ましい。抽出槽6内の圧力が溶剤の蒸気圧より低い場合には、溶剤が揮発して液相に閉じ込められず、抽出できない。溶剤を液相に閉じ込めるには、溶剤の蒸気圧より高い圧力が必要となる。一方、圧力が高すぎると、機器のコスト、運転コストが高くなり、経済的ではない。
なお、本実施形態のように、石炭と溶剤とを混合した後に、得られたスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出するのではなく、溶剤のみを先に加熱し、加熱された高温(例えば380℃)の溶剤中に石炭を供給(乾燥状態のまま供給)して、石炭を混合・加熱し、石炭中の溶剤可溶成分を溶剤で抽出するようにしてもよい。
(分離工程)
分離工程(溶剤可溶成分分離工程)は、抽出工程で得られたスラリーを、例えば重力沈降法により、溶剤に可溶な石炭成分が溶解した溶液と、溶剤に不溶な石炭成分が濃縮した固形分濃縮液(溶剤不溶成分濃縮液)とに分離する工程である。この分離工程は、図1中、重力沈降槽7で実施される。抽出工程で得られたスラリーは、重力沈降槽7内で、重力にて、溶液としての上澄み液と、固形分濃縮液とに分離される。重力沈降槽7の上部の上澄み液は、必要に応じてフィルターユニット8を経て、フラッシュ蒸留槽9へ送られる。重力沈降槽7の下部に沈降した固形分濃縮液はフラッシュ蒸留槽10へ送られる。
重力沈降法は、スラリーを槽内に保持することにより、重力を利用して溶剤不溶成分を沈降・分離させる方法である。溶剤に可溶な石炭成分が溶解した溶液よりも比重が大きい、溶剤不溶成分(例えば灰分)は重力沈降槽7の下部に重力により沈降する。スラリーを槽内に連続的に供給しながら、上澄み液を上部から、固形分濃縮液を下部から連続的に排出することにより、連続的な分離処理が可能である。
重力沈降槽7内は、石炭から溶出した溶剤可溶成分の再析出を防止するため、保温(または加熱)したり、加圧したりしておくことが好ましい。保温(加熱)温度は、例えば、300〜380℃であり、槽内圧力は、例えば、1.0〜3.0MPaとされる。
なお、抽出工程で得られたスラリーを、溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液と、溶剤に不溶な石炭成分が濃縮した固形分濃縮液とに分離する方法として、重力沈降法以外に、濾過法、遠心分離法などがある。
(蒸留工程(無灰炭取得工程))
蒸留工程は、分離工程で分離された溶液(上澄み液)から溶剤を分離して無灰炭(HPC)を得る工程である。本実施形態において、この蒸留工程は、第1蒸留工程(溶剤分離第1工程)と、第2蒸留工程(溶剤分離第2工程)とに分かれている。
<第1蒸留工程>
第1蒸留工程は、図1中、フラッシュ蒸留槽9で実施される。すなわち、本実施形態では、第1蒸留工程としてフラッシュ蒸留法が用いられている。重力沈降槽7で分離された溶液は、フィルターユニット8で濾過された後、フラッシュ蒸留槽9に供給され、フラッシュ蒸留槽9内で上澄み液から溶剤が蒸発分離される。
なお、フラッシュ蒸留法とは、高温高圧状態の溶液を、これよりも低圧条件下に解放することで溶液中の溶剤を沸騰・揮発させて連続蒸留を行うという蒸留法である。重力沈降槽7で分離された溶液を、重力沈降槽7内よりも低圧のフラッシュ蒸留槽9内に噴霧させることで、溶液中の溶剤を沸騰・揮発させて分離する。
フラッシュ蒸留槽9内の圧力は、前記した蒸留温度検討段階で設定された圧力とされ、常圧(0.1MPa)とされたり、常圧よりも低い圧力(減圧状態)とされたりする。さらには、真空であってもよい。
フラッシュ蒸留槽9内の温度、すなわち蒸留温度は、前記した蒸留温度検討段階にて決定された温度とされる。例えば、160〜300℃の範囲の中の所定の温度となるように、フラッシュ蒸留槽9内の温度は調整される。この第1蒸留工程により、得られる無灰炭の軟化溶融性が調整される。
フラッシュ蒸留槽9内の温度の調整方法にはいくつかある。例えば、フラッシュ蒸留槽9の周囲に加熱器(不図示)を取り付け、この加熱器による加熱でフラッシュ蒸留槽9内の温度を調整してもよい。また、重力沈降槽7とフラッシュ蒸留槽9との間に加熱器(不図示)などを設けて、フラッシュ蒸留槽9に供給する溶液の温度を調整することで、フラッシュ蒸留槽9内の温度を調整してもよい。
フラッシュ蒸留槽9内の温度は、フラッシュ蒸留槽9内の気相部の温度としてもよいし、フラッシュ蒸留槽9内の液相部(溶液)の温度としてもよい。フラッシュ蒸留槽9内の気相部の温度とフラッシュ蒸留槽9内の液相部(溶液)の温度とはほぼ等しいからである。
フラッシュ蒸留槽9にて分離された溶剤は、溶剤タンク2に戻されて、循環して繰り返し使用することができる。
<第2蒸留工程>
第2蒸留工程は、第1蒸留工程で得られた溶液(液状の無灰炭)に残存する溶剤を分離する工程であり、図1中、薄膜蒸留槽11で実施される。すなわち、本実施形態では、第2蒸留工程として薄膜蒸留法が用いられている。薄膜蒸留法とは、スクレーパ11a(ワイパーともいう)を収容した薄膜蒸留槽11の上部から薄膜蒸留槽11内に蒸留対象(本実施形態ではフラッシュ蒸留槽9からの溶液)を導入し、薄膜蒸留槽11の内壁にスクレーパ11aにて蒸留対象の薄膜を形成させ連続蒸留を行うという蒸留法である。
薄膜蒸留槽11内の圧力は、常圧(0.1MPa)とされたり、常圧よりも低い圧力(減圧状態)とされたりする。
薄膜蒸留槽11の内壁の温度は、残存する溶剤を蒸発分離させてその結果得られる無灰炭の溶剤含有率が例えば2wt%以下となるような温度に設定される。なお、薄膜蒸留槽11の内壁の温度(蒸留温度)および圧力は、無灰炭の軟化溶融性に影響を与えない温度および圧力とされることが好ましい。前記した第1蒸留工程を行うことで、無灰炭の軟化溶融性は調整済みであるからである。薄膜蒸留槽11の内壁の温度の調整方法としては、例えば、前記したフラッシュ蒸留槽9の場合と同様、薄膜蒸留槽11の周囲に加熱器(不図示)を取り付け、この加熱器による加熱で薄膜蒸留槽11の内壁の温度を調整する方法が挙げられる。
なお、溶液(上澄み液)から溶剤を分離する方法は、一般的な蒸留法を用いることができる。すなわち、第1蒸留工程および第2蒸留工程で採用する蒸留法は、前記した蒸留法に限定されることはない。
さらには、第2蒸留工程を乾燥工程とする、すなわち、例えば薄膜蒸留槽11の代わりに後述する乾燥機12を配置して、当該乾燥機12にて残存する溶剤を蒸発させて、製品として要求される所望の溶剤含有率(例えば2wt%以下)の無灰炭としてもよい。
<無灰炭(HPC)の用途>
無灰炭(HPC)は、灰分をほとんど含まず、水分は皆無であり、原料石炭よりも高い発熱量を示す。前記したように、無灰炭の用途としては、製鉄用コークス製造用の粘結剤、製鉄用電気炉・キャパシタなどの電極材料としての用途がある。さらには、ガスタービン燃焼による高効率複合発電システムのガスタービン直噴燃料としての用途も注目されている。
(副生炭取得工程)
副生炭取得工程は、分離工程(溶剤可溶成分分離工程)で分離された固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離して副生炭を得る工程である。この副生炭取得工程は、図1中、フラッシュ蒸留槽10および乾燥機12で実施される。乾燥機12としては例えばスチームチューブドライヤが用いられる。重力沈降槽7で分離された固形分濃縮液はフラッシュ蒸留槽10に供給され、フラッシュ蒸留槽10内で固形分濃縮液から溶剤が蒸発分離される。その後、乾燥機12に入れられて、残存する溶剤が蒸発分離される。これらにより副生炭の溶剤含有率は例えば2wt%以下に調整される。なお、副生炭取得工程は、必須の工程ではない。
フラッシュ蒸留槽10にて分離された溶剤は、溶剤タンク2に戻されて、循環して繰り返し使用することができる。溶剤の分離により、固形分濃縮液から灰分などを含む溶剤不溶成分が濃縮された副生炭(RC、残渣炭ともいう)を得ることができる。
<副生炭(RC)の用途>
副生炭は、灰分が含まれるものの水分が皆無であり、発熱量も十分に有している。副生炭は軟化溶融性を示さないが、含酸素官能基が脱離されているため、配合炭として用いた場合に、この配合炭に含まれる他の石炭の軟化溶融性を阻害するようなものではない。したがって、この副生炭は、通常の非微粘結炭と同様に、コークス原料の配合炭の一部として使用することができ、また、コークス原料炭とせずに、各種の燃料用として使用することも可能である。
(蒸留温度と無灰炭の軟化溶融性との関係に関する検証実験)
<実験1>
まず試験方法について説明する。前記した分離工程(溶剤可溶成分分離工程)で分離された溶液(上澄み液、抽出物(溶剤可溶石炭成分)と溶剤との混合物)として、ベンチスケールの設備で製造したものを用いた。なお、溶剤として、2環芳香族であるメチルナフタレンを主成分とする石炭から精製した油分(石炭誘導体)を用いた。この溶剤(純溶剤)の沸点は約242℃である。
この溶液を、常圧下で温度を変えてフラッシュ蒸留した(図1中のフラッシュ蒸留槽9での操作に相当する)。その後、得られた無灰炭の溶剤含有率がすべて同じとなるように160℃で真空乾燥を行った後に、ギーセラー流動度計で流動度を測定した。
なお、得られた無灰炭の溶剤含有率がすべて同じとなるようにするのは、同条件の溶剤含有率で軟化溶融性を比較するためと、製品としての無灰炭は、その溶剤含有率を例えば2%以下にしなければならない、という要求があるからである。160℃で真空乾燥を行うことにより、無灰炭の溶剤含有率は0.1wt%以下となる。160℃での真空乾燥は、無灰炭の軟化溶融性に影響を与えない操作である。
測定結果を図2に示している。なお、図2中に、蒸留温度とともにフラッシュ後(蒸留後)の溶剤含有率を示している。フラッシュ後の無灰炭の溶剤含有率とは、160℃で真空乾燥を行う前の無灰炭の溶剤含有率のことである。
図2からわかるように、例えば281℃で蒸留した場合、293℃で蒸留した場合に比べて、製品としての無灰炭の軟化点を100℃低くすることができる。すなわち、本実験(実験1)より、蒸留温度と無灰炭の軟化溶融性との間には、明確に区別できる規則的な関係があることがわかる。これより、溶剤に可溶な石炭成分が溶解した溶液から溶剤を分離する蒸留工程においてその蒸留温度を調節することで、得られる無灰炭の軟化溶融性を所望のものに調整することができるのである。
<実験2>
抽出物(溶剤可溶石炭成分)と溶剤との混合物である溶液の単蒸留を常圧で行い、異なる最終温度で蒸留操作を停止した後に、容器内に残った無灰炭の重量平均分子量を求めた。重量平均分子は、GPC分析により求めた。なお、実験1と同様、ここで用いた溶液もベンチスケールの設備で製造したものである。溶剤に関しても実験1と同じである。ただし、実験1とは異なり、無灰炭の真空乾燥は行っていない。すなわち、表1に示す無灰炭の重量平均分子量は、真空乾燥を行わずにGPC分析を行って求めたものである。結果を表1に示す。
Figure 0006017356
表1から、蒸留温度が高いと無灰炭の重量平均分子量が大きくなることがわかる。この知見は、本発明者らが見つけた新しい知見である。蒸留温度が高いと無灰炭の重量平均分子量が大きくなるのは、蒸留温度が高いと重合反応が進みやすく、その結果、重量平均分子量が大きくなるからであると考えられる。一方で、物質は、その分子量が大きいと流動度が低くなる傾向を示すという知見は既に存在する。これら知見より(本実験(実験2)より)、蒸留温度が高いと、無灰炭の流動度、すなわち軟化溶融性は低くなることがわかった。
この実験結果は、溶剤に可溶な石炭成分が溶解した溶液から溶剤を分離する蒸留工程においてその蒸留温度を調節することで、得られる無灰炭の軟化溶融性を所望のものに調整することができる、ことを裏付けている。
(本発明の作用・効果)
本発明に係る無灰炭の軟化溶融性の調整方法は、無灰炭の製造工程(抽出工程、分離工程(溶剤可溶成分分離工程)、および蒸留工程(溶剤分離工程))中の蒸留工程において、所望の軟化溶融性を有する無灰炭となるように蒸留温度を調節することで、溶液(抽出物(溶剤可溶石炭成分)と溶剤との混合物)から溶剤を分離してなる無灰炭の軟化溶融性を調整する、という方法である。
ここで、蒸留温度と無灰炭の軟化溶融性との間には、明確に区別できる規則的な関係があることが、前記した実験結果よりわかった。
すなわち、本発明によると、無灰炭の製造工程中の条件設定により、無灰炭の軟化溶融性を容易に調整することができる。結果として、製鉄用コークス製造用の原料、製鉄用電気炉・キャパシタなどの電極材料など、用途に応じた軟化溶融性を有する無灰炭を容易に製造することができる。
また、本発明は無灰炭の製造方法でもある。この無灰炭の製造方法は、所望の軟化溶融性を有する無灰炭を得るための蒸留工程における蒸留温度を決定する蒸留温度検討段階を有し、蒸留温度検討段階にて決定した蒸留温度で蒸留工程を行うことで、溶液から溶剤を分離してなる無灰炭の軟化溶融性を調整する。
ここで、前記蒸留工程は、蒸留法により溶剤が残存する無灰炭を得る溶剤分離第1工程と、無灰炭に残存する溶剤を蒸発分離する溶剤分離第2工程とに分かれており、蒸留温度検討段階にて決定した蒸留温度で溶剤分離第1工程を行うことで、溶液から溶剤を分離してなる無灰炭の軟化溶融性を調整することが好ましい。
この構成によると、製品として要求される所望の溶剤含有率(例えば2wt%以下)および軟化溶融性の条件をいずれも満たした無灰炭を製造することができる。なお、溶剤分離第1工程を行うことで、製品として要求される所望の溶剤含有率(例えば2wt%以下)が得られる場合には、その後の溶剤分離第2工程の実施を省くことができる。すなわち、蒸留工程は、第1蒸留工程(溶剤分離第1工程)のみとすることができる場合もある。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
1:石炭ホッパ
2:溶剤タンク
3:スラリー調製槽
4:移送ポンプ
5:予熱器
6:抽出槽
7:重力沈降槽
8:フィルターユニット
9、10:フラッシュ蒸留槽
11:薄膜蒸留槽
12:乾燥機
100:無灰炭製造設備

Claims (1)

  1. 石炭と溶剤とを混合して得られるスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する抽出工程と、
    前記抽出工程で得られたスラリーを、溶剤に可溶な石炭成分が溶解した溶液と、溶剤に不溶な石炭成分が濃縮した固形分濃縮液とに分離する分離工程と、
    前記分離工程で分離された溶液から溶剤を分離する蒸留工程と、
    を備える、無灰炭の製造方法において、
    所望の軟化溶融性を有する無灰炭を得るための前記蒸留工程における蒸留温度を決定する蒸留温度検討段階を有し、
    前記蒸留工程は、
    蒸留法により溶剤が残存する無灰炭を得る溶剤分離第1工程と、
    無灰炭に残存する溶剤を蒸発分離する溶剤分離第2工程と、
    を有し、
    前記蒸留温度検討段階にて決定した蒸留温度で前記溶剤分離第1工程を行うことで、前記溶液から溶剤を分離してなる無灰炭の軟化溶融性を調整することを特徴とする、無灰炭の製造方法。
JP2013061888A 2013-03-25 2013-03-25 無灰炭の製造方法 Active JP6017356B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013061888A JP6017356B2 (ja) 2013-03-25 2013-03-25 無灰炭の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013061888A JP6017356B2 (ja) 2013-03-25 2013-03-25 無灰炭の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014185264A JP2014185264A (ja) 2014-10-02
JP6017356B2 true JP6017356B2 (ja) 2016-10-26

Family

ID=51833129

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013061888A Active JP6017356B2 (ja) 2013-03-25 2013-03-25 無灰炭の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6017356B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017125118A (ja) * 2016-01-13 2017-07-20 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS56145974A (en) * 1980-04-14 1981-11-13 Toyo Eng Corp Preparation of solvent-refined coal
JP5390977B2 (ja) * 2009-07-31 2014-01-15 株式会社神戸製鋼所 鉄鉱石含有コークス、及び該鉄鉱石含有コークスの製造方法
JP5336971B2 (ja) * 2009-07-31 2013-11-06 株式会社神戸製鋼所 鉄鉱石含有コークスの製造方法
JP5466106B2 (ja) * 2009-07-31 2014-04-09 株式会社神戸製鋼所 鉄鉱石含有コークスの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014185264A (ja) 2014-10-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5334433B2 (ja) 無灰炭の製造方法
KR101576760B1 (ko) 무회탄의 제조 방법
JP6017371B2 (ja) 無灰炭の製造方法および炭素材料の製造方法
JP5839567B2 (ja) 溶剤分離方法
JP2013249360A (ja) 無灰炭の製造方法
JP6017356B2 (ja) 無灰炭の製造方法
AU2014246307B2 (en) Method for producing ashless coal
JP5328180B2 (ja) 無灰炭の製造方法
KR101583178B1 (ko) 중력 침강조 및 이것을 사용한 무회탄의 제조 방법
AU2014254795B2 (en) Method for producing ash-free coal
JP5998373B2 (ja) 副生炭の製造方法
JP6062320B2 (ja) 無灰炭の製造方法
JP6017337B2 (ja) 無灰炭の製造方法
WO2015098506A1 (ja) 無灰炭の製造方法
JP2013136692A (ja) 無灰炭の製造方法
JP6003003B2 (ja) 溶剤分離方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150901

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160803

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160809

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160819

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20160819

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20160819

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160920

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160928

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6017356

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150