以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1に備えられたチャンバー4内の構成を水平に見た模式図である。図2は、仕切板7およびカップ6の模式的な平面図である。図3は、仕切板7に設けられたアーム差込口42を示す模式的な斜視図である。
図1に示すように、基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板Wを処理する処理ユニット2と、基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御装置3とを含む。
図1に示すように、処理ユニット2は、箱形のチャンバー4と、チャンバー4内で基板Wを水平に保持して当該基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック5と、液体や気体などの処理流体を基板Wに供給する複数本のノズルと、スピンチャック5を取り囲む筒状のカップ6と、スピンチャック5よりも上方でチャンバー4の内部空間を仕切る筒状の仕切板7とを含む。複数本のノズルは、薬液を吐出する薬液ノズル8と、リンス液を吐出するリンス液ノズル9と、溶剤(液体)を吐出する溶剤ノズル10とを含む。
図1に示すように、チャンバー4は、シャッター11によって開閉される箱形の隔壁12と、隔壁12の上部から隔壁12内(チャンバー4内に相当)に清浄空気を送る送風ユニットとしてのFFU13(ファン・フィルタ・ユニット13)と、隔壁12の下部からチャンバー4内の気体を排出する排気装置14とを含む。FFU13は、隔壁12の上方に配置されており、隔壁12の天井に取り付けられている。FFU13は、隔壁12の天井からチャンバー4内に清浄空気を送る。排気装置14は、カップ6の底部に接続されており、カップ6の底部からチャンバー4内の気体を吸引する。したがって、FFU13によってチャンバー4内に送られた清浄空気は、排気装置14によってチャンバー4内から排出される。これにより、ダウンフロー(下降流)がチャンバー4内に形成される。
図1に示すように、チャンバー4は、さらに、FFU13によって隔壁12内に送られた清浄空気を整流する整流板15を含む。整流板15は、隔壁12の天井の下方に配置されている。整流板15は、複数の貫通孔15aが形成されたプレートによって構成されている。整流板15は、スピンチャック5および仕切板7よりも上方に配置されている。整流板15は、隔壁12によって保持されている。整流板15は、水平面に沿って配置されており、隔壁12の内部空間を2つに仕切っている。隔壁12の天井と整流板15との間の空間は、清浄空気が拡散する拡散空間S1であり、隔壁12の底部と整流板15との間の空間は、基板Wの処理が行われる処理空間S2である。拡散空間S1は、平面視における面積が処理空間S2と等しく、体積が処理空間S2よりも小さい空間である。
図1に示すように、整流板15は、隔壁12の天井に設けられた送風口12aの下方に配置されている。平面視における整流板15の面積は、送風口12aの開口面積よりも広い。FFU13は、送風口12aから拡散空間S1に清浄空気を送る。送風口12aを通過した清浄空気の大部分は、整流板15に衝突し、方向転換する。これにより、FFU13によって送られた清浄空気が拡散空間S1を拡散する。拡散空間S1に充満した清浄空気は、整流板15を厚み方向に貫通する複数の貫通孔15aを通過し、整流板15の全域から下方に流れる。これにより、整流板15の全域から下方向に向かう均一な清浄空気の流れが、処理空間S2に形成される。そして、処理空間S2を下方に流れる清浄空気は、排気装置14によって隔壁12内から排出される。このようにして、均一なダウンフローがチャンバー4内に形成される。基板Wの処理は、チャンバー4内にダウンフローが形成されている状態で行われる。
図1に示すように、スピンチャック5は、整流板15の下方に配置されている。スピンチャック5は、基板Wを水平に保持する円盤状のスピンベース16と、スピンベース16を回転軸線A1まわりに回転させることにより、スピンベース16に保持されている基板Wを回転軸線A1まわりに回転させるスピンモータ17とを含む。スピンチャック5は、基板Wを水平方向に挟んで当該基板Wを水平に保持する挟持式のチャックであってもよいし、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)を吸着することにより当該基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。図1は、挟持式のチャックを示している。
図1に示すように、薬液ノズル8は、薬液バルブ18が介装された薬液配管19に接続されている。薬液バルブ18が開かれると、薬液配管19から薬液ノズル8に供給された薬液が、薬液ノズル8から下方に吐出され、薬液バルブ18が閉じられると、薬液ノズル8からの薬液の吐出が停止される。薬液ノズル8に供給される薬液は、たとえば、BHF(HFとNH4Fとを含む混合液)またはSPM(H2SO4とH2O2とを含む混合液)である。薬液ノズル8に供給される薬液は、BHFおよびSPMに限らず、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤のうちの少なくとも一つを含む液体であってもよい。
図1に示すように、リンス液ノズル9は、リンス液バルブ20が介装されたリンス液配管21に接続されている。リンス液バルブ20が開かれると、リンス液配管21からリンス液ノズル9に供給されたリンス液が、リンス液ノズル9から下方に吐出され、リンス液バルブ20が閉じられると、リンス液ノズル9からのリンス液の吐出が停止される。リンス液ノズル9に供給されるリンス液は、純水(脱イオン水:Deionzied Water)である。リンス液ノズル9に供給されるリンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
図1に示すように、溶剤ノズル10は、溶剤バルブ22が介装された溶剤配管23に接続されている。溶剤バルブ22が開かれると、溶剤配管23から溶剤ノズル10に供給された溶剤が、溶剤ノズル10から下方に吐出され、溶剤バルブ22が閉じられると、溶剤ノズル10からの溶剤の吐出が停止される。溶剤ノズル10に供給される溶剤は、たとえば、IPA(イソプロピルアルコール)である。IPAは、水よりも表面張力が小さく、水よりも沸点が低い(水よりも揮発性の高い)揮発性溶剤の一例である。IPAは、水を溶解させることができる。溶剤ノズル10に供給される溶剤は、IPAに限らず、HFE(ハイドロフロロエーテル)などの他の溶剤であってもよい。
図1に示すように、薬液ノズル8およびリンス液ノズル9は、共通の第1ノズルアーム24を介して第1ノズル移動機構25に連結されている。溶剤ノズル10は、第1ノズルアーム24とは異なる第2ノズルアーム26を介して第2ノズル移動機構27に連結されている。第1ノズル移動機構25は、第1ノズルアーム24を移動させることにより、第1ノズルアーム24に保持された薬液ノズル8およびリンス液ノズル9をチャンバー4内で移動させる。同様に、第2ノズル移動機構27は、第2ノズルアーム26を移動させることにより、第2ノズルアーム26に保持された溶剤ノズル10をチャンバー4内で移動させる。
第1ノズル移動機構25は、薬液ノズル8またはリンス液ノズル9から吐出された処理液がスピンチャック5に保持されている基板Wの上面に供給される処理位置と、薬液ノズル8およびリンス液ノズル9がスピンチャック5の上方から退避した退避位置との間で、薬液ノズル8およびリンス液ノズル9を移動させる。同様に、第2ノズル移動機構27は、溶剤ノズル10から吐出された処理液がスピンチャック5に保持されている基板Wの上面に供給される処理位置と、溶剤ノズル10がスピンチャック5の上方から退避した退避位置との間で、溶剤ノズル10を移動させる。第1ノズル移動機構25は、対応するノズルを水平面に沿って回動させる構成であってもよいし、対応するノズルを水平面に沿って直線移動させる構成であってもよい。第2ノズル移動機構27についても同様である。
図1に示すように、カップ6は、スピンチャック5に保持されている基板Wよりも外方(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。カップ6は、スピンチャック5を取り囲む筒状の外壁28と、スピンチャック5と外壁28との間に配置された複数の処理液カップ(第1処理液カップ29、第2処理液カップ30、第3処理液カップ31)と、基板Wの周囲に飛散した処理液を受け止める複数のガード(第1ガード32、第2ガード33、第3ガード34、第4ガード35)と、複数のガードのそれぞれを独立して昇降させるガード昇降ユニット36とを含む。
なお、図1では、回転軸線A1の右側と左側とで、第3ガード34が異なる高さに配置されている2つの状態を、1つの図に合わせて示している。以下の説明では、カップ6が、図1における回転軸線A1の左側に示す状態(すなわち、第3ガード34、第4ガード35がともに上昇した位置の状態)にあることを「Port40」と称し、図1における回転軸線A1の右側に示す状態(すなわち、第3ガード34が下降、第4ガード35が上昇した位置の状態)にあることを「Port5」と称する。
図1に示すように、各処理液カップ29〜31は、円環状であり、スピンチャック5と外壁28との間でスピンチャック5を取り囲んでいる。内側から2番目の第2処理液カップ30は、第1処理液カップ29よりも外方に配置されており、第3処理液カップ31は、第2処理液カップ30よりも外方に配置されている。第3処理液カップ31は第2ガード33と一体であり、第2ガード33と共に昇降する。各処理液カップ29〜31は、上向きに開いた環状の溝を形成している。各ガード32〜35のそれぞれは、スピンチャック5上の基板Wに供給される処理液の種類等に応じてガード昇降ユニット36の制御により任意に昇降駆動され、使用された処理液をその種類等に応じた任意の処理液カップ29〜31に導くことができる。各処理液カップ29〜31に導かれた処理液は、この溝を通じて図示しない回収装置または廃液装置に送られる。これにより、基板Wから排出された処理液の処分に関して回収または廃棄の経路を任意に選択できる。
図1に示すように、各ガード32〜35は、円筒状であり、スピンチャック5と外壁28との間でスピンチャック5を取り囲んでいる。内側の3つのガード32〜34は、外側の3つのガード33〜35のうちの少なくとも一つによって取り囲まれた内ガードであり、外側の3つのガード33〜35は、内側の3つのガード32〜34のうちの少なくとも一つを取り囲む外ガードである。
図1に示すように、各ガード32〜35は、回転軸線A1に向かって斜め上に延びる円筒状の傾斜部37と、傾斜部37の下端から下方に延びる円筒状の案内部38とを含む。各傾斜部37の上端部は、ガード32〜35の上端部を構成しており、基板Wおよびスピンベース16よりも大きな直径を有している。4つの傾斜部37は、上下に重ねられており、4つの案内部38は、同軸的に配置されている。最も外側の案内部38を除く3つの案内部38は、それぞれ、複数の処理液カップ29〜31内に出入り可能である。すなわち、カップ6は、折り畳み可能であり、ガード昇降ユニット36が4つのガード32〜35の少なくとも一つを昇降させることにより、カップ6の展開および折り畳みが行われる。
図1に示すように、ガード昇降ユニット36は、ガードの上端が基板Wより上方に位置する上位置と、ガードの上端が基板Wより下方に位置する下位置との間で、各ガード32〜35を昇降させる。ガード昇降ユニット36は、上位置と下位置との間の任意の位置で各ガード32〜35を保持可能である。基板Wへの処理液の供給や基板Wの乾燥は、いずれかのガード32〜35が、基板Wの周端面に対向している状態で行われる。たとえば内側から3番目の第3ガード34を基板Wの周端面に対向させる場合には、図1において回転軸線A1の左側に示す「Port40」の状態のように、第1ガード32および第2ガード33が下位置に配置され、第3ガード34および第4ガード35が上位置に配置される。また、最も外側の第4ガード35を基板Wの周端面に対向させる場合には、図1において回転軸線A1の右側に示す「Port5」の状態のように、第4ガード35が上位置に配置され、他の3つのガード32〜34が下位置に配置される。
図1に示すように、仕切板7は、整流板15の下方に配置されている。仕切板7は、整流板15からカップ6まで下方に延びる筒状である。仕切板7は、上下方向に関して、整流板15とカップ6との間に配置されている。スピンチャック5は、仕切板7よりも下方に配置されている。仕切板7は、スピンチャック5よりも上方で処理空間S2を仕切っている。処理空間S2は、仕切板7の内側の内側空間S3と、仕切板7の外側の外側空間S4とに仕切られている。図2に示すように、仕切板7は、四角形状の水平断面を有する筒状の部材によって構成されている。仕切板7の水平断面は、多角形状に限らず、円形または楕円形であってもよい。
図2に示すように、仕切板7は、全周に亘って回転軸線A1を取り囲んでいる。図1に示すように、仕切板7の内周面7cは、回転軸線A1に向かって斜め下方に延びる傾斜部を含む。図1は、仕切板7の内周面7cが90度未満の一定の傾斜角θ(水平面を基準とする角度)で仕切板7の上端7aから仕切板7の下端7bまで傾斜している例を示している。したがって、仕切板7の断面積は、仕切板7の上端7aから仕切板7の下端7bまで連続的に減少しており、仕切板7の下端7bの開口面積(平面視における面積)は、仕切板7の上端7aの開口面積(平面視における面積)よりも狭い。図2に示すように、仕切板7の下端7bは、平面視において、第4ガード35の上端35aを全周に亘って取り囲んでいる。仕切板7の上端7aは、平面視において、仕切板7の下端7bを全周に亘って取り囲んでいる。仕切板7の下端7bの開口面積は、第4ガード35の上端35a(平面視における面積)よりも広い。
図1に示すように、仕切板7の上端7aは、スピンチャック5およびカップ6よりも外方に配置されている。仕切板7の上端7aは、整流板15の周縁部に沿って配置されている。仕切板7の上端7aは、整流板15の周縁部の下方に配置されており、整流板15から離れている。仕切板7の上端7aは、整流板15に連結されており、整流板15の周縁部に繋がっていてもよい。
図1に示すように、仕切板7の下端7bは、カップ6の上端部の上方に配置されている。仕切板7の下端7bは、上位置に位置する第4ガード35の上端35aの近傍に配置されている。仕切板7の下端7bは、上位置に位置する第4ガード35の傾斜部37に間隔を空けて上下方向に対向している。仕切板7の下端7bの一部は、上位置に位置する第4ガード35に接触していてもよい。第4ガード35が上位置に位置している状態での仕切板7の下端7bから第4ガード35の上端35aまでの上下方向の距離は、たとえば、第1ノズルアーム24および第2ノズルアーム26の高さ(ノズルアームの下端からノズルアームの上端までの距離)よりも小さい。
図1に示すように、上開口縁に相当する仕切板7の上端7aは、整流板15の下方に位置する上開口を形成しており、下開口縁に相当する仕切板7の下端7bは、スピンチャック5の上方に位置する下開口を形成している。下開口は、カップ6の開口(第4ガード35の上端35aによって区画された開口)の上方に配置されており、上下方向にカップ6の開口に対向している。第4ガード35が上位置に位置している状態では、仕切板7の下端7bが、第4ガード35の上端35aに近接する。したがって、この状態では、カップ6および仕切板7の内部の密閉性が高まり、カップ6および仕切板7の外部への気体の漏れ量が低減される。
図1に示すように、FFU13からの清浄空気は、整流板15の全域から下方に吹き出される。整流板15から吹き出された清浄空気は、上開口の全域を通じて内側空間S3に流入する。そして、内側空間S3に流入した清浄空気は、下開口の全域から下方に吹き出される。下開口から吹き出された清浄空気は、カップ6内を通って排気装置14に吸引される。下開口の面積は、上開口の面積よりも狭い。したがって、仕切板7の内部に流入した清浄空気は、内側空間S3を下方に流れる間に加速され、上開口での流速よりも高速の通過速度で下開口を通過する。そのため、基板Wの上方および周囲の雰囲気が、高速で流れる清浄空気によって即座に下方に押し流され、チャンバー4内から排出される。
図1に示すように、処理ユニット2は、さらに、仕切板7の内周面7cに洗浄液を供給することにより、仕切板7の内周面7cを覆う液膜を形成する洗浄液ノズル39を含む。洗浄液ノズル39は、洗浄液バルブ40が介装された洗浄液配管41に接続されている。洗浄液ノズル39に供給される洗浄液は、純水である。水を主体とする液体であれば、洗浄液ノズル39に供給される洗浄液は、純水以外の液体であってもよい。
図1に示すように、洗浄液ノズル39は、仕切板7の上端7aに沿って配置されている。洗浄液ノズル39は、チャンバー4に取り付けられている。洗浄液ノズル39は、仕切板7の上方に配置されている。洗浄液ノズル39は、仕切板7の内周面7cに向けて下向きに純水を吐出する。図2に示すように、洗浄液ノズル39は、仕切板7の下端7bを平面視において取り囲むように配置された複数の吐出口39aを含む。洗浄液ノズル39は、仕切板7の下端7bを平面視において取り囲むように配置された複数本のチューブによって構成されていてもよいし、仕切板7の下端7bを平面視において取り囲むように配置された単一のチューブによって構成されていてもよい。図2は、洗浄液ノズル39が単一のチューブによって構成されている例を示している。
図1に示すように、制御装置3は、仕切板7の下端7bが第4ガード35の上端35aに近接している状態で、洗浄液ノズル39に純水を吐出させる。洗浄液ノズル39から吐出された純水は、仕切板7の上端部の内周面に着液した後、仕切板7の内周面7cに沿って下方に流れる。そして、仕切板7の内周面7cに沿って流れる純水は、仕切板7の下端7bから流下する。仕切板7の傾斜角θや洗浄液ノズル39からの純水の吐出流量は、純水が、仕切板7の下端7bから概ね鉛直に流下するように設定されている。したがって、仕切板7の下端7bから流下した純水は、仕切板7の下端7bの近傍に位置する第4ガード35の上端部に着液し、傾斜面に相当する第4ガード35の上面35bに沿って外方に流れる。そして、第4ガード35の外周部に達した純水は、第4ガード35と外壁28との間を流下し、カップ6の底部から廃液装置(図示せず)に排出される。
洗浄液ノズル39から吐出された純水が、仕切板7の内周面7cに沿って下方に流れるので、仕切板7の内周面7cを覆う薄い液膜L(図1では厚みを誇張して描いてある)が形成される。さらに、純水は、複数の吐出口39a(図2参照)から仕切板7の上端部の複数の位置に向けて純水を吐出するので、仕切板7の内周面7cは、全周に亘って液膜Lに覆われて保護される。薬液ノズル8から薬液が吐出されると、薬液の蒸気やミストを含む薬液雰囲気が、基板Wの近傍や内側空間S3で発生する。しかし、仕切板7の内周面7cが液膜Lによって保護されている状態では、薬液雰囲気が仕切板7の内周面7cに付着し難い。さらに、薬液雰囲気が仕切板7の内周面7cに付着したとしても、付着した薬液は、仕切板7の内周面7cに沿って流れる液膜Lを構成する純水によって即座に洗い流される。そのため、薬液雰囲気が仕切板7上で結晶化してパーティクルに変化することを抑制または防止できる。
しかも、仕切板7から流下した純水は、第4ガード35の上面35bに沿って外方に流れるので、仕切板7から流下した純水が、第4ガード35の開口を経由してスピンチャック5に保持されている基板Wに掛かることはない。そのため、基板Wの処理に影響を及ぼすことなく、パーティクルの発生を抑制または防止できる。さらに、仕切板7から流下した純水が、第4ガード35の開口を通過し難いので、基板Wからその周囲に排出された処理液に純水が混入することを抑制または防止できる。したがって、基板Wに供給された処理液を各処理液カップ29〜31により収集し回収して再利用する場合に、回収された処理液の濃度が低下することを抑制または防止できる。
図3に示すように、仕切板7は、ノズルアーム(第1ノズルアーム24または第2ノズルアーム26)が差し込まれるアーム差込口42を含む。アーム差込口42は、仕切板7の内周面7cから仕切板7の外周面まで延びており、仕切板7を厚み方向に貫通している。アーム差込口42は、仕切板7の下端7bから上方に延びている。したがって、アーム差込口42は、下向きに開いている。アーム差込口42は、下向きに開いた形状に限らず、全周が囲まれた形状であってもよい。
図3に示すように、アーム差込口42の高さ(アーム差込口42の下端からアーム差込口42の上端までの距離)は、ノズルアームの高さ(ノズルアームの下端からノズルアームの上端までの距離)よりも大きい。ノズルアームがアーム差込口42に差し込まれている状態では、ノズルアームが仕切板7の下端7bよりも上方に位置している。さらに、この状態では、対応するノズルが、仕切板7の内部(内側空間S3)に配置される。そのため、第1ノズル移動機構25および第2ノズル移動機構27は、仕切板7の下端7bが第4ガード35の上端35aに近接している状態で、ノズルを仕切板7の内部に位置させることができる。
図3に示すように、仕切板7は、さらに、アーム差込口42に向かう洗浄液をアーム差込口42の側方に案内する液除けガイド43を含む。液除けガイド43は、仕切板7の内部でアーム差込口42の周縁に沿って延びている。液除けガイド43は、アーム差込口42の上端縁に沿って延びる上方ガイド44を含む。上方ガイド44は、アーム差込口42の上端縁に沿って水平に延びていてもよいし、アーム差込口42の側端縁に向かって斜め下方に延びていてもよい。上方ガイド44は、上方向に開いた上方案内溝を形成している。また、液除けガイド43は、アーム差込口42の左右の側端縁に沿って延びる一対の側方ガイド45をさらに含んでいてもよい。側方ガイド45は、外方向(アーム差込口42から離れる方向)に開いた側方案内溝を形成している。側方案内溝は、上方案内溝に連続している。
図3に示すように、洗浄液ノズル39から仕切板7の内周面7cに供給された純水は、仕切板7の内周面7cに沿って下方に流れる。仕切板7の内周面7cに沿って流れる純水がアーム差込口42の上方に達すると、この純水は、上方ガイド44によってアーム差込口42の側方に案内される。これにより、アーム差込口42内への純水の進入が抑制または防止される。そのため、洗浄液ノズル39が純水を吐出しており、ノズルアームがアーム差込口42に差し込まれている状態であっても、洗浄液ノズル39から吐出された純水が、アーム差込口42内のノズルアームに掛かることを抑制または防止できる。
図4は、基板処理装置1によって行われる基板Wの処理の一例を示す工程図である。図5は、基板処理装置1によって行われる基板Wの処理の一例について説明するためのタイムチャートである。以下では、図1を参照する。図4および図5については適宜参照する。
なお、本実施形態の装置では、上述のように各ガード32〜35を昇降させることにより、使用された処理液をその種類等に応じた任意の処理液カップ29〜31に導いて回収または廃棄の経路を任意に選択することができるが、以下の処理の説明では簡単のためにかかる処理液の回収または廃棄の経路の選択はおこなわないこととし、基板Wに液を供給する際には常にPort40の状態として、基板Wに供給される全ての液は処理液カップ31を経て回収することとする。
基板Wが処理されるときには、チャンバー4内に基板Wを搬入する搬入工程(図4のステップS1)が行われる。具体的には、制御装置3は、全てのノズルがスピンチャック5の上方から退避しており、全てのガードが下位置に位置している状態で、搬送ロボット(図示せず)に基板Wをチャンバー4内に搬入させる。そして、制御装置3は、搬送ロボットに基板Wをスピンチャック5上に載置させる。その後、制御装置3は、スピンチャック5に基板Wを保持させる。制御装置3は、基板Wがスピンチャック5上に置かれた後、搬送ロボットをチャンバー4内から退避させる。
次に、薬液の一例であるBHFを基板Wに供給する薬液処理工程(図4のステップS2)が行われる。具体的には、制御装置3は、第1ノズル移動機構25に第1ノズルアーム24を移動させることにより、第1ノズルアーム24の一部を仕切板7のアーム差込口42(図3参照)内に位置させる。これにより、第1ノズルアーム24に保持されている薬液ノズル8およびリンス液ノズル9が仕切板7の内部に配置される。制御装置3は、さらに、外側の2つのガード(第3ガード34および第4ガード35)を上位置に位置させ、内側の2つのガード(第1ガード32および第2ガード33)を下位置に位置させる(図1における回転軸線A1より左側のカップ6の「Port40」の状態を参照)。これにより、第3ガード34と第2ガード33との間が開き、第3ガード34の内周面が基板Wの周端面に対向する。さらに、第4ガード35の上端35aが、仕切板7の下端7bに近づき、仕切板7の下端7bが、第4ガード35の上端35aに近接する。
制御装置3は、第1ノズルアーム24がアーム差込口42に差し込まれている状態で、上位置まで第4ガード35を上昇させてもよいし、アーム差込口42の高さが十分にある場合には、制御装置3は、第4ガード35が上位置に位置している状態で、アーム差込口42を通じて、薬液ノズル8およびリンス液ノズル9を仕切板7の外部から仕切板7の内部に移動させてもよい。いずれの場合でも、薬液ノズル8およびリンス液ノズル9は、仕切板7の下端7bが第4ガード35の上端35aに近接している状態で、仕切板7の内部に配置される。
制御装置3は、さらに、スピンチャック5に基板Wを回転させる。その後、制御装置3は、薬液バルブ18を開いて、薬液ノズル8から基板Wの上面に向けて所定の流量でBHFを吐出させる。制御装置3は、さらに、洗浄液バルブ40を開いて、洗浄液ノズル39から仕切板7の内周面7cに向けて所定の流量で純水を吐出させる。薬液ノズル8からのBHFの吐出と、洗浄液ノズル39からの純水の吐出は、図5に示すように同時に開始されてもいいし、異なる時期に開始されてもよい。たとえば、BHFが薬液ノズル8から吐出される前に、洗浄液ノズル39からの純水の吐出が開始されてもよい。
洗浄液ノズル39から吐出された純水は、仕切板7の内周面7cに沿って下方に流れ、その後、第4ガード35の上面35bに沿って外方に流れる。これにより、仕切板7の内周面7cが純水の液膜Lによって保護される。また、薬液ノズル8から吐出されたBHFは、回転状態の基板Wの上面に着液し、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板Wの上面周縁部に達したBHFは、基板Wの周囲に振り切られ、第3ガード34と第2ガード33との間を通じて、カップ6の内部に導かれ処理液カップ31によって収集される。これにより、基板Wの上面全域を覆うBHFの液膜が形成され、基板Wの上面がBHFによって処理される。さらに、仕切板7の内周面7cが純水の液膜Lによって覆われているので、仕切板7の内周面7c付近を漂う薬液雰囲気は、純水と共に流れ落ちる。そのため、仕切板7に対する薬液雰囲気の付着が抑制または防止される。
図5に示すように、薬液ノズル8からのBHFの吐出が開始されてから所定時間が経過すると、制御装置3は、薬液バルブ18を閉じて、薬液ノズル8からのBHFの吐出を停止させる。同様に、洗浄液ノズル39からの純水の吐出が開始されてから所定時間が経過すると、制御装置3は、洗浄液バルブ40を閉じて、洗浄液ノズル39からの純水の吐出を停止させる。薬液ノズル8からのBHFの吐出と、洗浄液ノズル39からの純水の吐出は、同時に停止されてもいいし、異なる時期に停止されてもよい。たとえば、図5に示すように、薬液ノズル8からのBHFの吐出が停止された後に、洗浄液ノズル39からの純水の吐出が停止されてもよい。薬液雰囲気は、BHFの吐出が停止された後であっても、チャンバー4内に残留している場合がある。したがって、残留雰囲気が仕切板7の内周面7cに付着することを防止するために、純水の吐出は、BHFの吐出が停止されてから所定時間の後に停止されることが好ましい。
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面に供給するリンス工程(図4のステップS3)が行われる。具体的には、制御装置3は、第1ノズルアーム24がアーム差込口42に差し込まれており、第3ガード34の内周面が基板Wの周端面に対向している状態で、リンス液バルブ20を開いて、リンス液ノズル9から基板Wの上面に向けて所定の流量で純水を吐出させる。すなわち、制御装置3は、薬液ノズル8、リンス液ノズル9、およびカップ6が薬液処理工程と同じ位置に配置されている状態で、リンス液ノズル9から純水を吐出させる。
薬液ノズル8から吐出されたBHFと同様に、リンス液ノズル9から吐出された純水は、基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板Wの上面周縁部に達した純水は、基板Wの周囲に振り切られ、第3ガード34と第2ガード33との間を通じて、カップ6の内部に導かれ処理液カップ31によって収集される。そのため、基板W上の薬液は、純水によって外方に押し流され、基板Wの周囲に排出される。これにより、基板W上の薬液が、純水によって洗い流され、基板W上の薬液の液膜が、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜に置換される。そして、図5に示すように、リンス液ノズル9からの純水の吐出が開始されてから所定時間が経過すると、制御装置3は、洗浄液ノズル39からの純水の吐出が停止されている状態でリンス液バルブ20を閉じて、リンス液ノズル9からの純水の吐出を停止させる。
次に、溶剤の一例であるIPAを基板Wの上面に供給する溶剤供給工程(図4のステップS4)が行われる。具体的には、制御装置3は、カップ6をPort40の状態に保ったまま、第1ノズル移動機構25に第1ノズルアーム24を移動させることにより、薬液ノズル8およびリンス液ノズル9を仕切板7の外部に移動させる。制御装置3は、さらに、第2ノズル移動機構27に第2ノズルアーム26を移動させることにより、第2ノズルアーム26の一部をアーム差込口42内に位置させる。これにより、仕切板7の下端7bが第4ガード35の上端35aに近接している状態で、溶剤ノズル10が仕切板7の内部に配置される。
制御装置3は、仕切板7の下端7bが第4ガード35の上端35aに近接しており、溶剤ノズル10が仕切板7の内部に配置されている状態で、溶剤バルブ22を開いて、溶剤ノズル10から基板Wの上面に向けて所定の流量でIPAを吐出させる。溶剤ノズル10から吐出されたIPAは、基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板Wの上面周縁部に達したIPAは、基板Wの周囲に振り切られ、第2ガード33と第3ガード34との間を通じて、カップ6の内部に導かれ処理液カップ31によって収集される。そのため、基板W上の純水は、IPAによって外方に押し流され、基板Wの周囲に排出される。これにより、基板W上の純水の液膜が、基板Wの上面全域を覆うIPAの液膜に置換される。そして、溶剤ノズル10からのIPAの吐出が開始されてから所定時間が経過すると、制御装置3は、溶剤バルブ22を閉じて、溶剤ノズル10からのIPAの吐出を停止させる。
次に、基板Wを乾燥させる乾燥工程(図4のステップS5)が行われる。具体的には、制御装置3は、仕切板7の下端7bが第4ガード35の上端35aに近接しており、溶剤ノズル10が仕切板7の内部に配置されている状態で、基板Wの回転を高回転速度(たとえば数千rpm)まで加速させる。これにより、基板W上の液体が、基板Wの周囲に振り切られ、第2ガード33と第3ガード34との間を通じて、カップ6の内部に導かれ処理液カップ31によって収集される。このようにして、水分が基板Wから除去され、基板Wが乾燥する。基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、制御装置3は、スピンチャック5を制御することにより、基板Wの回転を停止させる。その後、制御装置3は、全てのガードを下位置に移動させると共に、溶剤ノズル10を基板Wの上方から退避させる。この状態で、制御装置3は、搬送ロボットをチャンバー4内に進入させて、スピンチャック5上の基板Wを搬出させる(搬出工程。図4のステップS6)。
以上のように本実施形態では、仕切板7がスピンチャック5の上方で空間を仕切っている。薬液ノズル8から薬液が吐出されている間は、洗浄液の一例である純水の液膜Lによって仕切板7の内周面7cが保護される。そのため、薬液雰囲気などの汚染雰囲気が仕切板7の内周面7cに付着し難い。さらに、洗浄液が仕切板7の内周面7cに沿って下方に流れるので、汚染雰囲気が仕切板7の内周面7cに付着したとしても、付着した汚染物質は、洗浄液によって即座に洗い流される。そのため、薬液などの汚染物質が、仕切板7の内周面7cで結晶化してパーティクルに変化することを抑制または防止できる。
しかも、仕切板7の内周面7cに沿って流れる洗浄液は、下開口縁に相当する仕切板7の下端7bを経由して、仕切板7の内周面7cから第4ガード35の上面35bに移動し、傾斜面に相当する第4ガード35の上面35bに沿って外方に流れる。したがって、洗浄液が、ガード開口縁に相当する第4ガード35の上端35aによって区画された開口を通って、基板Wに至ることを抑制または防止できる。そのため、基板Wの処理に影響を及ぼすことなく、パーティクルの発生を抑制または防止できる。これにより、基板Wの清浄度を高めることができる。
また、FFU13から清浄空気は、上開口縁に相当する仕切板7の上端7aによって区画された開口から仕切板7の内部に入り込み、仕切板7の下端7bおよび第4ガード35の上端35aを経由して、カップ6の内部に入り込む。カップ6内の気体は、排気装置14の吸引力によって下方に吸い寄せられ、カップ6の底部から排出される。このようにして、仕切板7およびカップ6内の気体が、清浄空気に置換される。前述のように、仕切板7は、スピンチャック5よりも上方の空間を仕切っている。したがって、雰囲気を置換すべき空間が狭められている。そのため、雰囲気を効率的に置換できる。さらに、雰囲気を置換すべき空間の体積が減少しているので、FFU13からの送風流量や排気装置14の排気流量を上げずに、雰囲気を確実に置換できる。
本発明の実施形態の説明は以上であるが、本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、図6に示すように、処理ユニット2は、前述の実施形態に係る構成に加えて、仕切板7を昇降させる仕切板昇降機構46をさらに備えていてもよい。
図6に示す仕切板昇降機構46は、仕切板7をチャンバー4内で上下方向に移動させる。仕切板昇降機構46は、第4ガード35の高さを変更せずに、仕切板7の下端7bと第4ガード35の上端35aとの距離を変化させることができる。そのため、仕切板昇降機構46は、仕切板7の下端7bを第4ガード35の上端35aに近接させて、第4ガード35および仕切板7の内部の密閉性を高めることができる。さらに、仕切板昇降機構46は、仕切板7の下端7bを第4ガード35の上端35aから遠ざけることにより、仕切板7と第4ガード35との間に処理液ノズルが通過する空間を確保することができる。したがって、図6に示す構成では、ノズルアームが差し込まれるアーム差込口42(図3参照)が省略されてもよい。
また、前述の実施形態では、仕切板7全体が、カップ6よりも上方に配置されている場合について説明したが、仕切板7の一部がカップ6の上端より下方に配置されていてもよい。
また、前述の実施形態では、仕切板7の下開口縁が、仕切板7の下端7bによって構成されている場合について説明したが、下開口縁は、仕切板7の下端よりも上方の部分によって構成されていてもよい。
また、前述の実施形態では、第1ノズル移動機構25が、仕切板7の内部に設けられた処理位置と、仕切板7の外部に設けられた退避位置との間で、薬液ノズル8およびリンス液ノズル9を移動させる場合について説明した。しかし、第1ノズル移動機構25は、仕切板7の内部に設けられた2つの位置(処理位置および退避位置)で薬液ノズル8およびリンス液ノズル9を移動させてもよい。たとえば、第1ノズル移動機構25は、薬液ノズル8およびリンス液ノズル9を仕切板7の内部で上下方向に移動させてもよい。第2ノズル移動機構27についても同様である。
また、前述の実施形態では、第1ノズル移動機構25および第2ノズル移動機構27が、薬液ノズル8、リンス液ノズル9、および溶剤ノズル10を移動させる場合について説明したが、薬液ノズル8、リンス液ノズル9、および溶剤ノズル10のうちの少なくとも一つが、仕切板7の内部で固定されていてもよい。
また、前述の実施形態では、処理ユニット2は、FFU13と仕切板7との間に配置された整流板15を備えている場合について説明したが、処理ユニット2は、整流板15を備えていなくてもよい。
また、前述の実施形態では、基板処理装置1が、円板状の基板を処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1は、液晶表示装置用基板などの多角形の基板を処理する装置であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。