JP6015168B2 - カラーシフト材を用いた真贋判定方法およびカラーシフト材 - Google Patents
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上記偽造防止機能として、中でも、特別な機器類を使わずに、観察者が目視により容易に真贋判定ができることが求められている。例えば、セキュリティ対象物にパール顔料や液晶顔料、鱗片状金属顔料等の色彩可変インキ等を用いて情報の印刷や画像の描画を行うと、印刷情報や画像は観察角度に応じて次第に色彩が変化する(以下、観察角度による色彩の変化を「カラーシフト」と称する場合がある。)。このカラーシフトの発現により、観察者が目視により容易に真贋判定を行う方法が開示されている(特許文献1〜3)。
なお、本発明において「アイキャッチ効果」とは、観察者に対して瞬時に色や画像の変化を認識させる機能をいい、カラーシフト材を観察した際に視認される色や画像が徐々に変化し、観察者が上記変化を瞬時に認識できない場合や、上記変化を視認しにくい場合は、該カラーシフト材は「アイキャッチ効果が劣る」とされる。
また、減法混色層の再現色は自ら光として発現しないのに対し、加法混色層の再現色は自ら光として発現し、上記減法混色層の再現色よりも高い輝度を有する再現色を発現することができる。そのため、本発明のカラーシフト材は高いアイキャッチ効果を有し、カラーシフトにおいて再現色の色彩の変化だけでなく輝度の変化も認識することにより、観察者はより正確な真贋判定を行うことができる。
また、印刷層の再現色は自ら光として発現しないのに対し、体積型ホログラム層の再現色は自ら光として発現するため、上記印刷層の再現色よりも高い輝度を有する再現色を発現することができる。そのため、本発明のカラーシフト材は高いアイキャッチ効果を有することができる。
以下、本発明の真贋判定方法およびカラーシフト材について、順に説明する。
本発明の真贋判定方法は、減法混色により再現色を発現する減法混色層と、上記減法混色層上の少なくとも一部に形成され、加法混色により再現色を発現する加法混色層とを有し、特定の観察角度においてのみ上記加法混色層の再現色が発現するカラーシフト材を用いた真贋判定方法であって、上記カラーシフト材を2以上の異なる観察角度から視認した時に、上記特定の観察角度においては、上記加法混色層の再現色が視認され、且つ、上記特定の観察角度以外の角度においては、上記減法混色層の再現色が視認されるものを真とすることである。
つまり、減法混色層において発現される再現色は自ら光として発現しないため、上述した加法混色層の再現色と比較して輝度が低いものである。
また、本発明においては、上記色光の3原色の波長光を混ぜ合わせて所望の色を発現する他に、異なる波長光を混ぜ合わせずに、特定の色を有する単独の波長光により発現する場合も、加法混色による再現色の発現として含まれる。
つまり、加法混色層において発現される再現色は自ら光として発現するため、高い輝度を有するものである。
図1に例示するように、まず、準備工程として、偽造防止機能を付することが好ましい部材(以下、単に「部材」と称する場合がある。)およびカラーシフト材を準備し、上記部材の所望の位置に上記カラーシフト材を貼付け、カラーシフト材付き部材を作製する(S1)。
次に、観察工程として、上述により得られたカラーシフト材付き部材を所望の観察角度から観察(S2−1)し、その時にカラーシフト材上に発現される色を視認(S2−2)する。観察角度を変更して、同様に上記カラーシフト材付き部材の観察および視認を行う。(S2−3)。
最後に、判定工程として、観察角度に応じて観察者が視認した色により、該部材が真正品か否かを判定する(S3)。
図2(a)に例示するように、減法混色層2と、上記減法混色層2上の少なくとも一部に形成された加法混色層1とを有するカラーシフト材10を貼付けたセキュリティ対象物(図示せず)について、観察角度θ1からカラーシフト材10を観察したときは、図2(b)に例示するように、輝度の高い加法混色層1の再現色の発現を視認することができるが、上記加法混色層1が積層された部分の減法混色層2の再現色は、上記加法混色層1の再現色に覆われるため視認することができない。
次に、別の観察角度θ2からカラーシフト材10を観察すると、観察者は図2(c)に例示するように、上記観察角度θ1において視認された加法混色層1の再現色は、発現せず無色透明となるため視認することができないが、上記加法混色層よりも輝度の低い減法混色層2の再現色の発現を視認することができる。
しかし、真正品に用いた色彩可変インキと類似あるいは同種のインキを入手すれば、真正品と同様の色彩変化を発現するカラーシフト材を容易に偽造することができる。そのため、従来の真贋判定方法の場合、観察者は真正品と偽造品とのカラーシフトの判別が付かず、正確な真贋判定を行うことが困難であった。
以下、各工程について説明する。
本発明の真贋判定方法における準備工程とは、偽造防止機能を付することが好ましい部材およびカラーシフト材を準備し、上記部材の所望の位置に上記カラーシフト材を貼付ける工程である。
以下、カラーシフト材および部材について説明する。
まず、本発明の真贋判定方法に用いられるカラーシフト材について説明する。
本発明の真贋判定方法に用いられるカラーシフト材は、減法混色により再現色を発現する減法混色層と、上記減法混色層上の少なくとも一部に形成され、加法混色により再現色を発現する加法混色層とを有し、特定の観察角度においてのみ上記加法混色層の再現色が発現するものである。
図3は、本発明の真贋判定方法に用いられるカラーシフト材の一例を示す概略断面図である。また、図4は本発明の真贋判定方法に用いられるカラーシフト材の一例を示す概略平面図である。本発明の真贋判定方法に用いられるカラーシフト材10は、減法混色層2と、上記減法混色層2上の少なくとも一部に形成された加法混色層1とを有するものである。
なお、本発明において、加法混色層の再現色が「消失」するとは、「発現しない」と同様の意味を有し、加法混色層の再現色が全く発現されず、無色透明であることを指すが、上記加法混色層が透明性を有し再現色を殆ど発現しないものであり、観察者が上記再現色を視認することが困難である場合を含んでいてもよい。以下の説明においても、同様である。
以下、本発明の真贋判定方法に用いられるカラーシフト材の各構成について説明する。
本発明における加法混色層は、減法混色により再現色を発現する減法混色層上の少なくとも一部に形成され、加法混色により再現色を発現するものである。
また、特定の観察角度においてのみ上記加法混色層の再現色が発現されるものである。
つまり、特定の観察角度において上記加法混色層の再現色は減法混色層の再現色を覆うように発現するため、観察者は上記加法混色層の再現色を視認することができる。一方、上記特定の観察角度以外の角度においては、上記加法混色層の再現色が発現せず、無色透明となるため、観察者は上記加法混色層の再現色を視認することはできないが、代わりに上記加法混色層の下に位置する減法混色層の再現色を視認することができる。
なお、上記加法混色層において発現される再現色は自ら光として発現するため、高い輝度を有するものである。
なお、上記加法混色層の再現色は、単色でもよく、2色以上を有していてもよい。また、色の種類についても特に限定されるものではなく、適宜選択することができる。
上記加法混色層の大きさは、減法混色層上に積層させた際に、上記加法混色層の再現色により上記減法混色層の再現色を十分に覆うことができ、上記減法混色層の再現色から上記加法混色層の再現色へカラーシフトすることを容易に視認できる大きさであることが好ましい。その大きさとしては、目的とするカラーシフト材の大きさにもよるが、好ましいサイズとしては、例えば、1mm×1mm〜50mm×50mmの範囲内にあることが好ましく、中でも、3mm×3mm〜30mm×30mmの範囲内にあることが好ましい。
また、好ましい面積の範囲としては、例えば、0.1cm2〜25cm2の範囲内が好ましく、中でも、1cm2〜9cm2の範囲内が好ましい。
加法混色層が上記大きさを有することにより、部材に貼りつけた際にカラーシフト材のアイキャッチ効果を発揮することができ、観察者がカラーシフトの発現を容易に視認することができるからである。
以下、本発明において加法混色層として用いられるホログラム層およびその他の材料層について説明する。
本発明において加法混色層として用いられるホログラム層は、レリーフ型ホログラム層でもよく体積型ホログラム層でもよいが、中でも、体積型ホログラム層を用いることが好ましい。体積型ホログラム層はレリーフ型ホログラム層に比べて、上記加法混色層の再現色の波長選択性を高めることができるからである。
以下、ホログラムについて、体積型ホログラム層とレリーフ型ホログラム層に分けて説明する。
まず、本発明において加法混色層として用いられる体積型ホログラム層について説明する。本発明において用いられる体積型ホログラム層は、波長光を回折するホログラムが記録されたものである。
従来の真贋判定方法に用いられるカラーシフト材として、色彩可変インキ等を用いることにより観察角度に応じて再現色を変化させるカラーシフト材があるが、上記カラーシフト材は入射光をカラーシフト材の中で多重反射させて、その干渉現象によって反射する光の波長を選択的なものとしている。すなわち、光が多重反射するとその多重反射光同士が干渉現象を生じ、反射する光の波長を一つに集約するとともにその強度を増すという光の基本的性質から、反射する光の波長は、カラーシフト材の屈折率値や厚さに依存して自動的に決定され、カラーシフトのパターン(変化する度合い、変化する範囲等)も一義的に決まる。例えば、上記カラーシフト材に対して垂直(「角度0°」とする。)に入射して、垂直に反射する光の場合と、例えば上記カラーシフト材に対して45°の角度で入射し、反対方向に45°で反射する光の場合とでは、選択反射される光の波長が大きく異なり、「(垂直入射後の)垂直反射光」に対し、「(45°入射後の)45°反射光」は、理論上、その波長の値が0.71倍(cos45°/cos0°≒0.71)となる。すなわち、カラーシフト材に含まれる色彩可変インキ等において、垂直入射後の垂直反射光が700nm(赤色)であると、45°入射後の45°反射光は490nm(青色)となる、いわゆる「ブルーシフト」が必ず起こる。カラーシフトはこの理論に従って画一的に単調に長波長から短波長へと変化するものである。
また、上記体積型ホログラム層の回折光の角度を調整することが可能となるため、カラーシフト材に対して観察角度が大きくなる(観察角度が90°に近付く)につれて、従来のカラーシフト材に見られるブルーシフトの発現だけでなく、短波長の再現色から長波長の再現色へのカラーシフト(以下、このようなカラーシフトを「レッドシフト」と称する場合がある。)を発現するように設計することができる。これにより従来のカラーシフト材とは異なるカラーシフト特性を有することが可能となる。
なお、「1つの体積型ホログラム層は単一色かつ単一輝度である」とは、減法混色層上に体積型ホログラム層が1つ形成されている態様においては、その体積型ホログラム層が単一色かつ単一輝度であり、一方、減法混色層上に体積型ホログラム層が複数形成されている態様においては、それぞれの体積型ホログラム層が単一色かつ単一輝度であることを意味する。
また、「単一色かつ単一輝度である」とは、特定の観察角度において、単一色かつ単一輝度の再現色が体積型ホログラム層の全面に発現されることを指す。つまり、体積型ホログラム層が単一輝度を有する単一色によるベタ面であることを指す。また、上記体積型ホログラム層は単一輝度を有する単一色によるベタ面であるため、特定絵柄を有さない。
また、体積型ホログラム層が再現色を発現していない場合の「単一色かつ単一輝度である」とは、無色透明であること、および、透明性を有し、観察者が視認できない程度の色、つまりほぼ無色であることを指す。
通常、ホログラム層を真贋判断材料として用いる場合、観察角度によりホログラム層上の特定絵柄が発現するか否かにより真贋判定を行うものである。
一方、本発明の真贋判定方法においては、単一色かつ単一輝度である体積型ホログラム層を用いるため、例えば、減法混色層の再現色から加法混色層の再現色へカラーシフトが発現する際に、上記加法混色層の再現色は上記減法混色層上にベタ塗りされたように発現する。これにより、減法混色層の再現色は上記加法混色層の再現色に覆われて視認できなくなるため、観察者はホログラム層に描かれた特定絵柄の発現の有無ではなく、特定の観察角度における色彩の変化により真贋判定を行うことが可能となる。
このような第1の感光材料および第2の感光材料としては、例えば、特開2005−7
0064号公報、特開2009−003197号公報、特開2009−274428号公
報に記載されているものと同様のものを用いることができる。
また、図5(b)に例示されるように、単層の体積型ホログラム層3中に、赤(R)色回折体積型ホログラム領域21R、緑(G)色回折体積型ホログラム領域21G、および青(B)色回折体積型ホログラム領域21Bが多重記録され、各色の回折体積型ホログラム領域が区分されて並列したものであってもよい。なお、この場合、各色の回折体積型ホログラム領域の面積や領域数および並列順については、目的とするカラーシフト材に応じて適宜調整することが可能である。
さらに、図5(c)に例示されるように、単層の体積型ホログラム層3中に、赤(R)色回折体積型ホログラム領域21R′、緑(G)色回折体積型ホログラム領域21G′、および青(B)色回折体積型ホログラム領域21B′が、混在するように多重記録されたものであってもよい。なお、この場合、各色の回折体積型ホログラムの回折光の強度比を調整することにより所望の再現色を発現することができるが、上記強度比については、目的とするカラーシフト材に応じて適宜調整することが可能である。
このような体積型ホログラム層の形成方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の多色ホログラムの形成方法と同様の方法を用いることができる。
図6は、本発明に用いられる体積型ホログラム層における、特定波長光を回折するホログラムの記録方法を示す説明図である。まず、上述した第1の感光材料または第2の感光材料を用いて回折用感光体31を形成し、上記回折用感光体31の下に反射散乱板34を配置する。次に、回折用感光体31の表面側から波長λの入射光32を回折用感光体31に対して所定の入射角度θで照射する。入射光32は回折用感光体31を通過して反射散乱板34で反射散乱し、反射散乱された光33が入射光32と回折用感光体31中で干渉を生じることにより、回折用感光体31に所定の色の波長光を回折するホログラムを記録することができる。
上記記録方法において、例えば、入射光として赤(R)色、緑(G)色および青(B)色の波長光を用い、それぞれの色の波長λに応じて、入射角度θを適宜選択することにより、各色の波長光を回折するホログラムを記録することができる。特定波長光を回折するホログラムが記録された回折用感光体31は、上述した図5に例示される本発明における体積型ホログラム層3の回折体積型ホログラム層11、および回折体積型ホログラム領域21、21′として用いることができ、これらは上記体積型ホログラム層に波長選択性を付与することができる。
また、上記記録方法は、赤(R)色、緑(G)色および青(B)色の波長光に限定されず、上記3色以外の色の波長光を単独で用いて、その色の波長に応じて上述の方法を用いてホログラムを記録することも可能である。例えば、黄色の波長光を回折するホログラムを記録したい場合は、570〜580nmの入射光を用いて上述の方法によりホログラムを記録することにより、所望の体積型ホログラム層を得ることができる。
次に、本発明において加法混色層として用いられるレリーフ型ホログラム層について説明する。本発明において加法混色層として用いられるレリーフ型ホログラム層は、所定の入射角で入射した所定の波長の入射光を特定の角度範囲に拡散するレリーフパターンが記録されたホログラムである。
上記レリーフ型ホログラム層よりも光屈折率の高い薄膜の例としては、ZnS、TiO2、Al2O3、Sb2S3、SiO、SnO2、ITO等を挙げることができる。また、上記レリーフ型ホログラム層よりも光屈折率の低い薄膜の例としては、LiF、MgF2、AlF3がある。好ましくは、金属酸化物または窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Au等の酸化物または窒化物他はそれらを2種以上で混合したもの等を挙げることができる。
さらに、アルミニウム等の一般的な光反射性の金属薄膜も、厚みが200Å以下になると透明性が生じるため使用できる。上記光反射性の金属薄膜の形成方法としては、例えば、レリーフ型ホログラム層のレリーフ面に、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるように、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD等の真空薄膜法などにより形成することができる。
本発明において加法混色層として、上述したホログラム層以外で用いられるその他の材料層について説明する。
本発明において加法混色層として用いられるコレステリック液晶層について説明する。上記コレステリック液晶層とは、例えば、右円偏光は透過するが、左円偏光は透過しないという右円偏光性の特性を持つように液晶配向を固定化させた層であり、特定の波長光のみを反射する性質を有するものである。
本発明において加法混色層として用いられる誘電多層膜について説明する。
上記誘電多層膜とは、屈折率の異なる第1光学層および第2光学層を交互に複数枚積層させたものであり、特定の入射角において光の特定波長の少なくとも一方の偏光または両方の偏光を特定の入射角で反射するものである。上記誘電多層膜は、観察角度が変化するにつれて反射光の波長領域も変化するため、カラーシフトを発現することができる。
本発明における減法混色層は、減法混色により再現色を発現するものであり、少なくとも上記減法混色層上の一部に加法混色層が形成されているものである。
なお、上記減法混色層において発現される再現色は自ら光として発現しないため、上述した加法混色層の再現色と比較して輝度が低いものである。
また、上記減法混色層の再現色は、単色でもよく2色以上を有していてもよく、色彩の種類についても用途に応じて適宜選択することができる。
本発明における減法混色層として用いられる着色基材は、基材に着色材料を用いて着色したものであり、単一色で形成されているもの、いわゆる、ベタ塗りされたものであることが好ましい。
なお、本発明における減法混色層が着色基材である場合、上述した加法混色層は上記着色基材上の少なくとも一部に形成される。
上述した加法混色層の再現色は高い輝度を有するため、上記減法混色層に用いられるインキが光沢や輝度を有さない顔料および染料であることにより、観察者が減法混色層の再現色と加法混色層の再現色とを識別しやすくなるからである。
また、減法混色層の再現色として白色を発現させる場合は、上記着色材料を用いず、白色を有する基材をそのまま用いることができる。
本発明における減法混色層として用いられる印刷層は、減法混色の3原色であるイエロー(Y)色、シアン(C)色、マゼンダ(M)色の着色材料を用いて、基材上に印刷されることにより形成されるものである。また、本発明における印刷層は、上記着色材料によりパターンを形成せずに単一色で印刷されたもの、いわゆる、ベタ塗りされたものが好ましい。
なお、本発明における減法混色層が印刷層である場合、上述した加法混色層は上記印刷層上の少なくとも一部に形成される。
また、上記印刷層に用いられる着色材料は、上述した着色基材に用いられる着色材料と同様のものを使用することができる。
また、上記印刷層が可視情報を有する場合、上記可視情報についても上述の方法を用いて印刷することができる。
本発明の真贋判定方法に用いられるカラーシフト材は、減法混色層の再現色と加法混色層の再現色とが異なることが好ましい。減法混色層の再現色と加法混色層の再現色とが異なることにより、観察者がカラーシフトの発現を容易に視認することができるからである。
中でも、上記減法混色層の再現色の波長と、上記加法混色層の再現色の波長とが離れていることが好ましい。それぞれの混色層の再現色の波長が離れていることにより、観察角度に応じてカラーシフトを断続的かつ瞬時に発現させることができ、観察者がカラーシフトの発現を容易に視認することができるからである。具体的には、減法混色層の再現色の波長と加法混色層の再現色の波長との差が50nm以上離れていることが好ましく、中でも、100nm以上離れていることが好ましい。
減法混色層の再現色と加法混色層の再現色との波長差が上記範囲よりも小さい場合、カラーシフトが発現する際に、観察者がカラーシフト前後の再現色を同色であると視認し、カラーシフトの発現を強く視認することができない恐れがあり、アイキャッチ効果が劣る可能性があるからである。
また、減法混色層の再現色と加法混色層の再現色とは、補色関係を有することが好ましい。補色は色相差が大きいため、観察角度によりカラーシフトが発現する際に、観察者が色彩の変化を強く視認することができ、視認による真贋判定が容易となるからである。
中でも、上記観察角度の変化に伴い発現する再現色が、レッドシフトを発現することが好ましい。上記再現色がレッドシフトを発現することにより、同じ観察条件下においてブルーシフトのみを発現する従来のカラーシフト材とは異なるカラーシフト特性を有することができ、従来よりも偽造品の作製が困難なものとすることができるからである。
また、上記カラーシフト態様が、例えば、観察角度θ1から観察角度θ2(90°>θ2>θ1)への変化に伴い、1種類以上の減法混色層の再現色から2種類以上の加法混色層の再現色へシフトするものであってもよく、その逆へシフトするものであってもよい。同様に、観察角度θ1から観察角度θ2(90°>θ2>θ1)への変化に伴い、2種類以上の減法混色層の再現色から1種類以上の加法混色層の再現色へシフトするものであってもよく、その逆へシフトするものであってもよい。この時各混色層で発現される再現色の種類は問わない。
さらに、観察角度θ1から観察角度θ2(90°>θ2>θ1)への変化に加えて、観察角度θ2から観察角度θ3(90°>θ3>θ2>θ1)へ変化させる場合、減法混色層の再現色、加法混色層の再現色および減法混色層の再現色がこの順でシフトするものであってもよく、加法混色層の第1再現色、減法混色層の再現色および加法混色層の第2再現色がこの順でシフトするものであってもよい。なお、各混色層における再現色がシフトする順は上記の順に限定されるものではなく、観察角度に応じて適宜変えることができるものである。また、加法混色層の第1再現色、減法混色層の再現色および加法混色層の第2再現色がこの順でシフトする場合、上記加法混色層の第1再現色と、上記加法混色層の第2再現色とは、同じものであってもよく、異なるものであっても良い。
例えば、加法混色層が体積型ホログラム層である場合は、上記体積型ホログラム層を有するホログラム層転写箔を用い、着色された減法混色層の表面に上記ホログラム層転写箔を用いて上記体積型ホログラム層を転写することにより形成することができる。また、加法混色層がレリーフ型ホログラム層である場合も同様に、着色された減法混色層の表面に、上記レリーフ型ホログラム層を有する転写箔を用いて貼付することにより形成することができる。
次に、本発明の真贋判定方法に用いられる部材について説明する。
上記部材としては、特に限定されるものでなく、例えば、商品券、証券、株券などの金券類、クレジットカード、プリペイドカード、IDカードなどの各種カード、切符、紙幣、パスポート、身分証明書、公共競技投票券、ビデオソフト、パソコン用ソフト等のセキュリティ対象物を用いることができる。
また、上記部材の形状についても、特に限定されるものではない。
次に、本発明の真贋判定方法における観察工程について説明する。本発明における観察工程とは、上記準備工程により得られたカラーシフト材付き部材を所望の観察角度から観察し、その時にカラーシフト材上に発現される色を視認する工程である。
まず、観察工程1では、図7(a−1)に例示するように上記カラーシフト材10を有する当該部材(図示せず)をカラーシフト材10に対して観察角度θ1の方向から観察する。なお、この時の観察位置は、カラーシフト材10に対して観察角度θ1=0°、つまり、カラーシフト材10に対して垂直となる位置を表している。
上記観察角度θ1において、観察者は、図7(a−2)に例示するように、輝度の低い減法混色層2の再現色を視認することができるが、加法混色層1の再現色は殆ど発現されないため視認することができない。
上記観察角度θ2において、観察者は、図7(b−2)に例示するように、観察工程1では視認されなかった加法混色層1の再現色を視認することができるが、減法混色層2の再現色は上記加法混色層1の再現色の発現によりベタ塗りされるため視認することができない。
この時、発現される上記加法混色層1の再現色は、観察工程1で視認された上記減法混色層2の再現色よりも輝度が高いため、観察者は色彩の変化だけでなく輝度の変化からも上記加法混色層1の再現色と減法混色層2の再現色とが瞬時に切り替わったことを視認することができる。
上記観察角度θ3において、観察者は、図7(c−2)に例示するように、再び、輝度の低い減法混色層2の再現色を視認することができ、一方、上記観察工程2で視認した輝度の高い加法混色層1の再現色は消失し、殆ど発現されないため視認することができない。
なお、観察工程3において発現する減法混色層2の再現色は、上述した観察工程1において発現した減法混色層2の再現色と同じものである。
また加法混色層の再現色および減法混色層の再現色の発現順についても、観察角度によって定まるものであるため、必ずしも上述の再現色の発現順に限定されるものではない。
次に、本発明の真贋判定方法における判定工程について説明する。上記判定工程とは、上記観察工程により視認された色および情報から、該部材が真正品か否かを判断する工程である。つまり、カラーシフト材を2以上の異なる観察角度から視認した時に、上記特定の観察角度においては、上記加法混色層の再現色が視認され、且つ、上記特定の観察角度以外の角度においては、上記減法混色層の再現色が視認されるものを真と判断する工程である。
また、同一のカラーシフト材に対して上記特定の観察角度とは別の角度から上記積層部分を観察した時に、高輝度を有する上記加法混色層の再現色は消失し、視認することができないが、上記加法混色層の再現色よりも輝度の低い上記減法混色層の再現色を視認できるカラーシフト材であることを確認する。
このように、2以上の異なる観察角度において、カラーシフト材が発色原理の異なる再現色によるカラーシフトを発現するものであると確認される場合、上記カラーシフト材は真正であり、それにより当該部材も真正品であると判断することができる。
入射光の波長に対し反射光が長波長となるように、回折光の角度が規定された体積型ホログラム層を有するカラーシフト材を用いて真贋判定を行う場合、上述した観察工程において、減法混色層の発現色が視認される観察角度θ1から観察角度θ2(90°>θ2>θ1)へ変化させる際に、上記積層部分において再現色がレッドシフトを発現することが確認されるならば、当該部材は真正品であると判断することができる。
次に、本発明のカラーシフト材について説明する。本発明のカラーシフト材は、印刷層および上記印刷層上の少なくとも一部に形成された体積型ホログラム層を有するカラーシフト材であって、1つの上記体積型ホログラム層は、単一色かつ単一輝度であり、特定の観察角度においては上記体積型ホログラム層の再現色が視認され、上記特定の観察角度以外の角度においては上記印刷層の再現色が視認されることを特徴とするものである。
なお、上記印刷層42上に積層される体積型ホログラム層41は、図9(a)に例示するように1種類であってもよく、図9(b)に例示するように、複数の体積型ホログラム層(41a、41bおよび41c)を有するものであってもよい。
なお、本発明における「1つの体積型ホログラム層が単一色かつ単一輝度である」については、上述した「I.真贋判定方法 A.準備工程 1.カラーシフト材 (1)加法混色層 (a)ホログラム層 (i)体積型ホログラム層」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの記載は省略する。
以下、本発明のカラーシフト材の各構成について説明する。
本発明における体積型ホログラム層は、印刷層上の少なくとも一部に形成されるものであり、1つの層において単一色かつ単一輝度を有するものである。上記体積型ホログラム層の再現色は、特定の観察角度においては、印刷層の再現色を覆うように発現することで視認され、一方、上記特定の観察角度以外の角度においては、上記体積型ホログラム層の再現色は発現せず無色透明となるため、視認されないものである。
なお、上記体積型ホログラム層の再現色は、加法混色により発現されるものである。
なお、本発明における体積型ホログラム層の再現色は、単色でもよく、2色以上を有していてもよい。また、色の種類についても限定されるものではなく、適宜選択することができる。
なお、上記ホログラムの記録方法については、上述した「I.真贋判定方法 A.準備工程 1.カラーシフト材 (1)加法混色層 (a)ホログラム層」の項で説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、上記体積型ホログラム層が印刷層上に複数に分けて形成される場合、同一の観察角度において、全ての体積型ホログラム層が再現色を発現するものであってもよく、少なくとも1つの体積型ホログラム層が再現色を発現するものであってもよく、全ての体積型ホログラム層が再現色を発現しないものであってもよい。
さらに、同一の観察角度において複数の体積型ホログラム層が再現色を発現する場合、発現される再現色は全て同じものであってもよく、上記体積型ホログラム層ごとに異なる再現色であってもよい。
本発明における印刷層は、少なくとも表面上の一部に体積型ホログラム層が形成されたものである。
また、本発明における印刷層は、パターンを形成せずに単一色で着色されたもの、いわゆる、ベタ塗りされたものであることが好ましい。
なお、本発明における印刷層の再現色は、減法混色により発現されるものであり、上記再現色は単色でもよく、2色以上を有していてもよい。また、色の種類についても限定されるものではなく、適宜選択することができる。
なお、上記印刷層は、パターンを形成せずに単一色で着色されたもの、いわゆる、ベタ塗りされたものであることが好ましいが、表面に文字、数字、マークや絵柄などのデザイン等の目視可能な可視情報が印刷されたものであってもよい。
本発明のカラーシフト材は、上記印刷層の再現色と、上記体積型ホログラム層の再現色とが異なることが好ましい。上記印刷層の再現色と上記体積型ホログラム層の再現色とが異なることにより、観察者がカラーシフトの発現を容易に認識することができるからである。
具体的には、上記印刷層の再現色の波長と上記加法混色層の再現色の波長との差が、「I.真贋判定方法 A.準備工程 1.カラーシフト材 (3)カラーシフト材」の項で説明した範囲内であることが好ましい。
また、印刷層の再現色と体積型ホログラム層の再現色とは、補色関係を有することが好ましい。補色は色相差が大きいため、観察角度によりカラーシフトが発現する際に、観察者が色彩の変化を強く視認することができ、視認による真贋判定が容易となるからである。
また、上記カラーシフト態様が、例えば、観察角度θ1から観察角度θ2(90°>θ2>θ1)への変化に伴い、1種類以上の印刷層の再現色から2種類以上の体積型ホログラム層の再現色へシフトするものであってもよく、その逆へシフトするものであってもよい。同様に、観察角度θ1から観察角度θ2(90°>θ2>θ1)への変化に伴い、2種類以上の印刷層の再現色から1種類以上の体積型ホログラム層の再現色へシフトするものであってもよく、その逆へシフトするものであってもよい。この時各層で発現される再現色の種類は問わない。
さらに、観察角度θ1から観察角度θ2(90°>θ2>θ1)への変化に加えて、観察角度θ2から観察角度θ3(90°>θ3>θ2>θ1)へ変化させる場合、印刷層の再現色、体積型ホログラム層の再現色および印刷層の再現色がこの順でシフトするものであってもよく、体積型ホログラム層の第1再現色、印刷層の再現色および体積型ホログラム層の第2再現色がこの順でシフトするものであってもよい。なお、各層における再現色がシフトする順は上記の順に限定されるものではなく、観察角度に応じて適宜変えることができるものである。また、体積型ホログラム層の第1再現色、印刷層の再現色および体積型ホログラム層の第2再現色がこの順でシフトする場合、上記体積型ホログラム層の第1再現色と、上記体積型ホログラム層の第2再現色とは、同じものであってもよく、異なるものであっても良い。
(第1積層体)
第1のフィルムとしてPETフィルム(ルミラーT60(厚み50μm)、東レ(株)製)を準備し、ホログラム形成材料として、下記組成からなる体積型ホログラム記録材料を、乾燥膜厚10μmとなるようにグラビアコートにて塗工し、塗工面に表面離型処理PETフィルム(「SP−PET」(厚み50μm)、トーセロ(株)製)をラミネートし、第1積層体を作製した。
… 50重量部
・3,9−ジエチル−3‘−カルボキシルメチル−2,2’−チアカルボシアニン沃素塩 …0.5重量部
・ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート … 6重量部
・2,2−ビス[4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン… 80重量部
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル … 80重量部
・溶剤(メチルイソブチルケトン/n−ブタノール=1/1(重量比))
…200重量部
上記第1積層体から表面離型処理PETフィルムを剥がし、鏡の原版に体積型ホログラム記録用材料層を貼り付け、波長;532nmのレーザ光を用いてリップマンホログラムを撮影し記録した。ホログラムの回折角度は再生照明光の角度を45°とし、正面方向に回折するよう設計した。記録後、上記体積型ホログラム記録用材料層上に第2のフィルムとしてPETフィルム(ルミラーT60(厚み25μm)、東レ(株)製)を貼りあわせ、第1のフィルム/体積型ホログラム記録用材料層/第2のフィルムの積層体とした。
第3のフィルム(基材)としてPETフィルム(ルミラーT60(厚み25μm)、東レ(株)製)を準備し、保護層として、下記組成からなる材料を、乾燥膜厚3μmとなるようにグラビアコートにて塗工した。
・ポリエチレンワックス(分子量;10000、平均粒径;5μm) … 3重量部
・溶剤(メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比)) … 400重量部
上記第1のフィルム/体積型ホログラム記録用材料層/第2のフィルムの積層体を100℃の雰囲気中で10分間加熱し、加熱後、上記第2のフィルムを剥離して露出させた体積型ホログラム記録用材料層に、上記第2積層体の保護層側が接するようにして重ね、ニップした熱ローラ対の間を通過させた。全面に照射線量;2500mJ/cm2の紫外線を照射して、体積型ホログラム記録用材料の層の定着を行い、第1のフィルム/体積型ホログラム層/保護層/第3のフィルムの第3積層体を得た。
離型紙/粘着剤/上質紙の構成からなるラベル用紙(LR1110、リンテック(株)製)にオフセット印刷を用い、減法混色法で赤色をベタ印刷し、第4積層体を得た。
上記第3積層体の第1のフィルムを剥離し、剥離面にヒートシール材として下記組成からなる材料を、乾燥膜厚5μmとなるようにグラビアコートにて塗工した。得られた積層体のヒートシール面を2cm角にカットし、上記第4積層体の赤色ベタ部の上に重ね、市販ラミネータで150℃、0.5m/minのラミネート条件で熱接着させた。熱接着後、第3のフィルムを積層体から剥離しカラーシフト材を得た。
・溶剤(水/イソプロピルアルコール=1/1) … 50重量部
白色光照明直下でカラーシフト材を手に持ち、傾けながら観察したところ、観察角度θ=45°までは赤色を視認でき、θ=45°付近で波長530nm付近の緑色を視認し、θ=45°以降では再び赤色を視認できた。緑色は加法混色による色再現であり、減法混色法の赤色と比較して輝度が高く、また赤色と緑色の切り替わりはグラデーションを感じないはっきりとしたカラーシフトを確認できた。
2 … 減法混色層
3、41 …体積型ホログラム層
42 …印刷層
10、50 … カラーシフト材
Claims (5)
- 減法混色により再現色を発現する減法混色層と、前記減法混色層上の少なくとも一部に形成され、加法混色により再現色を発現する加法混色層とを有し、特定の観察角度においてのみ前記加法混色層の再現色が発現するカラーシフト材を用いた真贋判定方法であって、
前記加法混色層は、ベタ面として再現色を発現するものであり、
前記カラーシフト材を2以上の異なる観察角度から視認した時に、前記特定の観察角度においては、前記加法混色層の再現色が視認され、且つ、前記特定の観察角度以外の角度においては、前記減法混色層の再現色が視認されるものを真とすることを特徴とする真贋判定方法。 - 前記減法混色層の再現色と、前記加法混色層の再現色とが異なることを特徴とする請求項1に記載の真贋判定方法。
- 1つの前記加法混色層が、単一色かつ単一輝度である体積型ホログラム層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真贋判定方法。
- 印刷層および前記印刷層上の少なくとも一部に形成された体積型ホログラム層を有するカラーシフト材であって、1つの前記体積型ホログラム層は、単一色かつ単一輝度であり、
特定の観察角度においては前記体積型ホログラム層の再現色が視認され、前記特定の観察角度以外の角度においては前記印刷層の再現色が視認されることを特徴とするカラーシフト材。 - 前記印刷層の再現色と、前記体積型ホログラム層の再現色とが異なることを特徴とする請求項4に記載のカラーシフト材。
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