[触感改良フィルム]
本発明の触感改良フィルムは、表面形状を形成するための微粒子を含まず、特定の表面形状を有していればよく、通常、凸部とフィルム本体部とが同一の樹脂成分で一体化されて形成されている。
(樹脂成分)
樹脂成分は、非透明樹脂であってもよいが、タッチパネルなどのディスプレイに利用できる点から、透明樹脂が好ましい。透明樹脂には、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂(熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂など)などが含まれる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアセタール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、透明性及び強度のバランスに優れる点から、環状ポリオレフィン、ポリアルキレンアリレート(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)など)、ポリメタクリル酸メチル系樹脂、ビスフェノールA型ポリカーボネート、セルロースエステルなどが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ポリウレタンなどが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、透明性及び強度のバランスに優れる点から、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタンなどが好ましい。
光硬化性樹脂としては、例えば、光硬化性ポリエステル、光硬化性アクリル系樹脂、光硬化性エポキシ(メタ)アクリレート、光硬化性ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの光硬化性樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、透明性及び強度のバランスに優れる点から、光硬化性アクリル系樹脂が好ましい。
本発明では、透明性、耐久性及び生産性に優れる点から、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化可能な光硬化性アクリル系樹脂が特に好ましい。
光硬化性アクリル系樹脂としては、分子内に2以上(例えば、2〜8程度)の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートが汎用され、例えば、2〜8官能(メタ)アクリレート、2官能以上のオリゴマー又は樹脂などが含まれる。
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ビスフェノール類のC2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート;アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの橋架け環式ジ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
3官能以上(3〜8官能程度)の(メタ)アクリレートとしては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに、これらの多官能(メタ)アクリレートにおいて、多価アルコールは、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドなどのC2−4アルキレンオキシド)の付加体であってもよい。これらの多官能(メタ)アクリレートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
2官能以上のオリゴマー又は樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうち、コート層の機械的特性を容易に制御できる点から、ウレタン(メタ)アクリレートが汎用される。
これらの光硬化性アクリル系樹脂のうち、強度及び硬度が高く、耐久性を向上でき、かつ表面におけるペンの滑り性を向上できる点から、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの3官能以上(特に4〜8官能)の(メタ)アクリレートが好ましい。
光硬化性アクリル系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、触感を向上させる点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、500以上であってもよく、例えば、500〜10000、好ましくは600〜9000、さらに好ましくは700〜8000(特に1000〜5000)程度であってもよい。分子量が小さすぎると、触感が低下し、分子量が大きすぎると、成膜性や取り扱い性が低下する。
触感改良フィルムは、必要に応じて、さらに慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、補強剤、分散剤、帯電防止剤、抗菌剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。さらに、触感改良フィルムは、表面の凸部を形成しない粒径や割合であれば、粒状充填剤を含んでいてもよいが、透明樹脂で形成されている場合、内部ヘイズを抑制できる点からも、粒状充填剤を含まないのが好ましく、光の波長よりも大きなサイズの他の添加剤も含まないのが好ましい。
触感改良フィルムが硬化性樹脂で形成されている場合、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、熱重合開始剤(ベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物などの熱ラジカル発生剤)であってもよく、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。好ましい重合開始剤は、光重合開始剤である。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが例示できる。光重合開始剤には、慣用の光増感剤や光重合促進剤(例えば、第三級アミン類など)が含まれていてもよい。重合開始剤の割合は、硬化性樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜8重量部(特に1〜5重量部)程度であってもよい。
硬化性樹脂(硬化前の硬化性樹脂)は、塗工性などの点から、さらに溶媒を含んでいるのが好ましい。溶媒は、バインダー成分(前記ビニル系化合物や熱可塑性エラストマーなど)の種類及び溶解性に応じて選択でき、少なくとも固形分を均一に溶解できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類、エーテル類、炭化水素類、エステル類、水、アルコール類、セロソルブ類、スルホキシド類、アミド類などが例示できる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、混合溶媒であってもよい。これらの溶媒のうち、イソプロパノールなどのアルコール類、トルエンなどの芳香族炭化水素類などが汎用される。
(表面特性)
触感改良フィルムの表面には、適度な凹凸構造が形成されており、表面において、JIS B0610に準拠した転がり円最大高さうねり(WEM)が15μm以上(例えば、15〜100μm程度)であり、例えば、15〜50μm、好ましくは16〜45μm、さらに好ましくは17〜40μm(特に17.5〜38μm)程度である。本発明では、WEMがこのような範囲に調整されているため、ペン入力デバイスにおいて、プラスチックペン(例えば、ポリオキシメチレンで形成されたペン)で入力すると、ペン先が凸部に適度に引っ掛かるためか、ペン入力の書き始め及び途中で書き味を略一定に調整できる。WEMが小さすぎると、ペン入力デバイスにおいて、滑らずに引っ掛かりすぎて、抵抗感が発生する。
本明細書では、転がり円最大高さうねり(WEM)は、JIS B0610に準拠して測定でき、詳細には、後述の実施例に記載された方法で測定できる。
触感改良フィルムの表面において、高さ1.0μm以上の凸部の個数は30〜200個/mm2であり、例えば、40〜180個/mm2、好ましくは45〜150個/mm2、さらに好ましくは50〜130個/mm2(特に70〜120個/mm2)程度である。本発明では、前記凸部の個数がこのような範囲に調整されているため、ペン入力デバイスにおいて、プラスチックペン(例えば、ポリオキシメチレンで形成されたペン)で入力すると、ペン先が各凸部毎に適度な間隔で引っ掛かるためか、ペン入力の書き始め及び途中で書き味を略一定に調整できる。一方、高さ1.0μm以上の凸部の個数が少なすぎると、ペン入力デバイスにおいて、滑らずに引っ掛かりすぎて、抵抗感が発生する。一方、多すぎると、ペン入力の書き始めの摩擦抵抗に対して途中の摩擦抵抗が小さくなり、滑りすぎて、微妙な入力が困難となり、高度な機能を有するデバイスに対応できない。
触感改良フィルムの表面において、高さ1.0μm以上の凸部の平均高さは3.5μm以上であり、例えば、3.5〜10μm、好ましくは3.6〜8μm(例えば、3.8〜6μm)、さらに好ましくは3.9〜5.5μm(特に4〜5μm)程度である。本発明では、前記凸部の個数がこのような範囲に調整されているため、ペン入力デバイスにおいて、プラスチックペンのペン先が各凸部毎に確実にかつ適度に引っ掛かるためか、ペン入力の書き始め及び途中で書き味を略一定に調整できる。すなわち、前述の凸部個数との組み合わせにより、ペン先が各凸部毎に適度な間隔で確実にかつ適度に引っ掛かるためか、ペン入力の書き始め及び途中で書き味を略一定に調整でき、紙に対する鉛筆のような書き味を実現できる。一方、高さ1.0μm以上の凸部の平均高さが低すぎると、滑りすぎる傾向があり、高すぎると、引っ掛かりが大きすぎる。
触感改良フィルムの表面において、高さ2.0μm以上の凸部の個数は、例えば、10〜150個/mm2、好ましくは20〜120個/mm2、さらに好ましくは30〜100個/mm2(特に50〜80個/mm2)程度である。高さ2.0μm以上の凸部の個数が少なすぎると、ペン入力デバイスにおいて、引っ掛かりが大きすぎる。一方、多すぎると、ペン入力の書き始めの摩擦抵抗に対して途中の摩擦抵抗が小さくなり、滑りすぎる。
触感改良フィルムの表面において、高さ2.0μm以上の凸部の平均高さは、例えば、4〜15μm、好ましくは4.5〜10μm、さらに好ましくは4.8〜8μm(特に5〜6μm)程度である。高さ2.0μm以上の凸部の平均高さが低すぎると、滑りすぎる傾向があり、高すぎると、引っ掛かりすぎる。
本明細書では、前記凸部の個数及び平均高さは、非接触表面形状計測装置を用いて閾値1μm又は2μmで粒子解析することにより測定でき、詳細には、後述の実施例に記載された方法で測定できる。
触感改良フィルムの表面において、有効測定距離を20mmとしたとき、平均摩擦係数は0.15以上であってもよく、例えば、0.15〜0.5、好ましくは0.18〜0.4、さらに好ましくは0.2〜0.35(特に0.23〜0.3)程度である。摩擦係数が低すぎると、滑りすぎる傾向があり、高すぎると、引っ掛かりすぎる。
摩擦係数の標準偏差は0.02以上であってもよく、例えば、0.02〜0.2、好ましくは0.03〜0.15、さらに好ましくは0.05〜0.12(特に0.06〜0.1)程度である。標準偏差が小さすぎると、引っ掛かり感が低下し、標準偏差が大きすぎると、書き味が低下する。
さらに、前半10mmの標準偏差と後半10mmの標準偏差との比(前者/後者)は0.3〜3.3であってもよく、例えば、0.4〜3、好ましくは0.5〜2、さらに好ましくは0.7〜1.5(特に0.75〜1)程度である。この比がこれらの範囲にあると、ペン入力の書き始め及び途中で(ペン入力の間)、動作距離に対する摩擦係数のプロファイルを略一定に調整できるため、ペン入力デバイスに利用すると、紙に対する鉛筆のような書き味で入力できる。一方、この比が小さすぎたり、大きすぎると、書き味が低下する。
本明細書では、摩擦係数は、静動摩擦測定機を用いて測定でき、詳細には、後述の実施例に記載された方法で測定できる。
(他の特性)
本発明の触感改良フィルムは、透明樹脂で形成した場合、ディスプレイに必要な透明性も付与できる。すなわち、透明樹脂(例えば、光硬化性アクリル系樹脂など)で形成した触感改良フィルムは、JIS K7136に準拠した全光線透過率が85%以上であってもよく、例えば、85〜99.9%、好ましくは86〜99.5%、さらに好ましくは88〜99%(特に、90〜95%)程度である。さらに、本発明の触感改良フィルムは、表面に適度な凹凸構造を有し、かつ高い全光線透過率を有しており、全光線透過率が91〜99%(例えば、91.5〜98%)、好ましくは92〜97%、さらに好ましくは92.5〜96%(特に93〜95%)程度であってもよい。
さらに、透明樹脂で形成された触感改良フィルムは、微粒子を含まないため、内部ヘイズが抑制されている。そのため、前記触感改良フィルムは、例えば、JIS K7136に準拠したヘイズは、50%以下に調整してもよく、例えば、30%以下(例えば、0.1〜30%)、好ましくは0.3〜25%、さらに好ましくは0.5〜20%(特に1〜15%)程度である。本発明では、ヘイズを抑制できるため、高精細表示ディスプレイにも適している。
触感改良フィルムは、適度な硬度を有しており、ハードコート機能を有するともに、ペン入力デバイスにおいて、紙に対する鉛筆のような書き味で入力できる。特に、光硬化性樹脂などの硬化性樹脂で形成した場合、触感改良フィルムの鉛筆硬度(荷重750gf)は、例えば、B以上であり、好ましくはHB以上、さらに好ましくはF〜4H(特にH〜3H)程度である。硬度が高すぎると、滑りすぎる傾向があり、低すぎると、引っ掛かりすぎる。
触感改良フィルムの平均厚みは、例えば、1〜100μm、好ましくは1.5〜50μm、さらに好ましくは2〜20μm(特に3〜15μm)程度である。
本発明の触感改良フィルムは、生産性などの点から、基材フィルムとの積層フィルムであってもよい。基材フィルムは、無機材料であってもよいが、強度や成形性などの点から、有機材料が汎用される。有機材料としては、触感改良フィルムの項で例示された熱可塑性樹脂、硬化性樹脂を利用できる。触感改良フィルムが透明樹脂で形成されている場合、基材フィルムも透明樹脂で形成されているのが好ましく、例えば、セルロース誘導体、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリル系樹脂などであってもよい。これらのうち、セルロースエステル、ポリエステルなどが汎用される。
セルロースエステルとしては、セルローストリアセテート(TAC)などのセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセテートC3−4アシレートなどが挙げられる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリアルキレンアリレートなどが挙げられる。
これらのうち、PETやPENなどのポリC2−4アルキレンアリレートが好ましく、耐熱性の点から、PENなどのポリC2−4アルキレンナフタレート樹脂が特に好ましい。さらに、有機材料で形成された基材フィルムは、二軸延伸したフィルムであってもよい。
基材フィルムは、必要に応じて、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
基材フィルムの厚みは、用途に応じて、10μm〜1mm程度の範囲から選択でき、例えば、10〜500μm、好ましくは20〜300μm、さらに好ましくは30〜200μm程度である。
本発明の触感改良フィルムは、さらに他の機能層、例えば、透明導電層、アンチニュートンリング層、防眩層、光散乱層、反射防止層、偏光層、位相差層などの層と組み合わせてもよい。
本発明の触感改良フィルムは、ペン入力の書き始め及び途中で書き味を略一定に調整でき、紙に対する鉛筆のような書き味で入力できるため、ペン入力型タッチパネルのディスプレイやペンタブレットなどのペン入力デバイスに利用でき、ディスプレイの最表面に位置するように配設される。特に、透明樹脂で形成された触感改良フィルムは、透明性にも優れるため、各種のペン入力型タッチパネル(特にITOグリッド方式を採用する投影型静電容量方式タッチパネル)のディスプレイ、特に高精細表示装置のディスプレイの操作に適している。
ペン入力デバイスで用いられるペン(接触子)は、プラスチックや金属などの硬質材料で形成されていればよく、通常、プラスチックで形成されている。プラスチックとしては、例えば、強度や耐久性などの点から、例えば、ポリアセタール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、軽量で強度が高く、耐摩耗性などの耐久性や摺動性にも優れる点から、ポリオキシメチレンなどのポリアセタール樹脂が好ましい。ペン先の形状は、特に限定されないが、通常、曲面形状(R状)である。ペン先の平均径は、特に限定されないが、例えば、0.1〜10mm程度の範囲から選択でき、好ましくは0.3〜8mm、更に好ましくは0.3〜5mm程度であるが、通常、0.5〜3mm(特に0.6〜2mm)程度である。
[触感改良フィルムの製造方法]
本発明の触感改良フィルムは、ネガ型を用いた転写により触感改良フィルムの表面形状を形成するネガ転写工程を含む製造方法により得られる。
(ネガ転写工程)
ネガ転写工程において、ネガ型としては、慣用の方法で形成したネガ型、例えば、ポジ型を用いたポジ転写により表面形状を形成したネガ型、サンドブラスト法やビーズショット法により表面形状を形成したネガ型、エッチングにより表面形状を形成したネガ型、レーザーなどを利用した切削加工により表面形状を形成したネガ型などが挙げられる。
ネガ型の材料は、特に限定されず、金属やガラスなどの無機材料、プラスチック材料のいずれであってもよく、通常、エッチングを利用したネガ型、サンドブラスト法やビーズショット法を利用したネガ型では金属やガラスなどの無機材料で形成され、他のネガ型ではプラスチック又は無機材料で形成されている。
ネガ型の材料は、触感改良フィルムの材質に応じて選択でき、触感改良フィルムと離型性の高い材料で形成してもよい。触感改良フィルムが樹脂成分で形成されている場合、ネガ型は、金属やガラスなどの無機材料や、前記樹脂成分と離型性の高いプラスチック材料で形成されていてもよい。特に、樹脂成分が光硬化性アクリル系樹脂である場合、ネガ型は、ポリオレフィン、スチレン系樹脂、シリコーン樹脂などで形成されていてもよく、特に、取り扱い性や離型性などの点から、鎖状オレフィン単位と環状オレフィン単位とで構成された環状ポリオレフィン(例えば、エチレン−ノルボルネン共重合体など)で形成されていてもよい。
ネガ型は、剥離性を向上させるために、慣用の離型剤を含んでいてもよい。離型剤としては、例えば、シリコーン化合物、フッ素化合物、ワックス類(ポリオレフィンワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミドなど)などが挙げられる。離型剤は、ネガ型の内部に含まれていてもよく、ネガ型の表面にコーティングされていてもよい。離型剤の割合は、樹脂成分100重量部に対して0.01〜50重量部程度の範囲から選択でき、ネガ型の内部に含有させる場合、例えば、5〜30重量部(特に10〜25重量部)程度であってもよい。
ネガ型の形状は、平板状、ローラー状のいずれでもよいが、生産性などの点から、ローラー状が好ましい。
ネガ転写工程において、ネガ型を用いた転写の方法としては、未硬化の硬化性樹脂を含む液状組成物をネガ型の上にコーティングした後、硬化する方法、液状の熱可塑性樹脂(例えば、熱可塑性樹脂を含む溶液など)をネガ型の上にコーティング又はキャストした後、固化する方法、軟化した熱可塑性樹脂をネガ型と密着(一体化)させた後、冷却して固化する方法などが挙げられる。
これらの方法において、生産性や取り扱い性などの点から、基材フィルムを用いるのが好ましい。樹脂成分が液状である場合、ネガ型の上に、液状樹脂成分をコーティングした後、前記液状樹脂成分の上に基材フィルムを積層し、前記液状樹脂成分を硬化又は固化してもよく、逆に、基材フィルムの上に液状樹脂成分をコーティングした後、前記液状樹脂成分の上にネガ型を積層し、前記液状樹脂成分を硬化又は固化してもよい。樹脂成分が軟化した熱可塑性樹脂である場合、基材フィルムとの積層体において、触感改良フィルムを形成するための熱可塑性樹脂のみを軟化させてネガ型と密着してもよい。
これらの方法のうち、触感改良フィルムの樹脂成分として硬化性樹脂を用いる方法が好ましく、生産性を向上させるために、ネガ型を表面に備えたローラーの上に、未硬化の硬化性樹脂を含む液状組成物をコーティングした後、ロールから巻き出した基材フィルムとラミネートし、加熱又は光照射して硬化性樹脂を硬化させてもよい。
液状組成物のコーティング方法としては、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、バーコーター法やグラビアコーター法などが汎用される。
液状組成物が有機溶媒を含有する場合など、塗布後は、必要に応じて乾燥を行ってもよい。乾燥は、例えば、40〜150℃、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃程度の温度で行ってもよい。
硬化工程において、液状組成物は、重合開始剤の種類に応じて加熱して硬化させてもよいが、通常、活性エネルギー線を照射することにより硬化できる。活性エネルギー線としては、例えば、放射線(ガンマー線、X線など)、紫外線、可視光線、電子線(EB)などが利用でき、通常、紫外線、電子線である場合が多い。
光源としては、例えば、紫外線の場合は、Deep UV ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを用いることができる。照射光量(照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、50〜10000mJ/cm2、好ましくは70〜7000mJ/cm2、さらに好ましくは100〜5000mJ/cm2程度であってもよい。
電子線の場合は、電子線照射装置などの露光源によって、電子線を照射する方法が利用できる。照射量(線量)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、1〜200kGy(グレイ)、好ましくは5〜150kGy、さらに好ましくは10〜100kGy(特に20〜80kGy)程度である。加速電圧は、例えば、10〜1000kV、好ましくは50〜500kV、さらに好ましくは100〜300kV程度である。
なお、活性エネルギー線の照射は、必要であれば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなど)雰囲気中で行ってもよい。
基材フィルムに対する触感改良フィルムの密着性を向上させるために、基材フィルム及び/又は触感改良フィルムを表面処理に供してもよい。表面処理としては、慣用の表面処理、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾンや紫外線照射処理などが挙げられる。基材フィルムは、表面が易接着処理されていてもよい。
硬化性樹脂としては、触感改良フィルムの項で例示された硬化性樹脂(特に、光硬化アクリル系樹脂などの光硬化性樹脂)を利用でき、触感改良フィルムの項で例示された慣用の添加剤、重合開始剤、溶媒と組み合わせて利用できる。
硬化した触感改良フィルム(触感改良層)とネガ型との剥離は、剥離ローラーを用いて連続的に剥離してもよい。
前記ネガ型のうち、生産性などの点から、ポジ型を利用したネガ型が好ましい。ポジ型は、ポジ型を用いた転写によりネガ型の表面形状を形成するポジ転写工程を経て形成される。
(ポジ転写工程)
ポジ転写工程において、ポジ型は微粒子を用いて製造してもよい。ポジ型は、触感改良フィルムと同一の表面形状であり、微粒子の形状としては、球状、楕円体状、多角体形(多角錘状、正方体状、直方体状など)、板状、棒状、不定形状などが挙げられる。これらの形状のうち、ペン先に適度に引っ掛かり、鉛筆のような書き味(触感)で入力できる点から、鋭角部を有さない形状、例えば、球状又は楕円体状が好ましく、真球状又は略真球状が特に好ましい。
微粒子の粒径は、ポジ型塗布液の粘度などに応じて適宜選択でき、触感改良のフィルムの項で記載された凹凸構造を容易に形成できる点から、ポジ型の厚みと略同一の粒径か、又はポジ型の厚みよりも大きい粒径が好ましい。具体的には、微粒子の平均粒径は、ポジ型の厚みに対して0.5〜10倍程度の範囲から選択でき、例えば、0.8〜5倍(例えば、1〜5倍)、好ましくは0.9〜4倍、さらに好ましくは1〜3倍(特に1.1〜2.5倍)程度であってもよい。
微粒子の平均粒径は、例えば、10μm以上(例えば、10〜100μm)、好ましくは11〜50μm、さらに好ましくは12〜40μm(特に13〜30μm)程度である。平均粒径が大きすぎると、触感改良フィルムの表面粗さが大きくなり、摩擦力が増加するためか、引っ掛かりが大きくなるとともに、強度などの機械的特性も低下する。一方、小さすぎると、滑りすぎる。平均粒径は、レーザー回折を用いた方法で測定できる。
微粒子の粒径分布は、少量で目的の凹凸形状を得ることができ、ポジ型の機械的強度を向上できる点から、狭い方が好ましい。微粒子の粒径分布は、CV値(相関係数:平均粒径に対する標準偏差の割合)で表され、CV値が20%以下であってもよく、例えば、1〜18%、好ましくは2〜17%、さらに好ましくは3〜15%(特に4〜10%)程度である。
微粒子は、前記平均粒径を有し、ポジ型の表面で適度な凹凸形状を形成できればよく、材質は特に限定されず、無機粒子(例えば、金属単体、金属酸化物、金属硫酸塩、金属珪酸塩、金属リン酸塩、金属炭酸塩、金属水酸化物、ケイ素化合物、フッ素化合物、天然鉱物などで形成された粒子など)であってもよく、有機粒子(例えば、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂などの熱可塑性樹脂、架橋ポリオレフィン樹脂、架橋(メタ)アクリル系樹脂、架橋ポリスチレン系樹脂、架橋ポリウレタン系樹脂などの架橋熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で形成された粒子など)であってもよい。これらのうち、シリカ粒子、ポリアミド系粒子、架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル系粒子、架橋ポリスチレン系粒子、架橋ポリウレタン系粒子などが汎用される。
ポジ型において、前記微粒子は、通常、バインダー成分を用いて固定されている。バインダー成分としては、前記微粒子をポジ型に固定できればよく、無機バインダー成分、有機バインダー成分のいずれであってもよいが、微粒子を強固に固定できる点などから、有機バインダー成分が好ましい。さらに、有機バインダー成分の中でも、成膜性に優れ、微粒子を強固に固定でき、耐擦傷性などの膜強度にも優れる点から、触感改良フィルムを形成する透明樹脂の項で例示された硬化性樹脂(特に光硬化性アクリル系樹脂)をバインダー成分として用いてもよい。
バインダー成分は、硬化性樹脂(特に光硬化性アクリル系樹脂)に加えて、成膜性などを改良するために、さらに熱可塑性エラストマーを含んでいてもよい。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどであってもよいが、接着性や可撓性などの点から、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好ましい。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ポリイソシアネート類と、ポリオール類と、必要に応じて鎖伸長剤(又は鎖延長剤)との反応により得ることができる。
ポリイソシアネート類としては、慣用のポリイソシアネート類などを使用でき、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)などの脂環族ジイソシアネートなどの無黄変性ジイソシアネート又はその誘導体、特に、脂肪族ジイソシアネートのトリマー(三量体、イソシアヌレート環を有するトリマーなど)などを好ましく使用できる。
ポリオール類としても、慣用のポリマーポリオール類などを使用でき、通常、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールが汎用される。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、オキシラン化合物の開環重合体又は共重合体[例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリ(C2−4アルキレングリコール)]、ビスフェノールA又は水添ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加体などを好ましく利用できる。
ポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸(又はその無水物)とポリオールとの反応生成物、ラクトン類を開環付加重合させた反応生成物であってもよい。
ポリカルボン酸としては、慣用のポリカルボン酸などを使用でき、例えば、脂肪族ジカルボン酸又はその無水物(アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC6−20アルカンジカルボン酸など)などを好ましく利用できる。
ポリオールとしても、慣用のポリオールなどを使用でき、脂肪族ジオール[アルカンジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのC2−22アルカンジオール)など]、脂環族ジオール(1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのシクロアルカンジオール類、水添ビスフェノールAなどの水添ビスフェノール類、又はこれらのC2−4アルキレンオキサイド付加体など)などを好ましく利用できる。
ラクトン類としても、慣用のラクトン類などを使用でき、バレロラクトンやカプロラクトンなどのC4−8ラクトンなどを好ましく使用できる。
鎖伸長剤としては、慣用の鎖伸長剤を使用でき、例えば、ジオール類(エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのアルカンジオールなど)、ジアミン類(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などを好ましく利用できる。
ポリウレタンエラストマーは、短鎖ジオール類とジイソシアネート類とのポリウレタンを含むハードセグメント(ハードブロック)と、ポリマージオール(ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールなど)とジイソシアネート類とのポリウレタンを含むソフトセグメント(ソフトブロック)とで構成されたエラストマーであってもよい。このポリウレタンエラストマーは、通常、ソフトセグメントを構成するポリマージオールの種類に応じて、ポリエステル型ポリウレタンエラストマー、ポリエーテル型ポリウレタンエラストマー、ポリカーボネート型ポリウレタンエラストマーなどに分類される。
これらの熱可塑性ポリウレタンエラストマーのうち、柔軟性や安定性などの点から、ポリエステル型ポリウレタンエラストマーやポリエーテル型ポリウレタン系エラストマー(特に、無黄変性ジイソシアネートを用いたポリエステル型ポリウレタン系エラストマー)が好ましい。
熱可塑性ポリウレタンエラストマーはシリコーン成分で変性されていてもよい。シリコーン成分は、エラストマー中に含有されていてもよく、共重合体として組み込まれていてもよい。シリコーン成分は、通常、オルガノシロキサン単位[−Si(−R)2−O−](基Rは置換基を示す)で形成されており、基Rで表される置換基としては、アルキル基(メチル基など)、アリール基(フェニル基など)、シクロアルキル基などが挙げられる。シリコーン成分の割合は、シリコーン変性ポリウレタンエラストマー全体に対して60重量%以下程度であり、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは2〜30重量%(特に3〜20重量%)程度である。
熱可塑性エラストマー(特に熱可塑性ポリウレタンエラストマー)の数平均分子量は、GPCにおいて、ポリスチレン換算で、例えば、10,000〜500,000、好ましくは20,000〜300,000、さらに好ましくは30,000〜100,000程度であってもよい。
硬化性樹脂(特に光硬化性アクリル系樹脂)と熱可塑性エラストマーとの割合(重量比)は、前者/後者=1/99〜70/30程度であり、好ましくは10/90〜50/50、さらに好ましくは20/80〜45/55(特に30/70〜40/60)程度である。
微粒子の割合は、バインダー成分(例えば、光硬化性アクリル系樹脂及び熱可塑性エラストマーの総量)100重量部に対して、例えば、1〜50重量部、好ましくは1.5〜30重量部(、さらに好ましくは2〜15重量部(特に3〜10重量部)程度である。微粒子の割合が少なすぎると、凸形状の密度が小さくなり、触感改良フィルムが滑りすぎる傾向があり、多すぎても、凸形状の密度が高すぎて、触感改良フィルムの触感が低下する。
バインダー成分は、触感改良フィルムの項で例示された慣用の添加剤、重合開始剤、溶媒と組み合わせて利用できる。
ポジ転写工程において、ポジ型を用いた転写の方法としては、ネガ転写工程と同様の方法を利用できる。ネガ型が環状ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂である場合、液状の熱可塑性樹脂(例えば、熱可塑性樹脂を含む溶液など)をポジ型の上にコーティング又はキャストした後、固化する方法であってもよい。熱可塑性樹脂を含む溶液は、熱可塑性樹脂及びこの熱可塑性樹脂を溶解可能な溶媒を含んでいてもよく、環状ポリオレフィンの場合、溶媒としてメシチレンなどの芳香族炭化水素を含んでいてもよい。
ポジ型の製造方法において、硬化性樹脂(特に光硬化性アクリル系樹脂)などのバインダー成分を含む液状組成物のコーティング方法、硬化方法としては、ネガ転写工程で記載された方法と同様の方法を利用でき、ポジ型の表面に触感改良フィルムと同一の凹凸構造を形成するためには、前記液状組成物(塗布膜)の厚みと微粒子の粒径とを調整する方法や、塗布液の粘度を調整する方法などの方法を利用できる。塗布膜の厚みと微粒子の粒径とを調整する方法としては、塗布膜の厚みよりも大きい粒径を有する微粒子を用いる方法であってもよい。塗布液の粘度を調整する方法としては、例えば、熱可塑性エラストマーなどの高粘性成分を添加して、粒子が塗布液の中で沈降し難くすることにより、コート層表面に適度な凹凸構造を形成してもよい。すなわち、粘度を調整することにより、例えば、塗布膜の厚みを微粒子の粒径と略同程度の厚みであっても、適度な凹凸構造を形成でき、特に、粘度を高めに設定することにより、比較的高い凸部を有する凹凸構造も形成できる。また、前記方法を組み合わせて、微粒子の粒径と塗布液の粘度とを調整することにより、うねりの大きさや凸部の高さを調整してもよい。
ポジ型も、ネガ型と同様に、剥離性を向上させるために、慣用の離型剤を含んでいてもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で得られた透明フィルムを以下の項目で評価した。
[微粒子の平均粒径]
微粒子(乾燥状態)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を2次元処理してイメージ化し、平均粒径を算出した。詳しくは、得られたSEM写真を用いて、写真上に少なくとも200個の粒子が含まれるように、任意のサイズの長方形を描き、その長方形内に存在する全粒子の真球換算時の粒子径を採寸した。得られた少なくとも200個の粒子径に基づいて平均粒子径、CV値を算出した。
[転がり円最大高さうねり(WEM)]
JIS B0610に準拠し、表面粗さ形状測定機((株)東京精密製「サーフコム570A」)を用いて、以下の条件で転がり円最大高さうねり(WEM)を測定した。
測定子:うねり測定子(0102505)
測定子の仕様:800μmR、ルビー
駆動速度:3mm/s
λf低減カットオフ値:8mm
測定長さ:15mm。
[光学特性]
ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH−5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して、ヘイズ、全光線透過率(TPP)を測定した。
[書き味]
NitendoDS(登録商標)用タッチペンで書き味を評価し、以下の基準で評価した。
○:紙に対する鉛筆の書き味に近い
×:滑り性が大きく、紙に対する鉛筆の書き味とは異なっている。
[耐擦傷性]
スチールウール耐久性試験機を用いて、1000g荷重、直径φ2.5cmのスチールウール♯0000で10往復し、サンプルの傷、ビーズ脱落の度合いを以下の基準で評価した。
○:傷及びビーズの脱落なし
×:傷またはビーズの脱落が見られる。
[触感改良フィルム、ポジ・ネガ型の配合成分]
6官能アクリレート:6官能アクリル系UV硬化モノマー、ダイセル・サイテック(株)製「DPHA」
UV硬化性樹脂:大日本インキ化学工業(株)製「ユニディックRC20−058」
ウレタンアクリレート:3官能ウレタンアクリレート、ダイセル・サイテック(株)製「KRM8264」
ウレタンエラストマー:ポリウレタンエラストマー、大日精化工業(株)製「ダイアロマーSP−2165」
アクリル粒子(5μm):東洋紡績(株)製「FH−S005」、平均粒径5μm
アクリル粒子(10μm):東洋紡績(株)製「FH−S010」、平均粒径10μm
アクリル粒子(15μm):東洋紡績(株)製「FH−S015」、平均粒径15μm
ポリウレタン粒子:大日精化工業(株)製「ダイミックビーズ5070D」、平均粒径7μm
開始剤1:光重合開始剤、チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア(Irgacure)184」
開始剤2:光重合開始剤、チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア(Irgacure)907」
PETフィルムA:ポリエチレンテレフタレートフィルム、東洋紡績(株)製「A4300」、厚み125μm
PETフィルムB:ポリエチレンテレフタレートフィルム、東レ(株)製「ルミラーT60」、厚み100μm
環状ポリオレフィンフィルム:エチレン−ノルボルネン共重合体(Topas Advanced Polymers GmbH社製、商品名「TOPAS6013」)で形成されたフィルム
環状ポリオレフィン溶液:エチレン−ノルボルネン共重合体(Topas Advanced Polymers GmbH社製、商品名「TOPAS6013」)20重量%及び離型剤(ペンタエリスリトールテトラステアレート、日本油脂(株)製「ユニスターH−476」)1重量%を含むメシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)溶液。
実施例1
6官能アクリレート50重量部、ウレタンエラストマー50重量部、アクリル粒子(15μm)5重量部及び開始剤1及び2を、トルエン及びイソプロパノールの混合溶媒(トルエン/イソプロパノール=6/4(容積比))に溶解した。なお、開始剤1及び2は、それぞれ6官能アクリレート100重量部に対して2.5重量部の割合で配合し、固形分濃度は25重量%に調製した。
この溶液を用いて、PETフィルムA上にワイヤーバー#38を用いて流延した後、60℃のオーブン内で1分間放置後、コートフィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:800mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、塗工膜を硬化させてポジ型積層フィルムを形成した。コート層の乾燥厚みは13μmであった。ポジ型積層フィルムのヘイズは27%、全光線透過率は92%であった。
ポジ型積層フィルムの上に、環状ポリオレフィン溶液をワイヤーバー#38で流延した後、100℃のオーブン内で2分間乾燥して、環状ポリオレフィンフィルムを被せ、さらに100℃のオーブン内で2分間乾燥して溶媒を除去した。得られた積層体からポジ型積層フィルムを剥離して除去し、ネガ型積層フィルムを形成した。コート層の乾燥厚みは約8μmであった。
PETフィルムBの上に、UV硬化性樹脂をワイヤーバー#55で流延した後、塗工層の上に、ネガ積層フィルムを積層し、PETフィルムB側から紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:800mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、塗工膜を硬化させた。PETフィルムBを剥離して除去し、乾燥厚み20μmの触感改良フィルムを得た。得られた触感改良フィルムのヘイズは23%、全光線透過率は94%であった。また、WEMは18.3μmであり、書き味の評価は「○」であった。さらに、耐擦傷性の評価は「○」であった。
実施例2
6官能アクリレート100重量部、アクリル粒子(27μm)5重量部及び開始剤1及び2を、トルエン及びイソプロパノールの混合溶媒(トルエン/イソプロパノール=6/4(容積比))に溶解した。なお、開始剤1及び2は、それぞれ6官能アクリレート100重量部に対して2.5重量部の割合で配合し、固形分濃度は25重量%に調製した。
この溶液を用いて、実施例1と同様にしてポジ型積層フィルムを製造した。コート層の乾燥厚みは13μmであった。ポジ型積層フィルムのヘイズは15%、全光線透過率は90%であった。
得られたポジ型積層フィルムを用いて、実施例1と同様にして、ネガ型積層フィルム及び触感改良フィルムを製造した。得られた触感改良フィルムのヘイズは10%、全光線透過率は92%であった。また、WEMは37.3μmであり、書き味の評価は「○」であった。さらに、耐擦傷性の評価は「○」であった。
実施例3〜5
100メッシュ(粒径分布106〜150μm)のガラスビーズを用いて、ビーズショットにより、鉄製ローラーの表面に凹凸形状を形成した。さらに、凹凸形状が形成された表面を、厚みが5μmとなるようにクロムメッキしてエンボスローラー(ネガ型)を製造した。なお、ネガ型の凹凸形状は、ビーズショットの吹付け圧力、吹付けノズルとローラーとの間隔を調整して、WEMが15μm、30μm、50μmの3種類のネガ型を調製した。
得られたネガ型の上にUV硬化性樹脂をワイヤーバー#55で流延した後、塗工層の上に、PETフィルムBを積層し、PETフィルムB側から紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:800mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、塗工膜を硬化させた。PETフィルムBを剥離して除去し、乾燥厚み20μmの触感改良フィルムを得た。得られた触感改良フィルムは、いずれも書き味の評価は「○」であり、耐擦傷性の評価も「○」であった。
比較例1〜2
実施例1及び2で得られたポジ型積層フィルムを触感改良フィルムとして用いた。書き味の評価は「○」であったものの、耐擦傷性の評価は「×」であり、アクリル粒子が脱落した。
比較例3〜8
表1に示す樹脂成分、樹脂粒子及び開始剤を、トルエン及びイソプロパノールの混合溶媒(トルエン/イソプロパノール=6/4(容積比))に、表1に示す割合で溶解した。なお、開始剤は、それぞれ重合性モノマー(6官能アクリレート及び/又はウレタンアクリレート)100重量部に対して2.5重量部の割合で配合し、固形分濃度は25重量%に調製した。
この溶液を用いて、実施例1と同様にしてポジ型積層フィルムを製造した。コート層の乾燥厚みは13μmであった。
得られたポジ型積層フィルムを用いて、実施例1と同様にして、ネガ型積層フィルム及び触感改良フィルムを製造した。表1に示すように、得られた触感改良フィルムは、耐擦傷性の評価は「○」であったものの、WEMは小さく、書き味の評価は「×」であった。