以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1は、本発明における膨張弁である温度式膨張弁12の断面図である。この温度式膨張弁12は、車両用の蒸気圧縮式冷凍サイクル10の一部を構成しており、図1は、温度式膨張弁12と蒸気圧縮式冷凍サイクル10の各構成機器との接続関係についても模式的に図示している。
この蒸気圧縮式冷凍サイクル10では、冷媒としてフロン系冷媒(例えば、R134a)が採用されている。蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界サイクルを構成している。まず、図1に示す蒸気圧縮式冷凍サイクル10において、圧縮機14は、図示しない車両走行用エンジンから電磁クラッチ等を介して駆動力を得て、冷媒を吸入して圧縮するものである。
凝縮器16は、圧縮機14から吐出された高圧冷媒と図示しない冷却ファンにより送風される外気である車室外空気とを熱交換させて、高圧冷媒を放熱させて凝縮させる放熱用熱交換器である。凝縮器16の出口側は、例えば気液を分離する不図示のレシーバを介して温度式膨張弁12に接続されている。
温度式膨張弁12は、凝縮器16から流出した高圧冷媒を減圧膨張させるとともに、蒸発器18から流出した蒸発器流出冷媒の温度と圧力とに基づいて、その蒸発器流出冷媒の過熱度が予め定めた値に近づくように絞り通路面積を変化させて、蒸発器18入口側へ流出させる冷媒流量を調整するものである。なお、温度式膨張弁12の詳細構成については後述する。
蒸発器18は、温度式膨張弁12にて減圧膨張された低圧冷媒と、図示しない送風ファンによって送風された空気とを熱交換させ、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。さらに、蒸発器18の出口側は、温度式膨張弁12の内部に形成された第2冷媒通路38を介して、圧縮機14の吸入側に接続されている。
次に、温度式膨張弁12の詳細構成について説明する。図1に示すように、温度式膨張弁12は、ボデー部30、弁機構部32、第1パワーエレメント34、および第2パワーエレメント35等を有して構成されている。なお、第1パワーエレメント34は本発明における第1膨張部に対応し、第2パワーエレメント35は本発明における第2膨張部に対応する。
ボデー部30は、温度式膨張弁12の外殻および温度式膨張弁12内の冷媒通路等を構成するもので、例えばアルミニウム合金等から成る円柱状あるいは角柱状の金属ブロックに穴開け加工等を施して形成されている。ボデー部30は、温度式膨張弁12の外形を成すハウジングであり、ボデー部30には、第1冷媒通路36、第2冷媒通路38、および弁室40等が形成されている。
第1冷媒通路36は、流通流体である冷媒が流れる第1の流路であってその冷媒を減圧させるために設けられた流路である。第1冷媒通路36は、その一端に第1流入口361を有し、他端に第1流出口362を有している。その第1流入口361は凝縮器16の出口側に接続されており、第1流出口362は蒸発器18の入口側に接続されている。
第2冷媒通路38は、冷媒が流れる流路であって第1冷媒通路36とは別個の第2の流路である。第2冷媒通路38は、その一端に第2流出口382を有し、他端に第2流入口381を有している。その第2流入口381は蒸発器18の出口側に接続されており、第2流出口382は圧縮機14の吸入側に接続されている。
弁室40は、第1冷媒通路36の途中に設けられて、その内部に後述する弁機構部32の球状弁321が収容されている空間である。具体的には、弁室40は、第1流入口361に直接連通し、絞り通路363を介して第1流出口362に連通している。絞り通路363は第1冷媒通路36の一部を構成し、冷媒流れを細く絞ることにより冷媒を減圧させる減圧流路である。すなわち、絞り通路363は、第1流入口361から弁室40へ流入した冷媒を、減圧膨張させながら弁室40側から第1流出口362側へ導く通路である。
弁機構部32は、球状弁321とストッパ322と作動棒323と防振バネ324とコイルバネ325とを備えており、ボデー部30内に収容されている。それら球状弁321とストッパ322と作動棒323と防振バネ324とコイルバネ325とは、一軸心CL1上に配置されており、球状弁321はその一軸心CL1方向に作動する。弁機構部32は、本発明における流量調節部に対応する。
球状弁321は、一軸心CL1方向に変位することによって、絞り通路363の冷媒通路面積を調節する弁体、すなわち弁開度を調節する弁体である。また、弁室40には、球状弁321と共に、防振バネ324およびコイルバネ325が収容されている。防振バネ324は、弁室40に対し摺動することで球状弁321の不要な振動を抑えている。コイルバネ325は、防振バネ324を介して、球状弁321に対し絞り通路363を閉弁させる側に付勢する荷重をかけている。なお、図1は、弁機構部32が絞り通路363を完全に閉じた状態すなわち第1冷媒通路36の全閉状態を表示している。
また、膨張弁12は、球状弁321を絞り通路363の端部へコイルバネ325を介して押し付けるようにボデー部30に螺合された調整ネジ42を備えている。コイルバネ325が球状弁321に対し付勢する荷重は、その調整ネジ42を回転させることによって調整可能になっている。なお、調整ネジ42とボデー部30との間にはOリング421が設けられており、そのOリング421は、冷媒が弁室40から膨張弁12の外部に流れ出ることを防止している。
ストッパ322は、例えば円盤状の形状を成しており、一軸心CL1方向の一方に形成された押圧面322aにて第2パワーエレメント35の第4ダイヤフラム352に接触している。ストッパ322はこの押圧面322aにおいて第4ダイヤフラム352を一軸心CL1方向に押圧している。
また、作動棒323は例えば円柱状の形状を成しており、ストッパ322と球状弁321との間に介装されている。作動棒323の一端はストッパ322に接しており、作動棒323の他端は絞り通路363内に挿通されて球状弁321に突き当たっている。球状弁321、ストッパ322、および作動棒323は弁機構部32において作動する作動部材であり、一軸心CL1方向に変位することにより第1冷媒通路36の冷媒流量を増減する。
また、作動棒323が挿入されたOリング326が、止め輪327によりボデー部30に対して保持されている。そのOリング326は、第1冷媒通路36と第2冷媒通路38との間で冷媒が作動棒323とボデー部30との間の隙間を伝わって流通することを防止している。
第1パワーエレメント34は、第2パワーエレメント35およびストッパ322に対して一軸心CL1方向に積層され第2パワーエレメント35およびストッパ322と共に、ボデー部30に形成された収容空間44内に収容されている。その収容空間44は、詳細には、ボデー部30とそのボデー部30に嵌め入れられカシメ接合された蓋部材46とによって形成されている。なお、蓋部材46とボデー部30との間にはOリング461が設けられており、そのOリング461は、冷媒が収容空間44から膨張弁12の外部に流れ出ることを防止している。
蓋部材46は、収容空間44の一部を構成しており、第1パワーエレメント34と第2パワーエレメント35とを膨張弁12外部の空間と隔てている。蓋部材46には、一軸心CL1方向において第1パワーエレメント34の第1ダイヤフラム341に接触している接触面46aが形成されている。蓋部材46はこの接触面46aにおいて第1ダイヤフラム341を一軸心CL1方向に押圧している。
蓋部材46は、断熱性能の優れた材質が好ましく、例えば樹脂で構成されている。この接触面46aは、蓋部材46がボデー部30にカシメ接合されているので、一軸心CL1方向に移動不能な固定面となっている。
第1パワーエレメント34は、一軸心CL1方向において、第2パワーエレメント35の蓋部材46側に隣接し、第2パワーエレメント35と共に蓋部材46の接触面46aとストッパ322の押圧面322aとの間に挟まれている。それによって、第1パワーエレメント34および第2パワーエレメント35は一体的に一軸心CL1方向に保持されている。第1パワーエレメント34および第2パワーエレメント35は、ボデー部30により、一軸心CL1方向すなわち一軸心CL1の軸方向には拘束されていないが、一軸心CL1の径方向にはボデー部30との間にクリアランスを有して第1パワーエレメント34および第2パワーエレメント35の移動が制限されている。つまり、第1パワーエレメント34および第2パワーエレメント35は、そのクリアランスの範囲内で収容空間44内において径方向に移動可能となっている。
図2および図3に示すように、第1パワーエレメント34は、円盤状の第1ダイヤフラム341および第2ダイヤフラム342と、円環状の介装部材343と、平板で且つ円環状の第1カラー344および第2カラー345とを備えている。図2は、一軸心CL1方向から見た第1パワーエレメント34の平面図である。図3は、その図2のIII−III断面図である。
第1ダイヤフラム341および第2ダイヤフラム342は、薄肉のバネ部材から構成されており、一軸心CL1方向に積層されている。そして、第1ダイヤフラム341および第2ダイヤフラム342は、第1パワーエレメント34の内圧と収容空間44(図1参照)内の圧力との差圧に応じて、一軸心CL1方向の外側にそれぞれ膨らみ、第1パワーエレメント34はコイルバネ325からの押圧力に対抗する。要するに、第1ダイヤフラム341および第2ダイヤフラム342の中央部分が、その差圧に応じて変位する。なお、図1に示す収容空間44は、弁機構部32が何れのストローク位置にあっても収容空間44内の温度および圧力が第2冷媒通路38内と等しくなるように、第2冷媒通路38と連通している。
図3に示すように、介装部材343は、一軸心CL1方向において第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342との間に介装されている。そのため、第1パワーエレメント34には、第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342と介装部材343とに囲まれて形成された第1閉空間34aが、第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342との間に設けられている。すなわち、介装部材343は、第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342とにそれぞれ接合されることによって第1閉空間34aを形成している。この第1閉空間34aは、第2冷媒通路38の冷媒温度を感知する第1パワーエレメント34の感温室であり、本発明における封入空間に対応する。
また、介装部材343は、環状の第1接触面343aを有しており、第1ダイヤフラム341が有する周縁部分341aに対しその第1接触面343aにおいて接している。その一方で、介装部材343は、第1接触面343aに対して一軸心CL1方向の反対側に環状の第2接触面343bを有しており、第2ダイヤフラム342が有する周縁部分342aに対しその第2接触面343bにおいて接している。
また、介装部材343には、第1閉空間34a内へ第1流体を導入するための流体導入路343cが形成されている。第1流体は、例えば第2冷媒通路38を流れる冷媒と同種の冷媒と不活性ガスとを混合した流体である。すなわち、第1パワーエレメント34はノーマルチャージのエレメントである。
具体的に、介装部材343には、介装部材343の径方向に貫通した細い貫通孔が流体導入路343cとして形成されている。そして、その流体導入路343cは、上記第1流体が第1閉空間34aへ導入された後にプラグ346によって閉塞されている。すなわち、この第1流体は、第1閉空間34a内に封入されている。
そのため、第1流体の温度が上昇するほど第1閉空間34aの内圧が上昇し、第1ダイヤフラム341および第2ダイヤフラム342が一軸心CL1方向の外側にそれぞれ膨らむことで、第1パワーエレメント34は一軸心CL1方向に膨張する。なお、収容空間44内の温度は第1閉空間34a内の第1流体に伝達され、その第1流体の温度は収容空間44内の温度に一致するようになる。また、収容空間44内の圧力は、その第1流体の圧力に対する反力すなわち第1パワーエレメント34の内圧に対する反力となる。
第1カラー344は、第1ダイヤフラム341に対し一軸心CL1方向で介装部材343側とは反対側に配設されている。そして、第1カラー344は、第1カラー接触面344aを有しており、第1ダイヤフラム341の周縁部分341aに対しその第1カラー接触面344aにおいて接している。すなわち、第1ダイヤフラム341の周縁部分341aはその第1カラー接触面344aと介装部材343の第1接触面343aとに挟持されている。第1カラー344は本発明におけるカラーに対応し、第1カラー接触面344aは本発明におけるカラー接触面に対応する。
第2カラー345は、第2ダイヤフラム342に対し一軸心CL1方向で介装部材343側とは反対側に配設されている。そして、第2カラー345は、第2カラー接触面345aを有しており、第2ダイヤフラム342の周縁部分342aに対しその第2カラー接触面345aにおいて接している。すなわち、第2ダイヤフラム342の周縁部分342aはその第2カラー接触面345aと介装部材343の第2接触面343bとに挟持されている。
また、上記のようにして構成された第1パワーエレメント34は、図3に示すように、その外形において、第1パワーエレメント34の中心を通り一軸心CL1に直交する仮想面FCxに対して対称的な形状を成している。
次に、図4を用いて第1パワーエレメント34の製造過程を説明する。図4では、(a)に示す状態から(e)示す状態にまで製造過程が順次進行する。
先ず、図4(a)に示すように、第1カラー344、第1ダイヤフラム341、介装部材343、第2ダイヤフラム342、第2カラー345が、一軸心CL1方向に順に積層される。
次に、図4(b)において、2つの矢印AR1wが示すように、第1ダイヤフラム341を挟んだ第1カラー344と介装部材343とが一軸心CL1の周方向に全周にわたって例えばレーザー溶接される。それと共に、2つの矢印AR2wが示すように、第2ダイヤフラム342を挟んだ第2カラー345と介装部材343とが一軸心CL1の周方向に全周にわたって例えばレーザー溶接される。このレーザー溶接は、気密性を有して接合するためである。
このレーザー溶接された部位は、図4および前述の図3において二点鎖線で示されている。図3から判るように、介装部材343の第1接触面343aは、その第1接触面343aの内周端343d(図7参照)よりも一軸心CL1の径方向外側で、第1ダイヤフラム341に対しレーザー溶接で接合される。また、第1カラー344は、第1カラー接触面344aの内周端344b(図7参照)よりも一軸心CL1の径方向外側で第1ダイヤフラム341に対しレーザー溶接で接合される。なお、第2ダイヤフラム342でも、第1ダイヤフラム341と同様にして、介装部材343および第2カラー345にレーザー溶接で接合される。
次に、図4(c)において矢印ARinで示すように、冷媒と不活性ガスとから成る第1流体が流体導入路343cから第1閉空間34a内に導入される。
次に、図4(d)において矢印ARcで示すように、上記第1流体が第1閉空間34a内に導入された後、流体導入路343cがプラグ346によって閉塞される。そして、図4(e)において矢印ARwで示すように、プラグ346は、例えばプロジェクション溶接によって、流体導入路343cを閉塞した状態でその流体導入路343cの開口部分に接合される。このように流体導入路343cが閉塞されることにより、第1閉空間34aは第1流体が封入された封入空間になる。
図1に示す第2パワーエレメント35は、封入されている流体を除き、上述の第1パワーエレメント34と同じ物である。但し、以下の説明を明確にするために、第2パワーエレメント35において、第1ダイヤフラム341に相当するものを第3ダイヤフラム351と呼び、第2ダイヤフラム342に相当するものを第4ダイヤフラム352と呼び、第1閉空間34aに相当するものを第2閉空間35aと呼ぶこととする。図3および図4には、それらの符号35、351、352、35aが括弧書きで表示されている。
第2パワーエレメント35に形成された第2閉空間35aすなわち第2パワーエレメント35の感温室には、第1流体に含まれる冷媒に対して異なる冷媒と不活性ガスとを混合した第2流体が封入されている。詳細には、第1流体に含まれる冷媒と第2流体に含まれる冷媒とは、飽和蒸気圧と飽和温度との関係である飽和温度特性において互いに異なっている。これら第1流体と第2流体とに含まれるそれぞれの冷媒は、何れも気液二相の冷媒である。
例えば、第2流体に含まれる冷媒の飽和温度特性では飽和温度の変化に対する飽和蒸気圧の変化量は、第2冷媒通路38を流れる冷媒に比して小さい。すなわち、第2パワーエレメント35はクロスチャージのエレメントである。
また、第2パワーエレメント35には第2流体が封入されているので、第2パワーエレメント35は、第2流体の温度が上昇するほど第2閉空間35aの内圧が上昇し一軸心CL1方向に膨張する。図1に示すように、第2パワーエレメント35の第3ダイヤフラム351は第1パワーエレメント34の第2ダイヤフラム342に一軸心CL1方向において対向して接している。
次に、図5を用いて弁機構部32と第1パワーエレメント34との作動について説明する。図5は、弁機構部32が絞り通路363の冷媒通路面積を最大にした状態すなわち第1冷媒通路36の全開状態を表示している。
膨張弁12では、第2冷媒通路38を流れる冷媒の温度が上昇すると、それに伴い収容空間44内の温度、第1閉空間34a内に封入された第1流体の温度、および第2閉空間35a内に封入された第2流体の温度も上昇し、第1閉空間34aおよび第2閉空間35aの内圧がそれぞれ高くなる。そして、それらの内圧による第1パワーエレメント34および第2パワーエレメント35の膨張力が、コイルバネ325等による反力に打ち勝てば、図5の矢印AR01、AR02のように第1パワーエレメント34および第2パワーエレメント35は一軸心CL1方向に膨張する。詳細には、第1パワーエレメント34において第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342とが一軸心CL1方向の外側にそれぞれ膨らむと共に、第2パワーエレメント35において第3ダイヤフラム351と第4ダイヤフラム352とが一軸心CL1方向の外側にそれぞれ膨らむ。
第1パワーエレメント34および第2パワーエレメント35が矢印AR01、AR02のように膨張すると、ストッパ322および作動棒323が第4ダイヤフラム352に押されて矢印AR03のように移動する。それと共に、球状弁321が作動棒323に押されて矢印AR04のように移動する。すなわち、球状弁321が絞り通路363を開放する。そして、第1パワーエレメント34が球状弁321を押す荷重とコイルバネ325が球状弁321を押す荷重とのバランスにより、温度式膨張弁12の弁開度が調節される。
このとき、第1パワーエレメント34の第1ダイヤフラム341は蓋部材46の接触面46aに押し当てられているので、第2ダイヤフラム342をその接触面46aに対して一軸心CL1方向に変位させ、その第2ダイヤフラム342は第2パワーエレメント35を一軸心CL1方向に変位させる。更に、第2パワーエレメント35の第3ダイヤフラム351は第4ダイヤフラム352を第2ダイヤフラム342に対して一軸心CL1方向に変位させ、その第4ダイヤフラム352は作動棒323を一軸心CL1方向に変位させる。
従って、一軸心CL1方向において、第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342とがそれぞれ外側に膨らむことによる第1パワーエレメント34の膨張量と、第3ダイヤフラム351と第4ダイヤフラム352とがそれぞれ外側に膨らむことによる第2パワーエレメント35の膨張量との合計が、作動棒323のストローク量となる。すなわち、弁機構部32は、その第1パワーエレメント34の膨張量と第2パワーエレメント35の膨張量との合計に応じて第1冷媒通路36における冷媒の流量を調節する。
また、ストッパ322が矢印AR03方向に移動すると、一軸心CL1方向においてストッパ322の第1パワーエレメント34側とは反対側に形成されたストッパ面322bが、そのストッパ面322bに対向するボデー部30の突当て面30aに突き当たる。図5は、このストッパ面322bが突当て面30aに突き当たった状態を示しており、すなわち、第1冷媒通路36は、ストッパ面322bが突当て面30aに突き当たったときに、全開状態になる。
上述のように、本実施形態によれば、第1パワーエレメント34には第1流体が封入され第2パワーエレメント35にはその第1流体とは異なる第2流体が封入されており、弁機構部32は、第1パワーエレメント34と第2パワーエレメント35との両方の一軸心CL1方向への膨張に応じて第1冷媒通路36における冷媒流量を調節する。そのため、弁機構部32の流量制御特性は全体として、第1流体が封入された第1パワーエレメント34だけによる第1流量制御特性と、第2流体が封入された第2パワーエレメント35だけによる第2流量制御特性との中間的なものになり、弁機構部32の流量制御特性を任意に得ることが容易である。このことを、図6を用いて詳細に説明する。
図6は、横軸を第2冷媒通路38の冷媒温度TLとし縦軸を第2冷媒通路38の冷媒圧力PLとした流量制御特性を示す図である。その流量制御特性とは、弁機構部32が第1冷媒通路36を開くか否かの境界となる第2冷媒通路38の冷媒圧力PLと冷媒温度TLとの関係である。すなわち、第2冷媒通路38の実際の冷媒圧力PLが流量制御特性から得られた圧力未満であれば、第1冷媒通路36は閉塞される一方で、流量制御特性から得られた圧力を上回れば、第1冷媒通路36は流通可能になる。
図6に示す二点鎖線Lsは第2冷媒通路38の冷媒の飽和温度特性を表している。実線Lmは、本実施形態における弁機構部32の流量制御特性を表している。また、破線LAは、第2流体に替えて第1流体を第2パワーエレメント35に封入したと仮定した場合における弁機構部32の流量制御特性すなわち第1流量制御特性を表している。すなわち、破線LAで示す第1流量制御特性は、第1パワーエレメント34および第2パワーエレメント35の何れにも第1流体を封入したと仮定した場合の特性である。
一点鎖線LBは、第1流体に替えて第2流体を第1パワーエレメント34に封入したと仮定した場合における弁機構部32の流量制御特性すなわち第2流量制御特性を表している。すなわち、一点鎖線LBで示す第2流量制御特性は、第1パワーエレメント34および第2パワーエレメント35の何れにも第2流体を封入したと仮定した場合の特性である。
本実施形態では、第1流体が封入された第1パワーエレメント34と、第2流体が封入された第2パワーエレメント35とは、一軸心CL1方向に直列に配置され、封入されている冷媒以外においては異なる点が無いものである。そのため、実線Lmで示す本実施形態の流量制御特性は、破線LAで示す第1流量制御特性と一点鎖線LBで示す第2流量制御特性との間の中間的な傾きを持つ特性になる。従って、第1流体と第2流体との一方または両方を任意に選択することで、所望の勾配を有するように、実線Lmで示す流量制御特性を設定することが可能である。
また、前述の特許文献1のように複数種類の冷媒が1つの空間内に混合されているわけではないので、図6の実線Lmのように、第1流量制御特性と第2流量制御特性とを平均化したような流量制御特性が得られ、その特性を示す曲線が折れ曲がる変曲点がMOP(maximum operating pressure)を除いて存在しない滑らかな流量制御特性を得ることが可能である。そのため、安定した弁機構部32の制御を行うことができる。
また、所望の流量制御特性が得られるように複数種類の冷媒を1つのパワーエレメントに封入しようとすれば、蒸発しにくい冷媒から所定の重量または圧力で順次封入する必要があり、製造が複雑になるとともに、冷媒の封入割合が変動すると、得られる流量制御特性も変化してしまう。これに対し、本実施形態では、単一の冷媒と不活性ガスとを封入したパワーエレメント34、35の組み合わせにより任意の流量制御特性を得ることができるので、製造面において簡素化を図ることが可能である。
また、本実施形態によれば、介装部材343の第1接触面343aは、その第1接触面343aの内周端343d(図7参照)よりも一軸心CL1の径方向外側で、第1ダイヤフラム341に対し接合されている。それと共に、第1カラー344は、第1カラー接触面344aの内周端344b(図7参照)よりも一軸心CL1の径方向外側で第1ダイヤフラム341に対しレーザー溶接で接合されている。
例えば、図3のVII部分を拡大した図7において、第1ダイヤフラム341は、一軸心CL1方向の外側へ膨らむときには、第1カラー接触面344aの内周端344bを支点として矢印ARex方向に曲がる。その一方で、第1ダイヤフラム341は、一軸心CL1方向の内側へ収縮するときには、第1接触面343aの内周端343dを支点として矢印ARcn方向に曲がる。
すなわち、第1ダイヤフラム341が変形するときには、第1ダイヤフラム341の溶接による接合部分に対してずれた位置を支点として曲がるので、第1ダイヤフラム341の変形時の応力集中箇所が上記接合部分から離れ、第1ダイヤフラム341の耐久性を向上させることができる。
また、第1ダイヤフラム341の接合構成と同様にして、第2ダイヤフラム342も介装部材343と第2カラー345とに挟まれて接合されているので、第1ダイヤフラム341と同様に、第2ダイヤフラム342の耐久性も向上させることができる。このことは、第2パワーエレメント35の各ダイヤフラム351、352についても同様である。
また、本実施形態によれば、介装部材343には、第1閉空間34a内へ第1流体を導入するための流体導入路343cが形成されているので、その流体導入路343cに相当する連通孔を第1ダイヤフラム341にも第2ダイヤフラム342にも形成する必要がない。そのため、第1流体が漏れ出ないようにその流体導入路343cを塞ぐことが容易である。
また、本実施形態によれば、第1パワーエレメント34は、図3に示す仮想面FCxに対して対称的な外形形状を成しているので、一軸心CL1方向における第1パワーエレメント34の組付け方向の制約を無くすことができる。また、各ダイヤフラム341、342の部品共通化と各カラー344、345の部品共通化とを図ることが可能である。このことは、第2パワーエレメント35についても同様である。
更に、第1パワーエレメント34と第2パワーエレメント35とは、封入されている流体を除いて同じ物であるので、一軸心CL1方向における並び順を逆にすることが可能であり、第1パワーエレメント34および第2パワーエレメント35の組付け順序の制約を無くすことができる。
また、本実施形態によれば、第1パワーエレメント34と第2パワーエレメント35とはそれらが膨張する膨張方向に直列に配置されているので、その第1パワーエレメント34および第2パワーエレメント35の両方の膨張量を球状弁321の作動に用いることが可能である。従って、球状弁321の作動量を十分に確保しつつ両パワーエレメント34、35の小径化を図ることが可能である。
また、本実施形態によれば、第1パワーエレメント34および第2パワーエレメント35は、膨張弁12外部の空間と隔てられボデー部30内に収容されているので、膨張弁12とその膨張弁12に隣接して配置される部材等との間に防水処理を容易に施すことが可能である。また、第1パワーエレメント34の作動および第2パワーエレメント35の作動が膨張弁12まわりの外気温の影響を受け難いという利点がある。また、第1パワーエレメント34および第2パワーエレメント35を膨張弁12外部の空間と隔てている蓋部材46が樹脂製であるので、その蓋部材46が例えば金属製である場合と比較して、更に外気温の影響を受け難い。
また、本実施形態によれば、第1パワーエレメント34において、第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342との間に介装部材343が介装され、それにより、第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342との間に閉空間34aが形成されているので、その介装部材343の厚み等の形状に応じて閉空間34aの大きさを任意に定めることができる。従って、その閉空間34aの大きさに対し第1ダイヤフラム341及び第2ダイヤフラム342の形状に起因した制約を低減することが可能である。このことは、第2パワーエレメント35に関しても同様である。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。後述の第3実施形態以降でも同様である。
図8は、本実施形態の温度式膨張弁12の断面図である。図8に示すように、本実施形態の温度式膨張弁12は、第1実施形態の温度式膨張弁12に対して、パワーエレメント48を1つだけ備えているという点で異なっている。但し、図8のパワーエレメント48は、2つの独立した閉空間48a、48bすなわち感温室48a、48bを備えている点で、第1実施形態の第1パワーエレメント34と異なっている。図9および図10を用いて、本実施形態のパワーエレメント48について、第1実施形態の第1パワーエレメント34と異なる点を主として説明する。
図9は、本実施形態のパワーエレメント48を一軸心CL1方向から見た平面図である。図10は、その図9のX−X断面図である。図9および図10に示すように、パワーエレメント48は、第1実施形態の介装部材343に替えて介装部材481を備えている。
その介装部材481には、介装部材481内の一軸心CL1方向に抜けた孔481aを一軸心CL1方向に分断する隔壁481bが設けられている。そのため、パワーエレメント48には、隔壁481bを介して一軸心CL1方向に並んだ第1閉空間48aと第2閉空間48bとが形成されている。この第1閉空間48aは、第1流体が封入された第1封入空間であり、第2閉空間48bは、第2流体が封入された第2封入空間である。
パワーエレメント48は、機能的に見れば、第1ダイヤフラム341が外側に膨らむことで一軸心CL1方向に膨張する第1膨張部482と、第2ダイヤフラム342が外側に膨らむことで一軸心CL1方向に膨張する第2膨張部484とから構成されている。そして、第1膨張部482と第2膨張部484とは隔壁481bを共通に有して一軸心CL1方向に隣接している。
図10に示すように、その第1膨張部482は、第1ダイヤフラム341と第1空間形成部481cと第1カラー344とから構成されている。その第1空間形成部481cは、隔壁481bに対して介装部材481の第1ダイヤフラム341側の部分で構成されている。そして、第1空間形成部481cは、第1ダイヤフラム341と接合されることによって、第1ダイヤフラム341に対し一軸心CL1方向の第2ダイヤフラム342側に、第1流体が封入された第1閉空間48aを形成している。
また、第2膨張部484は、第2ダイヤフラム342と第2空間形成部481dと第2カラー345とから構成されている。その第2空間形成部481dは、隔壁481bに対して介装部材481の第2ダイヤフラム342側の部分で構成されている。すなわち、第1空間形成部481cと一体に構成されると共に、第1空間形成部481cと第2ダイヤフラム342との間に配設されている。また、第2空間形成部481dは、第2ダイヤフラム342と接合されることによって、一軸心CL1方向において第2ダイヤフラム342の第1ダイヤフラム341側に、第2流体が封入された第2閉空間48bを形成している。
また、第1膨張部482には、第1実施形態の第1パワーエレメント34と同様に、第1閉空間48a内へ第1流体を導入するための第1流体導入路481eが形成されている。そして、その第1流体導入路481eはプラグ346によって閉塞されている。
また、第2膨張部484についても同様に、第2膨張部484には、第2閉空間48b内へ第2流体を導入するための第2流体導入路481fが形成されている。そして、その第2流体導入路481fはプラグ346によって閉塞されている。
また、上記のようにして構成されたパワーエレメント48は、第1実施形態の第1パワーエレメント34と同様に、パワーエレメント48の中心を通り一軸心CL1に直交する仮想面FCxに対して対称的な外形形状を成している。
次に、図11を用いてパワーエレメント48の製造過程を説明する。図11では、(a)に示す状態から(g)示す状態にまで製造過程が順次進行する。図11は第1実施形態の図4に相当する図であり、図11(a)、(b)、(e)〜(g)に示される工程は図4(a)〜(e)とそれぞれ同じである。そして、図11(c)(d)が図4に対して追加された工程を表している。従って、図11(c)(d)について説明する。なお、図11(e)の矢印AR1inは図4(c)の矢印ARinと同じことを意味しており、図11(f)の矢印AR1cは図4(d)の矢印ARcと同じことを意味している。
図11(b)の次の図11(c)においては、矢印AR2inで示すように、前述の第2流体が第2流体導入路481fから第2閉空間48b内に導入される。
次に、図11(d)において、矢印AR2cで示すように、上記第2流体が第2閉空間48b内に導入された後、第2流体導入路481fがプラグ346によって閉塞される。そして、プラグ346は、例えばプロジェクション溶接によって、第2流体導入路481fを閉塞した状態でその第2流体導入路481fの開口部分に接合される。このように第2流体導入路481fが閉塞されることにより、第2流体は第2閉空間48b内に密封される。図11(c)から図11(d)にわたる工程では、その図11(c)(d)に示すように、第1流体導入路481eが閉塞ジグ92によって暫定的に塞がれる。
前述の第1実施形態では2つのパワーエレメント34、35によって、図6の実線Lmで示す流量制御特性を得ている。これに対し、本実施形態によれば、第1パワーエレメント34に相当する第1膨張部482と、第2パワーエレメント35に相当する第2膨張部484とが一体となって1つのパワーエレメント48を構成し、図6の実線Lmで示す流量制御特性を得ることができるので、部品点数を低減でき、一軸心CL1方向における膨張弁12の全長を小さくすることが可能である。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第2実施形態と異なる点を主として説明する。
図12は、本実施形態の温度式膨張弁12の断面図である。図12に示すように、本実施形態の温度式膨張弁12では、第2実施形態の温度式膨張弁12に対してパワーエレメント48が異なっている。詳細には、本実施形態のパワーエレメント48は、第2実施形態のパワーエレメント48に対し、外形においては同じであるが、第2実施形態における第1カラー344(図10参照)と第2カラー345とが介装部材481と一体となり1つの介装部材485で構成されている点が異なっている。
図13および図14を用いて本実施形態のパワーエレメント48の製造過程を説明する。図14は図13に示される工程に続く工程を示す図であり、図13および図14では、(a)に示す状態から(i)示す状態にまで製造過程が順次進行する。
先ず、図13(a)に示すように、第1ダイヤフラム341、介装部材485、第2ダイヤフラム342が、一軸心CL1方向に順に積層される。介装部材485は、図13(a)のように、介装部485aと介装部485aから延設された第1挟持部485bと介装部485aから延設された第2挟持部485cとから構成されている。図13(a)では、第1挟持部485bは、介装部485aから一軸心CL1方向の一方に突き出た円筒形状を成しており、第1ダイヤフラム341を嵌入できる内径を有している。また、第2挟持部485cは、介装部485aから一軸心CL1方向の他方に突き出た円筒形状を成しており、第2ダイヤフラム342を嵌入できる内径を有している。
次に、図13(b)に示すように、第1ダイヤフラム341が介装部485aに当接するまで第1挟持部485bの内側に嵌入され、それと共に、第2ダイヤフラム342が介装部485aに当接するまで第2挟持部485cの内側に嵌入される。これにより、介装部485aは、第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342との間に介装される。
次に、図13(c)において、2つの矢印AR1bで示すように、第1挟持部485bが径方向内側に折り曲げられる。これにより、第1挟持部485bは、第1ダイヤフラム341を介して介装部485aと対向し、その介装部485aと共に第1ダイヤフラム341を挟持する。
また、これと同様に、2つの矢印AR2bで示すように、第2挟持部485cも径方向内側に折り曲げられる。これにより、第2挟持部485cは、第2ダイヤフラム342を介して介装部485aと対向し、その介装部485aと共に第2ダイヤフラム342を挟持する。このように構成されることから、第1挟持部485bは第2実施形態の第1カラー344に相当し、第2挟持部485cは第2実施形態の第2カラー345に相当する。
次に、図13(d)から図14(i)までに示す工程が順次行われる。この図13(d)から図14(i)までに示す工程は、第2実施形態の図11(b)から図11(g)までとそれぞれ同じである。
図13(a)から図14(i)までに示す工程を経て製造されたパワーエレメント48を図15および図16に示す。図15は、一軸心CL1方向から見た本実施形態のパワーエレメント48の平面図である。図16は、その図15のXVI−XVI断面図である。
この図15および図16に示すように、本実施形態のパワーエレメント48は、外形において第2実施形態と同じものになっている。そして、本実施形態はパワーエレメント48以外では第2実施形態と同じであるので、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態によれば、介装部材485は介装部485aと第1挟持部485bと第2挟持部485cとから構成されているので、前述の第2実施形態の第1カラー344および第2カラー345が不要になる。
また、本実施形態によれば、図13(b)に示すように、第1ダイヤフラム341は第1挟持部485bの内側に嵌入されるので、第1ダイヤフラム341と介装部材485とを接合する際にその両者の位置ずれを防止し易いという利点がある。このことは第2ダイヤフラム342と介装部材485との間においても同様である。
なお、本実施形態を前述の第1実施形態と組み合わせることも可能である。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第2実施形態と異なる点を主として説明する。
図17は、本実施形態の温度式膨張弁12の断面図である。図17に示すように、本実施形態の温度式膨張弁12では、第2実施形態のパワーエレメント48がパワーエレメント50に置き換わっている。そして、ストッパ322の配置、及び、作動棒323の長さも、第2実施形態に対して異なっている。
具体的に、本実施形態のパワーエレメント50は、第2実施形態のパワーエレメント48に相当するものであり、そのパワーエレメント48と比較して一軸心CL1方向に長くなっている。詳細には、本実施形態のパワーエレメント50は、第2実施形態の介装部材481に替えて介装部材501を備えており、その介装部材501が介装部材481に対して長くなっている。そして、本実施形態のパワーエレメント50は、図18および図19に示すような形状を備えている。図18は、一軸心CL1方向から見た本実施形態のパワーエレメント50の平面図である。図19は、その図18のXIX−XIX断面図である。
図18および図19に示すように、パワーエレメント50は介装部材501の他に、第2実施形態と同様に、第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342と第1カラー344と第2カラー345とを備えている。
介装部材501は、第1ダイヤフラム341にレーザー溶接で接合された第1接合部501aと、第2ダイヤフラム342にレーザー溶接で接合された第2接合部501bと、第1接合部501aと第2接合部501bとの間に介装され細く括れた円筒形状を成す括れ部501cとから構成されている。
括れ部501cには、括れ部501c内の一軸心CL1方向に抜けた孔501dを一軸心CL1方向に分断する隔壁501eが設けられている。すなわち、括れ部501cは、隔壁501eを境に第1ダイヤフラム341側に配置された第1括れ部501fと、隔壁501eを境に第2ダイヤフラム342側に配置された第2括れ部501gとから構成されている。第1括れ部501fは、本発明における流路配置部に対応する。
そのため、パワーエレメント50には、隔壁501eを介して一軸心CL1方向に並んだ第1閉空間50aと第2閉空間50bとが形成されている。すなわち、第1接合部501aと第1括れ部501fとは、第2実施形態の第1空間形成部481cに相当する第1空間形成部501hを構成しており、第2接合部501bと第2括れ部501gとは、第2実施形態の第2空間形成部481dに相当する第2空間形成部501iを構成している。第1閉空間50aは、第2実施形態の第1閉空間48aに相当するものであって第1流体が封入された第1封入空間であり、第2閉空間50bは、第2実施形態の第2閉空間48bに相当するものであって第2流体が封入された第2封入空間である。
また、パワーエレメント50は、第2実施形態のパワーエレメント48と同様に、機能的に見れば、第1ダイヤフラム341が外側に膨らむことで一軸心CL1方向に膨張する第1膨張部502と、第2ダイヤフラム342が外側に膨らむことで一軸心CL1方向に膨張する第2膨張部504とから構成されている。その第1膨張部502は、第1ダイヤフラム341と第1空間形成部501hと第1カラー344とから構成されている。また、第2膨張部504は、第2ダイヤフラム342と第2空間形成部501iと第2カラー345とから構成されている。
図19に示すように、第1接合部501aには、第1流体を第1閉空間50a内へ導入するための第1流体導入路481eが形成されている。その第1流体導入路481eは、第2実施形態と同様に、第1流体が第1閉空間50aへ導入された後にプラグ346によって閉塞されている。
また、第2接合部501aには、第2流体を第2閉空間50b内へ導入するための第2流体導入路481fが形成されている。その第2流体導入路481fは、第2実施形態と同様に、第2流体が第2閉空間50bへ導入された後にプラグ346によって閉塞されている。
また、図17に示すように、パワーエレメント50は、介装部材501の括れ部501cが第2冷媒通路38の冷媒流れを横切って第2冷媒通路38内に位置するように配設されている。すなわち、第1閉空間50aの一部が形成されている第1括れ部501fと、第2閉空間50bの一部が形成されている第2括れ部501gとが、第2冷媒通路38内に配置されている。これにより、第2冷媒通路38を流れる冷媒がパワーエレメント50に直接接触しつつ下流へ流れるので、パワーエレメント50を第2冷媒通路38の冷媒温度に応じて、第2実施形態よりも精度良く作動させることが可能である。
また、図19に示すように、パワーエレメント50は、第2実施形態のパワーエレメント48と同様に、パワーエレメント50の外形において、仮想面FCxに対し対称的な形状を成している。この対称的な形状とは、厳密なものではなく大凡の対称形を意味するものである。
なお、本実施形態を前述の第1、3実施形態のうちの何れかと組み合わせることも可能である。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第4実施形態と異なる点を主として説明する。
図20は、本実施形態の温度式膨張弁12の断面図である。図20に示すように、本実施形態の温度式膨張弁12では、第4実施形態の温度式膨張弁12に対してパワーエレメント50が異なっている。本実施形態のパワーエレメント50を一軸心CL1方向から見た平面図は、第4実施形態と同じ図18であり、本実施形態では、その図18のXIX−XIX断面図が図19ではなく図21となっている。
図20及び図21に示すように、具体的に、本実施形態のパワーエレメント50は、第4実施形態と比較して、更に第1吸着材506と第2吸着材508と一対の保持部材510とを備えている。
第1吸着材506および第2吸着材508は、吸着材506、508の温度に応じて冷媒を吸着し或いは放出する。第1吸着材506および第2吸着材508は、例えば熱伝導性が介装部材501と比較して悪い活性炭等で構成されている。第1吸着材506と第2吸着材508とは、冷媒の吸着量と温度との関係である吸着特性において異なっている。
第1吸着材506は、パワーエレメント50の第1閉空間50a内で第1括れ部501fに属する部位に設けられている。そして、第1吸着材506の配置位置は、その第1吸着材506が隔壁501eと一対の保持部材510の一方とによって一軸心CL1方向に挟まれることにより保持されている。保持部材510は通気性を有する部材であり、例えば金属メッシュまたはフィルタ等で構成されている。
また、第2吸着材508も第1吸着材506と同様である。すなわち、第2吸着材508は、第2閉空間50b内で第2括れ部501gに属する部位に設けられている。そして、第2吸着材508の配置位置は、その第2吸着材508が隔壁501eと一対の保持部材510の他方とによって一軸心CL1方向に挟まれることにより保持されている。
本実施形態によれば、パワーエレメント50内に第1吸着材506および第2吸着材508が設けられているので、第2冷媒通路38を流れる冷媒の温度変化に対するパワーエレメント50の作動応答性を鈍くし、パワーエレメント50の過敏な作動を抑えることができる。
なお、本実施形態を前述の第1、3実施形態のうちの何れかと組み合わせることも可能である。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第4実施形態と異なる点を主として説明する。
図22は、本実施形態の温度式膨張弁12の断面図である。図22に示すように、本実施形態の温度式膨張弁12では、第4実施形態の温度式膨張弁12に対してパワーエレメント50が異なっている。本実施形態のパワーエレメント50を一軸心CL1方向から見た平面図は、第4実施形態と同じ図18であり、本実施形態では、その図18のXIX−XIX断面図が図19ではなく図23となっている。
図22及び図23に示すように、具体的に、本実施形態のパワーエレメント50は、第4実施形態と比較して、更に第1壁部材512と第2壁部材514とを備えている。
第1壁部材512および第2壁部材514は、金属製である介装部材501よりも熱伝導率の低い材質例えば樹脂で構成されており、有底円筒状に成形されている。そして、第1壁部材512は、第1ダイヤフラム341側を開口させて有底円筒状の第1括れ部501f内に嵌入されている。そのため、第1括れ部501fの内側を形成する第1内周面501jおよび第1底面501kは第1壁部材512で覆われている。
また、第2壁部材514は、第2ダイヤフラム342側を開口させて有底円筒状の第2括れ部501g内に嵌入されている。そのため、第2括れ部501gの内側を形成する第2内周面501mおよび第2底面501nは第2壁部材514で覆われている。
本実施形態によれば、第1括れ部501fの内面は熱伝導率の低い第1壁部材512で覆われ、第2括れ部501gの内面は熱伝導率の低い第2壁部材514で覆われているので、前述の第5実施形態と同様に、パワーエレメント50の過敏な作動を抑えることができる。
なお、本実施形態を前述の第1、3実施形態のうちの何れかと組み合わせることも可能である。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
図24は、本実施形態の温度式膨張弁12の断面図である。図24に示すように、本実施形態の温度式膨張弁12は、第1実施形態の温度式膨張弁12に対して、第1パワーエレメント54と第2パワーエレメント56とにおいて異なっている。そこで、第1パワーエレメント54が第1実施形態の第1パワーエレメント34と異なる点、および第2パワーエレメント56が第1実施形態の第2パワーエレメント35と異なる点を主として説明する。
図25は、図24に示す第1パワーエレメント54を一軸心CL1方向から見た平面図である。図26は、その図25のXXVI−XXVI断面図である。図25および図26に示すように、第1パワーエレメント54は、第1実施形態の介装部材343に替えてカバー部材541を備えている。そして、第1パワーエレメント54は、第1実施形態の第1カラー344と第1ダイヤフラム341とに相当するものを備えておらず、ダイヤフラムとしては第2ダイヤフラム342だけを備えている。
そして、カバー部材541は、一軸心CL1方向における第2ダイヤフラム342側が窪むように成形されている。カバー部材541は、第2カラー345との間に第2ダイヤフラム342の周縁部分342aを挟んだ状態で一軸心CL1まわりの全周にわたって溶接され、第2ダイヤフラム342と第2カラー345とに接合されている。図26の二点鎖線は溶接部位を表している。このように接合されることにより、第1流体が封入された第1閉空間34aが、一軸心CL1方向においてカバー部材541と第2ダイヤフラム342との間に形成されている。すなわち、カバー部材541は、第2ダイヤフラム342に接合されることにより第1封入空間34aを形成している第1空間形成部である。
また、カバー部材541の頂部には、第1閉空間34a内へ第1流体を導入するための流体導入路541aが形成されている。そして、その流体導入路541aは、上記第1流体が第1閉空間34aへ導入された後にプラグ542によって閉塞されている。
第2パワーエレメント56は、封入されている流体を除き、上述の第1パワーエレメント54と同じ物である。すなわち、第2パワーエレメント56は、ダイヤフラムとしては第4ダイヤフラム352だけを備え、第2パワーエレメント56には、第2流体が封入された第2閉空間35aが形成されている。なお、図26には、それらの符号56、352、35aが括弧書きで表示されている。
図24に示すように、第1パワーエレメント54のカバー部材541に固定されたプラグ542は、蓋部材46の接触面46aに一軸心CL1方向に押圧されている。また、第2パワーエレメント56のカバー部材541に固定されたプラグ542は、第1パワーエレメント54の第2ダイヤフラム342に押圧されている。
本実施形態によれば、温度式膨張弁12は、第1流体が封入された第1パワーエレメント54と第2流体が封入された第2パワーエレメント56とを、前述の第1実施形態と同様に備えているので、その第1実施形態と同様に、弁機構部32の流量制御特性を任意に得ることが容易である。
また、本実施形態によれば、プラグ542はカバー部材541に対し一軸心CL1方向から取り付けられるので、前述の第1実施形態と比較して、プラグ542をカバー部材541に対して溶接する際の位置決めがやり易く、第1パワーエレメント54および第2パワーエレメント56の製造を容易にすることができる。
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第2実施形態と異なる点を主として説明する。
図27は、本実施形態の温度式膨張弁12の断面図である。図27に示すように、本実施形態の温度式膨張弁12では、第2実施形態の温度式膨張弁12に対してパワーエレメント48が異なっている。詳細に言えば、第1カラー344及び第2カラー345が第2実施形態に対して異なっている。図27に示すパワーエレメント48の詳細図が図28および図29に表されている。図28は、本実施形態のパワーエレメント48を一軸心CL1方向から見た平面図であり、図29は、その図28のXXIX−XXIX断面図である。
図28および図29に示すように、第1カラー344は、第1ダイヤフラム341の周縁部分341aを介装部材481との間に挟んで固定しているダイヤフラム押え部344cと、そのダイヤフラム押え部344cから径方向内側に延設された延設部344dとを備えている。この延設部344dは本発明の制限部に対応する。
図29から判るように、ダイヤフラム押え部344cは第1実施形態の第1カラー344の全体に相当するので、本実施形態の第1カラー344は、第1実施形態の第1カラー344に延設部344dが加えられたものとなっている。
図27および図28に示すように、延設部344dの中心部分には、第1ダイヤフラム341が蓋部材46の接触面46aと接触することを妨げないように形成された貫通孔344eが形成されている。
延設部344dは、第1ダイヤフラム341がある程度膨らむと第1ダイヤフラム341に接触するように配置されている。そして、第1ダイヤフラム341は、延設部344dに接触するまで膨らむと、その接触した状態以上には膨らまないように延設部344dによって制限される。
すなわち、延設部344dは、第1ダイヤフラム341が膨らむように変形することを制限する機能を備えている。そのため、第1ダイヤフラム341の変形を耐久性が損なわれないように抑えることができる。例えば、パワーエレメント34の製造過程において、パワーエレメント34が単体で存在する場合には、第1ダイヤフラム341の変形が蓋部材46およびストッパ322によって抑えられることがないので、延設部344dは、そのような場合に特に有効である。
また、図29に示すように、第2カラー345も上述した第1カラー344と同様である。すなわち、第2カラー345は、第1カラー344のダイヤフラム押え部344cに相当するダイヤフラム押え部345cと、第1カラー344の延設部344dに相当する延設部345dとを備えている。そして、第2カラー345の延設部345dには、第1カラー344の貫通孔344eに相当する貫通孔345eが形成されている。
なお、本実施形態を前述の第1、4〜7実施形態のうちの何れかと組み合わせることも可能である。
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
図30は、本実施形態の温度式膨張弁12の断面図である。図30に示すように、本実施形態の温度式膨張弁12では、第1実施形態に対して、その第1実施形態の第1パワーエレメント34が第1パワーエレメント60に置き換わっており、第1実施形態の第2パワーエレメント35が第2パワーエレメント62に置き換わっている。そこで、第1パワーエレメント60が第1実施形態の第1パワーエレメント34と異なる点、および第2パワーエレメント62が第1実施形態の第2パワーエレメント35と異なる点を主として説明する。
図30に示す第1パワーエレメント60の詳細図が図31に表されている。図31は、一軸心CL1を含む断面で第1パワーエレメント60を切断した断面図である。
図30および図31に示すように、第1パワーエレメント60は、第1実施形態の第1ダイヤフラム341に替えて第1ダイヤフラム601を備え、第1実施形態の第2ダイヤフラム342に替えて第2ダイヤフラム602を備えている。そして、第1パワーエレメント60は、第1実施形態の第1パワーエレメント34が有する介装部材343と第1カラー344と第2カラー345とを備えていない。
図31に示すように、第1ダイヤフラム601は、第1実施形態の第1ダイヤフラム341と同様に薄肉のバネ部材から構成されている。そして、第1ダイヤフラム601は、例えばプレス加工により成形され、第1感圧変形部601aと第1周縁部601bとを備えている。
第1感圧変形部601aは、一軸心CL1方向に直交する円盤形状を成しており、第1閉空間34aの内圧に応じて一軸心CL1方向に膨らむように変形する。すなわち、この第1感圧変形部601aは、第1実施形態の第1ダイヤフラム341と同様に機能する。
第1周縁部601bは、一軸心CL1を中心とする円筒形状を成している。第1周縁部601bの基端601cは第1感圧変形部601aの周縁に連結されている。そして、第1周縁部601bの基端601cすなわち第1感圧変形部601aの周縁は、第1感圧変形部601aが第1閉空間34aの内圧により膨らむときの支点となっている。言い換えれば、第1感圧変形部601aは、第1周縁部601bの基端601cを支点として膨らむように変形する。
図31に示すように、第2ダイヤフラム602も、第1ダイヤフラム601と同じ構成となっている。すなわち、第2ダイヤフラム602は、第1感圧変形部601aに相当する第2感圧変形部602aと、第1周縁部601bに相当する第2周縁部602bとを備えている。第2感圧変形部602aは第1実施形態の第2ダイヤフラム342と同様に機能する。そして、第2周縁部602bの基端602cすなわち第2感圧変形部602aの周縁は、第2感圧変形部602aが第1閉空間34aの内圧により膨らむときの支点となっている。
また、第1周縁部601bの先端601dは、第2周縁部602bの先端602dに接合されている。その接合箇所は、気密性を有するように、例えば一軸心CL1まわりの全周にわたって溶接されている。そして、第1閉空間34aは、このように第1周縁部601bと第2周縁部602bが互いに接合されることにより形成されている。
また、図31から判るように、第1ダイヤフラム601は、第1感圧変形部601aが膨らむときの支点である第1周縁部601bの基端601cに対して、第1ダイヤフラム601と第2ダイヤフラム602との接合箇所になっている第1周縁部601bの先端601dが離れるように形成されている。
これと同様に、第2ダイヤフラム602は、第2感圧変形部602aが膨らむときの支点である第2周縁部602bの基端602cに対して、第1ダイヤフラム601と第2ダイヤフラム602との接合箇所になっている第2周縁部602bの先端602dが離れるように形成されている。
第1周縁部601bには、第1閉空間34a内へ第1流体を導入するための流体導入路601eが形成されている。そして、その流体導入路601eは、上記第1流体が第1閉空間34aへ導入された後にプラグ603によって閉塞されている。
第2パワーエレメント62は、封入されている流体を除き、上述の第1パワーエレメント60と同じ物である。例えば、第2パワーエレメント62には、第2流体が封入された第2閉空間35aが形成されており、その第2閉空間35aは第1閉空間34aと同じ形状をなしている。なお、図31には、その符号35a、62が括弧書きで表示されている。
本実施形態によれば、温度式膨張弁12は、第1流体が封入された第1パワーエレメント60と第2流体が封入された第2パワーエレメント62とを、前述の第1実施形態と同様に備えているので、その第1実施形態と同様に、弁機構部32の流量制御特性を任意に得ることが容易である。
また、本実施形態によれば、第1ダイヤフラム601と第2ダイヤフラム602とが変形するときには、溶接による第1ダイヤフラム601と第2ダイヤフラム602との接合箇所に対してずれた位置を支点として曲がるので、第1ダイヤフラム601および第2ダイヤフラム602の変形時の応力集中箇所が上記接合箇所から離れ、第1ダイヤフラム601および第2ダイヤフラム602の耐久性を向上させることができる。
(第10実施形態)
次に、本発明の第10実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
図32は、本実施形態の温度式膨張弁12の断面図である。図32に示すように、本実施形態の温度式膨張弁12では、第1実施形態に対して第2パワーエレメント35が異なっている。一方で、第1パワーエレメント34については第1実施形態と同じである。
具体的には、本実施形態の第2パワーエレメント35の直径が、第1実施形態に対して小さくなっている。従って、図32に示すように、第2パワーエレメント35の直径は、第1パワーエレメント34よりも小さくなっている。すなわち、第2パワーエレメント35を構成する第3ダイヤフラム351および第4ダイヤフラム352の直径が、第1パワーエレメント34を構成する第1ダイヤフラム341および第2ダイヤフラム342の直径よりも小さくなっている。
そのため、本実施形態では、何れのダイヤフラム341、342、351、352の板厚も同じであるが、第2パワーエレメント35が一軸心CL1方向へ膨張するときの第3ダイヤフラム351および第4ダイヤフラム352のバネ定数k2は、第1パワーエレメント34の第1ダイヤフラム341および第2ダイヤフラム342のバネ定数k1よりも大きくなっている。
要するに、第1ダイヤフラム341および第2ダイヤフラム342の形状たとえば直径が第3ダイヤフラム351および第4ダイヤフラム352と異なっている。そして、それによって、第1閉空間34aに封入された第1流体の圧力と第1パワーエレメント34の膨張量との関係である第1膨張特性と、第2閉空間35aに封入された第2流体の圧力と第2パワーエレメント35の膨張量との関係である第2膨張特性とが互いに異なっている。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、弁機構部32の流量制御特性は全体として、第1流体が封入された第1パワーエレメント34だけによる第1流量制御特性と、第2流体が封入された第2パワーエレメント35だけによる第2流量制御特性との中間的なものになり、弁機構部32の流量制御特性を任意に得ることが容易である。更に、第1パワーエレメント34のバネ定数k1の方が第2パワーエレメント35のバネ定数k2よりも小さいので、第1閉空間34aの内圧変化の方が第2閉空間35aの内圧変化よりも弁機構部32の球状弁321の動作に反映され易い。そのため、弁機構部32の流量制御特性を、前述の第2流量制御特性よりも第1流量制御特性に近いものとすることができる。このことを、図33を用いて詳細に説明する。
図33は、前述の図6に相当する図であって、本実施形態において流量制御特性を示す図である。図6と同様に、図33の二点鎖線Lsは第2冷媒通路38の冷媒の飽和温度特性を表し、破線LAは前述の第1流量制御特性を表し、一点鎖線LBは前述の第2流量制御特性を表し、実線Lmは弁機構部32の流量制御特性を表している。
本実施形態では、この実線Lmが図6に対して異なる曲線となっている。具体的には、上述したように、第1閉空間34aの内圧変化の方が第2閉空間35aの内圧変化よりも弁機構部32の球状弁321の動作に反映され易いので、実線Lmで示す弁機構部32の流量制御特性は、一点鎖線LBで示す第2流量制御特性よりも、破線LAで示す第1流量制御特性に近い特性となっている。
このように、第1流体と第2流体とに応じて弁機構部32の流量制御特性を定めることができ、それに加えて、第1パワーエレメント34の第1膨張特性と第2パワーエレメント35の第2膨張特性とに応じても弁機構部32の流量制御特性を定めることができる。
なお、本実施形態を前述の第2〜9実施形態のうちの何れかと組み合わせることも可能である。
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態において、第1流体は、第2冷媒通路38を流れる冷媒と同種の冷媒を含んでいるが、その同種の冷媒に替えて異なる種類の冷媒を含んでいても差し支えない。
(2)上述の第5実施形態において、パワーエレメント50は第1吸着材506と第2吸着材508とを備えているが、その第1吸着材506と第2吸着材508との一方だけを備え他方を備えていなくても差し支えない。
(3)上述の第6実施形態の図23において、第1壁部材512は、第1括れ部501fの第1内周面501jおよび第1底面501kを覆っているが、それに加えて或いはそれに替えて、第1括れ部501fの外周を形成する第1外周面501pを覆っていても差し支えない。また、第2壁部材514についても同様であり、第2壁部材514は、第2括れ部501gの外周を形成する第2外周面501qを覆っていても差し支えない。
(4)上述の第10実施形態の図32において、第1パワーエレメント34は一軸心CL1方向において蓋部材46の接触面46aと第2パワーエレメント35との間に介装されているが、図34に示すように、第2パワーエレメント35が蓋部材46の接触面46aと第1パワーエレメント34との間に介装されていても差し支えない。
(5)上述の第10実施形態において、第2パワーエレメント35の直径は、第1パワーエレメント34よりも小さくなっているが、逆に、第2パワーエレメント35の直径が、第1パワーエレメント34より大きくなっていても差し支えない。そのようにしたとすれば、第10実施形態とは逆に、第2閉空間35aの内圧変化の方が第1閉空間34aの内圧変化よりも弁機構部32の球状弁321の動作に反映され易くなる。そのため、図33に実線Lmで示す弁機構部32の流量制御特性は、破線LAで示す第1流量制御特性よりも、一点鎖線LBで示す第2流量制御特性に近い特性となる。
(6)上述の第10実施形態の図32において、第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342との両方の直径が、第3ダイヤフラム351と第4ダイヤフラム352とに対して大きくなっているが、第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342との直径が異なりそれらの一方の直径だけが、第3ダイヤフラム351と第4ダイヤフラム352との一方または両方に対して大きくなっていても差し支えない。
(7)上述の第10実施形態において、第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342との両方の直径が、第3ダイヤフラム351と第4ダイヤフラム352との両方に対して異なっている。これに対し、第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342との一方または両方の板厚が、第3ダイヤフラム351と第4ダイヤフラム352との一方または両方に対して異なっており、それにより、第1パワーエレメント34の第1膨張特性と第2パワーエレメント35の第2膨張特性とが互いに異なっていても差し支えない。
(8)上述の第2実施形態において、第1流体導入路481eと第2流体導入路481fとは介装部材481に形成されているが、他の部材に形成されていても差し支えない。
(9)上述の1〜4実施形態において、第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342とがそれぞれ介装部材343、481、485、501に全周溶接されることによりパワーエレメント34、35、48、50の気密性が確保されている。これに対し、パワーエレメント34、35、48、50の気密性が確保されれば、第1ダイヤフラム341と第2ダイヤフラム342とがそれぞれ、溶接以外の方法によって介装部材343、481、485、501に接合されていても差し支えない。
(10)上述の1〜4実施形態において、パワーエレメント34、35、48、50は仮想面FCxに対して対称的な外形形状を成しているが、対称的な外形形状でなくても差し支えない。
(11)上述の各実施形態において、膨張弁12は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の一部を構成しているが、他の用途に用いられても差し支えない。
(12)上述の第1実施形態において、膨張弁12は、第1パワーエレメント34と第2パワーエレメント35とが第2冷媒通路38の冷媒温度に応じて膨張するように構成されているが、その第2冷媒通路38の冷媒温度以外の他の温度によって第1パワーエレメント34と第2パワーエレメント35とが膨張するように構成されていても差し支えない。第2〜10実施形態についても同様である。
(13)上述の各実施形態において、第2冷媒通路38には、第1冷媒通路36と同じ流体である冷媒が流れるが、第2冷媒通路38には、第1冷媒通路36を流れる流体とは異なる流体が流れても差し支えない。
(14)上述の第1実施形態において、第1パワーエレメント34に封入されている第1流体と第2パワーエレメント35に封入されている第2流体とは何れも、冷媒と不活性ガスとが混合された混合流体であるが、冷媒だけであっても差し支えない。更に言えば、その第1流体および第2流体は、温度上昇に従って体積膨張する流体であれば特に限定はない。第2〜10実施形態についても同様である。
(15)上述の第2〜6、8実施形態において、膨張弁12が有する2つのダイヤフラムのうち、蓋部材46側を第1ダイヤフラム341と呼びストッパ322側を第2ダイヤフラム342と呼んでいるが、逆に、蓋部材46側を第2ダイヤフラム342と呼びストッパ322側を第1ダイヤフラム341と呼んでも差し支えない。
(16)上述の第2〜6、8実施形態において、温度式膨張弁12はパワーエレメント48、50を1つ備えているが、例えば図1の温度式膨張弁12のように、複数のパワーエレメント48、50を一軸心CL1方向に積層するように備えていても差し支えない。
(17)上述の第1実施形態において、温度式膨張弁12は、一軸心CL1方向に積層された第1パワーエレメント34と第2パワーエレメント35とを1つずつ備えているが、図35に示すように、更にもう1つ第1パワーエレメント34を備えていても差し支えない。すなわち、温度式膨張弁12は、一軸心CL1方向に積層された2つの第1パワーエレメント34と1つの第2パワーエレメント35とを備えていても差し支えない。この図35のようにすれば、温度変化に対する第1流体の体積変化の方が第2流体の体積変化よりも弁機構部32の球状弁321の動作に反映され易い。そのため、前述の第10実施形態と同様に、弁機構部32の流量制御特性を、第2流量制御特性よりも第1流量制御特性に近いものとすることができる。
(18)上述の第7実施形態において、第1パワーエレメント54は、第1ダイヤフラム341を備えず第2ダイヤフラム342を備えているが、逆に、第2ダイヤフラム342を備えず第1ダイヤフラム341を備えていても差し支えない。その場合には、カバー部材541は、第1ダイヤフラム341に接合されることにより第1封入空間34aを形成する。
(19)上述の第5実施形態において、第1吸着材506の吸着特性は、第2吸着材508に対して異なっているが、第2吸着材508と同じであっても差し支えない。
(20)上述の第1、7、9実施形態において、第1パワーエレメント34、54、60と第2パワーエレメント35、56、62とは互いに同じ形状を備えているが、互いの形状は異なっていても差し支えない。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。