JP2015137815A - 膨張弁、および蒸気圧縮式冷凍サイクル装置 - Google Patents

膨張弁、および蒸気圧縮式冷凍サイクル装置 Download PDF

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Abstract

【課題】蒸発器の入口に流れる冷媒流量の変化に対するフィードバック制御に遅れが生じることを抑制した温度式膨張弁12を提供する。【解決手段】ダイヤフラム61には、蒸発器流入冷媒の圧力P2と蒸発器流出冷媒の圧力P3が作用する。ダイヤフラム61は、差圧(P2−P3)を作動棒323を介してダイヤフラム50に伝える。ダイヤフラム50には、下部圧力作動室53bから蒸発器流出冷媒の圧力P1が加わる。圧力P1と圧力P3とが相殺されて、蒸発器流入冷媒の圧力P2のみがダイヤフラム50に作用する。ダイヤフラム50は、蒸発器流出冷媒の温度と蒸発器流入冷媒の圧力P2とに応じて、作動棒323を介して球状弁体321を変位させて絞り通路363の開度を調整する。【選択図】図1

Description

本発明は、膨張弁、および蒸気圧縮式冷凍サイクル装置に関するものである。
車載空調装置用の冷凍サイクルとしては、省動力化や冷房能力およびCOPの向上をねらって、例えば特許文献1に示される可変容量コンプレッサと二重管式の内部熱交換器が用いられている。
これに組み合わされる膨張弁としては、オイル戻り性の確保、内部熱交換器によるコンプレッサ吸入冷媒の加熱に伴う吐出温度の上昇などに対処するため、蒸発器出口の冷媒が液戻りして気液二相状態となるクロスチャージ式膨張弁が使用されている。蒸発器出口の冷媒とは、蒸発器の出口から流れる冷媒のことである。
一方、膨張弁の構造としては、例えば特許文献2に示されるように、角柱状のアルミ材ボデーの端部にパワーエレメントを取付けられてなるBOX型膨張弁が使用されてきた。
本タイプの膨張弁は、コンデンサの出口からレシーバを介して流入する液冷媒を蒸発器の入口に流通させる第1の冷媒通路と、蒸発器の出口からコンプレッサの入口へと向かうガス冷媒が通過する第2の冷媒通路とがボデーに一体に形成されている。第1の冷媒通路中には、冷媒を減圧膨張させる絞り通路と絞り通路の開度を調整する弁体が配置されている。パワーエレメントは、蒸発器出口の冷媒圧力および温度に応じて弁体を駆動して、絞り通路を通過する冷媒流量を調整する。このような膨張弁では、弁の駆動機構と蒸発器出口の冷媒圧力および温度を検出する外均式の機能を一体化できるメリットがある。
特許第4379141号明細書 特開平10−288424号公報
本発明者の検討によれば、従来の内部熱交換器に、外均式膨張弁として特にクロスチャージ式膨張弁を組合せた場合には、次の(1)、(2)のような問題が生じることが分かった。
(1)蒸発器出口の冷媒が液戻り状態となると、内部熱交換器にて液冷媒が加熱されて蒸発をおこし、蒸発器出口の冷媒圧力が急上昇するため、蒸発器出口の冷媒状態がガス冷媒の場合と比較して蒸発器出口の冷媒圧力変動が大きくなる。
(2)蒸発器出口の冷媒の圧力変動によりパワーエレメントが弁体を駆動すると、蒸発器の入口に流れる冷媒流量が変化する。しかし、蒸発器内を冷媒が流れる時間の分、遅れて蒸発器出口の冷媒状態が変化するため、上記冷媒流量変化に対するフィードバック制御が遅れてしまう。したがって、蒸発器出口の冷媒がガス冷媒状態と二相状態とを周期に繰り返し、低圧圧力がハンチングし易くなるといった問題がある。
これに対して、蒸発器の入口に流入する冷媒(以下、蒸発器流入冷媒という)の圧力に基づいてパワーエレメントが弁体を駆動する内均式膨張弁では、蒸発器の入口に流入する冷媒流量の変化に対するフィードバック制御の遅れが発生しない。しかし、上記特許文献2の膨張弁の構造では、第1の冷媒通路とパワーエレメントとの間に、第2の冷媒通路が位置する。このため、蒸発器流入冷媒の圧力をパワーエレメント側に導くことが容易にはできず、内均式の膨張弁を構成することが困難である、という問題があった。
本発明は上記点に鑑みて、蒸発器の入口に流れる冷媒流量の変化に対するフィードバック制御に遅れが生じることを抑制した膨張弁、およびこれを用いた蒸気圧縮式冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、蒸発器(18)の入口側に向かって流れる冷媒が通過する第1の冷媒通路(36)と、蒸発器の出口側からコンプレッサ(14)の入口側に流れる冷媒が通過する第2の冷媒通路(38)とを有し、第1の冷媒通路中には、冷媒を減圧膨張させる絞り通路(363)が設けられているボデー部(30)と、
絞り通路の開度を調整する弁体(321)と、
弁体を駆動する作動棒(323)と、
第2の冷媒通路内の冷媒の温度の上昇或いは低下に伴って圧力が高く或いは低くなる第1の圧力作動室(53a)と、第2の冷媒通路内の冷媒圧力が作用する第2の圧力作動室(53b)と、第1の圧力作動室の圧力と第2の圧力作動室の圧力との圧力差によって変位する第1ダイヤフラム(50)とを有するパワーエレメント(34)と、を備え、
第1ダイヤフラムは、第2の冷媒通路内の冷媒温度の上昇或いは低下に伴って作動棒を軸線方向一方側或いは他方側に変位させることにより、弁体を軸線方向一方側或いは他方側に変位させて絞り通路の開度を増大或いは減少させるようになっており、
第1、第2の冷媒通路の間に配置されて、第1の冷媒通路内の冷媒圧力が作用する第1受圧部(61a、110d)と、第2の冷媒通路内の冷媒圧力が作用する第2受圧部(61b、110e)とを有し、第1の冷媒通路内の冷媒圧力と第2の冷媒通路内の冷媒圧力との圧力差を作動棒に与える差圧部材(61、110)を備えることを特徴とする。
したがって、差圧部材は、第1の冷媒通路内の冷媒圧力と第2の冷媒通路内の冷媒圧力との圧力差を作動棒に与える。このため、第1ダイヤフラムには、第1、第2の冷媒通路内の冷媒圧力の圧力差と、第1、第2の圧力作動室の圧力の圧力差とが作用する。よって、第1ダイヤフラムは、第1の冷媒通路内の冷媒圧力と第1の圧力作動室の圧力との圧力差に基づいて、弁体を変位させて絞り通路の開度を調整することになる。これにより、蒸発器の入口に流入する冷媒流量の変化に対するフィードバック制御に遅れが生じることを抑制することができる。
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
本発明の第1実施形態における温度式膨張弁の断面構成を示す図である。 図1のパワーエレメントの上部圧力作動室内の温度−圧力特性を示す図である。 図1の部分拡大図である。 本発明の第2実施形態における温度式膨張弁の断面構成を示す図である。 本発明の第3実施形態における温度式膨張弁の断面構成を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における温度式膨張弁12の断面図である。
この温度式膨張弁12は、車載空調装置用の蒸気圧縮式冷凍サイクル装置10の一部を構成しており、図1は、温度式膨張弁12と蒸気圧縮式冷凍サイクル装置10の各構成機器との接続関係についても模式的に図示している。
蒸気圧縮式冷凍サイクル装置10では、冷媒としてフロン系冷媒(例えば、R134a)が採用されている。蒸気圧縮式冷凍サイクル装置10は、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界サイクルを構成している。まず、図1に示す蒸気圧縮式冷凍サイクル装置10において、コンプレッサ14は、吸入した冷媒を圧縮吐出するものである。
本実施形態では、コンプレッサ14としては、可変容量型コンプレッサが用いられている。可変容量型コンプレッサは、車両走行用エンジン(図示省略)から電磁クラッチ等を介して駆動力を得て、冷媒を吸入して圧縮するものであって、吸入した冷媒の圧縮容量を変化させることにより吐出冷媒の流量を変化させるものである(特許文献1参照)。
凝縮器16は、コンプレッサ14から吐出された高圧冷媒と図示しない冷却ファンにより送風される外気である車室外空気とを熱交換させて、高圧冷媒を放熱させて凝縮させる放熱用熱交換器である。凝縮器16の出口側は、例えば気相冷媒と液相冷媒とを分離する不図示のレシーバを介して内部熱交換器17に接続されている。
内部熱交換器17は、凝縮器16の出口から流出した高圧冷媒と蒸発器18の出口から流れる低圧冷媒との間で熱交換するものである。内部熱交換器17は、温度式膨張弁12の入口での過冷却度を増大できると共に、蒸発器18の出口での冷媒状態が液戻りして二相状態となっても高圧冷媒により加熱して気相化する。つまり、蒸発器19の出口での冷媒状態に対する冷房能力の安定領域を広くすることができる。特に、コンプレッサ14として可変容量型コンプレッサを用いる場合に、可変容量型コンプレッサの容量可変制御領域で液戻りしても能力低下を防いで安定に保つことができる。
温度式膨張弁12は、内部熱交換器17から流出した高圧冷媒を減圧膨張させるものである。温度式膨張弁12は、蒸発器18から流出した冷媒(以下、蒸発器流出冷媒という)の温度と、蒸発器18の入口に流れる冷媒(以下、蒸発器流入冷媒という)の圧力とに基づいて、その蒸発器流出冷媒の過熱度が予め定めた値に近づくように絞り通路面積を変化させて、蒸発器18の入口側へ流出させる冷媒流量を調整するものである。なお、温度式膨張弁12の詳細構成については、後述する。
蒸発器18は、温度式膨張弁12にて減圧膨張された低圧冷媒と、図示しない送風ファンによって送風された車室内空気とを熱交換させ、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。本実施形態では、蒸発器18は、車載空調装置において車室内に吹き出す空気を冷却する冷却用熱交換器として用いられている。さらに、蒸発器18の出口側は、温度式膨張弁12の内部に形成された第2冷媒通路38および内部熱交換器17を介してコンプレッサ14の吸入側に接続されている。
次に、温度式膨張弁12の詳細構成について説明する。図1に示すように、温度式膨張弁12は、ボデー部30、弁機構部32、およびパワーエレメント34等を有して構成されている。
ボデー部30は、温度式膨張弁12の外殻を構成するもので、例えばアルミニウム合金等から成る円柱状あるいは角柱状の金属ブロックに穴開け加工等を施して形成されている。ボデー部30には、第1冷媒通路36、第2冷媒通路38、および弁室40等が形成されている。
第1冷媒通路36は、内部熱交換器17の高圧側出口から流れる冷媒を減圧させるために設けられた流路である。第1冷媒通路36は、その一端に第1流入口361を有し、他端に第1流出口362を有している。その第1流入口361は内部熱交換器17の高圧出口側に接続されており、第1流出口362は、蒸発器18の入口側に接続されている。第1流入口361は、第1流出口362に対して軸線方向一方側(図中の下側)に配置されている。軸線方向は、ボデー部30の軸線CLが延びる方向である。
第2冷媒通路38は、蒸発器18の出口からの冷媒が流れる流路であって、第1冷媒通路36に対して独立に形成されている第2の流路である。第2冷媒通路38は、その一端に第2流出口382を有し、他端に第2流入口381を有している。その第2流入口381は蒸発器18の出口側に接続されており、第2流出口382は内部熱交換器17の低圧入口側に接続されている。
弁室40は、第1冷媒通路36の途中に設けられて、その内部に後述する弁機構部32の球状弁体321が収容されている空所である。具体的には、弁室40は、第1流入口361に直接連通し、絞り通路363を介して第1流出口362に連通している。絞り通路363は第1冷媒通路36の一部を構成し、冷媒流れを細く絞ることにより冷媒を減圧させる減圧流路である。すなわち、絞り通路363は、第1流入口361から弁室40へ流入した冷媒を、減圧膨張させながら弁室40側から第1流出口362側へ導く通路である。本実施形態の絞り通路363は、軸線方向(図中の上下方向)に連通しているもので、作動棒323の外周側に形成される。弁室40のうち絞り通路363の入口側には、弁座40aが形成されている。
弁機構部32は、ボデー部30内に収容されて、球状弁体321、弁部材321a、作動棒323、およびコイルバネ325から構成されている。それら球状弁体321、弁部材321a、作動棒323、コイルバネ325は、軸線CL上に配置されている。
球状弁体321は、軸線方向に変位することによって、絞り通路363の冷媒通路面積を調節する弁体、すなわち弁開度を調節する弁体である。また、弁室40には、球状弁体321と共に、弁部材321a、およびコイルバネ325が収容されている。弁部材321aは、球状弁体321に対して軸線方向一方側(図中の下側)に配置されて球状弁体321に固着されている。コイルバネ325は、弁部材321aを介して球状弁体321に対し絞り通路363を閉弁させる側に付勢する荷重をかける。
また、膨張弁12は、球状弁体321を弁座40aへコイルバネ325を介して押し付けるようにボデー部30に螺合された調整ネジ42を備えている。コイルバネ325が弁部材321aを介して球状弁体321に対し付勢する荷重は、その調整ネジ42を回転させることによって調整可能になっている。なお、調整ネジ42とボデー部30との間にはOリング421が設けられており、そのOリング421は、冷媒が弁室40から膨張弁12の外部に流れ出ることを防止している。作動棒323は、例えば細長い円柱状の形状を成している金属製の棒材である。作動棒323は、その軸線方向がボデー部30の軸線方向に一致するように配置されている。作動棒323は、ストッパ52と球状弁体321との間にてボデー部30の貫通孔100内に介装されている。貫通孔100は、第1冷媒通路36と第2冷媒通路38との間で、軸線方向に延びるように形成されている。作動棒323の軸線方向他方側はストッパ52に固定されている。作動棒323の軸線方向一方側(図中の下側)は絞り通路363内に挿通されて球状弁体321に突き当たっている。球状弁体321、ストッパ52、および作動棒323は、軸線方向に変位することにより、第1冷媒通路36の冷媒流量を増減することになる。作動棒323は、第2冷媒通路38内の冷媒の温度をストッパ52およびダイヤフラム50を介して上部圧力作動室53aに伝える機能を果たす。
パワーエレメント34は、ストッパ52とともに、ステンレス製のダイヤフラム50、上カバー51a、および下カバー51bを備える。ストッパ52は、例えば円盤状の形状を成しており、軸線方向他方(図中の上側)に形成された押圧面52aにてパワーエレメント34のダイヤフラム50に接触している。ストッパ52はこの押圧面52aにおいてダイヤフラム50を軸線方向他方側(図中の上側)に押圧する。上カバー51aおよび下カバー51bは、ダイヤフラム50を挾んで互いに密着するように配置されている。ダイヤフラム50に対して上カバー51a側には、上部圧力作動室53aが形成される。ダイヤフラム50に対して下カバー51b側には、下部圧力作動室53bが形成される。つまり、ダイヤフラム50は、上部圧力作動室53aと下部圧力作動室53bとを分離している。上部圧力作動室53aおよび下部圧力作動室53bは、それぞれ、気密室を構成する。ダイヤフラム50のうち上部圧力作動室53a(および下部圧力作動室53b)からの冷媒圧力が作用する領域は、軸線CLを中心とするほぼ円状に形成されている。
上カバー51aのうち軸線方向他方側(図中の上側)には、感温媒体となる感温用冷媒を封入するための開口部が形成されている。上カバー51aの開口部には、上部圧力作動室53aを密閉するための蓋部材46が溶接により固着されている。
上部圧力作動室53aは、後述するように、第2冷媒通路38内の冷媒温度を感知する感温室を構成する。本実施形態の感温用冷媒としては、蒸気圧縮式冷凍サイクル装置10で使用される冷媒(以下、冷凍サイクル使用冷媒という)と異なる冷媒が用いられている。このため、上部圧力作動室53a内のガス冷媒の温度−圧力特性(図2中グラフGa)が冷凍サイクル使用冷媒の温度−圧力特性(図2中グラフGb)よりも勾配が緩やかとなる。したがって、上部圧力作動室53a内のガス冷媒の圧力が所定温度以下の低温域では、冷凍サイクル使用冷媒の圧力よりも高くなる。つまり、上部圧力作動室53a内の温度−圧力特性は、所定温度以下の低温域では、冷凍サイクル使用冷媒の圧力よりも高くなるクロスチャージ方式となっている。
なお、図2中グラフGa、Gbは、上部圧力作動室53aの温度−圧力特性の関係を示すグラフである。図2は、所定温度が約7℃となる例を示しているが、本発明は、これに限るものではない。
図1の下部圧力作動室53bは、軸線CLを軸心として形成された均圧孔54を介して第2の冷媒通路38に連通されている。第2の冷媒通路38には、蒸発器18の出口からのガス冷媒が流れる。このため、第2の冷媒通路38は気相冷媒の通路となり、その冷媒蒸気の圧力が均圧孔54を介して下部圧力作動室53b内に作用する。なお、下カバー51bは、ボデー部30に対してネジにより嵌合されている。
温度式膨張弁12には、第1冷媒通路36内の冷媒圧力(すなわち、蒸発器18の入口側の冷媒圧力)を作動棒323を介してダイヤフラム50に対して与えるための内均機構60が設けられている。
図3に内均機構60の構造の詳細を示す。内均機構60は、ボデー部30の収納室70内に配置されたもので、ダイヤフラム61、受圧板62、およびリング63から構成されている。
収納室70は、凹部72、73によって形成されている。凹部72は、底面71から軸線方向一方側(図中の下側)に凹んでいる。底面71は、第2冷媒通路38のうち軸線方向一方側に形成されている面である。凹部72は、軸線CLを中心とする円板状の空所を形成する。凹部73は、凹部72の底面74から軸線方向一方側(図中の下側)に凹んでいる。底面74は、凹部72のうちのうち軸線方向一方側に形成されている面である。凹部73は、軸線CLを中心とする円板状の空所を形成する。凹部72において軸線CLを中心とする径方向寸法は、凹部73において軸線CLを中心とする径方向寸法よりも大きくなっている。
ダイヤフラム61は、軸線CLを中心とするほぼ円板状に形成されているゴム製の薄膜部材である。ダイヤフラム61のうち外周側は、凹部72内の底部74に対して軸線方向他方側(図中の上側)に位置する。ダイヤフラム61のうち凹部72、73からの冷媒圧力が作用する領域は、軸線CLを中心とするほぼ円形に形成されている。リング63は、樹脂、金属等からなるもので、軸線CLを中心とするリング状に形成されている。リング63は、凹部72内に嵌め込まれている。
本実施形態では、リング63が凹部72に配置されていない状態では、リング63の径方向寸法は、凹部72の径方向寸法よりも、大きくなっている。径方向寸法は、軸線CLを中心とする径方向寸法である。このため、リング63が弾性変形により収縮した状態で凹部72に配置されている。つまり、リング63は凹部72内に圧入されて嵌め込まれている。リング63は、凹部72内にて、ダイヤフラム61の外周側を凹部72内の底部74側に押し付ける。このため、ダイヤフラム61のうち外周側は、凹部72内の底部74側に密着している。これにより、ダイヤフラム61は、ボデー部30によって支持されることになる。このことにより、ダイヤフラム61が凹部72側と凹部73側とを分離する役割を果たす。
ダイヤフラム61のうち径方向中心部には、軸線方向に貫通する貫通孔61cが設けられている。ダイヤフラム61の貫通孔61cには、作動棒323が貫通している。
ダイヤフラム61には、屈曲部61dが設けられている。屈曲部61dは、受圧板62、およびリング63の間の隙間64において、軸線方向他方側に突起し、かつ軸線CLを中心とする環状に形成されている。隙間64は、軸線CLを中心とする環状に形成されている。ダイヤフラム61の屈曲部61dは、その変形によってダイヤフラム61の径方向中央側が軸線方向に変形することを容易にしている。
受圧板62は、ダイヤフラム61に対して軸線方向他方側(図3中の上側)に配置されている。受圧板62は、軸線CLを中心とする円板状に形成されている。受圧板62は、樹脂や金属等からなるもので、受圧板62のうち径方向中心側には、軸線方向に貫通する貫通孔62aが設けられている。貫通孔62aに作動棒323が貫通した状態で作動棒323は受圧板62に固定されている。
本実施形態では、作動棒323の所定箇所を受圧板62の貫通孔62aに貫通する前では、受圧板62の貫通孔62aの径方向寸法は、作動棒323の所定箇所の径方向寸法よりも、小さくなっている。受圧板62の貫通孔62aが弾性変形により拡がった状態で作動棒323の所定箇所が受圧板62の貫通孔62aに配置されている。このことにより、作動棒323は、受圧板62に対して圧入嵌合によって固定されていることになる。
受圧板62のうち軸線方向他方側(図1中の上側)は、第2冷媒通路38側に露出し、かつ受圧板62のうち軸線方向一方側(図1中の下側)は、ダイヤフラム61に対して接着剤等により固着されている。このことにより、収納室70のうち凹部72側と凹部73側との間で冷媒が移動することをダイヤフラム61が防ぐことができる。なお、本実施形態の受圧板62およびダイヤフラム61は、かしめ等により固着されていてもよい。
ここで、ダイヤフラム61のうち軸線方向他方側の面61bは、隙間64および受圧板62から第2冷媒通路38内の冷媒圧力を受ける。ダイヤフラム61のうち軸線方向一方側の面61aは、凹部73側から第1冷媒通路36のうち蒸発器流入冷媒の圧力P2を受ける。ここで、蒸発器流入冷媒の圧力P2とは、第1冷媒通路36のうち絞り通路363に対して冷媒流れ下流側の冷媒圧力のことである。つまり、蒸発器流入冷媒の圧力P2は、蒸発器18の入口および絞り通路363の間の冷媒圧力のことである。凹部73内は、均圧孔80を通して、冷媒通路36のうち絞り通路363に対して冷媒流れ下流側に連通している。均圧孔80は、作動棒323の外周側に形成されている。なお、凹部73の軸線方向一方側には、作動棒323の振動を防止する防振バネ90が配置されている。
次に、本実施形態の温度式膨張弁12の組み付け工程について説明する。
本実施形態の温度式膨張弁12は、上記特許文献2の温度式膨張弁12に対して、主に、内均機構60を追加した構成になっている。このため、以下、本実施形態の温度式膨張弁12の組み付けの説明として、内均機構60以外の他の構成の組み付け工程の説明を簡素化し、主に、内均機構60の組み付けについて説明する。
まず、ボデー部30、弁機構部32、パワーエレメント34、調整ネジ42、および内均機構60等を別々に用意する。
次に、受圧板62およびダイヤフラム61を接着剤等により固着する。この固着した受圧板62およびダイヤフラム61をボデー部30のうち収納室70の凹部72内に収納する。このとき、受圧板62をダイヤフラム61に対して軸線方向他方側に配置した状態でダイヤフラム61の外周側を凹部72の底面74上に配置する。
次に、リング63を凹部72内に圧入する。このとき、リング63が径方向内側に弾性変形により圧縮する。これにより、リング63がボデー部30に対して固定される。このとき、リング63は、ダイヤフラム61の外周側を凹部72の底面74側に押し付ける。このため、ダイヤフラム61の外周側と凹部72の底面74側とが密着する。
次に、作動棒323をボデー部30のうち貫通孔100に対してパワーエレメント34側(つまり、図1中の上側)から挿入する。このとき、作動棒323は、受圧板62の貫通孔62a内を通過しながら、軸線方向一方側(図1中の下側)に進むことになる。その後、作動棒323のうち所定位置が受圧板62の貫通孔62aに到達すると、受圧板62の貫通孔62aが作動棒323により弾性変形して拡がる。これにより、作動棒323が受圧板62に対して圧入により嵌合されることになる。
次に、ボデー部30に対してパワーエレメント34を組み付ける。さらに、球状弁体321、弁部材321a、およびコイルバネ325をボデー部30内に配置して、調整ネジ42をボデー部30に締結する。以上により、温度式膨張弁12の組み付けが終了する。
次に、本実施形態の作動について説明する。
まず、コンプレッサ14は、内部熱交換器17から流れ出る低圧冷媒を吸入して圧縮して高圧冷媒を吐出する。すると、凝縮器16は、コンプレッサ14から吐出された高圧冷媒を外気に放熱して凝縮させる。次に、内部熱交換器17は、凝縮器16の出口から流出した高圧冷媒と蒸発器18の出口から流れる低圧冷媒との間で熱交換する。
次に、温度式膨張弁12は、この熱交換された高圧冷媒を減圧膨張させるとともに、蒸発器18から流出した蒸発器流出冷媒の温度と蒸発器流入冷媒の圧力とに基づいて、蒸発器18の入口側へ流出させる冷媒流量を調整する。温度式膨張弁12の作動については後述する。
次に、蒸発器18は、温度式膨張弁12から流れ出る低圧冷媒により車室内空気を冷却する作用を発揮させる。その後、蒸発器18から流れ出た冷媒は、温度式膨張弁12の第2冷媒通路38および内部熱交換器17を通してコンプレッサ14の吸入側に吸入される。
以下、本実施形態の温度式膨張弁12の作動の詳細について説明する。
まず、第2冷媒通路38内を通過する蒸発器流出冷媒からの熱が作動棒323、ストッパ52、およびダイヤフラム50を通して上部圧力作動室53aに伝わる。
このとき、蒸発器流出冷媒の圧力が第2冷媒通路38から均圧孔54を介して下部圧力作動室53bに作用する。これに伴い、ダイヤフラム50のうち軸線方向一方側の面(図1中の下側の面)に蒸発器流出冷媒の圧力P1が作用する。このため、ダイヤフラム50には、圧力P1に基づく力F1が作用する。
一方、第1冷媒通路36を流れる蒸発器流入冷媒の圧力P2は、矢印Yaの如く、第1冷媒通路36のうち絞り通路363に対して冷媒流れ下流側から均圧孔80を通して収納室70の凹部73内に作用する。このため、ダイヤフラム61のうち軸線方向一方側の面61aには、蒸発器流入冷媒の圧力P2が作用する。
このとき、ダイヤフラム61のうち軸線方向他方側の面61bには、隙間64および受圧板62を介して蒸発器流出冷媒の圧力P3が作用する。ここで、圧力P1、P3は、互いに作用する向きが逆方向で、かつ同一値となる圧力である。つまり、P1、P3は、P1=P3といった関係を満たす冷媒圧力である。隙間64は、受圧板62およびリング63の間に形成される隙間である。したがって、圧力P2を圧力P3から引いた圧力差(P2−P3)がダイヤフラム61に作用する。つまり、圧力P2に基づく力F2と、圧力P3に基づく力F3との差分(F2−F3)が作動棒323からストッパ52を通してダイヤフラム50に作用する。以上により、F1および(F2−F3)がダイヤフラム50に作用する。
なお、力F1は、圧力P1と、ダイヤフラム50の圧力P1の受圧面積S1との積によって決まる。力F2は、圧力P2と、ダイヤフラム61の圧力P2の受圧面積S2との積によって決まる。力F3は、圧力P3と、ダイヤフラム61の圧力P3の受圧面積S3との積によって決まる。
受圧面積S1は、ダイヤフラム50のうち蒸発器流出冷媒の圧力P1が作用する面積である。受圧面積S2は、ダイヤフラム61のうち蒸発器流入冷媒の圧力P2が作用する面積である。受圧面積S3は、ダイヤフラム61のうち蒸発器流出冷媒の圧力P3が作用する面積である。
本実施形態の受圧面積S1、S2、S3は、同等に設定されている。このため、力F1および力F3が相殺されて、力F2だけがダイヤフラム50の軸線方向一方側に作用する。つまり、ダイヤフラム50のうち軸線方向一方側には、蒸発器流入冷媒の圧力P2に相当する力が作用する。
一方、上部圧力作動室53aには、上述の如く、蒸発器流出冷媒からの熱が上部圧力作動室53aに伝わる。したがって、ダイヤフラム50のうち軸線方向他方側(つまり、上面側)には、蒸発器流出冷媒からの熱量、すなわち、過熱度に応じた圧力P4が作用する。
ここで、ダイヤフラム50のうち圧力P4が作用する受圧面積S4は、受圧面積S1、S2、S3と同等に設定されている。このため、圧力P4から圧力P2を引いた圧力差(P2−P4)によってダイヤフラム50の中心部が軸線方向一方側、或いは他方側に変位する。このダイヤフラム50の中心部の変位が球状弁体321を軸線方向一方側、或いは他方側に変位させる。したがって、球状弁体321を弁座40aに対して接近、或いは離間させる。この結果、絞り通路363を流れる冷媒流量が制御される。
例えば、蒸発器18の熱負荷が増加して、第2冷媒通路38内の冷媒温度が上昇する。すると、上部圧力作動室53aの圧力が高くなり、それに応じてダイヤフラム50が作動棒323を軸線方向一方側に変位させる。これに伴い、作動棒323が球状弁体321を軸線方向一方側に移動させる。よって、絞り通路363の開度が大きくなる。これにより、蒸発器18の入口に流れる冷媒流量が多くなり、蒸発器18の温度が低下する。
逆に、蒸発器18の熱負荷が低下して、第2冷媒通路38内の冷媒温度が低下する。すると、上部圧力作動室53aの圧力が低くなる。このとき、ダイヤフラム50から加わる力とコイルバネ325から加わる力とのバランスによって、作動棒323および球状弁体321が軸線方向他方側に移動する。よって、絞り通路363の開度が小さくなる。これにより、蒸発器18の入口に流れる冷媒流量が少なくなり、蒸発器18の温度が上昇する。
これに加えて、蒸発器流入冷媒の圧力P2が高くなると、圧力P2は、作動棒323に対して、絞り通路363の開度を小さく方向に作用する。一方、蒸発器流入冷媒の圧力P2が低くなると、圧力P2は、作動棒323に対して、絞り通路363の開度を大きくする方向に作用する。
以上説明した本実施形態によれば、ダイヤフラム61の軸線方向一方側の面61aには、蒸発器流入冷媒の圧力P2が作用する。圧力P2は、上述の如く、第1冷媒通路36のうち絞り通路363に対して冷媒流れ下流側の冷媒圧力である。
ダイヤフラム61の軸線方向他方側の面61bには、蒸発器流出冷媒の圧力P3が作用する。このため、圧力差(P2−P3)がダイヤフラム61から受圧板62、作動棒323を介してダイヤフラム50に加わる。ダイヤフラム50には、パワーエレメント34の下部圧力作動室53bから蒸発器流出冷媒の圧力P1が加わる。ダイヤフラム50の圧力P1の受圧面積S1、ダイヤフラム61の圧力P2の受圧面積S2、および圧力P3の受圧面積S3は、それぞれ同一である。このため、P1とP3とが相殺して、蒸発器流入冷媒の圧力P2のみがダイヤフラム50のうち軸線方向一方側の面(図1中の下側の面)に作用する。ダイヤフラム50のうち軸線方向他方側の面(図1中の上側の面)に上部圧力作動室53aからの蒸発器流出冷媒の温度に応じた圧力P4が作用する。ダイヤフラム50のうち圧力P4が作用する受圧面積S4は、受圧面積S1、S2、S3と同等に設定されている。このため、圧力差(P4−P2)およびダイヤフラム50の受圧面積S1から定まる力Faが作動棒323から球状弁体321に加わる。このため、力Faとコイルバネ325の付勢力とのバランスによって、球状弁体321を軸線方向一方側、或いは軸線方向他方側に変位させて、絞り通路363の開度を増大或いは減少させる。
以上により、本実施形態の温度式膨張弁12を、ダイヤフラム50の軸線方向一方側には蒸発器流入冷媒の圧力P2のみが作用する内均式の温度式膨張弁12と同等に構成することができる。このため、温度式膨張弁12は、蒸発器流出冷媒の温度と蒸発器流入冷媒の圧力P2とに基づいて、蒸発器18の入口に流れる冷媒流量を制御することができる。したがって、蒸発器18の入口に冷媒が流れる冷媒流量の変化に対するフィードバック制御に遅れが生じることを抑制することができる。このため、低圧圧力のハンチングを生じ難くした温度式膨張弁12、およびこれを用いた蒸気圧縮式冷凍サイクル装置10を提供することができる。
本実施形態では、ダイヤフラム61を利用して収納室70内のうち蒸発器流入冷媒および蒸発器流出冷媒を分離するので、第1、第2の冷媒通路36、38の間をシールするシール部材をダイヤフラム61以外に設ける必要がない。さらに、蒸発器18の入口側の冷媒をダイヤフラム50側に導入するための複雑な冷媒流路を設ける必要が無い。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、ダイヤフラム61の受圧面積S2(S3)を、ダイヤフラム50の受圧面積S1(S4)と同等にした例について説明したが、これに代えて、本第2実施形態では、ダイヤフラム61の受圧面積S2(S3)を、ダイヤフラム50の受圧面積S1(S4)よりも小さくした例について説明する。
図4は、本発明の本実施形態における温度式膨張弁12の断面図である。
本実施形態における温度式膨張弁12と上記第1実施形態における温度式膨張弁12とは、ダイヤフラム61、受圧板62、およびリング部材63のそれぞれの大きさが相違する。
具体的には、本実施形態のダイヤフラム61の受圧面積S2(S3)は、ダイヤフラム50の受圧面積S1(S4)よりも小さくなっている。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同様、受圧面積S1、S4は同等であり、受圧面積S2、S3は同等である。本実施形態の受圧板62は、上記第1実施形態の受圧板62よりも小さくなっている。本実施形態のリング部材63は、上記第1実施形態のリング部材63よりも小さくなっている。
以上説明した本実施形態によれば、上述の如く、受圧面積S2(S3)は、受圧面積S1(S4)よりも小さくなっている。例えば、受圧面積S1(S4)と受圧面積S2(S3)との比率を1対k(0<k<1)としたときには、ダイヤフラム50の軸線方法一方側には、圧力P2ではなく、圧力{P1・(1−k)+k・P2}が作用する。このため、蒸発器18の入口に冷媒が流れる冷媒流量の変化に対するフィードバック制御に遅れが生じることを抑制しつつ、受圧面積の比率kを変えるにより外均式膨張弁の過熱度制御と内均式膨張弁の過熱度制御との間の任意の中間の作動を本実施形態の温度式膨張弁12によって実施することができる。
なお、本実施形態の温度式膨張弁12は、上記第1実施形態と同様に、図3中の凹部72、73、貫通孔61c、62a、および面61a、61bを備えるものの、図4にて、凹部72、73、貫通孔61c、62a、面61a、61bの各符号の図示を、省略している。
(第3実施形態)
上記第1、第2実施形態では、差圧部材としてダイヤフラム61を用いた例について説明したが、これに代えて、差圧ピストン110を用いた例について説明する。
図5は、本発明の第3実施形態における温度式膨張弁12の断面図である。
本実施形態の内均機構60は、差圧ピストン110およびOリング120から構成されている。差圧ピストン110およびOリング120は、図1のダイヤフラム61および受圧板62に代えて備えられている。差圧ピストン110およびOリング120は、収納室70内に配置されている。差圧ピストン110は、軸線CLを中心とする円板状部材であって、その径方向中央部には、軸線方向に貫通する貫通孔111が設けられている。貫通孔111に作動棒323が貫通した状態で、差圧ピストン110が作動棒323に固定されている。
本実施形態では、作動棒323の所定箇所が貫通孔111に貫通する前では、差圧ピストン110の貫通孔111の径方向寸法が作動棒323の所定箇所の径方向寸法よりも小さくなっている。このことにより、作動棒323の所定箇所が貫通孔111内で弾性変形により圧縮した状態で嵌っている。つまり、作動棒323が圧入嵌合により差圧ピストン110に固定されている。差圧ピストン110の径方向中央側のうち軸線方向他方側には、凹部110aが形成されている。差圧ピストン110の径方向中央側のうち軸線方向一方側には、凹部110bが形成されている。
差圧ピストン110のうち軸線方向他方側110eには、蒸発器流出冷媒の圧力P3が作用する。収納室70のうち差圧ピストン110の軸線方向一方側110dは、均圧孔80を通して、冷媒通路36のうち絞り通路363に対して冷媒流れ下流側に連通している。このため、収納室70のうち差圧ピストン110の軸線方向一方側110dには、蒸発器流入冷媒の圧力P2が作用する。
本実施形態の均圧孔80は、その軸線方向がボデー部30の軸線方向に対して交差する方向に形成されている。具体的には、均圧孔80は、凹部110b側に近づくほど、軸線CL側に近づくように形成されている。均圧孔80は、収納室70のうち差圧ピストン110の凹部110bの軸線方向一方側(図5中下側)に開口している。
本実施形態の収納室70は、第2冷媒通路38の底面71に対して軸線方向一方側に形成されている。収納室70は、円板状に形成されている空間であって、その軸線方向がボデー部30の軸線方向に一致するように形成されている。差圧ピストン110のうち径方向外周側には、凹部110cが設けられている。凹部110cは、径方向中央側に凹んでいる。差圧ピストン110の凹部110c内には、Oリング120が嵌め込まれている。
以上説明した本実施形態によれば、差圧ピストン110のうち軸線方向他方側110eには、蒸発器流出冷媒の圧力P3が作用する。差圧ピストン110の軸線方向一方側110dには、蒸発器流入冷媒の圧力P2が作用する。圧力P2は、上述の如く、第1冷媒通路36のうち絞り通路363に対して冷媒流れ下流側の冷媒圧力である。このため、圧力差(P2−P3)が差圧ピストン110から作動棒323およびストッパ52を通してダイヤフラム50に作用する。
ここで、差圧ピストン110のうち蒸発器流入冷媒の圧力P2が作用する受圧面積S2と、差圧ピストン110のうち蒸発器流出冷媒の圧力P3が作用する受圧面積S3とが同等になっている。受圧面積S2、S3は、ダイヤフラム50の受圧面積S1、S4と同等になっている。このため、上記第1実施形態と同様に、P1とP3とが相殺して、上部圧力作動室53aからの圧力P4と蒸発器流入冷媒の圧力P2との圧力差(P4−P2)に基づく力Faがダイヤフラム50から作動棒323を通して球状弁体321に加わる。このとき、ダイヤフラム50から作動棒323を通して球状弁体321に加わる力Faとコイルバネ325の付勢力とのバランスによって、作動棒323および球状弁体321を軸線方向一方側、或いは軸線方向他方側に変位させる。したがって、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
本実施形態では、差圧ピストン110は、Oリング120とともに収納室70内を軸線方向一方側、軸線方向他方側に変位する。Oリング120は、収納室70の側壁70bを摺動して摺動抵抗を発生させる。このことにより、収納室70内において蒸発器流出冷媒および蒸発器流入冷媒を分離するシール機能と、弁振動により異音が発生することを防止する異音防止機能を果たすことができる。
(他の実施形態)
上記第3実施形態では、ダイヤフラム61の受圧面積S2、S3をダイヤフラム50の受圧面積S1(S4)と同等にした例について説明したが、これに代えて、ダイヤフラム61の受圧面積S2、S3をダイヤフラム50の受圧面積S1(S4)よりも小さくしてもよい。これにより、上記第2実施形態と同様、外均式膨張弁の過熱度制御と内均式膨張弁の過熱度制御との間の中間の作動を温度式膨張弁12によって実施することができる。
上記第1〜第3実施形態では、上部圧力作動室53aに封入される感温用冷媒として、冷凍サイクル使用冷媒と異なる冷媒を用いることにより、上部圧力作動室53a内の温度−圧力特性をクロスチャージ方式とする例について説明したが、これに限らず、どのような構成によって、上部圧力作動室53a内の温度−圧力特性をクロスチャージ方式としてもよい。
上記第1〜第3実施形態では、凝縮器16の出口と温度式膨張弁12の入口との間の高圧冷媒と、蒸発器18の出口とコンプレッサの入口との間の低圧冷媒とを内部熱交換器17によって熱交換した例について説明したが、これに代えて、コンプレッサの出口と凝縮器16の入口との間の高圧冷媒と、蒸発器18の出口とコンプレッサの入口との間の低圧冷媒とを内部熱交換器17によって熱交換してもよい。
上記第1〜第3実施形態では、コンプレッサ14としては、可変容量型コンプレッサを用いた例について説明したが、これに限らず、電動コンプレッサ、或いは、固定容量型コンプレッサを用いることもできる。電動コンプレッサは、電動機とこの電動機により回転駆動されて冷媒を吸入圧縮する圧縮機構とを有するものであって、電動機の回転数により吐出冷媒の流量を変化させることができるものである。固定容量型コンプレッサは、冷媒の圧縮容量が一定であるコンプレッサである。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
以下、上記各実施形態の構成要素と特許請求の範囲との対応関係を示す。
球状弁体321が弁体に対応し、ダイヤフラム50が第1ダイヤフラムに対応し、ダイヤフラム61、および差圧ピストン110が差圧部材61に対応し、上部圧力作動室53aが第1の圧力作動室に対応し、下部圧力作動室53bが第2の圧力作動室に対応する。ダイヤフラム61が第2ダイヤフラムに対応する。
受圧面積S1が「第1ダイヤフラムのうち第2の圧力作動室の圧力が作用する第1の面積」に対応する。受圧面積S2が「差圧部材のうち第1の冷媒通路内の冷媒圧力が作用する第2の面積」に対応する。受圧面積S3が「差圧部材のうち第2の冷媒通路内の冷媒圧力が作用する第3の面積」に対応する。ダイヤフラム61のうち軸線方向一方側の面61aが第1の受圧部に対応し、ダイヤフラム61のうち軸線方向他方側の面61bが第2の受圧部に対応する。差圧ピストン110のうち軸線方向一方側110dが第1の受圧部に対応し、差圧ピストン110のうち軸線方向他方側110eが第2の受圧部に対応する。
10 蒸気圧縮式冷凍サイクル装置
12 温度式膨張弁
14 コンプレッサ
16 凝縮器
17 内部熱交換器
18 蒸発器
30 ボデー部
32 弁機構部
34 パワーエレメント
36 第1冷媒通路
38 第2冷媒通路
40 弁室
50 ダイヤフラム(第1ダイヤフラム)
61 ダイヤフラム(第2ダイヤフラム)
321 球状弁体(弁体)
321a 弁部材
322 ストッパ
323 作動棒
325 コイルバネ

Claims (10)

  1. 蒸発器(18)の入口側に向かって流れる冷媒が通過する第1の冷媒通路(36)と、前記蒸発器の出口側からコンプレッサ(14)の入口側に流れる冷媒が通過する第2の冷媒通路(38)とを有し、前記第1の冷媒通路中には、前記冷媒を減圧膨張させる絞り通路(363)が設けられているボデー部(30)と、
    前記絞り通路の開度を調整する弁体(321)と、
    前記弁体を駆動する作動棒(323)と、
    前記第2の冷媒通路内の冷媒の温度の上昇或いは低下に伴って圧力が高く或いは低くなる第1の圧力作動室(53a)と、前記第2の冷媒通路内の冷媒圧力が作用する第2の圧力作動室(53b)と、前記第1の圧力作動室の圧力と前記第2の圧力作動室の圧力との圧力差によって変位する第1ダイヤフラム(50)とを有するパワーエレメント(34)と、を備え、
    前記第1ダイヤフラムは、前記第2の冷媒通路内の冷媒温度の上昇或いは低下に伴って前記作動棒を軸線方向一方側或いは他方側に変位させることにより、前記弁体を前記軸線方向一方側或いは他方側に変位させて前記絞り通路の開度を増大或いは減少させるようになっており、
    前記第1、第2の冷媒通路の間に配置されて、前記第1の冷媒通路内の冷媒圧力が作用する第1受圧部(61a、110d)と、前記第2の冷媒通路内の冷媒圧力が作用する第2受圧部(61b、110e)とを有し、前記第1の冷媒通路内の冷媒圧力と前記第2の冷媒通路内の冷媒圧力との圧力差を前記作動棒に与える差圧部材(61、110)を備えることを特徴とする膨張弁。
  2. 前記第1ダイヤフラムのうち前記第2の圧力作動室の圧力が作用する第1の面積と、前記差圧部材のうち前記第1の冷媒通路内の冷媒圧力が作用する第2の面積と、前記差圧部材のうち前記第2の冷媒通路内の冷媒圧力が作用する第3の面積とが同等になっていることを特徴とする請求項1に記載の膨張弁。
  3. 前記差圧部材のうち前記第1の冷媒通路内の冷媒圧力が作用する第2の面積、および前記差圧部材のうち前記第2の冷媒通路内の冷媒圧力が作用する第3の面積は、前記第1ダイヤフラムのうち前記第2の圧力作動室の圧力が作用する第1の面積よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の膨張弁。
  4. 前記差圧部材は、前記第1の冷媒通路内の冷媒圧力と前記第2の冷媒通路内の冷媒圧力との圧力差によって変位する第2ダイヤフラム(61)であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の膨張弁。
  5. 前記第2ダイヤフラムに対して前記軸線方向他方側に配置されて前記作動棒に固定されている受圧板(62)を備え、
    前記作動棒は、前記受圧板を介して前記第2ダイヤフラムからの前記圧力差を受けることを特徴とする請求項4に記載の膨張弁。
  6. 前記ボデー部のうち前記第1、第2の冷媒通路の間には、前記差圧部材を収納する収納室(70)が設けられており、
    前記差圧部材は、前記作動棒に固定されて、かつ前記第1の冷媒通路内の冷媒圧力と前記第2の冷媒通路内の冷媒圧力との圧力差によって、前記収納室内を前記軸線方向一方側、或いは前記軸線方向他方側に変位する差圧ピストン(110)であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の膨張弁。
  7. 前記第1の圧力作動室の前記温度に対する圧力特性は、前記冷媒の温度に対する圧力特性よりも勾配が緩やかとなり、前記第1の圧力作動室の前記温度が所定温度以下の低温域では、前記冷媒の圧力よりも高くなるクロスチャージ特性となっていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の膨張弁。
  8. 前記冷媒を吸入して圧縮して高圧冷媒を吐出するコンプレッサ(14)と、
    前記コンプレッサから吐出される高圧冷媒の熱を放熱する凝縮器(16)と、
    請求項1ないし7のいずれか1つに記載の膨張弁(12)と備え、
    前記膨張弁は、前記凝縮器により冷却された高圧冷媒を減圧膨張させるものであり、
    前記膨張弁により減圧膨張された低圧冷媒を蒸発させて吸熱する蒸発器(18)と、
    前記コンプレッサにより吸入される低圧冷媒と前記膨張弁により減圧される前の高圧冷媒との間で熱交換する内部熱交換器(17)と、を備えることを特徴とする蒸気圧縮式冷凍サイクル装置。
  9. 前記コンプレッサは、前記吸入した冷媒の圧縮容量を変化させることにより吐出冷媒の容量を変化させる可変容量型コンプレッサであることを特徴とする請求項8に記載の蒸気圧縮式冷凍サイクル装置。
  10. 前記コンプレッサは、電動機により駆動されて前記冷媒を吸入圧縮する圧縮機構を有する電動コンプレッサであることを特徴とする請求項8に記載の蒸気圧縮式冷凍サイクル装置。
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