本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、部品点数の増加を伴うことなく容易に識別可能となる、新規な構造の電気接続箱を提供することにある。
以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
本発明の第一の態様は、内部回路を保持する回路保持部と、該回路保持部に組み付けられて前記内部回路を覆蓋するカバー部とを含んで構成される電気接続箱において、前記回路保持部が、複数の車輌の種類において共通化されている一方、前記内部回路が、前記複数の車輌の種類によって内容が異なる複数種類から選択されたものであると共に、前記カバー部が、前記内部回路の種類に対応して外面に形成された補強リブの形状が異なる複数種類から選択されたものであり、前記内部回路は一端側が前記回路保持部に保持され、他端側が前記回路保持部から突出する突出部を有している一方、前記カバー部が、前記内部回路の前記突出部の周囲を覆う筒状部を備えた形状とされており、前記内部回路の前記突出部の突出長さが前記複数の車輌の種類によって異なっていると共に、前記カバー部の前記筒状部の長さ寸法が、前記突出部の突出長さに対応して異なっていることを特徴とする。
本態様によれば、複数の車輌の種類によって内部回路の内容が異なる場合でも、回路保持部が複数の車輌の種類において共通化されていることから、電気接続箱全体の設計変更を伴うことなく、容易に車輌の種類違いに対応することができる。これにより、複数の車輌の種類の電気接続箱において部品を共用化でき、コスト削減を図ることができる。
しかも、複数の車輌の種類において回路保持部の共用化を図った場合に発生が懸念される、カバー部の誤組付の問題は、カバー部外面の補強リブを利用して、それら補強リブのリブ形状を異ならせることで、非常に視認性の高い識別標識を提供することで解決を図っている。それ故、従来の如き、品番識別用マーク等を小さく刻印する場合に比して、識別が非常に容易であり、カバー部の識別作業の正確性の向上や作業者への負担軽減を図ることができる。
また、そもそもカバー部の壁部の撓み補強として必要となる補強リブの形状を異ならせるだけで、補強リブにカバー部の壁部の撓み防止機能と、カバー部の種類の識別標識機能の2つの機能を担わせることができる。従って、従来のように識別マークを別途表示する別工程も不要となる。
さらに、カバー部外面の補強リブ全体を識別標識として利用することで、識別標識の視認性が向上されていることから、組付前にカバー部の種類を容易に識別できる。従って、誤組付防止用のリブを別途設ける必要なく、部品点数の増加を要することなく未然にカバーの誤組付を防止できるのである。
さらに、本態様では、複数の車輌の種類によって内部回路の突出部の突出長さが異なっており、それに応じて、カバー部の筒状部の長さ寸法も異ならされている。複数の車輌の種類によってカバー部の筒状部の長さ寸法が異なる場合、そもそも従来構造の如き誤組付防止リブが有効に機能し得ない。例えば、回路保持部からの内部回路の突出部の突出長さが小さいものに筒状部の長さ寸法が大きなカバー部の誤組付を防止するリブを突出すると、筒状部の長さ寸法の小さなカバー部の組み付けまでも阻止されてしまう。そこで、本態様の如き構造の電気接続箱においては、カバー部外面の補強リブの形状を異ならせた識別標識を用いたカバー部の種類の容易且つ確実な識別により、誤組付防止リブがなくとも、カバー部の誤組付を未然に防止することができるのである。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記筒状部の長さ寸法が異なる前記複数種類の前記カバー部において、前記筒状部の長さ寸法が大きなカバー部の前記補強リブの配設ピッチが、前記筒状部の長さ寸法が小さなカバー部の前記補強リブの配設ピッチよりも小さくされているものである。
本態様によれば、カバ―部の筒状部の長さが異なる場合に、筒状部の長さ寸法の大きいカバーの補強リブの配設ピッチを、長さ寸法の小さいカバーの補強リブの配設ピッチよりも小さくすることで、撓みが問題となり易い長さ寸法の大きいカバー部の補強を強化すると共に、リブ形状による識別機能をも有利に発揮させることができる。
本発明の第三の態様は、前記第一または第二の態様に記載のものにおいて、前記筒状部の長さ寸法が異なる前記複数種類の前記カバー部において、前記筒状部の外面に別部品への固定用ロック部が設けられており、前記筒状部の長さ方向一方の端部からの前記固定用ロック部の離隔距離が、前記複数種類の前記カバー部において共通にされているものである。
本態様によれば、カバー部の筒状部に設けられた固定用ロック部の位置が、複数種類のカバー部において共通にされている。これにより、筒状部の長さ寸法が異なるカバー部が装着された複数の電気接続箱を、固定用ブラケット等の共通の別部品に対して、同じ高さ位置に装着することが可能となり、固定用ブラケット等の別部品側の設計変更も不要とすることができる。
本発明の第四の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記回路保持部と前記カバー部のロック構造が前記複数の車輌の種類において共通化されているものである。
本態様によれば、回路保持部とカバー部のロック構造が、複数の車輌の種類において共通化されていることから、複数の車輌の種類によって設計変更の必要性をさらに低減できる。また、車輌の種類が異なっても、回路保持部に対するカバー部の組み付けの仕方を共通にできることから、組み付け作業性の効率化や安定化を図ることもできる。
本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れか一つの態様に記載のものにおいて、前記補強リブが、前記カバー部材の外面を構成する少なくとも1つの側面の略全面に亘って形成されているものである。
本態様によれば、カバー部材の外面を構成する側面という非常に視認性の高い部位において略全面に亘って識別標識としての補強リブが形成されている。従って、一層良好な視認性を備えた識別標識を提供でき、一層確実に誤組付を防止できる。
本発明によれば、回路保持が複数の車輌の種類において共通化されていることから、容易に車輌の種類違いに対応することができ、コスト削減を図ることができる。しかも、このような場合に発生が懸念される、カバー部の誤組付の問題は、カバー部外面の補強リブを利用して、それら補強リブのリブ形状を異ならせることで解決を図っている。それ故、従来の如き、品番識別用マーク等を小さく刻印する場合に比して、識別が非常に容易であり、カバー部の識別作業の正確性の向上や作業者への負担軽減を図ることができる。また、そもそもカバー部の壁部の撓み補強として必要となる補強リブの形状を異ならせるだけであるので、従来のように識別マークを別途表示する別工程も不要となる。さらに、カバー部外面の補強リブ全体を識別標識として利用することで、識別標識の視認性が向上されていることから、誤組付防止用のリブを別途設ける必要もない。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜6には、本発明に係る2種類の電気接続箱10A,10Bが示されている。各図(a)には一方の電気接続箱10Aが、また各図(b)には他方の電気接続箱10Bが、記載されている。これらの電気接続箱10A,10Bはサブボックスとして機能するものであり、例えば、リレーボックス等のメインボックスとしての他の電気接続箱内に収容されて、自動車等の車輌に搭載されている。ここで、電気接続箱10A,10Bは、それぞれ異なる車輌の種類、例えば車輌A,車輌B、に対応するように構成されている。以下の説明において、電気接続箱10A,10Bの双方に共通する構造とされた部材および部位については、図中に同一の符号を付することにより、説明を簡略化する。一方、電気接続箱10A,10B間で異なる構造とされた部材および部位については、図中の符号の最後にそれぞれA,Bを付することにより、違いを明確にする。なお、上方とは、図1中の上方、下方とは、図1中の下方、また前方とは、図1中の左方、後方とは、図1中の右方を言うものとする。
図1〜4に示されているように、電気接続箱10A,10Bはそれぞれ、回路保持部12と内部回路たるプリント基板14A,14Bとカバー部16A,16Bを備えて構成されている。電気接続箱10A,10Bの回路保持部12にはそれぞれ、プリント基板14A,14Bが保持されている。このようにプリント基板14A,14Bが保持されている回路保持部12に対して、下方に開口する箱体状のカバー部16A,16Bが上方から外挿装着されることによって、プリント基板14A,14Bがカバー部16A,16Bに覆蓋・収容されると共に、カバー部16A,16Bが回路保持部12に組み付けられるようになっている。
本発明に係る2種類の電気接続箱10A,10Bではこのように回路保持部12が共通化されていることから、回路保持部12は、複数の車輌の種類に対応するように構成されている一方、プリント基板14A,14Bは、それぞれ異なる複数の車輌の種類に対応するように構成されている。
回路保持部12は、全体として長手矩形ブロック形状を呈しており、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂により射出成形等によって一体形成されている。図1及び図2に示されているように、回路保持部12の上面18には、多数のコネクタ端子挿通孔20が上方に向かって開口形成されており、プリント基板14A,14B上に配設された後述するコネクタ端子32の端部が収容配置されるようになっている。なお、図示は省略するが、回路保持部12の下面には、複数の嵌合部が下方に向かって開口形成されており、嵌合部に図示しない相手側コネクタが嵌合されることにより、コネクタ端子32を介して、プリント基板14A,14Bと相手側コネクタが電気的に接続されるようになっている。
また、回路保持部12は、4つの側面22a,22b,22c,22dを有して構成されている。図1及び図2に示されているように、回路保持部12の幅方向両側の側面22b,22dの下方には、それぞれ2つのロック爪24,24が、側面22b,22dの外方に突出して形成されている。一方、回路保持部12の長さ方向両側の側面22a,22cの上端部には、それぞれ2つのロック爪26,26が、側面22a,22cの外方に突出して形成されている。なお、ロック爪26は例えば、電気接続箱10A,10Bが図示しないリレーボックス等の他の電気接続箱に収容される際に、ロック爪26を介して固定されるために用いられる。
図1〜4に示されているように、回路保持部12の上面18には、プリント基板14A,14Bが組み付けられている。プリント基板14A,14Bは、回路保持部12の長さ方向の寸法よりも僅かに短い寸法で上方に延びる矩形の板形状とされている。プリント基板14A,14Bの一方の側(図1〜4中、上側)には、複数の種類のリレー28a,28b,28cや抵抗30等の電子部品が配設されている一方、プリント基板14A,14Bの他方の側(図1〜4中、下側)には、複数のコネクタ端子32が設けられている。これらのコネクタ端子32はL字の屈曲形状とされており、一方の端部がプリント基板14A,14Bに接続されている一方、他方の端部が回路保持部12のコネクタ端子挿通孔20を通して、図示しない相手側コネクタと接続されるようになっている。
なお、回路保持部12に対するプリント基板14A,14Bの組み付けは、回路保持部12の上面18に設けられたコネクタ端子挿通孔20に対してプリント基板14A,14B上のコネクタ端子32の端部を挿し込んだ後、プリント基板14A,14Bの下端部が回路保持部12の上面18に当接するまでプリント基板14A,14Bを下方に向かって押し込むことによって行われる。そして、回路保持部12の上面18に突設された突部34に、固定用ねじ36によってプリント基板14A,14Bを固定することにより、回路保持部12に対するプリント基板14A,14Bの組み付けが完了する。図1〜4に示されているように、回路保持部12にプリント基板14A,14Bが組み付けられた状態において、プリント基板14A,14Bは、一端側である下端側が回路保持部12に保持されている一方、他端側である上端側が回路保持部12の開口部40から外方に突出する突出部42A,42Bを有している。
図1及び図3に示されているように、プリント基板14A,14Bは、電子部品の配設等の回路構成が異なる以外に、上下方向の長さ寸法が異なる。すなわち、プリント基板14Aの方がプリント基板14Bよりも上下方向の長さ寸法が長く構成されていることから、図3に示されているように、プリント基板14Aの突出部42Aの突出長さ:L1は、プリント基板14Bの突出部42Bの突出長さ:L2よりも長くなっている。
カバー部16A,16Bは、図1及び図2に示されているように、下方に開口する有底箱体形状を有している一方、平面視において、回路保持部12の上面18と略同一の長手矩形状に形成されており、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂により射出成形等によって一体形成されている。
また、カバー部16A,16Bはそれぞれ筒状部44A,44Bを備えて構成されている一方、筒状部44A,44Bはそれぞれ4つの側壁46a〜46d,48a〜48dから構成されている。図1〜4に示されているように、カバー部16A,16Bは、(i)筒状部44A,44Bの上下方向の長さ寸法と、(ii)固定用ロック部50A,50Bの上下方向の長さ寸法と、(iii)補強リブ60A,60Bの形状、に関して互いに異なる構成とされている。
1つ目として、図3に示されているように、カバー部16A,16Bにおいて、筒状部44A,44Bの上下方向の長さ寸法:L3,L4は、プリント基板14A,14Bの突出部42A,42Bの突出長さ:L1,L2に対応するように設定されている。すなわち、筒状部44Aの長さ寸法:L3が筒状部44Bの長さ寸法:L4よりも長く形成されているのである。
2つ目として、図1(a)及び図2(a)に示されているように、筒状部44Aの側壁46a,46cの外面には、固定用ロック部50A,50Aがそれぞれ形成されており、メインボックス内に設けられた図示しない固定用係合部等の共通の別部品に装着・固定する際に用いられる。固定用ロック部50A,50Aは互いに略同様の形状とされていることから、側壁46aの固定用ロック部50Aを例に説明する。固定用ロック部50Aには、側壁46aの外面から外方に突出して上方に延びる弾性片52が形成されている一方、弾性片52には、外方に突出する係合爪54が形成されている。さらに、固定用ロック部50Aには、弾性片52を挟む両側に、一対の案内部56A,56Aが形成されている。案内部56A,56Aは、側壁46aの外面から外方に突出すると共に、突出端縁部が直角に屈曲されたL字の断面形状をもって、弾性片52側に向かって延出されている。案内部56A,56Aは、下端部が弾性片52の下端部よりもかなり下方に位置されていると共に、上端部が弾性片52の上端部よりも下方且つ係合爪54の上端部よりもやや上方に位置されている。また、案内部56A,56Aの下端縁部は、下方に開口されている一方、案内部56A,56Aの上端縁部には、当接壁58,58が形成されている。
一方、図1(b)及び図2(b)に示されているように、筒状部44Bの側壁48a,48cの外面には、固定用ロック部50B,50Bがそれぞれ形成されており、固定用ロック部50A,50Aと同様、例えば図示しない固定用ブラケット等の共通の別部品に装着・固定する際に用いられる。固定用ロック部50B,50Bは互いに略同様の形状とされていることから、側壁48aの固定用ロック部50Bを例に説明する。図3及び図4に示されているように、固定用ロック部50A,50Bにおいて、案内部56A,56Aの上下方向の長さ寸法:L5,L6は、筒状部44A,44Bの長さ寸法:L3,L4に対応するように設定されている。すなわち、案内部56Aの長さ寸法:L5が案内部56Bの長さ寸法:L6よりも長く形成されているのである。
なお、図3及び図4に示されているように、カバー部16A,16Bにおいて、筒状部44A,44Bの長さ方向の一方の端部62,62からの固定用ロック部50A,50Bの係合爪54,54の離隔距離:L7,L8は、略等しくされている。これにより、筒状部44A,44Bの長さ寸法が異なるカバー部16A,16Bが装着された2種類の電気接続箱10A,10Bを、図示しないメインボックス内の固定用係合部等の共通の別部品に対して、同じ高さ位置に装着することが可能となり、メインボックス内の固定用係合部等の別部品側の設計変更も不要とすることができるようになっている。
3つ目として、図1〜4に示されているように、筒状部44Aの側壁46b,46dの外面には、補強リブ60A,60Aがそれぞれ形成されており、側壁46b,46dの撓みを軽減するために設けられている。補強リブ60Aは、側壁46b,46dの外面から側壁46b,46dの側縁部に対して傾斜して広がる斜めの格子状に突出して側壁46b,46dの外面の略全面に亘って設けられている。
一方、筒状部44Bの側壁48b,48dの外面にも、補強リブ60B,60Bがそれぞれ形成されている。補強リブ60Bは、側壁48b,48dの外面から側壁48b,48dの側縁部に対して平行及び直交して広がる格子状に突出して側壁48b,48dの外面の略全面に亘って設けられている。
このように、カバー部16A,16Bにおいて、筒状部44A,44Bに設けられた補強リブ60A,60Bの形状は、互いに異ならされている。すなわち、2種類の電気接続箱10A,10Bにおいて、カバー部16A,16Bは、それぞれのプリント基板14A,14Bに対応して、異なる補強リブ60A,60Bの形状が選択されているのである。
しかも、図3に示されているように、カバー部16A,16Bにおいて、筒状部44A,44Bに設けられた補強リブ60A,60Bの配設ピッチ:L9,L10は、筒状部44A,44Bの長さ寸法:L3,L4に対応するように設定されている。すなわち、筒状部44Aの長さ寸法の大きいカバー部16Aの補強リブ60Aの配設ピッチ:L9が、筒状部44Bの長さ寸法の小さいカバー部16Bの補強リブ60Bの配設ピッチ:L10よりも小さくされているのである。これにより、筒状部44Aの側壁46b,46dの撓みが問題となり易い長さ寸法の大きいカバー部16Bの補強を強化すると共に、補強リブ60A,60Bによる識別機能をも有利に発揮させることができるようになっている。なお、本実施形態では、カバー部16Aの補強リブ60Bの配設ピッチ:L9は、上下方向の両端側において一層小さくされている。
また、図1〜4に示されているように、筒状部44Aの側壁46b,46dの外面には、表裏識別用リブ64がそれぞれ異なる本数(本実施形態では、側壁46bに1本,側壁46dに3本)の上下に延びる突状として形成されている。同様に、筒状部44Bの側壁48b,48dの外面にも、表裏識別用リブ64がそれぞれ異なる本数(本実施形態では、側壁48bに1本,側壁48dに2本)の上下に延びる突状として形成されている。これにより、図示しないメインボックスに対して、電気接続箱10A,10Bの表裏を誤った方向で組み付けることが防止されている。
さらに、図1〜4に示されているように、筒状部44Aの側壁46b,46dの下端部には、それぞれ2つの係合部66,66が形成されている。係合部66は、側壁46b,46dの下方に延出して形成されている一方、中央部にはロック爪24と係合する係合孔68が貫設されている。同様に、筒状部44Bの側壁48b,48dの下端部にも、それぞれ2つの係合部66,66が形成されている。
そして、図1〜6に示されているように、このような構成とされたカバー部16A,16Bを、プリント基板14A,14Bの組み付けられた回路保持部12に対して、上方から外挿装着する。次に、カバー部16A,16Bをさらに下方に向って押し込むことにより、カバー部16A,16Bに形成された係合部66,66の係合孔68,68に、回路保持部12に設けられたロック爪24,24がロック嵌合されて、回路保持部12に対してカバー部16A,16Bが固定される。これにより、プリント基板14A,14Bの突出部42A,42Bがカバー部16A,16Bの筒状部44A,44Bに周囲を覆われた状態で、カバー部16A,16Bと回路保持部12が相互に組み付けられて、電気接続箱10A,10Bが形成されるのである。以上のことから分かるように、カバー部16A,16Bの係合部66,66と回路保持部12のロック爪24,24により、ロック構造が構成されている。このように、本発明に係る2種類の電気接続箱10A,10Bにおいてロック構造が共通化されており、ロック構造が複数の車輌の種類において共通化されているのである。
このような構造とされた本発明に係る2種類の電気接続箱10A,10Bによれば、車輌の種類によって異なるプリント基板14A,14Bが用いられる場合でも、回路保持部12が複数の車輌の種類において共通化されていることから、電気接続箱10A,10B全体の設計変更を伴うことなく、容易に車輌の種類違いに対応することができ、コスト削減を図ることができる。また、ロック構造が共通化されていることから、回路保持部12に対するカバー部16A,16Bの組み付けの仕方を共通にでき、組み付け作業性の効率化や安定化を図ることもできる。
しかも、回路保持部12の共用化を図った場合に発生が懸念される、カバー部16A,16Bの誤組付の問題に対しては、カバー部16A,16Bの外面に設けられた補強リブ60A,60Bのリブ形状を傾斜した格子状と水平及び鉛直に広がる格子状というように異ならせることで解決することができる。すなわち、従来の如き、品番識別用マーク等を小さく刻印する場合に比して、カバー部16A,16Bの外面の補強リブ60A,60B全体を識別標識として利用することにより、識別標識としての視認性が向上されていることから、組付前にカバー部16A,16Bの種類を容易に識別できるのである。また、カバー部16A,16Bの外面全面に補強リブ60A,60Bを形成し識別標識として利用することにより、識別標識としての視認性をより一層向上させることができる。それ故、カバー部16A,16Bの識別作業の正確性の向上や作業者への負担軽減を図ることができるのである。
また、そもそもカバー部16A,16Bの側壁46b,46d,48b,48dの撓み補強用の補強リブ60A,60Bの形状を異ならせるだけで、撓み防止機能は維持したままで、カバー部16A,16Bの識別標識としての機能も担わせることができる。それ故、従来の如き、識別マークを表示する別工程や誤組付防止用のリブ等も不要とできることから、部品点数の増加を要することなく未然にカバー部16A,16Bの誤組付を防止できるのである。
加えて、本発明に係る2種類の電気接続箱10A,10Bによれば、プリント基板14A,14Bの突出部42A,42Bの突出長さ:L1,L2が異なっており、それに応じて、カバー部16A,16Bの筒状部44A,44Bの長さ寸法:L3,L4も異ならされている。このような場合、そもそも従来構造の如き誤組付防止リブは有効に機能し得ない。すなわち、回路保持部12からのプリント基板14Bの突出部42Bの突出長さが小さいカバー部16Bに、筒状部44Aの長さ寸法が大きなカバー部16Aの誤組付を防止するリブを突出させると、筒状部44Bの長さ寸法の小さなカバー部16Bの組み付けまでも阻止されてしまう。一方、本発明に係る2種類の電気接続箱10A,10Bでは、カバー部16A,16Bの外面の補強リブ60A,60Bの形状を異ならせた識別標識を用いたカバー部16A,16Bの種類の容易且つ確実な識別により、誤組付防止リブを用いることなく、カバー部16A,16Bの誤組付を未然に防止することができるのである。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、補強リブ60A,60Bの具体的形状(配設ピッチを含む)は、特に限定されるものではなく、任意に設定可能であり、今回例示した傾斜した格子状や水平及び鉛直に広がる格子状の他に、ハニカム状やドット状等の形状が考えられる。上記実施形態では2種類の電気接続箱10A,10Bに本発明を適用した例を示したが、3種類以上の車輌の種類違いの電気接続箱を識別するためにも、本発明は同様に適用可能である。
また、ロック構造を構成する係合部66とロック爪24の具体的形状は、特に限定されるものではなく、任意に設定可能である。加えて、回路保持部12とカバー部16A,16Bに、係合部66とロック爪24の何れを設けるかについても、特に限定されることなく適宜選択可能である。