JP6009934B2 - 腹足類害虫の忌避方法及び腹足類害虫用忌避組成物 - Google Patents
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Description
そのため速効性を期待して、駆除剤を腹足類害虫に直接処理するエアゾール剤やスプレー剤について検討がされている(例えば、特許文献2参照)。しかし駆除剤を腹足類害虫に直接処理する際に、近隣の植物に薬害などの悪影響を及ぼす恐れがある。また腹足類害虫は粘液に覆われているため、駆除剤に暴露されても効果の発現までに時間がかかり、苦悶して動きまわる間に周囲が粘液だらけになり不衛生であり、不快感をともなうものとなる。
また腹足類害虫が忌避成分を嫌がると言っても、その通過を十分に阻止できるものではなく、一度ナメクジなどが通過すると体表面を覆っている粘液が忌避剤の表面に付着し、この通過部分の忌避効果が低下して、次第に忌避効果が失われるという欠点があった。
(1)有効成分としてHLB値が10以上のノニオン系界面活性剤を30質量%以上含有する粘稠状、ペースト状又は固形糊状の腹足類害虫用忌避組成物を、対象物の表面に塗布し、前記ノニオン系界面活性剤を含む塗膜を形成し、前記塗膜と腹足類害虫を接触させて忌避することを特徴とする腹足類害虫の忌避方法。
(2)前記腹足類害虫用忌避組成物が、HLB値が10以上のノニオン系界面活性剤からなることを特徴とする前記(1)に記載の腹足類害虫の忌避方法。
(3)前記腹足類害虫用忌避組成物が、スティックタイプの固形糊状の剤型として形成されてなることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の腹足類害虫の忌避方法。
本発明に用いる腹足類害虫用忌避組成物は、有効成分として、HLB値が10以上のノニオン系界面活性剤を該組成物全量に対して30質量%以上含有するものである。HLB値が10以上のノニオン系界面活性剤は親水性が高いため、ナメクジなどの体から水分を奪いやすく、ナメクジなどが触れたときに体の水分を吸い取られる感覚を感じて忌避するものと推測される。
これらの有効成分は、忌避効果や処理のしやすさを勘案して、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
例えば、グリセリン、ポリグリセリン、ブチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ペンタエリスリトール、ヘキシレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体等のポリオール類及びその重合体などの湿潤剤;BHA、BHT、アスコルビン酸などの酸化防止剤;フェニルサリチレート、モノグリコリコールサリチレート、ベンゾフェノンなどの光安定剤;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、キサンタンガム、デンプン、グアガムなどの増粘剤;水、エタノールなどの溶剤;無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、各種色素や顔料、香料などが挙げられる。
その際に有効成分であるHLB値が10以上のノニオン系界面活性剤は、組成物全量に対して30質量%以上含有するように調整する必要があり、それより少ないと、対象物の表面に塗布した際に、十分量の有効成分を塗膜に含ませることができなかったり、該塗膜と腹足類害虫が接触した際に忌避効果が十分に発揮されない恐れがある。
本発明の腹足類害虫用忌避組成物では、有効成分の含有量は30質量%以上であることが好ましく、60質量%以上がより好ましい。またHLB値が10以上のノニオン系界面活性剤だけからなってもよい。
さらに本発明の腹足類害虫用忌避組成物は、前記有効成分により十分な忌避効果を奏することから、腹足類害虫を対象とした他の忌避剤を併用する必要はない。
このような界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウムなどのアニオン系界面活性剤、ポリエチレングリコールなどの1種又は2種以上が挙げられる。
本発明の忌避方法においては、上記した腹足類害虫用忌避組成物を所期の対象物の表面に塗布して塗膜を形成する。前記対象物の表面に前記組成物を塗布する方法としては、有効成分であるHLB値が10以上であるノニオン系界面活性剤が塗布面に塗膜を形成して存在すればよく、具体的には、粘稠状、ペースト状又は固形糊状などの剤型にして対象物の表面に塗布する方法が挙げられる。
本発明の腹足類害虫の忌避方法によれば、有効成分を適用面に塗膜を形成して付着させるので、例えば降雨により適用面が水で濡れたとしても溶出しにくく、長時間忌避効果を持続させることができる。
有効成分として種々のHLB値を有するノニオン系界面活性剤について、それぞれの忌避効果を確認した。
試験検体として下記表1に示すポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン系界面活性剤1−1〜1−17(松本油脂株式会社製、商品名:ブラウノンN503〜N530)を使用した。図2に示すように、上方開口の透明なプラスチックカップ12(直径11cm、容量860mL)の内側壁面に、底部から5cmの位置に約1cmの幅で試験検体11を塗布した(重量約70mg)。その後、プラスチックカップ12内に供試虫16としてナメクジ1頭を放虫し、その忌避行動を観察した。試験は3回行なった。
図3(a)に示すように、供試虫16が試験検体の塗布領域に触れると試験検体の帯に沿って横方向に移動したものを忌避ありとして「○」と判断し、試験反復3回のうち1回でも図3(b)に示すように、試験検体の塗布領域を超えてプラスチックカップの上方に移動したものを忌避なしとして「×」と判断した。結果を同じく表1に示す。
ノニオン系界面活性剤を用いた各処方における活性剤全体のHLB値による忌避効果を確認した。
下記表2〜4に示す処方により各試験検体(検体2−1〜2−17、3−1〜3−4、4−1〜4−4)を作製した。室温で固化している成分は湯煎にて溶解させ各成分を混合した後常温に戻すことにより固化した。
試験例1と同様の方法で忌避試験を行い、ナメクジの忌避行動を観察した。結果を同じく表2〜4に示す。
さらに表3の結果より、プロピレングリコール、グリセリンのような溶剤を加えた場合、溶剤の配合割合に関わらず忌避は確認できた。また表4の結果より、無機粉体である無水ケイ酸を混合した場合においても確実な忌避が確認できた。
試験例2で作製した検体3−1〜3−3を用いてカタツムリに対する忌避試験を行った。
試験例1と同様の方法で忌避試験を行い、カタツムリの忌避行動を観察した。結果を表5に示す。
試験例2で作製した検体3−3を用いて、食害被害に対する忌避効力試験を行った。
図4に示すように、上方開口の透明なプラスチックカップ13(直径6cm、容量60mL)の底部に底面が隠れる程度の土18を入れ、その中央にキャベツの葉17(1g)を設置した。プラスチックカップ13の外側壁面に、底部から1cmの位置に約2cmの幅で試験検体11を塗布して(重量約10mg)、これを処理区とした。
この処理区を一回り大きなプラスチックカップ14(直径12cm、容量650mL)に入れ、プラスチックカップ14の底部に供試虫16としてナメクジ1頭を放虫し、一日後の試供虫のキャベツの葉17への定着の有無を確認した。
コントロール(無処理区)として試験検体11を塗布しないもので同様の試験を行った。試験はそれぞれ10回行い、定着数を数えた。
忌避率を以下の式より求め、結果を表6に示す。
忌避率(%)=(無処理区の定着数−処理区の定着数)/無処理区の定着数
試験例2で作製した試験検体3−3を用いて、食害被害に対する忌避効力試験を行った。
図5に示すように、上方開口の透明なプラスチックカップ15(直径9cm、容量200mL)の底部に底面が隠れる程度の土18を入れ、その中央にキャベツの葉17(1g)を設置した。プラスチックカップ15の外側壁面に、底部から1cmの位置に約2cmの幅で試験検体11を塗布して(重量約40mg)、これを処理区とした。
この処理区を上方開口の透明なボックス19(縦30cm×横40cm×高さ15cm)に入れた。コントロール(無処理区)として試験検体11を塗布しないものを処理区から10cm離した位置に配置した。ボックス19の底部に供試虫16としてナメクジ10頭を放虫し、一日後の試供虫16のキャベツの葉17への定着数を数えた。
また、降雨を想定し、試験検体11を塗布したプラスチックカップ15にトリガーポンプ(噴霧量:1g/1プッシュ)で水を4方向から10プッシュずつ処理した後、同様の試験を行った。供試虫16としてナメクジ10頭を用いた。
忌避率を以下の式より求め、結果を表7に示す。
忌避率(%)=(無処理区の定着数−処理区の定着数)/無処理区の定着数
2 腹足類害虫用忌避剤
11 試験検体
12,13,14,15 プラスチックカップ
16 供試虫(ナメクジ)
17 キャベツの葉
18 土
19 ボックス
Claims (3)
- 腹足類害虫用忌避成分としてHLB値が10以上のノニオン系界面活性剤を60質量%以上含有する粘稠状、ペースト状又は固形糊状の腹足類害虫用忌避組成物を、対象物の表面に塗布し、前記ノニオン系界面活性剤を含む塗膜を形成し、前記塗膜と腹足類害虫を接触させて忌避することを特徴とする腹足類害虫の忌避方法。
- 前記腹足類害虫用忌避組成物が、HLB値が10以上のノニオン系界面活性剤からなることを特徴とする請求項1に記載の腹足類害虫の忌避方法。
- 腹足類害虫用忌避成分としてHLB値が10以上のノニオン系界面活性剤を60質量%以上含有し、粘稠状、ペースト状又は固形糊状を成し、
対象物の表面に塗布して前記ノニオン系界面活性剤を含む塗膜を形成し、前記塗膜と腹足類害虫を接触させて忌避するために用いられることを特徴とする腹足類害虫用忌避組成物。
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