JP4114114B2 - 害虫の空間忌避・駆除方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動販売機や食品陳列ショーケース等の、準密閉空間内に生息する害虫の追い出しおよび害虫の侵入防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
害虫の忌避剤および方法については古くから研究がなされてきているが忌避剤の用いられる理由は次の通りである。例えば、ゴキブリについては台所の調理場、食器棚等に出現するが、殺虫剤の散布や、粘着剤を塗布したトラップ等による駆除方法では、ゴキブリの活動途中に駆除がなされることから、ゴキブリが駆除されるまでの活動による汚染自体を防ぐことができなく、また殺虫成分が付着することによって台所やその周辺のみならず、そこに収納されている食器類や食物をも汚染するおそれがある。また、このような駆除方法では周辺にゴキブリの死骸が生ずることが不潔であると同時に不快感が生ずる。そのため、ゴキブリの出現し易い場所にその忌避剤を何らかの手段で配置することによって、前記のような駆除方法における欠陥を未然に防止するようにしている。
【0003】
このようなゴキブリの忌避の研究に関しては、忌避剤を直接塗布あるいはエアゾールにより物品に処理するようにしたものとして特開平7−112902号公報が、シート状にして使用するものとしては特開平3−161402号公報が、紙材、不織布等に含浸した形態を示唆するものとして特開平3−127702号公報および特開平1−156901号公報が、塗料に含ませた形で使用することを示唆するものとして特開平7−118112号公報が、また忌避剤そのものについては特開平7−10709号公報が挙げられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これら従来の忌避方法においては、いずれも処理直後においては効力が見られるものの、薬剤の一定量の揮散の継続が長時間に亘って保証されるものではないため、特に自動販売機や食品陳列ショーケースのように長期間に亘って効果が持続されることが望まれるもの用としては問題があった。
本発明は上記のような問題点を解決しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
常温で揮散性のある殺虫忌避物質を、カップ式自動販売機内で液体式加熱蒸散装置により30日以上の長期間にわたり20〜150mg/日/m 3 の蒸散量で蒸散させ、カップ式自動販売機の空間内に生息あるいは侵入する害虫を忌避・駆除するようにする。
【0006】
【作用・効果】
本発明では、カップ式自動販売機内で、液体式加熱蒸散装置で常温で揮散性のある殺虫忌避物質を20〜150mg/日/m 3 の蒸散量で蒸散させるので、制御された持続的な蒸散が可能となり、長期間に亘る安定した忌避作用が実現できる。
【0007】
【実施態様】
本発明者の研究によれば、従来殺虫剤として知られているピレスロイド系殺虫剤中、揮散性のもの、例えばエンペントリン、テラレスリン、アレスリン、プラレスリンを忌避殺虫物質として用い、その放出をコントロールすると効果が高いことが見出だされた。
例えばエンペントリンでは、濃度は1〜10%、好ましくは2〜8%、より好ましくは2〜7%で、放出量を20〜150mg/日/m3とすべきである。
一方、濃度が1%以下では効果が薄く、薬剤濃度が10%以上では放出量を一定にすることが難しく、放出量が多い場合は安全性にも問題が生じることも見出だされた。これらの条件下で有効な放出量が保証されるためには、忌避殺虫物質に忌避剤として効力が持続するように揮散調節剤ブトオキサイド、MGK−264、サイネピリン500、IBTA、IBTE、S−421を配合し、これを液体蚊取器として用いられている加熱蒸散装置によって蒸散させることで解決されることが見出だされた。
【0008】
揮散調節剤の濃度は0.05〜0.9%好ましくは0.05〜0.7より好ましくは0.1〜0.5%であり、この範囲以下の場合は揮散が早すぎるしこの範囲以上の場合は揮散が著しく遅くなる。
利用する加熱蒸散器には通常110〜150℃の液体蚊取器が用いられ、特に限定する必要はない。このような加熱蒸散器は、従来、蚊の殺虫にのみ使用されているものであり、ゴキブリ等の大型害虫の駆除に言及された例はない。また、蚊の殺虫であっても、自動販売機等内への使用の例もないが、本願発明では、このような加熱蒸散器を害虫の忌避・駆除方法に用いる点にも一つの特徴がある。使用する液は沸点範囲が180〜270℃の脂肪族炭化水素が用いられ、有効成分、酸化防止剤、揮散調節剤等が配合されても良い。配合例としては以下のものが挙げられる。
エンペントリン 1.5g
バイオソープ 0.1
ブトオキサイド 0.2
n−パラフィンにて45mlとする。
駆除する対象害虫はチャバネゴキブリや飛翔昆虫があげられるが、具体的には双翅目、甲中目、鱗翅目、噛翅目が挙げられる。
上記以外に本発明に利用できる薬剤としては殺菌剤や消臭剤などがある。
【0009】
【実施例および試験例】
次に実施例および試験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではないことは云うまでもない。
【0010】
(試験例1)
殺虫忌避物質、揮散調節剤を溶剤n−パラフィン45mlに溶解し、下記表1に示す実施例1〜5の製剤を作成した。揮散調節剤はブトオキサイドを使用した。
【0011】
【表1】
【0012】
試験方法
プラスチック衣装ケース(70×43×18cm=0.05m3)2ケを2×2×10cmの通路で連結し、片方にチャバネゴキブリ100匹を入れて餌と水を与えて2日飼育する。その後、餌のある側に忌避剤を入れ単位時間毎にゴキブリが通路を通って他方の衣装ケースに移動する数をカウントする。
リキッド器具は市販品を用い燻蒸時間は2時間とした。
試験結果
試験結果を表2に記載する。
【0013】
【表2】
【0014】
考察
表2のごとく、エリヤ空間で忌避効果を発揮する薬剤は少なく、実験例1,4に忌避効果が見られた。この両者について実際の自動販売機で効力があるか否かを試験する必要がある。なお、実験例1の場合は薬剤濃度を濃くすると加熱温度を高く設定する必要があった。
【0015】
(試験例2)
実験例1と4の薬剤を実際の自動販売機で濃度を変えてテストを行った。実施例6〜13の薬剤をn−パラフィンにて45mlに調節したものを表3に記載する。
【0016】
【表3】
【0017】
試験方法
実際の自動販売機(容積1m3)内に20×40cmのネットを三角錐にシールし、その中にチャバネゴキブリを5匹、水、餌を入れて試験に供した。設置位置は番号の1,2が上部、3,4が中部で5,6が下部に設置した。なお、ゴキブリのノックダウン状況観察は1日に1回とした。判定は2日後の状況で行った。
試験結果
試験結果を表4に記載する。
【0018】
【表4】
【0019】
考察
表4の結果では、薬剤の蒸散量が19mg/m3/日では効力が弱く、150mg/m3/日以上では効力が変化しないことを示した。表3と表4より、実施例6と実施例5の2個セットは薬剤量はほぼ同じであるが、実施例6の方が効果は良かった。このことから、薬剤濃度は1.33%以上で好ましくは2%が望ましい。さらに濃度10%以上は均一蒸散が難しく、好ましくは8%までが良かった。
表4の結果から、実施例12と実施例13は実施例6〜11の薬剤と異なるが、効力的には期待したより悪かった。これは加熱揮散温度が120℃と低かったためである。また、実施例1を実際の自動販売機内で試験したところ、効力は弱かった。
これらの結果から、実施例8、実施例9が加熱温度も低く使い易いと思われる。
【0020】
(試験例3)
実施例14〜18は揮散調節剤の効果試験を行ったものである。n−パラフィン液で試験液を調整した比較例を表5に記載する。
【0021】
【表5】
【0022】
試験方法
温度20℃の部屋で、電気リキッド器にセットし毎日一定の時間容器毎の重量を測定し、前日との差の重量を揮散重量とした。通電時間は24時間フルに行った。
試験結果
比較例の試験結果を表6に記載する。
【0023】
【表6】
【0024】
実施例の40日間にわたる重量測定結果を表7に記載する。
【0025】
【表7】
【0026】
考察
表6と表7を比較すると、比較例では15日前後で液がなくなったのに対し、実施例14〜18では30日以上の持続を示した。また、実施例14,17は1日当りの揮散量が比較例に比して均一性があったが、実施例15,16は持続が長すぎる傾向があった。
したがって、揮散調節剤の量は0.5%までが良いことが分かる。また、実施例11の揮散調節剤量0.11%より少ない値は有効成分エンペントリン量が多量となり経済的でない。このことから揮散調節剤量は0.1〜0.5%が良い。
【0027】
(試験例4)
忌避殺虫物質の放出量と空間広さを確認するため、実施例14を用いて試験を行った。
試験方法
実際の自動販売機に似せたサイズの部屋サイズ(開放部を含む)をつくり、底部前面中央に蚊取器を設置し、中にチャバネゴキブリを5匹、水、餌を入れた20×40cmの三角錐にシールネットを上部・中部・下部にそれぞれ2個設置した。なお、ゴキブリのノックダウン状況観察は2時間単位で行った。
試験結果
試験結果を表8に記載する。
【0028】
【表8】
【0029】
表8から部屋サイズが大きくなると、効力が遅く(悪く)なるが、1.8m3サイズ空間でも1週間経過すれば効力を発揮する。
【0030】
(試験例5)
実施例18を用いて自動販売機内カップへの薬剤付着量を測定した。
試験方法
容積1.4m3の自動販売機のカップ置き場所に、アルミホイルで巻いた紙カップを2段重ねで置き(扉6ケ所と中側10ケ所×2段)、殺虫液の付着しやすい冬期で実験を行った。これを週単位でとりだしアセトンにてカップ表面の薬剤を洗い流し一定容量にしガスクロマトグラフ法で分析を行った。
試験結果
試験結果を表9に記載する。
【0031】
【表9】
【0032】
考察
濃度が高いと安全性に問題が生じるが、表9によると紙コップ1個当りの外側付着量は0.75〜2.00μgであり安全性にはほとんど問題がない。カップへの付着量が累積しない理由は本薬剤が常温で揮散性があるためと思われる。
【0033】
(試験例6)
実施例19〜24は稼働時間と稼働間隔の試験を行った。なお、薬液は実施例14と18の液を用い、試験例2に準じて実際の自動販売機で行った。なお、1日当りの薬量は一定となるようにした。試験条件を表10に記載する。
【0034】
【表10】
【0035】
試験結果
試験結果を表11に記載する。
【0036】
【表11】
【0037】
考察
表11から、実施例11は薬剤の連続放出(実施例14の液)であり、1日後の致死効力は80%であった。これを基準に考えると、実施例20は薬剤濃度2倍の液(実施例18の液)を1時間稼働、1時間休止を繰り返した。この結果は表11のごとく、ノックダウン時間は薬剤濃度が濃くなった分早くなり、1日後の致死効力も良かった。
しかし、4時間稼働、4時間休止や8時間稼働、8時間休止までは連続運転に近い忌避効果が期待できる数値を表11は示しているが、「実施例24」の12時間稼働の12時間休止は効力的には弱くなっている。これは薬剤量が致死濃度ではなく、忌避濃度である場合、12時間の休止はゴキブリに対する影響が弱いことを示し、この休止の時間中にゴキブリが活動し放出時間中は他場所に逃げて生活できることを意味している。
また、実施例23は薬剤濃度が連続運転の実施例19に比して3倍になっており、8時間稼働の16時間休止である。薬剤濃度が高くなったため、効力的には高い値を示しているが、薬剤の揮散力が弱い場合は16時間休止が限度である。また、16時間休止中にゴキブリの侵入を防止するためには、自動販売機内の薬剤がこの期間中持続する必要があるが夏期の直射日光下では16時間が限度であった。
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、現在蚊取器に利用されている液体式蒸散器で制御された蒸散をさせることによってカップ式自動販売機内の害虫の追い出し、または侵入を長期的に安定して防止することが可能となる方法が提供される。
Claims (5)
- 常温で揮散性のある殺虫忌避物質を、カップ式自動販売機内で液体式加熱蒸散装置により30日以上の長期間にわたり20〜150mg/日/m 3 の蒸散量で蒸散させ、カップ式自動販売機内に生息あるいは侵入する害虫を忌避・駆除する方法。
- 該加熱蒸散装置の稼働時間が連続又は断続であり、1日の合計稼働時間が8時間以上であることを特徴とする請求項1に記載の害虫忌避・駆除方法。
- 該殺虫忌避物質はエンペントリンであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の害虫忌避・駆除方法。
- 該エンペントリンの濃度は2〜8重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の害虫忌避・駆除方法。
- 揮散調節剤として、ピペロニルブトオキサイドを0.1〜0.5重量%配合することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の害虫忌避・駆除方法。
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