実施の形態1.
以下に、本発明の実施の形態1に係る制御装置切替システムについて、図面に基づいて説明する。図1は、本実施の形態1に係る制御装置切替システムの構成を示している。なお、以下に示す全ての図において、図中、同一または相当部分には同一符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態1に係る制御装置切替システム100は、車両に搭載される複数の制御装置ECU1〜ECUn(n>3)が、共通の通信線であるネットワーク6を介して互いに接続されたものである。これらの制御装置には、自身以外の制御装置との間でデータの送受信を行う通信制御装置と、この通信制御装置が行うべきデータ送信処理を代行可能な複数の代行候補装置が含まれる。以下の説明では、ECU1を通信制御装置、ECU2〜ECUm(m<n)を代行候補装置とし、ECU2〜ECUmの中から実際に代行を行う代行装置が決定される。
代行候補装置ECU2〜ECUmの各々は、車両に関する所定の処理を実行する制御装置であり、例えば、モータやエンジン等に関わる駆動系ECU、エアバッグ等に関わる安全系ECU、シートやライトの調整等に関わるボディ系ECU、またはナビゲーション装置等に関わる情報系ECUである。これらのECU2〜ECUmは、ECU1の行うべきデータ送信処理を代行することになった場合でも、本来の処理を放棄するものではなく、自身の担う本来の処理と両立させるものである。
図2(a)は、通信制御装置ECU1の構成を示し、図2(b)は、代行候補装置ECU2の構成を示している。その他の代行候補装置ECU3〜ECUmの構成は、ECU2と同様であるので、図示および説明を省略する。なお、通信制御装置および代行候補装置の各々は、図2に示す以外にも様々な機能を備えているが、ここでは、通信制御装置のデータ送信処理を代行候補装置に代行させる機能に係る構成要素のみを示している。
ECU1は、データ送受信実行/停止手段11、代行要求送信手段12、代行送信可否判定手段13、スリープ条件成立判定手段14、スリープ処理手段15、およびウェイク処理手段16を有している。データ送受信実行/停止手段11は、外部とのデータの送受信を実行すると共にスリープ状態や電源が遮断された場合には外部とのデータの送受信を停止する。なお、データ送受信実行/停止手段11がデータの送受信を停止する条件には、自身のスリープ処理や電源遮断等の他に、Partial NetworkingのようにECU1以外のECUからネットワーク6を介して送信されるスリープ要求があった場合も含まれる。
代行要求送信手段12は、自身が行うべきデータ送信処理を代行させる代行候補装置に対して代行要求を送信する。代行送信可否判定手段13は、代行候補装置ECU2〜ECUmの各々についてデータ送信処理を代行可能な状態か否かを判定する。スリープ条件成立判定手段14は、自身のスリープ条件が成立しているか否かを判定する。スリープ処理手段15は、スリープ条件成立判定手段14によりスリープ条件が成立していると判定され、データ送受信実行/停止手段11によりデータ送受信が停止された後に、スリープ状態となる処理を行う。ウェイク処理手段16は、スリープから復帰する処理を行う。
一方、ECU2は、ECU1が行うべきデータ送信処理の代行を実行する代行送信手段21を備え、ECU1から代行要求を受信した場合に、代行送信手段21によりデータ送信処理の代行を開始する。
次に、本実施の形態1に係る制御装置切替システム100におけるECU1およびECU2〜ECUmの動作について、図1を用いて説明する。ECU1は、自身のタイマ処理等によってスリープ条件が成立すると、データ送信処理を停止する前に、代行送信可否判定手段13により、代行候補装置ECU2〜ECUmの各々について、データ送信処理を代行可能な状態か否かの代行送信可否判定13aを行う(判定基準については後述する)。ECU1は、代行送信可否判定手段13による判定結果に基づいて、データ送信処理を代行させる代行候補装置を決定する。
代行させる代行候補装置(図1ではECU3)が決定すると、その旨を代行要求送信手段12に通知する。さらに、ECU1は、代行要求送信手段12からネットワーク6を介してECU3に代行要求12aを送信する。代行要求12aを送信したECU1は、データの送信を停止し、スリープモードに遷移する。ECU1から代行要求12aを受信したECU3は、代行装置として代行送信手段21によりデータ送信処理の代行を開始する。
なお、本実施の形態1において、ECU1の代行送信可否判定手段13は、代行候補装置ECU2〜ECUm各々の現在の処理負荷量、あるいは処理重要度、あるいは故障判定結果のいずれかを判定基準とし、ECU2〜ECUmがデータ送信処理を代行可能な状態か否かを判定する。なお、それらの判定基準を複数組み合わせて判定を行うようにしても良い。
ECU1の代行送信可否判定手段13が、ECU2〜ECUmの現在の処理負荷量に基づいて代行可否の判定を行う場合、ECU1は、図3に示すような代行可能処理負荷量テーブルを備えている。代行可能処理負荷量テーブルには、ECU2〜ECUm各々について、処理負荷量の上限に基づいて設定された可能処理量PLthが記憶されている。
一般に、ECUが搭載するマイクロコンピュータ(以下マイコンと略す)において、割込み処理が多いマイコンは、割込みがない状態での処理負荷量に余裕をもって使用されるが、割込みが多い状態では処理負荷量は100%近くまで達する。各ECUによって割込みの数は異なるため、その数を考慮しながら上記の指標に則って処理負荷量の上限を設定する。また、各マイコンの処理負荷量の上限としてマージンを含む設計をしている場合には、そのマージンを代行に使うようにしても良い。
ECU1の代行送信可否判定手段13は、ECU2〜ECUmの現在の処理負荷量をネットワーク6経由で取得し、代行可能処理負荷量テーブルを参照して、代行させるECUを決定する。これにより、処理負荷が高いECUに代行させることを防止し、代行装置となったECUの本来の処理と代行処理が、本来の制御周期を超過しないようにすることができる。
本実施の形態1に係る制御装置切替システム100において、ECU1の代行送信可否判定手段13が代行候補装置であるECU2〜ECUmの処理負荷量に基づいて、代行装置を決定するまでの処理の流れについて、図4のフローチャートを用いて説明する。なお、以下に示す全てのフローチャートにおいて、同じステップ番号は同じ処理を示し、説明を省略する。
まず、ステップ10(S10)において、ECU1は、スリープ条件成立判定手段14によりスリープ条件が成立しているか否かを判定する。S10でスリープ条件が成立していない場合(NO)、代行に関する処理を行わない。S10でスリープ条件が成立している場合(YES)、代行送信可否判定手段13に通知し、ステップ20(S20)に進む。
S20において、ECU1の代行送信可否判定手段13は、ECU2の処理負荷量を取得し、代行可能処理負荷テーブル(図3)の値と比較する。ECU1が取得したECU2の現在の処理負荷量が、代行可能処理負荷テーブルの代行可能処理負荷量PLth2(60%)を超えていない場合(YES)、ECU1の代行送信可否判定手段13は、ECU2が代行可能であると判定し、ステップ30(S30)において、ECU1の代行要求送信手段12は、ECU2に対して代行要求を送信する。
一方、S20において、ECU2の処理負荷量がECU2の代行可能処理負荷量PLth2を超えていた場合(NO)、ECU1の代行送信可否判定手段13は、ECU2が代行不可であると判定し、ステップ201(S201)に進む。S201では、ECU3の現在の処理負荷量を取得し、代行可能処理負荷テーブルの代行可能処理負荷量PLth3(40%)以下であるかどうかを判定する。
S201において、ECU3の処理負荷量がECU3の代行可能処理負荷量PLth3を超えていない場合(YES)、ECU1の代行送信可否判定手段13はECU3が代行可能であると判定し、ステップ202(S202)において、ECU1の代行要求送信手段12は、ECU3に対して代行要求を送信する。
一方、S201において、ECU3の処理負荷量がECU3の代行可能処理負荷量PLth3を超えていた場合(NO)、ECU1の代行送信可否判定手段13は、ECU3が代行不可であると判定し、別の代行候補装置ECU4〜ECUmに対して順次同様の判定を行う。最終的には、ステップ203(S203)において、ECU1は、いずれかの代行候補装置ECUmに代行指令を送信する。
続いて、ステップ40(S40)において、ECU1は、データ送受信実行/停止手段11を用いて送受信を停止し、スリープ処理手段15によりスリープ処理を開始する。その後、ステップ50(S50)において、代行装置に決定したECUは、代行送信手段21により、ECU1の行うべきデータ送信処理の代行を開始する。
また、ECU1の代行送信可否判定手段13が、ECU2〜ECUmの処理重要度に基づいて代行可否の判定を行う場合、ECU1は、図5に示すような代行可能処理重要度テーブルを備えている。代行可能処理重要度テーブルには、ECU2〜ECUm各々について、処理重要度PIの最高値が記憶されている。
処理重要度は、ECU2〜ECUmが実行する処理の重要度であり、例えば前回値からほとんど変化がないと推察されるセンサ値等の周期検出処理を実行中の時は、処理重要度は低く、例えば「1」と設定される。また、ハードウェア割込み等の実行強制力のある処理を実行中の時は、処理重要度は高く、例えば「10」と設定される。処理重要度が高いほど中断することは好ましくなく、他の処理を行い難い。
代行可能処理重要度テーブルには、各ECUが代行可能な処理重要度の最高値が記憶されており、現在の処理内容がその値以下の時には代行可能であると判断される。ECU1の代行送信可否判定手段13は、ECU2〜ECUmが現在実施している処理の重要度をネットワーク6経由で取得し、代行可能処理重要度テーブルを参照して、代行させるECUを決定する。これにより、重要度の高い処理が中断されることを防止することができる。
図6は、制御装置切替システム100において、ECU1の代行送信可否判定手段13が代行候補装置であるECU2〜ECUmの処理重要度に基づいて、代行装置を決定するまでの処理の流れを示すフローチャートである。ステップ21(S21)において、ECU1の代行送信可否判定手段13は、ECU2の処理重要度を取得し、代行可能処理重要度テーブル(図5)の値と比較する。ECU1が取得したECU2の処理重要度が代行可能処理重要度テーブルの代行可能処理重要度PIth2を超えていない場合(YES)、ECU1の代行送信可否判定手段13は、ECU2が代行可能であると判定し、S30に進む。
一方、S21において、ECU2の処理重要度が代行可能処理重要度PIth2を超えていた場合(NO)、ECU1の代行送信可否判定手段13は、ECU2が代行不可であると判定し、ステップ211(S211)に進む。S211では、ECU3の処理重要度を取得し、代行可能処理重要度テーブルの代行可能処理重要度PIth3以下であるかどうかを判定する。S211において、ECU3の処理重要度がECU3の代行可能処理重要度PIth3を超えていない場合(YES)、ECU1の代行送信可否判定手段13はECU3が代行可能であると判定し、ステップ212(S212)においてECU1の代行要求送信手段12は、ECU3に対して代行要求を送信する。
一方、S211において、ECU3の処理重要度がECU3の代行可能処理重要度PIth3を超えていた場合(NO)、ECU1の代行送信可否判定手段13は、ECU3が代行不可であると判定し、別の代行候補装置ECU4〜ECUmに対して順次同様の判定を行っていく。最終的には、ステップ213(S213)において、ECU1は、代行候補装置ECUmに代行指令を送信する。以下の処理については図4と同様であるので説明を省略する。
また、図7は、本実施の形態1に係る制御装置切替システム100において、ECU1の代行送信可否判定手段13が代行候補装置ECU2〜ECUmの故障判定結果に基づいて、代行装置を決定するまでの処理の流れを示すフローチャートである。ステップ22(S22)において、ECU1の代行送信可否判定手段13は、ECU2の故障判定結果をネットワーク6経由で取得する。ECU2の故障判定結果が「故障無し」であった場合(YES)、ECU1の代行送信可否判定手段13は、ECU2が代行可能であると判定し、S30に進む。
一方、S22において、ECU2の故障判定結果が「故障有り」であった場合(NO)、ECU1の代行送信可否判定手段13は、ECU2が代行不可であると判定し、ステップ221(S221)に進む。S221では、ECU3の故障判定結果を取得し、これが「故障無し」であった場合(YES)、ECU1の代行送信可否判定手段13はECU3が代行可能であると判定し、ステップ222(S222)において、ECU1の代行要求送信手段12は、ECU3に対して代行要求を送信する。
一方、S221において、ECU3の故障判定結果が「故障有り」であった場合(NO)、ECU1の代行送信可否判定手段13は、ECU3が代行不可であると判定し、別の代行候補装置ECU4〜ECUmに対して順次同様の判定を行っていく。最終的には、ステップ223(S223)において、ECU1は、いずれかの代行候補装置ECUmに代行指令を送信する。以下の処理については図4と同様であるので説明を省略する。
さらに、ECU1の代行送信可否判定手段13は、ECU2〜ECUmがデータ送信処理を代行可能な状態か否かを判定する際に、各々のECUの処理重要度を参照し、処理重要度が低いECUから順に判定を行うようにしても良い。すなわち、重要度の高い処理を行っているECUには本来の処理を優先させ、重要度の低い処理を実施しているECUに代行させようとするものである。
図8は、代行候補装置である各ECUの処理重要度の一例を示している。代行送信可否判定手段13は、図8に示すような各ECUの処理重要度を記憶したテーブルを備えており、代行候補装置であるECU2〜ECUmに対して代行可能な状態か否かを判定する順番を、各ECUの処理重要度に基づいて決定する。
車両走行中においては、走行に関する駆動系、事故防止等に必要となる安全系ECUの処理重要度が高くなる。ここで、ECU5をシート調整、ライト調整等に関わるボディ系ECU、ECU4をナビゲーション装置またはスマートフォン連携等に係る情報系ECU、ECU3をADAS(Advanced Driving Assistant System)、エアバッグ等に関わる安全系ECU、ECU2をモータおよびエンジンに係る駆動系ECUとした時、その重要度は図8に示す順となる。
一方、車両停止中においては、ボディ系のライトやキーレスエントリー等が使われることが予想されるため、ボディ系ECUであるECU5の重要度が高くなる。つまり、停止中においては、ECU5の重要度が上がり、駆動系ECUであるECU2の重要度が下がる。
図9は、本実施の形態1に係る制御装置切替システム100において、ECU1の代行送信可否判定手段13がECU2〜ECUmの処理重要度に基づいて、代行装置を決定するまでの処理の流れを示すフローチャートである。図9では、車両走行中を想定しており、各ECUの処理重要度は図8に示す通りである。
ステップ23(S23)において、ECU1の代行送信可否判定手段13は、処理重要度の最も低いECU5に対して、代行可能な状態か否かを判定する。この時の判定基準としては、前述のECU5の処理負荷量や処理重要度、故障判定結果等が用いられる。S23において、ECU5が代行可能であると判定した場合(YES)、ステップ31(S31)に進み、ECU1の代行要求送信手段12はECU5に対して代行要求を送信する。
一方、S23において、ECU5が代行不可であると判定した場合(NO)、ステップ231(S231)に進み、次に処理重要度の低いECU4に対して代行可能な状態か否かを判定する。S231において、ECU4が代行可能であると判定した場合(YES)、ステップ232(S232)に進み、代行要求送信手段12はECU4に対して代行要求を送信する。S231において、ECU4が代行不可であると判定した場合は、次に処理重要度の低いECU3に対して同様の判定を行い、最終的には、ステップ233(S233)において、ECU1は、最も処理重要度の高いECU2に代行指令を送信する。
このように、代行送信可否判定手段13がECU2〜ECUmの処理重要度を考慮して代行可否判定を行うことにより、走行中に重要度の高い駆動系ECUや安全系ECUに代行させることを防止し、車両の動作を安定化させることができる。また、走行中と停止中で代行送信可否判定手段13による判定の順番を変更することにより、ECU2〜ECUm各々がシーン別に所望の動作を実行することが可能となる。
以上のように、本実施の形態1に係る制御装置切替システム100によれば、通信制御装置ECU1がスリープ状態や電源オフ状態になる前に、代行候補装置ECU2〜ECUmの中から、代行送信可否判定手段13により代行可能であると判定されたECUに対して代行要求を送信するようにしたので、ECU1が行うべきデータ送信処理を確実に代行させることができる。
さらに、ECU1の代行送信可否判定手段13がECU2〜ECUmの中から代行装置を決定する際の判定基準として、各ECUの代行可能処理負荷量、代行可能処理重要度、または故障判定結果を用い、さらに、走行中あるいは停止中における各ECUの処理重要度を考慮した順番で判定を行うことにより、ネットワーク6の異常や車両の挙動異常の発生を防止することができる。
実施の形態2.
図10は、本発明の実施の形態2に係る制御装置切替システム100Aの構成を示している。また、図11は、本実施の形態2における代行候補装置ECU2の構成を示している。なお、本実施の形態2における通信制御装置ECU1の構成は、上記実施の形態1と同様であるので図2(a)を流用する。
制御装置切替システム100Aにおいて、代行候補装置ECU2〜ECUmは、第2の代行要求送信手段である代行要求送信手段22と、第2の代行送信可否判定手段である代行送信可否判定手段23を備えている。代行要求送信手段22は、データ送信処理を代行させる自身以外の代行候補装置に対して代行要求を送信する。また、代行送信可否判定手段23は、自身および自身以外の代行候補装置について、データ送信処理を代行可能な状態か否かを判定する。
本実施の形態2に係る制御装置切替システム100AにおけるECU1およびECU2〜ECUmの動作について、図10を用いて説明する。スリープ条件が成立したECU1から代行要求12aを受信したECU2は、データ送信処理の代行を開始した後、自身の代行送信可否判定手段23により、自身がデータ送信処理を代行可能な状態か否かを判定する。なお、代行送信可否判定手段23による判定基準としては、上記実施の形態1と同様に、各ECUの代行可能処理負荷量や代行可能処理重要度が用いられる。
自身が代行可能な状態ではないと判定した場合、自身以外の代行候補装置(ここではECU3)に対し、代行送信可否判定手段23により代行可否判定23aを行う。ECU3が代行可能であると判定されると、ECU2の代行要求送信手段22はECU3に代行要求22aを送信する。ECU2から代行要求22aを受けたECU3は、次の代行装置としてデータ送信処理の代行を開始する。
図12は、制御装置切替システム100Aにおいて、代行装置ECU2の代行送信可否判定手段23が、他の代行候補装置ECU3〜ECUmの処理負荷量に基づいて、次の代行装置を決定するまでの処理の流れを示すフローチャートである。なお、図12において、代行送信可否判定手段23が参照する代行可能処理負荷量テーブルは、上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する(図3参照)。
ステップ11(S11)において、代行装置ECU2は、通信制御装置ECU1の代行を開始する。続いてステップ24(S24)において、ECU2の代行送信可否判定手段23は、自身の処理負荷量PLth2を取得し、その値が代行可能処理負荷テーブルの代行可能処理負荷量PLth2を超えていない場合(YES)、そのまま代行を継続する。
一方、S24において、ECU2の処理負荷量が代行可能処理負荷量を超えていた場合(NO)、ECU2の代行送信可否判定手段23は、代行の継続が不可であると判定し、ステップ241(S241)に進む。S241では、ECU2の代行送信可否判定手段23は、ECU3の処理負荷量を取得し、その値が代行可能処理負荷テーブルの代行可能処理負荷量PLth3を超えていない場合(YES)、ECU3が代行可能であると判定し、その旨を代行要求送信手段22に通知する。
続いてステップ242(S242)において、ECU2の代行要求送信手段22は、ECU3に対して代行要求22aを送信する。その後、ステップ243(S243)でECU2は代行を停止し、ステップ244(S244)でECU3が代行を開始する。
一方、S241において、ECU3の処理負荷量が代行可能処理負荷量PLth3を超えていた場合(NO)、ECU2の代行送信可否判定手段23は、ECU3が代行不可であると判定し、別の代行候補装置ECU4〜ECUmに対して順次同様の判定を行っていく。最終的には、ステップ245(S245)において、ECU2は、代行候補装置ECUmに代行指令を送信し、ステップ246(S246)でECU2は代行を停止し、ステップ247(S247)でECUmが代行を開始する。
また、図13は、制御装置切替システム100Aにおいて、代行装置ECU2の代行送信可否判定手段23が、他の代行候補装置ECU3〜ECUmの処理重要度に基づいて、次の代行装置を決定するまでの処理の流れを示すフローチャートである。なお、図13において代行送信可否判定手段23が参照する代行可能処理重要度テーブルは、上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する(図6参照)。
S11においてECU1の代行を開始したECU2は、ステップ25(S25)において、ECU2の代行送信可否判定手段23は、自身の処理重要度PIth2を取得し、その値が代行可能処理重要度テーブルの代行可能処理重要度PIth2を超えていない場合(YES)、そのまま代行送信を継続する。
一方、S25において、ECU2の処理重要度が代行可能処理重要度を超えていた場合(NO)、ECU2の代行送信可否判定手段23は、代行送信の継続が不可であると判断し、ステップ251(S251)に進む。S251では、ECU2の代行送信可否判定手段23は、ECU3の処理重要度を取得し、その値が代行可能処理重要度テーブルの代行可能処理重要度PIth3を超えていない場合(YES)、ECU3が代行可能であると判定し、その旨を代行要求送信手段22に通知する。
一方、S251において、ECU3の処理重要度が代行可能処理重要度PIth3を超えていた場合(NO)、ECU2の代行送信可否判定手段23は、ECU3が代行不可であると判定する。以降のS252〜S257については、図12のS242〜S247と同様であるので説明を省略する。
また、図14は、本実施の形態2に係わる制御装置切替システムの他の構成を示している。図14に示す制御装置切替システム100Bでは、代行候補装置ECU2〜ECUmのうち、少なくとも1つ(図14ではECUm)を監視制御装置とし、この監視制御装置により、通信制御装置ECU1および代行候補装置ECU2〜ECU(m−1)の故障を検出するものである。
監視制御装置は、少なくとも、故障判定手段と、代行送信継続判定手段と、第3の代行要求送信手段(いずれも図示省略)を有している。故障判定手段は、ECU1およびECU2〜ECU(m−1)の故障の有無を故障判定(図14中、23bで示す)する。代行送信継続判定手段は、データ送信処理を代行している代行候補装置(図14ではECU2)について代行の継続が可能か否かを故障判定手段の判定結果に基づいて判定する。第3の代行要求送信手段は、故障判定手段により故障が無いと判定された代行候補装置(図14ではECU3)に対してデータ送信処理の代行要求22bを送信する。
図15は、制御装置切替システム100Bにおいて、監視制御装置ECUmによる故障判定結果に基づいて次の代行装置を決定するまでの処理の流れを示すフローチャートである。ステップ26(S26)において、監視制御装置ECUmの故障判定手段は、代行装置ECU2の故障の有無を判定し、故障が無いと判定した場合(YES)、ECUmの代行送信継続判定手段はECU2による代行の継続が可能であると判定し、ECU2はそのまま代行送信を継続する。
一方、S26において、ECU2に故障が有ると判定された場合(NO)、ECUmの代行送信継続判定手段はECU2による代行の継続が不可であると判定し、ステップ261(S261)に進む。S261では、ECUmの故障判定手段がECU3の故障の有無を判定し、故障が無いと判定した場合(YES)、ステップ262(S262)において、ECUmの第3の代行要求送信手段は、ECU3に対して代行要求22bを送信する。その後、ステップ263(S243)でECU2は代行を停止し、ステップ264(S264)でECU3が代行を開始する。
一方、S261において、ECU3に故障が有ると判定された場合(NO)、ECUmは、次の代行候補装置ECU4〜ECU(m−1)に対して順次同様の故障判定を行っていく。最終的には、ステップ265(S265)において、ECUmは、代行候補装置ECU(m−1)に代行指令を送信し、ステップ266(S266)でECU2は代行を停止し、ステップ267(S267)でECU(m−1)が代行を開始する。
本実施の形態2に係わる制御装置切替システム100Aによれば、上記実施の形態1と同様の効果に加え、代行候補装置ECU2〜ECUmの各々が代行要求送信手段22と代行送信可否判定手段23を備えているので、代行装置がデータ送信処理の代行を継続することができなくなった場合に、スリープ状態のECU1を介さずに、次の代行装置を決定することができ、システムの信頼性が向上する。さらに、監視制御装置ECUmを備え、ECU2〜ECU(m−1)の故障を検出することにより、代行装置の故障を早期に検出することができると共に、故障が有る代行候補装置に代行させることを防止することができる。
実施の形態3.
図16は、本発明の実施の形態3に係る制御装置切替システム100Cの構成を示している。また、図17(a)は、通信制御装置ECU1の構成を示し、図17(b)は、代行候補装置ECU2の構成を示している。その他の代行候補装置ECU3〜ECUmの構成は、ECU2と同様であるので、図示および説明を省略する。
本実施の形態3における通信制御装置ECU1は、データ送受信実行/停止手段11、代行要求送信手段12、スリープ条件成立判定手段14、スリープ処理手段15、およびウェイク処理手段16を有している。また、ECU2〜ECUmから送信された代行要求送信手段23Aによる判定結果を一時的に蓄積する一時記憶装置7(図18)を備えている。一方、実施の形態1および実施の形態2におけるECU1が備えていた代行送信可否判定手段13を備えていない。
代行要求送信手段12は、ECU1がデータ送信処理を停止する前に全ての代行候補装置ECU2〜ECUmに対して一斉に仮代行要求を送信すると共に、データ送信処理を代行させる代行候補装置(図16ではECU2)に対して本代行要求を送信する。
また、本実施の形態3における代行候補装置ECU2は、代行送信手段21と、第3の代行要求送信手段である代行要求送信手段22Aと、第3の代行送信可否判定手段である代行送信可否判定手段23Aを備えている。代行送信可否判定手段23Aは、ECU1からの仮代行要求を受信した場合に自身がデータ送信処理を代行可能な状態か否かを判定する。代行要求送信手段22Aは、データ送信処理を代行させる自身以外の代行候補装置に対して代行要求を送信する。代行送信手段21は、ECU1からの本代行要求を受信した場合にデータ送信処理の代行を実行する。
本実施の形態3に係る制御装置切替システム100CにおけるECU1およびECU2〜ECUmの動作について、図16を用いて説明する。ECU1は、自身のタイマ処理等によってスリープ条件が成立すると、データ送信処理を停止する前に、代行要求送信手段12により、全ての代行候補装置ECU2〜ECUmに対して一斉に仮代行要求12aを送信する。
ECU1からの仮代行要求12aを受信したECU2〜ECUmは、代行送信可否判定手段23Aにより、自身がデータ送信処理を代行可能な状態か否かを判定し、代行可能であると判定された場合、その判定結果23cをECU1に送信する。なお、代行送信可否判定手段23Aによる判定基準としては、上記実施の形態1と同様に、各ECUの代行可能処理負荷量や代行可能処理重要度が用いられる。ECU1は、ECU2〜ECUmから送信された判定結果を一時記憶装置7に記憶する。
ECU1は、ECU2〜ECUmから送信された判定結果23cに基づいてデータ送信処理を代行させる代行候補装置を決定し(図16ではECU2)、ECU2に対して代行要求送信手段12から本代行要求12bを送信する。ECU2の代行送信手段21は、ECU1からの本代行要求12bを受信し、データ送信処理の代行を開始する。
なお、一時記憶装置7には、図18に示すような代行可能ECUキューが用いられる。代行可能ECUキューは、代行可能なECU2〜ECUmが自身の識別情報を登録するリストである。なお、代行可能ECUキューは、ECU1だけでなくECU2〜ECUmが共有するようにしても良い。これにより、上記実施の形態2に係わる制御装置切替システム100Aにおいて、代行装置が次の代行装置を決定する際に代行可能ECUキューを用いることができる。
また、代行可能ECUキューは、代行送信可否判定手段23Aによる判定の結果、代行可能であると判定された代行候補装置を、処理重要度の低いものから順に蓄積する優先度付きキューである。図18では、ECU2、ECU4・・の順に処理重要度が低いことになる。ECU1の代行要求送信手段12は、代行可能ECUキューに蓄積された順に本代行要求12bを送信する。このように、処理重要度の低いECUからキューに格納し、その順に本代行要求12bを送信することにより、処理重要度の低いECUを代行装置として選択するようにし、重要度の高い処理を行うECUを代行装置にする可能性を小さくする。
図19は、本発明の実施の形態3に係る制御装置切替システム100Cにおいて、ECU1がECU2〜ECUmの中から代行装置を決定する処理の流れを示すフローチャートである。まず、S10において、ECU1のスリープ条件が成立すると(YES)、ステップ32(S32)において、ECU1の代行要求送信手段12は、ECU2〜ECUmに対して仮代行要求12aを一斉送信する。
続いてステップ33(S33)において、仮代行要求12aを受信したECU2〜ECUmは、自身の代行送信可否判定手段23Aにより代行可能な状態であるか否かを判定し、代行可能であると判定されたECUは、自身の識別番号を代行可能ECUキューに登録する。ステップ34(S34)において、ECU1は代行可能ECUキューを参照し、キューに蓄積が有るか否かを判断する。
S34において蓄積がある場合(YES)は、ステップ35(S35)に進み、ECU1の代行要求送信手段12は、代行可能ECUキューに一番目に蓄積されたECU2に本代行要求12bを送信すると共に、スリープ処理手段15に通知しスリープを開始する。続いてステップ36(S36)においてECU2が代行を開始し、ステップ37(S37)に進む。一方、S34において蓄積がない場合(NO)、ステップ341(S341)に進み、蓄積が有るまで待ち、蓄積無しが10回以上となった場合(YES)は、代行させるECUがないものとして代行させない。
S37において、代行装置であるECU2は、自身の代行送信可否判定手段23Aにより代行可能な状態であるか否かを判定し、代行可能であると判定された場合(YES)、そのまま代行を継続する。一方、代行不可であると判定された場合(NO)、ステップ38(S38)に進み、代行可能ECUキューを参照する。
S38において、キューに蓄積が有る場合(YES)、ECU2の代行要求送信手段22Aは、代行可能ECUキューに蓄積されたECU4に代行要求を送信する。続いてステップ39(S39)において、代行要求を受信したECU4が代行を開始すると共に、ECU2は代行を停止する。一方、S38において蓄積がない場合(NO)、S37、S38を繰り返し、代行可能なECUがキューに登録するのを待つ。
なお、図19では、S341において、キューを確認する回数を10回までとしているが、ECU1のスリープ条件成立時において、マイコンのリアルタイム性が保証される時間内であれば、11回目以降もキューの確認を実施することができる。また、本実施の形態3では、代行可能ECUキューとして、ECUの処理重要度が低い順に蓄積する優先度付きキューとしたが、単に登録された順に蓄積するものを用いることもできる。
本実施の形態3によれば、通信制御装置ECU1がスリープ状態や電源オフ状態になる前に、全ての代行候補装置ECU2〜ECUmに対して一斉に仮代行要求12aを送信し、代行送信可否判定手段23Aにより代行可能であると判定された代行候補装置に対して本代行要求12bを送信するようにしたので、通信制御装置が行うべきデータ送信処理を確実に代行させることができる。
また、ECU1に特別な代行送信可否判定手段を実装する必要がなく、ECU1による処理数を少なくできるため、スリープ条件成立からスリープ状態に入るための時間を短くすることができる。また、ECU2〜ECUm各々による代行可否判定結果を記憶する一時記憶装置7として、処理重要度の低いECUから順に蓄積する優先度付きキューを用いることにより、重要度の高い処理を行うECUが代行装置となる可能性が小さくなり、車両の動作に異常を与える可能性が軽減される。
実施の形態4.
図20は、本発明の実施の形態4における代行候補装置ECU2の構成を示している。その他の代行候補装置ECU3〜ECUmの構成は、ECU2と同様であるので、図示および説明を省略する。なお、本実施の形態4における通信制御装置ECU1の構成は、上記実施の形態1と同様であるので図2(a)を流用する。
本実施の形態4における代行候補装置ECU2〜ECUmは、所定時刻における通信制御装置ECU1からの受信データとその時の自身の内部変数を蓄積する記憶手段である記憶装置24と、該所定時刻における代行候補装置の内部変数と受信データとを比較して、該代行候補装置がデータ送信処理を代行する際の送信データを導出する代行データ導出手段25を備えている。
記憶装置24は、通信制御装置ECU1がスリープによって送受信を停止するまでデータの記憶を行う。記憶装置24に記憶されるデータは、ECU1からの受信データと、その時自身がもつグローバル変数等の内部変数のデータである。記憶する周期等は、代行候補装置ECU2〜ECUm各々の処理負荷の余裕度等から決定される。代行データ導出手段25は、記憶装置24が蓄積したデータから、対応するECU1の受信データの履歴とグローバル変数の相関を導出し、この相関に従って自身が代行する送信データを決定する。これにより、代行候補装置により代行される送信データは、ECU1により送信されていたデータに適合したものとなる。
図21は、代行装置ECU3の記憶装置24に記憶されるテーブルであり、(a)は通常時のECU1からの受信データとその時のECU3の内部変数B、(b)は代行時のECU3による送信データとその時のECU3の内部変数Bを示している。通常時、ECU3は、所定時刻におけるECU1からの受信データ(ECU1シグナルA)と、その時のECU3の内部変数Bを記憶し、変数Bに対応したシグナルAのテーブルを作成する。代行時には、代行データ導出手段25は、ECU1からの受信データとその時の自身の内部変数に基づいて、代行装置から送信する送信データ(ECU3シグナルA)を導出する。
具体的には、図21(a)に示すように、時刻t1ではECU1のシグナルはA1、ECU3の変数BはB1であり、時刻t2ではECU1のシグナルはA2、ECU3の変数BはB2、時刻t3ではECU1のシグナルはA3、ECU3の変数BはB3・・・となっている。ここで、ECU1のシグナルAとECU3の変数Bが1対1の関係である場合、代行時にECU3が送信するデータのシグナルは図21(b)のようになる。すなわち、時刻tnにおいてECU3の変数BがB3であった場合、ECU3が代行する送信データのシグナルはA3となり、時刻tn+1においてECU3の変数BがB1であった場合、ECU3が代行する送信データのシグナルはA1となる。
なお、図21に示す例では、ECU3が出力すべきデータと対応するECU1の出力データの履歴と、その時のECUの内部変数とが1対1の関係である場合について例を挙げて説明したが、代行データ導出手段25によるデータ導出方法はこれに限定されるものではなく、両データに相関がとれるような手段であればよい。例えば、変数Bに対するシグナルAの値が逐次異なる場合は、或る変数B1に対応するシグナルAの値を平均する手法や統計手法等を用いてもよい。
本実施の形態4によれば、代行候補装置ECU2〜ECUmが代行データ導出手段25を備えることにより、代行装置は、通信制御装置ECU1が本来送信すべきデータに近い値を出力することができ、他のECUが該データを受信する際に、データが所定範囲で変動するようになるため、ネットワーク異常として検出されにくい。また、該データを用いて演算等の処理を行うECUがある場合、それらの演算結果に与える影響を小さくすることができる。
実施の形態5.
図22は、本発明の実施の形態5における代行候補装置ECU2の構成を示している。その他の代行候補装置ECU3〜ECUmの構成は、ECU2と同様であるので、図示および説明を省略する。なお、本実施の形態5における通信制御装置ECU1の構成は、上記実施の形態1と同様であるので図2(a)を流用する。
本実施の形態5における代行候補装置ECU2〜ECUmは、所定時刻において送信不要なデータを判定する不要データ判定手段(図示省略)と、該代行候補装置がデータ送信処理を代行する際に不要データ判定手段による判定結果に基づいて送信データを間引きし送信データの内容を調整するデータ調整手段26とを備えている。
図23は、通信制御装置ECU1と代行装置ECU3のデータ送信処理に関し、ECU1のスリープ条件成立前後における変化を示すタイムチャートである。図23において、横軸は時間を示し、時刻t1は、ECU1のスリープ条件成立時を示している。また、「送1」は、ECU1以外のECU向けのデータ送信処理、「送2」は、ECU1向けのデータ送信処理、「送3」は、ECU3以外のECU向けのデータ送信処理である。
時刻t1においてECU1のスリープ条件が成立すると、代行要求を受信し代行装置となったECU3の不要データ判定手段は、ECU1に向けてのデータ送信処理、図23では「送2」は、不要であると判定する。ECU3のデータ調整手段26は、ECU1から代行要求を受信した後、不要データ判定手段による判定結果に基づいて「送2」を停止し、ECU1が本来行うべき「送1」を削減した送信データ部に割り当てる。
このようなデータ調整手段26による送信データの削減および割り当て機能により、ECU2〜ECUmがECU1から受信するデータ量(代行装置が送信すべきデータ量)が、ECU2〜ECUmからECU1に向けて送信されるデータ量以下である場合は、ECU1がスリープする前後でECU2〜ECUmが代行装置となった時に送信するデータ量は、変化無しまたは減少することになる。
本実施の形態5によれば、代行候補装置ECU2〜ECUmがデータ調整手段26を備えることにより、代行装置の制御周期に影響を与えることなく、通信制御装置ECU1のデータ送信処理を代行することが可能である。これにより、代行装置の処理負荷の増加を抑えることができ、代行装置の処理負荷が所定の制御周期内に収まらずシステムのリアルタイム性を失うような事態を防止することができる。
実施の形態6.
図24は、本発明の実施の形態6における代行候補装置ECU2の構成を示している。その他の代行候補装置ECU3〜ECUmの構成は、ECU2と同様であるので、図示および説明を省略する。なお、本実施の形態6における通信制御装置ECU1の構成は、上記実施の形態1と同様であるので図2(a)を流用する。
本実施の形態6における代行候補装置ECU2〜ECUmは、自身の制御周期を調整する制御周期調整手段27を備え、ECU1から代行要求を受信した際に、制御周期調整手段27により自身の制御周期を平常時よりも長くするものである。
図25は、通信制御装置ECU1と代行装置ECU3のデータ送信処理に関し、ECU1のスリープ条件成立前後における変化を示すタイムチャートである。図25において、横軸は時間を示し、時刻t1は、ECU1のスリープ条件成立時を示している。また、「送1」は、ECU1以外のECU向けのデータ送信処理、「送3」は、ECU3以外のECU向けのデータ送信処理であり、ここではECU1の代行装置として割り当てられたデータ送信処理である。
時刻t1においてECU1のスリープ条件が成立すると、代行要求を受信し代行装置となったECU3の制御周期調整手段27は、自身の制御周期を平常時の処理周期1よりも長い処理周期2に変更する。その際、制御周期2は、ECU3の通常時の演算処理に加えてECU1が行うべきデータ送信処理の代行を行えるように設定される。これにより、ECU1が本来行うべきデータ送信処理を代行する場合でも、制御周期2内に処理を完了させることができる。
本実施の形態6によれば、代行候補装置ECU2〜ECUmが制御周期調整手段27を備えることにより、代行装置となった際に制御周期を長くすることができるため、代行を開始しても制御周期内に自身の本来行うべき演算処理と代行装置としてのデータ送信処理とを完了させることができる。また、処理負荷に余裕がある場合は、制御周期を長くすることにより、制御周期内のアイドル時間が増加するため、消費電力を削減することができる。
実施の形態7.
図26は、本発明の実施の形態7における代行候補装置ECU2の構成を示している。その他の代行候補装置ECU3〜ECUmの構成は、ECU2と同様であるので、図示および説明を省略する。なお、本実施の形態7における通信制御装置ECU1の構成は、上記実施の形態1と同様であるので図2(a)を流用する。
本実施の形態7における代行候補装置ECU2〜ECUmは、ECU1がスリープ状態になることを検出した際に、自身の動作クロック周波数を調整するクロック周波数調整手段28を備えている。代行候補装置は、ECU1から代行要求を受信した際に、クロック周波数調整手段28により自身のクロック周波数を通常時よりも低下させる。
図27は、代行装置ECU3のデータ送信処理に関し、ECU1のスリープ条件成立前後における変化を示すタイムチャートである。図27において、横軸は時間を示し、時刻t1は、ECU1のスリープ条件成立時を示している。また、「送3」は、ECU3以外のECU向けのデータ送信処理であり、ここではECU1の代行装置として割り当てられたデータ送信処理である。
時刻t1においてECU1のスリープ条件が成立すると、代行要求を受信し代行装置となったECU3のクロック周波数調整手段28は、時刻t1以前よりもクロック周波数を通常時よりも低く例えば半分にする。クロック周波数を低くすることにより、処理に要する時間が長くなる。ECU3のクロック周波数を低くする際には、通常の処理周期1内に、ECU3の通常時の演算処理に加えてECU1が行うべきデータ送信処理の代行を行えるようにクロック周波数を設定する。
本実施の形態7によれば、代行候補装置ECU2〜ECUmがクロック周波数調整手段28を備えることにより、代行装置となった際にアイドル時間の減少により消費電力が増加するのに対し、クロック周波数の低減による消費電力の削減を行い、全体的な消費電力増加を抑制することができる。
実施の形態8.
図28は、本発明の実施の形態8における代行候補装置ECU2の構成を示している。その他の代行候補装置ECU3〜ECUmの構成は、ECU2と同様であるので、図示および説明を省略する。なお、本実施の形態8における通信制御装置ECU1の構成は、上記実施の形態1と同様であるので図2(a)を流用する。
本実施の形態8における代行候補装置ECU2〜ECUmは、データ同期手段29を備えており、ECU1から代行要求を受信した際に、次のデータ送信制御周期においてデータ送信処理を開始することができる。
図29は、通信制御装置ECU1と代行装置ECU3のデータ送受信信号に関し、ECU1のスリープ条件成立前後における変化を示すタイムチャートである。図29において、横軸は時間を示し、時刻t1は、ECU1のスリープ条件成立時を示している。
時刻t1においてECU1のスリープ条件が成立すると、ECU3は、t1の後の時刻t2における受信周期(s1)で代行要求を受信する。代行要求の受信により代行装置となったECU3のデータ同期手段29は、受信周期(s1)の直後の時刻t3における送信周期(s2)で代行を開始する。すなわち、代行要求を受信した後、1回目の送信周期でECU1の代行としてのデータ送信処理を行うものである。
本実施の形態8によれば、代行候補装置ECU2〜ECUmがデータ同期手段29を備えることにより、通信制御装置の通信の停止から代行装置による代行開始までの時間を短くすることができ、ネットワーク異常として検出されることを防止することができる。
実施の形態9.
図30は、本発明の実施の形態9における通信制御装置ECU1の構成を示している。また、本実施の形態9における代行候補装置ECU2〜ECUmの構成は、上記実施の形態8と同様であるので、図示および説明を省略する。
本実施の形態9における通信制御装置ECU1は、代行装置に対しデータ送信処理を停止させる代行停止要求送信手段17を備えている。ECU1は、スリープ状態から復帰しデータ送信処理を再開する際に、代行停止要求送信手段17により代行装置に対して代行停止要求を送信する。代行停止要求を受信した代行装置は、データ送信処理を停止する。
図31は、本実施の形態9に係る制御装置切替システムのECU1が、代行装置ECU3に代行を停止させる際の処理の流れを示すフローチャートである。ステップ12(S12)において、スリープ状態にあるECU1がスリープ状態から解除され、データ送信処理が可能となる条件が成立した場合(YES)、ステップ121(S121)に進み、ECU1の代行停止要求送信手段17は、ECU3の代行送信手段21に代行停止要求を送信する。
続いてステップ122(S122)において、ECU1は、データ送受信実行/停止手段11によりデータの送受信を再開し、ステップ123(S123)においてECU3の代行送信手段21は、代行停止要求に応じて代行しているデータ送信を停止する。
本実施の形態9によれば、通信制御装置ECU1が代行停止要求送信手段17を備えることにより、ECU1がデータ送信処理を再開する際に代行装置による代行を停止することができ、ECU1が送信するデータを代行装置が上書きすることを防止することができる。
実施の形態10.
図32(a)は、本発明の実施の形態10における通信制御装置ECU1の構成を示し、図32(b)は、代行候補装置ECU2の構成を示している。その他の代行候補装置ECU3〜ECUmの構成は、ECU2と同様であるので、図示および説明を省略する。
本実施の形態10における通信制御装置ECU1は、代行装置の代行を時間で管理するための機能として、ウェイクタイマ設定手段18とタイマ割込みウェイク手段19を備えている。また、代行候補装置ECU2〜ECUmは、再開時間計測手段であるウェイクタイマカウント手段30を備えている。
ECU1に搭載されるウェイクタイマ設定手段18は、ECU1がスリープ開始してからデータ送信処理の再開が可能となるまでの再開時間であるウェイクタイマの値をスリープ条件に応じて設定する。ウェイクタイマには、例えばマイクロコンピュータのROM書き換えに必要な時間が設定される。ROM書き換え時には、マイクロコンピュータの送受信処理が一定時間停止するが、書き換えに要する時間は予測できるため、ウェイクタイマ設定手段18でその予測時間を設定すると、書き換え終了次第復帰することができる。
タイマ割込みウェイク手段19は、ウェイクタイマ設定手段18により設定された所定の再開時間後に、ECU1のデータ送信処理を再開させる。ECU1は、代行候補装置に代行要求と再開時間を送信し、ウェイクタイマ設定手段18によって設定された再開時間が経過後、タイマ割込みウェイク手段19によってウェイクアップし、データ送信処理を再開する。なお、タイマ割込みウェイク手段19は、例えば外付けに搭載されたタイマ割込み用ハードウェア等による割込みによって行われる。
一方、代行装置は、代行要求を受信しデータ送信処理の代行を開始すると同時にウェイクタイマカウント手段30により時間を計測し、所定の再開時間後にデータ送信処理の代行を停止する。ウェイクタイマカウント手段30は、代行候補装置ECU2〜ECUmに搭載されており、代行装置が代行要求を受信した後カウントアップが始まり、ウェイクタイマ設定手段18によって設定された値までカウントすると代行を停止させる。
図33は、本実施の形態10に係る制御装置切替システムのECU1が、代行装置ECU3の代行を時間で管理する処理の流れを示すフローチャートである。S10において、ECU1は、スリープ条件成立判定手段14によりスリープ条件が成立しているか否かを判定し、スリープ条件が成立している場合(YES)、ステップ101(S101)に進み、ウェイクタイマ設定手段18により、スリープ条件に適したウェイクタイマの値WTth3を設定する。ウェイクタイマ設定手段18は、設定を完了した旨を代行要求送信手段12に通知する。なお、S10において、スリープ条件が成立していない場合は、代行に関する処理を行わない。
続いてステップ102(S102)において、代行要求送信手段12は、代行要求とウェイクタイマ値を、代行装置であるECU3に送信する。ステップ102(S103)では、ECU1は、タイマ割込みウェイク手段19のタイムカウント機能により、ウェイクアップまでの時間カウントを開始し、ECU3は代行を開始する。続いてステップ104(S104)において、代行を開始したECU3は、ウェイクタイマカウント手段30により、設定されたウェイクタイマWTth3の値までカウントアップする
S104において、ウェイクタイマカウント値<WTth3の場合(YES)はそのままカウントアップを続け、ウェイクタイマカウント値≧WTth3の場合(NO)、ステップ105(S105)に進む。S105では、ECU3は、代行送信手段21により代行を停止する。それと同期する形で、ECU1はタイマ割込みウェイク手段19によりウェイクしてデータ送信処理を再開する。
なお、ウェイクタイマ設定手段18により設定される値は、ECU3が代行要求を受信するまでの時間と、ECU1がスリープ開始によってデータ送信処理を停止してから再開されるまでの時間とを足した時間とすることで、ECU1の送信再開とECU3の代行停止のタイムラグを少なくすることができる。
本実施の形態10によれば、通信制御装置ECU1がウェイクタイマ設定手段18とタイマ割込みウェイク手段19を備えると共に、代行候補装置ECU2〜ECUmがウェイクタイマカウント手段30を備えることにより、ECU1がスリープ解除しデータ送信処理を再開する際に、代行装置に対して代行停止要求を送信する必要がなく、即座に通常のデータ送信処理を再開することができる。
実施の形態11.
図34は、本発明の実施の形態11における代行候補装置ECU2の構成を示している。その他の代行候補装置ECU3〜ECUmの構成は、ECU2と同様であるので、図示および説明を省略する。なお、本実施の形態11における通信制御装置ECU1の構成は、上記実施の形態1と同様であるので図2(a)を流用する。
本実施の形態11における代行候補装置ECU2〜ECUmは、自身のデータ送信周期を調整するデータ通信周期調整手段31を備え、通信制御装置ECU1から代行要求を受信した際に、データ通信周期調整手段31によりデータ送信周期を通常時よりも短くするものである。
データ送信周期の調整方法について説明する。通信制御装置ECU1と代行装置の送信周期が同じ200msecであり、ECU1の送信タイミングに対し代行装置の送信タイミングが50msec遅いと仮定した場合、代行装置の送信タイミングを通常時より50msec以上早くする必要がある。50msec早くするためには、送信周期を150msec以下にする必要があり、送信周期を150/200=0.75倍すれば良い。ただしデータ送信周期の調整方法はこれに限定されるものではない。
図35は、通信制御装置ECU1と代行装置ECU3のデータ送受信信号に関し、ECU1のスリープ条件成立前後における変化を示すタイムチャートである。図35において、(a)はデータ通信周期調整手段31による周期調整を行わないNG例、(b)はデータ通信周期調整手段31による周期調整を行ったOK例である。図35において、横軸は時間を示し、時刻t1はECU1のスリープ条件成立時を示している。
図35(a)では、時刻t1においてECU1のスリープ条件が成立すると、ECU3は、時刻t1の後の受信周期(s1)で代行要求を受信する。代行要求の受信により代行装置となったECU3は、通常周期であるため、時刻t4における次の送信周期(s2)でECU1の代行としてのデータ送信処理を含むデータ送信を行う。この場合、ECU1の本来の送信周期(s3)の時刻t3よりも遅くなり、遅延時間(Δt)が生じている。
この例のように、ECU1とECU3のデータ送信周期のオフセットによっては、ECU1が本来データ送信していなければならない時刻t3において、ECU3はデータを送信できていないため、ネットワーク異常を発生させる可能性がある。
一方、図35(b)では、時刻t1においてECU1のスリープ条件が成立し、時刻t1の後の受信周期(s1)で代行要求を受信した代行装置ECU3は、データ通信周期調整手段31により、データ送信周期を通常時よりも短い例えば1/2周期にする。これにより、時刻t2における次の送信周期(s2)でECU1の代行としてのデータ送信処理を含むデータ送信を行うことができ、ECU1の本来の送信周期(s3)の時刻t3に間に合う。
本実施の形態11によれば、代行候補装置ECU2〜ECUmがデータ通信周期調整手段31を備えることにより、代行装置によるデータ送信処理のタイミングを、通信制御装置ECU1により本来送信される時刻に間に合うように調整することができるため、ネットワーク異常を発生させることを防止することができる。
実施の形態12.
図36は、本発明の実施の形態12における代行候補装置ECU2の構成を示している。その他の代行候補装置ECU3〜ECUmの構成は、ECU2と同様であるので、図示および説明を省略する。なお、本実施の形態12における通信制御装置ECU1の構成は、上記実施の形態1と同様であるので図2(a)を流用する。
本実施の形態12における代行候補装置ECU2〜ECUmは、上記実施の形態11で説明したデータ通信周期調整手段31に加え、さらに、通信制御装置ECU1がデータ送信処理を停止すると予測される車両状況や車両周辺状況を検出する車両状況検出手段32を備えている。ECU2〜ECUmは、車両状況検出手段32により、ECU1がデータ送信処理を停止すると予測される車両状況が検出された際には、データ通信周期調整手段31によりデータ送信周期を通常時よりも短くするものである。
車両状況検出手段32により検出される車両状況について説明する。例えばECU1がアイドリング中にスリープ状態に入るシャーシ系ECU等の場合、車両状況検出手段32は、アイドリング状態になる前に現れる車速の減速を検出する。また、ECU1が走行中にスリープ状態に入るボディ系ECU等の場合、車両状況検出手段32は、停車状態から走行状態になる前に現れる車速の増加を検出する。
図37は、通信制御装置ECU1と代行装置ECU3のデータ送受信信号に関し、ECU1のスリープ条件成立前後における変化を示すタイムチャートである。図37において、横軸は時間を示し、時刻t1はECU1のスリープ条件成立時を示している。ECU3は、時刻t0におけるデータ受信周期(s0)で、車両状況検出手段32からECU1のスリープを予測するデータを受信する。このスリープ予測データを受信したECU3は、データ通信周期調整手段31により、データ受信とデータ送信周期を通常時よりも短い例えば1/2周期にする。
これにより、通常周期よりも早い時刻となった受信周期(s1)でECU1の代行要求を受信し、代行を開始することができる。さらに、時刻t2における次の送信周期(s2)でECU1の代行としてのデータ送信処理を含むデータ送信を行うことができ、ECU1の本来の送信周期(s3)の時刻t3に間に合う。
また、データ通信周期調整手段31は、データ通信周期を短くするだけでなく、長くすることもできる。データ通信周期調整手段31は、代行候補装置がデータ送信処理の代行を開始した後、通常時よりも短くしたデータ送信周期を元に戻す。
図38は、通信制御装置ECU1と代行装置ECU3のデータ送受信信号に関し、ECU1のスリープ条件成立前後における変化を示すタイムチャートである。図38において、横軸は時間を示し、時刻t1はECU1のスリープ条件成立時を示している。受信周期(s1)でECU1の代行要求を受信し、代行を開始したECU3は、データ通信周期調整手段31により、データ送信周期を通常周期の1/2とする。その後、データ送信周期が所定回数経過した時刻t5において、データ送信周期を通常周期に戻す。
ECU3がデータ通信周期調整手段31によりデータ送信周期を通常周期よりも短くしている場合、代行を開始した後もその状態を継続していると、ECU3のデータ送受信の負荷が増加し、全体的に処理負荷が増加する。所定の周期後にデータ送信周期を元に戻すことにより、代行送信を行う際のECU3の処理負荷の増加を抑えることができる。
本実施の形態12によれば、代行候補装置ECU2〜ECUmがデータ通信周期調整手段31と車両状況検出手段32を備えることにより、代行要求を受信してから代行装置としてデータ送信処理を開始するまでの時間をさらに短くすることができ、ネットワーク異常を発生させることを防止することができる。なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。