JP6009498B2 - アルツハイマー病予防薬 - Google Patents

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Description

本発明は、γセクレターゼ阻害、特にアルツハイマー病の処置および/または予防に有用な物質、当該物質を含む、γセクレターゼの阻害またはアルツハイマー病の処置および/もしくは予防用の組成物、剤、食品、飲料および食品/飲料添加剤を提供する。
超高齢化社会に突入しつつある我が国では、アルツハイマー病に代表される認知症を患う患者の急激な増加が予想される。しかしながら、現在、有効な治療法が無いため、患者のみならず患者の家族を救う手段が無い。今十分な対応策を講じなければ、来るべき医療費と人的負担の膨大な増加は、我が国の存亡をも左右しかねない事態になる。一方、この状況は多くの先進国にも当てはまり、アルツハイマー病に対する有効な治療法の開発は、先進国に共通する重要課題である。特に世界でもっとも顕著な高齢化社会を迎えつつある我が国にとって、この分野の研究の推進ほど、緊急かつ重要な科学政策は無いとさえいえる。
アルツハイマー病の病因の最も上流に位置すると考えられているのが老人斑の主要構成成分であるAβの産生である。Aβは、その前駆体蛋白質であるAPP(amyloid precursor protein)の膜貫通近傍部分からβセクレターゼとγセクレターゼの2つの蛋白質プロセシング酵素の働きで切り出される。遺伝性アルツハイマー病では、ほとんどの症例でAβ(特にAβ42)の産生亢進が観察され、アルツハイマー病の発症には、γセクレターゼによるAβのAPPからの切り出しが重要な役割を有すると考えられている。したがって、アルツハイマー病の処置および/または予防用の薬物を得るために、γセクレターゼ阻害活性についてスクリーニングすることが行われており、そのようなスクリーニングによって、いくつかの化合物が、実際にγセクレターゼ阻害剤として同定されている。しかし、多くのγセクレターゼ阻害剤は、同時にNotchシグナリングを抑制し、したがって副作用を惹起することも知られている。
現在、アルツハイマー病の処置および/または予防に有用な物質として、ドネペジル塩酸塩(商品名:アリセプト、エーザイ)、リバスチグミン(商品名:イクセロン、ノバルティス)、メマンチン塩酸塩(商品名:メマリー、第一三共)およびガランタミン臭化水素酸塩(商品名:レミニール、ヤンセンファーマ)が存在するが、効果が高く、少ない副作用で長期投与が可能なアルツハイマー病の処置および/または予防薬は今もなお必要とされている。
そこで本発明は、γセクレターゼ阻害剤、特に少ない副作用で長期投与が可能なアルツハイマー病の処置および/または予防に有用な物質を提供することを目的とする。
本発明者らは、まず、アルツハイマー病発症の最初のイベントであるAβの産生を担うγセクレターゼの活性を簡単に評価するアッセイ系を構築した。次に、このアッセイ系を用いて漢方薬の原料等として使用されている約1600種類の植物のエキスをスクリーングし、γセクレターゼの阻害活性をもつ数種類のエキスを同定した。その内の1つ、ヒシュカに含まれるγセクレターゼの阻害成分を精製し、その分子量と構造を決定した。
同定されたγセクレターゼ阻害剤は、式(I):
の構造を有するgarcinielliptone HCであった。
したがって本発明は、第一の態様において、ヒシュカ、カンジュウ、ライコウトウ、フンボウイ、クジン、クレンピ、カダンリュウおよびハクシュウの各植物エキスのうち、少なくとも1種以上、とりわけヒシュカ、カンジュウまたはライコウトウのエキス、特にヒシュカのエキスを含む、γセクレターゼ阻害、特にアルツハイマー病の処置および/もしくは予防用の組成物、剤、食品、飲料または食品/飲料添加剤を提供する。
別の態様において、本発明は、式(I):
の化合物を含む、γセクレターゼ阻害、特にアルツハイマー病の処置および/もしくは予防用の組成物、剤、食品、飲料または食品/飲料添加剤を提供する。
別の態様において、本発明は、対象におけるγセクレターゼの阻害またはアルツハイマー病の処置および/もしくは予防方法であって、当該対象に治療上有効量のヒシュカ、カンジュウ、ライコウトウ、フンボウイ、クジン、クレンピ、カダンリュウおよびハクシュウの各植物エキスのうち、少なくとも1種以上、とりわけヒシュカ、カンジュウまたはライコウトウ、特にヒシュカのエキス、あるいは式(I):
の化合物を投与することを含む方法を提供する。
アルツハイマー病に対する薬物治療・予防においては、かなりの長期間に渡って薬物投与を行う必要が想定される。したがって、いかに副作用の少ない治療薬を提供できるかが極めて重要となる。このような少ない副作用という点で、漢方薬に代表される植物エキスは、数百年から千年を超えてヒトに使われており、大幅に摂取量を間違わない限り安全であることが実証されており、有益である。アルツハイマー病は、食生活の欧米化と長寿によって顕在化してきた病気であり、実際、古来の中国での経験則からは、アルツハイマー病の治療・予防効果がある漢方薬という記載は無い。しかしながら、本発明者らは、漢方薬に代表される植物エキスにアルツハイマー病に対する有効な成分を含むものが存在することを見出した。とりわけ本発明の漢方薬のエキスは、γセクレターゼの活性を阻害することによって、アルツハイマー病の病因の最も上流に位置するAβ(Aβ40および/またはAβ42)の産生を減少させることができる。
レポーターアッセイの概略を示す。 8つの生薬エキスのγセクレターゼ阻害活性を示す。コントロールにはDMSOを用いた。 ELISA法によるAβ40の産生量の測定結果を示す。ポジティブコントロールにはDAPT(0,30,100nM)を用いた。 ELISA法によるAβ42の産生量の測定結果を示す。ポジティブコントロールにはDAPT(0,30,100nM)を用いた。 モリスの水迷路試験-Iの結果を示す。 モリスの水迷路試験-IIの結果を示す。
本発明は、第一の態様において、ヒシュカ、カンジュウ、ライコウトウ、フンボウイ、クジン、クレンピ、カダンリュウおよびハクシュウの各植物エキスのうち、少なくとも1種以上、とりわけヒシュカ、カンジュウまたはライコウトウ、特にヒシュカのエキスを含む、γセクレターゼ阻害、特にアルツハイマー病の処置および/もしくは予防用の組成物、剤、食品、飲料または食品/飲料添加剤を提供する。
ヒシュカは植物名ホップであり、特にその雌花序をエキスの原料として用いる。ヒシュカのエキス、特にヒシュカの雌花序エキスは、市販されているものであってもよい(例えば製造元:栄進商事、品番:G60)。
カンジュウは植物名オシダ(ゼンマイ)であり、特にその根茎をエキスの原料として用いる。オシダのエキス、特にオシダの根茎エキスは、市販されているものであってもよい(例えば製造元:栄進商事、品番:A50)。
ライコウトウは植物名クロヅルであり、特にその根、葉および花をエキスの原料として用いる。ライコウトウのエキス、特にライコウトウの根、葉または花エキスは、市販されているものであってもよい(例えば製造元:栄進商事、品番:H34)。
フンボウイは植物名シマハスノハカズラであり、特にその蔓性の根茎および茎をエキスの原料として用いる。フンボウイのエキス、特にフンボウイの根茎または茎エキスは、市販されているものであってもよい(例えば製造元:栄進商事、品番:A27)。
クジンは植物名クララであり、特にその根をエキスの原料として用いる。クジンのエキス、特にクジンの根エキスは、市販されているものであってもよい(例えば製造元:栄進商事、品番:A2)。
クレンピは植物名センダンであり、特にその樹皮および根皮をエキスの原料として用いる。クレンピのエキス、特にクレンピの樹皮または根皮エキスは、市販されているものであってもよい(例えば製造元:栄進商事、品番:C15)。
カダンリュウは植物名オキナワクジャクシダであり、特にその全草または根茎をエキスの原料として用いる。カダンリュウのエキス、特にカダンリュウの全草または根茎エキスは、市販されているものであってもよい(例えば製造元:栄進商事、品番:H22)。
ハクシュウは植物名ダイコンゴヒショウであり、特にその根をエキスの原料として用いる。ハクシュウのエキス、特にハクシュウの根エキスは、市販されているものであってもよい(例えば製造元:栄進商事、品番:A3)。
本発明において、「エキス」は、原料植物を水、アルコール等の溶媒で抽出した抽出液、抽出液を濃縮したもの、抽出液を完全に乾燥させて固体もしくは半固体としたもの、抽出液、濃縮液もしくは乾燥物を水、アルコール、糖等の希釈媒で希釈したもののいずれかまたはいずれをも意味する。抽出は、製剤学または食品工学の分野において通常用いられる方法によって行うことができる。上記エキスは、原料植物を溶媒で抽出した粗抽出物であってもよいし、粗抽出物を常法により精製することで得られる抽出物画分であってもよい。また、抽出に使用する溶媒としては、例えば、水、エタノール(例えば濃度70容積%以上)、メタノール(例えば濃度70容積%以上)、ヘキサン(例えば濃度90容積%以上)、クロロホルム(例えば濃度90容積%以上)またはそれらの混合物などを挙げることができ、特にエタノールまたはメタノールが好ましい。
エキスを製造するにあたり、原料植物は、生の状態であってもよいし、乾燥品や粗乾燥品であってもよいが、γセクレターゼの阻害活性を有する成分を効率的に抽出するという観点から、原料植物を常法により粉砕してから抽出することが好ましい。なお、乾燥品または粗乾燥品を原料植物として使用する場合には、乾燥品または粗乾燥品を水に戻してから粉砕し、その後凍結乾燥して再度粉砕した素材を抽出に使用することが好ましい。
第一の態様における本発明の組成物、剤、食品、飲料または食品/飲料添加剤は、前記した植物の各エキスのうち、1種のみ含むものであってもよいし、2種以上、例えば2種、3種またはそれ以上含むものであってもよい。また、本発明の組成物、剤、食品、飲料または食品/飲料添加剤は、γセクレターゼの阻害活性を有する他の材料(前記した植物以外の材料)を併せて含んでいてもよい。
本発明の組成物、剤、食品、飲料または食品/飲料添加剤は、各植物エキスを、それぞれの全体質量に対して0.01〜99質量%、好ましくは0.1〜80質量%、さらに好ましくは0.2〜50質量%の範囲内で含んでいてよい。本発明の組成物、剤、食品、飲料または食品/飲料添加剤において、各植物エキスの1日の摂取量が体重1kg当たり1〜320mg(エキス質量(例えば製造元栄進商事の各植物エキスの質量を意味する。以下同じ。))となるように設定することが好ましく、4〜160mg(エキス質量)となるように設定することがより好ましく、8〜80mg(エキス質量)となるように添加量を設定することがさらに好ましい。
別の態様において、本発明は、式(I):
の化合物を有効成分として含む、γセクレターゼ阻害、特にアルツハイマー病の処置および/もしくは予防用の組成物、剤、食品、飲料または食品/飲料添加剤を提供する。この態様において、有効成分の含有量は、γセクレターゼの阻害活性を失わない範囲であればよく、具体的には0.01〜99質量%であり、好ましくは0.1〜80質量%、さらに好ましくは0.2〜50質量%である。
本発明において、「式(I):
の化合物」についての一般的な情報は、Phytochemistry 69,2008,225−233に記載されている。この文献を参照により本明細書に引用する。本発明の式(I)の化合物は、全合成、半合成または生物資源からの単離精製によって得ることができる。例えば当該化合物は、ヒシュカのエキスから、例えば実施例に記載のとおりに、単離精製して得ることができる。
本発明において、「組成物」は、目的に応じて様々な態様で使用することができる。例えば、飲食用、医薬用などとして安全かつ有効に使用することができる。また、組成物は飲食用、医薬用のほか、例えば、いわゆる医薬部外品としても使用することができる。具体的には、例えば、軟膏、リニメント剤、エアゾール剤、クリーム、石鹸、洗顔料、全身洗浄料、化粧水、ローション、入浴剤などに添加して、局所的に使用することができる。
なお、組成物には、必要に応じて、添加物を添加することができる。添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、結合剤、コーティング 剤、着色剤、基剤、酸化防止剤、溶解剤、溶解補助剤、pH調節剤、安定化剤、粘着剤などを挙げることができる。また、組成物には、有機物または無機物の担体を使用することができる。担体としては、例えば、乳糖、澱粉、油脂などを挙げることができる。
本発明において、「剤」は、典型的には薬剤を意味する。薬剤は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、経口ゼリー剤、注射剤、エキス剤、丸剤、チンキ剤等であってよいが、これらに限定されない。
本発明において、「薬剤」は、製剤学分野において通常用いられる賦形剤または担体を含んでいてよい。また「薬剤」は、薬学的に許容される添加剤、例えば着色剤、安定化剤、抗酸化剤、防腐剤、pH調節剤、等張化剤、溶解補助剤、風味剤、滑沢剤、コーティング剤等を含んでいてもよい。このような薬剤の製造方法は、意図する剤形に応じて、製剤学分野における当業者が適宜選択し、容易に実施できる。
本発明において、「食品」は、動物、特にヒトが食するものであれば特にその範囲が限定されず、例えばゼリー、ガム、飴等を含む。
本発明において、「飲料」は、動物、特にヒトが飲用するものであれば特にその範囲が限定されず、例えば水、茶、栄養補助飲料、アルコール飲料等を含む。
本発明において、「食品/飲料添加剤」は、それのみを喫食することを意図しないが、食品または飲料と共に喫食されるものを意味し、例えば調味料等を含む。
本発明の「食品」、「飲料」および「食品/飲料添加剤」は、食品工学の分野において通常用いられる成分を含んでいてよく、またその分野における当業者が通常実施するとおりに製造することができる。
前記した植物のエキスまたは式(I)の化合物を食品または飲料中に含ませることによって、例えば、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)、機能性食品、栄養補助食品とすることができる。具体的には、例えば、澱粉質食品、練り製品、菓子類、冷菓類、飲料、調味料、サプリメント、その他の加工食品などに植物のエキスまたは式(I)の化合物を添加することができる。
本発明において、「γセクレターゼの阻害」は、γセクレターゼ活性を測定したとき、例えば下記実施例に記載のγセクレターゼ阻害アッセイ系を用いて活性を測定したとき、ポジティブコントロール、例えばDMSO水溶液と比して有意に、例えば約5%以上、好ましくは約10%以上、より好ましくは約20%以上、さらに好ましくは約30%以上、最も好ましくは約40%以上γセクレターゼ活性を低下させることを意味する。
本発明において、「アルツハイマー病の処置」は、病理学的または臨床症状的観点における、アルツハイマー病またはアルツハイマー型認知症の治療、進行の停止もしくは遅延または症状の軽減を意味する。
本発明において、「アルツハイマー病の予防」は、アルツハイマー病またはアルツハイマー型認知症の発症の予防を意味する。
本発明において、「対象」は、アルツハイマー病を患っているかまたは患い得る動物、例えばヒトを含む哺乳類を意味する。
本発明において、「治療上有効量」は、アルツハイマー病の処置および/または予防に有効な量を意味し、具体的な量は、様々な要因、例えば、用いる具体的なエキス、患者の性別、体重、年齢、さらに、患者の一般的な健康状態、疾患の程度、剤形、投与経路、投与回数などの種々の条件に応じて適宜設定することができる。例えば、γセクレターゼ阻害剤の1日の投与量は、体重1kg当たり10〜640mg(エキス質量)となるように設定することが好ましく、20〜480mg(エキス質量)となるように設定することがより好ましく、40〜320mg(エキス質量)となるように設定することがさらに好ましい。なお、投与は1日数回に分けてすることができ、1回の投与で使用される薬剤中に含まれる組成物の含有量は、投与回数にあわせて適宜調整することができる。
γセクレターゼ活性測定アッセイ
Aβの前駆体であるAPPのC−末部位に酵母の転写因子であるGAL4のDNA結合領域と単純ヘルペスウイルスの転写活性化領域を融合したGAL4−VP16(G4V16)を付加した蛋白質(APP−G4V16)を発現させるベクターを構築した。このGAL4−VP16は、転写研究領域で汎用されている強力な転写因子で、その活性は、プロモーター領域にGAL4認識配列(UAS)を4個挿入したルシフェラーゼのレポーター(TK 4x(UAS)LUC)で測定することができる。このAPP−G4V16とTK 4x(UAS)LUCを培養細胞にトランスフェクションし、24時間後に細胞を回収し、その抽出液のルシフェラーゼ活性を測定した。このルシフェラーゼ活性は、既存のγセクレターゼの阻害剤であるDAPTを添加することで減少したので、γセクレターゼによって膜に存在するAPP−G4V16が切断された結果、G4V16が核に移行してレポーターの転写を活性化していることが確認できた。従って、このアッセイ(以下レポーターアッセイ)を用いることで、γセクレターゼに対する阻害活性をルシフェラーゼの活性を指標に評価することが可能となった。レポーターアッセイの概略を図1に示す。
γセクレターゼ阻害活性を持つ漢方薬エキスのスクリーニング
上記レポーターアッセイを用いて、現在ヒトに対して使用されている漢方薬の原材料となっている約1600種類の植物エキスに対して、それらのエキスがγセクレターゼの阻害活性を含んでいるかどうかを検証した。このアッセイでは、非特異的な転写抑制作用が擬陽性になるため、サイトメガロウイルス(CMV)のプロモーターでβガラクトシダーゼ(βgal)を発現させるプラスミッド(pCMV−βgal)を同時にトランスフェクションし、βgal 活性に変化を与えずルシフェラーゼ活性を低下させるものをポジティブと判定した。このスクリーニングによって、ヒシュカと他に幾つかの漢方薬エキスがルシフェラーゼ活性の特異的な低下を示した。結果を図2に示す。有意差検定は、student’s t−testで行った。
ELISA法によるAβ40およびAβ42の産生量の測定
スクリーニングした漢方薬エキスが実際にγセクレターゼの阻害活性があることを下記ELISA法によって確認した。
方法:家族性アルツハイマー病で同定されたLondon変異(V717F)をもつ変異APPを発現させるベクターとβgalを発現させるベクターをHEK293A細胞にトランスフェクションし、24時間後に、エキスを培地に投与した。さらに24時間後、βgalの活性の定量とAβ40およびAβ42の産生量の定量を、WAKO humanβ amiloid ELISAキットを用いて行った。トランスフェクション効率を補正するため、Aβ40およびAβ42の産生量は、βgalの活性で補正した。γセクレターゼ阻害のポジティブコントロールには、既知のβセクレターゼ阻害剤であるDAPTを用いた。また、βgalを発現させるベクターのみをトランスフェクションし変異APPを発現させていない時(mock)のAβ40およびAβ42の産生量も測定し、βgalの活性で補正した。結果を図3および4に示す。有意差検定は、student’s t−testで行った。
ヒシュカ由来γセクレターゼ阻害物質の精製と構造決定
ヒシュカエキスをBligh Dyer法により水溶性、脂溶性の2層に分離した後、レポーターアッセイによりエキス中のγセクレターゼ阻害活性が脂溶性分画に移行していることを確認した。続いて、この脂溶性分画をSilica Cartridgesを使用した固相抽出により3分画に分離した。用いた溶媒は(1)ヘキサン:クロロホルム=50:50、(2)クロロホルム:メタノール=99:1、(3)100%メタノールで、レポーターアッセイによりγセクレターゼ阻害活性が、(2)クロロホルム:メタノール=99:1分画に移行していることを確認した。
次に、(2)の分画を5CN−MS順相カラムにより、ヘキサン:クロロホルム=50:50の溶媒からスタートし、毎分1%ずつメタノール濃度を上昇させるプロトコールでHPLCを実施した。結果、5分〜7分の分画に活性成分が溶出していることを確認した。さらに、この順相HPLCで得た分画を5C18−AR−IIカラム、及びπ−NAPカラムにより逆相HPLCを行うことでさらに分離した。アセトニトリル:水=80:20からスタートし、毎分アセトニトリル濃度を1%ずつ上昇させるプロトコールで行い、これら2種類のカラムで合計3回(5C18−AR−IIカラムで1回とπ−NAPカラムで2回)の逆相HPLCを行うことで、活性成分をシングルピークになるまで精製することに成功した。
一連の実験を8mgのエキスからスタートすることで、約20μgの精製物を得ることができた。このサイクルを約100回繰り返し、最終的に2mgの極めて純度の高い化合物を得た。質量分析によりこの化合物の分子量は416であり、下記核磁気共鳴(NMR)により、構造を式:
と決定した。
NMR方法
1H NMRはJEOL社JNM-LA 500 (500 MHz)により重クロロホルムを溶媒に用いて測定した。残存CHCl3 (δ = 7.27 ppm)を内部標準物質として化学シフトを報告した。
13C NMRはJEOL社JNM-LA 500 (125 MHz)により重クロロホルムを溶媒に用いて測定した。重クロロホルム(δ = 77.0 ppm)を内部標準物質として化学シフトを報告した。
各種二次元NMR (COSY, HMQC, HMBC, NOESY)は重クロロホルムを溶媒にしてJNM-LA 500 (500 MHz)により測定した。
NMR測定値
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 4.81-4.76 (m, 3H), 3.64 (m, 1H), 2.93 (dd, J = 14.4, 10.9 Hz, 1H), 2.82 (dd, J = 14.4, 8.0 Hz, 1H), 2.70-2.59 (m, 4H), 1.57 (s, 6H), 1.52 (s, 6H), 1.30 (s, 3H), 1.24 (s, 3H), 1.23 (d, J = 6.3Hz, 3H), 1.21 (d, J = 6.9Hz, 3H); 13C NMR (125MHz, CDCl3) δ 204.8, 202.3, 199.3, 158.1, 135.2, 135.0, 118.1, 117.7, 108.9, 102.3, 92.5, 72.0, 61.8, 39.2, 37.4, 34.9, 26.5, 25.8, 25.7, 25.1, 24.3, 20.1, 18.8, 17.9, 17.7; HRMS (FAB) C25H37O5 [(M+H)+]の計算値 417.2641、実測値417.2632.
家族性アルツハイマー病の原因遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの作製
神経特異的エノラーゼ(neuron−specific enolase:NSE)遺伝子のプロモーターの支配下に家族性アルツハイマー病で同定されたLondon変異(V717F)をもつ変異APPを発現させるトランスジーンをマウスの受精卵にインジェクションをおこない、トランスジェニックマウスを得た。
モリスの水迷路試験-I
それぞれ2ヶ月齢および6ヶ月齢のトランスジェニック(TG)マウスおよび野生型(WT)マウスを用いて、モリスの水迷路試験を行った。試験1日目〜5日目まで1日3回ずつ、白濁させたプールでマウスを泳がせ、プラットホームへたどり着くまでの時間を測定した。このモリスの水迷路試験の結果は平均値と標準誤差(SEM)で示した(図5)。たどりつくまでの時間の測定は、60秒を最大として、それ以上の測定は行っていない。それぞれのマウスには、6週齢より水またはヒシュカエキス0.2%を含む水を自由に飲ませた。群間で飲水量に有意差はなく、一日あたり約5mlであった。また、群間で体重の変化にも有意な差はなかった。WTマウスでは、2ヶ月齢および6ヶ月齢のいずれであっても、ヒシュカエキスの摂取の有無に拘わらず、プラットホームにたどりつくまでに要した時間は5日間の間で短縮され、また2ヶ月齢のTGマウスでも短縮されたが、6ヶ月齢のTGマウスでは、ヒシュカエキスを摂取しなかった群では、プラットホームにたどりつくまでに要した時間は5日間の間で短縮されず、ヒシュカエキスを摂取した群では、時間が短縮され、5日目にstudent’s t−testで差が見られた(P<0.1)。
モリスの水迷路試験-II
上記と同様、6週齢より水またはヒシュカエキス0.2%を含む水を自由に飲ませたトランスジェニック(TG)マウスに対して、9ヶ月齢で、初めてモリスの水迷路試験を行った。上記と同様、試験1日目〜5日目まで1日3回ずつ、白濁させたプールでマウスを泳がせ、プラットホームへたどり着くまでの時間を測定した。このモリスの水迷路試験の結果は平均値と標準誤差(SEM)で示した(図6)。この試験では、マウスは初めてモリスの水迷路試験を経験するため、過去の経験・記憶の影響を一切受けない状態での現在の記憶・学習能力を反映している。また、この実験では、水槽の回りの模様に異なる色を付け、マウスが水槽内での自分の位置をより確認し易くした。9ヶ月齢のTGマウスでは、ヒシュカエキスを摂取しなかった群では、プラットホームにたどりつくまでに要した時間は5日間の全てで60秒以上を要し、全く短縮されなかった。一方、ヒシュカエキスを摂取した群では、日を追うごとに時間が短縮され、3〜5日にわたりstudent’s t−testで有意な差が見られた(P<0.05及びP<0.01)。

Claims (2)

  1. 式:
    で示される化合物を活性成分として含む、γセクレターゼ阻害組成物。
  2. アルツハイマー病の発症抑制のための、請求項1に記載の組成物。
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