JP6007952B2 - 鋼材の冷却方法、鋼材の冷却設備、鋼材の製造方法および鋼材の製造設備 - Google Patents

鋼材の冷却方法、鋼材の冷却設備、鋼材の製造方法および鋼材の製造設備 Download PDF

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Description

本発明は、鋼材の冷却方法、鋼材の冷却設備、鋼材の製造方法および鋼材の製造設備に関するものである。
厚鋼板など肉厚の厚い鋼材の製造において、多量の合金成分の添加を行わずに高強度および高靭性を得るためには、一般的に、オフラインでローラークエンチする方法で焼入れ処理を行う。しかしながら、例えば、板厚が100mmを超えるような鋼材の場合、テーブルローラーが撓むなど、搬送の問題が生じる。そこでこのような厚物鋼材の場合、水中に浸漬させて冷却する方法で焼入れ処理を行っている。
水中に浸漬させて冷却する鋼材の焼入れ処理(以下、単に浸漬冷却と称することもある。)は、図2または図3に示すような設備において、鋼材1を台車2付きの加熱炉3で加熱した後、クレーンなどの吊り具4で鋼材1を吊って、水5で満たされた水槽6内に鋼材の広面部が垂直または水平になるようにして浸漬させて行う。焼入れ中の冷却速度を速くするほど、高強度で高靭性の材質の鋼材が得られる。
水中に浸漬させて鋼材を冷却する方法として、特許文献1の技術がある。特許文献1は、鋼片広面が側面となるように水中に垂直方向に浸漬させ、鋼片両面から水噴射を行うことを特徴とする鋼片の水冷方法であり、鋼片の急速かつ均一な冷却を図るものである。
特開2006−199992号公報
しかしながら、特許文献1の方法のように、加熱炉から抽出した鋼材の広面部を垂直にして浸漬させる場合、図4に示すように、板長が長い鋼材では、自重によって吊上げ時に鋼材1が変形するという問題がある。例えば、板厚150mm、板長13mの場合は、吊上げ時に変形して全長で500mm程度の反りが生じてしまう。
また、加熱炉から抽出した鋼材の広面部を水平にして水に浸漬させる場合、図5に示すように、鋼材1の上面に発生する蒸気泡7は、滞留せずに矢印の方向に移動する。しかしながら、鋼材1の下面では、発生した蒸気泡7が滞留して蒸気膜8が形成されると、鋼材下面と水とが直接接触しなくなるため、熱伝達が阻害される。したがって、鋼材1の上面と比較して下面は冷えにくくなり、平均冷却速度の低下や上下面の冷却不均一が起こる。その結果、強度や靭性の低下、冷却中に反りが生じるという問題がある。例えば、板厚150mmの鋼材の広面部を水平にして浸漬させた時、上下面の温度履歴は図6のようになり、鋼材の下面温度が上面温度に比べて最大350℃高くなる。
このため、加熱炉から抽出した鋼材の広面部を水平にして水に浸漬させる場合、鋼材上下面の冷却を均一にするためには、水噴流などの冷却装置を用いて下面の冷却を促進する必要がある。しかしながら、例えば、板幅2m、板長10m以上の鋼材の焼入れ処理を行う場合、多数のノズル設置や多量の冷却水が必要となり、設備コストおよびランニングコストがかかる。さらに、ノズル配置によって冷却むらができてしまうという問題もある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、鋼材下面の冷却を促進させ、高強度および高靭性の材質を得られるうえに、冷却中に反りの生じない鋼材の冷却方法、鋼材の冷却設備、鋼材の製造方法および鋼材の製造設備を提供することを目的とする。
本発明は、前記した従来の問題点を解決するためになされたものであって、その手段は下記のとおりである。
[1]鋼材の広面部を上下面として、鋼材の広面部短辺方向の水平面からの傾斜角度を10°以上になるように鋼材を水中に浸漬し、
鋼材の下方向において、3〜15NL/minの空気流量で鋼材下面に発生する蒸気泡の直径より大きい気泡を、鋼材の傾斜方向下端部に向けて鉛直方向上向きに噴射することを特徴とする鋼材の冷却方法。
[2]前記気泡を鋼材の広面部長辺方向の全長にわたって噴射することを特徴とする[1]に記載の鋼材の冷却方法。
[3]前記気泡は、直径3mm以上の気泡であることを特徴とする[1]または[2]に記載の鋼材の冷却方法。
[4]鋼材を浸漬冷却させる水槽を有し、前記水槽内には、
鋼材の広面部短辺方向の水平面からの傾斜角度を10°以上に保持するための浸漬具と、
鋼材の下方向において、3〜15NL/minの空気流量で、鋼材の傾斜方向下端部に向けて鉛直方向上向きに気泡を噴射するノズルと
を備えることを特徴とする鋼材の冷却設備。
[5]前記ノズルの直径を3〜50mmとすることを特徴とする[4]に記載の鋼材の冷却設備。
[6]前記ノズルは、鋼材の広面部長辺方向の全長にわたって500mm以下のピッチで配置されることを特徴とする[4]または[5]に記載の鋼材の冷却設備。
[7]鋼材を加熱する加熱工程と、
加熱された鋼材の広面部を上下面として、鋼材の広面部短辺方向の水平面からの傾斜角度を10°以上になるように鋼材を水中に浸漬し、鋼材の下方向において、3〜15NL/minの空気流量で鋼材下面に発生する蒸気泡の直径より大きい気泡を、鋼材の傾斜方向下端部に向けて鉛直方向上向きに噴射する冷却工程と
を有することを特徴とする鋼材の製造方法。
[8]前記気泡を鋼材の広面部長辺方向の全長にわたって噴射することを特徴とする[7]に記載の鋼材の製造方法。
[9]前記気泡は、直径3mm以上の気泡であることを特徴とする[7]または[8]に記載の鋼材の製造方法。
[10][4]〜[6]のいずれか一つに記載の鋼材の冷却設備を有することを特徴とする鋼材の製造設備。
本発明によれば、鋼材下面の冷却を促進させることができる。その結果、鋼材全面を均一に冷却することができるため、冷却中に反りの生じない、高強度および高靭性の材質の鋼材を製造することができる。また、本発明では、鋼材の広面部を垂直にして浸漬させる必要がないため、吊り上げ時に鋼材が変形するという問題もない。
図1は、本発明の冷却方法を示す概略図である。 図2は、鋼材の焼入れ処理の一例を示す概略図である。 図3は、鋼材の焼入れ処理の一例を示す概略図である。 図4は、吊上げ時に変形する鋼材の一例を示す概略図である。 図5は、鋼材の広面部を水平にして水中に浸漬させる場合に生じる、蒸気泡および蒸気膜の様子の一例を示す概略図である。 図6は、板厚150mmの鋼材について、広面部を水平にして水中に浸漬させた時の、上下面の温度履歴を表すグラフである。 図7は、鋼材の傾斜角度と、気泡の速度との関係を示すグラフである。 図8は、浸漬具の一例を示す概略図である。 図9は、浸漬具の一例を示す概略図である。 図10は、浸漬具の一例を示す概略図である。 図11は、気泡の直径と、気泡の速度との関係を示すグラフである。
以下、本発明について説明する。
本発明の鋼材の冷却方法は、鋼材の広面部を上下面として、鋼材の広面部短辺方向の水平面からの傾斜角度を10°以上になるように水中に浸漬し、鋼材の下方向において、3〜15NL/minの空気流量で直径3mm以上の気泡を、鋼材の傾斜方向下端部に向けて鉛直方向上向きに噴射することを特徴とする。
図1は、本発明の冷却方法を示す概略図であり、具体的には、鋼材を浸漬冷却させた際の水槽内の断面図である。図1において、鋼材1の下方向には、ノズル9が配置されている。ノズル9の先端は、鋼材1の傾斜方向下端部に向けられている。ノズル9は、鉛直方向上向きに気泡10を噴射する。なお、図1において、紙面垂直方向を鋼材の広面部長辺方向とする。すなわち、図1において長方形として示されている鋼材1の断面のうち、長いほうが短辺方向であり、短いほうが板厚方向である。
浸漬冷却中、鋼材1の下面で発生する蒸気泡7は、浮力によって鉛直方向上向きに上昇しようとする。鋼材1の広面部を上下面として、鋼材1を傾斜させた状態で浸漬すると、図1に示すように、鋼材1の下面で発生した蒸気泡7は、浮力により、滞留することなく鋼材1の下面に沿って、鋼材1の傾斜方向上端部に向かって移動する。さらに、蒸気泡7の上昇に伴い、冷却水の対流が発生する(図1の破線矢印)。このため、下面の冷却が促進される。本発明においては、さらにまた、図1に示すように、ノズル9から鋼材1の傾斜方向下端部に向けて、鉛直方向上向きに気泡10が噴射され、気泡10は鋼材1の下面に沿って上昇する。そのため、鋼材1の下面に沿って上昇する気泡10により蒸気泡7が除去されるとともに、傾斜方向に沿った気泡10の上昇に伴い、対流効果が大きくなる。したがって、鋼材1の下面において、蒸気膜8が形成されにくくなり、蒸気膜8に起因した熱伝達の阻害が起こらず、平均冷却速度の低下や上下面の冷却不均一が生じない。その結果、鋼材1の下面の冷却が促進され、浸漬冷却中の反りが起こらず、高強度および高靭性の材質の鋼材を製造することができる。
次に、鋼材の広面部短辺方向の傾斜角度について、気泡径5mm、広面部短辺方向の鋼板長さ800mmの条件で、発明者らは検討した。その結果、図7に示すように、傾斜角度が大きいほど、傾斜方向に沿って気泡10が上昇する気泡の速度が増加することがわかった。図7から、傾斜角度が大きいほど蒸気泡7が除去されやすくなるとともに、気泡の速度が増加する。このため、対流効果がより大きくなり、鋼材下面の冷却が促進されることがわかる。なお、気泡の速度については、鋼板に沿って上昇する気泡を撮影し、撮影した映像から気泡速度を算出した。
本発明では、鋼材の広面部短辺方向の水平面からの傾斜角度を10°以上とする。傾斜角度が10°未満で浸漬冷却すると、鋼材下面に沿って上昇する気泡の速度が遅く、蒸気膜の形成を十分に抑制することができない。また、十分な対流効果を得られない。このため、鋼材下面の冷却が促進されず、高強度および高靭性の材質の鋼材を得ることができないうえに、浸漬冷却中に鋼材反りが生じてしまう。なお、上下面冷却均一性の観点から、傾斜角度は、15°以上であることが好ましい。
なお、実用上の上限として水平面からの傾斜角度は45°以下であることが好ましい。45°を超えると、浸漬時の鋼材高さが高くなり、水槽を大きくする必要がある。そのうえ、鋼材を傾斜させるための装置が大掛かりとなるため、設備コストがかかる。なお、設備コスト抑制の観点から、傾斜角度は、30°以下であることがさらに好ましい。
鋼材の傾斜方向については、鋼材の広面部を上下面として、鋼材の広面部短辺方向に傾斜させる。短辺方向に傾斜させることにより、鋼材浸漬時の鋼材の傾斜方向下端部から上端部までの高さが短くなり、水槽深さを浅くすることができる。例えば、鋼材広面部が、短辺3m×長辺10mの長方形である鋼材を、傾斜角度30°に傾斜させて浸漬冷却させる場合、短辺方向に傾斜させると浸漬時の鋼材高さは1.5mとなる。これに対して、長辺方向に傾斜させると5mとなるため、水槽が大きくなり設備コストが膨大となる。さらに、本発明では、鋼材の広面部を垂直にして浸漬させる必要がないため、吊上げ時に自重により鋼材が変形するという問題がない。したがって、板長の長い鋼材も問題なく製造できる。
鋼材の冷却設備における水槽としては、鋼材体積の20倍以上の水を蓄えることが可能である水槽が好ましい。鋼材体積の20倍以上の水を蓄えた水槽内であれば、冷却中に水槽内の水温が上昇して冷却能力が低下することがなくなり、その結果、高強度および高靭性の材質の鋼材をより安定的に製造することができる。
本発明では、鋼材の冷却設備における水槽内で、鋼材の広面部短辺方向の傾斜角度を10°以上に保持するための浸漬具を用いる。浸漬具としては、鋼材の広面部短辺方向の傾斜角度を10°以上に保持することができる浸漬具であればよく、例えば、図8のような傾斜架台11、図9のようなCフック12、図10のような浸漬装置13等が挙げられる。なお、図8の傾斜架台11は安価に製造できる。その一方で、図9のCフック12や、図10の浸漬装置13は設備コストがかかる。このため、本発明では、図8のような傾斜架台11が好ましい。
次に、噴射する気泡の直径は、鋼材下面に発生する蒸気泡の直径より大きい直径とする。本発明者らが気泡の直径について検討したところ、例えば、傾斜角度15°の場合、図11に示すように、気泡の直径が大きくなるほど傾斜方向の気泡の速度が増加することがわかった。これは、気泡の直径が大きいほど大きな浮力が働くためであると考えられる。すなわち、蒸気泡(約1〜3mm程度)と比べて直径の大きな気泡を鋼材の下面に沿って上昇させることにより、鋼材の下面の冷却が促進され、鋼材下面が均一に冷却される。したがって、本発明では、噴射する気泡の直径は3mm以上とすることが好ましい。噴射する気泡の直径が3mm未満では、鋼材下面に沿って上昇する気泡の速度が遅くなり、十分な対流効果が得られないため、下面が均一に冷却されない。攪拌効果向上の観点から、噴射する気泡の直径は、5mm以上であることがさらに好ましい。なお、噴射する気泡の直径の上限値は、50mmとすることが好ましい。50mm超えでは、気泡の直径は大きくなるものの、噴射する気泡の数が少なくなる。また、噴射する気泡が断続的になり、気泡の供給が不安定になる。このため、鋼材下面を均一に冷却することができず、強度や靭性などの材質がばらつく。攪拌効果向上と冷却均一性確保の観点から、噴射する気泡の直径は、30mm以下であることがさらに好ましい。
気泡は、3〜15NL/minの空気流量で噴射する。空気流量が3NL/min未満では、噴射する気泡数が少なくなり、十分な対流効果が得られない。冷却能力確保の観点から、空気流量は、5NL/min以上であることが好ましい。一方、空気流量が15NL/min超えでは、噴射する気泡数が多すぎて鋼材下面が気泡で覆われてしまい、熱伝熱が阻害されて下面が均一に冷却されない。均一冷却性の観点から、空気流量は、10NL/min以下であることが好ましい。
ノズルの直径は、鋼材下面に発生する蒸気泡の直径より大きいものとする。具体的には、たとえば、3〜50mmが好ましい。ノズル直径が3mm未満だと、噴射する気泡の直径が3mm未満となり、鋼材下面に沿って上昇する気泡の速度が遅く、十分な対流効果が得られない。このため、下面が均一に冷却されない。攪拌効果向上の観点から、ノズルの直径は、5mm以上であることが好ましい。ノズル直径が50mm超えでは、気泡の直径は大きくなるものの、噴射する気泡の数が少なくなる。したがって、気泡がノズルから断続的に噴射されて気泡の供給が不安定になるため、鋼材下面を均一に冷却することができず、強度・靭性などの材質がばらいてしまう。攪拌効果向上と冷却均一性確保の観点から、ノズルの直径は、30mm以下であることが好ましい。
水槽内に配置されるノズルは、鋼材の傾斜方向下端部から鉛直下向きの位置に、鋼材の広面部長辺方向の全長にわたって、500mm以下のピッチで配置されることが好ましい。これにより、鋼材の広面部長辺方向の全長にわたって気泡が噴射され、鋼材下面の冷却が促進され、鋼材下面が均一に冷却される。広面部長辺方向のノズルの設置間隔が500mm超えでは、気泡によって攪拌されない箇所が生じて、広面部長辺方向の鋼材下面の冷却がばらつき、強度や靭性などの材質がばらいてしまう。
鋼材の焼入れ処理に際して、本発明の冷却方法を用いる場合には、冷却開始前の鋼材の温度を、鋼材全体の組織が十分にオーステナイト化される温度に加熱することが好ましい。これにより、その後の浸漬冷却によって十分に焼きが入り、均一な材質の鋼材が得られる。また、鋼材温度が1150℃超えでは、加熱中にオーステナイト粒が粗大化し、最終的な鋼組織も粗大化し、靭性が低くなってしまい、材質が確保できない可能性がある。したがって、鋼材温度は1150℃以下とすることが好ましい。また、冷却停止温度としては、焼入れ処理が十分に完了すればよく、例えば、100℃以下であればよい。
なお、本発明の冷却方法は厚鋼板の熱処理工程で用いれば大きな効果を発揮する。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、鍛造品などの鋼材全般の熱処理工程に適用できる。また、本発明の冷却方法を用いることにより、冷却中に反りの生じない、高強度および高靭性の材質の鋼材を製造することができる。なお、厚鋼板の熱処理工程としては、本発明で説明した焼入れ処理に限られるものではなく、例えば、オーステナイト−フェライト二相域からから冷却するいわゆる二相域焼入れにも適用可能であるほか、冷却速度に関する制約がなければ、焼ならしや、焼戻しなどの熱処理工程でも適用することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
図2に示すような、台車付き加熱炉を有する冷却設備を用いて、重量25トン、板厚(t)150mmの鋼材1を900℃まで再加熱した後、台車2によって鋼材1を加熱炉3から抽出し、Cフッククレーンで鋼材1を吊り上げた。水槽6上方に鋼材1を移動させて、水槽6内の傾斜架台(図示しない。)に鋼材1を載置した。そして、表1に示す条件で、冷却停止温度が100℃以下となるように鋼材1を冷却した。なお、水槽6には、鋼材1の体積の80倍以上の体積の水を確保した。
鋼材の評価は、800℃から400℃の間の平均冷却速度の値で評価した。本実施例で用いた鋼において目標とする材質(強度・靭性)の鋼材を確保するためには、板厚方向上面(1/4t)および板厚方向下面(3/4t)において、それぞれ平均冷却速度を1.10℃/s以上にする必要がある。また、板厚中心(1/2t)においては、平均冷却速度を0.90℃/s以上にする必要がある。また、冷却中の反りを抑制するためには、板厚方向上面と板厚方向下面との平均冷却速度の差(絶対値)を、板厚方向上面の平均冷却速度の10%以内にする必要がある。ここで、板厚方向上面(1/4t)部の温度は、上面から板厚1/4t部まで穴を開けて取り付けた熱電対により、板厚方向下面(3/4t)部の温度は、上面から板厚3/4t部まで穴を開けて取り付けた熱電対により、板厚中心(1/2t)部の温度は、上面または下面から板厚中心(1/2t)部まで穴を開けて取り付けた熱電対により、それぞれ測定した。800℃から400℃まで各温度を測定し、温度降下量と時間とから、平均冷却速度を算出した。
各条件および平均冷却速度を表1に示す。
Figure 0006007952
発明例1では、鋼材の広面部短辺方向に水平面から15°傾斜させた状態で浸漬させ、直径10mmの気泡を8NL/minで鋼材下端部に向けて噴射して、全ての部分が100℃以下になるまで冷却して製造した。平均冷却速度は、板厚方向1/4t位置で1.15℃/s、3/4t位置で1.25℃/s、板厚中心で0.96℃/sとなった。また、板厚方向上面と板厚方向下面との平均冷却速度の差は0.10となり、板厚方向上面の平均冷却速度の10%以内(0.115℃/s以内)を満足した。したがって、冷却中の反りがなく、高強度および高靭性の材質の鋼材を得るために必要な条件を満たすことができた。
発明例2では、鋼材の広面部短辺方向に水平面から15°傾斜させた状態で浸漬させ、直径6mmの気泡を8NL/minで鋼材下端部に向けて噴射して、全ての部分が100℃以下になるまで冷却して製造した。平均冷却速度は、板厚方向1/4t位置で1.15℃/s、3/4t位置で1.20℃/s、板厚中心で0.94℃/sとなった。また、板厚方向上面と板厚方向下面との平均冷却速度の差は0.05となり、板厚方向上面の平均冷却速度の10%以内(0.115℃/s以内)を満足した。したがって、冷却中の反りがなく、高強度および高靭性の材質の鋼材を得るために必要な条件を満たすことができた。
発明例3では、鋼材の広面部短辺方向に水平面から13°傾斜させた状態で浸漬させ、直径10mmの気泡を6NL/minで鋼材下端部に向けて噴射して、全ての部分が100℃以下になるまで冷却して製造した。平均冷却速度は板厚方向1/4tで1.15℃/s、3/4t位置で1.17℃/s、板厚中心で0.93℃/sとなった。また、板厚方向上面と板厚方向下面との平均冷却速度の差は0.02となり、板厚方向上面の平均冷却速度の10%以内(0.115℃/s以内)を満足した。したがって、冷却中の反りがなく、高強度および高靭性の材質の鋼材を得るために必要な条件を満たすことができた。
発明例4では、鋼材の広面部短辺方向に水平面から10°傾斜させた状態で浸漬させ、直径3mmの気泡を3NL/minで鋼材下端部に向けて噴射して、全ての部分が100℃以下になるまで冷却して製造した。平均冷却速度は板厚方向1/4tで1.15℃/s、3/4t位置で1.10℃/s、板厚中心で0.90℃/sとなった。また、板厚方向上面と板厚方向下面との平均冷却速度の差は0.05となり、板厚方向上面の平均冷却速度の10%以内(0.115℃/s以内)を満足した。したがって、冷却中の反りがなく、高強度および高靭性の材質の鋼材を得るために必要な条件を満たすことができた。
発明例5では、鋼材の広面部短辺方向に水平面から13°傾斜させた状態で浸漬させ、直径2mmの気泡を6NL/minで鋼材下端部に向けて噴射して、全ての部分が100℃以下になるまで冷却して製造した。平均冷却速度は、板厚方向1/4t位置で1.15℃/s、3/4t位置で1.05℃/s、板厚中心で0.90℃/sとなった。板厚方向上面と板厚方向下面との平均冷却速度の差は0.10となり、板厚方向上面の平均冷却速度の10%以内(0.115℃/s以内)を満足した。したがって、冷却中の反りがなく、高強度および高靭性の材質の鋼材を得るために必要な条件を満たすことができた。なお、気泡直径が10mmであること以外は発明例5と同じ条件である発明例3の結果と比較すると、発明例5の場合は、板厚中心での平均冷却速度は小さく、板厚方向上面と板厚方向下面との平均冷却速度の差は大きかった。これは、気泡の直径が2mmだと気泡の上昇速度が遅いため、蒸気泡の鋼材下面からの離脱・除去が発明例3の場合に比べて促進されず、下面が発明例3の場合に比べて均一に冷却されなかったためと考えられる。
比較例1では、鋼材の広面部短辺方向に水平面から13°傾斜させた状態で、気泡を噴射することなく浸漬させて、全ての部分が100℃以下になるまで冷却して製造した。平均冷却速度は、板厚方向1/4t位置で1.15℃/s、3/4t位置で1.00℃/s、板厚中心で0.86℃/sとなった。これは、気泡を噴射させていないため、十分な対流効果を得られず、下面が均一に冷却されなかったためと考えられる。また、板厚方向上面と板厚方向下面との平均冷却速度の差は0.15となり、板厚方向上面の平均冷却速度の10%以内(0.115℃/s以内)を満足しなかった。したがって、冷却中の反りがなく、高強度および高靭性の材質の鋼材を得るために必要な条件を満たすことができなかった。
比較例2では、鋼材の広面部短辺方向に水平面から9°傾斜させた状態で浸漬させ、直径3mmの気泡を3NL/minで鋼材下端部に向けて噴射して、全ての部分が100℃以下になるまで冷却して製造した。平均冷却速度は板厚方向1/4t位置で1.15℃/s、3/4t位置で1.08℃/s、板厚中心で0.89℃/sとなった。また、板厚方向上面と板厚方向下面との平均冷却速度の差は0.07となり、冷却中の反りがない鋼材を得るために必要な板厚方向上面の平均冷却速度の10%以内(0.115℃/s以内)を満足した。しかし、高強度および高靭性の材質の鋼材を得るために必要な平均冷却速度の条件を満たすことができなかった。これは、傾斜角度が9°では、気泡速度が遅いため、下面が均一に冷却されなかったためと考えられる。
比較例3では、鋼材の広面部短辺方向に水平面から13°傾斜させた状態で浸漬させ、直径10mmの気泡を2NL/minで鋼材下端部に向けて噴射して、全ての部分が100℃以下になるまで冷却して製造した。平均冷却速度は、板厚方向1/4t位置で1.15℃/s、3/4t位置で1.05℃/s、板厚中心で0.88℃/sとなった。板厚方向上面と板厚方向下面との平均冷却速度の差は0.10となり、冷却中の反りがない鋼材を得るために必要な板厚方向上面の平均冷却速度の10%以内(0.115℃/s以内)を満足した。しかし、高強度および高靭性の材質の鋼材を得るために必要な条件を満たすことができなかった。これは、空気流量が2NL/minだと噴射される気泡数が少なくなるため、蒸気泡の鋼材下面からの離脱・除去が十分には促進されず、下面が均一に冷却されなかったためと考えられる。
比較例4では、鋼材の広面部短辺方向に水平面から13°傾斜させた状態で浸漬させ、直径10mmの気泡を16NL/minで鋼材下端部に噴射して、全ての部分が100℃以下になるまで冷却して製造した。平均冷却速度は、板厚方向1/4t位置で1.15℃/s、3/4t位置で0.95℃/s、板厚中心で0.84℃/sとなった。また、板厚方向上面と板厚方向下面との平均冷却速度の差は0.20となり、板厚方向上面の平均冷却速度の10%以内(0.115℃/s以内)を満足しなかった。したがって、冷却中の反りがないうえに、高強度および高靭性の材質の鋼材を得るために必要な条件を満たすことができなかった。これは、空気流量が16NL/minだと噴射する気泡数が多すぎて鋼材下面が気泡で覆われてしまい、熱伝熱が阻害されて下面が均一に冷却されなかったためと考えられる。
1 鋼材
2 台車
3 加熱炉
4 吊り具
5 水
6 水槽
7 蒸気泡
8 蒸気膜
9 ノズル
10 気泡
11 傾斜架台
12 吊り具
13 浸漬装置

Claims (10)

  1. 鋼材の広面部を上下面として、鋼材の広面部短辺方向の水平面からの傾斜角度を10°以上45°以下になるように鋼材を水中に浸漬し、
    鋼材の下方向において、3〜15NL/minの空気流量で鋼材下面に発生する蒸気泡の直径より大きい気泡を、鋼材の傾斜方向下端部に向けて鉛直方向上向きに噴射することを特徴とする鋼材の冷却方法。
  2. 前記気泡を鋼材の広面部長辺方向の全長にわたって噴射することを特徴とする請求項1に記載の鋼材の冷却方法。
  3. 前記気泡は、直径3mm以上の気泡であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼材の冷却方法。
  4. 鋼材を浸漬冷却させる水槽を有し、前記水槽内には、
    鋼材の広面部短辺方向の水平面からの傾斜角度を10°以上45°以下に保持するための浸漬具と、
    鋼材の下方向において、3〜15NL/minの空気流量で、鋼材の傾斜方向下端部に向けて鉛直方向上向きに鋼材下面に発生する蒸気泡の直径より大きい気泡を噴射するノズルと
    を備えることを特徴とする鋼材の冷却設備。
  5. 前記ノズルの直径を3〜50mmとすることを特徴とする請求項4に記載の鋼材の冷却設備。
  6. 前記ノズルは、鋼材の広面部長辺方向の全長にわたって500mm以下のピッチで配置されることを特徴とする請求項4または5に記載の鋼材の冷却設備。
  7. 鋼材を加熱する加熱工程と、
    加熱された鋼材の広面部を上下面として、鋼材の広面部短辺方向の水平面からの傾斜角度を10°以上45°以下になるように鋼材を水中に浸漬し、鋼材の下方向において、3〜15NL/minの空気流量で鋼材下面に発生する蒸気泡の直径より大きい気泡を、鋼材の傾斜方向下端部に向けて鉛直方向上向きに噴射する冷却工程と
    を有することを特徴とする鋼材の製造方法。
  8. 前記気泡を鋼材の広面部長辺方向の全長にわたって噴射することを特徴とする請求項7に記載の鋼材の製造方法。
  9. 前記気泡は、直径3mm以上の気泡であることを特徴とする請求項7または8に記載の鋼材の製造方法。
  10. 請求項4〜6のいずれか一つに記載の鋼材の冷却設備を有することを特徴とする鋼材の製造設備。
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