JP2956093B2 - 焼入れ金属材の冷却方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、焼入れ中実棒状金属材の改良された冷却方
法に関する。

従来の技術 工具鋼、高合金鋼等の金属材は、焼入れ硬化させるこ
とによって、硬度その他の所望の性質を有するものにな
るが、焼入れ後の急冷には、通常、焼入れ冷却材を充満
した焼入れ冷却槽が使用され、焼入れ冷却剤をプロペラ
により、或いはジェット噴流により撹拌を行っている。
ジェット噴流による撹拌を行う場合、従来の焼入れ冷却
槽においては、底部或いは側部に焼入れ冷却剤を供給す
るための複数のノズルを取り付けたものが使用され、そ
して、各ノズルは、底部から上方に、或いは、側部から
横方向に焼入れ冷却剤が噴出するように取り付けられて
いる。第４図は、従来使用されている焼入れ冷却槽の一
例の概略の構成を示すもので、両側面1b,1cに、複数の
ノズル２を有する配管4,5が配置され、各ノズルからの
焼入れ冷却剤が焼入れ中実棒状金属材６の長さ方向に直
角に噴出するようになっている。

発明が解決しようとする課題 ところで、上記従来使用されている焼入れ冷却槽を使
用して焼入れ中実棒状金属材を処理すると、ノズルの存
在する近傍と、ノズルが存在しない部分とでは、焼入れ
中実棒状金属材表面に接触する焼入れ冷却剤の速度が異
なり、均一に冷却することができないという問題があっ
た。

本発明は、従来の技術における上記のような問題点に
鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的
は、均一かつ急速に冷却が可能な焼入れ中実棒状金属材
の冷却方法を提供することにある。

課題を解決するための手段 本発明者は、検討の結果、焼入れ冷却槽における焼入
れ冷却剤として、水又は水性のものを使用し、それをラ
セン流の状態で焼入れ中実棒状金属材と接触させれば、
上記の目的が達成できることを見出し、本発明を完成し
た。

すなわち、本発明の焼入れ中実棒状金属材の冷却方法
は、焼入れ冷却槽の底面と側面に、ラセン状の噴流を発
生する角度で複数の噴射ノズルを設け、該噴射ノズルか
ら水又は水性焼入れ冷却剤を噴射して、焼入れ冷却槽内
に水又は水性焼入れ冷却剤のラセン流を形成し、その中
に焼入れを行った中実棒状金属材を浸漬することを特徴
とする。

以下、本発明を図面を参酌して詳細に説明する。

第１図は、本発明を実施するために使用する焼入れ冷
却槽の横断面図、第２図は平面図、第３図は縦断面図で
ある。

焼入れ冷却槽１の底部1aには、複数の噴射ノズル2aを
設けた水又は水性焼入れ冷却剤を供給するための配管3
a,3b,3cが載置されており、また両側壁1b,1cの内面に
は、複数の噴射ノズル2b又は2cを設けた水又は水性焼入
れ冷却剤を供給するための配管４及び５が配設されてい
る。焼入れ冷却槽１の内部には、焼入れ中実棒状金属材
６を載置するための支持枠７が配設されている。また、
側壁1bには、溢流する焼入れ冷却剤を回収するための側
溝８が付設されている。

上記の焼入れ冷却槽において、配管に設けられた各噴
射ノズルは、噴射される水または水性焼入れ冷却剤が、
ラセン流を形成するような方向及び角度で配管上に並ん
でいる。すなわち、底部1cの配管に設けられた噴射ノズ
ル2aは斜め左前方で斜め上方に噴射されるようになって
おり、側壁1bの配管に設けられた噴射ノズル2bは、斜め
右前方で斜め上方に噴射されるようになっており、また
側壁1cに設けられた噴射ノズル2cは斜め左前方で斜め下
方に噴射されるようになっている。これら噴射ノズルか
ら水または水性焼入れ冷却剤を噴出させると、水又は水
性焼入れ冷却剤は槽内をラセン流となって流れ、上部か
ら溢流して側溝に流し、回収される。上記のようにラセ
ン流が形成されている焼入れ冷却槽中に、所定の温度で
焼入れ処理された中実棒状金属材を浸漬すると、中実棒
状金属材が長尺のものであっても、水又は水性焼入れ冷
却剤が中実棒状金属材表面に均等に接触するので、従来
の様な乱流むらを生じることがなくなる。また、中実棒
状金属材表面に形成される断熱層も容易に破壊すること
が可能になるので、冷却速度も向上する。

本発明において、焼入れ冷却剤としては、水、水に食
塩などの可溶性塩類を溶解した水性のものが使用され
る。油類は、粘性抵抗が大きすぎ、乱流の形成が困難で
あって冷却能が劣るので望ましくない。

実施例 以下、本発明を実施例によって説明する。

第１乃至第３図に記載の構造を有する焼入れ冷却槽
（サイズ:2150mm×7500mm×1100mm）を使用し、噴射ノ
ズルより水を噴出させることにより、循環流量7m³/分の
ラセン流を形成された。この焼入れ冷却槽の中に、870
℃の焼入れ温度を有する長さ1450mm×直径350mmのS45C
鋼材を浸漬し、急冷した。その場合の冷却速度は、2.85
℃/sec（870から300℃までの平均）であった。

比較のために、第４図に示す構造のラセン流が形成さ
れない焼入れ冷却槽を用いて、上記と同様の焼入れ鋼材
を急冷した。その場合の冷却速度は1.90℃/secであっ
た。

発明の効果 本発明は、上記のように焼入れ冷却槽において、水又
は水性の焼入れ冷却剤をラセン流として焼入れ中実棒状
金属材と接触させるから、焼入れ中実棒状金属材が長尺
の場合であっても、その表面が均一に冷却される。ま
た、焼入れ速度も速いという効果を生じる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明の方法を実施するための焼入れ冷却槽
の横断面図、第２図は平面図、第３図は縦断面図であ
り、第４図は、従来の焼入れ冷却槽の平面図である。 １……焼入れ冷却槽、1a……底部、1b,1c……側壁、2a,
2b,2c……噴射ノズル、3a,3b,3c……配管、4,5……配
管、６……焼入れ中実棒状金属材、７……支持枠、８…
…側溝。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】焼入れ冷却槽の底面と側面に、ラセン状の
   噴流を発生する角度で複数の噴射ノズルを設け、該噴射
   ノズルから水又は水性焼入れ冷却剤を噴射して、焼入れ
   冷却槽内に水又は水性焼入れ冷却剤のラセン流を形成
   し、その中に焼入れを行った中実棒状金属材を浸漬する
   ことを特徴とする焼入れ中実棒状金属材の冷却方法。