以下、本発明の一実施形態に係るプレート式熱交換器について、添付図面を参照しつつ説明する。
本実施形態に係るプレート式熱交換器は、図1及び図2に示す如く、重ね合わされた複数の伝熱プレート2…,3…を備える。複数の伝熱プレート2…,3…のそれぞれは、図3及び図4に示す如く、少なくとも四箇所に開口部20〜23,30〜33を有するとともに、表裏両面に複数の凹条24…,34…及び凸条25…,35…を有する。
より具体的には、伝熱プレート2,3は、伝熱部26,36と、伝熱部26,36の外周全周から延出した環状の嵌合部27,37とを備える。伝熱部26,36は、四箇所に開口部20〜23,30〜33を有するとともに、表裏両面に複数の凹条24…,34…及び凸条25…,35…を有する。本実施形態に係る伝熱部26,36は、四角形状に形成され、該伝熱部26,36の四隅に開口部20〜23,30〜33を有する。
伝熱部26,36の四つの開口部20〜23,30〜33のうちの二つの開口部22,23,30,31の周辺は、伝熱部26,36の一方の面(以下、第一面という)S1側に変位し、伝熱部26,36の四つの開口部20〜23,30〜33のうちの他の二つの開口部20,21,32,33の周辺は、伝熱部26,36の他方の面(以下、第二面という)S2側に変位している。なお、図3Aにおいて、開口部20〜23の周辺の領域のうち、開口部20,21の周辺の第二面側に変位した領域にハッチングを付し、図3Bにおいて、開口部20〜23の周辺の領域のうち、開口部22,23の周辺の第一面側に変位した領域にハッチングを付している。また、図4Aにおいて、開口部30〜33の周辺の領域のうち、開口部32,33の周辺の第二面側に変位した領域にハッチングを付し、図4Bにおいて、開口部30〜33の周辺の領域のうち、開口部30,31の周辺の第一面側に変位した領域にハッチングを付している。
より具体的に説明する。本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、図2及び図5に示す如く、二種類の伝熱プレート2,3(以下、一方の伝熱プレートを第一伝熱プレート2といい、他方の伝熱プレートを第二伝熱プレート3という)が交互に積層されている。第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3は、図3及び図4に示す如く、開口部20〜23,30〜33の周辺の変位方向を異にする以外は、伝熱部26,36及び嵌合部27,37の基本形態が共通している。すなわち、第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3のそれぞれは、平面視四角形状の伝熱部26,36と、該伝熱部26,36の周囲から該伝熱部26,36と面交差する方向に延出した環状の嵌合部27,37とを備える。
そして、第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3のそれぞれにおいて、伝熱部26,36に沿った第一方向の両端部のそれぞれに、第一方向と直交する第二方向に間隔をあけて二つの開口部20,21,22,23,30,31,32,33が形成されている。より具体的には、第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3のそれぞれの伝熱部26,36には、四つの開口部20〜23,30〜33(以下、四つの開口部のそれぞれを、第一開口部20,30、第二開口部21,31、第三開口部22,32、第四開口部23,33という)が形成されている。第一開口部20,30は、第一方向の一方の端部における第二方向の一方の端部に設けられ、第二開口部21,31は、第一方向の他方の端部における第二方向の他方の端部に設けられている。これに対し、第三開口部22,32は、第一方向の他方の端部における第二方向の一方の端部に設けられ、第四開口部23,33は、第一方向の一方の端部における第二方向の他方の端部に設けられている。
第一伝熱プレート2の伝熱部26において、図3Aに示す如く、第一開口部20の周辺及び第二開口部21の周辺が、凹条24…及び凸条25…の形成された他の領域に対して該伝熱部26の第二面側に変位するように形成されているのに対し、図3Bに示す如く、第三開口部22の周辺及び第四開口部23の周辺が、凹条24…及び凸条25…の形成された他の領域に対して当該伝熱部26の第一面側に変位するように形成されている。
これに対し、第二伝熱プレート3の伝熱部36において、図4Aに示す如く、第三開口部32の周辺及び第四開口部33の周辺が、凹条34…及び凸条35…の形成された他の領域に対して伝熱部36の第二面側に変位するように形成されているのに対し、図4Bに示す如く、第一開口部30の周辺及び第二開口部31の周辺が、凹条34…及び凸条35…の形成された他の領域に対して当該伝熱部36の第一面側に変位するように形成されている。
これにより、図2に示す如く、第一伝熱プレート2と第二伝熱プレート3とが交互に重ね合わされた状態で、第一伝熱プレート2の第一開口部20の周辺部の第二面が、該第一伝熱プレート2における伝熱部26の第二面側に重ね合わされた第二伝熱プレート3における伝熱部36の第一開口部30の周辺部と面接触するとともに(図2A参照)、第一伝熱プレート2の第二開口部21の周辺部の第二面が、該第一伝熱プレート2における伝熱部26の第二面側に重ね合わされた第二伝熱プレート3における伝熱部36の第二開口部31の周辺部と面接触する(図2B参照)のに対し、第一伝熱プレート2の第一開口部20の周辺部の第一面が、該第一伝熱プレート2における伝熱部26の第一面側に重ね合わされた第二伝熱プレート3における伝熱部36の第一開口部30の周辺部と離間するとともに(図2A参照)、第一伝熱プレート2の第二開口部21の周辺部の第一面が、該第一伝熱プレート2における伝熱部26の第一面側に重ね合わされた第二伝熱プレート3における伝熱部36の第二開口部31の周辺部と離間するようになっている(図2B参照)。
また、第一伝熱プレート2と第二伝熱プレート3とが交互に重ね合わされた状態で、第一伝熱プレート2の第三開口部22の周辺部の第一面が、該第一伝熱プレート2における伝熱部26の第一面側に重ね合わされた第二伝熱プレート3における伝熱部36の第三開口部32の周辺部と面接触するとともに(図2A参照)、第一伝熱プレート2の第四開口部23の周辺部の第一面が、該第一伝熱プレート2における伝熱部26の第一面側に重ね合わされた第二伝熱プレート3における伝熱部36の第四開口部33の周辺部と面接触する(図2B参照)のに対し、第一伝熱プレート2の第三開口部22の周辺部の第二面が、該第一伝熱プレート2における伝熱部26の第二面側に重ね合わされた第二伝熱プレート3における伝熱部36の第三開口部32の周辺部と離間するとともに(図2A参照)、第一伝熱プレート2の第四開口部23の周辺部の第二面が、該第一伝熱プレート2における伝熱部26の第二面側に重ね合わされた第二伝熱プレート3における伝熱部36の第四開口部33の周辺部と離間するようになっている(図2B参照)。
第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3のそれぞれにおいて、嵌合部27,37は、図2及び図6に示す如く、伝熱部26,36側から外側(先端側)に向けて拡大するように形成されている。これにより、嵌合部27,37は、二種類の伝熱プレート2,3(第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3)が交互に積層された状態で、隣り合う伝熱プレート2,3(第一伝熱プレート2又は第二伝熱プレート3)の嵌合部27,37に嵌合するように構成される。
本実施形態において、第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3のそれぞれは、二層以上の積層構造を有する。すなわち、第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3のそれぞれは、互いに重ね合わされた二つ以上の隔壁体28A,28B,38A,38Bを備えいる。
より具体的に説明すると、第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3のそれぞれは、
図7に示す積層体4をプレス成形することで、表裏両面に凹条24…,34…及び凸条25…,35…を有する形態に形成される。
積層体4は、図7及び図8に示す如く、重ね合わされた平板状の金属プレート40A,40Bであって、少なくとも四箇所に開口H…を有する二枚以上の金属プレート40A,40Bを備える。本実施形態において、積層体4は、金属プレート40A,40B間の少なくとも開口Hを包囲する領域に介装された接合防止剤41とを備える。かかる積層体4は、全体をプレス成形することで、各金属プレート40A,40Bが隔壁体28A,28B,38A,38Bになるように構成されている。
本実施形態に係る第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3を成形する積層体4は、同一形態であり、四箇所に開口H…の形成された二枚の金属プレート40A,40Bで接合防止剤41を挟み込んで形成されている。
積層体4を構成する二枚の金属プレート40A,40B(プレス成形される金属プレート40A,40B)のそれぞれにおいて、四箇所の開口H…は、図8に示す如く、伝熱プレート2,3(第一伝熱プレート2、第二伝熱プレート3)の四箇所の開口部20〜23,30〜33(第一開口部20,30、第二開口部21,31、第三開口部22,32、第四開口部23,33)に対応する位置に配置されている。すなわち、二枚の金属プレート40A,40Bのそれぞれは、伝熱部26,36になる四角形状の領域A1と、該四角形状の領域A1を包囲した環状の領域A2であって、嵌合部27,37になる環状の領域A2とを有し、開口部20〜23,30〜33になる開口H…が四角形状の領域A1の四箇所(四隅)に形成されている。
そして、二枚の金属プレート40A,40Bのうちの少なくとも何れか一方の金属プレート40A,40Bは、図7に示す如く、相手方の金属プレート40A,40Bと対向する面上に開口H…を包囲する環状凹部42A,42Bを有する。本実施形態において、環状凹部42A,42Bは、隣り合う金属プレート40A,40Bのそれぞれに設けられ、相手方の金属プレート40A,40Bの環状凹部42A,42Bと対向するよう配置されている。環状凹部42A,42Bは、削り出しや、プレス成形により形成される。本実施形態において、環状凹部42A,42Bは、金属プレート40A,40Bの一方の面上に設けられている。本実施形態において、環状凹部42A,42Bは、コイニング加工により形成されている。これにより、金属プレート40A,40Bにおける環状凹部42A,42Bの裏側は、平面状で維持している。なお、本実施形態に係る環状凹部42A,42Bの底は、平面状に形成されている。
本実施形態において、積層体4は、金属プレート40A,40Bの開口H…の周辺以外の領域に接合防止剤41を介在させている。すなわち、積層体4は、第一開口部20,30となる開口Hの周辺、第二開口部21,31となる開口Hの周辺、第三開口部22,32となる開口Hの周辺、及び第四開口部23,33となる開口Hの周辺以外の略全領域に接合防止剤41を有する。
本実施形態においては、図9に示す如く、金属プレート40A,40Bに接合防止剤41を塗布した上で、該接合防止剤41とともに金属プレート40A,40Bがコイニング加工されることで、環状凹部42A,42Bが形成される。これにより、環状凹部42A,42Bと対応する領域内にある接合防止剤41は、他の領域の接合防止剤41よりも陥没した状態になっている。なお、接合防止剤41は、一般的に、アルミナ等の酸化物粉末とバインダーとを含み、時間経過に伴って硬化する。
本実施形態において、積層体4は、二枚の金属プレート40A,40Bのそれぞれの一方の面上に接合防止剤41が塗布され、接合防止剤41同士を重ね合わせるようにして二枚の金属プレート40A,40Bが重ね合わされることで形成される。
第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3は、上記構成の積層体4をプレス成形することで、二枚の金属プレート40A,40Bのそれぞれが隔壁体28A,28B,38A,38Bになり、金属プレート40A,40Bの四角形状の領域A1から、表裏両面に凹条24…,34…及び凸条25…,35…を有する伝熱部26,36が形成されるとともに、金属プレート40A,40Bの環状の領域A2から、伝熱部26,36の外周から延出した嵌合部27,37が形成されている。
そして、第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3は、シート状のロウ材を挟んだ状態で交互に重ね合わされ、全体が加熱されることで互いに密接する部分がロウ付けされる。すなわち、プレート式熱交換器1は、隣り合う伝熱プレート2,3の嵌合部27,37同士、第一開口部20,30の周辺同士、第二開口部21,31の周辺同士、第三開口部22,32の周辺同士、第四開口部23,33の周辺同士、凸条25…,35…の点接触(交差衝合)する部分同士がロウ付けされる。また、これに併せて、各伝熱プレート2,3を構成する隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)の開口H…周辺同士がロウ付けされる。
より具体的には、図10に示す如く、複数の伝熱プレート2…,3…をロウ付けするときに、接合防止剤41の存在しない隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)の開口H…周辺同士もロウ付け(封着)される。そして、伝熱プレート2,3が積層体4をプレス成形して形成されたものであるため、従来と同様に、隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)間に介在する接合防止剤41に欠損やひび割れ等の欠損部Sが形成されることがあるが、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、伝熱プレート2,3を構成すべく隣り合う隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)のうちの少なくとも何れか一方の隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)が、相手方の隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)と対向する面上に開口H…を包囲する環状凹部42A,42Bを有するため、ロウ材Bが隔壁体28A,28B,38A,38B間(接合防止剤41の欠損部S)を通って環状凹部42A,42Bよりも奥側に流れ込むことが阻止される。
より具体的に説明する。隣り合う隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)のうちの少なくとも何れか一方の隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)の開口H…の周囲に環状凹部42A,42Bを設けることで、該環状凹部42A,42Bの存在する領域において、隣り合う金属プレート40A,40Bの間隔(空間)が他の部分よりも拡大する。
これにより、隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)間に進入したロウ材Bが、該ロウ材Bの濡れ特性や表面張力の影響によって、環状凹部42A,42Bよりも奥側(熱交換に使用される伝熱領域)に向けて進行することが阻止される。特に、本実施形態においては、環状凹部42A,42B内に接合防止剤41が配置されているため、隔壁体28A,28B,38A,38B間(本実施形態においては、欠損部S)に進入したロウ材Bに勢いがあり、環状凹部42A,42Bによる空間拡大でロウ材Bの勢い(進行)を抑えきれない状態になっても、環状凹部42A,42B内に配置された接合防止剤41の存在で、ロウ材Bの勢い(進行)が抑えられる。これにより、環状凹部42A,42Bよりも奥側に向けてのロウ材Bの進行が確実に抑えられる。これに伴い、単一の伝熱プレート2,3を構成する金属プレート40A,40B同士が固着してしまうこと(金属プレート40A,40B同士が拘束し合う)ことが阻止される。
そして、上述の如く、伝熱プレート2,3同士がロウ付けされることで、図2に示す如く、熱交換媒体Hを流通させる第一流路Xと被熱交換媒体Cを流通させる第二流路Yとが各伝熱プレート2,3を境にして交互に形成される。また、伝熱プレート2,3の四箇所の開口部20〜23,30〜33のそれぞれが連なって、第一流路X内に熱交換媒体Hを流出入させる一対の第一通路R1,R2が形成されるとともに、第二流路Y内に被熱交換媒体Cを流出入させる一対の第二通路R3,R4が形成される。すなわち、伝熱プレート2,3の第一開口部20,30が連なって、熱交換媒体Hの流入用の第一通路R1路が形成されるとともに、伝熱プレート2,3の第二開口部21,31が連なって、熱交換媒体Hの流出用の第一通路R2が形成される。また、伝熱プレート2,3の第三開口部22,32が連なって、被熱交換媒体Cの流入用の第二通路R3が形成されるとともに、伝熱プレート2,3の第四開口部23,33が連なって、被熱交換媒体Cの流出用の第二通路R4が形成される。
本実施形態において、第一開口部20,30及び第二開口部21,31が、伝熱部26,36の対角位置に配置されるとともに、第三開口部22,23及び第四開口部23,33が伝熱部26,36の対角位置に配置されているため、第一流路X内の熱交換媒体Hと第二流路Y内の被熱交換媒体Cとは流れ方向が逆向きで且つ伝熱部26,36の面直交方向から見て交差した流れになる。すなわち、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、熱交換媒体Hと被熱交換媒体Cとが対向流を形成し、伝熱プレート2,3(伝熱部26,36)を介して効率的な熱交換が可能となる。
以上のように、本実施形態に係るプレート式熱交換器1によれば、単一の伝熱プレート2,3を構成する隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)同士が固着してしまうこと(隔壁体28A,28B,38A,38B同士が拘束し合うこと)が阻止される。
従って、上記構成の伝熱プレート2,3を構成する何れかの隔壁体28A,28B,38A,38Bが腐食等で貫通しても、他の隔壁体28A,28B,38A,38Bが独立して残るため、伝熱プレート2,3が完全に貫通することが防止される。また、伝熱プレート2,3に流体圧が作用して変形しても、伝熱プレート2,3を構成する隔壁体28A,28B,38A,38Bは、互いに拘束し合うことがなく、それぞれが配置に応じた変形をする。その結果、伝熱プレート2,3(隔壁体28A,28B,38A,38B)に局所的な応力集中等が発生することを抑制でき、伝熱プレート2,3が損傷乃至破損するが防止される。
特に、環状凹部42A,42Bが、単一の伝熱プレート2,3を構成すべく隣り合う隔壁体28A,28B,38A,38Bのそれぞれに設けられ、相手方の隔壁体28A,28B,38A,38Bの環状凹部42A,42Bと対向するよう配置されているため、対向する隔壁体28A,28B,38A,38Bのそれぞれの環状凹部42A,42Bが重なり合い、当該部分での隔壁体28A,28B,38A,38Bの間隔(空間)が大きく拡大する。従って、隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)間に進入したロウ材Bが、環状凹部42A,42Bよりも外側(熱交換に使用される伝熱領域)に向けて進行することが確実に阻止される。
また、環状凹部42A,42B内には、ロウ材Bの進行を抑制する接合防止剤41が配置されているため、隔壁体28A,28B,38A,38B間に進入したロウ材Bに勢いがあり、環状凹部42A,42Bによる空間拡大でロウ材Bの勢い(進行)を抑えきれない状態になっても、環状凹部42A,42B内に配置された接合防止剤41の存在で、ロウ材Bの勢い(進行)が抑えられる。すなわち、接合防止剤41は、ロウ材Bの進行の原因となる濡れ特性等を滅却する特性を有するため、進行しようとするロウ材Bの勢いを抑えることができる。これにより、環状凹部42A,42Bよりも奥側にロウ材Bが進行することを確実に抑えることができる。また、環状凹部42A,42B内に接合防止剤41を配置すれば、上述の如く、ロウ材Bの進行が抑えられるため、開口H…の径方向に対応する環状凹部42A,42Bの幅寸法を小さくすることができる。従って、環状凹部42A,42Bを配置するために開口H…の周囲に過剰なスペースが要求されない。これにより、隔壁体28A,28B,38A,38B間でのロウ材Bの進行を確実に防止した上で、プレート式熱交換器1を小型化することができる。
また、環状凹部42A,42Bは、コイニング加工により形成されているため、隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)の環状凹部42A,42Bの形成された面とは反対側の面が面一の状態に保たれる。従って、複数の伝熱プレート2…,3…を重ね合わせたときに、隣り合う伝熱プレート2,3の開口部20〜23,30〜33周辺部同士を面接触させることができ、当該領域を確実にロウ付けすることができる。これにより、第一流路X内に熱交換媒体Hを流出入させる一対の第一通路R1,R2が第二流路Yに連通することなく液密に形成されるとともに、第二流路Y内に被熱交換媒体Cを流出入させる一対の第二通路R3,R4が第一流路Xに連通することなく液密に形成される。
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
上記実施形態において、隣り合う隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)のそれぞれが、相手方の隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)と対向する面上に開口H…を包囲する環状凹部42A,42Bを有したが、これに限定されない。例えば、図11A及び図11Bに示す如く、隣り合う隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)の何れか一方の開口H…回りに環状凹部42A,42Bを設けてもよい。このようにしても、隣り合う隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)の間隔が環状凹部42A,42Bで拡大する(空間が形成される)ため、ロウ材Bを開口H…周辺に留めること(ロウ材Bの内部への進行を阻止すること)ができる。
上記実施形態において、環状凹部42A,42Bの底が平坦に形成されたが、これに限定されない。例えば、図12Aに示す如く、環状凹部42A,42Bの底が円弧状に形成されたり、図12Bに示す如く、環状凹部42A,42Bの底が屈曲面(V字状)に形成されたりしても勿論よい。なお、環状凹部42A,42Bは、隔壁体28A,28B,38A,38B(金属プレート40A,40B)間に拡大した空間を形成するため、その断面形状は特に限定されるものではないが、一対の起立面と起立面の下端同士を接続した底面とを有する形態であることが好ましい。このようにすれば、ロウ材Bの進行経路が急激に変化する結果、ロウ材Bの進行を効率的に阻害することができる。
上記実施形態において、環状凹部42A,42Bがコイニング加工によって形成されたが、これに限定されるものではない。例えば、環状凹部42A,42Bは、金属プレート40A,40Bをプレス成形して形成したり、金属プレート40A,40Bから削り出して形成したりしてもよい。また、上記実施形態においては、コイニング加工することで、環状凹部42A,42Bの形成された面とは反対側の面が面一に形成されたが、これに限定されるものではなく、例えば、図13に示す如く、環状凹部42A,42Bがプレス成形され、環状凹部42A,42Bの反対側が突出又は膨出してもよい。
上記実施形態において、伝熱プレート2,3が二枚の金属プレート40A,40Bを重ね合わせた積層体4をプレス成形することで形成されたが、これに限定されない。例えば、伝熱プレート2,3が三枚以上の金属プレート40A,40Bを重ね合わせた積層体4をプレス成形することで形成されてもよい。また、金属プレート40A,40Bが三枚以上重ね合わされる場合、環状凹部42A,42Bが金属プレート40A,40Bの一方の面に設けられたものに限定されない。例えば、金属プレート42A,42Bにおける別の金属プレート42A,42Bと対向する面であって、金属プレート42A,42Bの両面に対して開口Hを包囲する環状凹部42A,42Bを設けてもよい。
上記実施形態において、金属プレート40A,40Bの一方の面上に接合防止剤41を塗布した後、該接合防止剤41とともに金属プレート40A,40Bをコイニング加工したが、これに限定されない。例えば、金属プレート40A,40Bの一方の面をコイニング加工することで環状凹部42A,42Bを形成し、その一方の面に接合防止剤41を塗布し、該接合防止剤41を挟み込むように二枚以上の金属プレート40A,40Bを重ね合わせるようにしてもよい。
また、上記実施形態において、隣り合う金属プレート40A,40Bのそれぞれの一方の面に接合防止剤41を塗布し、これらを挟み込むように金属プレート40A,40Bを重ね合わせて積層体4を作製したが、これに限定されない。例えば、隣り合う金属プレート40A,40Bの何れか一方に接合防止剤41を塗布し、他方の金属プレート40A,40Bを重ね合わせることで積層体4を作製してもよい。
上記実施形態において、金属プレート40A,40Bによって接合防止剤41を挟み込んだ積層体4を採用したが、これに限定されない。例えば、接合防止剤41を挟み込むことなく金属プレート40A,40Bを直接重ね合わせた積層体4を採用し、該積層体4をプレス成形して伝熱プレート2,3を形成してもよい。このようにしても、開口H…を包囲する環状凹部42A,42Bを設けることで、ロウ材Bが環状凹部42A,42Bよりも奥側に流れ込むことが阻止される。但し、ロウ材Bの進行を確実に防止するには、接合防止剤41が少なくとも環状凹部42A,42B内に配置されることが好ましいことは言うまでもない。