以下、本発明のサージ保護回路、及び、通信装置を適用した実施の形態について説明する。
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1のサージ保護回路100A、100Bを含むサーバ20が高速伝送路10A、10Bによってサーバ30に接続された状態を示す図である。
高速伝送路10A、10Bは、例えば、Ethernet(登録商標)仕様の高速LAN(Local Area Network)ケーブルであり、1Gbpsの通信速度を実現する1000BASE-T規格の高速伝送路の一例である。
なお、高速伝送路10A、10Bは、Ethernet(登録商標)仕様のものに限定されず他の規格の高速伝送路であってもよい。また、通信速度は1000BASE-T規格のものに限定されず、他の通信速度又は他の規格に適合した高速伝送路であってもよい。
高速伝送路10A、10Bは、サーバ20とサーバ30との間を接続している。高速伝送路10A、10Bは、それぞれ、図1に実線で示すように、一対の信号線を含む。
実施の形態1では、高速伝送路10A、10Bは、少なくとも一部が屋外を通ってサーバ20とサーバ30とを接続している。
なお、一例として、高速伝送路10Aは、サーバ20からサーバ30にデータを送信する際に用いられ、高速伝送路10Bは、サーバ20がサーバ30からデータを受信(サーバ30からサーバ20にデータを送信)する際に用いられる。このようなデータの伝送方向は一例であり、上述とは逆方向にデータを伝送してもよい。
サーバ20は、サージ保護回路100A、100Bを含む。サーバ20は、サージ保護回路100A、100Bを介して、高速伝送路10A、10Bに接続されている。サーバ20は、サージ保護回路100A、100Bを含む通信装置又は情報処理装置の一例である。
実施の形態1では、高速伝送路10A又は10Bに雷が落ちた場合に、サージ保護回路100A又は100Bを用いることにより、雷によるサージ電圧からサーバ20を保護する形態について説明する。
サーバ20は、サージ保護回路100A、100Bの他に、主な構成要素として、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)21、チップセット22、23、メモリ24、ハードディスク25、PCI(Peripheral Components Interconnect)スロット26、及びネットワークカード40A、40Bを含む。
サーバ20は、さらに、USB(Universal Serial Bus)コネクタ、グラフィックス部、及びBIOS(Basic Input Output System)ROM(Read Only Memory:読み出し専用メモリ)等を含んでもよいが、ここでは図示を省略する。
CPU21は、チップセット22に接続されており、チップセット22を介して、チップセット23、主記憶装置であるメモリ24、及びPCIスロット26に接続されている。CPU21は、例えば、チップセット22を介してメモリ24との間でデータの読み出し又は書き込みを行いながら、演算処理を実行する。CPU21は、演算処理部の一例である。
チップセット22は、所謂ノースブリッジ(North Bridge)としてのチップセットであり、メモリコントローラ及びグラフィックスインターフェイス等の制御回路を含む。チップセット22には、CPU21、チップセット23、メモリ24、及びPCIスロット26がバスを介して接続される。
チップセット23は、所謂サウスブリッジ(South Bridge)としてのチップセットである。サーバ20がUSBコネクタ、グラフィックス部、及びBIOSROM等を含む場合は、チップセット23は、USBコネクタ、グラフィックス部、及びBIOSROM等を接続するI/O(Input/Output)ポート等を含む。
メモリ24は、サーバ20の主記憶装置であり、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)を用いることができる。メモリ24は、チップセット22を介してCPU21に接続されており、CPU21によってデータの読み出し又は書き込みが行われる。
ハードディスク25は、外部記憶装置であり、バスを介してチップセット23に接続されている。ハードディスク25は、CPU21が演算処理を行うために必要なデータ、CPU21が演算処理によって生成したデータ、あるいは、PCIスロット26又はUSBコネクタ等を通じてサーバに入力されたデータを保管する。
PCIスロット26は、PCI規格のコネクタ又は端子等を有する外部メモリ又はネットワークカード等を接続するためのスロットである。
PCIスロット26には、ネットワークカード40A、40Bが差し込まれている。ネットワークカード40A、40Bは、それぞれ、サーバ20を高速伝送路10A、10Bに接続するために設けられている。
ネットワークカード40A、40Bは、それぞれ、サージ保護回路100A、100Bを介して高速伝送路10A、10Bに接続されている。ネットワークカード40Aの一対の端子41A、41Bは、サージ保護回路100Aの端子102A、102Bに接続されており、ネットワークカード40Bの一対の端子41A、41Bは、サージ保護回路100Bの端子102A、102Bに接続されている。
サーバ20のネットワークカード40Aは、サージ保護回路100A及び高速伝送路10Aを介して、サーバ30のネットワークカード80Aにデータを送信する。サーバ20のネットワークカード40Bは、高速伝送路10B及びサージ保護回路100Bを介して、サーバ30のネットワークカード80Bからデータを受信する。
ネットワークカード40A、40Bは、ともにPHY回路50及びデータリンク回路60を含む。
PHY回路50は、ネットワークにおけるプロトコルの機能を表す7層のうちの第1層である所謂物理層(PHYsical layer)でのデータ伝送を行う回路である。PHY回路50としては、高速通信機能と、データのアナログ/デジタル変換(AD変換、DA変換)を行う機能を有するPHYチップを用いればよい。
データリンク回路60は、ネットワークにおけるプロトコルの機能を表す7層のうちの第2層である所謂データリンク層でのデータ転送を行う回路である。データリンク回路60は、PHY回路50との間でデジタルデータの転送を行うとともに、PCIスロット26との間でデジタルデータの転送を行う。
なお、ネットワークカード40Aは、PHY回路50と一対の端子41A、41Bとの間に、チョークコイル、又は、チョークコイルとパルストランスを含むが、図1ではチョークコイル等の図示を省略する。同様に、ネットワークカード40Bは、PHY回路50と一対の端子41A、41Bとの間に、チョークコイル、又は、チョークコイルとパルストランスを含むが、図1ではチョークコイル等の図示を省略する。
サーバ30は、サーバ20からサージ保護回路100A、100Bを取り除くとともに、ネットワークカード40A、40Bの代わりにネットワークカード80A、80Bを含むこと以外は、サーバ20と同様の構成を有する。
図1では、説明の便宜上、サーバ30の構成要素のうちのネットワークカード80A、80Bだけを示し、ネットワークカード80A、80B以外のものを省略する。ネットワークカード80Aの一対の端子81A、81Bは、高速伝送路10Aに接続されており、ネットワークカード80Bの一対の端子81A、81Bは、高速伝送路10Bに接続されている。
サーバ30のネットワークカード80Aは、サージ保護回路100A及び高速伝送路10Aを介して、サーバ20のネットワークカード40Aからデータを受信する。サーバ30のネットワークカード80Bは、高速伝送路10B及びサージ保護回路100Bを介して、サーバ20のネットワークカード40Bにデータを送信する。
ここで、サーバ30がサージ保護回路100A、100Bを含まないのは、実施の形態1では、サーバ30が雷によるサージ電圧から保護する必要のない環境に設置されているものとして取り扱うためである。ただし、サーバ30を雷によるサージ電圧から保護する場合には、サーバ20と同様に、サーバ30にサージ保護回路100A、100Bを追加すればよい。
サージ保護回路100A、100Bは、それぞれ、端子101A、101B、102A、102Bを含む。サージ保護回路100Aの端子101A、101Bは、それぞれ、高速伝送路10Aの一対の信号線(一対の実線で示す信号線)に接続されている。同様に、サージ保護回路100Bの端子101A、101Bは、それぞれ、高速伝送路10Bの一対の信号線(一対の実線で示す信号線)に接続されている。
サージ保護回路100Aの端子102A、102Bは、それぞれ、ネットワークカード40Aの一対の端子41A、41Bに接続されている。同様に、サージ保護回路100Bの端子102A、102Bは、それぞれ、ネットワークカード40Bの一対の端子41A、41Bに接続されている。
実施の形態1では、サーバ20にサージ保護回路100A又は100Bを内蔵させることにより、高速伝送路10A又は10Bに雷が落ちた場合に、雷によるサージ電圧(雷サージ電圧)からサーバ20を保護する。
なお、以下では、サージ保護回路100A、100Bを区別しない場合には、単にサージ保護回路100と称す。同様に、ネットワークカード40A、40Bを区別しない場合には、単にネットワークカード40と称し、ネットワークカード80A、80Bを区別しない場合には、単にネットワークカード80と称す。また、高速伝送路10A、10Bを区別しない場合には、単に高速伝送路10と称す。
次に、図2を用いて、実施の形態1のサージ保護回路100について説明する。
図2は、実施の形態1のサージ保護回路100と周辺の回路構成を示す図である。
図2には、サーバ20の構成要素としてネットワークカード40及びサージ保護回路100を示し、その他の構成要素は省略する。また、サーバ30の構成要素として、ネットワークカード80を示し、その他の構成要素は省略する。
サージ保護回路100は、端子101A、101B、102A、102B、線路110A、110B、クランプ回路120A、120B、抵抗器130A、130B、及びダイオード140A、140Bを含む。
端子101A、101Bは、高速伝送路10の一対の信号線に接続される。端子101A、101Bとしては、高速伝送路10の規格に対応したコネクタを用いることができる。端子101A、101Bは、第1端子の一例である。
端子102A、102Bは、ネットワークカード40の端子41A、41Bに接続される。端子102A、102Bは、ネットワークカード40のチョークコイル42及びパルストランス43を介して、PHY回路50に接続される。端子102A、102Bは、第2端子の一例である。
線路110A、110Bは、端子101A、101Bと、端子102A、102Bとの間をそれぞれ接続する一対の線路である。線路110Aには、クランプ回路120Aと抵抗器130Aが別々に分岐して接続されるとともに、ダイオード140Aが挿入されている。同様に、線路110Bには、クランプ回路120Bと抵抗器130Bが別々に分岐して接続されるとともに、ダイオード140Bが挿入されている。
クランプ回路120Aは、分岐点111Aにおいて線路110Aから分岐してフレームグランドFG(Frame Ground)に接続される線路に挿入される。分岐点111Aは、線路110Aに抵抗器130Aが接続される線路が分岐する分岐点112Aよりも端子101Aに近い側に位置する。
クランプ回路120Bは、分岐点111Bにおいて線路110Bから分岐してフレームグランドFGに接続される線路に挿入される。分岐点111Bは、線路110Bに抵抗器130Bが接続される線路が分岐する分岐点112Bよりも端子101Bに近い側に位置する。
クランプ回路120Aは、図2に示すように、バリスタ121Aと4つのダイオード122Aとをブリッジ状に接続した回路である。バリスタ121Aに、4つのダイオード122Aを追加して、ブリッジ状に接続することにより、バリスタ121Aを単独でクランプ回路120Aの代わりに用いる場合に比べて、クランプ回路120Aの浮遊容量を大幅に低減することができる。
同様に、クランプ回路120Bは、図2に示すように、バリスタ121Bと4つのダイオード122Bとをブリッジ状に接続した回路である。バリスタ121Bに、4つのダイオード122Bを追加して、ブリッジ状に接続することにより、バリスタ121Bを単独でクランプ回路120Bの代わりに用いる場合に比べて、クランプ回路120Bの浮遊容量を大幅に低減することができる。
このようなクランプ回路120A、120Bとしては、例えば、SEMTECH社のTVS素子を用いることができる。
クランプ回路120Aは、高速伝送路10の一対の信号線の一方(端子101Aに接続されている信号線)に雷が落ちた場合に、端子101Aから線路110Aに侵入する雷サージ電圧を所定電圧(クランプ電圧)にクランプする。クランプ回路120Aのクランプ電圧は、例えば、20Vである。
クランプ回路120Bは、高速伝送路10の一対の信号線の他方(端子101Bに接続されている信号線)に雷が落ちた場合に、端子101Bから線路110Bに侵入する雷サージ電圧を所定電圧(クランプ電圧)にクランプする。クランプ回路120Bのクランプ電圧は、例えば、20Vである。
なお、クランプ回路120A、120Bのクランプ電圧は、バリスタ121A、121Bのインピーダンスが低下する電圧値によって決まる。すなわち、バリスタ121A、121Bのインピーダンスが低下する電圧値が20Vである場合に、クランプ回路120A、120Bのクランプ電圧が20Vになる。
しかしながら、クランプ回路120A、120Bのクランプ電圧は、20Vに限られず、ダイオード140Aの逆耐圧より低ければ、20V以外の電圧値であってもよい。
抵抗器130A、130Bは、それぞれ、線路110A、110Bの分岐点112A、112Bと、シグナルグランドSG(Signal Ground)との間に挿入されている。分岐点112A、112Bと、シグナルグランドSGとの間の線路は、信号グランド線の一例であり、抵抗器130A、130Bは、信号グランド線に挿入される抵抗器の一例である。
抵抗器130A、130Bは、それぞれ、ネットワークカード40の抵抗器44からパルストランス43及びチョークコイル42を介してダイオード140A、140Bに供給されるバイアス電流をシグナルグランドSGに誘導するために設けられている。
抵抗器130A、130Bの抵抗値は、それぞれ、ダイオード140A、140Bをオンにさせるために必要なバイアス電圧がダイオード140A、140Bに印加されるように、適切な値に設定すればよい。
ダイオード140A、140Bは、それぞれ、線路110A、110Bの分岐点112A、112Bと、端子102A、102Bとの間に挿入される。ダイオード140A、140Bは、それぞれ、アノードが端子102A、102Bに接続され、カソードが分岐点112A、112Bに接続される。
ダイオード140A、140Bは、それぞれ、端子102A、102Bから分岐点112A、112Bに向かう整流方向を有し、逆耐圧がクランプ回路120A、120Bのクランプ電圧よりも大きい半導体スイッチ素子の一例である。
ダイオード140A、140Bは、それぞれ、ネットワークカード40の抵抗器44に接続される電源Vccから抵抗器44、パルストランス43、チョークコイル42、端子41A、41B、及び端子102A、102Bを介して供給されるバイアス電圧によってオンにされる。
ダイオード140A、140Bがオンの状態では、交流信号はダイオード140A、140Bを双方向に流れることが可能である。このため、ダイオード140A、140Bがオンの状態では、サージ保護回路100の端子101A、101Bと、端子102A、102Bとの間で、双方向にデータを伝送することができる。データは交流的な信号としてサーバ20とサーバ30の間で伝送される。
一方、端子101A、101Bを介して線路110A、110Bに雷サージ電圧が入力されると、クランプ回路120A、120Bによって雷サージ電圧がクランプされることにより、分岐点111A、111Bよりもダイオード140A、140B側の電位は、クランプ回路120A、120Bのクランプ電圧と等しくなる。
このため、端子101A、101Bを介して線路110A、110Bに雷サージ電圧が入力されると、ダイオード140A、140Bのカソードに20V程度のクランプ電圧が印加される。
このとき、ダイオード140A、140Bは、逆方向バイアスが印加されることによってオフにされる。
また、ダイオード140A、140Bの逆耐圧は、クランプ回路120A、120Bのクランプ電圧よりも高いので、ダイオード140A、140Bがカソードに印加されるクランプ電圧によって破壊されることはなく、ダイオード140A、140Bはオフの状態に保持される。
すなわち、雷サージ電圧によってダイオード140A、140Bが破壊されることはなく、また、ダイオード140A、140Bがオフになることによって、ネットワークカード40を雷サージ電圧から保護することができる。
従って、実施の形態1のサージ保護回路100を高速伝送路10とネットワークカード40との間に挿入すれば、高速伝送路10に雷が落ちた場合に、サージ保護回路100で雷サージ電圧からサーバ20を保護することができる。
ネットワークカード40は、PHY回路50及びデータリンク回路60に加えて、一対の端子41A、41B、チョークコイル42、パルストランス43、及び抵抗器44を含む。
チョークコイル42は、2つのコイル42A、42Bを含む。2つのコイル42A、42Bは、それぞれ、端子41A、41Bと、パルストランス43の一次側コイル43A1、43B1との間に挿入されている。図2において、2つのコイル42Aと42Bとの間に示す二重線は、2つのコイル42A、42Bに共通のコアを表す。2つのコイル42A、42Bは、同一極性で巻回されている。チョークコイル42は、サージ保護回路100とパルストランス43との間で、ノイズを遮断するために設けられている。ここでいうノイズとは、例えば、高速伝送路10の途中で外部から侵入するノイズをいう。
パルストランス43は、一次側コイル43A1、43B1と、二次側コイル43A2、43B2とを含む。一次側コイル43A1、43B1と、二次側コイル43A2、43B2とは、交流的に結合されている。
一次側コイル43A1と43B1との中点には、抵抗器44を介して、電源Vccが接続されている。
パルストランス43は、チョークコイル42とPHY回路50との間に設けられる広帯域伝送トランスであり、高速伝送路10に印加されるノイズからPHY回路50及びデータリンク回路60を保護するために設けられている。
抵抗器44は、パルストランス43の一次側コイル43A1及び43B1の中点と、電源Vccとの間に挿入されている。抵抗器44の抵抗値は、ダイオード140A、140Bをオンにさせるために必要なバイアス電圧がダイオード140A、140Bに印加されるように、適切な値に設定すればよい。
抵抗器44の抵抗値は、一次側コイル43A1及び43B1、チョークコイル42、及びダイオード140A、140Bを介して分岐点112A、112Bに印加される電圧値が、所定の電圧値になるように、設定されている。分岐点112A、112Bの電圧値は、ダイオード140A、140Bの電圧値に等しい。
ここで、ダイオード140A、140Bへのバイアス電流は、電源Vcc、抵抗器44、パルストランス43の一次側コイル43A1、43B1、チョークコイル42、端子41A、41B、及び端子102A、102Bを経て、ダイオード140A、140Bのアノードに流入する。
高速伝送路10を伝送されるデータの信号波高値は、ピーク・トゥ・ピークで1V(1Vpp)程度であるので、分岐点112A、112Bでのバイアス電圧が約2V強であることとする。
また、電源Vccの電圧が12V、ダイオード140A、140Bのオン電流を1mAとすると、抵抗器130A、130Bの抵抗値R1、R2は、R1=R2=2V/1mA≒2.2kΩと求まる。
このため、抵抗器44の抵抗値R3は、R3=(Vcc−2V)/2mA≒4.7kΩと求まる。なお、ダイオード140A、140Bでの電圧降下は、約0.6Vである。
サーバ30のネットワークカード80は、PHY回路50及びデータリンク回路60に加えて、パルストランス82を含む。パルストランス82は、一次側コイル82A1、82B1と、二次側コイル82A2、82B2を含む。パルストランス82の構成は、一次側コイル82A1及び82B1の中点にバイアス電圧が印加されていないこと以外は、パルストランス43と同様である。
以上のように、実施の形態1のサージ保護回路100によれば、分岐点112A、112Bと端子102A、102Bとの間にそれぞれ挿入したダイオード140A、140Bに、ネットワークカード40から順方向バイアス電圧を印加している。
また、このような順方向バイアス電圧の印加に加えて、ダイオード140A、140Bの逆耐圧をクランプ回路120A、120Bのクランプ電圧よりも高く設定している。ダイオード140A、140Bとしては、例えば、逆耐圧が180V程度のものを選択すればよい。例えば、東芝セミコンダクター&ストレージ社のJDP2S12CR(シリコンエピタキシャルPIN形ダイオード)を用いることができる。
ダイオード140A、140Bは、オン抵抗が小さく、容量が小さい。例えば、上述の製品の場合は、オン抵抗値が0.4Ω程度であり、容量は1.0pF程度である。
従って、分岐点112A、112Bと端子102A、102Bとの間にダイオード140A、140Bをそれぞれ挿入したサージ保護回路100は、浮遊容量が小さいため、伝送特性の劣化を抑制でき、高速伝送路10への対応が容易である。
ダイオード140A、140Bには、ネットワークカード40から順方向バイアス電圧が印加されることにより、高速伝送路10に雷が落ちていない通常の動作時には、ダイオード140A、140Bはオンになり、交流信号を双方向に伝送可能である。
このため、実施の形態1によれば、高速伝送路10に適したサージ保護回路100を提供することができる。
また、実施の形態1のサージ保護回路100は、クランプ回路120A、120Bのクランプ電圧よりも大きい逆耐圧を有するダイオード140A、140Bを含む。このため、高速伝送路10に雷が落ちた場合には、ダイオード140A、140Bをオフすることにより、雷サージ電圧からサーバ20を効果的に保護することができる。
ここで、図3及び図4を用いて、実施の形態1のサージ保護回路100を含むサーバ20の雷サージの試験と、試験結果について説明する。
図3は、実施の形態1のサージ保護回路100を含むサーバ20を試験用の伝送路11に接続した状態を示す図である。
試験用の伝送路11は、高速伝送路10と同様に一対の線路11A、11Bを含む。線路11Aには、スイッチSW、抵抗値が15Ωの抵抗器、及び抵抗値が25Ωの抵抗器が挿入されている。また、線路11Aと線路11Bとの間には、図3に示すように、静電容量が20μFのキャパシタ、抵抗値が50Ωの抵抗器、及び静電容量が0.2μFのキャパシタが接続されている。また、線路11BはフレームグランドFGに接続されている。
このような試験用の伝送路11において、静電容量が20μFのキャパシタに+4kV又は−4kVの電圧を充電させた状態で、スイッチSWを閉じることにより、線路11A、11Bに雷が落ちた状態を人工的に発生させて、サージ保護回路100の試験を行う。
図3では、線路11Aを端子101Aに接続し、線路11Bを端子101Bに接続した状態で試験を行う状態を示すが、接続を切り替えることにより、線路11Aを端子101Bに接続し、線路11Bを端子101Aに接続した状態でも試験も行う。
このようにして、端子101Aと端子101Bのそれぞれに雷サージが入力する試験を行う。
図4は、実施の形態1のサージ保護回路100の雷サージの試験結果を示す図であり、(A)は線路11Aでの点T1における電圧の時間変化を表し、(B)は、線路11Aでの点T1における電流の時間変化を表す。
ここでは、静電容量が20μFのキャパシタに+4kV又は−4kVの電圧を充電した状態で、スイッチSWを閉じることにより、雷サージの立ち上がりが10μsの間に行われ、立ち下がりが700μsの間に行われる、所謂10/700μs試験を行った。
図4(A)、(B)には、フレームグランドFGに接続される線路11Bに対して、線路11Aに正の電圧を印加した場合の電圧及び電流の時間変化を示す。
図4(A)に示すように、点T1におけるサージ電圧は、約10μsの間に220V上昇している。また、図4(B)に示すように、点T1におけるサージ電流は、約10μsの間に、約100A上昇している。
ここで、線路11Aに雷が落ちた場合を考えると、点T1に生じる220Vのサージ電圧は、クランプ回路120Aによって20Vにクランプされる。そして、ダイオード140Aのカソードの電圧が20Vに上昇することにより、ダイオード140Aはオフになる。
このため、実施の形態1のサージ保護回路100で、雷サージを遮断することができる。
また、ここで、図5を用いて、比較用のサージ保護回路について説明する。
図5は、比較用のサージ保護回路を示す図である。図5において、図2に示す構成要素と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
図5に示すサーバ20Aは、一対の端子27A、27B、一対の線路28A、28B、及びネットワークカード90を含む。また、サーバ20Aは、サージ保護回路として、回路(A)、(B)、(C)を含む。回路(C)はネットワークカード90に含まれる。ネットワークカード90は、パルストランス43、PHY回路50、及びデータリンク回路60を含む。
サーバ20Aの一対の端子27A、27Bは、高速伝送路10を介して、サーバ30に接続されている。一対の端子27A、27Bには、線路28A、28Bを介して、ネットワークカード90が接続されている。
線路28A、28Bの分岐点28A1、28B1からフレームグランドFGに分岐する一対の線路には、それぞれ、回路(A)が挿入される。また、線路28A、28Bには、分岐点28A1、28B1と、ネットワークカード90のパルストランス43の一次側コイル43A1、43B1との間において、それぞれ、回路(B)が挿入される。
また、ネットワークカード90のパルストランス43の二次側コイル43A2、43B2と、PHY回路50との間の一対の線路の間には、回路(C)が接続される。すなわち、回路(C)は、二次側コイル43A2及び43B2と並列に接続される。
このような比較用のサージ保護回路の回路(A)には、例えば、バリスタを用いることが考えられる。回路(A)として用いるバリスタは、実施の形態1のサージ保護回路100のクランプ回路120A、120Bに含まれるバリスタ121A、121Bと同様のものである。バリスタは、所定以上の大きさの電圧が印加されると、インピーダンスが低下するため、雷サージによる電流をフレームグランドFGに誘導することができる。
しかしながら、バリスタは、単独では、浮遊容量が例えば数百pF程度と大きいため、例えば、1Gbpsオーダでデータの高速伝送を行う高速伝送路10に(サーバ20Aの内部の電子部品として)接続すると、データの伝送波形に大きな歪みが生じ、高速伝送路10のサージ保護回路として用いることは困難である。
また、回路(A)には、ガスチューブを用いることが考えられる。ガスチューブは、気体の放電現象を利用しており、一般的にサージ保護用の素子として用いられている。しかし、ガスチューブは、クランプ電圧が90V程度と比較的高いため、サージ電圧(サージ電流)を遮断しきれないおそれがあり、パルストランス43の一次側コイル43A1、43B1が破損する場合がある。また、クランプがかかるまでに、10μs程度の遅延時間があるため、パルストランス43の損傷度合が増大する可能性がある。
従って、回路(A)としてガスチューブを用いることは、高速伝送路10のサージ保護回路としては不向きである。
また、回路(B)には、ポリスイッチを用いることが考えられる。一般に、ポリスイッチは、正の温度係数を持つサーミスタであり、素子温度がある温度より上昇すると、急激に抵抗値が増大する素子である。温度上昇に伴う抵抗値の増大により、過電流等から素子を保護するために用いられる。
しかしながら、抵抗値が増大して雷サージ電圧(雷サージ電流)が遮断されるまでに、約500μs程度の遅延時間があるため、データの伝送速度が高い高速伝送路10には不向きである。また、耐圧が約60V程度であるため、雷サージ電圧によって破損する可能性があることからも、高速伝送路10を雷サージから保護するためのサージ保護回路としては、十分な適格性を有しているとは言えない。
また、回路(C)には、サージアブソーバを用いることが考えられる。一般に、サージアブソーバは、通常時は高い抵抗値を有するが、ある一定以上の電圧が印加されると抵抗値が急激に低下するため、印加される電圧を制限するために用いられる素子である。
しかしながら、PHY回路50の電源電圧は低いため、サージアブソーバでPHY回路50の電源電圧以下に雷サージ電圧をクランプすることは困難である。
以上のように、回路(A)、(B)、(C)を含む比較用のサージ保護回路では、高速伝送路10を雷サージから十分に保護することはできない。
これに対して、実施の形態1のサージ保護回路100(図2参照)は、分岐点112A、112Bと端子102A、102Bとの間にそれぞれ挿入したダイオード140A、140Bに、ネットワークカード40から順方向バイアス電圧を印加している。
また、このような順方向バイアス電圧の印加に加えて、ダイオード140A、140Bの逆耐圧をクランプ回路120A、120Bのクランプ電圧よりも高く設定している。
従って、実施の形態1によれば、高速伝送路10に適したサージ保護回路100を提供することができる。
なお、以上では、ダイオード140A、140Bを半導体スイッチ素子の一例として用いる形態について説明した。しかしながら、ダイオード140A、140Bと同一方向の整流方向を有し、かつ、ダイオード140A、140Bと同等の逆耐圧を有し、さらに、ダイオード140A、140Bと同程度に小さい浮遊容量を有する素子であれば、ダイオード140A、140Bの代わりに用いてもよい。
また、以上では、サージ保護回路100(100A、100B)がサーバ20の内部に含まれる形態について説明したが、サージ保護回路100は、サーバ20の外部に設けられて、高速伝送路10に接続されてもよい。
また、以上では、サージ保護回路100が一対の線路110A、110Bのそれぞれにダイオード140A、140Bを挿入する形態について説明した。しかしながら、線路110A、110Bのいずれか一方のみにダイオード(140A又は140B)を挿入すれば足りる場合は、サージ保護回路100がダイオード140A又は140Bのいずれか一方のみを含む構成であってもよい。例えば、線路110A、110Bのうちのいずれか一方を雷サージから保護する必要がないような場合には、サージ保護回路100は、ダイオード140A又は140Bのいずれか一方のみを含む構成であってよい。また、このような場合には、クランプ回路120A、120B、抵抗器130A、130Bについても、一方のみであってもよい。
<実施の形態2>
図6は、実施の形態2のサージ保護回路200と周辺の回路構成を示す図である。
実施の形態2のサージ保護回路200は、サーバ20Bに含まれている。実施の形態2のサーバ20Bは、実施の形態1のサーバ20(図1及び図2参照)のサージ保護回路100をサージ保護回路200に置き換えたものであり、その他の構成は、実施の形態1のサーバ20と同様である。
サージ保護回路200は、端子101A、101B、102A、102B、線路110A、110B、ガスチューブ220A、220B、抵抗器130A、130B、及びダイオード140A、140Bを含む。
すなわち、実施の形態2のサージ保護回路200は、実施の形態1のサージ保護回路100のクランプ回路120A、120Bをガスチューブ220A、220Bに置き換えたものである。ガスチューブ220A、220Bは、クランプ回路の一例である。
実施の形態2のサージ保護回路200は、雷サージが生じていない場合には、実施の形態1のサージ保護回路100と同様に、ダイオード140A、140Bがネットワークカード40から供給される順方向バイアス電圧によってオンにされるため、同様に動作する。
また、高速伝送路10に雷サージが生じて、端子101A又は101Bから線路110A又は110Bに雷サージ電圧が入力された場合には、線路110A又は110Bに入力された雷サージ電圧をガスチューブ220A、220Bが90V程度までクランプする。
そして、(端子101A又は101Bのうち雷サージ電圧が入力された方に対応するダイオード140A又は140Bは、逆方向バイアス電圧が印加されることによってオフになる。このため、雷サージはガスチューブ220A又は220Bと、ダイオード140A又は140Bとによって遮断される。
従って、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、雷サージからネットワークカード40を保護することができ、これにより、雷サージからサーバ20Bを保護することができる。
なお、実施の形態2のサージ保護回路200で用いるガスチューブ220A、220Bは、実施の形態1のサージ保護回路100で用いるクランプ回路120A、120Bに比べて、クランプがかかるまでに、10μs程度の遅延時間がある。
しかしながら、ダイオード140A、140Bの逆耐圧は大きく、約180Vであるため、ガスチューブ220A、220Bに多少の遅延時間があっても、サージ保護回路200で雷サージを遮断することができ、サーバ20Bを雷サージから保護することができる。
以上、実施の形態2のサージ保護回路200は、実施の形態1のサージ保護回路100と同様に、分岐点112A、112Bと端子102A、102Bとの間に、浮遊容量が小さいダイオード140A、140Bをそれぞれ挿入しているため、伝送特性の劣化を抑制でき、高速伝送路10への対応が容易である。
このため、実施の形態2によれば、高速伝送路10に適したサージ保護回路200を提供することができる。
<実施の形態3>
図7は、実施の形態3のサージ保護回路300と周辺の回路構成とを示す図である。
実施の形態3のサージ保護回路300は、サーバ20Cに含まれている。実施の形態3のサーバ20Cは、サージ保護回路300とネットワークカード340とを含む。
実施の形態3のサーバ20Cは、実施の形態1のサーバ20(図1及び図2参照)のサージ保護回路100及びネットワークカード40を、それぞれ、サージ保護回路300及びネットワークカード340に置き換えたものであり、その他の構成は、実施の形態1のサーバ20と同様である。
サージ保護回路300は、端子101A、101B、102A、102B、線路110A、110B、クランプ回路120A、120B、抵抗器130A、130B、ダイオード140A、140B、及び抵抗器350A、350Bを含む。
すなわち、実施の形態3のサージ保護回路300は、実施の形態1のサージ保護回路100に、分岐点113Aと電源Vccとの間の線路に挿入される抵抗器350Aと、分岐点113Bと電源Vccとの間の線路に挿入される抵抗器350Bとを追加したものである。
サージ保護回路300は、ダイオード140A、140Bに順方向バイアス電圧を印加するために、分岐点113Aと電源Vccとの間の線路に挿入される抵抗器350Aと、分岐点113Bと電源Vccとの間の線路に挿入される抵抗器350Bとを含む。
また、実施の形態3のサーバ20Cに含まれるネットワークカード340は、実施の形態1のサーバ20に含まれるネットワークカード40から、一次側コイル43A1及び43B1の中点と電源Vccとの間に抵抗器44(図2参照)を挿入する線路を取り除いた構成を有する。
これは、サージ保護回路350がダイオード140A、140Bに順方向バイアス電圧を印加する回路を含むことにより、実施の形態1のサーバ20に含まれるネットワークカード40のように、一次側コイル43A1及び43B1の中点と電源Vccとの間に抵抗器44(図2参照)を挿入する線路が不要になったためである。
サージ保護回路300は、雷サージが生じていないときには、電源Vccから抵抗器350Aと分岐点113Aを経て、ダイオード140Aに順方向バイアス電圧が印加される。ダイオード140Aを順方向に通流するバイアス電流は、分岐点112Aと抵抗器130Aを経て、シグナルグランドSGに流れる。
同様に、雷サージが生じていないときには、電源Vccから抵抗器350Bと分岐点113Bを経て、ダイオード140Bに順方向バイアス電圧が印加される。ダイオード140Bを順方向に通流するバイアス電流は、分岐点112Bと抵抗器130Bを経て、シグナルグランドSGに流れる。
このように、雷サージが生じていないときには、ダイオード140A、140Bがオンにされるため、実施の形態1のサージ保護回路100と同様に、高速伝送路10を介して、サーバ20Cとサーバ30との間で双方向のデータ通信を行うことができる。
また、高速伝送路10に雷が落ちて雷サージが生じた場合には、実施の形態1のサージ保護回路100と同様に、雷サージ電圧はクランプ回路120A又は120Bによってクランプされ、クランプ電圧によってダイオード140A、140Bに逆方向バイアスが印加され、ダイオード140A、140Bはオフになる。
このため、雷サージ電圧は、サージ保護回路300によって遮断される。従って、サージ保護回路300で、ネットワークカード340と、ネットワークカード340を含むサーバ20Cとを保護することができる。
以上、実施の形態3のサージ保護回路300は、実施の形態1のサージ保護回路100と同様に、分岐点112A、112Bと端子102A、102Bとの間に、浮遊容量が小さいダイオード140A、140Bをそれぞれ挿入しているため、伝送特性の劣化を抑制でき、高速伝送路10への対応が容易である。
このため、実施の形態3によれば、高速伝送路10に適したサージ保護回路300を提供することができる。
なお、抵抗器350A、350Bの抵抗値は、実施の形態1のサーバ20に含まれるネットワークカード40の抵抗器44と同様に、ダイオード140A、140Bをオンにさせるために必要なバイアス電圧がダイオード140A、140Bに印加されるように、適切な値に設定すればよい。
ここで、実施の形態1と同様に、高速伝送路10を伝送されるデータの信号波高値は、ピーク・トゥ・ピークで1V(1Vpp)程度であるので、分岐点112A、112Bでのバイアス電圧が約2V強であることとする。
また、電源Vccの電圧が12V、ダイオード140A、140Bのオン電流を1mAとすると、抵抗器130A、130Bの抵抗値R1、R2は、R1=R2=2V/1mA≒2.2kΩと求まる。これは、実施の形態1と同様である。
このため、抵抗器350A、350Bの抵抗値R4、R5は、R4=R5=(Vcc−2V)/1mA≒10kΩと求まる。
従って、抵抗器350A、350Bの抵抗値R4、R5は、例えば、約10kΩに設定すればよい。
<実施の形態4>
図8は、実施の形態4のサージ保護回路400と周辺の回路構成とを示す図である。
実施の形態4のサージ保護回路400は、サーバ20Dに含まれている。実施の形態4のサーバ20Dは、サージ保護回路400とネットワークカード440とを含む。
実施の形態4のサーバ20Dは、実施の形態3のサーバ20C(図7参照)のサージ保護回路300及びネットワークカード340を、それぞれ、サージ保護回路400及びネットワークカード440に置き換えたものであり、その他の構成は、実施の形態3のサーバ20Cと同様である。
サージ保護回路400は、端子101A、101B、102A、102B、線路110A、110B、クランプ回路120A、120B、抵抗器130A、130B、ダイオード140A、140B、及び抵抗器350A、350Bを含む。
すなわち、実施の形態4のサージ保護回路400の構成要素は、実施の形態3のサージ保護回路300の構成要素と同様である。サージ保護回路400は、抵抗器130A、130Bと抵抗器350A、350Bの抵抗値が、実施の形態3のサージ保護回路300において対応する抵抗値と異なる。
ネットワークカード440は、パルストランス43(図7参照)を含まない点が実施の形態3のネットワークカード340と異なる。ネットワークカード440は、一対の端子41A、41B、チョークコイル42、PHY回路50、及びデータリンク回路60を含む。
なお、図8では、PHY回路50の内部にオペアンプ51を示す。オペアンプ51は、電源Vccから電源供給を受け、シグナルグランドSGに接続されている。オペアンプ51は、データのアナログ/デジタル変換(AD変換、DA変換)を行う際に、高速伝送路10側から入力されるデータを増幅してデータリンク回路60に出力する。
ここで、PHY回路50の電源Vccの電圧値をVcc、ダイオード140A、140Bのバイアス電圧(電圧降下)をVd、ダイオード140A、140Bのオン電流(バイアス電流)をIとする。
この場合に、抵抗器130A、130Bの抵抗値R1、R2は、R1=R2=(Vcc/2−Vd)/Iであり、抵抗器350A、350Bの抵抗値R4、R5は、R4=R5=(Vcc/2)/Iとなる。
ここで、抵抗器130A、130Bの抵抗値R1、R2と、抵抗器350A、350Bの抵抗値R4、R5とを求めるにあたり、電圧値として(Vcc/2)を用いるのは、高速伝送路10を伝送されるデータの信号波高値(ピーク・トゥ・ピークの値)をなるべく大きく取るために、電源電圧Vccの半分の値を用いたものである。
また、実施の形態4のサーバ20Dは、ネットワークカード440がパルストランス43(図7参照)を含まないため、電源Vccの電圧を2.5Vとし、分岐点112A、112Bの電位を1.3Vとする。
この条件の下では、抵抗器130A、130Bの抵抗値R1、R2は、R1=R2=(1.3−0.6)/Iであり、抵抗器350A、350Bの抵抗値R4、R5は、R4=R5≒1.2×Iとなる。これより、R1≒0.583×R4となる。
また、高速伝送路10の特性インピーダンスをZnとすると、Znは、Zn=R1×R4/(R1+R4)で表すことができる。高速伝送路10の特性インピーダンスZnを100Ωとすると、抵抗器130A、130Bと抵抗器350A、350Bの合成抵抗値を100Ωにすれば良いことが分かる。
従って、抵抗器130A(抵抗値R1)と抵抗器350A(抵抗値R4)の合成抵抗は200Ωになる。
これより、R1×R4/(R1+R4)=200であり、R1≒0.583×R4であることから、R4=200×1.583/0.583=543≒560Ωとなる。また、R1≒0.583×R4であることから、R1=330Ωとなる。
以上より、抵抗器130A、130Bの抵抗値R1、R2を330Ωに設定し、抵抗器350A、350Bの抵抗値R4、R5を560Ωに設定すればよい。
なお、このときダイオード140A、140Bに流れるバイアス電流Iは、R4=R5≒1.2×Iより、I=1.2/R4=2.1mAとなる。
電源Vccの電圧(Vcc)、抵抗器130A、130Bの抵抗値R1、R2、及び抵抗器350A、350Bの抵抗値R4、R5を、一例として上述のように設定することにより、実施の形態4のサージ保護回路400は、実施の形態3のサージ保護回路300と同様の動作を実現することができる。
従って、実施の形態4のサージ保護回路400は、実施の形態3のサージ保護回路300と同様に、分岐点112A、112Bと端子102A、102Bとの間に、浮遊容量が小さいダイオード140A、140Bをそれぞれ挿入しているため、伝送特性の劣化を抑制でき、高速伝送路10への対応が容易である。
このため、実施の形態4によれば、高速伝送路10に適したサージ保護回路400を提供することができる。
<実施の形態5>
図9は、実施の形態5のサージ保護回路500と周辺の回路構成とを示す図である。
実施の形態5のサージ保護回路500は、サーバ20Eに含まれている。実施の形態5のサーバ20Eは、サージ保護回路500とネットワークカード440とを含む。
実施の形態5のサーバ20Eは、実施の形態4のサーバ20D(図8参照)のサージ保護回路400をサージ保護回路500に置き換えたものであり、その他の構成は、実施の形態4のサーバ20Dと同様である。
サージ保護回路500は、端子101A、101B、102A、102B、線路110A、110B、クランプ回路120A、120B、抵抗器130A、130B、ダイオード140A、140B、抵抗器350A、350B、ダイオード560A、560B、抵抗器570A、570B、及び線路580A、580Bを含む。
すなわち、実施の形態5のサージ保護回路500は、実施の形態4のサージ保護回路400に、ダイオード560A、560B、抵抗器570A、570B、及び線路580A、580Bを追加した構成を有する。
また、サージ保護回路500は、上述のようにダイオード560A、560B、抵抗器570A、570B、及び線路580A、580Bを追加したことに伴い、抵抗器130A、130Bの抵抗値が、実施の形態4のサージ保護回路400において対応する抵抗値と異なる。
ダイオード560A、560Bは、それぞれ、分岐点113A、113Bと、端子102A、102Bとの間に挿入されている。ダイオード560A、560Bは、第2半導体スイッチ素子の一例である。
ダイオード560A、560Bのアノードは、それぞれ、分岐点113A、113Bに接続され、ダイオード560A、560Bのカソードは、それぞれ、端子102A、102Bに接続される。
すなわち、ダイオード560A、560Bは、それぞれ、分岐点113A、113Bから端子102A、102Bに向かう整流方向を有する。これは、ダイオード140A、140Bの整流方向とは逆方向である。
また、ダイオード560A、560Bは、ダイオード140A、140Bと等しいバイアス電圧(電圧降下)Vd(=0.6V)を有する。
抵抗器570A、570Bは、分岐点114A、114Bと、シグナルグランドSGとの間の一対の線路に、それぞれ挿入されている。分岐点114A、114Bは、ダイオード560A、560Bのカソードと、端子102A、102Bとの間において、それぞれ、線路110A、110Bから分岐する点である。
抵抗器570A、570Bは、それぞれ、線路110A、110Bの分岐点114A、114Bと、シグナルグランドSGとの間に挿入されている。抵抗器570A、570Bは、それぞれ、電源Vccから抵抗器130A、130Bを経て、ダイオード560A、560Bに流れる順方向のバイアス電流をシグナルグランドSGに誘導するために設けられている。
抵抗器570A、570Bの抵抗値は、それぞれ、ダイオード560A、560Bをオンにさせるために必要なバイアス電圧がダイオード560A、560Bに印加されるように、適切な値に設定すればよい。
線路580A、580Bは、それぞれ、クランプ回路120A、120Bに接続されるフレームグランドFGと、抵抗器130A、130Bに接続されるシグナルグランドSGとを接続している。
ここで、PHY回路50の電源Vccの電圧値を2.5V、ダイオード140A、140Bのカソードに接続される分岐点112A、112Bにおける電位を0.7V、ダイオード140A、140B、560A、560Bのオン電流(バイアス電流)をIとする。また、ダイオード140A、140Bのバイアス電圧(電圧降下)は、0.6Vである。
また、雷サージが発生していない場合には、ダイオード140A、140B、560A、560Bは、電源Vccから抵抗器350A、350Bを介して供給されるバイアス電圧によってオンにされる。実施の形態5では、抵抗器350A、350Bは、ダイオード140A、140B、560A、560Bに順方向バイアス電圧を印加する電力供給線に挿入されている抵抗器の一例である。
回路の対称性から、抵抗器130A、130Bの抵抗値R1、R2と、抵抗器570A、570Bの抵抗値R6、R7とは等しくされる。
従って、抵抗器130A、130Bの抵抗値R1、R2と、抵抗器570A、570Bの抵抗値R6、R7とは、R1=R2=R6=R7=0.7V/Iである。
また、抵抗器350A、350Bの抵抗値R4、R5は、R4=R5=1.2V/2I=0.6V/Iとなる。
従って、0.7V/R1=0.6/R4となり、R1=(0.7/0.6)×R4=1.167×R4と求まる。
また、高速伝送路10の特性インピーダンスZnを100Ωとすると、抵抗器130A、130B、抵抗器350A、350B、及び抵抗器570A、570Bの合成抵抗値を100Ωにすれば良いことが分かる。
すなわち、R1、R2、R4、R5、R6、R7の合成抵抗値が100Ωになればよい。
従って、抵抗器130A(抵抗値R1)、抵抗器350A(抵抗値R4)、及び抵抗器570A(抵抗値R6)の合成抵抗値を200Ωにすればよい。
ここで、抵抗器130A(抵抗値R1)と抵抗器570A(抵抗値R6)の合成抵抗値をR16とすると、R16=R1/2=0.583×R4である。このため、R16×R4/(R16+R4)=200となる。
従って、0.583×R4/1.583=200となり、R4=200×1.583/0.583≒543≒560Ωと求まる。
以上より、抵抗器350A、350Bの抵抗値R4、R5は、560Ωに設定すればよい。
また、R1=1.167×R4であるため、R1=634≒680Ωに設定すればよい。これより、抵抗器130A、130Bの抵抗値R1、R2は、680Ωに設定すればよい。
このとき、ダイオード140A、140B、560A、560Bに流れるバイアス電流Iは、I=0.6/R4=1.1mAとなる。
以上のように、電源Vccの電圧(Vcc)、抵抗器130A、130Bの抵抗値R1、R2、抵抗器350A、350Bの抵抗値R4、R5、抵抗器570A、570Bの抵抗値R6、R7を、一例として上述のように設定することにより、実施の形態5のサージ保護回路500は、実施の形態4のサージ保護回路400と同様の動作を実現することができる。
すなわち、雷サージの生じていない通常時は、ダイオード140A、140B、560A、560Bがオンになることにより、サージ保護回路500は、端子101A、101Bと、端子102A、102Bとの間の線路110A、110Bで双方向にデータ通信を行うことが可能になる。
このため、サージ保護回路500及び高速伝送路10を介して、サーバ20Eとサーバ30との間で双方向のデータ通信が可能になる。
なお、ダイオード560A、560Bは、ダイオード140A、140Bと同様に浮遊容量が小さいため、実施の形態5のサージ保護回路500を高速伝送路10に接続しても、実施の形態4と同様に、伝送特性の劣化を抑制することができる。
また、高速伝送路10に雷が落ちて雷サージが生じた場合には、実施の形態4のサージ保護回路400と同様に、雷サージ電圧はクランプ回路120A又は120Bによってクランプされ、クランプ電圧によってダイオード140A、140Bに逆方向バイアスが印加され、ダイオード140A、140Bはオフになる。
このため、雷サージ電圧は、サージ保護回路500によって遮断される。従って、サージ保護回路500で、ネットワークカード440と、ネットワークカード440を含むサーバ20Eとを保護することができる。
以上のように、実施の形態5のサージ保護回路500は、実施の形態4のサージ保護回路400と同様に、分岐点112A、112Bと端子102A、102Bとの間に、浮遊容量が小さいダイオード140A、140B、560A、560Bをそれぞれ挿入しているため、伝送特性の劣化を抑制でき、高速伝送路10への対応が容易である。
このため、実施の形態5によれば、高速伝送路10に適したサージ保護回路500を提供することができる。
以上、本発明の例示的な実施の形態のサージ保護回路、及び、通信装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
高速伝送路に接続される第1端子と、
PHY回路に接続される第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間の線路から分岐して接続され、前記第1端子に入力される電圧を所定のクランプ電圧にクランプするクランプ部と、
前記線路から前記クランプ部が分岐する分岐点と、前記第2端子との間に配設され、前記第2端子から前記第1端子(101A,101B)に向かう整流方向を有し、前記クランプ部のクランプ電圧よりも高い逆耐圧を有する半導体スイッチ素子と
を含む、サージ保護回路。
(付記2)
前記クランプ部と前記半導体スイッチ素子との間で一端が前記線路に接続され、他端が接地される信号グランド線と、
前記信号グランド線に挿入される抵抗器と
をさらに含む、付記1記載のサージ保護回路。
(付記3)
前記半導体スイッチ素子には、前記半導体スイッチ素子と前記第2端子との間から、又は、前記第2端子から、順方向バイアス電圧が印加される、付記1又は2記載のサージ保護回路。
(付記4)
前記半導体スイッチ素子と前記第2端子との間で前記線路から分岐して電源に接続され、前記前記半導体スイッチ素子に順方向バイアス電圧を印加する電力供給線をさらに含む、付記3記載のサージ保護回路。
(付記5)
前記半導体スイッチ素子は、前記第2端子から前記第1端子に向かう方向の整流方向を有するダイオードである、付記1乃至4のいずれか一項記載のサージ保護回路。
(付記6)
前記半導体スイッチ素子と前記第2端子との間に配設され、前記半導体スイッチ素子から前記第2端子に向かう方向の整流方向を有する第2半導体スイッチ素子と、
前記半導体スイッチ素子と前記第2半導体スイッチ素子との接続点から、前記半導体スイッチ素子及び前記第2半導体スイッチ素子に順方向バイアス電圧を印加する電力供給線と
をさらに含む、付記1記載のサージ保護回路。
(付記7)
前記クランプ部は、バリスタとダイオードをブリッジ接続したクランプ回路、又は、ガスチューブである、付記1乃至6のいずれか一項記載のサージ保護回路。
(付記8)
PHY回路と、
前記PHY回路に接続される演算処理部と、
前記PHY回路に接続されるサージ保護回路と
を含む、通信装置であって、
前記サージ保護回路は、
高速伝送路に接続される第1端子と、
前記PHY回路に接続される第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間の線路から分岐して接続され、前記第1端子に入力される電圧を所定のクランプ電圧にクランプするクランプ部と、
前記線路から前記クランプ部が分岐する分岐点と、前記第2端子との間に配設され、前記第2端子から前記第1端子に向かう整流方向を有し、前記クランプ部のクランプ電圧よりも高い逆耐圧を有する半導体スイッチ素子と
を有する、通信装置。