以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。
図1は、一実施例による配線設計支援装置1の構成を示す図である。配線設計支援装置1は、多層構造のプリント回路板の配線設計を支援する装置である。多層構造のプリント回路板の層数は、2以上の任意の数であってよい。
配線設計支援装置1は、コンピューターにより構成されてよい。配線設計支援装置1は、例えば、図1に示すように、処理部10、表示部12、入力部14、メモリ部16、データベース部30を含む。
処理部10は、例えばCPUを含む。処理部10の各種機能(以下で説明する機能を含む)は、例えばCPUがメモリ部16内のプログラムを実行することより実現されてもよい。
表示部12は、液晶ディスプレイ等のような任意のディスプレイで構成されてもよい。
入力部14は、カーソルキー、数字入力及び各種機能キー等を備えたキーボード、マウスやスライスパット等のような任意の入力装置で構成されてよい。
メモリ部16は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などであってよい。メモリ部16には、処理部10が実行する基本ソフトウェアであるOSやアプリケーションソフトウェアなどのプログラムやデータが記憶又は一時保存されてよい。
データベース部30は、HDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置により構成されてよい。
図1に示す例では、データベース部30は、部品配置情報リスト302、ネット接続情報リスト304、層構成ライブラリ306、高速信号レベルテーブル308、バックドリル適用テーブル310、スタブ長制限値テーブル312、及び、配線有効面テーブル314を含む。
図2Aは、部品配置情報リスト302の一例を示す図である。図2Aに示す例では、部品配置情報リスト302は、部品名、部品型格、搭載面、搭載座標及び搭載角度を含む。
部品名においてCN,IC等の記号は、コネクタ、ICパッケージ等の部品の形状を表し、CN1などの記号CNの後の数字は、部品の固有の番号を表す。例えば、記号CNで表される部品が、100個使用されるときは、CN1〜CN100が部品配置情報リスト302に定義される。搭載面は、その部品の搭載される面を表す。部品型格は、図2Bに示す部品ライブラリと紐付けられた記号を表し、図2Bを参照して後述する。搭載面について、L1面、L6面とは、プリント回路板のどの面に部品が搭載されるかを表し、L1面は、プリント回路板の表面を指し、L6面は、プリント回路板の裏面を指す。尚、層の構成は、後述の層構成ライブラリ306で説明する。
図2Bは、部品ライブラリの一例を示す図である。図2Bに示す例では、部品ライブラリは、部品型格の記号(AAA,BBB等)に紐付けられた実装形態を含む。実装形態は、IMD(Insert Mount Device:挿入実装部品)、SMD(Surface Mount Device:表面実装部品)、プレスフィット(プレスフィットリードを有する部品)等を含む。尚、部品型格には、その他、部品形状に関連した搭載領域の形態、即ちランド形態(形状、寸法、ドリル径)等が紐付けられてもよい。
図3は、ネット接続情報リスト304内のネットリストの一例を示す図である。図3に示す例では、ネットリストは、ネット名、高速信号レベル、接続先を含む。
ネット名は、ネットを特定する番号である。尚、ネットとは、接続される部品間の配線を表す。ネットの単位は任意であってよい。例えば、一のネットは、他のネットとは接続されない関係であってよい。高速信号レベルは、ネットで扱う高速信号レベル(電気信号の速度レベル)を表し、高速信号レベルの記号「A」,「B」,「C」の内容は、高速信号レベルテーブル308に紐付けられる。接続先は、ネットにおける接続先を表す。例えば、ネット名001のネットは、CN1−002とIC2−002とを接続するネットである。尚、接続先における「−」前の記号(例えば、CN1−002については、"CN1")は、プリント回路板内の個々の部品を特定するための記号である。一般的に部品種別とその種別単位の追番で表し、例えば、CN1−002の"CN1"は、1番目のコネクタを表している。接続先における「−」後の番号(例えば、CN1−002については、"002")は、ピンの番号を表す。例えばCN1−002については、1番コネクタの2番ピンを表す。なお、本例では、ネットで扱う高速信号レベルは、「A」,「B」,「C」の3段階に分けられているが、当然ながら、2段階で分けられてもよいし、4段階以上に分けられてもよい。
図4は、層構成ライブラリ306の一例を示す図である。層構成ライブラリ306は、対象となるプリント回路板の層構成を表す。図4に示す例では、層構成ライブラリ306は、Ln番号及び層種別を含む。Ln番号は、何番目の層かを表し、ここでは、プリント回路板は6層構造であり、"1"が表面から1番目の層であり、"6"が一番裏面に近い層を表す。層種別は、層の用途を表し、"信号"は信号伝送用の層であり、"電源"は電源供給用の層であり、"アース"はグランド接続用の層である。尚、当然ながら、層構成ライブラリ306は、対象のプリント回路板の層構成に応じて設定される。
図5は、高速信号レベルテーブル308の一例を示す図である。高速信号レベルテーブル308は、高速信号レベルの記号「A」,「B」,「C」の内容を表す信号速度を含む。尚、この信号速度の数値自体は、あくまで設計者側の情報(コメント)であり、以下で説明する処理では利用されない。従って、高速信号レベルテーブル308の信号速度自体は省略されてもよい。
図6は、バックドリル適用テーブル310の一例を示す図である。バックドリル適用テーブル310には、バックドリルによるスタブ内の導体除去の適用可否(適用適否を含む)を表す情報が設定される。尚、バックドリルとは、プリント回路板の表面又は裏面から貫通穴のメッキの余剰部分をドリルにより切削する技術である。尚、貫通穴のメッキの余剰部分(スタブ長に係る部分)は、信号の反射を引き起こし、信号劣化(ノイズ)等の原因となる。このような信号劣化は、高速信号レベルが高くなるほど(扱う速度レベルが高くなるほど)問題となる。従って、スタブ内の導体除去の適用可否を表す情報は、好ましくは、高速信号レベルに応じて異なる態様で設定される。また、バックドリルは、貫通穴の属性(種別)に応じて物理的な制約を受ける。例えば、PF(プレスフィット)ピン穴の場合、PFピンの嵌合部の形状に起因して、搭載面側からのバックドリルは物理的に不可であり、IMDの場合、半田の存在に起因して、搭載面側及び搭載裏面側の双方からのバックドリルは物理的に不可である。従って、スタブ内の導体除去の適用可否を表す情報は、好ましくは、貫通穴の属性に応じて異なる態様で設定される。
図6に示す例では、バックドリル適用テーブル310には、貫通穴の属性である貫通穴種別と、高速信号レベルとに応じて、スタブ内の導体除去の適用可否を表す情報が設定されている。貫通穴種別は、PFピン穴、SMD引き出しビア、層間接続用ビア、及び、IMDを含んでいる。バックドリル適用テーブル310における適用層とは、バックドリルを適用可能な側(バックドリルを行う側)を表し、プリント回路板の表面側及び裏面側のいずれか一方又は双方である。PFピン穴及びSMD引き出しビアについては、部品の搭載面がプリント回路板の表面側及び裏面側のいずれであるかに依存して適用層が異なるため、図6に示す例では、適用層は、搭載面側及び搭載裏面側で定義している。尚、層間接続用ビアについては、部品自体の搭載が無いため、搭載面側及び搭載裏面側は、それぞれ、プリント回路板の表面側及び裏面側と同義である。
バックドリル適用テーブル310における「−」は、バックドリルが物理的に不可であることを示し、「不可」は、バックドリルが物理的に不可ではないが、設計上の要件(例えばコスト等)から不可であることを示す。また、「必須」は、設計者の判断の余地無くバックドリルを行うべきことを示し、「可能」は、設計者の判断でバックドリルを行ってもよいことを示す。尚、「不可」、「必須」、「可能」の振り分けは、コストと信号品質の兼ね合いがあるので、適宜、設計要件や設計思想等に応じて決定・変更されてよい。但し、典型的には、高速信号レベルが高くなるほど、信号劣化が問題となりやすいので、バックドリルが「可能」又は「必須」と設定されやすくなる傾向となる。尚、図6に示す例では、高速信号レベル「C」の場合に、SMD引き出しビアに関する搭載面側は、「可能」となっているが、物理的な制約から「−」となる場合もありうる。
図7は、スタブ長制限値テーブル312の一例を示す図である。スタブ長制限値テーブル312には、貫通穴のスタブ長の制限値が設定される。スタブ長とは、貫通穴のメッキの余剰部分の長さであって、貫通穴の延在方向に沿った長さであってよい。スタブ長の制限値は、スタブ長が超えてはいけない制限値である。高速信号の配線設計を行う際、上述の如く、貫通穴のスタブ長による反射を軽減する必要があるが、許容できる貫通穴のスタブ長は、高速信号レベルに応じて異なる。従って、貫通穴のスタブ長の制限値は、好ましくは、高速信号レベルに応じて異なる態様で設定される。
図7に示す例では、貫通穴のスタブ長の制限値は、制限層数として規定されている。尚、貫通穴のスタブ長の制限値は、他の物理量(例えば長さ)で規定されてもよい。図7に示す例では、貫通穴のスタブ長の制限値は、高速信号レベルに応じて異なる態様で設定されている。具体的には、貫通穴のスタブ長の制限値は、高速信号レベルが高くなるほど小さくなる態様で設定されている。即ち、貫通穴のスタブ長の制限値は、高速信号レベルが高くなるほど厳しくなる態様で設定されている。より具体的には、高速信号レベル「A」に対しては、制限層数が"5"であり、高速信号レベル「B」に対しては、制限層数が"3"であり、高速信号レベル「C」に対しては、制限層数が"2"である。尚、貫通穴のスタブ長の制限値は、必要とされる信号品質等に依存して、適宜変更されてよい。
図8は、配線有効面テーブル314の一例を示す図である。配線有効面テーブル314には、プリント回路板の表側と裏側のうちの、貫通穴に対して配線が有効な側(以下、「配線有効面」という)が設定される。配線有効面は、物理的な制約やノイズ低減の観点から決まり、貫通穴の属性(種別)に応じて異なる。例えば、バックドリルが適用されたPFピン穴の場合、搭載裏面側のみ配線が可能(有効)であり、IMDの場合、搭載裏面側のみ配線が可能(有効)である。従って、配線有効面は、好ましくは、貫通穴の属性に応じて異なる態様で設定される。
図8に示す例では、バックドリル適用テーブル310には、貫通穴の属性である貫通穴種別に応じて配線有効面が設定されている。貫通穴種別は、図6に示したバックドリル適用テーブル310と同様、PFピン穴、SMD引き出しビア、層間接続用ビア、及び、IMDを含んでいる。PFピン穴の場合、配線有効面は搭載面側(バックドリルが適用される場合)又は搭載裏面側(バックドリルが適用されない場合)であり、SMD引き出しビアの場合、配線有効面は搭載裏面側のみであり、層間接続用ビアの場合、配線有効面はプリント回路板の表面側及び裏面側であり、IMDの場合、配線有効面は搭載裏面側のみである。
尚、PFピン穴の場合、上述の如く、バックドリルが適用される場合は、配線有効面は搭載面側となり、バックドリルが適用されない場合は、配線有効面は搭載裏面側となる。PFピン穴に対するスタブ内の導体除去の適用可否については、図6に示す例によれば、高速信号レベル「C」では「必須」であり、バックドリルが適用されることが前提となる。従って、PFピン穴の場合、配線有効面は高速信号レベルに応じて設定されてもよい。
図9は、配線設計までの流れの一例を示す図である。設計者は、各種ライブラリ(図2B、図4、図6、図7、図8参照)と、ネットリスト(図3参照)とを先ず作成し、これらに基づいて、部品配置設計を行ってよい。そして、部品配置設計により、部品配置情報リスト302(図2A参照)が作成されてよい。次に、設計者は、部品配置設計結果に基づいて、配線設計支援装置1による支援を受けながら配線設計を行ってよい。尚、各種ライブラリは、設計対象毎に作成されてもよいが、例えば図8に示す配線有効面テーブル314は汎用性があるので、複数の設計対象に対して流用されてもよい。
図10は、配線設計支援装置1の処理部10による配線設計支援処理の一例を示すフローチャート(その1)である。図11は、図10に示す配線設計支援処理の続きに関するフローチャート(その2)である。
図10に示す配線設計支援処理は、今回の配線設計内容を表す入力データが入力部14を介して入力された場合に、当該入力データに係る今回の配線設計内容による配線設計の適否(配線設計の可否を含む)を判断するために実行される。
配線設計内容は、複数の配線設計の組合せの内容でなく、個別の配線設計要素の内容であってよい。配線設計内容は、例えば、貫通穴からの配線の引き出し、貫通穴への配線の引き込み、及び、配線の引き込みを伴う層間接続用ビアの形成等であってよい。貫通穴からの配線の引き出しについては、配線の引き出し元の貫通穴(例えば、ある貫通穴から配線の引き出す場合には、その貫通穴)を示す情報と、当該配線を形成する層を示す情報(Ln番号)とを含んでよい。また、貫通穴への配線の引き込みについては、配線の引き込み先の貫通穴(例えば、ある貫通穴に配線の引き込む場合には、その貫通穴)を示す情報と、当該配線を形成する層を示す情報(Ln番号)とを含んでよい。また、配線の引き込みを伴う層間接続用ビアの形成については、層間接続用ビアを示す情報と、引き込む配線を形成する層(Ln番号)とを含んでよい。
ステップ1002では、層構成ライブラリ306、部品配置情報リスト302、ネット接続情報リスト304及び高速信号レベルテーブル308を取得する。尚、高速信号レベルテーブル308の取得は省略されてもよい。
ステップ1004では、ネット接続情報リスト304に基づいて、今回の配線設計内容が属するネット情報を取得する。例えば、今回の配線設計内容が、CN1−002からの配線の引き出しである場合、CN1−002が属するネット名「001」(図3参照)に係るネット情報を取得する。
ステップ1006では、ネット接続情報リスト304に基づいて、上記ステップ1004で取得したネット情報に係るネットの高速信号レベルが所定レベル以上であるか否かを判定する。即ち、今回の配線設計内容に係るネットで扱う高速信号レベルが所定レベル以上であるか否かを判定する。所定レベルは、適宜設定されてよく、例えば「B」(図5参照)であってよい。ネットの高速信号レベルが所定レベル以上である場合は、ステップ1010に進み、それ以外の場合は、ステップ1008に進む。
ステップ1008では、通常配線処理に進む。通常配線処理は、スタブ長を問題としない配線処理であり、通常配線処理の説明は省略する。
ステップ1010では、バックドリル適用テーブル310を取得する。
ステップ1012では、スタブ長制限値テーブル312を取得する。
ステップ1014では、バックドリル適用テーブル310に基づいて、今回の配線設計内容に係る貫通孔がバックドリル適用対象であるか否かを判定する。具体的には、今回の配線設計内容に係る貫通孔の種別を特定し、当該貫通孔の種別と、今回の配線設計内容に係るネットの高速信号レベルとに応じたバックドリル適用可否を表す情報を、バックドリル適用テーブル310から取得する。例えば、今回の配線設計内容が、CN1−002からの配線の引き出しである場合(又はCN1−002への配線の引き込みである場合)、CN1の実装形態はIMDであるので(図2A,図2B参照)、IMDに関するバックドリル適用可否を表す情報を、バックドリル適用テーブル310から取得する。IMDに関するバックドリル適用可否を表す情報は、ネットの高速信号レベルとは無関係に「−」(物理的に不可)であるので、ステップ1014の判定結果は否定判定となる。尚、バックドリル適用可否を表す情報が「不可」の場合は、ステップ1014の判定結果は否定判定となり、バックドリル適用可否を表す情報が「必須」又は「可能」である場合は、ステップ1014の判定結果は肯定判定となってよい。今回の配線設計内容に係る貫通孔がバックドリル適用対象である場合、ステップ1020に進み、それ以外の場合は、ステップ1016に進む。
ステップ1016では、スタブ長制限値テーブル312に基づいて、今回の配線設計内容に係る配線層の層位置が、今回の配線設計内容に係る高速信号レベルに応じた制限層数以下の層位置であるか否かを判定する。制限層数以下の層位置であることは、今回の配線設計内容に係る配線層の層位置が、プリント回路板の表面側から制限層数以下の層位置であるか、又は、プリント回路板の裏面から制限層数以下の層位置であればよい。以下では、説明の便宜上、プリント回路板の表面側から制限層数以下の範囲を、「表面側制限層数以下範囲」と称し、プリント回路板の裏面側から制限層数以下の範囲を、「裏面側制限層数以下範囲」と称する。例えば、高速信号レベルが「B」である場合、高速信号レベル「B」に応じた制限層数は"3"である(図7参照)ので、表面側制限層数以下範囲は、プリント回路板の表面側から3層分のL1層からL3層までの範囲であり、裏面側制限層数以下範囲は、プリント回路板の裏面側から3層分のL6層からL4層までの範囲である。
ステップ1016において、今回の配線設計内容に係る配線層の層位置が、今回の配線設計内容に係る高速信号レベルに応じた制限層数以下の層位置である場合は、即ち、今回の配線設計内容に係る高速信号レベルに応じた表面側制限層数以下範囲内又は裏面側制限層数以下範囲内である場合、図11のステップ1100に進み、それ以外の場合は、ステップ1018に進む。
ステップ1018では、警告を表示部12に出力する。尚、警告は、他の態様で(例えば音声等)で出力されてもよい。警告は、「スタブ長が制限値を超えるために今回の配線設計内容の配線はできません」といった趣旨のメッセージを含んでよい。
ステップ1020では、現時点の設計済み情報(現時点までに保存されている設計作業内容を表す情報)(図15B参照)に基づいて、今回の配線設計内容に係る貫通孔に既にバックドリルの適用が設計済みであるか否かを判定する。例えば、今回の配線設計内容を入力する以前の設計作業によって、今回の配線設計内容に係る貫通孔にバックドリルが適用済みである場合には、ステップ1020の判定結果は肯定判定となる。今回の配線設計内容に係る貫通孔に既にバックドリルの適用が設計済みである場合は、ステップ1026に進み、それ以外の場合は、ステップ1022に進む。
ステップ1022では、上記ステップ1016と同様、スタブ長制限値テーブル312に基づいて、今回の配線設計内容に係る配線層の層位置が、今回の配線設計内容に係る高速信号レベルに応じた制限層数以下の層位置であるか否かを判定する。今回の配線設計内容で生じるスタブ長が、スタブ長制限値テーブル312に基づいて、今回の配線設計内容に係る配線層の層位置が、今回の配線設計内容に係る高速信号レベルに応じた制限層数以下の層位置である場合は、図11のステップ1100に進み、それ以外の場合は、ステップ1024に進む。
ステップ1024では、上記ステップ1018と同様、警告を表示部12に出力する。但し、ステップ1024では、処理部10は、好ましくは、バックドリル適用テーブル310に基づいて、当該警告に係るスタブ長の制限値超えが、バックドリルによりスタブ内の導体除去を行うことによって回避可能となるか否かを判定する。具体的には、今回の配線設計内容に係る配線層の層位置が、今回の配線設計内容に係る高速信号レベルに応じた表面側制限層数以下範囲内又は裏面側制限層数以下範囲内となるように、バックドリルが適用可能であるか否かを判定する。例えば、高速信号レベルが「B」である場合であって、バックドリルによりL5層及びL6層が除去可能である場合、裏面側制限層数以下範囲は、L4層からL2層までの範囲に変化する。このようにバックドリルを適用する場合は、表面側制限層数以下範囲又は裏面側制限層数以下範囲が変化するので、スタブ長の制限値超えが回避可能となりうる。スタブ長の制限値超えが、バックドリルによりスタブ内の導体除去を行うことによって回避可能と判定した場合は、その旨を表示部12に出力する。この出力態様も任意であってよく、音声等を伴ってもよい。例えば、その旨の出力は、「スタブ長が制限値を超えますが、バックドリルによりスタブ内の導体除去を行うことによって回避可能です」といった趣旨のメッセージであってよい。尚、このメッセージを受けて、設計者がバックドリルの適用を設計した場合は、その情報が設計済み情報に反映される。この場合、次回の配線設計内容を入力したときの図10の処理時には、ステップ1020の判定結果は肯定判定となる。
ステップ1026では、スタブ長制限値テーブル312に基づいて、今回の配線設計内容に係る配線層の層位置が、適用設計済みのバックドリルで除去される層数を差し引いた制限層数以下(即ち、バックドリル適用後の表面側制限層数以下範囲内又は裏面側制限層数以下範囲内)の位置であるか否かを判定する。例えば、高速信号レベルが「B」である場合であって、適用設計済みのバックドリルでL5層及びL6層が除去される場合、裏面側制限層数以下範囲は、L4層からL2層の範囲である。尚、この場合は、裏面側制限層数以下範囲は、表面側制限層数以下範囲とオーバーラップする。ステップ1026の判定結果が肯定判定である場合は、図11のステップ1100に進み、否定判定の場合は、ステップ1028に進む。
ステップ1028では、上記ステップ1018と同様、警告を表示部12に出力する。
続いて図11を参照するに、ステップ1100では、現時点の設計済み情報(図15A、図15B参照)に基づいて、今回の配線設計内容に係る貫通孔に対して既に接続されている配線(以下、既接続配線という)が存在するか否かを判定する。今回の配線設計内容に係る貫通孔に対して既接続配線が存在する場合は、ステップ1102に進み、それ以外の場合は、ステップ1106に進む。
ステップ1102では、今回の配線設計内容に係る配線は、既接続配線と反対面に存在するか否かを判定する。即ち、プリント回路板の表面側又は裏面側のうち、今回の配線設計内容に係る配線の属する側が、既接続配線の属する側に対して逆側であるか否かを判定する。この際、既接続配線については、既接続配線が表面側制限層数以下範囲内に位置する場合は、既接続配線は、「表面側」に属し、既接続配線が裏面側制限層数以下範囲内に位置する場合は、既接続配線は、「裏面側」に属すると考える。同様に、今回の配線設計内容に係る配線については、今回の配線設計内容に係る配線が表面側制限層数以下範囲内に位置する場合は、今回の配線設計内容に係る配線は、「表面側」に属し、今回の配線設計内容に係る配線が裏面側制限層数以下範囲内に位置する場合は、今回の配線設計内容に係る配線は、「裏面側」に属すると考える。但し、表面側制限層数以下範囲と裏面側制限層数以下範囲とはオーバーラップ(又は完全に重複)しうるので(例えば、バックドリルが適用される場合等)、かかる場合は、今回の配線設計内容に係る配線と既接続配線のうちの少なくともいずれか一方がオーバーラップ範囲内に位置するときは、今回の配線設計内容に係る配線は、既接続配線と反対面に存在すると判定してよい。ステップ1102の判定結果が肯定判定である場合は、ステップ1106に進み、否定判定の場合は、ステップ1104に進む。
ステップ1104では、上記ステップ1018と同様、警告を表示部12に出力する。警告は、「既接続配線との関係でスタブ長が制限値を超えるために今回の配線設計内容の配線はできません」といった趣旨のメッセージを含んでよい。
ステップ1106では、配線有効面テーブル314を取得する。
ステップ1108では、配線有効面テーブル314に基づいて、今回の配線設計内容に係る配線層が、今回の配線設計内容に係る貫通孔に係る配線有効面に対応するか否かを判定する。この際、例えば今回の配線設計内容に係る貫通孔に係る配線有効面が"搭載面側"であり、"搭載面側"がプリント回路板の「表面側」であるとき、今回の配線設計内容に係る配線が表面側制限層数以下範囲内に位置する場合は、今回の配線設計内容に係る配線が、配線有効面に対応することになる一方、今回の配線設計内容に係る配線が表面側制限層数以下範囲内に位置しない場合は、今回の配線設計内容に係る配線が、配線有効面に対応しないことになる。ステップ1108の判定結果が肯定判定である場合は、ステップ1112に進み、否定判定の場合は、ステップ1110に進む。
ステップ1110では、警告を表示部12に出力する。尚、警告は、他の態様で(例えば音声等)で出力されてもよい。警告は、「有効面に非対応となるために今回の配線設計内容の配線はできません」といった趣旨のメッセージを含んでよい。
ステップ1112では、今回の配線設計内容による配線が可能であると判断する。この際、その旨のメッセージが表示部12に出力されてもよい。例えば、これに応じて設計者が確認操作(確定操作)を行うと、今回の配線設計内容が受け付けられ設計済み情報に反映されてもよい。
このように図10及び図11に示す配線設計支援処理によれば、バックドリル適用テーブル310及びスタブ長制限値テーブル312に基づいて、今回入力された配線設計内容の適否をチェックするので、バックドリルの適用の有無に関わらずスタブ長制限値を遵守することができるように配線設計を支援することができる。特に、バックドリル適用テーブル310に基づいてバックドリルの適用の適否を考慮するので、配線設計の自由度を高めることができる。
また、扱う高速信号レベルに応じてバックドリル適用テーブル310及びスタブ長制限値テーブル312を設定することで、高速信号レベル毎に異なりうるスタブ長の制限値やスタブ内の導体除去の適用可否を考慮しつつ、スタブ長制限値を遵守することができるように配線設計を支援することができる。特に、バックドリル適用テーブル310に基づいて高速信号レベルに応じたバックドリルの適用の適否を考慮するので、高速信号レベルに適合した配線設計の自由度を実現することができる。
また、配線有効面テーブル314に基づいて、今回入力された配線設計内容の適否をチェックするので、スタブ長制限値を遵守しても配線有効面との関係で不適切となる配線設計を確実に検出し、設計者にフィードバックすることができる。
また、今回入力された配線設計内容の可否を既接続配線との関係を考慮して判断するので、表面側制限層数以下範囲内又は裏面側制限層数以下範囲内であっても既接続配線との関係で不適切となる配線設計を確実に検出し、設計者にフィードバックすることができる。
図12は、ある1つのネットに関する配線設計の一例を示す図である。図12には、PFピン70を有する部品と部品(例えばLSI(Large-Scale Integration))72とを接続するネットに関する配線設計例が示されている。図12に示す例では、PFピン70は、プリント回路板80の表面側に搭載されている。部品72は、プリント回路板80の表面側に搭載されている。PFピン70に係るPFピン穴は、プリント回路板80の裏面側でバックドリルが適用されている。プリント回路板80の層数は18層であり、バックドリルは、矢印BDで範囲を示すように、プリント回路板80の裏面側から12層分を除去している。部品72は、SMDの形態であり、プリント回路板80の表面層に配線79が形成され、配線79に接続するSMD引出しビア73が形成されている。
図12に示す例では、高速信号レベルに応じた制限層数は"6"層であるとする。即ち、図7に示したスタブ長制限値テーブル312では、高速信号レベル「B」に応じた制限層数は"3"であるが、ここでは、説明の都合上、"6"であるとする。したがって、表面側制限層数以下範囲A1は、プリント回路板80の表面側から6層分の範囲であり、裏面側制限層数以下範囲B1は、プリント回路板80の裏面側から6層分の範囲である。尚、PFピン70に係るPFピン穴は、バックドリルにより12層分が除去されており、従って、PFピン70に係るPFピン穴における表面側制限層数以下範囲A1と裏面側制限層数以下範囲B1とは同一の範囲である(完全に重複している)。図12において、配線76は、L3層を用いて、PFピン70から引き出され、層間接続用ビア74に引き込まれている。これにより、PFピン穴において生じるスタブ長は、矢印P0で示すように、3層分相当の長さである。配線78は、L16層を用いて、層間接続用ビア74から引き出され、SMD引出しビア73に引き込まれている。これにより、層間接続用ビア74において生じるスタブ長は、矢印P1及びP2で示すように、表面側及び裏面側共に2層分相当の長さである。また、SMD引出しビア73において生じるスタブ長は、矢印P3で示すように、2層分相当の長さである。
ここで、図13A乃至図13Eを参照して、図12に示した配線設計を行うときに、図10及び図11に示した配線設計支援処理により得られる支援態様について概略的に説明する。
図13Aは、図12に示したネットの配線設計を行うときの設計途上段階の一例(その1)を示す図である。尚、図13Aでは、理解しやすさのための便宜上、プリント回路板80内の関連しない層の図示は省略しているが、プリント回路板80は、図12と同じ18層である。図13Aに示す設計途上段階では、既に、PFピン70を有する部品及び部品72が搭載され、PFピン70に係るPFピン穴にはバックドリルが適用され、SMD引出しビア73が形成されている。
今回の配線設計内容は、「L3層を用いて、PFピン70に係るPFピン穴から配線を引き出す」という内容である。この配線設計内容の入力を受けて、図10及び図11に示した配線設計支援処理が実行されると、主に以下のような結果となる。ここでは、上述の如く、前提として、今回の配線設計内容に係るネットに紐付けられた高速信号レベルは「B」であり、高速信号レベル「B」に応じた制限層数は"6"層であるとする。従って、ステップ1006は肯定判定される。次いで、ステップ1014では肯定判定され(図6に示すように「可能」であるため)、ステップ1020では肯定判定され(バックドリルの適用が設計済みであるため)、ステップ1026では肯定判定される(L3層は表面側制限層数以下範囲A1内であるため)。次いで、ステップ1100では否定判定され(既接続配線が無いため)、ステップ1108では肯定判定され(配線有効面に合致するため)、今回の配線設計内容が受け入れられる(ステップ1112)。これにより、PFピン70に係るPFピン穴からの配線76の引き出しが設計済み(完了)となる。
図13Bは、図12に示した配線設計を行うときの設計途上段階の一例(その2)を示す図であり、図13Aに示した配線設計内容が受け入れられた次の設計途上段階に対応する。
今回の配線設計内容は、「層間接続用ビア74を形成して、PFピン70に係るPFピン穴からの配線76を引き込む」という内容である。尚、実際には、層間接続用ビア74の位置や形状等の他の情報も入力されてよい。この配線設計内容の入力を受けて、図10及び図11に示した配線設計支援処理が実行されると、主に以下のような結果となる。ステップ1006は肯定判定され(高速信号レベル「B」であるため)、ステップ1014では否定判定され(図6に示すように高速信号レベル「B」で層間接続用ビアでは「不可」であるため)、ステップ1016で肯定判定される(配線層であるL3層は表面側制限層数以下範囲A1内であるため)。次いで、ステップ1100では否定判定され(既接続配線が無いため)、ステップ1108では肯定判定され(層間接続用ビアの配線有効面は両側であるため)、今回の配線設計内容が受け入れられる(ステップ1112)。これにより、PFピン70に係るPFピン穴からの配線76を引き込む層間接続用ビア74が設計済み(完了)となる。
尚、図13Bに示す例では、予め層間接続用ビア74を形成したのち、配線76を引き込むとしたが、先に配線76を層間接続用ビア74の位置まで引き出したのちに、層間接続用ビア74を設置する場合でも、当該貫通穴と当該配線との接続の関係は同じである。従って、この場合も、図10及び図11に示した配線設計支援処理が実行されると、上述の予め層間接続用ビア74を形成する場合の各ステップと同じ結果に至る。
図13Cは、図12に示した配線設計を行うときの設計途上段階の一例(その3)を示す図であり、図13Bに示した配線設計内容が受け入れられた次の設計途上段階に対応する。
今回の配線設計内容は、「L5層を用いて、層間接続用ビア74から配線77aを引き出す」という内容である。この配線設計内容の入力を受けて、図10及び図11に示した配線設計支援処理が実行されると、主に以下のような結果となる。ステップ1006は肯定判定され(高速信号レベル「B」であるため)、ステップ1014では否定判定され(図6に示すように高速信号レベル「B」で層間接続用ビアでは「不可」であるため)、ステップ1016で肯定判定される(配線層であるL5層は表面側制限層数以下範囲A1内であるため)。次いで、ステップ1100では肯定判定され(既接続配線として配線76が存在するため)、ステップ1102では否定判定される(配線77aは配線76に対して反対面に存在しないため)。これにより、警告が出力され(ステップ1104)、今回の配線設計内容は拒絶されることになる。このようにして、配線77aの形成層が表面側制限層数以下範囲内であっても既接続配線との関係で不適切となる場合には、今回の配線設計内容が不適切であることを設計者にフィードバックすることができる。
図13Dは、図12に示した配線設計を行うときの設計途上段階の一例(その4)を示す図であり、図13Bに示した配線設計内容が受け入れられた次の設計途上段階に対応する。
今回の配線設計内容は、「L16層を用いて、層間接続用ビア74から配線78を引き出す」という内容である。この配線設計内容の入力を受けて、図10及び図11に示した配線設計支援処理が実行されると、主に以下のような結果となる。ステップ1006は肯定判定され(高速信号レベル「B」であるため)、ステップ1014では否定判定され(図6に示すように高速信号レベル「B」で層間接続用ビアでは「不可」であるため)、ステップ1016で肯定判定される(配線層であるL16層は裏面側制限層数以下範囲B1内であるため)。次いで、ステップ1100では肯定判定され(既接続配線として配線76が存在するため)、ステップ1102では肯定判定され(配線78は配線76に対して反対面に存在するため)、ステップ1108では肯定判定され(層間接続用ビアの配線有効面は両側であるため)、今回の配線設計内容が受け入れられる(ステップ1112)。これにより、層間接続用ビア74から配線78の引き出しが設計済み(完了)となる。
図13Eは、図12に示した配線設計を行うときの設計途上段階の一例(その5)を示す図であり、図13Dに示した配線設計内容が受け入れられた次の設計途上段階に対応する。
今回の配線設計内容は、「層間接続用ビア74からの配線78をSMD引出しビア73に引き込む」という内容である。この配線設計内容の入力を受けて、図10及び図11に示した配線設計支援処理が実行されると、主に以下のような結果となる。ステップ1006は肯定判定され(高速信号レベル「B」であるため)、ステップ1014では否定判定され(図6に示すように高速信号レベル「B」でSMD引出しビアでは「不可」であるため)、ステップ1016で肯定判定される(配線層であるL16層は裏面側制限層数以下範囲B1内であるため)。次いで、ステップ1100では肯定判定され(既接続配線として配線79が存在するため)、ステップ1102では肯定判定され(配線78は配線79に対して反対面に存在するため)、ステップ1108では肯定判定され(SMD引出しビアの配線有効面は搭載裏面側であり、配線79はSMD引出しビアの搭載裏面側にあるため)、今回の配線設計内容が受け入れられる(ステップ1112)。これにより、「配線78のSMD引出しビア73への引き込みが設計済みとなり、図12に示した配線設計が完了する。
次に、図14乃至図16を参照して、他の配線設計の例について説明する。
図14は、配線設計の他の一例を概略的に示す斜視図である。図14では、見易さの都合上、プリント回路板内の構成のみを図示し、プリント回路板自体の図示は省略している。ここでは、部品名CN1のピン2からの配線(ネット名001)に関する配線設計について説明する。ネット名001に係る高速信号レベルは「C」であるとする(図3参照)。以下では、ネット名001のネットとは異なるネットを「異ネット」という。
図15Aは、図14の配線設計で使用され更新される設計済み配線情報の一例を示す図である。図15Aに示す設計済み配線情報は、設計済み情報に含まれる情報の一例である。図15Bは、図14の配線設計で使用され更新される設計済みランド情報の一例を示す図である。図15Bに示す設計済みランド情報は、設計済み情報に含まれる情報の一例である。尚、図15A及び図15Bにおいて、なし地でハッチングされた部分は、今回のネット名001の一連の配線設計に伴い追加される部分を示す。
図16は、図14の配線設計の際に入力される各配線設計内容と、図10及び図11に示した配線設計支援処理の各判定処理結果との関係を示す図である。図16において、なし地でハッチングされた部分は、今回のネット名001の配線設計で設計済み(完了)となった部分を示す。各判定処理結果に関して、「YES」は肯定判定を意味し、「NO」は否定判定を意味する。
ここでは、主に以下の内容で配線設計が実行される。先ず、部品名CN1のピン2がIMD貫通穴480に搭載される(図15BのNo.2参照)。部品名CN1のピン2からの配線はIMD(図2A,図2B参照)であるため、配線有効面が搭載裏面側であり(図8参照)、従って、L6層を用いて配線456が形成される(図15AのNo.1,No.2、図16の行90参照)。L6層には異ネットが配線済みであるため(図14中の配線416参照)、層間接続用ビア470を形成して配線層を変更する(図15BのNo.4、図16の行92参照)。L1及びL2層には層間接続用ビア470近傍に異ネットが配線済みであるため(図14中の配線441,432参照)、配線456と反対面での配線は不可である。また、高速信号レベルは「C」であり、制限層数は"2"であるので、L3及びL4層での配線も不可である(図4に示すようにL3及びL4層がベタ層であり、層種別が不適であることも原因)。L5層での配線は制限層数"2"を遵守できるが、既に層間接続用ビア470に接続の配線456とは反対面では無いため、そのままでは配線が出来ない。よって、L1層からL4層までバックドリルを適用する(図14の472、図15BのNo.4、図16の行94参照)ことで、L5層での配線は制限層数"2"を遵守できる。バックドリルを適用した結果、層間接続用ビア470からのL5層を使用した配線455の引き出しが可能となるので、配線455の引き出しを行う(図15AのNo.6、図16の行96参照)。
尚、図14乃至図16を参照して上述したように、図10及び図11に示した配線設計支援処理は、スタブ長を遵守する観点から各種の判定処理を行うものであり、他の配線設計の制約(例えば近傍の異ネットの配線に起因して配線不可となるような制約)については、他の判定処理を追加して判断されればよい。
以上、実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
例えば、図10及び図11に示した配線設計支援処理において、バックドリルで回避可能と判定した場合は、対話形式で、バックドリルの適用を行うか否かを設計者に問い合わせすることとしてもよい。これに応じて、設計者がバックドリルの適用を受け入れて確定した場合は、その内容を設計済み情報に反映した上で、ステップ1026に進むこととしてもよい。尚、この際、設計者は、バックドリルで除去する層数等を入力してもよい。
また、図10及び図11に示した配線設計支援処理において、ステップ1014においてバックドリル適用テーブル310が「必須」を示す場合は、バックドリルの適用を自動的に行った上で(但し、その旨のメッセージを出力してよい)、当該バックドリルの適用を設計済み情報に反映した上で、ステップ1026に進むこととしてもよい。
また、上述した実施例において、各種テーブルやライブラリの区分けは形式的なものであり、各種テーブルやライブラリは適宜統合されてもよいし、分離されてもよい。例えば、バックドリル適用テーブル310及びスタブ長制限値テーブル312は、1つのテーブルに統合されてもよい。
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
多層構造のプリント回路板における配線設計内容を表す入力データを入力する入力部と、
前記プリント回路板の貫通穴のスタブ長の制限値が設定されるスタブ長制限値テーブル、及び、前記プリント回路板のスタブ内の導体除去の適用可否を表す情報が設定されるバックドリル適用テーブルを含む記憶部と、
前記スタブ長制限値テーブルと前記バックドリル適用テーブルとに基づいて、前記入力データに係る配線設計の適否を判断する処理部とを備える、配線設計支援装置。
(付記2)
前記スタブ長の制限値は、扱う信号の速度レベルに応じて、扱う信号の速度レベルが高くなるほど小さくなる態様で設定される、付記1に記載の配線設計支援装置。
(付記3)
前記処理部は、前記スタブ長制限値テーブルに基づいて、前記入力データに係る配線により形成される貫通穴のスタブ長が前記制限値を超えると判断した場合、警告を出力する、付記1又は2に記載の配線設計支援装置。
(付記4)
前記バックドリル適用テーブルには、バックドリルの適用可能な場合に、プリント回路板の表側と裏側のうちのバックドリルの適用可能な側が更に設定される、付記1〜3のうちのいずれか1項に記載の配線設計支援装置。
(付記5)
前記処理部は、前記スタブ長制限値テーブルに基づいて、前記入力データに係る配線により生じる貫通穴のスタブ長が前記制限値を超えると判断した場合であって、前記バックドリル適用テーブルに基づいて、前記スタブ長が制限値を超えることが、バックドリルによりスタブ内の導体除去を行うことによって回避可能となると判断した場合、その旨を出力する、付記1〜4のうちのいずれか1項に記載の配線設計支援装置。
(付記6)
前記スタブ内の導体除去の適用可否を表す情報は、扱う信号の速度レベルに応じて異なる態様で設定される、付記1〜5のうちのいずれか1項に記載の配線設計支援装置。
(付記7)
前記スタブ内の導体除去の適用可否を表す情報は、貫通穴の種別に応じて異なる態様で設定される、付記1〜6のうちのいずれか1項に記載の配線設計支援装置。
(付記8)
前記記憶部は、プリント回路板の表側と裏側のうちの、貫通穴に対して配線が有効な側が、貫通穴の種別に応じて設定される配線有効面テーブルを更に含み、
前記処理部は、スタブ長制限値テーブルと、前記バックドリル適用テーブルと、前記配線有効面テーブルとに基づいて、前記入力データに係る配線設計の適否を判断する、付記1〜7のうちのいずれか1項に記載の配線設計支援装置。
(付記9)
前記処理部は、前記配線有効面テーブルに基づいて、前記入力データに係る配線の接続先の貫通穴の種別に係る有効な側が、プリント回路板における前記入力データに係る配線が形成される側に対して反対側である場合に、警告を出力する、付記8に記載の配線設計支援装置。
(付記10)
多層構造のプリント回路板における配線設計内容を表す入力データを入力し、
前記プリント回路板の貫通穴のスタブ長の制限値が設定されるスタブ長制限値テーブルと、前記プリント回路板の貫通穴の属性に応じてスタブ内の導体除去の適用可否が設定されるバックドリル適用テーブルとに基づいて、前記入力データに係る配線設計の適否を判断することを含む、配線設計支援方法。
(付記11)
多層構造のプリント回路板における配線設計内容を表す入力データを取得し、
前記プリント回路板の貫通穴のスタブ長の制限値が設定されるスタブ長制限値テーブルと、前記プリント回路板の貫通穴の属性に応じてスタブ内の導体除去の適用可否が設定されるバックドリル適用テーブルとに基づいて、前記入力データに係る配線設計の適否を判断する、
処理をコンピューターに実行させるプログラム。