以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、第一の実施の形態における信号処理装置1は、複数の信号L1,L2,L3,L4から二つの信号A,Bを抽出する信号抽出部2と、二つの信号A,Bの偏差εに基づいて平滑化信号Pを生成する平滑化処理部3とを備えて構成されている。そして、信号処理装置1は、二つの信号A,Bのうち選択される信号が切換わる際に切換わり時の信号の変化率の急変を緩和する平滑化信号Pを生成するようになっている。
第一の実施の形態における信号処理装置1は、この例では、所謂ハイセレクト処理を行うようになっており、信号抽出部2は、複数の信号L1,L2,L3,L4から最も大きな値を持つ信号と二番目に大きな値を持つ信号を二つの信号A,Bとして抽出するようになっている。
信号抽出部2は、図2に示すように、第一信号比較部21と、第二信号比較部22と、第三信号比較部23とを備えており、この実施の形態の場合、信号処理装置1がハイセレクト処理を行うため、複数の信号L1,L2,L3,L4から最も大きな値を持つ信号と二番目に大きな値を持つ信号を信号A,Bとして抽出するようになっている。信号処理装置1は、二つの信号A,Bとこれらの偏差εから平滑化信号Pを生成するため、信号抽出部2では、前記二つの信号A,Bを抽出するようになっている。
第一信号比較部21は、複数の信号L1,L2,L3,L4のうち、まず、任意の二つの信号を比較して、大きい値を持つ信号を暫定的な最大信号とし、小さい値を持つ信号を二番目に大きな値を持つ信号として暫定的な二番目の信号とする。第一信号比較部21は、信号L1,L2,L3,L4のうち、任意の二つの信号、たとえば、信号L1と信号L2の入力を受けて両者を比較し、大きな値をもつ信号を暫定的な最大信号として小さな値を持つ信号を暫定的な二番目の信号とする。具体的には、信号L1と信号L2の値がL1>L2の関係にあれば、第一信号比較部21は、最大信号を信号L1とし、二番目の信号を信号L2として出力する。信号L1と信号L2とが同じ値である場合、便宜的に、一方の信号を最大信号とし他方の信号を二番目の信号とすればよい。
第二信号比較部22は、第一信号比較部21で比較した二つの信号に残りの信号のうち任意の一つの信号を加え、暫定的な最大信号と暫定的な二番目の信号とこれに新たに加えた信号の三つの信号を比較して、一番大きな値の信号を暫定的な最大信号とし、二番目に大きな値の信号を暫定的な二番目の信号とする。たとえば、第二信号比較部22は、第一信号比較部21で比較した信号L1,L2に比較してない残りの信号L3,L4のうち任意の一つの信号L3を加えて比較する。そして、第一信号比較部21で暫定的な最大信号を信号L1とし、暫定的な二番目の信号を信号L2としている場合、第二信号比較部22は、信号L3の入力を受けて信号L1,L2と比較し、一番大きな値をもつ信号を暫定的な最大信号として二番目に大きな値を持つ信号を暫定的な二番目の信号とする。具体的には、信号L1、信号L2および信号L3の値がL1>L3>L2の関係にあれば、第二信号比較部22は、最大信号を信号L1として二番目の信号を信号L3として出力する。信号L1と信号L3とが同じ値である場合、便宜的に、一方の信号を最大信号とし他方の信号を二番目の信号とすればよい。また、信号L3と信号L2とが同じ値である場合、便宜的に、一方の信号を二番目の信号とすればよい。
第三信号比較部23は、第二信号比較部22で暫定的な最大信号と暫定的な二番目の信号とされたこれら信号にまだ比較していない信号を加えて、暫定的な最大信号と暫定的な二番目の信号と新たに加えた信号の三つの信号を比較して、一番大きな信号を最大信号とし、二番目に大きな信号を二番目の信号とする。第三信号比較部23は、具体的にはたとえば、前記したように第二信号比較部22で比較した結果において最大信号とされた信号L1と二番目の信号とされた信号L3に加えて、比較してない残りの信号L4の入力を受けて、信号L1,L3,L4の値を比較し一番大きな値をもつ信号と二番目に大きな値を持つ信号を抽出する。そして、第三信号比較部23は、抽出した二つの信号A,Bを出力する。具体的には、信号L1、信号L3および信号L4がL4>L1>L3の関係にあれば、第三信号比較部23は、信号L4と信号L1の二つの信号を信号A,Bとして抽出し、これら信号A,Bを平滑化処理部3へ出力する。信号L1と信号L3とが同じ値である場合、便宜的に、一方の信号を抽出対象の信号とし他方の信号については抽出対象としないようにすればよい。第一信号比較部21、第二信号比較部22および第三信号比較部23での手順を終了することで、信号抽出部2は、二つの信号A,Bを抽出して出力することができる。なお、信号抽出部2は、信号Aと信号Bの抽出を目的としており、信号Aと信号Bが最大値信号と二番目に大きな信号のいずれに該当するのかを紐づけて出力しないが、必要であれば、信号Aと信号Bのいずれが最大値でいずれが二番目の値であるかを紐づけして出力してもよい。
このように、複数の信号から信号Aと信号Bを抽出するにあたって、最初に、任意の二つの信号から暫定的な最大信号と二番目の信号を決めると、第二信号比較部22、第三信号比較部23は、比較していない信号を比較済みの二つの信号とを比較して最大信号と二番目の信号を決定する。本例では、信号数が四つであるので、三つの信号比較部21,22,23で信号を比較すれば最大信号と二番目の信号を抽出することができるが、処理する信号数を本例よりも増やす場合でも、第二信号比較部22以降は常に三つの信号から最大信号と二番目の信号を決定していく第二および第三信号比較部22,23にて行う手順を信号数に応じて繰り返してすべての信号を比較すれば、信号Aと信号Bを抽出することができる。よって、信号数を増やしても第二信号比較部22以降における手順自体は変わらないので、信号抽出部2をコンピュータに前記手順を実行させるプログラムで構成する場合、信号数が増加したとしても前記信号比較部における手順を信号数に見合った数だけ増やせばよく、プログラムが非常に簡単で信号数に応じて特別にプログラムする必要がない点で有利である。なお、信号抽出部2は、二つ以上の信号から信号A,Bを抽出することができるようになっていればよい。第一信号比較部21に最初に入力する二つの信号は、任意に決定することができ、信号L1,L2ではなく信号L3,L4としてもよく、特に制限されることはない。
この場合、値の大きな信号が選択されるハイセレクト処理が採用されるため、平滑化処理部3は、二つの信号A,Bに交わる二点間で二つの信号A,Bの値よりも大きな値を持つ平滑化信号Pを二つの信号A,Bの偏差εに基づいて生成する。この例では、所謂ハイセレクト処理を行うので、図3に示すように、信号Aが時間の経過とともに値が減少し、信号Bが時間の経過とともに値が増大して、ある時間で両信号A,Bが交わる場合、両信号A,Bの交わる時間t0より前では信号Aが選択され、時間t0以降では信号Bが選択されることになる。平滑化信号Pは、偏差εの絶対値が大きいと両信号A,Bの値との差が小さく、偏差εの絶対値が小さくなると信号A,Bとの差を大きくするようにして生成され、二つの信号A,Bが切換わる際に両信号A,Bを繋げて信号切換わり時の信号の変化率の急変を緩和するようになっている。具体的には、平滑化処理部3は、二つの信号A,Bのうち、大きな値の信号に偏差εに基づいて求めた加算値avを加算することで平滑化信号Pを生成するか、或いは、二つの信号A,Bの値と偏差εとに基づいて平滑化信号Pを生成するようになっている。このようにして偏差εに応じて生成される平滑化信号Pは、図3に示すように、両信号A,Bに交わる二点間では、これら両信号A,Bよりも必ず大きな値を持ち、両信号A,Bを繋げるようになっている。このように、平滑化信号Pは、両信号A,Bに交わる二点間で両信号A,Bよりも必ず大きな値を持つ信号であるため、図3に示すように、信号Aが選択されている間には平滑化信号Pの傾きは信号Aの傾きよりも大きくなり、信号Bが選択されている間には平滑化信号Pの傾きは信号Bの傾きよりも小さくなる。そのため、両信号A,Bの切換わり時において信号Aから信号Bに直接に選択される信号を切換えることに比較して、生成される平滑化信号Pと信号Aとの交点から信号Bの交点までの二点間で平滑化信号Pを採用することで、信号A,Bの切換わり時の信号の変化率の急変を緩和することができる。また、平滑化信号Pを信号A,Bに接する曲線を描くような信号とすることで、より一層、信号の変化率の急変を緩和することができる。
また、平滑化処理部3は、図3に示すように、両信号A,Bに交わる二点間で両信号A,Bよりも必ず大きな値となることの条件に加えて、信号の大きさと時間の平面において、信号A,Bの偏差εの絶対値が閾値δ以下となる時刻t1においてハイセレクト処理で選択される信号Aの値の座標と、時刻t0を過ぎて信号A,Bの偏差εの絶対値が閾値δを超える時刻t2においてハイセレクト処理で選択される信号Bの値の座標とを結ぶ直線Q1よりも値が小さくなるように平滑化信号Pを生成することもできる。すると、平滑化信号Pは、図3中で、前記直線Q1と、時刻t1から時刻t0までの範囲の信号Aと、時刻t0から時刻t2までの範囲の信号Bとで囲まれる範囲内に収まるように生成される。このように平滑化処理部3で平滑化信号Pを生成する場合には、より一層、確実に信号の変化率の急変を緩和することができる。偏差εの絶対値が閾値δ以下であるときに、平滑化信号Pを信号A,Bの代わりに出力すれば、信号Aから信号Bへの切換わり、或いは、信号Bから信号Aの切換わりにおいて、信号の変化率の急変を緩和することができる。このように、本実施の形態では、閾値δは、平滑化信号Pを信号A,Bの代わりに有効として出力させる規定範囲を設定する値となっている。つまり、偏差εが規定範囲内にある際に、平滑化信号Pを出力させるため、信号A,Bの双方の値が近づいて信号の切換わりが予想される際に、平滑化信号Pを採用することができるとともに、全く両信号A,Bの値が離れていて平滑化処理が不要な場合には、平滑化信号Pを採用しないようにすることができる。
また、平滑化処理部3は、両信号A,Bに交わる二点間で両信号A,Bよりも必ず大きな値となることの条件に加えて、信号の大きさと時間の平面において、ハイセレクト処理で選択される信号Aの値に、規定範囲を設定する閾値δから偏差εの絶対値を引いた値の二分の一を加算した値より小さくなるように平滑化信号Pを生成するようにしてもよい。この場合には、平滑化信号Pは、信号A,Bの偏差εの絶対値が閾値δに等しくなる座標にて平滑化信号Pが両信号に接し、選択される信号に対して、閾値δから偏差εを減算した値の範囲内に収まるように生成される。このように平滑化処理部3で平滑化信号Pを生成する場合にも、より一層、確実に信号の変化率の急変を緩和することができる。
以上までの処理を行うには、図4に示したように、まず、信号処理装置1は、複数の信号L1,L2,L3,L4を読み込む(ステップF1)。つづいて、信号処理装置1は、信号L1,L2,L3,L4から最も大きな値の信号と二番目に大きな値の信号を抽出する(ステップF2)。さらに、信号処理装置1は、ステップF1で抽出した二つの信号を信号A,Bとし、信号A,Bおよびこれら信号A,Bの偏差εから平滑化信号Pを生成する(ステップF3)。つづいて、信号処理装置1は、平滑化信号Pを出力する(ステップF4)。以上、一連の処理を繰り返し行うことで、信号処理装置1は、平滑化信号Pを繰り返し生成し出力することになる。
なお、前述したところでは、ハイセレクト処理するために、一番大きな値と二番目に大きな値を持つ信号を信号A,Bとして抽出するようにしているが、所謂ローセレクト処理するのであれば、信号L1,L2,L3,L4から一番小さな値の信号と二番目に小さな値を持つ信号を抽出して信号A,Bとし、出力すればよい。ローセレクト処理を採用する場合には、平滑化処理部3は、二つの信号A,Bに交わる二点間で二つの信号A,Bの値よりも小さな値を持つ平滑化信号Pを二つの信号A,Bの偏差εに基づいて生成すればよい。図5に示すように、信号Aが時間の経過とともに値が減少し、信号Bが時間の経過とともに値が増大して、ある時間で両信号A,Bが交わる場合、ローセレクト処理を採用すると、両信号A,Bの交わる時間t0より前では信号Bが選択され、時間t0以降では信号Aが選択されることになる。平滑化信号Pは、二つの信号A,Bが切換わる際に両信号A,Bを繋げて信号切換わり時の信号の変化率の急変を緩和する。具体的には、平滑化処理部3は、二つの信号A,Bのうち、小さな値の信号に偏差εに基づいて求めた加算値avを加算することで平滑化信号Pを生成するか、或いは、二つの信号A,Bの値と偏差εとに基づいて平滑化信号Pを生成するようになっている。このようにして生成される平滑化信号Pは、図5に示すように、両信号A,Bに交わる二点間では、これら両信号A,Bよりも必ず小さな値を持ち、両信号A,Bを繋げるようになっている。このように、平滑化信号Pは、両信号A,Bに交わる二点間で両信号A,Bよりも必ず大きな値を持つ信号であるため、信号Aが選択されている間には平滑化信号Pの傾きは信号Aの傾きよりも小さくなり、信号Bが選択されている間には平滑化信号Pの傾きは信号Bの傾きよりも大きくなる。そのため、両信号A,Bの切換わり時において信号Aから信号Bに直接に選択信号を切換えることに比較して、生成される平滑化信号Pが信号Aとの交点から信号Bの交点までの二点間で平滑化信号Pを採用することで、信号A,Bの切換わり時の信号の変化率の急変を緩和することができる。また、平滑化信号Pを信号A,Bに接する曲線を描くような信号とすることで、より一層、信号の変化率の急変を緩和することができる。
また、ローセレクト処理を行う場合、平滑化処理部3は、図5に示すように、両信号A,Bに交わる二点間で両信号A,Bよりも必ず小さな値となることの条件に加えて、信号の大きさと時間の平面において、信号A,Bの偏差εの絶対値が閾値δ以下となる時刻t1においてハイセレクト処理で選択される信号Aの値の座標と、時刻t0を過ぎて信号A,Bの偏差εの絶対値が閾値δを超える時刻t2においてローセレクト処理で選択される信号Bの値の座標とを結ぶ直線Q2よりも値が大きくなるように平滑化信号Pを生成することもできる。そうすると、平滑化信号Pは、図5中で、前記直線Q2と、時刻t1から時刻t0までの範囲の信号Aと、時刻t0から時刻t2までの範囲の信号Bとで囲まれる範囲内に収まるように生成される。このように平滑化処理部3で平滑化信号Pを生成する場合には、より一層、確実に信号の変化率の急変を緩和することができる。
なお、平滑化処理部3は、両信号A,Bに交わる二点間で両信号A,Bよりも必ず小さな値となることの条件に加えて、信号の大きさと時間の平面において、ローセレクト処理で選択される信号Aの値に、規定範囲を設定する閾値δから偏差εの絶対値を引いた値の二分の一を加算した値より大きくなるように平滑化信号Pを生成するようにしてもよい。この場合には、平滑化信号Pは、信号A,Bの偏差εの絶対値が閾値δに等しくなる座標にて平滑化信号Pが両信号に接し、選択される信号に対して、閾値δから偏差εを減算した値の範囲内に収まるように生成される。このように平滑化処理部3で平滑化信号Pを生成する場合にも、より一層、確実に信号の変化率の急変を緩和することができる。
本実施の形態における信号処理装置1にあっては、図1に示すように、上記した構成とは別に、ハイセレクト処理を行うため、二つの信号A,Bのうちハイセレクト処理によって出力されるべき信号を最大値信号Maとして抽出して出力する通常処理部4と、信号Aと信号Bの偏差εが規定範囲内である場合に平滑化処理部3が生成する平滑化信号Pを出力信号Oに選んで出力し、偏差εが規定範囲外である場合には通常処理部4が出力する最大値信号Maを選んで出力信号Oとして出力する出力信号調整部5を備えている。
通常処理部4は、入力された二つの信号A,Bを比較して大きな値を持つ信号を最大値信号Maとして採用する。通常処理部4は、ハイセレクト処理を行うために設けられており、信号Aと信号Bの値を比較して、値の大きな信号を最大値信号Maとして採用して出力信号調整部5へ出力する。通常処理部4は、ローセレクト処理を行いたい場合には、信号A,Bのうち最小の値を最小値信号Miとして採用して出力信号調整部5へ出力することになる。
なお、本実施の形態では、二つの信号A,Bを比較して大きな値を持つ信号を最大値信号Maとして採用して出力する通常処理部4を備えているので、信号抽出部2で信号Aと信号Bが最大値信号と二番目に大きな信号のいずれに該当するのかを紐づけて出力する必要はない。通常処理部4は、前述のとおり、入力された二つの信号A,Bを比較して大きな値を持つ信号を最大値信号Maとして採用するが、信号抽出部2で信号A,Bが最大値信号と二番目に大きな信号のいずれに該当するのかも判断するようにすれば、通常処理部4を信号抽出部2に統合することができる。
出力信号調整部5は、平滑化処理部3で生成した平滑化信号Pと通常処理部4が出力する最大値信号Maのうち一方を出力信号Oとし、この出力信号Oを出力する。具体的には、この実施の形態の場合、平滑化処理部3からの平滑化判定信号Zの入力を受け、この平滑化判定信号Zによって、平滑化信号Pと最大値信号Maのいずれを出力信号Oとするかを決定するようになっている。平滑化処理部3は、たとえば、信号A,Bの偏差εの絶対値が閾値δ以下であって規定範囲内にある場合、平滑化信号Pを採用できるか否か判断可能な値を持つ平滑化判定信号Zを出力し、信号A,Bの偏差εの絶対値が閾値δを超えており規定範囲外にある場合、最大値信号Maを採用すべきであることを示す値を持つ平滑化判定信号Zを出力する。出力信号調整部5が平滑化信号Pを採用するかしないかの二通りの判断しかしない場合、平滑化判定信号Zの出力ありと出力なし、つまり、任意の値と0を出力するものであってもよい。また、出力信号調整部5が平滑化信号Pを最大値信号Maにフェードインさせて加算したり、平滑化信号Pをフェードアウトさせたりする場合には、平滑化判定信号Zを平滑化信号Pに乗じるゲインとして出力し、出力信号調整部5でこのゲインと平滑化信号Pとを乗じた値と最大値信号Maとを加算して出力信号Oを求めるようにしてもよい。また、平滑化判定信号Zの生成は、平滑化処理部3で行うのではなく、通常処理部4で行うようにしてもよい。
以上までの処理を行うには、図6に示したように、まず、信号処理装置1は、複数の信号L1,L2,L3,L4を読み込む(ステップF11)。つづいて、信号処理装置1は、信号L1,L2,L3,L4から最も大きな値の信号と二番目に大きな値の信号を抽出する(ステップF12)。さらに、信号処理装置1は、ハイセレクト処理を行うのであれば、ステップF11で抽出した二つの信号を信号A,Bとし、信号Aと信号Bのうち最大値信号Maを選択し、ローセレクト処理を行うのであれば、信号Aと信号Bのうち最小値信号Miを選択する処理を行う(ステップF13)。つづいて、信号処理装置1は、信号A,Bおよびこれら信号A,Bの偏差εから平滑化信号Pを生成する(ステップF14)。信号処理装置1は、信号A,Bの偏差εと閾値δとを比較して平滑化判定信号Zを生成する(ステップF15)。さらに、信号処理装置1は、平滑化判定信号Zに基づいて、ハイセレクト処理を行う場合には、平滑化信号Pと最大値信号Maの一方を出力信号Oとして選択する処理を行い、ローセレクト処理を行う場合には、平滑化信号Pと最小値信号Miの一方を出力信号Oとして選択する処理を行う(ステップF16)。最後に、信号処理装置1は、出力信号Oを出力する(ステップF17)。以上、一連の処理を繰り返し行うことで、信号処理装置1は、出力信号Oを繰り返し生成し出力することになる。
つづいて、平滑化処理部3における具体的構成と処理について説明する。平滑化処理部3の第一の構成例では、図7に示すように、信号抽出部2が抽出した信号Aと信号Bとの偏差εを求める演算を行って、偏差εに基づいて平滑化信号Pを生成する信号生成部311と、平滑化信号Pの生成に当たり平滑化する規定範囲を画定する閾値δの値を変更する規定範囲変更部312と、規定範囲の急変を緩和する急変緩和処理部313と、信号Aと信号Bの偏差εと閾値δとを比較して平滑化判定信号Zを生成する平滑化判定信号生成部314とを備えて構成されている。
信号生成部311は、具体的には、信号Aと信号Bの偏差εから信号Aの値に乗じるべき第一ゲインG1と信号Bの値へ乗じるべき第二ゲインG2とを求め、信号Aの値と第一ゲインG1とに基づいて得た第一加算信号H1と、信号Bの値と第二ゲインG2とに基づいて得た第二加算信号H2とを合成して平滑化信号Pを求めて、当該平滑化信号Pを出力する。
第一ゲインG1と第二ゲインG2を求める手順を説明する。まず、図8に示すように、信号Aが時間の経過とともに減少し、信号Bが時間の経過とともに増加し、時間t0で信号Aと信号Bとが交わる状況を考える。この実施の形態における信号処理装置1では、値の大きな信号を選択するハイセレクト処理を行う。信号Aと信号Bとが同じ値になった時間t0より前ではそれまで大きな値を持つ信号Aを選択し、時間t0以降は信号Aよりも大きな値を持つ信号Bを選択すると、信号Aから信号Bへ切換わる時間t0において、出力される信号の変化率が急変してしまう。そこで、図9に示すように、信号Aと信号Bの交点付近において両者を滑らかにつなぐ信号を生成して、これを出力信号Oとすれば、信号Aから信号Bへ滑らかに変化させることができる。
最初に単純な二つの信号を合成して、信号Aと信号Bとを滑らかにつなぐ平滑化信号Pを求めることを考える。y軸に信号の値を、x軸に時間を採ったxy座標において信号Aと信号Bを合成する区間を0から1までの範囲で考え、信号Aを一次関数y=−x+1とし、信号Bをy=xとすると、信号Aと信号Bは、グラフに示すと図10に示すようになる。そして、求めたい平滑化信号Pは、図10中一点鎖線で示すような曲線となり、信号Aと信号Bを合成する区間0から1までの範囲では、この平滑化信号Pを信号A或いは信号Bの代わりに出力する信号とすれば、出力される信号の変化率の急変が緩和される。
このような信号Aと信号Bに対して、図11に示すように、信号Aに乗じる第一ゲインG1をy=1−x2とし、信号Bに乗じる第二ゲインG2をy=1−(1−x)2とすると、図12に示すように、信号Aに第一ゲインG1を乗じて得た第一加算信号H1はy=x3−x2−x+1となり、信号Bに第二ゲインG2を乗じて得た第二加算信号H2はy=−x3+2x2となり、第一加算信号H1と第二加算信号H2を加算して得た平滑化信号Pは、y=x2−x+1となる。
図10に示すように、信号Aから平滑化信号Pへ切換わるのはx=0の時点であり、平滑化信号Pから信号Bへ切換わるのはx=1の時点となる。信号Aがy=−x+1で表され、その微分はdy/dx=−1となり、x=0の時点での信号Aの微分値は−1となり、平滑化信号Pのy=x2−x+1を微分するとdy/dx=2x−1となり平滑化信号Pのx=0での微分値は−1となる。また、信号Bがy=xで表され、その微分はdy/dx=1となり、x=1の時点での信号Bの微分値は1となり、平滑化信号Pの微分dy/dx=2x−1にx=1を代入してx=1の時点での平滑化信号Pの微分値は1となる。よって、平滑化信号Pで信号Aと信号Bとを繋ぐ際に、信号Aから平滑化信号Pへ、平滑化信号Pから信号Bへ出力する信号を切換える際に信号の変化率は急変することがなく滑らかに変化することになる。さらに、平滑化信号Pは、二次曲線であるから平滑化信号Pの変化率も急変することがない。このように、信号Aと信号Bにそれぞれ第一ゲインG1と第二ゲインG2を乗じて加算することで平滑化信号Pを求めることができる。
つづいて、平滑化信号Pを求める手順を一般化する。信号Aを時間tによって変化する関数y=f1(t)とし、同様に信号Bを関数y=f2(t)として、これら信号Aと信号Bから平滑化信号Pを求める。
図13に示すように、信号Aの値が減少し信号Bの値が増加して両者が交わる時点を含み、両者の偏差εの絶対値が閾値δ以下である区間について考える。閾値δは、偏差εと比較して、平滑化信号Pを有効とする規定範囲を規定する値となっている。前述したとおり、偏差εの絶対値が閾値δ以下の範囲を規定範囲とし、この規定範囲内では、平滑化信号Pを有効として、この範囲で信号Aと信号Bの代わりに平滑化信号Pを出力すれば、信号Aと信号Bの切換わりにおける信号の変化率の急変を緩和できる。
まず、信号Bから信号Aを差し引きして関数F1、y=f2(t)−f1(t)と、信号Aから信号Bを差し引きして関数F2、y=f1(t)−f2(t)を得る。信号Aと信号Bの偏差の絶対値が閾値δ以下である区間における関数F1,F2のグラフは、図14に示すようになる。
つづいて、前記のようにして得た関数F1,F2をy軸において0から1までの範囲で変化するよう正規化する。具体的には、図15に示すように、関数F1,F2の右辺を閾値δで割り算して、関数F1をy=(f2(t)−f1(t))/δで表現される関数F11に変換し、関数F2をy=(f1(t)−f2(t))/δで表現される関数F21に変換して、y軸において−1から1の範囲で変化する関数F11,F21を得る。さらに、図16に示すように、関数F11,F21の右辺を2で割ってから0.5を加算して、関数F11をy=(f2(t)−f1(t))/2δ+0.5で表現される関数F12に変換し、関数F21をy=(f1(t)−f2(t))/2δ+0.5で表現される関数F22に変換して、y軸において0から1の範囲で変化する関数F12,F22を得る。
この正規化された関数F12,F22から第一ゲインG1と第二ゲインG2を求める。前述したように、第一ゲインG1と第二ゲインG2を二次関数として、関数F12に第一ゲインG1を乗じて第一加算信号H1を得て、さらに、関数F22に第二にゲインG2を乗じて第二加算信号H2を得て、第一加算信号H1と第二加算信号H2を加算して得た平滑化信号Pが二次関数になるようにすれば、信号Aと信号Bを平滑化信号Pで繋いだ際の繋ぎ目においても平滑化信号Pにおいても信号の変化率が急変しない。そこで、関数F12,F22の右辺をそれぞれ二乗して1から引いて、第一ゲインG1をG1=−{(f2(t)−f1(t))/2δ+0.5}2+1とし、第二ゲインG2をG2=−{(f1(t)−f2(t))/2δ+0.5}2+1とすれば、図17に示すように、単純な信号を合成する際に求めた第一ゲインG1と第二ゲインG2と同様の第一ゲインG1と第二ゲインG2を得ることができる。信号Aから信号Bを引いて得た偏差をεとすると、第一ゲインG1をG1=−(−ε/2δ+0.5)2+1で表すことができ、第二ゲインG2をG2=−(ε/2δ+0.5)2+1で表すことができる。
このように、信号Aと信号Bとから関数F12,F22を得て、第一ゲインG1と第二ゲインG2を求めることで、信号Aおよび信号Bの状況によらず一般化することができる。よって、予め閾値δを決めておけば偏差εを求めるだけで、第一ゲインG1と第二ゲインG2を求めることができる。したがって、第一ゲインG1と第二ゲインG2をマップ化し、偏差εからマップ演算することで第一ゲインG1と第二ゲインG2を求めることもできる。前述したように信号Aと信号Bとから正規化された関数F12,F22を得て第一ゲインG1と第二ゲインG2を求めることで、演算が容易となる利点があるが、正規化した信号Aから直接に第一ゲインG1を求めるとともに、正規化した信号Bから直接に第二ゲインG2を求めることも可能である。
次に、信号Aと信号Bの偏差εの絶対値が閾値δ以下である区間について、信号Aと信号Bを正規化する。第一ゲインG1と第二ゲインG2は、正規化した関数F12,F22から求めているため、第一ゲインG1と第二ゲインG2をそれぞれ対応する信号Aと信号Bに乗じるには、信号Aと信号Bの正規化が必要となる。つまり、正規化された信号Aに第一ゲインG1を乗じて得た第一加算信号H1と正規化された信号Bに第二ゲインG2を乗じて得た第二加算信号H2とを加算して得られる平滑化信号を、信号Aと信号Bを正規化した手順とは逆の手順で正規化前の状態に戻せば、目的とする平滑化信号Pを得ることができる。
まず、信号Aと信号Bを正規化する手順を説明する。信号Aと信号Bを加算するとともに、これを2で割り、閾値δの二分の一の値を引き算することで補正値γを得る。具体的には、補正値γ=(f1(t)+f2(t))/2−δ/2となる。
この補正値γを信号Aおよび信号Bから引き算して、信号A1と信号B1を得る。信号A1は、y=f1(t)−{(f1(t)+f2(t))/2−δ/2}となり、信号B1は、y=f2(t)−{(f1(t)+f2(t))/2−δ/2}となり、y軸において0から閾値δの範囲を示すと信号A1,信号B1は、図18のグラフに示すように変化する。
さらに、信号A1,B1の右辺を閾値δで割ると、信号Aおよび信号Bが正規化された信号A2,B2を得ることができる。信号A2は、y=[f1(t)−{(f1(t)+f2(t))/2−δ/2}]/δとなり、信号B2は、y=[f2(t)−{(f1(t)+f2(t))/2−δ/2}]/δとなり、y軸において0から1の範囲を示すと信号A2,信号B2は、図19のグラフに示すように変化する。
このように信号Aを正規化して得た信号A2に前記関数F12から求めた第一ゲインG1を乗じて第一加算信号H1を得る。第一加算信号H1は、H1=A2×G1で演算される。さらに、信号Bを正規化して得た信号B2に前記関数F22から求めた第二ゲインG2を乗じて第二加算信号H2を得る。第二加算信号H2は、H2=B2×G2で演算される。
そして、第一加算信号H1と第二加算信号H2とを加算して正規化された平滑化信号P1を得る。正規化された平滑化信号P1は、P1=H1+H2=A2×G1+B2×G2となり、図19のグラフに示すように表すことができる。
ここで求めた平滑化信号P1は、正規化された状態となっているので、正規化された平滑化信号P1を閾値δと前述の補正値γを利用して、正規化される前の状態に変換する。
具体的には、変換後の平滑化信号P=δ×(H1+H2)+γ=δ×(A2×G1+B2×G2)+γとなり、図20に示すように、平滑化信号Pは、信号Aと信号Bの偏差εの絶対値が閾値δ以下の範囲で両者を滑らかに接続することができる。
前記説明では、平滑化信号Pを生成する区間において、信号Aが信号Bに交わった後に信号Aが信号Bよりも小さくなり、信号Aに対しては第一ゲインG1を乗じて、信号Bに対しては第二ゲインG2を乗じて平滑化信号Pを得ることになるが、第一ゲインG1と第二ゲインG2の各式の違いは、偏差εの前の符号が異なるだけである。すると、演算上、二つの信号A,Bのうち大きな値をもつ信号に第一ゲインG1を乗じて第一加算信号H1を求め、二つの信号A,Bのうち小さな値を持つ信号に第二ゲインG2を乗じて第二加算信号H2を求めても、平滑化信号Pの演算結果は同じ値となる。より詳細には、平滑化信号Pの演算上、信号Aが信号Bと交わる時点までは、大きな値の信号Aから小さな値の信号Bを引き算して偏差εを求めてf1(t)の値に信号Aの値を入力するとともにf2(t)の値に信号Bの値を入力し、信号Aが信号Bと交わってからは、大きな値の信号Bから小さな値の信号Aを引き算して偏差εを求めてf1(t)の値に信号Bの値を入力するとともにf2(t)の値に信号Bの値を入力するようにして得た平滑化信号Pの値は、信号Aから信号Bを引き算して偏差εを求めてf1(t)の値に信号Aの値を入力するとともにf2(t)の値に信号Bの値を入力して求めた平滑化信号Pの値に一致する。
したがって、常に、二つの信号A,Bのうち、大きな値をもつ信号に対して第一ゲインG1を乗じて、小さな値を持つ信号に第二ゲインG2を乗じるようにして、平滑化信号Pを得ることができる。よって、信号Aをf1(t)として、信号Bをf2(t)とすると、偏差εをε=f1(t)−f2(t)で求め、第一ゲインG1をG1=−(−ε/2δ+0.5)2+1で求め、第二ゲインG2をG2=−(ε/2δ+0.5)2+1で求め、補正値γをγ=(f1(t)+f2(t))/2−δ/2で求めることができる。そして、或る時間Tにおける平滑化信号Pを求めるには、時間Tにおける信号Aの値f1(T)=a、時間Tにおける信号Bの値f2(T)=bである場合、値a,bを前記各式に代入して演算すればよい。さらに、信号Aおよび信号Bの正規化についても、正規化後の信号Aの値をa2とすればa2=[a−{(a+b)/2−δ/2}]/δで演算され、正規化後の信号Bの値をb2とすればb2=[b−{(a+b)/2−δ/2}]/δで演算され、平滑化信号Pは、P=δ×(a2×G1+b2×G2)+γを演算することで求めることができる。以上から理解できるように、平滑化処理部3における信号生成部311は、信号Aと信号Bとの偏差εに基づいて、第一ゲインG1と第二ゲインG2とを得て、これら第一ゲインG1と第二ゲインG2を利用して平滑化信号Pを生成するようになっている。
なお、偏差εの絶対値と閾値δとを比較して平滑化信号Pの有効無効或いは平滑化信号Pの生成の可否を判断することに代えて、偏差εの演算に際して大きな値の信号から小さな値の信号を差し引くようにすれば、偏差εと閾値δの比較で前記同様の判断が可能である。この判断において、偏差εを、たとえば、常に、信号A,Bのうち一方から信号A,Bのうち他方を差し引く、つまり、引き算の順番が決められている場合には、閾値δは、±N(Nは、数値)というように、数値部分は同じであるが符号の異なる二つの数字で規定して、前述と同様の規定範囲で平滑化信号Pを有効とすればよい。また、偏差εが規定範囲内に入るときの条件を決定する閾値と、偏差εが規定範囲外に出るときの条件を決定する閾値を異なる数値に設定することも可能である。
このように、信号Aと信号Bのうち大きな値を採る信号を選択し、第一ゲインをG1=−(−ε/2δ+0.5)2+1を演算して求め、第二ゲインをG2=−(ε/2δ+0.5)2+1を演算して求めるようにすれば、信号処理装置1で大きな値をもつ信号を選択するハイセレクト処理を行う際に、偏差εを求めるだけで第一ゲインG1と第二ゲインをG2とを求めることができ、複雑な演算を行うことなく、信号Aと信号Bを合成して平滑化信号Pを得ることができる。
なお、前記したところでは、第一ゲインG1と第二ゲインG2を二次関数を用いて導出しているが、三角関数を用いて導出してもよい。この場合、信号Aをf1(t)として信号Bをf2(t)とすると、偏差εをε=f1(t)−f2(t)で求め、第一ゲインG1はG1=[cos{(δ+ε)π/2δ}+1]2/4、第二ゲインG2はG2=[cos{(δ−ε)π/2δ}+1]2/4とし、前述したところと同様に、正規化後の信号Aの値をa2、正規化後の信号Bの値をb2として、第一加算信号H1をH1=1−a2×G1で求め、第二加算信号H2をH2=1−b2×G2で求め、平滑化信号PをP=δ×(H1+H2)+γを演算する。このように三角関数を用いても、信号Aから信号Bへ、或いは、信号Bから信号Aへ切換る際に切換前の信号と切換後の信号の双方を滑らかな曲線で繋ぐ平滑化信号Pを生成することができ、信号A,Bの切換わり時の信号の変化率の急変を緩和することができる。前記したところでは、第一ゲインG1および第二ゲインG2にcos関数を用いているが、sin関数を用いて定義してもよい。
なお、信号L1,L2,L3,L4から一番小さな値の信号を選択する、所謂ローセレクト処理する場合には、信号L1,L2,L3,L4から一番小さな値の信号と二番目に小さな値の信号を信号A,Bとして平滑化信号Pを生成することも可能である。その場合、信号Aと信号Bの偏差εを用い、第一ゲインG1をG1=−(−ε/2δ+0.5)2+1で表すことができ、第二ゲインG2をG2=−(ε/2δ+0.5)2+1で表すことができる。たとえば、ローセレクト処理で選択される信号を信号Aとすると、信号Aを正規化して前記の第一ゲインG1に乗じて第一加算信号H1を得るとともに、選択されていない信号である信号Bを正規化して前記の第二ゲインG2に乗じて第二加算信号H2を得て、平滑化信号Pを得るようにすれば、信号処理装置1にてローセレクト処理して信号を選択する場合にも信号A,Bの切換わりにおいて滑らかに信号A,B同士を繋ぐことができ、信号A,Bの切換わり時において、信号の変化率の急変を緩和することができる。
ローセレクト処理する場合にも、第一ゲインG1と第二ゲインG2を三角関数を用いて導出することが可能である。そして、この場合、信号Aをf1(t)として、信号Bをf2(t)とすると、偏差εをε=f1(t)−f2(t)で求め、第一ゲインG1はG1=[cos{(δ+ε)π/2δ}+1]2/4、第二ゲインG2はG2=[cos{(δ−ε)π/2δ}+1]2/4とし、前述したところと同様に、正規化後の信号Aの値をa2、正規化後の信号Bの値をb2として、第一加算信号H1をH1=a2×G1で求め、第二加算信号H2をH2=b2×G2で求め、平滑化信号PをP=δ×(H1+H2)+γを演算する。このようにしても、信号Aから信号Bへ、或いは、信号Bから信号Aへ切換る際に切換前の信号と切換後の信号の双方を滑らかな曲線で繋ぐ平滑化信号Pを生成することができ、信号の変化率の急変を緩和することができる。前記したところでは、第一ゲインG1および第二ゲインG2にcos関数を用いているが、sin関数を用いて表現してもよい。
以上のように、出力信号調整部5では、信号Aと信号Bの偏差εが閾値δ以下となると、平滑化信号Pを出力信号Oとして出力することで、選択される信号が切換る際の出力信号Oの変化率の急変を緩和することができる。ここで、平滑化信号Pは、前記したように、P=δ×(a2×G1+b2×G2)+γを演算することで求めることができる。したがって、信号Aと信号Bとが同じ値であって偏差εが0である場合には、平滑化信号Pの値は、P=a+0.25δ=b+0.25δ(aは信号Aの値、bは信号Bの値)となる。偏差εの絶対値が0近傍の値で閾値δ以下であると出力信号調整部5は、平滑化信号Pを出力信号Oとするが、偏差εの絶対値が0である場合、出力信号Oは信号A或いは信号Bに閾値δの0.25倍の値を加算した値となる。つまり、信号A,Bのいずれをハイセレクト処理しても平滑化信号Pの値は、信号A,Bと乖離した値となる。すると、信号Aの値と信号Bの値の両方が0となる場合であっても、出力信号Oの値は0.25δとなって、0になることがない。そのため、図7に示した平滑化処理部3では、閾値δの値を変更する規定範囲変更部312を設けている。
規定範囲変更部312では、閾値δの基準値δiniと信号Aと信号Bの両者の値の平均値とを比較して、前記平均値が基準値δiniより小さい場合、閾値δの値を前記平均値に変更し、急変緩和処理部313と平滑化判定信号生成部314へ変更後の閾値δを入力するようになっている。より具体的には、規定範囲変更部312は、信号Aと信号Bの平均値が演算されると基準値δiniと比較し、比較の結果、前記平均値のほうが基準値δiniよりも小さいと閾値δの値を前記平均値に更新し、信号生成部311による平滑化信号Pの演算と平滑化判定信号生成部314における偏差εの絶対値と閾値δとの比較に際して更新された閾値δが用いられる。また、閾値δには、0より大きく基準値δiniよりも小さな値の下限値δminが設定されており、前記した平均値が下限値δminより小さい場合には、閾値δの値は下限値δminにクランプされるようになっている。
以上のような規定範囲変更部312を設けることで、信号Aと信号Bとが0或いは0近傍の値をとる際に、出力信号Oが信号Aおよび信号Bに比較して大きな値を持つ信号として出力されてしまうことがなくなる。
たとえば、車両のばね上部材の制振制御に使用されるばね上制御用電流指令とばね下部材の制振制御に使用されるばね下制御用電流指令を信号として取り込んで出力信号Oを出力し、出力信号Oに基づいて車両のばね上部材とばね下部材との間に介装したダンパの減衰力を制御するようなサスペンションシステムに信号処理装置1を適用し、出力信号Oによってダンパの減衰力を調整する場合を考える。そして、たとえば、ハイセレクト処理により、二つの信号のうち信号Aを選択する場合、車両が停車してばね上部材もばね下部材も停止していて信号Aも信号Bも0となっているのに、信号処理装置から信号Aから乖離する一定値を持つ出力信号Oが出力されてしまうと、停車中にもかかわらずダンパの減衰力調整部へ制御指令を出力し続けなければならなくなる。これに対して、規定範囲変更部312を備えた信号処理装置1の場合、信号Aと信号Bとが0近傍の値をとるようになると、閾値δの値が0に近づいて小さくなるため、平滑化信号Pの値も小さくなり、平滑化信号Pが出力信号Oとして選択されて出力されても、出力信号Oの値は0近傍の小さな値となる。よって、信号処理装置1をサスペンションシステムの信号処理装置として使用すれば、車両が停車中であるようなばね上部材とばね下部材が振動せずに信号Aと信号Bとがともに0となるような状況で、ダンパの減衰力調整部への制御指令が出力されてしまう問題も解消される。
なお、閾値δに下限値δminを設定しているのは、平滑化信号Pの演算に、閾値δを分母とする割り算が含まれているからである。下限値δminは、たとえば、0.001等といった0に近い値に設定されれば、信号Aと信号Bとがともに0となる場合に出力される出力信号Oの値を0近傍の非常に小さな値にすることができる。前記した平均値と基準値δiniとを比較することで、信号Aと信号Bの両方ともに閾値δ未満の小さな値となる状況であることを確実に判断することができる利点がある。また、この実施の形態の場合、信号処理装置1がハイセレクト処理を行うため、信号Aと信号Bの平均値によって閾値δを変更するのではなく、ハイセレクト処理によって選択された信号の値が基準値δiniよりも小さいと閾値δの値を選択された信号の値に更新するようにしてもよい。ローセレクト処理する場合にも、信号Aと信号Bの平均値を利用することの他、ローセレクト処理によって選択された信号の値が基準値δiniよりも小さいと閾値δの値を選択された信号の値に更新するようにすることも可能である。このように、ハイセクト処理を行う場合もローセレクト処理を行う場合も、閾値δの値を、信号A或いは信号Bの大きさに関わる情報によって変更するようにすればよい。
なお、偏差εの絶対値が閾値δ以下となっても、信号Aと信号Bの平均値が下限値δmin以下となるような0近傍の値をとる場合、出力信号調整部5において平滑化信号Pではなくハイセレクト処理する際には信号A,Bのうち最大値を、ローセレクト処理する際には信号A,Bのうち最小値を出力信号Oとして出力させることで、信号Aおよび信号Bが共に0となるときは出力信号Oを0にできる。
また、本実施の形態の平滑化処理部3では、規定範囲変更部312を設けて閾値δを変更するが、閾値δを急変緩和処理部313で処理してから、信号生成部311と平滑化判定信号生成部314へ入力するようになっている。この実施の形態の場合、急変緩和処理部313は、ローパスフィルタで構成されており、ローパスフィルタで閾値δを濾波処理することで、閾値δの急峻な変化を遅らすことができ、閾値δの急変が緩和される。つまり、規定範囲の急変が急変緩和処理部313の処理によって緩和される。このようにすることで、信号Aと信号Bとがともに高周波で振動的に変化している最中に、偶々両信号A,Bが0或いは0近傍の値になるような場合には、閾値δが両信号A,Bの平均値に変更されるものの、急変緩和処理部313の処理によって閾値δが小さくなりすぎることがない。そのため、信号Aおよび信号Bが0付近で交差しても、平滑化信号Pによって出力信号Oが十分平滑化されるため、このような場合においても、出力信号Oの急変が緩和される。
対して、信号Aと信号Bとがともに徐々に0或いは0近傍の値に変化するような場合には、閾値δが振動的に変化しながら0へ向けて変化してもその周波数は低いことから、急変緩和処理部313で処理しても閾値δは徐々に低下することになり、閾値δの低下により平滑化信号Pの値も小さくなるため、出力信号Oは、信号Aと信号Bのうち選択される信号の変化に合わせて、0或いは0近傍の値に徐々に近づくことになる。よって、信号Aと信号Bとがともに徐々に0或いは0近傍の値に変化するような場合には、規定範囲が徐々に小さくなり、規定範囲が小さくなると偏差εが小さくなるために平滑化信号Pの値も小さくなって、出力信号Oは、信号Aと信号Bのうち選択される信号の変化に合わせて、0或いは0近傍の値に徐々に近づくことになる。したがって、信号処理装置1を前述したサスペンションシステムに適用する場合であって、車両が走行中であって平滑化を行いたい場面では、信号Aと信号Bとが振動的で偶々両者が0或いは0近傍の値をとるような状況であっても出力信号Oの平滑化が行われることになり、車両を停車させたとき等、平滑化を行いたくない場面では、平滑化が行われずに済む。したがって、信号処理装置1は、車両のサスペンションシステムにおける信号処理装置に最適となる。
平滑化判定信号生成部314は、信号Aと信号Bの偏差εを求め、急変緩和処理部313で処理された閾値δとを比較して、平滑化判定信号Zを生成する。具体的には、平滑化判定信号生成部314は、偏差εの絶対値が閾値δ以下である場合には、出力信号調整部5で平滑化信号Pを採用すると判断される値の平滑化判定信号Zを出力する。対して、平滑化判定信号生成部314は、偏差εの絶対値が閾値δを超えている場合には、出力信号調整部5で最大値信号Ma或いは最小値信号Miを採用すると判断される値の平滑化判定信号Zを出力する。前述したが、この平滑化判定信号生成部314は、通常処理部4または出力信号調整部5に統合してもよい。また、平滑化判定信号生成部314において、大きな値の信号から小さな値の信号を差し引くことで偏差εを求める場合、絶対値処理が不要であり、信号抽出部2で信号Aと信号Bのいずれが大きな値であるかについての情報も得るようにしておけば、平滑化判定信号生成部314における演算も容易となる。
なお、この平滑化処理部3では、常に、平滑化信号Pを生成し、平滑化判定信号生成部314で平滑化判定信号Zを生成して、最終的に平滑化信号Pの有効無効を出力信号調整部5で判断するようにしているが、偏差εの絶対値が閾値δ以下の規定範囲内でのみ、平滑化信号Pを生成するようにすることもできる。
以上では、平滑化処理部3は、平滑化信号Pを偏差εに基づいて、信号Aと信号Bを合成することで平滑化信号Pを生成するようにしているが、平滑化処理部3の他のバリエーションとして、選択される信号に加算値を加算することで平滑化信号Pを求めることもできる。
この平滑化処理部3では、図21に示した第二の構成例のように、最大値算出部321と、加算値算出部322と、加算部323と、平滑化判定信号生成部324とを備えて構成されている。
最大値算出部321は、ハイセレクト処理を行うべく、二つの信号A,Bの入力を受けると、両信号A,Bを比較して、一番大きな値を持つ信号を選択してこれを出力する。
加算値算出部322は、入力される信号Aと信号Bの偏差εを求め、偏差εに基づいて信号A,Bのうち選択される信号に加算する加算値avを求める。加算部323は、最大値算出部321によって選択される信号に加算値avを加算して平滑化信号Pを求める。
加算値算出部322は、求めた偏差εに基づいて選択される信号に加算する加算値avを求める加算値演算部3221と、加算値avに加算値ゲインを乗じる加算値変更部としての加算値ゲイン乗算部3222とを備えて構成されている。
加算値演算部3221は、偏差εから加算値avを求める。具体的には、信号Aと信号Bとを平滑化信号Pで滑らかにつなぐには、図10に示したのと同様に、y軸に信号の値を、x軸に時間を採ったxy座標において考えると、平滑化信号Pは、y=x2−x+1となる。ハイセレクト処理を行う場合、図10中で信号Aと信号Bとが交差する時間t0より前では、信号Aが最も大きな値の信号として選択される。信号Aは、y=−x+1であるから平滑化信号Pと信号Aとの差を関数で表現すると、y=x2となる。この差を加算値avとして求めれば、信号Aに加算値avを求めて加算するだけで平滑化信号Pを求めることができる。また、信号Aと信号Bとが交差する時間t0以降は、信号Bが最も大きな値の信号として選択されるが、信号Bは、y=xであるから平滑化信号Pと信号Bとの差を関数で表現すると、y=(x−1)2となる。つまり、平滑化信号Pは、図中のx=t0の線を中心として線対象であることが分かる。
時間t0は、偏差εが0となった時点であり、その時点における平滑化信号Pと、信号Aおよび信号Bとの差の値は、閾値δを用いればδ/4となること、偏差εの絶対値が閾値δ以下となる場合に、信号Aの代わりに平滑化信号Pを出力すること、さらには、時間t0以前においても時間t0以降においても偏差εの絶対値が閾値δとなるときに加算値avが0となることを考え、信号Aと平滑化信号Pの差を、偏差εをパラメータの関数に書き直すと、図22に示すように、加算値avは、av=(δ−|ε|)2/4δ(ただし、0≦|ε|≦δ)で表すことができる。加算値avは、このように簡単な演算によって求めることができるが、偏差εと加算値avの関係をマップ化しておきマップ演算によって求めることもできる。特に、平滑化信号Pを簡単な関数で表現することが難しい場合、偏差εと加算値avの関係をマップ化してマップ演算によって加算値avを求めるとよい。なお、偏差εの絶対値が閾値δを超える場合、加算値avは0となるが、前記式を演算して加算値avを求めると、加算値avが0とはならない。よって、偏差εの絶対値が閾値δを超える場合には、前記式の演算結果に関わらず加算値avを0とする。加算値avを0とするには、偏差εの絶対値と閾値δとを比較して偏差εの絶対値が閾値δを超える場合に、前記式の演算を実行せずに加算値avを0とするようにしてもよいし、前記式の演算の結果に0の加算値ゲインを乗じて加算値avを0とするようにしてもよい。
また、加算値avを偏差εについて微分すると、加算値の微分値av’=(|ε|−δ)/2δ(ただし、0≦|ε|≦δ)となる。|ε|=0の時、加算値の微分値av’=−1/2となり、|ε|=δの時、加算値avの微分値av’=0となる。加算値avの微分値av’は、加算値avの傾きを示しているから、|ε|=0の時に加算値avの微分値av’が−1/2となり、|ε|=δの時に加算値avの微分値av’が−1/2となることを、さらには、図22中の点(0,δ/4)と点(δ,0)を滑らかに結ぶことを条件として、加算値avを求める関数或いはマップを作って加算値avを求めるようにすれば、信号Aと信号Bとを滑らかにつなぐ平滑化信号Pを得ることができる。したがって、加算値avは、av=(δ−|ε|)2/4δ(ただし、0≦|ε|≦δ)の関係式のほか、前記条件を満たすように設計された関数或いはマップを用いることで求めることができる。なお、加算値avを求める関数或いはマップは、平滑化信号Pで信号Aと信号Bを滑らかにつなぐうえで実用上問題がなければ、|ε|=0の時における加算値の微分値av’の値と|ε|=δの時における加算値の微分値av’の値が前記条件に厳密に合致していなくとも使用することができる。よって、加算値avを求める関数或いはマップは、前記条件から多少外れても実用上問題のない範囲であれば、自由に調節可能である。なお、信号処理装置1がローセレクト処理する場合には、加算値avをav=−(δ−|ε|)2/4δ(ただし、0≦|ε|≦δ)を演算することで求めればよい。
つづいて、加算値変更部としての加算値ゲイン乗算部3222は、加算値演算部3221から入力される加算値avに、信号A,Bの値に応じて変化する加算値ゲインKavを乗じて、その結果を出力する。加算値ゲイン乗算部3222は、たとえば、縦軸に加算値ゲインを、横軸に信号A、Bの値をとった図23に示すマップを用いて、信号A,Bのうち選択される信号の値に基づいて加算値ゲインKavを求める。前記マップに示すように、加算値ゲインKavは、信号A,Bのうち選択される信号の値が信号下限閾値Smin未満である場合と信号上限閾値Smaxを超える場合に1未満の値をとり、それ以外では1となるようになっている。具体的には、加算値ゲインKavは、信号A,Bのうち選択される信号の値が0から信号下限閾値Sminまで変化するに伴って0から比例的に1まで増加し、信号A,Bのうち選択される信号の値が信号上限閾値Smaxを超えて限界値Seまで増加するに伴って1から0へ比例的に減少する。信号下限閾値Sminは、0近傍の小さな正の値に設定され、信号上限閾値Smaxは、信号処理装置1が出力することが可能な出力上限近傍の値に設定される。限界値Seは、任意に設定することができ、この限界値Seを超えると加算値avに乗じる加算値ゲインが0になる。
加算部323は、加算値avに加算値ゲインKavを乗じることで加算値ゲイン乗算部3222が求めた値に、信号A,Bのうち値が大きな信号の値を加算して平滑化信号Pを出力する。また、偏差εの絶対値が閾値δを超えている場合、加算値avが0とされるので、加算値ゲインKavがいかなる値であっても加算値ゲインKavを乗算した後の加算値avは0となって、加算部323の演算の結果は信号A或いは信号Bのうち大きな値を持つ信号そのものとなる。
よって、偏差εの絶対値が閾値δを超えている場合、信号処理装置1は、常に信号Aと信号Bのうち大きな値を持つ信号そのものを平滑化信号Pとして生成する。これに対して、偏差εの絶対値が閾値δ以下である場合、加算値avが0ではない値を持ち、さらに、信号Aが0である場合や限界値Seを超えない場合には加算値ゲインKavが0ではなく、加算値ゲインKavを乗算した後の加算値avが0でない値となるので、この値が信号Aと信号Bのうち大きな値を持つ信号に加算されて平滑化信号Pが生成される。
平滑化判定信号生成部324は、前述した平滑化判定信号生成部314と同様に、信号Aと信号Bの偏差εを求め、閾値δとを比較して、平滑化判定信号Zを生成する。具体的には、平滑化判定信号生成部324は、偏差εの絶対値が閾値δ以下である場合には、出力信号調整部5で平滑化信号Pを採用すると判断される値の平滑化判定信号Zを出力する。対して、平滑化判定信号生成部324は、偏差εの絶対値が閾値δを超えている場合には、出力信号調整部5で最大値信号Maを採用できるか否か判断可能な値を持つ平滑化判定信号Zを出力する。この平滑化判定信号生成部324は、通常処理部4または出力信号調整部5に統合してもよい。
このように、平滑化処理部3で常に平滑化信号Pを生成するようにし、偏差εの絶対値が閾値δ以下の場合に、平滑化信号Pを出力信号調整部5で出力信号Oとして採用すれば、信号A,Bの切換わりの際に信号の変化率の急変を緩和することができる。この平滑化処理部3にあっては、加算値avをハイセレクト処理によって選択された信号に加算して平滑化信号Pを求め、偏差εが規定範囲内にない場合には加算値avを0とするため、常に信号A,Bのうち選択される信号に加算値avを加算して求めた平滑化信号Pを出力信号Oとして出力するようにすれば、信号A,Bの切換わりの際に信号の変化率の急変を緩和することができる。よって、加算値avを求めて平滑化信号Pを出力する場合、図24に示した第二の実施の形態の信号処理装置のように、平滑化判定信号生成部324、通常処理部4および出力信号調整部5を廃止して、平滑化信号Pをそのまま出力信号Oとする態様も可能である。また、前述したところでは、平滑化信号Pについて信号A或いは信号Bの代用として用いることに代えて、図25に示した第三の実施の形態の信号処理装置のように、平滑化処理部3が最大値算出部321および平滑化判定信号生成部324を廃止して加算値avのみを求めて、この加算値avを平滑化信号Pとして出力するようにし、通常処理部4の出力する信号と加算値avを出力信号調整部5で加算して出力信号Oとして出力させてもよい。加算値avを求める場合、平滑化処理部3は、偏差εの絶対値が閾値δを超えており、偏差εが規定範囲を超える状況では加算値avは0をとり、規定範囲内であれば信号の変化率の急変を緩和することができる値の加算値avを出力するので、この加算値avを平滑化信号Pとして出力すれば、常に、加算値avを選択される信号に加算して出力すれば自動的に信号の値を緩和することができる信号が出力されることになる。このようにしても、結果的に平滑化信号Pが規定範囲で有効となる。
また、平滑化処理部3は、加算値変更部としての加算値ゲイン乗算部3222を備えており、信号A,Bのうち選択されている信号が信号下限閾値Smin未満である場合と信号上限閾値Smaxを超える場合には、加算値avに1未満の値の加算値ゲインKavを乗じて加算値avを小さくするようになっている。
加算値ゲイン乗算部3222は、信号A,Bのうち選択されている信号が信号下限閾値Smin未満であるときには、加算値avの値を加算値演算部3221が演算する加算値avより小さくするような加算値ゲインを加算値avに乗じるので、信号A,Bのうち選択されている信号が0近傍の値をとる際に加算値avが重畳されても、信号A,Bのうち選択されている信号から乖離の少ない平滑化信号Pを出力することができる。
車両のばね上部材の制振制御に使用されるばね上制御用電流指令とばね下部材の制振制御に使用されるばね下制御用電流指令を信号として取り込んで、制御指令を生成し、制御指令に基づいて車両のばね上部材とばね下部材との間に介装したダンパの減衰力を制御するようなサスペンションシステムに信号処理装置1を適用し、平滑化信号Pによってダンパの減衰力を調整する場合を考える。車両が停車してばね上部材もばね下部材も停止していて信号A,Bのうち選択されている信号が0となっているのに、信号処理装置1から信号A,Bのうち選択されている信号から大きく乖離する平滑化信号Pが出力されてしまうこともなくなる。前記のようなサスペンションシステムに適用する場合には、図23に示すように、信号A,Bのうち選択されている信号が信号下限閾値Smin未満である場合の加算値ゲインKavについて、信号A,Bのうち選択されている信号が0となる場合に加算値ゲインKavも0となるように設定することで、信号A,Bのうち選択されている信号が0の時に平滑化信号Pを0にすることができ、停車中にもかかわらずダンパの減衰力調整部へ0ではない制御指令を出力し続けるといった事態も回避される。
また、加算値ゲイン乗算部3222は、信号A,Bのうち選択されている信号が信号上限閾値Smaxを超えるときには、加算値avの値を加算値演算部3221が演算する加算値avより小さくするような加算値ゲインを加算値avに乗じる。よって、平滑化処理部3は、信号A,Bのうち選択されている信号が信号処理装置1の出力可能な信号の上限値に近い値となると加算値ゲイン乗算部3222によって加算値avを小さくするので、信号処理装置1が平滑化信号Pを出力する場合でも平滑化信号Pを信号処理装置1の出力上限値にクランプするリミッタ機能が発揮される。なお、加算値ゲイン乗算部3222の設置は任意であり、廃止することも可能である。
また、ローセレクト処理を行う場合には、加算値ゲイン乗算部3222での加算値ゲインKavの決定に当たり、ハイセレクト処理とは異なり、信号Aと信号Bのうち低い値の信号が選択されるため、低い値の信号の値を用いるか或いは信号A,Bの平均値を用いて、この値と信号下限閾値Sminおよび信号上限閾値Smaxとを比較して加算値ゲインKavを決定すればよい。このように、加算値ゲイン乗算部3222は、信号A,Bの一方または両方の大きさに関わる情報により、加算値ゲインKavを変更することで、信号A,Bのうち選択されている信号が0となるような場合に平滑化信号Pを0にすることができるとともに、平滑化信号Pが信号処理装置1の出力上限値を超えないようにすることができる。ローセレクト処理する場合にも、平滑化処理部3は、ローセレクト処理によって選択される信号と加算値avを加算して平滑化信号Pを求めることで、これを出力信号Oとして採用する態様も可能であるし、加算値avを平滑化信号Pとして出力して出力信号調整部5でローセレクト処理によって選択された信号に加算値avを加算して出力信号Oを求めて出力させるようにすることも可能である。
なお、平滑化処理部3にあっては、図26に示した第三の構成例のように、加算値ゲイン乗算部3222で求めた加算値ゲインKavの急変を緩和するゲイン急変緩和部3223を設けてもよい。ゲイン急変緩和部3223は、この例では、ローパスフィルタとされており、加算値ゲインKavをローパスフィルタ処理することで、加算値ゲインKavの急変を緩和することができる。このようにすることで、信号A,Bのうち選択される信号が高周波で振動的に変化している最中に、偶々、選択される信号が0或いは0近傍の値になるような場合には、加算値ゲインKavの値が変更されるものの、ローパスフィルタの処理によって値が急変しないため、平滑化処理が実行されて出力信号Oの値の急変が緩和される。対して、信号Aと信号Bとがともに徐々に0或いは0近傍の値に変化するような場合には加算値ゲインKavの変化率も低いことから、ゲイン急変緩和部3223で処理しても加算値ゲインKavは、徐々に低下することになり、加算値ゲインKavの低下により平滑化信号Pの値も小さくなるため、出力信号Oは、ハイセレクト処理或いはローセレクト処理によって選択される信号の変化に合わせて、0或いは0近傍の値に徐々に近づくことになる。よって、信号処理装置1を前述したサスペンションシステムに適用する場合であって、車両が走行中であって平滑化を行いたい場面では、信号Aと信号Bとが高周波で振動的で偶々両者が0或いは0近傍の値をとるような状況であっても出力信号Oの平滑化処理が行われることになり、車両を停車させたとき等、平滑化を行いたくない場面では、平滑化処理が行われずに済む。したがって、信号処理装置1は、車両のサスペンションシステムにおける信号処理装置に最適となる。
また、前記説明では、正の値を持つ信号を処理することを前提に説明しているが、負の値を持つ信号の場合には、マイナスの下限値を0に補正して本発明に適用し、最後にその補正分を戻す処理を行うようにすればよい。さらに、ハイセレクト処理、ローセレクト処理ともに、信号の符号に対して、信号のオフセットまたは信号を反転させれば本発明を適用でき、オフセットした場合にはオフセット分を戻す処理を行えばよい。
信号処理装置1は、以上のように構成され、複数の信号L1,L2,L3,L4が信号処理装置1に入力されると、信号抽出部2によって信号Aと信号Bが抽出され、平滑化処理部3では、偏差εに基づいて平滑化信号Pが生成される。
平滑化信号Pは、値の大きな信号が選択される場合、二つの信号A,Bに交わる二点間では二つの信号A,Bの値よりも大きな値を持つように偏差εに基づいて生成され、または、値の小さな信号を選択される場合、二つの信号A,Bに交わる二点間では二つの信号A,Bの値よりも小さな値を持つように偏差εに基づいて生成される。そのため、信号Aが選択されている間には平滑化信号Pの傾きは信号Aの傾きよりも大きくなり、信号Bが選択されている間には平滑化信号Pの傾きは信号Bの傾きよりも小さくなる。両信号A,Bの切換わり時において信号Aから信号Bに直接に選択される信号を切換えることに比較して、生成される平滑化信号Pが信号Aとの交点から信号Bの交点までの二点間で採用することで、信号処理装置1は、信号A,Bの切換わり時の信号の変化率の急変を緩和することができる。よって、本発明の信号処理装置1によれば、信号Aと信号Bの信号切換わりの際の信号の変化率を緩和することができる。
さらに、平滑化処理部3は、信号の大きさ軸と時間軸の平面において、信号A,Bのうち値の大きな信号が選択される場合、両信号A,Bに交わる二点間で両信号A,Bよりも必ず大きな値となることの条件に加えて、偏差εが規定範囲内に入る時刻に選択されている信号の値の座標と、偏差εが規定範囲外に出る時刻に選択されている信号の値の座標とを結ぶ直線よりも値が小さくなるように平滑化信号Pを生成し、または、信号A,Bのうち値の小さな信号が選択される場合、両信号A,Bに交わる二点間で両信号A,Bよりも必ず小さな値となることの条件に加えて、偏差εが規定範囲内に入る時刻に選択されている信号の値の座標と、偏差εが規定範囲外に出る時刻に選択されている信号の値の座標とを結ぶ直線よりも値が大きくなるように平滑化信号Pを生成する場合には、以下の利点がある。このような範囲で平滑化信号Pが生成されることによって、信号Aが選択されている間には平滑化信号Pの傾きは信号Aの傾きよりも大きくなり、信号Bが選択されている間には平滑化信号Pの傾きは信号Bの傾きよりも小さくなることに加え、滑らかに信号A,Bを繋ぐことができるため、信号処理装置1は、より一層、確実に信号の変化率の急変を緩和することができる。
また、さらに、二つの信号A,Bのうち選択される信号と平滑化信号Pのいずれかを出力信号Oとして出力する出力信号調整部が二つの信号A,Bの偏差εが規定範囲内であると平滑化信号Pを採用して出力信号Oとする場合には、偏差εが規定範囲内にある際に、平滑化信号Pを出力させるため、信号A,Bの双方の値が近づいて信号切換わりが予想される際に、平滑化信号Pを採用することができるとともに、全く両信号A,Bの値が離れていて平滑化処理が不要な場合には、平滑化信号Pを採用しないようにすることができる。よって、選択されていた信号から異なる信号へ切り換わる際に滑らかに信号が切換わって出力信号Oの平滑化が行われ、出力信号Oの変化率の急変を緩和することができる。
そして、信号処理装置1が規定範囲を二つの信号の一方または両方の大きさに関わる情報に基づいて変更する場合には、信号処理装置1は、信号Aと信号Bとが0近傍の値をとるようになる際に、閾値δの値を0に近づけて小さく変更することができる。このようにすることで、平滑化信号Pの値も小さくなって出力信号Oとして出力されるから、出力信号Oの値も0近傍の小さな値となる。信号Aと信号Bとが0近傍の値をとるようになる際には、出力信号Oも0乃至0近傍の値をとるようにすることができるので、信号処理装置1を制御信号の処理に使用すると、制御信号としての出力信号を0とすべき時には、0を出力させることができ、制御装置側で無駄な電力消費をなくすることができる。よって、たとえば、信号処理装置1をサスペンションシステムの信号処理装置として使用し、ばね上制御用電流指令とばね下部材の制振制御に使用されるばね下制御用電流指令を信号A,Bとして取り込む場合、車両が停車中であるようなばね上部材とばね下部材が振動せずに信号Aと信号Bとがともに0となるような状況では、ダンパの減衰力調整部への制御指令が大きくなってしまう問題も解消され、消費電力も低減させることができる。
つづいて、信号処理装置1が規定範囲の急変を緩和する急変緩和処理部を備える場合には、信号Aと信号Bとがともに高周波で振動的に変化している最中に、偶々両信号が0或いは0近傍の値になるような場合には、規定範囲が小さくなりすぎることがなくなる。そのため、信号Aおよび信号Bが0付近で交差しても、平滑化信号Pによって出力信号Oが十分平滑化されるため、このような場合においても、信号処理装置1は、出力信号Oの急変を緩和することができる。対して、信号Aと信号Bとがともに徐々に0或いは0近傍の値に変化するような場合には、規定範囲は徐々に小さくなり、規定範囲の縮小に伴って平滑化信号Pの値も小さくなるため、出力信号Oは、信号Aと信号Bのうち選択される信号の変化に合わせて、0或いは0近傍の値に徐々に近づくことになる。よって、信号処理装置1を前述したサスペンションシステムに適用する場合であって、車両が走行中であって平滑化を行いたい場面では、信号Aと信号Bとが振動的で偶々両者が0或いは0近傍の値をとるような状況であっても出力信号Oの平滑化が行われることになり、車両を停車させたとき等、平滑化を行いたくない場面では、平滑化が行われずに済む。信号処理装置1が車両のサスペンションシステムにおける信号処理装置に最適となる。
また、平滑化処理部3が平滑化信号Pと選択される信号A,Bの差が二つの信号A,Bの偏差εが大きいほど小さくなるように平滑化信号Pを生成するので、平滑化信号Pを滑らかな曲線として生成することができるとともに、信号Aと平滑化信号Pとの接続点、信号Bと平滑化信号Pの接続点がともに滑らかになる。よって、信号処理装置1は、両信号A,Bを平滑化するのに最適な平滑化信号Pを得ることができる。
平滑化処理部3が信号A,Bのうち選択される信号に偏差εに基づいて求めた加算値avを加算することで平滑化信号Pを生成する場合には、信号処理装置1は、簡単に信号同士を滑らに繋ぐ理想的な平滑化信号Pを求めることができ、出力信号Oの変化率の急変をより効果的に緩和することができる。
平滑化処理部3が加算値avを二つの信号A,Bの一方または両方の大きさに関わる情報に基づいて変更する加算値変更部を備える場合には、信号処理装置1は、以下の効果を奏することができる。信号A,Bのうち選択されている信号が信号下限閾値Smin未満である場合に、加算値avを小さくするようにすると、信号A,Bのうち選択されている信号が0となっているのに、信号処理装置1から信号A,Bのうち選択されている信号から大きく乖離する平滑化信号Pが出力されてしまうこともなくなる。また、信号A,Bのうち選択されている信号が信号上限閾値Smaxを超える場合には、加算値avを小さくすると、信号A,Bのうち選択されている信号が信号処理装置1の出力可能な信号の上限値に近い値となると信号処理装置1が平滑化信号Pを出力する場合でも平滑化信号Pを信号処理装置1の出力上限値にクランプするリミッタ機能が発揮される。よって、信号処理装置1は、サスペンションシステムに最適となり、システムの消費電力を低減させることができるとともに、リミッタ機能を発揮することができ、別途、システム側でリミッタを設けずに済む。
さらに、加算値avが二つの信号A,Bの偏差εの二次関数を用いて表現される場合には、信号処理装置1は、簡単な演算を行うだけで、信号同士を滑らに繋ぐ理想的な平滑化信号Pを求めることができ、出力信号Oの変化率の急変をより効果的に緩和することができる。
また、三つ以上の信号L1,L2,L3,L4から、最大値と二番目に大きな値を持つ二つの信号A,Bを抽出するか、或いは、最小値と二番目に小さな値を持つ二つの信号A,Bを抽出して、平滑化処理部3へ抽出した二つの信号を入力する信号抽出部2を備える場合には、二つの信号A,Bの抽出を信号抽出部2で行うことで、信号が増えても、平滑化処理部3の処理手順を変更する必要がなくなるので、プログラムも平易となる。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。