以下、添付図面を参照して、単一光子放射断層撮影装置の実施形態を詳細に説明する。以下では、単一光子放射断層撮影(SPECT:Single Photon Emission Computed Tomography)装置を、SPECT装置と省略して記載する。なお、本実施形態は、単一光子放射断層撮影を行なうガンマカメラに適用される場合であっても良い。
(実施形態)
まず、本実施形態に係るSPECT装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るSPECT装置の構成例を説明するための図である。図1に示すように、本実施形態に係るSPECT装置は、架台装置10と、コンソール装置20とを有する。
架台装置10は、被検体Pに投与され、被検体Pの生体組織に選択的に取り込まれた放射性医薬品から放射される放射線(ガンマ線)を検出し、投影データを収集する装置であり、天板11と、寝台12と、寝台駆動部13とを有する。また、本実施形態に係る架台装置10は、図1に示すように、ガンマカメラ14a及びカメラ駆動部15aと、ガンマカメラ14b及びカメラ駆動部15bとを有する。なお、架台装置10は、図1に示すように、撮影口となる空洞を有する。
天板11は、被検体Pが横臥するベッドであり、寝台12の上に配置される。寝台駆動部13は、後述する寝台制御部23の制御のもと、寝台12を移動することにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させる。
ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bは、被検体Pの生体組織に選択的に取り込まれた放射性医薬品(トレーサ)の核種(RI:Radio Isotope)から放射されるガンマ線を検出する検出器である。すなわち、本実施形態に係る架台装置10は、ガンマ線を検出する検出器としてのガンマカメラを2つ有する。
具体的には、ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bそれぞれは、放射性医薬品(トレーサ)から放出されたガンマ線の強度分布を2次元的に検出する。そして、ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bそれぞれは、検出した2次元ガンマ線強度分布データを、例えば、増幅処理、A/D変換処理することで投影データを生成し、生成した投影データを後述するデータ収集部25に送信する。例えば、ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bそれぞれは、シンチレータと、光電子倍増管(PMT:Photomultiplier Tube)とを有するフォトンカウンティング方式の放射線検出器である。シンチレータは、ガンマ線を紫外領域にピークを持つ光に変換する。PMTは、シンチレータからの発光を増倍して電気信号に変換する。
また、ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bそれぞれには、入射方向を制限するコリメータが取り付けられている。ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bそれぞれは、コリメータにより制限された入射方向で入射したガンマ線を検出する。
カメラ駆動部15a及びカメラ駆動部15bそれぞれは、後述するカメラ制御部24の制御のもと、ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bそれぞれを移動させる装置である。例えば、カメラ駆動部15aは、ガンマカメラ14aを架台装置10の撮影口内に沿って所定の位置まで移動する。また、例えば、カメラ駆動部15bは、ガンマカメラ14bを架台装置10の撮影口内に沿って所定の位置まで移動する。これにより、ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bそれぞれは、所定の1方向の投影データを生成する。
また、カメラ駆動部15a及びカメラ駆動部15bは、ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bそれぞれを移動して所定の角度離れた状態に配置し、ガンマカメラ14aとガンマカメラ14bとの間隔を維持した状態で、ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bそれぞれを撮影口内に沿って回転駆動させる。これにより、ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bそれぞれは、被検体Pの周囲を回転して、360度の複数方向の投影データを生成する。
コンソール装置20は、操作者によるSPECT装置の操作を受け付けるとともに、架台装置10によって収集された投影データから被検体Pに投与した放射性医薬品の体内分布が描出された断層画像であるSPECT画像を再構成する装置である。
具体的には、コンソール装置20は、図1に示すように、入力部21と、表示部22と、寝台制御部23と、カメラ制御部24と、データ収集部25と、画像再構成部26と、画像処理部27と、データ記憶部28と、システム制御部29とを有し、コンソール装置20が有する各部は、内部バスを介して接続される。
入力部21は、SPECT装置の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボードなどを有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、システム制御部29に転送する。なお、本実施形態において、入力部21が操作者から受け付ける各種指示および各種設定の情報については、後に詳述する。
表示部22は、操作者によって参照されるモニタであり、システム制御部29による制御のもと、SPECT画像などを操作者に表示したり、入力部21を介して操作者から各種指示や各種設定などを受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
データ収集部25は、ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bそれぞれから送信された投影データを収集する。そして、データ収集部25は、収集した投影データそれぞれに対して、オフセット補正、感度補正等の補正処理を行なって補正済み投影データを生成し、生成した補正済み投影データをデータ記憶部28に格納する。なお、本実施形態は、ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bそれぞれがガンマ線の検出結果(2次元ガンマ線強度分布データ)をデータ収集部25に送信し、データ収集部25がガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bから受信したデータから投影データ(補正済み投影データ)を収集する場合であっても良い。
画像再構成部26は、データ記憶部28から補正済み投影データを読み出し、読み出した補正済み投影データ(例えば、360度方向分の補正済み投影データ)を逆投影処理することで、SPECT画像を再構成する。例えば、画像再構成部26は、逐次近似法により、SPECT画像を再構成する。そして、画像再構成部26は、再構成したSPECT画像をデータ記憶部28に格納する。
画像処理部27は、データ記憶部28からSPECT画像を読み出し、読み出したSPECT画像に対して各種処理を行なう処理部である。本実施形態に係る画像処理部27は、図1に示すように、測定部27a及び算出部27bを有する。測定部27aは、入力関数を測定し、算出部27bは、機能パラメータを算出する。そして、測定部27a及び算出部27bは、処理結果をデータ記憶部28に格納する。なお、測定部27a及び算出部27bが実行する処理の内容については、後に詳述する。
システム制御部29は、架台装置10およびコンソール装置20の動作を制御することによって、SPECT装置の全体制御を行う。具体的には、システム制御部29は、寝台制御部23およびカメラ制御部24を制御することで、架台装置10における投影データの収集処理を実行させる。また、システム制御部29は、データ収集部25の補正処理と、画像再構成部26および画像処理部27の画像生成処理を制御することで、コンソール装置20における画像処理全体を制御する。また、システム制御部29は、データ記憶部28が記憶するデータを、表示部22に表示するように制御する。
以上、本実施形態に係るSPECT装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、本実施形態に係るSPECT装置は、脳SPECT検査や心筋SPECT検査等において、機能パラメータを算出する。具体的には、本実施形態に係るSPECT装置は、機能診断を行なう対象である目的臓器へのトレーサの入力関数及び目的臓器内でのトレーサの集積状態から、目的臓器の機能パラメータを算出する。例えば、本実施形態に係るSPECT装置は、機能パラメータとして、血流量、神経細胞の密度等を算出する。
ここで、入力関数は、脳や心臓等の目的臓器へトレーサを供給する臓器におけるトレーサ量の時系列に沿った変化を示す情報である。具体的には、入力関数は、目的臓器へのトレーサ供給源である大動脈や頚動脈等におけるトレーサの時間経過にともなう分布変化である。以下、図2を用いて、機能パラメータ算出のためにSPECT装置が行なう撮影のワークフローの一例について説明する。図2は、機能パラメータ算出用撮影のワークフロー例を説明するための図である。
図2では、トレーサ投与時からの経過時間(分)を横軸に示し、トレーサ量を縦軸に示している。また、図2は、脳SPECT検査における機能パラメータ算出用撮影の一例を示している。図2に示す一例のように、脳SPECT検査における機能パラメータ算出用撮影では、トレーサ投与時「0分」から「t1分」まで、大動脈におけるトレーサ量の変動を測定するための測定用撮影が行なわれ、その後、「t2分」まで、目的臓器が位置する脳のSPECT画像を撮影する本撮影が行なわれる。すなわち、図2に示す一例では、測定用撮影の撮影部位は、被検体Pの心臓であり、本撮影の撮影部位は、被検体Pの脳となる。
測定用撮影により、図2に示すように、目的臓器への入力関数である「大動脈におけるトレーサ量の時間変化曲線a」が測定される。ここで、測定用撮影は、例えば、約1分間行なわれ、大動脈におけるトレーサ量は、数秒ごと(例えば、2秒ごと)に測定される。
また、本撮影により、図2に示すように、「目的臓器内でのトレーサの集積状態b」が求められる。ここで、「目的臓器内でのトレーサの集積状態b」は、例えば、本撮影で撮影されたSPECT画像において、トレーサが血液脳関門(BBB: blood-brain barrier)を通過して神経細胞に集積した量(積分値)の分布となる。なお、本撮影は、全周囲における複数方向の投影データを収集するために、例えば、約20分間行なわれる。例えば、本撮影では、各方向の投影データを1分間ずつ収集することで、20方向の投影データが収集される。これにより、本撮影では、例えば、被検体Pの脳を体軸方向に沿って所定間隔でスライスした100枚程度の断層画像であるSPCET画像の撮影が行なわれる。
そして、測定用撮影で測定された「大動脈におけるトレーサ量の時間変化曲線a」と、本撮影で撮影されたSPECT画像から求められる「目的臓器内でのトレーサの集積状態b」とから、図2に示すように、機能パラメータが算出される。例えば、神経細胞の密度が機能パラメータとして算出される。なお、通常、本撮影後にSPECT画像の再構成処理が行なわれ、その後、測定用撮影で収集されたデータから、入力関数の測定が行なわれ、更に、機能パラメータの算出が行なわれる。
しかし、従来の測定用撮影では、入力関数に測定誤差が含まれる場合があった。図3及び図4は、従来の測定用撮影で測定される入力関数を説明するための図である。
ガンマカメラが1回転するために要する時間は、例えば、約1分間であり、時間がかかる。また、上述したように、測定用撮影では、時間経過にともなうトレーサの分布変化を捉えるために、一定時間間隔ごとデータを収集する必要があるが、血流により変動するトレーサ量の時間変化を細かい粒度で測定するためには、データ収集は、数秒ごとに行なう必要がある。このため、従来、入力関数の測定は、図3に示すように、1つのガンマカメラを用いて、固定した1方向からの撮影により行なわれている。すなわち、従来の測定用撮影では、1方向の投影データ(以下、1方向投影データ)がダイナミック収集される。
ここで、仮に、複数方向の投影データを用いて測定用撮影時の心臓を含む断面が再構成されたSPECT画像が、図4の(A)に示す断層画像100であり、断層画像100においてトレーサが分布する大動脈内に位置する領域が、図4の(A)に示す領域101であるとする。かかる場合、領域101は、入力関数の測定対象である関心領域(ROI:Region Of Interest)として理想的な関心領域となる。
一方、従来の測定用撮影で収集される投影データは、図4の(B)に示す1方向投影データ200となり、領域101に対応する領域は、図4の(B)に示す領域201となる。しかし、断層画像100には、図4の(A)に示すように、領域101以外にも、領域102等のようにトレーサが集積する領域が存在している。例えば、領域102は、被検体Pの肺に対応する領域である。喫煙者ではトレーサの一部が肺でトラップされるため、被検体Pが喫煙者である場合、領域102におけるトレーサの集積量は大きくなる。このため、図4の(B)に示す領域201のデータは、領域101の他に、領域102等に集積したトレーサが重複した情報となる。
ここで、1方向投影データ200を用いて再構成したSPECT画像は、図4の(C)に示すように、断層画像300となる。また、断層画像300において、領域201に対応する領域は、図4の(C)に示すように、領域301となる。しかし、領域201と同様、領域301には、領域101の他に領域102等の情報が含まれている。また、1方向投影データ200から再構成された断層画像300に描出される情報は、図4の(C)に示すように、領域101や領域102等が1方向に伸展されたパターンとなることから、操作者が、領域301を、例えば大動脈であると判定することは困難である。
このため、従来の測定用撮影では、再構成処理を行なわずに、操作者が、1方向投影データ200を参照して、例えば、領域201を測定用の関心領域として設定することで、入力関数の測定が行なわれていた。しかし、上述したように、領域201には、領域101以外の領域に集積したトレーサが重複したデータである。その結果、従来の測定用撮影で測定される入力関数には、測定誤差が生じる。
そこで、本実施形態では、上述したように、SPECT装置を複数の検出器(ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14b)を有する多検出系とし、以下の処理を行なうことで、入力関数の測定誤差を向上させる。
すなわち、本実施形態に係るシステム制御部29は、入力関数の測定用撮影において、放射線(ガンマ線)を検出する複数の検出器(複数のガンマカメラ)それぞれを複数の所定の位置に配置させる。具体的には、本実施形態では、2検出系のSPECT装置を用いることから、システム制御部29は、2つのガンマカメラ(ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14b)それぞれを略90度離れた状態に配置させる。なお、システム制御部29は、カメラ制御部24を介して、カメラ駆動部15a及びカメラ駆動部15bを制御することで、ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bの移動を行なう。図5は、本実施形態の測定用撮影におけるガンマカメラの配置例を説明するための図である。
例えば、システム制御部29は、図5に示すように、被検体Pからガンマカメラ14aへ向かう方向と、被検体Pからガンマカメラ14bへ向かう方向とのなす角度が略90度となるように制御する。図5に示す一例では、ガンマカメラ14aの検出面とガンマカメラ14bの検出面とが直交した状態で、ガンマカメラ14aは、被検体Pの上部に配置され、ガンマカメラ14bは、被検体Pの側面に配置される。
本実施形態では、ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14bが図5に示す状態で固定された後、放射性医薬品(トレーサ)が被検体Pに投与され、測定用撮影が開始される。これにより、データ収集部25は、被検体Pに投与されたトレーサから放出されるガンマ線を複数のガンマカメラ(ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14b)それぞれが検出した結果から、複数の所定の位置それぞれにおける投影データを時系列に沿って収集する。具体的には、データ収集部25は、投影方向が略90度異なる2方向の投影データを時系列に沿って収集する。例えば、データ収集部25は、トレーサ投与時から2秒後までの2方向投影データ、2秒後から4秒後までの2方向投影データ、4秒後から6秒後までの2方向投影データ等を収集する。なお、データ収集部25の処理により収集される投影データは、上述した「補正済みの投影データ」である。
そして、画像再構成部26は、データ収集部25が時系列に沿って収集した複数の所定の位置それぞれにおける投影データから、時系列に沿った複数の断層画像(SPECT画像)を再構成する。具体的には、画像再構成部26は、データ収集部25が時系列に沿って収集した2方向投影データから、時系列に沿った複数のSPECT画像を再構成する。例えば、画像再構成部26は、トレーサ投与時から2秒後のSPECT画像、4秒後のSPECT画像、6秒後のSPECT画像等を再構成する。なお、画像再構成部26は、例えば、トレーサ投与時から2秒後のSPECT画像として、100枚のアキシャル断面画像を再構成する。
図6は、2方向投影データから再構成されるSPECT画像の一例を示す図である。例えば、2方向投影データから再構成されるSPECT画像は、図6に示す断層画像400となる。図6に示す断層画像400には、トレーサの集積量が高い領域が矩形として描出されている。
そして、測定部27aは、時系列に沿った複数の断層画像(SPECT画像)から、関心領域における放射性医薬品の時系列に沿った集積量の変化を示す入力関数を測定する。例えば、システム制御部29は、2秒後のSPECT画像の1つの断面画像を表示部22に表示させる。操作者は、表示されたSPECT画像を参照して、当該SPECT画像内で大動脈内に該当すると判定した領域を、入力関数を測定するための関心領域として設定する。なお、表示される断面画像は、操作者により指定される場合であっても良く、或いは、例えば、100枚の断面画像の中で50枚目の断面画像と初期設定される場合であっても良い。また、関心領域は、例えば、トレーサの集積量が周囲の集積量と比較して多い領域を測定部27aが抽出することで設定する場合であっても良い。
そして、例えば、測定部27aは、時系列に沿った複数のSPECT画像それぞれから、関心領域が設定された断面画像の位置に対応する断面画像を抽出する。そして、測定部27aは、抽出した各断面画像において、設定された関心領域の位置と同一の位置を特定する。そして、例えば、測定部27aは、特定した各関心領域を構成する画素値の代表値(例えば、平均値)を時系列に沿って測定することで、大動脈におけるトレーサ量の時間変化曲線としての入力関数を測定する。
一例として、図6に示す断層画像400が表示され、断層画像400において関心領域として領域401が設定されたとする。ここで、図4の(A)で説明した断層画像100は、入力関数を測定するための理想的な関心領域「領域101」を設定するための理想的なSPECT画像である。一方、2方向撮影によるSPECT画像である断層画像400では、2方向と少ない投影方向ではあるものの、2方向の投影データそれぞれを実空間に逆投影することで得られるSPECT画像である。このため、領域401では、領域101以外の領域に集積したトレーサの情報が、大まかであるが分離されることとなる。このように、本実施形態では、2方向撮影によるSPECT画像に設定された関心領域を入力関数の測定に用いることで、測定対象となる実空間領域以外の実空間領域に集積したトレーサの影響を低減することができる。その結果、本実施形態では、入力関数の測定精度を向上させることができる。
なお、画像再構成部26による2方向の投影データからの画像再構成処理と、測定部27aによる入力関数測定処理は、本撮影の後に行なわれる。図7は、本実施形態における本撮影の一例を説明するための図である。
例えば、測定用撮影の終了後に行なわれる本撮影では、システム制御部29の制御により天板11が移動されることで、撮影部位が心臓から頭部に変更される。そして、本実施形態における本撮影では、例えば、本撮影で撮影されるSPECT画像の時間分解能を向上させるために、システム制御部29は、図7に示すように、ガンマカメラ14aとガンマカメラ14bとを被検体Pを挟んで対向する位置に移動させる。そして、システム制御部29は、ガンマカメラ14aとガンマカメラ14bとが対向した状態で、図7に示すように、対向するガンマカメラ14aとガンマカメラ14bとを回転移動させる。これにより、本撮影では、データ収集部25は、全周囲における複数方向の投影データを収集し、画像再構成部26は、SPECT画像を再構成する。
そして、算出部27bは、画像再構成部26が本撮影で再構成したSPECT画像と、測定部27aが測定した入力関数とを用いて、被検体Pにおいて機能診断を行なう対象となる目的臓器の機能パラメータを算出する。そして、算出された機能パラメータは、例えば、本撮影で再構成したSPECT画像上にマッピングされ、表示部22に表示される。
なお、本実施形態は、以下、図8及び図9を用いて説明する変形例が行なわれる場合であっても良い。図8及び図9は、本実施形態の変形例を説明するための図である。
上記した本実施形態では、SPECT装置が2つのガンマカメラを有する場合について説明した。しかし、本実施形態は、3つ以上のガンマカメラを有するSPECT装置に適用される場合であっても良い。例えば、SPECT装置がガンマカメラ14a、ガンマカメラ14b及びガンマカメラ14cの3つの検出器を有するとする。かかる場合、システム制御部29は、図8の(A)に示すように、測定用撮影において、被検体Pを中心にガンマカメラ14a、ガンマカメラ14b及びガンマカメラ14cを略120度ずつ離れた状態に配置させる。これにより、データ収集部25は、投影方向が略120度ずつ異なる3方向の投影データを時系列に沿って収集する。
そして、画像再構成部26は、データ収集部25が時系列に沿って収集した3方向投影データから、時系列に沿った複数のSPECT画像を再構成する。画像再構成部26が3方向投影データから再構成するSPECT画像は、例えば、図8の(B)に示す断層画像500となる。3方向撮影によるSPECT画像である断層画像500では、3方向の投影データそれぞれを実空間に逆投影することで得られるSPECT画像である。このため、断層画像500において関心領域として設定される領域501では、図4の(A)に示す領域101以外の領域に集積したトレーサの情報が、2方向撮影と比較して、より効率的に分離されている。すなわち、3方向撮影では、2方向撮影と比較して、入力関数の測定精度がより向上する。
また、上記した本実施形態では、入力関数を測定するための関心領域が2次元で設定される場合について説明した。しかし、本実施形態は、入力関数を測定するための関心領域が3次元で設定される場合であっても良い。すなわち、測定用撮影で再構成される各時点のSPECT画像は、実際には、図9に示すように、体軸方向に沿った複数の断面画像からなる。上記した本実施形態では、図9に示す複数の断面画像の1つにおいて、2次元の関心領域が設定される。しかし、例えば大動脈等、トレーサの目的臓器への供給源となる臓器は、空間的な広がりを有する臓器である。
そこで、本実施形態は、例えば、図9に示すように、体軸方向に沿った複数の断面画像の一部の断面画像群それぞれで2次元の関心領域が設定されることで、3次元の関心領域が設定される場合であっても良い。3次元の関心領域が設定されることで、本変形例では、より正確な入力関数を測定することができる。
次に、図10を用いて、本実施形態に係るSPECT装置の処理の一例について説明する。図10は、本実施形態に係るSPECT装置の処理の一例を説明するためのフローチャートである。なお、以下では、2検出系のSPECT装置で行なわれる処理の一例について説明する。
図10に示すように、本実施形態に係るSPECT装置のシステム制御部29は、測定用撮影の開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、測定用撮影の開始要求を受け付けない場合(ステップS101否定)、システム制御部29は、測定用撮影の開始要求を受け付けるまで待機する。
一方、測定用撮影の開始要求を受け付けた場合(ステップS101肯定)、システム制御部29は、2つの検出器(ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14b)を移動して、90度に配置させる(ステップS102)。そして、データ収集部25は、投影方向が90度異なる2方向の投影データを収集する(ステップS103)。
2方向投影データの収集が開始された後、システム制御部29は、測定用撮影の終了要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS104)。ここで、測定用撮影の終了要求を受け付けない場合(ステップS104否定)、システム制御部29の制御により、データ収集部25は、ステップS103において、2方向投影データの収集を継続する。
一方、測定用撮影の終了要求を受け付けた場合(ステップS104肯定)、システム制御部29は、本撮影の開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS105)。ここで、本撮影の開始要求を受け付けない場合(ステップS105否定)、システム制御部29は、本撮影の開始要求を受け付けるまで待機する。
一方、本撮影の開始要求を受け付けた場合(ステップS105肯定)、システム制御部29は、2つの検出器(ガンマカメラ14a及びガンマカメラ14b)を移動して、180度に配置した状態で円軌道の回転を開始させる(ステップS106)。これにより、データ収集部25は、投影データを収集し(ステップS107)、画像再構成部26は、SPECT画像を再構成する(ステップS108)。例えば、画像再構成部26は、全周囲の投影データが収集された場合に、ステップS108の再構成処理を行なう。
そして、システム制御部29は、本撮影の終了要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS109)。ここで、本撮影の終了要求を受け付けない場合(ステップS109否定)、システム制御部29の制御により、データ収集部25は、ステップS107において、投影データの収集を継続する。
一方、本撮影の終了要求を受け付けた場合(ステップS109肯定)、システム制御部29の制御により、画像再構成部26は、時系列に沿った2方向の投影データから時系列に沿った複数の測定用SPECT画像を再構成する(ステップS110)。そして、システム制御部29の制御により、表示部22は、測定用SPECT画像を表示し(ステップS111)、システム制御部29は、関心領域の設定を受け付けたか否かを判定する(ステップS112)。ここで、関心領域の設定を受け付けない場合(ステップS112否定)、システム制御部29は、関心領域の設定を受け付けるまで待機する。
一方、関心領域の設定を受け付けた場合(ステップS112肯定)、測定部27aは、入力関数を測定する(ステップS113)。そして、算出部27bは、入力関数と本撮影で再構成されたSPECT画像を用いて、機能パラメータを算出し(ステップS114)、処理を終了する。
なお、図10に例示したフローチャートでは、画像再構成部26による2方向の投影データからの画像再構成処理が、本撮影終了後に行なわれる場合について説明したが、本実施形態は、画像再構成部26による2方向の投影データからの画像再構成処理が、測定用撮影中に実行される場合であっても良い。また、図10に例示したフローチャートでは、測定用撮影及び本撮影の終了要求が操作者により入力される場合について説明したが、本実施形態は、予め撮影時間が設定されることで、撮影開始からの経過時間を測定するシステム制御部29により、測定用撮影及び本撮影が終了される場合であっても良い。
上述したように、本実施形態では、時間分解能の高い入力関数を測定するためにガンマカメラの位置を固定した状態で測定用撮影を行なうことが前提となるSPECT装置を多検出系とすることで、複数の方向での測定用撮影を行なう。そして、本実施形態では、測定用の関心領域が設定されるデータを、2方向や3方向等の投影データから再構成されるSPECT画像とする。かかるSPECT画像では、測定対象となる実空間の領域以外の領域に集積したトレーサの情報が、大まかであるが分離されている。すなわち、本実施形態では、測定対象領域以外の領域に集積したトレーサの影響が低減された画像を用いて、入力関数の測定を行なうことができる。従って、本実施形態では、入力関数の測定精度を向上させることができる。
なお、本実施形態では、2検出系である場合には2つのガンマカメラを略90度に配置し、3検出系である場合には3つのガンマカメラを略120度ごとに配置する場合について説明した。しかし、複数のガンマカメラが配置される複数の所定位置は、測定用の関心領域から、当該関心領域以外の領域に集積したトレーサを大まかであるが分離することができるSPECT画像を再構成可能な複数の投影データを収集できるのであれば、任意の位置であっても良い。
また、本実施形態では、コリメータをパラレルコリメータだけでなく、ファンビームコリメータを使用可能とすることができる。図11及び図12は、本実施形態の効果を説明するための図である。図11は、パラレルコリメータがガンマカメラに取り付けられる場合を示している。図12は、ガンマ線を放射状に放出する検出対象物の検出感度を向上して、検出対象物の投影データを拡大収集するために、ファンビームコリメータがガンマカメラに取り付けられる場合を示している。
パラレルコリメータでは、図11に示すように、トレーサの集積位置がガンマカメラから近い位置であっても遠い位置であっても、検出対象物から放出されるガンマ線の入射方向が平行方向に制限されているため、検出される検出対象物の大きさは、同一として検出される。すなわち、パラレルコリメータが取り付けられたガンマカメラを用いた場合、検出対象物の検出感度は、トレーサの集積位置とガンマカメラとの距離に関わらず、不変である。
一方、検出対象物から放出されるガンマ線の入射方向が放射状に制限されるファンビームコリメータでは、図12に例示するように、トレーサの集積領域が同じ大きさであっても、近い位置にある検出対象物が検出された場合の大きさは、遠い位置にある検出対象物が検出された場合の大きさより、小さくなる。すなわち、ファンビームコリメータが取り付けられたガンマカメラを用いた場合、トレーサの集積領域が同じ大きさであっても、トレーサの集積位置がガンマカメラから近い位置にある場合と遠い位置にある場合とでは、検出される検出対象物の大きさは異なる。換言すると、ファンビームコリメータが取り付けられたガンマカメラを用いた場合、検出対象物の検出感度は、トレーサの集積位置とガンマカメラとの距離に依存して変化する。
このように、ファンビームコリメータが取り付けられたガンマカメラでは、検出対象物の位置が遠いほど、検出対象物が拡大検出される。このため、ファンビームコリメータを用いて収集した投影データを用いて測定される入力関数の定量性は、検出対象物の位置により、変動する。具体的には、ファンビームコリメータでは、測定される入力関数の値が、検出対象物との距離が近いほど小さくなり、検出対象物が遠いほど大きくなる。例えば、検出対象物である大動脈の位置は、各個人で異なることから、実際には入力関数が同じであっても、ファンビームコリメータを用いた場合、測定される入力関数が異なってしまう。このようなことから、従来の1方向撮影による入力関数の測定では、パラレルコリメータが用いられていた。
一方、SPECT画像を撮影する本撮影では、再構成されるSPECT画像の分解能を向上させるため、ファンビームコリメータを用いることが望ましい。このため、従来の機能パラメータ算出用の撮影では、測定用撮影では、パラレルコリメータを取り付け、本撮影では、ファンビームコリメータに付け替えていた。或いは、従来の機能パラメータ算出用の撮影では、作業負担を軽減するために、パラレルコリメータのままで本撮影が行なわれる場合もあった。
しかし、本実施形態では、上述したように、少ない投影方向でもSPECT画像を再構成することから、検出対象物とガンマカメラとの距離に関わらず、入力関数の定量性を確保することができる。すなわち、本実施形態では、ファンビームコリメータを用いて、測定用撮影と本撮影とを行なうことができる。従って、本実施形態では、入力関数の測定精度を向上させるとともに、SPECT検査の検査効率を向上させることができる。更には、ファンビームコリメータを用いてそのまま本撮影が行なわれるので、分解能の高いSPECT画像を用いて機能パラメータを算出することができ、その結果、機能パラメータの算出精度も向上させることができる。
なお、本実施形態で説明した単一光子放射断層撮影方法は、あらかじめ用意された単一光子放射断層撮影プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。この単一光子放射断層撮影プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、この単一光子放射断層撮影プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上、説明したとおり、本実施形態によれば、入力関数の測定精度を向上させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。