前述したように、本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、限界電流式ガスセンサを使用して、排気中のSOx濃度及び燃料中の硫黄含有率の少なくとも何れか一方である硫黄関連値をより正確に取得することができる。より具体的には、本発明に係る内燃機関の制御装置は、限界電流式ガスセンサが備えるポンピングセルを構成する一対の電極間への印加電圧が所定の電圧となっている期間において内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていることを条件として硫黄関連値の取得を許容する。これにより、排気中の硫黄酸化物(SOx)の濃度が一定に維持されている状態において被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)が硫黄(S)へと還元されるので、内燃機関の制御及び警告等に有用な硫黄関連値をより正確に取得することができる。本発明を実施するための幾つかの形態につき、以下に詳しく説明する。
先ず、本発明の第1の実施形態(以降、「第1形態」と称される場合がある)に係る内燃機関の制御装置は、
内燃機関の排気経路に配設された限界電流式ガスセンサを備え、前記センサが備えるポンピングセルを構成する一対の電極間への印加電圧を所定の電圧とすることにより前記排気経路から前記センサに導かれた被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)を硫黄(S)へと還元し、次いで前記印加電圧を前記所定の電圧から降圧スイープすることにより前記硫黄(S)を硫黄酸化物(SOx)へと再酸化させ、前記再酸化に起因して変化する前記一対の電極間に流れる電流の波形の特徴を表す値に基づいて前記被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)の濃度及び前記内燃機関の燃料中の硫黄(S)成分の含有率の少なくとも何れか一方である硫黄関連値を取得する、内燃機関の制御装置であって、
前記印加電圧が前記所定の電圧となっている期間において前記内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていることを条件として、前記硫黄関連値の取得を許容する、
内燃機関の制御装置である。
上記のように、第1形態に係る内燃機関の制御装置は、内燃機関の排気経路に配設された限界電流式ガスセンサを備える。内燃機関としては、例えば、ディーゼルエンジン及びガソリンエンジン等を挙げることができる。限界電流式ガスセンサは、内燃機関の排気経路に配設され、一般的には、排気浄化触媒よりも内燃機関に近い上流側に配置される。限界電流式ガスセンサは、前述したように、限界電流特性を利用するセンサである。限界電流特性は、一対の電極の間に介挿された固体電解質の酸素ポンピング作用を、作用電極(陰極)の外側(排気経路側)に設けられた拡散律速層によって制限することによって発現する特性である。
尚、限界電流式ガスセンサの構成については当業者に周知であるので本明細書における詳細な説明は割愛するが、上記電極としては、例えば、白金(Pt)若しくはロジウム(Rh)等の白金族元素又はその合金からなる電極等を採用することができる。上記固体電解質としては、例えば、ジルコニア等を採用することができる。また、ジルコニアは、例えば、スカンジウム(Sc)、ガリウム(Ga)等の元素を含んでいてもよい。かかる限界電流式ガスセンサは、例えば、内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)を排気中の酸素(O2)の濃度に基づいて取得する空燃比センサ(A/Fセンサ)等として当該技術分野において広く使用されている。即ち、第1形態に係る内燃機関の制御装置によれば、空燃比(A/F)の制御を目的として内燃機関が備える一般的な限界電流式ガスセンサを利用して、内燃機関の排気中のSOx濃度及び/又は燃料中の硫黄含有率をより正確に取得することができる。
より具体的には、第1形態に係る内燃機関の制御装置は、先ず、前記センサが備えるポンピングセルを構成する一対の電極間への印加電圧を所定の電圧とすることにより前記排気経路から前記センサに導かれた被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)を硫黄(S)へと還元する。斯くして生成された硫黄(S)は一対の電極のうちの陰極(作用電極)に吸着されると考えられる。このように被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)を硫黄(S)へと還元する際には、印加電圧を所定の電圧よりも小さい電圧から徐々に増大させて所定の電圧としてもよく(昇圧スイープ)、あるいは印加電圧を速やかに所定の電圧としてもよい。
尚、所定の電圧とは、被検ガスと接触する陰極の電位が、被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)を硫黄(S)へと還元することが可能な電位となる電圧(又は電圧帯)であると言うことができる。かかる所定の電圧は、例えば、電気化学測定法を利用する事前実験等によって特定することができる。
次いで、第1形態に係る内燃機関の制御装置は、前記印加電圧を前記所定の電圧から降圧スイープすることにより前記硫黄(S)を硫黄酸化物(SOx)へと再酸化させる。この際、硫黄(S)から硫黄酸化物(SOx)への再酸化に伴って消費される酸素(O)の量に対応して、前記一対の電極間に流れる電流(電極電流)に変化が生ずる。前述したように、かかる硫黄(S)の再酸化に起因して変化する電極電流の波形は、被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)の濃度と強い相関を有する。即ち、第1形態に係る内燃機関の制御装置は、前記再酸化に起因して変化する前記電極電流の波形の特徴を表す値(波形特徴値)に基づいて前記被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)の濃度(SOx濃度)及び前記内燃機関の燃料中の硫黄(S)成分の含有率(硫黄含有率)の少なくとも何れか一方である硫黄関連値を取得する。
ここで、排気中のSOx濃度及び/又は燃料中の硫黄含有率の取得方法につき、添付図面を参照しながら更に詳しく説明する。図1は、前述したように、限界電流式ガスセンサが備えるポンピングセルを構成する一対の電極間に印加される電圧(印加電圧)Viと当該電極間に流れる電極電流Ioとの関係を示す模式的なグラフである。図1に示されているグラフの横軸は印加電圧Vi[V]を、縦軸は電極電流Io[μA]をそれぞれ表している。尚、一対の電極(陽極及び陰極)のうち、陰極が被検ガス(内燃機関から排出される排気)に曝されており、陽極が外気に曝されている。
実線LU0及び実線LD0は、被検ガスが硫黄酸化物(SOx)を含まない場合における印加電圧Viの変化に伴う電極電流Ioの変化を表している。尚、本例においては、内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)は一定に維持されており、その結果として排気中の酸素(O2)の濃度もまた一定に維持されている。実線LU0は、印加電圧Viを0.1Vから1.0Vへと徐々に増大(昇圧スイープ)させたときの電極電流Ioの変化を表している。実線LD0は、印加電圧Viを上記のように増大させた後、印加電圧Viを1.0Vから0.1Vへと徐々に減少(降圧スイープ)させたときの電極電流Ioの変化を表している。
一方、破線LU1及び破線LD1は、被検ガスが硫黄酸化物(SOx)を含む場合における印加電圧Viの変化に伴う電極電流Ioの変化を表している。本例においては、燃料中の硫黄(S)成分の含有率及び内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)は一定に維持されており、その結果として排気中の酸素(O2)及び硫黄酸化物(SOx)の濃度もまた一定に維持されている。破線LU1は、実線LU0と同様に、印加電圧Viを0.1Vから1.0Vへと徐々に増大(昇圧スイープ)させたときの電極電流Ioの変化を表している。破線LD1は、実線LD0と同様に、印加電圧Viを上記のように増大させた後、印加電圧Viを1.0Vから0.1Vへと徐々に減少(降圧スイープ)させたときの電極電流Ioの変化を表している。
先ず、被検ガスが硫黄酸化物(SOx)を含まない場合は、実線LU0によって表されているように、約0.2Vと約0.8Vとの間の範囲にある印加電圧Viにおいて、印加電圧Viが増大しても電極電流Ioは略一定となっている。これは、限界電流特性が発現していることを示す。前述したように、限界電流特性は、ポンピングセルを構成する「一対の電極の間に介挿された酸化物イオン伝導性を有する固体電解質」の酸素ポンピング作用が「陰極の外側に設けられた拡散律速層」によって制限することによって発現する。このように限界電流特性が発現する印加電圧Viの範囲を、以降、「限界電流域」と称する場合がある。また、実線LD0によって表されているように、約0.25Vと約0.8Vとの間の範囲にある印加電圧Viにおいて、印加電圧Viが減少しても電極電流Ioが略一定となる限界電流域が認められる。
一方、被検ガス中に硫黄酸化物(SOx)が含まれる場合は、破線LU1によって表されているように、印加電圧Viが約0.5Vよりも高い電圧帯において、実線LU0と比較して電極電流Ioが増大している。かかる電極電流Ioの増大は、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物(SOx)が陰極に接触し、分解(還元)されて硫黄(S)が生成されることに起因すると考えられる。また、破線LD1によって表されているように、印加電圧Viが約0.8Vから約0.7Vへと減少するのに伴って電極電流Ioは急速に減少し、印加電圧Viが約0.7Vであるときに極小値Imとなっている。その後、電極電流Ioは上昇に転じ、印加電圧Viが約0.7Vから約0.4Vへと減少するのに伴って電極電流Ioは急速に増大し、印加電圧Viが約0.4Vであるときに限界電流値Ibに達している。その後、電極電流Ioは、被検ガス中に硫黄酸化物(SOx)が含まれない場合と同様に推移している(破線LD1は実線LD0とほぼ一致している)。
上記のような被検ガス中に硫黄酸化物(SOx)が含まれる場合における降圧スイープ時の電極電流Ioの限界電流値Ibからの逸脱は、昇圧スイープ時に生成された硫黄(S)が再酸化されて硫黄酸化物(SOx)となることに起因すると考えられる。即ち、このように変化する電極電流Ioの波形の特徴を表す値(波形特徴値)は、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物(SOx)の濃度と相関を有する。従って、波形特徴値に基づいて、排気中の硫黄酸化物(SOx)の濃度及び燃料中の硫黄(S)成分の含有率の少なくとも何れか一方である硫黄関連値を正確に取得することができる。
昇圧スイープ時に生成された硫黄(S)が再酸化されて硫黄酸化物(SOx)となることに起因して変化する電極電流Ioの波形の特徴を表す値である波形特徴値としては、例えば、電極電流Ioの極小値と限界電流値Ibとの差(ピークの高さ)、電極電流Ioの限界電流値Ibからの逸脱量の積分値等を挙げることができる。かかる波形特徴値は、種々の手法によって数値化することができる。例えば、図1に示されているグラフにおいて、破線LD1における限界電流値Ibと極小値Imとの差分Id1(即ち、Id1=Ib−Im)を電極電流Ioの波形特徴値としてもよい。あるいは、電極電流Ioの限界電流値Ibからの逸脱量(Ib−Io)の積分値を電極電流Ioの波形特徴値としてもよい。
尚、図1に示されているグラフの横軸に示されている印加電圧Vi、縦軸に示されている電極電流Io、及び上記説明において述べられている印加電圧Viの個々の具体的な値は、図1に示されているグラフを得るために行った実験の条件(例えば、内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)等)によって変動することがあり、印加電圧Vi及び電極電流Ioの値が常に上述した値となるとは限らない。
ところで、上述したように取得される波形特徴値と(排気中のSOx濃度及び燃料中の硫黄含有率の少なくとも何れか一方である)硫黄関連値との関係は、例えば、事前実験によって予め特定することができる。具体的には、例えば、種々の含有率にて硫黄(S)成分を含有する燃料を使用すると共に内燃機関に供給される混合気の空燃比(A/F)を種々の値に変化させ、その際の排気を被検ガスとして限界電流式ガスセンサに供給し、印加電圧が所定の電圧である時(例えば、昇圧スイープ時等)に生成された硫黄(S)が降圧スイープ時に再酸化されて硫黄酸化物(SOx)となることに起因して変化する電極電流Ioを測定し、その波形の特徴を表す値を波形特徴値として取得する。この際、排気中のSOx濃度は、例えば別個の硫黄酸化物(SOx)センサによって実測することができる。あるいは、内燃機関の燃料中の硫黄含有率と燃焼室における混合気の空燃比(A/F)との組み合わせに基づいて、排気中のSOxの濃度を取得してもよい。
斯くして得られる排気中のSOx濃度と波形特徴値との関係をプロットすれば、波形特徴値とSOx濃度との関係を特定することができる。斯くして特定された関係を使用して、波形特徴値に基づいてSOx濃度を取得することができる。また、斯くして取得されるSOx濃度と当該濃度に対応する混合気(即ち、当該濃度の硫黄酸化物(SOx)を排気中に生成させる元となった混合気)の空燃比(A/F)とに基づいて燃料中の硫黄含有率を取得してもよい。
一方、前述したように、たとえ燃料中の硫黄含有率が一定であっても混合気の空燃比(A/F)が変化すると排気中のSOx濃度が変化することから、波形特徴値と燃料中の硫黄含有率との関係を特定しようとする場合には、燃焼室における混合気の空燃比(A/F)を考慮する必要がある。具体的には、上述した事前実験において、燃料中の硫黄含有率と波形特徴値との関係を燃焼室における混合気の空燃比(A/F)毎にプロットすれば、個々の空燃比(A/F)における波形特徴値と燃料中の硫黄含有率との関係を特定することができる。斯くして特定された関係を使用して、波形特徴値と混合気の空燃比(A/F)とに基づいて燃料中の硫黄含有率を取得することができる。
ところが、図1に示されている例とは異なり、実際の内燃機関においては、例えば運転状態の変化等、種々の要因によって燃焼室における混合気の空燃比(A/F)が変化する場合がある。このように混合気の空燃比(A/F)が変化すると、前述したように、たとえ燃料中の硫黄含有率が一定であっても、排気中のSOx濃度が変化する。従って、排気中のSOx濃度を取得する際(より具体的には、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物(SOx)が陰極に接触し、分解(還元)されて硫黄(S)が生成される期間)に混合気の空燃比(A/F)が変化すると、今まさに取得しようとする排気中のSOx濃度が変化するため、排気中のSOx濃度を正確に取得することが困難となり、結果として燃料中の硫黄含有率を正しく取得することが困難となる。
また、前述したように内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)と排気中のSOx濃度とに基づいて燃料中の硫黄含有率を正確に取得するためには、取得された排気中のSOx濃度に対応する混合気(即ち、当該濃度の硫黄酸化物(SOx)を排気中に生成させる元となった混合気)の空燃比(A/F)を正確に取得する必要がある。しかしながら、排気中のSOx濃度を取得する際、「取得されるSOx濃度(具体的には波形特徴値)に対応する混合気の空燃比(A/F)」を「時事刻々変化している混合気の空燃比(A/F)」に基づいて正確に求めることは一般に困難であり、結果として燃料中の硫黄含有率を正しく取得することが困難となる。
ここで、内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)と排気中のSOx濃度との関係につき、添付図面を参照しながら説明する。図2は、前述したように、種々の含有率にて硫黄(S)成分を含有する燃料についての、内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)と排気中の硫黄酸化物(SOx)の濃度との関係を示す模式的なグラフである。図2に示されているグラフの横軸は空燃比(A/F)を、縦軸は排気中のSOx濃度[ppm]をそれぞれ表している。より具体的には、図2に示されているグラフに描かれている5本の曲線は、硫黄(S)成分の含有率がそれぞれCsa、Csb、Csc、Csd、及びCseである燃料を使用した場合における空燃比(A/F)と排気中のSOx濃度との関係を表している。尚、それぞれの燃料中の硫黄含有率の大きさは、Csa<Csb<Csc<Csd<Cseである。
図2に示されている破線(空燃比(A/F)=30)と上記曲線との交点によって表されているように、内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)が一定であれば、燃料中の硫黄含有率が高いほど、排気中のSOx濃度も高い。即ち、混合気の空燃比(A/F)が一定であれば、排気中のSOx濃度に基づいて燃料中の硫黄含有率を一義的に求めることができる。
しかしながら、上述したように、限界電流式ガスセンサを使用して排気中のSOx濃度を取得するには、例えば、印加電圧Viを所定の期間に亘って所定の電圧としたり、印加電圧Viを所定の電圧まで昇圧スイープしたりした後に、印加電圧Viを降圧スイープする必要があるため、所定の期間を要する。より詳しくは、前述したように、第1形態に係る内燃機関の制御装置は一対の電極間への印加電圧を所定の電圧とすることにより被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)が還元された結果として生成される硫黄(S)の量(に対応する値)に基づいて硫黄関連値を取得していると言うことができる。
従って、印加電圧を所定の電圧とすることにより被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)を還元して硫黄(S)を生成させている期間中に空燃比(A/F)が変化すると、上述したように、今まさに取得しようとする排気中のSOx濃度が変化するため、生成される硫黄(S)の量も変化し、結果として、燃料中の硫黄関連値を取得する上で有用な波形特徴値を正確に取得することは困難である。加えて、取得された波形特徴値(又はその波形特徴値に基づいて得られる排気中のSOx濃度)に対応する混合気の空燃比(A/F)を正確に取得することも困難となる。その結果、混合気の空燃比(A/F)と取得された波形特徴値(又はその波形特徴値に基づいて得られる排気中のSOx濃度)とに基づいて燃料中の硫黄含有率を正確に取得することもまた困難となる。
以上のように、硫黄関連値を正確に取得するためには、一対の電極間への印加電圧が所定の電圧となっていて被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)が硫黄(S)へと還元されている期間においては、内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていることが望ましい。
そこで、第1形態に係る内燃機関の制御装置は、前記印加電圧が前記所定の電圧となっている期間(所定電圧付与期間)において前記内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていることを条件として、前記硫黄関連値の取得を許容する。換言すれば、第1形態に係る内燃機関の制御装置は、所定電圧付与期間において、混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていなければ、得られた波形特徴値を破棄する(無効とする)。これにより、第1形態に係る内燃機関の制御装置は、限界電流式ガスセンサを使用して硫黄関連値をより正確に取得することができる。
尚、第1形態に係る内燃機関の制御装置は、印加電圧が所定の電圧となっている期間における内燃機関の燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されるように内燃機関を積極的に制御してもよい。あるいは、第1形態に係る内燃機関の制御装置は、内燃機関を積極的に制御するのではなく、内燃機関の通常の運転状態において、上記期間(所定電圧付与期間)における内燃機関の燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていたか否かを判定し、混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていた場合に限り硫黄関連値の取得を許容してもよい。
即ち、第1形態に係る内燃機関の制御装置において、「所定電圧付与期間において内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていることを条件として」とは、内燃機関を積極的に制御して混合気の空燃比(A/F)を強制的に一定に維持すること及び内燃機関の通常の運転状態において混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていたと判断されることの両方を包含する概念である。
前者の場合において内燃機関において燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)を一定に維持するための具体的な手法は特に限定されないが、当業者に周知であるように、内燃機関の構成に応じて、例えば、スロットル弁開度、燃料噴射量、排気還流(EGR:Exhaust Gas Recirculation)量、及び/又は過給圧等を制御することにより、燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)を一定に維持することができる。
ところで、上述したように、第1形態に係る内燃機関の制御装置は、一対の電極間への印加電圧を所定の電圧とすることにより被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)を還元した結果として生成される硫黄(S)が降圧スイープ時に硫黄酸化物(SOx)へと再酸化されることに起因して変化する電極電流の波形の特徴を表す値(波形特徴値)に基づいて被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)の濃度及び内燃機関の燃料中の硫黄(S)成分の含有率の少なくとも何れか一方である硫黄関連値を取得する。ところが、電極電流は、例えば、燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)が変化した場合等、被検ガス中に含まれる酸素(O2)の濃度が変化した際にも変化する。
一般に、排気中の他の成分と比較して硫黄酸化物(SOx)の濃度は相対的に低いことから、上記再酸化に起因する電極電流の変化もまた小さい。特に、燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)の変化に伴う被検ガス中に含まれる酸素(O2)の濃度変化に起因する電極電流の変化と比較すると、上記再酸化に起因する電極電流の変化は相対的に小さい。従って、上述した所定電圧付与期間(例えば、昇圧スイープ時)のみならず降圧スイープ時に燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)が変化し、結果として被検ガス中に含まれる酸素(O2)の濃度が変化した場合にも、上記再酸化に起因する電極電流の変化を正確に検出することが困難となる虞がある。
従って、第1形態に係る内燃機関の制御装置が上記再酸化に起因する電極電流の変化をより正確に検出するためには、降圧スイープ時の燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されており、被検ガス中に含まれる酸素(O2)の濃度が一定に維持されていることが望ましい。より具体的には、ポンピングセルを構成する一対の電極間への印加電圧を所定の電圧から降圧スイープする期間のうち、降圧スイープにより硫黄(S)から硫黄酸化物(SOx)への再酸化に起因する電極電流の変化が生ずる期間においては、燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されており、被検ガス中に含まれる酸素(O2)の濃度が一定に維持されていることが望ましい。
そこで、本発明の第2の実施形態(以降、「第2形態」と称される場合がある)に係る内燃機関の制御装置は、
内燃機関の排気経路に配設された限界電流式ガスセンサを備え、前記センサが備えるポンピングセルを構成する一対の電極間への印加電圧を所定の電圧とすることにより前記排気経路から前記センサに導かれた被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)を硫黄(S)へと還元し、次いで前記印加電圧を前記所定の電圧から降圧スイープすることにより前記硫黄(S)を硫黄酸化物(SOx)へと再酸化させ、前記再酸化に起因して変化する前記一対の電極間に流れる電流の波形の特徴を表す値に基づいて前記被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)の濃度及び前記内燃機関の燃料中の硫黄(S)成分の含有率の少なくとも何れか一方である硫黄関連値を取得する、内燃機関の制御装置であって、
前記印加電圧が前記所定の電圧となっている期間において前記内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていることに加えて、
前記印加電圧を前記所定の電圧から降圧スイープする期間のうち、前記一対の電極間に流れる電流の前記再酸化に起因する変化が生ずる期間においては前記内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていることを更なる条件として、前記硫黄関連値の取得を許容する、
内燃機関の制御装置である。
これにより、硫黄(S)から硫黄酸化物(SOx)への再酸化に起因する電極電流の変化が生ずる期間中、被検ガス中に含まれる酸素(O2)の濃度変化に起因する電極電流の変化が低減された状態において、当該再酸化に起因する電極電流の変化を検出することができる。その結果、当該再酸化に起因して変化する電極電流の波形をより正確に取得することができ、当該波形の特徴を表す値(波形特徴値)をより正確に取得することができる。結果として、当該波形特徴値に基づいて、被検ガス中のSOx濃度及び内燃機関の燃料中の硫黄含有率の少なくとも何れか一方である硫黄関連値をより正確に取得することが可能となる。
尚、第2形態に係る内燃機関の制御装置は、印加電圧を所定の電圧から降圧スイープする期間のうち上記再酸化に起因する電極電流の変化が生ずる期間における内燃機関の燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されるように内燃機関を積極的に制御してもよい。あるいは、第2形態に係る内燃機関の制御装置は、内燃機関を積極的に制御するのではなく、内燃機関の通常の運転状態において、上記期間における内燃機関の燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていたか否かを判定し、混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていた場合に限り硫黄関連値の取得を許容してもよい。
即ち、第2形態に係る内燃機関の制御装置において、「硫黄(S)から硫黄酸化物(SOx)への再酸化に起因する電極電流の変化が生ずる期間において内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていることを条件として」とは、内燃機関を積極的に制御して混合気の空燃比(A/F)を強制的に一定に維持すること及び内燃機関の通常の運転状態において混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていたと判断されることの両方を包含する概念である。前者の場合において内燃機関において燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)を一定に維持するための具体的な手法については既に説明したので、ここでは説明を繰り返さない。
ところで、上述したように、燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)の変化に伴う被検ガス中に含まれる酸素(O2)の濃度変化に起因する電極電流の変化と比較して、硫黄(S)から硫黄酸化物(SOx)への再酸化に起因する電極電流の変化は相対的に小さい。従って、例えば、燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)が大きく、結果として被検ガス中に含まれる酸素(O2)の濃度が高い場合、かかる高濃度の酸素(O2)に起因する電極電流(限界電流)の大きさと比較して、上記再酸化に起因する電極電流の変化は極めて小さくなる。この場合、上記再酸化に起因する電極電流の変化の検出感度が低下する虞がある。
従って、硫黄(S)から硫黄酸化物(SOx)への再酸化に起因する電極電流の変化を精度良く検出するためには、上記再酸化に起因する電極電流の変化を検出する際に被検ガス中に含まれる酸素(O2)の濃度をできるだけ低くすることが望ましい。上記再酸化に起因する電極電流の変化を検出する際に被検ガス中に含まれる酸素(O2)の濃度を低下させるための具体的な手法は特に限定されないが、例えば、被検ガスから酸素(O2)を除去する酸素除去部が備えられていてもよい。
即ち、本発明の第3の実施形態(以降、「第3形態」と称される場合がある)に係る内燃機関の制御装置は、
上記第1形態又は第2形態に係る内燃機関の制御装置であって、
前記被検ガス中の酸素(O2)を除去する酸素除去部を更に備える、
内燃機関の制御装置である。
この第3形態に係る内燃機関の制御装置は、酸素除去部により、被検ガス中に含まれる酸素(O2)に起因する電極電流を低減することができる。従って、第3形態に係る内燃機関の制御装置によれば、例えば、燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)が大きく、結果として被検ガス中に含まれる酸素(O2)の濃度が高い場合であっても、被検ガス中に含まれる酸素(O2)が酸素除去部によって除去されるので、硫黄(S)から硫黄酸化物(SOx)への再酸化に起因する電極電流の変化の検出感度の低下を回避することができる。更に、燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)が変化しても電極電流が変化し難く、上記再酸化に起因する電極電流の変化を精度良く検出することができる。
ところで、上記酸素除去部が被検ガス中の酸素(O2)を除去するための具体的な手法は特に限定されない。例えば、本明細書の冒頭において述べたような、被検ガスが導かれる空間に陰極が面するように直列に配置された2つのポンピングセルを備える2セル式の限界電流式ガスセンサにおいて、被検ガス中に含まれる酸素(O2)を酸素ポンピング作用によって除去するのに適した電圧を上流側のポンピングセルの電極間に印加し、下流側のポンピングセルを使用して、上述したように排気中の硫黄酸化物(SOx)の濃度を取得してもよい。この場合、上流側のポンピングセルが酸素除去部に相当する。
上述したように、第3形態に係る内燃機関の制御装置においては、酸素除去部により、被検ガス中に含まれる酸素(O2)に起因する電極電流を低減することができる。しかしながら、酸素除去部によって除去しきれない酸素(O2)及び被検ガス中の酸素(O2)以外のガス成分(例えば、水(H2O)又は二酸化炭素(CO2)等)が電極電流に影響を及ぼす虞がある。かかる影響を低減する観点から、酸素除去部を備える場合においても、上記再酸化に起因する電極電流の変化が生ずる期間において混合気の空燃比(A/F)を一定に維持することがより望ましい。
以下、本発明の幾つかの実施形態に係る内燃機関の制御装置につき、必要に応じて添付図面を参照しながら、更に詳しく説明する。但し、以下に述べる説明はあくまでも例示を目的とするものであり、本発明の範囲が以下の説明に限定されると解釈されるべきではない。
本発明の実施例1に係る内燃機関の制御装置(以降、「第1制御装置」と称される場合がある)は、上述した第2形態を具体化した装置である。第1形態は第2形態を包含する実施形態であるので、第1制御装置は第1形態を具体化した装置であると言うこともできる。第1制御装置は、限界電流式ガスセンサとして「1セル式の限界電流式ガスセンサ」を採用している。第1制御装置は、図3に示された内燃機関10に適用される。機関10はディーゼルエンジンであり、吸気ポート12、排気ポート13、及び燃焼室22を備える。
吸気弁24は、シリンダヘッド部に配設され、図示しないインテークカムシャフトによって駆動されることにより吸気ポート12と燃焼室22との連通部を開閉するようになっている。排気弁25は、シリンダヘッド部に配設され、図示しないエキゾーストカムシャフトによって駆動されることにより排気ポート13と燃焼室22との連通部を開閉するようになっている。燃料噴射弁26は、燃焼室22内に燃料を噴射することができるようにシリンダヘッド部に配設されている。燃料噴射弁26は、後述するECU30の指示に応じて燃焼室22内に燃料を直接噴射する。
吸気ポート12の燃焼室22とは反対側の端部には吸気管21が接続されている。排気ポート13の燃焼室22とは反対側の端部には排気管23が接続されている。機関10は、排気還流管28とEGR制御弁29とによって構成されるEGR装置を備える。排気還流管28は、排気管23を流れる排気の一部をEGRガスとして吸気管21へ還流させる。EGR制御弁29は、排気還流管28を流れるEGRガスの量(EGR量)を制御する。
ECU30は、CPU33、CPU33が実行するプログラム及びマップ等を記憶するROM34、並びにデータを一時的に記憶するRAM35を含んでなる。ECU30は、以下に述べる各種センサ類と接続されている。
ガスセンサ40は、1セル式の限界電流式ガスセンサであり、機関10の排気経路を構成する排気管23に配設されている。ガスセンサ40は、排気管23に介装された図示しない排気浄化触媒(又は、DPF等の排気浄化装置)よりも上流側に配設されている。ガスセンサ40の構成及び作動については後に詳述する。エアフローメータ41は、吸気経路を構成する吸気管21内を通過する吸入空気(EGRガスを含まない新気)の質量流量(吸入空気量)Gaを測定し、測定された吸入空気量Gaに対応する信号を発生させる。EGR制御弁開度センサ42は、EGR制御弁29のEGR開弁率(開度)Erに対応する信号を発生させる。クランク角度センサ43は、機関10のクランクシャフト(図示せず)の回転位置に対応する信号を発生させる。ECU30は、クランク角度センサ43からの信号に基づいて、機関10の機関回転速度NEを算出する。
次に、ガスセンサ40の構成につき、図4を参照しながら説明する。ガスセンサ40は、固体電解質層61、第1アルミナ層62A、第2アルミナ層62B、第3アルミナ層62C、第4アルミナ層62D及び第5アルミナ層62E、拡散律速層(拡散抵抗層)63並びにヒータ64を備える。
固体電解質層61は、ジルコニア等を含み、酸化物イオン伝導性を有する。
第1乃至第5アルミナ層は、アルミナを含む緻密(ガス不透過性)の層である。
拡散律速層63は、多孔質の層であり、ガス透過性の層である。
ヒータ64は、通電により発熱する発熱体である。
ガスセンサ40の各層は、下方から、第5アルミナ層62E、第4アルミナ層62D、第3アルミナ層62C、固体電解質層61、拡散律速層63及び第2アルミナ層62B、第1アルミナ層62Aの順に積層されている。
大気導入路66は、固体電解質層61、第3アルミナ層62C、及び第4アルミナ層62Dによって形成される、外部の大気と直接連通した空間である。内部空間67は、第1アルミナ層62A、固体電解質層61、拡散律速層63、及び第2アルミナ層62Bによって形成される空間であり、拡散律速層53を介して排気管23の内部と連通している。従って、排気管23内の圧力が内部空間67内の圧力よりも所定値以上高いときに、排気管23内の圧力に依らず、排気管23内の排気が一定の流量にて内部空間67内に被検ガスとして導かれる。
第1電極65A及び第2電極65Bは、白金(Pt)若しくはロジウム(Rh)等の白金族元素又はその合金からなる電極である。第1電極65Aは陰極であり、第2電極65Bは陽極である。第1電極65Aは、固体電解質層61の一方の側の表面(具体的には、内部空間67を形成する固体電解質層61の表面)に固着されている。一方、第2電極65Bは、固体電解質層61の他方の側の表面(具体的には、大気導入路66を形成する固体電解質層61の表面)に固着されている。第1電極65A及び第2電極65B並びに固体電解質層61は、酸素ポンピング作用による酸素排出能力を有するポンピングセルを構成している。
尚、当該ポンピングセルは本実施例において被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)の濃度を取得するセンサとして使用されるので、以降、当該ポンピングセルは「センサセル」と称される場合がある。即ち、第1電極65A及び第2電極65B並びに固体電解質層61は、センサセル65を構成している。電源65Cは、第1電極65A及び第2電極65Bに対して印加電圧Vmを印加することができる。電流計65Dは、センサセル65を流れる電極電流Imに対応する信号をECU30へ出力する。また、ECU30は、第1電極65A及び第2電極65Bに印加される印加電圧Vmを制御することができる。
次に、ガスセンサ40を用いた「被検ガス中のSOx濃度及び燃料中の硫黄成分の濃度」の検出方法について説明する。電源65Cによってセンサセル65の第1電極65Aと第2電極65Bとの間に印加電圧Vmが印加されると、印加電圧Vmの大きさに応じて、内部空間67内の被検ガス中に含まれる酸素(O2)及び硫黄酸化物(SOx)等の含酸素ガスが第1電極65Aにて還元されて酸化物イオン(O2−)が発生する。この酸化物イオン(O2−)は固体電解質層61を通って第2電極65Bへ移動し、第2電極65Bにて酸化されて酸素(O2)となる。この酸素(O2)は大気導入路66から大気中に放出される。かかる酸化物イオン(O2−)の移動に伴い、センサセル65に電極電流Imが流れる。図1を参照しながら前述したように、印加電圧Vmの増減に伴う電極電流Imの推移の仕方は、内部空間67内に導かれた被検ガスが硫黄酸化物(SOx)を含まない場合と、内部空間67内に導かれた被検ガスが硫黄酸化物(SOx)を含む場合とで異なる。
ここで、印加電圧Vmの増減に伴う電極電流Imの推移につき、添付図面を参照しながら更に具体的に説明する。図5は、ガスセンサ40(第1制御装置が備える1セル式の限界電流式ガスセンサ)において印加電圧Vmの昇圧スイープ及び降圧スイープを実行したときの印加電圧Vmと電極電流Imとの関係を示す模式的なグラフである。図5に示されているグラフの横軸は印加電圧Vm[V]を、縦軸は電極電流Im[μA]をそれぞれ表している。尚、本例においては、燃料中の硫黄含有率及び内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)は一定に維持されており、その結果として排気中の酸素(O2)及び硫黄酸化物(SOx)の濃度もまた一定に維持されている。
曲線LU2は、印加電圧Vmを第1電圧Vm1(本例においては、0.4V)から第2電圧Vm2(本例においては、0.8V)へと徐々に増大(昇圧スイープ)させたときの電極電流Imの変化を表している。曲線LD2は、印加電圧Vmを上記のように増大させた後、印加電圧Vmを第2電圧Vm2から第3電圧Vm3(本例においては、0.4V)へと徐々に減少(降圧スイープ)させたときの電極電流Imの変化を表している。
第1電圧Vm1乃至第3電圧Vm3は、被検ガス中に含まれる酸素(O2)に起因する電極電流が一定の限界電流値となる限界電流域に含まれるので、被検ガスが硫黄酸化物(SOx)を含まない場合は、図1を参照しながら前述したように、昇圧スイープ及び降圧スイープの間、電極電流Imは略一定となる筈である。即ち、電極電流Imは、昇圧スイープ及び降圧スイープの間、被検ガス中に含まれる酸素(O2)に起因する限界電流値と略等しくなる筈である。
しかしながら、本例において使用した燃料は硫黄(S)成分を含有しており、その結果として排ガス(即ち、被検ガス)が硫黄酸化物(SOx)を含む。そのため、昇圧スイープ時、第1電極65A(陰極)に接した硫黄酸化物(SOx)の硫黄(S)への還元に起因して、電極電流Imは徐々に上昇している。即ち、本例においては、被検ガスと接触する作用電極(陰極)の電位が被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)を硫黄(S)へと還元することが可能な電位となる「所定の電圧」として、第1電圧Vm1(本例においては、0.4V)から第2電圧Vm2(本例においては、0.8V)までの範囲を有する電圧帯が採用されている。加えて、本例においては、「所定の電圧」として採用された上記電圧帯において、第1電圧Vm1(本例においては、0.4V)から第2電圧Vm2(本例においては、0.8V)まで印加電圧Vmを徐々に増大させる昇圧スイープを行っている。
一方、降圧スイープ時には、電極電流Imは一旦下降し、その後上昇する。前述したように、降圧スイープ時に発生する電極電流Imのかかる変化は、昇圧スイープ時に生成された硫黄(S)が再酸化されて再び硫黄酸化物(SOx)となることに起因すると考えられる。本例においては、かかる降圧スイープ期間における電極電流Imの極小値を特定電流Ic2として取得し、降圧スイープが終了したときの電極電流Imを参照電流Ir2として取得する。そして、参照電流Ir2と特定電流Ic2との差分である電流差分Id2(即ち、Id2=Ir2−Ic2)を「昇圧スイープ時に生成された硫黄(S)が再酸化されて硫黄酸化物(SOx)となることに起因して変化する電極電流Imの波形の特徴を表す値(波形特徴値)」として採用する。
このようにして得られる電流差分Id2(波形特徴値)と、別のSOx濃度測定装置を用いて測定される排気中のSOx濃度Csoxと、の関係をプロットしたグラフが図6に示されている。当該関係は、前述した昇圧スイープ時に生成された硫黄(S)が再酸化されて硫黄酸化物(SOx)となることに起因して変化する電極電流の波形の特徴を表す値(波形特徴値)と被検ガス中に含まれる硫黄酸化物(SOx)の濃度(SOx濃度)との関係に対応する。前述したように、電流差分Id2とSOx濃度Csoxとの関係は、例えば、種々の含有率にて硫黄(S)成分を含有する燃料によって形成される混合気であって種々の空燃比(A/F)を有する混合気を内燃機関に供給し、その排気を被検ガスとして限界電流式ガスセンサに供給し、種々の排気中のSOx濃度に対応する電流差分Id2を測定する事前実験等によって特定することができる。
図6のグラフによって表されているように、電流差分Id2が大きいほど、内部空間67内に導かれた被検ガス中のSOx濃度が高いこと、即ち排気管23内の排気中のSOx濃度Csoxが高い。従って、上記のようにして算出される電流差分Id2に基づいて、被検ガス中のSOx濃度(即ち、排気中のSOx濃度Csox)を取得することができる。即ち、限界電流式ガスセンサであるガスセンサ40をSOx濃度センサとして使用することができる。尚、図6に示されているグラフによって表されている電流差分Id2とSOx濃度Csoxとの関係は、例えばマップ形式等のデータとしてROM34に保存されている。
ところで、図6に示されているグラフは、電流差分Id2とSOx濃度Csoxとの関係が一次関数によって表される直線として描かれている。しかしながら、実際には、例えば、ポンピングセルの設計仕様、電極電流の検出感度及び応答速度等の種々の要因により、必ずしも電流差分Id2とSOx濃度Csoxとの関係が一次関数で表されるとは限らない。図6に示されているグラフは、例えば、二次関数等の曲線として描かれる場合もあり得る。
ここで、ECU30の作動について、より具体的に説明する。ECU30は、ガスセンサ40を使用してSOx濃度Csoxを検出するため、ガスセンサ40が備えるセンサセル65を構成する第1電極65Aと第2電極65Bとの間への印加電圧Vmの昇圧スイープ及び降圧スイープを行う。これにより、ECU30は、前述したように、昇圧スイープ時に被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)の還元によって生成された硫黄(S)が降圧スイープ時に再酸化されて硫黄酸化物(SOx)となることに起因する電極電流Imの変化を検出し、かかる電極電流Imの波形の特徴を表す値(電流差分Id2)を算出し、当該値に基づいてSOx濃度Csox及び内燃機関の燃料中の硫黄(S)成分の含有率(硫黄含有率Cs)の少なくとも何れか一方である硫黄関連値を取得する。
即ち、ECU30は、前述したように、印加電圧Vmを昇圧スイープさせることにより被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)を還元した結果として生成される硫黄(S)の量に対応する値(電流差分Id2)に基づいて硫黄関連値を取得していると言うことができる。
ところで、前述したように、機関10の燃焼室22における混合気の空燃比(A/F)が変化すると排気管23を流れる排気中のSOx濃度(SOx濃度Csox)もまた変化する。従って、SOx濃度Csoxを正確に取得するためには、印加電圧Vmが所定の電圧(第1電圧Vm1(本例においては、0.4V)から第2電圧Vm2(本例においては、0.8V)までの範囲を有する電圧帯)となっていて被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)が硫黄(S)へと還元されている期間において、機関10の燃焼室22中の混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていることが望ましい。
そこで、機関10の制御装置であるECU30は、印加電圧Vmが所定の電圧となっている期間において機関10の燃焼室22における混合気の空燃比(A/F)が一定にされていることを条件として、SOx濃度Csoxの取得を許容する。即ち、本例における硫黄関連値は排気中のSOx濃度Csoxである。これにより、ECU30は、ガスセンサ40を使用して、排気中のSOx濃度Csoxをより正確に取得することができる。更に、ECU30は、印加電圧Vmが所定の電圧となっている期間において一定値であった混合気の空燃比(A/F)を取得し、その空燃比(A/F)と、取得した排気中のSOx濃度Csoxと、予めROM35に記憶されている図2に示した関係と、に基づいて、燃料中の硫黄含有率Csを取得する。
尚、ECU30は、前述したように、例えば、燃料噴射量tau及びEGR開弁率Er等を調節して機関10を積極的に制御することにより、印加電圧Vmが所定の電圧帯において昇圧スイープされている期間に亘って機関10の燃焼室22中の混合気の空燃比(A/F)を一定に維持する。但し、ECU30は、上記のように機関10を積極的に制御するのではなく、機関10の通常の運転状態において、印加電圧Vmが所定の電圧帯において昇圧スイープされている期間における機関10の燃焼室22中の混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていたか否かを判定し、混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていた場合に限り硫黄関連値の取得を許容してもよい。
この場合、第1制御装置に空燃比(A/F)センサを別途設けて、印加電圧Vmが所定の電圧帯において昇圧スイープされている期間に亘って機関10の燃焼室22中の混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されているか否かを実測してもよい。あるいは、機関10の燃焼室22中の混合気の空燃比(A/F)に影響を及ぼすパラメータ(例えば、燃料噴射量tau及びEGR開弁率Er等)に基づいて、当該期間中に機関10の燃焼室22中の混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されているか否かを推定してもよい。
一方、印加電圧Vmを降圧スイープさせる期間においては、ECU30は、ガスセンサ40を使用して電極電流Imを検出し、特定電流Ic2と参照電流Ir2とを取得する。しかしながら、ガスセンサ40は、1セル式の限界電流式ガスセンサであり、被検ガスがセンサセル65に到達する前に被検ガス中の酸素(O2)を除去する酸素除去部を備えていない。従って、印加電圧Vmを降圧スイープさせる期間において混合気の空燃比(A/F)が変化すると、内部空間67内の酸素(O2)の濃度が変化する。酸素(O2)の濃度が変化すると、第1電極65Aに接して還元される酸素(O2)の量が変化するので、電極電流Imが変化する。そのため、ECU30は、ガスセンサ40によって電流差分Id2を精度良く検出できなくなる虞がある。
そこで、ECU30は、印加電圧Vmを所定の電圧から降圧スイープする期間のうち硫黄(S)から硫黄酸化物(SOx)への再酸化に起因する電極電流Imの変化が生ずる期間において機関10の燃焼室22における混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていることを更なる条件として、SOx濃度Csoxの取得を許容する。これにより、ECU30は、ガスセンサ40を使用して、SOx濃度Csoxをより正確に取得することができる。また、斯くして取得されたSOx濃度Csoxと当該SOx濃度に対応する混合気(即ち、当該濃度の硫黄酸化物(SOx)を排気中に生成させる元となった混合気)の空燃比(A/F)とに基づいて、燃料中の硫黄含有率Csをより正確に取得することができる。
尚、ECU30は、前述したように、例えば、燃料噴射量tau及びEGR開弁率Er等を調節して機関10を積極的に制御することにより、印加電圧Vmを所定の電圧から降圧スイープする期間のうち上記再酸化に起因する電極電流Imの変化が生ずる期間において、機関10の燃焼室22中の混合気の空燃比(A/F)を一定に維持する。但し、ECU30は、上記のように機関10を積極的に制御するのではなく、機関10の通常の運転状態において、印加電圧Vmを所定の電圧から降圧スイープする期間のうち上記再酸化に起因する電極電流Imの変化が生ずる期間における機関10の燃焼室22中の混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていたか否かを判定し、混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていた場合に限り硫黄関連値の取得を許容してもよい。
この場合においても、第1制御装置に空燃比(A/F)センサを別途設けて、上記再酸化に起因する電極電流Imの変化が生ずる期間において機関10の燃焼室22中の混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されているか否かを実測してもよい。あるいは、機関10の燃焼室22中の混合気の空燃比(A/F)に影響を及ぼすパラメータ(例えば、燃料噴射量tau及びEGR開弁率Er等)に基づいて、当該期間中に機関10の燃焼室22中の混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されているか否かを推定してもよい。
降圧スイープの後、ECU30は、電流差分Id2に基づいて排気中のSOx濃度Csoxを取得し、斯くして取得されたSOx濃度Csoxと、印加電圧Vmが所定の電圧となっていて被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)が硫黄(S)へと還元されている期間における機関10の燃焼室22における混合気の空燃比(A/F)とに基づいて、燃料中の硫黄含有率Csを取得することができる。
ここで、以上説明したECU30が実行する燃料中の硫黄含有率Csの取得処理ルーチンにつき、より具体的に説明する。図7は、第1制御装置のECU30(実際には、CPU34)が実行する燃料中の硫黄含有率Csの取得処理ルーチンを示すフローチャートである。尚、ここでは、印加電圧Vmの昇圧スイープ及び降圧スイープの両方に亘って機関10を積極的に制御することにより機関10の燃焼室22における混合気の空燃比(A/F)を一定に維持し、当該処理によって取得された排気中のSOx濃度Csoxに基づいて燃料中の硫黄含有率Csを取得する場合について説明する。ECU30のCPU33(以降、単に「CPU」と称呼される場合がある)は、所定のタイミングにてステップ700から処理を開始し、ステップ710に進む。
先ず、ステップ710において、燃料中の硫黄含有率Csを取得する要求(硫黄含有率Cs取得要求)があるか否かが判定される。かかる判定は、例えば、第1制御装置が適用される機関10が搭載される車輌において燃料タンクへの燃料の充填が行われた後に当該処理が実行されて燃料中の硫黄含有率Csが取得された履歴が無い場合には硫黄含有率Cs取得要求が有ると判定し、かかる履歴が有る場合には硫黄含有率Cs取得要求が無いと判定することによって行ってもよい。
上記ステップ710において硫黄含有率Cs取得要求が有ると判定された場合(ステップ710:Yes)、CPUは次のステップ720に進み、機関10の燃焼室22中の混合気の空燃比(A/F)を一定に維持する制御(空燃比維持制御)を開始する。即ち、CPUは、図示しないアクセルペダル操作量センサにより取得されるアクセルペダル操作量(機関負荷)及び機関回転速度等に依らず、常に空燃比が一定となるように燃料噴射量等を制御する。空燃比(A/F)が一定に維持された状態になったら、CPUは次のステップ725に進み、空燃比(A/F)を検出する。この空燃比(A/F)が、前述した「取得された波形特徴値に対応する空燃比(A/F)」であり、後に排気中のSOx濃度Csoxから燃料中の硫黄含有率Csを取得する際に利用される。更に、CPUは次のステップ730に進み、印加電圧Vmを第1電圧Vm1(0.4V)から第2電圧Vm2(0.8V)へと徐々に増大させる(昇圧スイープを行う)。
昇圧スイープが完了したら、CPUは次のステップ740に進み、印加電圧Vmを第2電圧Vm2(0.8V)から第1電圧Vm1(0.4V)へと徐々に減少させる(降圧スイープを行う)。当該ステップにおいて、CPUはガスセンサ40を使用して電極電流Imを検出し、昇圧スイープ時に生成された硫黄(S)が再酸化されて硫黄酸化物(SOx)となることに起因して変化する電極電流Imの波形に基づいて特定電流Ic2と参照電流Ir2とを取得する。更に、斯くして取得された特定電流Ic2と参照電流Ir2とに基づいて、電極電流Imの上記波形の特徴を表す値(波形特徴値)として、電流差分Id2を算出する。
降圧スイープが完了したら、CPUは次のステップ750に進み、空燃比維持制御を終了する。即ち、CPUは、燃焼室22に供給される混合気の空燃比が、図示しないアクセルペダル操作量センサにより取得されるアクセルペダル操作量(機関負荷)及び機関回転速度等に応じて定まる要求空燃比に一致するように、燃料噴射量等を制御する。次に、CPUは次のステップ760に進み、マップ形式等のデータとしてROM34に保存されている電流差分Id2と排気中のSOx濃度Csoxとの関係(図6を参照)を参照し、電流差分Id2に基づいて排気中のSOx濃度Csoxを取得する。次に、CPUは次のステップ770に進み、斯くして取得されたSOx濃度Csoxと、ステップ725において検出された「空燃比維持制御によって一定に維持された混合気の空燃比(A/F)」と、ROM34に保存されている排気中のSOx濃度Csoxと混合気の空燃比(A/F)と燃料中の硫黄含有率Csとの関係(図2を参照)と、に基づいて、燃料中の硫黄含有率Csを取得する。更に、CPUはステップ780に進み、当該ルーチンを終了する。
尚、CPUは、例えば、取得された燃料中の硫黄含有率Csが所定の閾値を超える場合に、硫黄含有率Csを内燃機関の制御に反映させたり、内燃機関の故障に関する警告を発したり、排気浄化触媒のOBDに利用したりしてもよい。更に、上記においては、空燃比維持制御を開始し、空燃比(A/F)が一定に維持された状態になった後に昇圧スイープを行った。しかしながら、印加電圧Vmが所定の電圧となっている期間(所定電圧付与期間)において内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されている条件が満たされる限り、空燃比維持制御を開始するタイミングは必ずしも上記に限定されない。例えば、印加電圧Vmが所定の電圧に到達するまでに空燃比(A/F)が一定に維持された状態を達成することができる場合は、印加電圧Vmの昇圧スイープを開始した後に空燃比維持制御を開始してもよい。
更に、空燃比維持制御を終了するタイミングもまた必ずしも上記に限定されない。例えば、当該ルーチンの最終ステップにおいて、空燃比維持制御を終了してもよい。但し、第1制御装置が適用される機関10が搭載される車輌の走行性能(ドライバビリティ)を良好に保つ観点からは、できるだけ早いタイミングで空燃比維持制御を終了させることが望ましい。更に、上記においては印加電圧Vmの昇圧スイープ及び降圧スイープの両方に亘って混合気の空燃比(A/F)を一定に維持したが、昇圧スイープ中に空燃比を一定値に維持し、降圧スイープ中は機関の運転状態に応じて空燃比を変更してもよい。
本発明の実施例2に係る内燃機関の制御装置(以降、「第2制御装置」と称される場合がある)は、上述した第1形態及び第3形態を具体化した装置である。即ち、第2制御装置は、1セル式の限界電流式ガスセンサであるガスセンサ40の代わりに、2セル式の限界電流式ガスセンサであるガスセンサ45をガスセンサ40と同様の部位に備える。更に、第2制御装置は、昇圧スイープ時に空燃比維持制御を行うが、降圧スイープ時には空燃比維持制御を行わない。即ち、第2制御装置は、2セル式の限界電流式ガスセンサ(ガスセンサ45)を使用する点及び降圧スイープ時に空燃比維持制御を行わない点においてのみ、前述した第1制御装置と異なる。以下の説明においては、これらの相違点を中心に説明する。
先ず、第2制御装置が備える2セル式の限界電流式ガスセンサ(ガスセンサ45)の構成につき、そのセンサの断面図である図8を参照しながら説明する。ガスセンサ45は、第1固体電解質層51A及び第2固体電解質層51B、第1アルミナ層52A、第2アルミナ層52B、第3アルミナ層52C、第4アルミナ層52D、第5アルミナ層52E及び第6アルミナ層52F、拡散律速層(拡散抵抗層)53並びにヒータ54を備える。
第1及び第2固体電解質層は、ジルコニア等を含み、酸化物イオン伝導性を有する。
第1乃至第6アルミナ層は、アルミナを含む緻密(ガス不透過性)の層である。
拡散律速層53は、多孔質の層であり、ガス透過性の層である。
ヒータ54は、通電により発熱する発熱体である。
ガスセンサ45の各層は、下方から、第6アルミナ層52F、第5アルミナ層52E、第4アルミナ層52D、第2固体電解質層51B、拡散律速層53及び第3アルミナ層52C、第1固体電解質層51A、第2アルミナ層52B、第1アルミナ層52Aの順に積層されている。
第1大気導入路57Aは、第1固体電解質層51A、第1アルミナ層52A、及び第2アルミナ層52Bによって形成される、外部の大気と直接連通した空間である。第2大気導入路57Bは、第2固体電解質層51B、第4アルミナ層52D、及び第5アルミナ層52Eによって形成される、外部の大気と直接連通した空間である。内部空間58は、第1固体電解質層51A、第2固体電解質層51B、拡散律速層53、及び第3アルミナ層52Cによって形成される空間であり、拡散律速層53を介して排気管23内部と連通している。従って、排気管23内の圧力が内部空間58内の圧力よりも所定値以上高いときに、排気管23内の圧力に依らず、排気管23内の排ガスが一定の流量にて内部空間58内に被検ガスとして導かれる。
第1電極55A及び第2電極55Bは、白金(Pt)若しくはロジウム(Rh)等の白金族元素又はその合金からなる電極である。第1電極55Aは陰極であり、第2電極55Bは陽極である。第1電極55Aは、第2固体電解質層51Bの一方の側の表面(具体的には、内部空間58を形成する第2固体電解質層51Bの表面)に固着されている。一方、第2ポンプ電極55Bは、第2固体電解質層51Bの他方の側の表面(具体的には、第2大気導入路57Bを形成する第2固体電解質層51Bの表面)に固着されている。第1電極55A及び第2電極55B並びに第2固体電解質層51Bは、酸素ポンピング作用による酸素排除能力を有するポンピングセルを構成している。
尚、上記ポンピングセルは本実施例において被検ガス中の酸素(O2)を内部空間58から排出するポンプとして使用されるので、以降、上記ポンピングセルは「ポンプセル」と称される場合がある。即ち、第1電極55A及び第2電極55B並びに第2固体電解質層51Bは、ポンプセル55を構成している。電源55Cは、第1電極55A及び第2電極55Bに対して印加電圧Vpを印加することができる。電流計55Dは、ポンプセル55を流れる電極電流Ipに対応する信号をECU30へ出力する。また、ECU30は、第1電極55A及び第2電極55Bに印加される印加電圧Vpを制御することができる。
第1電極56A及び第2電極56Bは、白金(Pt)若しくはロジウム(Rh)等の白金族元素又はその合金からなる電極である。第1電極56Aは陰極であり、第2電極56Bは陽極である。第1電極56Aは、第1固体電解質層51Aの一方の側の表面(具体的には、内部空間58を形成する第1固体電解質層51Aの表面)に固着されている。一方、第2センサ電極56Bは、第1固体電解質層51Aの他方の側の表面(具体的には、第1大気導入路57Aを形成する第1固体電解質層51Aの表面)に固着されている。第1電極56A及び第2電極56B並びに第1固体電解質層51Aは、酸素ポンピング作用による酸素排除能力を有するポンピングセルを構成している。
尚、上記ポンピングセルは本実施例において被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)の濃度を取得するセンサとして使用されるので、以降、上記ポンピングセルは「センサセル」と称される場合がある。即ち、第1電極56A及び第2電極56B並びに第1固体電解質層51Aは、センサセル56を構成している。電源56Cは、第1電極56A及び第2電極56Bに対して印加電圧Vsを印加することができる。電流計56Dは、センサセル56を流れる電極電流Isに対応する信号をECU30へ出力する。また、ECU30は、第1電極56A及び第2電極56Bに印加される印加電圧Vsを制御することができる。
ポンプセル55の第1電極55Aはセンサセル56の第1電極56Aよりも内部空間58において上流側(即ち、拡散律速層53に近い側)に配設されている。これにより、ポンプセル55が内部空間58内に導かれた被検ガス中に含まれる酸素(O2)を除去した後に、センサセル56が被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)の濃度を取得することができる。即ち、第2制御装置は、被検ガス中の酸素(O2)を除去する酸素除去部としてポンプセル55を備える。
次に、ガスセンサ45を用いた「SOx濃度及び燃料中の硫黄成分の濃度」の検出方法について説明する。電源55Cによってポンプセル55の第1電極55Aと第2電極55Bとの間に印加電圧Vpが印加されると、内部空間58内の被検ガス中に含まれる酸素(O2)が第1電極55Aにて還元されて酸化物イオン(O2−)が発生する。この酸化物イオン(O2−)は、第2固体電解質層51Bを通って第2電極55Bへ移動し、第2電極55Bにて酸化されて酸素(O2)となる。この酸素(O2)は第2大気導入路57Bから大気中に放出される。このように内部空間58から第2大気導入路57Bへと酸素(O2)が移動する現象は、前述したように「酸素ポンピング作用」とも称される。かかる酸化物イオン(O2−)の移動に伴い、ポンプセル55に電極電流Ipが流れる。
尚、印加電圧Vpは、図1を参照しながら前述した限界電流特性が発現する「限界電流域」に含まれる電圧であって且つ被検ガスと接触する第1電極55A(陰極)の電位が硫黄酸化物(SOx)を還元することができる電位よりも低い電位となる電圧であることが望ましい。この場合、電極電流Ipの値は限界電流値Igとなる。限界電流値Igは、被検ガス中に含まれる酸素(O2)の濃度との相関を有するので、ポンプセル55は、酸素ポンピング作用によって内部空間58内の被検ガス中に含まれる酸素(O2)を除去する酸素除去部としてのみならず、被検ガスの空燃比(A/F)を検出する空燃比センサとしても作動することができる(限界電流に基づいて空燃比を検出する方法については、例えば、特開2000−65782号公報及び特開2004−69547号公報等を参照)。
次に、ガスセンサ45に含まれるセンサセル56の作動について説明する。前述したように、ポンプセル55の第1電極55Aはセンサセル56の第1電極56Aよりも内部空間58において上流側(即ち、拡散律速層53に近い側)に配設されている。従って、センサセル56の第1電極56Aに到達した被検ガス中には酸素(O2)は実質的に含まれていない。かかる状態において電源56Cによって第1電極56Aと第2電極56Bとの間に印加される印加電圧Vsを被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)を硫黄(S)へと還元することが可能な所定の電圧とすると、内部空間58内の被検ガス中に含まれる硫黄酸化物(SOx)が還元されて、硫黄(S)及び酸化物イオン(O2−)が生成される。斯くして生成された硫黄(S)は陰極である第1電極56Aに吸着される。一方、酸化物イオン(O2−)は、第1固体電解質層51Aを通って第2センサ電極56Bへ移動し、第2電極56Bにて酸化されて酸素(O2)となる。この酸素(O2)は第1大気導入路57Aから大気中に放出される。
その後、印加電圧Vsを所定の電圧から降圧スイープさせると、これまで説明してきた各種実施形態と同様に、電極電流Isが一旦下降し、その後上昇する。前述したように、降圧スイープ時に発生する電極電流Isのかかる変化は、上記のように印加電圧Vsを所定の電圧とすることにより被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)が還元されて生成された硫黄(S)が再酸化されて再び硫黄酸化物(SOx)となることに起因すると考えられる。但し、第2制御装置においては、被検ガス中の酸素(O2)が酸素除去部としてのポンプセル55によって予め除去されているので、例えば、燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)が大きく、結果として被検ガス中に含まれる酸素(O2)の濃度が高い場合であっても、酸素(O2)に起因する電極電流Isを低減することができ、上記再酸化に起因する電極電流Isの変化の検出感度の低下を回避することができる。加えて、たとえ降圧スイープ中に燃焼室中の混合気の空燃比(A/F)が変化しても電極電流Isが変化し難く、上記再酸化に起因する電極電流の変化を精度良く検出することができる。
ここで、印加電圧Vsの増減に伴う電極電流Isの推移につき、図9を参照しながら具体的に説明する。図9は、ガスセンサ45(第2制御装置が備える2セル式の限界電流式ガスセンサ)のセンサセル56(下流側ポンピングセル)において「印加電圧Vsの昇圧スイープ及び降圧スイープを実行したときの印加電圧Vsと電極電流Isとの関係」を示すグラフである。図9に示されているグラフの横軸は印加電圧Vs[V]を、縦軸は電極電流Is[μA]をそれぞれ表している。尚、本例においては、燃料中の硫黄含有率及び内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)は一定に維持されており、その結果として排気中の酸素(O2)及び硫黄酸化物(SOx)の濃度もまた一定に維持されている。
曲線LU3は、印加電圧Vsを第1電圧Vs1(本例においては、0.4V)から第2電圧Vs2(本例においては、0.8V)へと徐々に増大(昇圧スイープ)させたときの電極電流Isの変化を表している。曲線LD3は、印加電圧Vsを上記のように増大させた後、印加電圧Vsを第2電圧Vs2から第3電圧Vs3(本例においては、0.4V)へと徐々に減少(降圧スイープ)させたときの電極電流Isの変化を表している。
先ず、曲線LU3によって表されているように、昇圧スイープ時には、第1電極56A(陰極)に接した硫黄酸化物(SOx)の硫黄(S)への還元に起因して、電極電流Isは徐々に上昇している。即ち、本例においては、被検ガスと接触する作用電極(陰極)の電位が被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)を硫黄(S)へと還元することが可能な電位となる「所定の電圧」として、第1電圧Vs1(本例においては、0.4V)から第2電圧Vs2(本例においては、0.8V)までの範囲を有する電圧帯が採用されている。加えて、本例においては、「所定の電圧」として採用された上記電圧帯において、第1電圧Vs1(本例においては、0.4V)から第2電圧Vs2(本例においては、0.8V)まで印加電圧Vsを徐々に増大させる昇圧スイープを行っている。
一方、降圧スイープ時には、曲線LD3によって表されているように、電極電流Isは一旦下降し、その後上昇する。前述したように、降圧スイープ時に発生する電極電流Isのかかる変化は、昇圧スイープ時に生成された硫黄(S)が再酸化されて再び硫黄酸化物(SOx)となることに起因すると考えられる。本例においては、かかる降圧スイープ期間における電極電流Isの極小値を特定電流Ic3として取得し、降圧スイープが終了したときの電極電流Isを参照電流Ir3として取得する。そして、参照電流Ir3と特定電流Ic3との差分である電流差分Id3(即ち、Id3=Ir3−Ic3)を昇圧スイープ時に生成された硫黄(S)が再酸化されて硫黄酸化物(SOx)となることに起因して変化する電極電流Isの波形の特徴を表す値(波形特徴値)として採用する。
第2制御装置においては、電源55Cから印加電圧Vpがポンプセル55に常に印加されている。従って、センサセル56に到達する被検ガス中の酸素(O2)は酸素除去部としてのポンプセル55によって予め除去されているので、酸素(O2)に起因する大きい電極電流は実質的に発生せず、被検ガス中の硫黄酸化物(SOx)と硫黄(S)との間での酸化還元に起因する電極電流Isの変化を精度良く検出することができる。
上記のようにして算出された電流差分Id3と排気中のSOx濃度Csoxとの関係については、図6に示されているグラフを参照しながら前述した第1制御装置における電流差分Id2と排気中のSOx濃度Csoxとの関係と同様である。即ち、第2制御装置においても、上記のようにして算出される電流差分Id3に基づいて、被検ガス中のSOx濃度(即ち、排気中のSOx濃度Csox)を取得することができる。即ち、限界電流式ガスセンサであるガスセンサ45をSOx濃度センサとして使用することができる。
上述したように、第2制御装置におけるECU30は、ポンプセル55の印加電圧Vpを限界電流域に含まれる電圧に維持して、酸素ポンピング作用によって内部空間58内の被検ガス中に含まれる酸素(O2)を除去する酸素除去部としてポンプセル55を作動させる。加えて、ECU30は、被検ガスの空燃比(A/F)を検出する空燃比センサとしてもポンプセル55を作動させる。更に、ECU30は、降圧スイープ時に空燃比維持制御を行わない。これらの点を除き、第2制御装置におけるECU30の作動は、第1制御装置におけるECU30の作動と同様である。
以上説明したECU30が実行する燃料中の硫黄含有率Csの取得処理ルーチンの一例は、図10に示されているフローチャートによって表すことができる。図10は、第2制御装置のCPUが実行する燃料中の硫黄含有率Csの取得処理ルーチンを示すフローチャートである。但し、当該フローチャートによって表される燃料中の硫黄含有率Csの取得処理ルーチンは、ECU30がセンサセル56の電極間への印加電圧Vsを印加電圧Vmに代えて増減させて、それに伴う電極電流Isの変化に基づいて硫黄含有率Csを取得する点(図10のステップ1020及びステップ1040を参照)、及び空燃比(A/F)を検出し且つ昇圧スイープが完了した時点で空燃比維持制御を終了する点(図10のステップ1010、ステップ1015及びステップ1030を参照)においてのみ、図7に示されている第1制御装置が実行する硫黄含有率Csの取得処理ルーチンと異なる。従って、ここでは図10に示されているフローチャートについての詳細な説明は割愛する。
本発明の実施例3に係る内燃機関の制御装置(以降、「第3制御装置」と称される場合がある)もまた、第2制御装置と同様に、上述した第1形態及び第3形態を具体化した装置である。即ち、第3制御装置は、第2制御装置と同様に、2セル式の限界電流式ガスセンサであるガスセンサ45を備える。但し、第3制御装置は、昇圧スイープ時及び降圧スイープ時の何れにおいても空燃比維持制御を行わない点においてのみ、前述した第2制御装置と異なる。以下の説明においては、かかる相違点を中心に説明する。
第3制御装置が備える2セル式の限界電流式ガスセンサ(ガスセンサ45)の構成については、第2制御装置について図8を参照しながら既に説明したので、ここでの説明は割愛する。加えて、ガスセンサ45を用いた「SOx濃度及び燃料中の硫黄成分の濃度」の検出方法、ガスセンサ45に含まれるポンプセル55及びセンサセル56の作動についても、第2制御装置について既に説明したので、ここでの詳細な説明は割愛する。第3制御装置におけるECU30もまた、ポンプセル55の印加電圧Vpを限界電流域に含まれる電圧に維持して、酸素ポンピング作用によって内部空間58内の被検ガス中に含まれる酸素(O2)を除去する酸素除去部としてポンプセル55を作動させる。加えて、ECU30は、被検ガスの空燃比(A/F)を検出する空燃比センサとしてもポンプセル55を作動させる。
しかしながら、上述したように、第3制御装置におけるECU30は、昇圧スイープ時及び降圧スイープ時の何れにおいても空燃比維持制御を行わない。この点を除き、第3制御装置におけるECU30の作動は、第2制御装置におけるECU30の作動と同様である。かかる第3制御装置におけるECU30が実行する燃料中の硫黄含有率Csの取得処理ルーチンの一例は、図11に示されているフローチャートによって表すことができる。
図11は、第3制御装置のCPUが実行する燃料中の硫黄含有率Csの取得処理ルーチンを示すフローチャートである。但し、当該フローチャートによって表される燃料中の硫黄含有率Csの取得処理ルーチンは、上述したようにECU30が空燃比維持制御を一切行わず、その代わりに昇圧スイープを通して空燃比(A/F)を監視(モニタ)する点(図11のステップ1110乃至ステップ1130を参照)、監視された空燃比(A/F)が一定であったか否かを判定する点(図11のステップ1140を参照)、監視された空燃比(A/F)が一定であった場合には空燃比(A/F)を取得する点(図11のステップ1150を参照)、及び監視された空燃比(A/F)が一定ではなかった場合には当該ルーチンを終了する点においてのみ、図10に示されている第2制御装置が実行する硫黄含有率Csの取得処理ルーチンと異なる。
上記のように、図11のフローチャートによって表される燃料中の硫黄含有率Csの取得処理ルーチンにおいては、ステップ1120において実行される昇圧スイープ中に検出された空燃比(A/F)が一定であった場合には、図10に示されている第2制御装置が実行する硫黄含有率Csの取得処理ルーチンと同様の処理が実行される。一方、ステップ1120において実行される昇圧スイープ中に検出された空燃比(A/F)が一定ではなかった場合には、電極電流Isの波形の特徴を表す値(波形特徴値)としての電流差分Id3を取得すること無く、当該ルーチンは終了される。即ち、空燃比維持制御を行わない(空燃比を強制的に一定に維持しない)第3制御装置においても、印加電圧が所定の電圧となっている期間において内燃機関の燃焼室における混合気の空燃比(A/F)が一定に維持されていることを条件として、硫黄関連値の取得が許容されることに変わりは無い。
尚、図11のフローチャートにおいては、ステップ1130において空燃比(A/F)の監視(モニタ)が終了した直後のステップ1140において空燃比(A/F)が一定であったか否かを判定している。しかしながら、空燃比(A/F)が一定であったか否かを判定するステップは、ステップ1040における降圧スイープ、ステップ760におけるSOx濃度Csoxの取得又はステップ770における硫黄含有率Csの何れの後に実行してもよい。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び実施例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び実施例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。