JP5999371B2 - 4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの製造方法 - Google Patents

4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、各種の工業化学原料、医薬、農薬、光学機能性材料や電子機能性材料の製造原料として有用な高純度4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの製造方法に関する。
これまで、4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンを合成する一般的な方法としては、HF−SbF5を触媒として、ジフェニルアルカンと一酸化炭素とによりホルミル化する方法が知られている(特許文献1、非特許文献1参照)。しかし、特許文献1では、4,4’−ジホルミル体(以下、「4,4’体」ということがある)の収率は98%と記載されている。また、非特許文献1では、ジホルミルの収率は97%であるが、4,4’体の異性体比は92%程度と低い。
また、非特許文献2には、SbF5は粘稠で無色透明な液体であり、ガラスは侵さないがその腐食性は非常に強いことが記載されている。
また、[2.2]パラシクロファンをニトロメタン/ジクロロメタン溶媒中で、NOBF4(硼弗化ニトロソニウム)を触媒として、分子状酸素により酸化する方法が知られている(非特許文献3参照)。しかし、環境負荷が大きいクロロメタン溶媒を大量に使用することは現実的に困難であり、かつ収率が30%と低く、さらに原料の入手性にも問題がある。
特許第2535742号公報
Tanaka, Mutsuo; Fujiwara, Masahiro; Xu, Qiang; Ando, Hisanori; Raeker, Todd J.; Journal of Organic Chemistry; vol. 63; nb. 13; (1998); p. 4408 - 4412. 米田徳彦、高橋行雄、福原彊、富田宣、鈴木章、北海道大学工学部研究報告第91号3頁(55頁)(昭和53年) Sankararaman, Sethuraman; Hopf, Henning; Dix, Ina; Jones, Peter G.; European Journal of Organic Chemistry; nb. 15; (2000); p. 2711 - 2716
特許文献1に記載されているHF−SbF5触媒は取扱いが困難なため、工業的に用いられる製造方法としては問題がある。具体的に言えば、SbF5は粘調性を有するため、その高濃度部分ではポンプがキャビテーション(気泡の発生)を起こし、安定した連続運転が不可能となる問題がある。
またSbF5は、ガラスを侵さないとはいっても吸湿性が強く、水と激しく反応してフッ化水素(HF)を生じるため、ガラス等を容易に腐食し得るものである。従って、十分に注意し、無水の状態で扱わなければ、ガラス容器で使用することは不可能である。また、SbF5はそのままでは触媒作用を示さないため、通常、HFや硫酸と共に超強酸として使用する必要がある。すなわち、HF−SbF5触媒では、HFが原因でガラスが侵されるため、取扱い性が困難という問題を生じることになる。
さらに、基質と触媒との錯体分解は、通常、溶媒の還流下その熱で分解を起こすが、SbF5は沸点が141℃と高いため、その沸点以上の不活性溶媒を大量に使用する必要があり、熱源コストも大きくなるという問題がある。
また、非特許文献1に記載の方法によれば、既述の通り、ジホルミル体の収率は97%と良好であるが、4,4’−ジホルミル体(以下、「4,4’体」ということがある)の異性体比は92%程度であり、反応液中には異性体不純物として2,2’−ジホルミル体(以下、「2,2’体」ということがある)が5%、2,4’−ジホルミル体(以下、「2,4’体」ということがある)が3%の割合で存在している。これら異性体不純物は目的の4,4’体と物性が近く、晶析等で分離することが困難であり、また光学機能性材料とした場合の製品価値も下げてしまうものである。従って、4,4’体、2,2’体及び2,4’体の異性体における4,4’体の純度(異性体比)が高いことが望まれる。
また、4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンを例えば、光学機能性材料として用いるには4,4’体の純度(最終的な生成物中の4,4’体の純度)が90%以上であることが望まれている。しかし、高段数の晶析等で2,2’体と2,4’体を4,4’体から例え分離できたとしても、それらの有効利用が図られない限り経済的な方法とは言えない。このため、反応条件による4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの有効な選択的合成法が望まれていた。
以上から工業的に使用に耐えうる触媒を用いての製造方法確立が求められていた。
本発明は、4,4’−ジホルミル体の異性体比を95%以上とすることができる4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの工業的に有利な製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、ジフェニルアルカンと一酸化炭素とから4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンを製造する方法において、反応温度を所定の範囲とし、触媒としてフッ化水素及び三フッ化ホウ素を用い、かつ、それぞれの触媒とジフェニルアルカンとの比率を特定の範囲とすることで、高い異性体比の4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンを工業に有利な方法で得られること見出し、本発明に想到した。すなわち、本発明は下記の通りである。
[1] フッ化水素及び三フッ化ホウ素の存在下、下記式(1)で表されるジフェニルアルカンを一酸化炭素によりホルミル化をし、下記式(2)で表される4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンを製造する方法であって、ホルミル化の反応温度が−50℃以上5℃以下であり、ジフェニルアルカン1モルに対するフッ化水素が5モル以上30モル以下であり、ジフェニルアルカン1モルに対する三フッ化ホウ素が1.5モル以上5モル以下である4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの製造方法。
Figure 0005999371
(式中Rは炭素数1〜6のアルカンジイル基である。)
Figure 0005999371
(式中Rは炭素数1〜6のアルカンジイル基である。)
[2] 前記ジフェニルアルカンがジフェニルエタンであり、前記4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンが4,4’−ジホルミルジフェニルエタンである[1]に記載の4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの製造方法。
[3] ジフェニルアルカンが1,3−ジフェニルプロパンであり、前記4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンが4,4’−ジホルミル−1,3−ジフェニルプロパンである[1] に記載の4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの製造方法。
[4] ホルミル化後に、晶析を行なう[1]〜[3]のいずれかに記載の4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの製造方法。
[5] 製造された4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの純度が90%以上である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの製造方法。
本発明によれば、フッ化水素及び三フッ化ホウ素触媒を用いて、限定されたホルミル化条件とすることで、4,4’−ジホルミル体の異性体比を95%以上とすることができる4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの工業的に有利な製造方法を提供することができる。
また本発明は、従来のHF−SbF5触媒を用いた方法に比べて、下記のような効果を有するものである。
すなわち、SbF5は融点8.3℃、沸点141℃の無色、粘調及び油状の液体で、吸湿性が強く、既述の通り、水と激しく反応してHFを生じ、ガラス等を容易に腐食する。そのため、HF−SbF5触媒系で実装置化する場合は、ラボ実績のある特殊フッ素樹脂製のものを使用する等、かなりの重装備のプロセスとなってしまう。
これに対し本発明ではそのようなプロセスは不要であり、またBF3は気体であり取り扱いが容易であって、実用上優れている。
この実用上優れているという点についてさらに詳説すると、HF−SbF5触媒は、本発明に係るHF−BF3触媒と比較して酸強度が高いため、ステンレス容器の使用は不可能であることが推測される。つまり、実装置化するには材質評価等といった初期的な検討が必要であり、実用化へ向けた種々の問題点が存在し得るといえる。
これに対して、本発明に係るHF−BF3触媒では、(1)材質評価についてはすでに多くの検討がなされており実装置も存在するし、(2)HF−BF3触媒を用いれば均一液相プロセスが可能である等といった実用上優れた面を有している。
さらに触媒の回収法についても本発明の方がHF−SbF5触媒に比べて有利である。HF−SbF5触媒においては、HFの沸点が20℃のためこれを冷却する必要があり、一方SbF5の融点は8.3℃のためこれを加熱する必要がある。そのため、閉塞や系外パージ等トラブルが考えられるが、本発明に係るHF−BF3系では、反応条件や触媒回収法は工業的に確立されており、生産上においても優れている。
本発明の4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの製造方法は、下記式で表されるように、フッ化水素(以下、「HF」と表すことがある)及び三フッ化ホウ素(以下、「BF3」と表すことがある)を触媒としてこれらの存在下、下記式(1)で表されるジフェニルアルカンを一酸化炭素によりホルミル化して、下記式(2)で表される4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンを製造する方法である。
当該製造方法により、収率良く、4,4’−ジホルミル体の異性体比が例えば95%以上の4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンを得ることが可能である。また、触媒として使用したHF及びBF3は揮発性が高いため、回収し再利用することができる。すなわち、使用した触媒を廃棄する必要がなく、経済的に非常に優れると同時に環境に対する負荷も軽減される。
Figure 0005999371
(上記式(1)及び(2)中、Rは炭素数1〜6のアルカンジイル基である。)
本発明において用いるジフェニルアルカンは、ジフェニルメタン、ジフェニルエタン、1,3−ジフェニルプロパン、1,2−ジフェニルプロパン、1,4−ジフェニルブタン、1,3−ジフェニルブタン、1,2−ジフェニルブタン、2,3−ジフェニルブタン、1,5−ジフェニルペンタン、1,4−ジフェニルペンタン、1,3−ジフェニルペンタン、1,2−ジフェニルペンタン、2,4−ジフェニルペンタン、2,3−ジフェニルペンタン、1,6−ジフェニルヘキサン、1,5−ジフェニルヘキサン、1,4−ジフェニルヘキサン、1,3−ジフェニルヘキサン、1,2−ジフェニルヘキサン、2,5−ジフェニルヘキサン、2,4−ジフェニルヘキサン、2,3−ジフェニルヘキサン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンであり、これらの製造方法は特に限定されず、タール留分、石油留分から分離する方法、対応するハライドをニッケル/銅触媒によりカップリングする方法、対応するオレフィンとアルキルベンゼンを金属ナトリウム触媒によりアルキル化する方法により得られる。
本発明においてホルミル化の反応温度は、−50℃以上5℃以下とし、−50℃以上−10℃以下が好ましく、−40℃以上−10℃以下とすることがより好ましく、−35℃以上−25℃以下とすることがさらに好ましい。反応温度が5℃を超えると、重合生成物が副生し収率低下を招くので好ましくない。また−50℃より低温ではホルミル化速度の低下をきたし好ましくない。
反応時間は1〜5時間であるとすることが好ましい。この範囲にすることにより、十分なジフェニルアルカンの転化率が得られ、また滞留時間確保のための装置大型化による効率低下の懸念がなくなる傾向がある。
ジフェニルアルカンに対するBF3の量は、ジフェニルアルカン1モルに対し1.5モル以上5モル以下とし、2.5モル以上5モル以下が好ましく、2.5モル以上4モル以下の範囲がより好ましく、3モル以上4モル以下の範囲がさらに好ましい。
BF3が1.5モル未満では、ホルミル化反応が遅くなり、BF3が5モルを超えても収率の改善効果は小さく、反応器やBF3回収設備が大きくなり生産効率の点で好ましくない。
本発明において用いるHFとしては、実質的に無水のものが好ましい。ジフェニルアルカンに対するHFの量は、ジフェニルアルカン1モルに対し5モル以上30モル以下の範囲とし、10モル以上30モル以下が好ましく、10モル以上25モル以下の範囲がより好ましく、15モル以上25モル以下の範囲がさらに好ましい。
HFが5モル未満では、効率的にホルミル化反応が進行しない。HFが30モルを超えても収率の改善効果は小さく、反応器やHF回収設備が大きくなり生産効率の点で好ましくない。
本発明においては、原料のジフェニルアルカンを溶解し、ジフェニルアルカン及びHF−BF3に対して不活性な反応溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン、デカン等の飽和脂肪族炭化水素等を使用してもよい。この場合には更に重合反応が抑制され収率が向上するが、大量の溶媒を使用すると反応の容積効率の低下、分離に要するエネルギー原単位の悪化を招くので、使用の有無・使用量は適宜選択される。
本発明において用いる一酸化炭素は、窒素やメタン等の不活性ガスが含まれていてもよいが、一酸化炭素分圧として0.5〜5MPaとすることが好ましく、1〜3MPaとすることがより好ましい。
一酸化炭素分圧として0.5〜5MPaとすることで、ホルミル化反応が十分に進行し、モノホルミル化生成物の生成量を抑えることができる。また、異性化や重合等の副反応の併発を抑制し収率の低下を抑えることができる。さらに、反応の効率やコストの点からも好ましい。
本発明方法におけるホルミル化反応形式は、液相と気相が充分に混合できる撹拌方法であれば特に制限はなく、回分式、半回分式及び連続式等いずれの方法も採用できる。
例えば、回分式では、電磁撹拌装置付オートクレーブに、溶媒に溶かしたジフェニルアルカン、所定量の無水HF及びBF3を仕込み、内容物を撹拌し液温を−50℃以上5℃以下に保った後、一酸化炭素により0.5〜5MPaに昇圧し、その後そのままの圧力、液温を保った状態で、一酸化炭素が吸収されなくなるまで1〜5時間保持した後、氷の中に反応生成液を採取し油層を得てガスクロマトグラフィーで分析し4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの生成を確認できる。
また半回分式では、電磁撹拌装置付オートクレーブに、所定量の無水HF及びBF3を仕込み、内容物を撹拌し液温を−50℃以上5℃以下に設定し、温度を一定に保つような状態にした後、一酸化炭素により0.5〜5MPaに昇圧し、圧力を一定に保つように一酸化炭素を供給できる状態にする。その後、溶媒に溶かしたジフェニルアルカンを供給し、供給後そのままの状態を1〜5時間保った後に、氷の中に反応生成液を採取し油層を得てガスクロマトグラフィーで分析し、4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの生成を確認できる。
さらに連続式では、まず始めに電磁撹拌装置付オートクレーブに、所定量の無水HF及びBF3を仕込み、内容物を撹拌し液温を−50℃以上5℃以下に設定し、温度を一定に保つような状態にした後、一酸化炭素により0.5〜5MPaに昇圧し、圧力を一定に保つように一酸化炭素を供給できる状態にする。その後、溶媒に溶かしたジフェニルアルカンを供給する半回分式の反応を行う。さらに続けて、無水HF及びBF3も供給開始し、反応生成液を氷水の中に連続的に抜き出す。反応液がオートクレーブ中に滞留する時間は、1〜5時間が好ましい。1時間以上であれば反応が十分に進む傾向があり、また5時間以下であれば滞留時間確保のための装置大型化による効率悪化を低減できる傾向がある。
得られた油層をガスクロマトグラフィーで分析し、4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの生成を確認できる。
反応終点は特に限定されないが、例えば、一酸化炭素の吸収が停止した時点を終点とすることができる。
ホルミル化反応によって得られる反応生成液は4,4’−ジホルミルジフェニルアルカン・HF−BF3錯体のHF溶液であり、加熱することにより4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンとHF−BF3の結合が分解され、HF及びBF3を気化分離し、回収、再利用することができる。この錯体の分解操作はできるだけ迅速に進めて生成物の加熱変質、異性化等を避ける必要がある。錯体の熱分解を迅速に進めるためには、例えばHF−BF3に不活性な溶媒、例えばヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素やベンゼン等の芳香族炭化水素の還流下で分解するのが好ましい。
大量の溶媒に希釈された熱分解処理液中には、微量のHFを含有している場合があるため、0.5%水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和水洗を行い、その後、通常の蒸留と晶析操作により容易に、原料のジフェニルアルカンとモノホルミルジフェニルアルカンを除去し、精製することができて、製品となる純度90%以上の4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンを得ることができる。
また、4,4’−ジホルミルジフェニルアルカン・HF−BF3錯体を氷水中に抜液する場合には、固体である4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンを溶解させるため、4−メチル−2−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2−エチル−1−ヘキサノール、3−メチル−3−オクタノール、ジブチルエーテル等の溶媒を添加した後、0.5%水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和水洗を行い、その後、50℃の温水で洗浄することにより生成物を油層に溶解させた後、室温まで放冷して析出した固体を濾別することにより、未反応の原料と中間体のモノ体は油層に留まり、容易に精製することができ、製品となる純度が90%以上の4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンを得ることができる。なお、反応後の異性体比が悪いものは、純度90%以上品を得るのに数回の晶析精製が必要である。
以下に、実施例を以って本発明の方法を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各種評価は下記の通りとした。
(1)ガスクロマトグラフィー分析条件
ガスクロマトグラフィーは、島津製作所製GC−17Aとキャピラリーカラムとして信和化工製HR−1(0.32mmφ×25m)を用いた。昇温条件は100℃から320℃まで5℃/min.で昇温した。
(2)異性体比、4,4’体の純度、及び単離収率
ガスクロマトグラフィーにより、生成物のホルミル基のモノ体及びジ体(4,4’体、2,2’体及び2,4’体)のそれぞれの面積割合を求め、これらの割合から異性体比及び4,4’体の純度を下記式により算出した。
・異性体比(%)=4,4’体/(4,4’体+2,2’体+2,4’体)×100
・4,4’体の純度(%)=4,4’体/(モノ体+4,4’体+2,2’体+2,4’体 +その他成分(LE+原料+HE))×100
(ここで、LEとは、原料より低沸側にある成分であり、HEとは、原料より高沸側にあり生成物のホルミル基のモノ体及びジ体以外の成分である。)
・単離収率(モル%)=(製品となる4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの取得量/4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの分子量)/(原料であるジフェニルアルカンの仕込み量/原料であるジフェニルアルカン分子量)×100
<実施例1>
ジフェニルエタンのホルミル化による4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタンの製造(下記式(3)参照)
Figure 0005999371
ナックドライブ式攪拌機と上部に3個の入口ノズル、底部に1個の抜き出しノズルを備え、ジャケットにより内部温度を抑制できる内容積500mlのステンレス製オートクレーブに、ジフェニルエタン(東京化成(株)製)50.1g(0.275mol)、n−ヘプタン50.1g、無水HF110.0g(5.497mol),BF365.2g(0.962mol)を仕込み、内容物を撹拌し液温を−30℃に保ったまま一酸化炭素により2MPaまで昇圧した。その後、圧力を2MPa、液温を−30℃に1時間保って反応させた後、氷の中に反応生成液を投入し、中和処理をして得られた固体をガスクロマトグラフィーで分析して反応成績を求めたところ、ジフェニルエタン転化率99.4%、4−ホルミル−1,2−ジフェニルエタン収率23.6%、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン収率72.9%、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン異性体比96.6%であった。
得られた固体に4−メチル−2−ペンタノンを300g添加し、0.5%水酸化ナトリウム水溶液100mlで1回中和を行い、50℃の温水100mlで2回洗浄を行い、生成物を油層に溶解させた後、室温まで放冷して析出した固体を濾別したところ、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン純度が95.7%の白色固体35.1g(単離収率53.5%、ジフェニルエタン基準)が得られた。
<実施例2>
反応時間を3時間に代えた以外は、実施例1と同様にホルミル化反応と反応生成液の処理を行った。得られた固体をガスクロマトグラフィーで分析して反応成績を求めたところ、ジフェニルエタン転化率99.6%、4−ホルミル−1,2−ジフェニルエタン収率10.9%、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン収率84.2%、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン異性体比95.8%であった。また実施例1と同様な晶析精製を行い、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン純度が95.5%の白色固体46.6g(単離収率71.2%、ジフェニルエタン基準)が得られた。
<実施例3>
BF3の仕込み量を46.6g(0.687mol)に代えた以外は、実施例1と同様にホルミル化反応と反応生成液の処理を行った。得られた固体をガスクロマトグラフィーで分析して反応成績を求めたところ、ジフェニルエタン転化率76.1%、4−ホルミル−1,2−ジフェニルエタン収率18.0%、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン収率55.9%、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン異性体比96.2%であった。また実施例1と同様な晶析精製を行い、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン純度が95.3%の白色固体20.4g(単離収率31.2%、ジフェニルエタン基準)が得られた。
<実施例4>
無水HFの仕込み量を82.5g(4.123mol)に代えた以外は、実施例3と同様にホルミル化反応と反応生成液の処理を行った。得られた固体をガスクロマトグラフィーで分析して反応成績を求めたところ、ジフェニルエタン転化率75.4%、4−ホルミル−1,2−ジフェニルエタン収率21.1%、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン収率52.1%、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン異性体比96.3%であった。また実施例1と同様な晶析精製を行い、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン純度が95.1%の白色固体17.8g(単離収率27.1%、ジフェニルエタン基準)が得られた。
参考例1
反応温度を0℃に代えた以外は、実施例4と同様にホルミル化反応と反応生成液の処理を行った。得られた固体をガスクロマトグラフィーで分析して反応成績を求めたところ、ジフェニルエタン転化率98.7%、4−ホルミル−1,2−ジフェニルエタン収率53.1%、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン収率42.1%、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン異性体比95.5%であった。また実施例1と同様な晶析精製を行い、純度92.4%の白色固体11.8g(単離収率18.0%、ジフェニルエタン基準)が得られた。
反応温度が高いため、収率は低下した上、中間体の4,−ホルミル−1,2−ジフェニルエタンが製品中に混入したため、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン純度が95%以上の4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタンが得られなかった。
<実施例6>
無水HFの仕込み量を41.3g(2.060mol)に代えた以外は、実施例4と同様にホルミル化反応と反応生成液の処理を行った。得られた固体をガスクロマトグラフィーで分析して反応成績を求めたところ、ジフェニルエタン転化率65.2%、4−ホルミル−1,2−ジフェニルエタン収率25.8%、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン収率37.8%、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン異性体比96.6%であった。
また実施例1と同様な晶析精製を行い、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン純度が純度94.6%の白色固体9.4g(単離収率14.3%、ジフェニルエタン基準)で得られた。
HF使用量が少ないため、純度が低い結果となった。
<実施例7>
BF3の仕込み量を37.3g(0.549mol)に代えた以外は、実施例4と同様にホルミル化反応と反応生成液の処理を行った。得られた固体をガスクロマトグラフィーで分析して反応成績を求めたところ、ジフェニルエタン転化率58.2%、4−ホルミル−1,2−ジフェニルエタン収率15.0%、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン収率40.9%、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン異性体比96.1%であった。
また実施例1と同様な晶析精製を行い、純度94.8%の白色固体11.0g(単離収率16.7%、ジフェニルエタン基準)が得られた。
BF3使用量が少ないため、純度が低い結果となった。
<実施例8>
1,3−ジフェニルプロパンのホルミル化による4,4’−ジホルミル−1,3−ジフェニルプロパンの製造(下記式(4)参照)
Figure 0005999371
原料として1,3−ジフェニルプロパン(東京化成(株)製)54.0g(0.275mol)に代えた以外は、実施例1と同様にホルミル化反応と反応生成液の処理を行った。得られた固体をガスクロマトグラフィーで分析して反応成績を求めたところ、1,3−ジフェニルプロパン転化率97.2%、4−ホルミル−1,3−ジフェニルプロパン収率2.7%、4,4’−ジホルミル−1,3−ジフェニルプロパン収率91.0%、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルプロパン異性体比97.4%であった。また実施例1と同様な晶析精製を行い、4,4’−ジホルミル−1,2−ジフェニルエタン純度が97.3%の白色固体59.1g(単離収率85.1%、1,3−ジフェニルプロパン基準)が得られた。
以下に、各例の反応条件、反応成績、及び最終成績をまとめて示す。
Figure 0005999371
本発明による工業的に有利な製造法により得られた、4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンは、その異性対比が95%以上となり、さらにその後の1回の晶析で、高い単離時純度で4,4’−ジホルミル体を得ることができるので、各種の工業化学原料、医薬、農薬、光学機能性材料や電子機能性材料の製造原料として有用である。

Claims (5)

  1. フッ化水素及び三フッ化ホウ素の存在下、下記式(1)で表されるジフェニルアルカンを一酸化炭素によりホルミル化をし、下記式(2)で表される4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンを製造する方法であって、
    ホルミル化の反応温度が−50℃以上−25℃以下であり、ジフェニルアルカン1モルに対するフッ化水素が5モル以上30モル以下であり、ジフェニルアルカン1モルに対する三フッ化ホウ素が1.5モル以上5モル以下である4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの製造方法。
    Figure 0005999371
    (式中Rは炭素数1〜6のアルカンジイル基である。)
    Figure 0005999371
    (式中Rは炭素数1〜6のアルカンジイル基である。)
  2. 前記ジフェニルアルカンがジフェニルエタンであり、前記4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンが4,4’−ジホルミルジフェニルエタンである請求項1に記載の4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの製造方法。
  3. ジフェニルアルカンが1,3−ジフェニルプロパンであり、前記4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンが4,4’−ジホルミル−1,3−ジフェニルプロパンである請求項1に記載の4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの製造方法。
  4. ホルミル化後に、晶析を行なう請求項1〜3のいずれか1項に記載の4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの製造方法。
  5. 製造された4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの純度が90%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の4,4’−ジホルミルジフェニルアルカンの製造方法。
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