JP5997903B2 - 末端変性ポリカーボネート樹脂 - Google Patents
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Description
しかしながら、ポリカーボネート樹脂の耐候性能は優れているとはいえず、長期的に使用しているうちに黄変して透明性等の特性が損なわれるといった欠点を持っている。
主に黄変は紫外線の照射により進行することから、黄変を防ぐためにポリカーボネート樹脂に紫外線吸収剤を添加する方法が一般的に知られている。しかしながらこの方法は、高温成形時に紫外線吸収剤の揮発により、モールドデポジットの問題を引き起こすといった成形時の不具合を引き起こし易い。そのため、紫外線吸収剤の添加量は、通常1000ppmオーダーと少なくなり、十分な耐候性能を付与することができない。
すなわち、本発明は、下記の末端変性ポリカーボネート樹脂、その製造方法及びこれを含む樹脂組成物に係る発明である。
2. 全末端に対する前記一般式(1)表される末端構造の末端変性率が10%以上である、前記1に記載の末端変性ポリカーボネート樹脂。
3. 主鎖が、下記一般式(2)で表される構成単位を有する、前記1又は2に記載の末端変性ポリカーボネート樹脂。
5. 界面重合法によるポリカーボネート樹脂の製造方法であって、下記一般式(1−1)で表される一価フェノールを用いて末端停止を行うことを特徴とする末端変性ポリカーボネート樹脂の製造方法。
7. さらに前記一般式(1)で表される末端構造を有さないポリカーボネート樹脂を含む、前記6に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
本発明の末端変性ポリカーボネート樹脂は、下記一般式(1)で表される末端構造を有するものであり、その製造方法は、界面重合法によるポリカーボネート樹脂の製造方法であって、下記一般式(1−1)で表される一価フェノールを用いて末端停止を行うことを特徴とする。
R1及びR2が複数ある場合それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、エステル基の酸素原子が結合している芳香環において、該エステル基に対するオルト位のうち、少なくとも一方には水素原子が結合している。
なお、式(1−1)中、R1、R2、a及びbは、上記と同義である。
上記一価フェノールのなかでも、安息香酸3−ヒドロキシフェニル及び安息香酸4−ヒドロキシフェニルが好ましい。
上記公知の末端停止剤としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−ブロモフェノール、2,4,6−トリブロモフェノール、p−ノニルフェノール、ドコシルフェノール、テトラコシルフェノール、ヘキサコシルフェノール、オクタコシルフェノール、トリアコンチルフェノール、ドトリアコンチルフェノール、テトラトリアコンチルフェノール等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
上記公知の末端停止剤のなかでも、p−tert−ブチルフェノール及びp−クミルフェノールが好ましい。
具体的には、本発明の末端変性ポリカーボネート樹脂において、全末端に対する前記一般式(1)表される末端構造の末端変性率は、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。前記一般式(1)で表される末端構造の末端変性率が10%以上であれば、期待される耐候性能を発現することができる。
なお、式(2−1)中、R3、R4、c及びdは、上記と同義である。
上記二価フェノールのなかでも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕が好適である。
三級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン及びジメチルアニリン等が挙げられ、また三級アミン塩としては、例えば、これらの三級アミンの塩酸塩及び臭素酸塩等が挙げられる。四級アンモニウム塩としては、例えば、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、トリブチルベンジルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド及びテトラブチルアンモニウムブロミド等が、四級ホスホニウム塩としては、例えば、テトラブチルホスホニウムクロリド及びテトラブチルホスホニウムブロミド等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
下記一般式(3)で表される構成単位は、下記一般式(3−1)で表されるフェノール変性ジオールを用いることにより形成することができる。
なお、式(3−1)中、R5、R6、e及びfは、上記と同義である。
下記一般式(4)で表される構成単位は、下記一般式(4−1)で表されるポリオルガノシロキサンを用いることにより形成することができる。
上記ポリオルガノシロキサンとしては、ジメチルシロキサンが好適である。
本発明はまた、前記末端変性ポリカーボネート樹脂を含むポリカーボネート樹脂組成物を提供する。該樹脂組成物には、前記一般式(1)で表される末端構造を有さないポリカーボネート樹脂(以下、その他のポリカーボネート樹脂と称す)を含有することができる。
前記末端変性ポリカーボネート樹脂は優れた耐侯性能を有していることから、その他のポリカーボネート樹脂を含有させた樹脂組成物としても、その耐侯性能を発揮することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、その他のポリカーボネート樹脂を含有する場合、前記末端変性ポリカーボネート樹脂とその他のポリカーボネート樹脂との割合は、末端変性ポリカーボネート樹脂が有する耐侯性能を効果的に発揮させる観点から、両者を合わせた全末端に対する末端変性率が、上述した好ましい末端変性率となるよう適宜調整することが望ましい。
ここで、上記配合、混練には、通常用いられている方法、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー(商品名)、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等を用いる方法により行うことができる。混練に際しての加熱温度は、通常250〜300℃の範囲で選ばれる。
上記のようにして得られるポリカーボネート樹脂組成物は、既知の種々の成形方法、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形、回転成形等を適用し、自動車用ガラス、サンルーフ等の自動車分野の成形品や家電分野の成形品を製造することができる。
なお、各種の添加剤としては、ヒンダードフェノール系、亜リン酸エステル系及びリン酸エステル系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系等の光安定剤、脂肪族カルボン酸エステル系やパラフィン系等の外部滑剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤等が挙げられ、さらに成形時において不具合を生じない範囲で耐候剤を併用してもよい。
ガラス材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスパウダー等を用いることができる。ここで、用いられるガラス繊維としては、含アルカリガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラスのいずれであってもよい。その繊維長は、通常0.1〜8mm程度、好ましくは0.3〜6mmであって、また、繊維径は、通常0.1〜30μm程度、好ましくは0.5〜25μmである。そして、このガラス繊維の形態は、特に制限はなく、例えば、ロービング、ミルドファイバー、チョップドストランド等の各種のものが挙げられる。これらのガラス繊維は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
これらのガラス材には、樹脂との親和性を高めるために、アミノシラン系、エポキシシラン系、ビニルシラン系、メタクリルシラン系等のシラン系カップリング剤、クロム錯化合物あるいはホウ素化合物等で表面処理されたものであってもよい。このようなガラス材としては、例えば、市販のものとして旭ファイバーグラス株式会社製のMA−409C(平均繊維径13μm)又はTA−409C(平均繊維径23μm)等を好適に用いることができる。
これらの炭素繊維の表面は、樹脂との親和性を高めるために、エポキシ樹脂やウレタン樹脂などで表面処理が施されたものであってもよい。このような炭素繊維としては、例えば、市販のものとして東邦レーヨン株式会社製のベスファイト(平均繊維径7μm)等を好適に用いることができる。
なお、実施例及び比較例において、粘度平均分子量、前記一般式(1)で表される末端構造の末端変性率は、以下に示す方法により測定した。
(粘度平均分子量)
ウベローデ型粘度計を用いて、20℃におけるジクロロメタン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、[η]=1.23×10-5Mv0.83の式により、粘度平均分子量(Mv)を算出した。
(末端変性率)
日本電子株式会社製、機種名JNM−LA500を用い、1H−NMRを測定し、全末端構造に対する前記一般式(1)表される末端構造の末端変性率(%)を算出した。
また、耐候性については以下に示す方法により評価した。
(1)試験片の作製
実施例又は比較例で得られたポリカーボネート樹脂100質量部、酸化防止剤としてアデカスタブPEP−36〔商品名、株式会社ADEKA製〕を0.05質量部配合し、ベント付き40mmφの押出機によって樹脂温度280℃で造粒しペレットを得た。
得られたペレットを用い、30mm×25mm×2mmの平板を下記の成形条件で射出成形した。
<成形条件>
成形機:東芝機械株式会社製、機種名EC40N
成形機シリンダー温度:280℃
(2)耐候性評価
スガ試験機株式会社製、機種名サンシャインウェザーメーターS80HBBRを用い、ブラックパネル温度83℃、降雨サイクルなし、湿度50%RH、で480時間試験片を暴露した。
暴露後の試験片について、日立製分光光度計U−4100を使用しC2光源でYI値を測定した。
(1)ポリカーボネートオリゴマー合成工程
5.6質量%水酸化ナトリウム水溶液に、後に溶解するビスフェノールA(以下、BPAと略記することがある)に対して2000質量ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、これにビスフェノールA濃度が13.5質量%になるようにビスフェノールAを溶解し、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。このビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液40L/hrとジクロロメタン15L/hr及びホスゲン4.0kg/hrを、内径6mm、管長30mの管型反応器に連続的に通した。管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。
管型反応器を出た反応液は後退翼を備えた内容積40Lのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入し、これにさらにビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液2.8L/hr、25質量%水酸化ナトリウム水溶液0.07L/hr、水17L/hr及び1質量%トリエチルアミン水溶液を0.64L/hrを添加して反応を行なった。
槽型反応器から溢れる反応液を連続的に抜出し、静置することで水相を分離除去し、ジクロロメタン相を採取した。得られたポリカーボネートオリゴマーは濃度319g/L、クロロホーメート基濃度は0.73mol/Lであった。
邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた50L槽型反応器に、オリゴマー溶液15L、ジクロロメタン8.9L、安息香酸3−ヒドロキシフェニル152g、トリエチルアミン2.9mL、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH117.7gを水1.7Lに溶解した水溶液)を加え、20分間ポリカーボネートオリゴマーと安息香酸3−ヒドロキシフェニルの反応を行った。
この重合液に、BPAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH567gと後に溶解するBPAに対して2000質量ppmの亜二チオン酸ナトリウムを水8.3Lに溶解した水溶液にBPA1119gを溶解させたもの)を添加し40分間重合反応を実施した。
希釈のためジクロロメタン15Lを加えた後、ポリカーボネート樹脂を含む有機相と過剰のBPA及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。得られたポリカーボネート樹脂のジクロロメタン溶液を、その溶液に対し順次15容量%の0.03mol/L・NaOH水溶液と0.2mol/L塩酸で洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.5mS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。洗浄により得られたポリカーボネート樹脂のジクロロメタン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下、100℃で乾燥し、末端変性ポリカーボネート樹脂を得た。
得られた末端変性ポリカーボネート樹脂について、前記の方法で行った粘度平均分子量、末端変性率及び耐侯性評価を表1に示す。
実施例1において、安息香酸3−ヒドロキシフェニル152gに代えて、安息香酸3−ヒドロキシフェニル78g及びp−tert−ブチルフェノール(PTBP)50gを加えた以外は同様にして行った。
得られた末端変性ポリカーボネート樹脂について、前記の方法で行った粘度平均分子量、末端変性率及び耐侯性評価を表1に示す。
実施例1において、安息香酸3−ヒドロキシフェニル152gに代えて、安息香酸3−ヒドロキシフェニル58g及びp−tert−ブチルフェノール(PTBP)67gを加えた以外は同様にして行った。
得られた末端変性ポリカーボネート樹脂について、前記の方法で行った粘度平均分子量、末端変性率及び耐侯性評価を表1に示す。
実施例1において、安息香酸3−ヒドロキシフェニル152gに代えて、安息香酸3−ヒドロキシフェニル30g及びp−tert−ブチルフェノール(PTBP)85gを加えた以外は同様にして行った。
得られた末端変性ポリカーボネート樹脂について、前記の方法で行った粘度平均分子量、末端変性率及び耐侯性評価を表1に示す。
実施例1において、安息香酸3−ヒドロキシフェニル152gに代えて、安息香酸3−ヒドロキシフェニル15g及びp−tert−ブチルフェノール(PTBP)96gを加えた以外は同様にして行った。
得られた末端変性ポリカーボネート樹脂について、前記の方法で行った粘度平均分子量、末端変性率及び耐侯性評価を表1に示す。
実施例1において、安息香酸3−ヒドロキシフェニル152gに代えて、p−tert−ブチルフェノール(PTBP)107gを加えた以外は同様にして行った。
得られたポリカーボネート樹脂について、前記の方法で行った粘度平均分子量、末端変性率及び耐侯性評価を表1に示す。
実施例1において、安息香酸3−ヒドロキシフェニル152gに代えて、安息香酸4−ヒドロキシフェニル152gを加えた以外は同様にして行った。
得られた末端変性ポリカーボネート樹脂について、前記の方法で行った粘度平均分子量、末端変性率及び耐侯性評価を表1に示す。
実施例1得られた末端変性ポリカーボネート樹脂と比較例1得られたポリカーボネート樹脂を3:7(質量比)で混合し、前記の方法で行った耐侯性評価を表1に示す。
なお、実施例7において末端変性率は、実施例1得られた末端変性ポリカーボネート樹脂の末端変性率98%と上記質量比から算出した。
Claims (7)
- 安息香酸3−ヒドロキシフェニル又は安息香酸4−ヒドロキシフェニルにより末端停止された末端構造を有する末端変性ポリカーボネート樹脂。
- 全末端に対する前記末端構造の末端変性率が10%以上である、請求項1に記載の末端変性ポリカーボネート樹脂。
- 粘度平均分子量が、10,000〜50,000である、請求項1〜3のいずれかに記載の末端変性ポリカーボネート樹脂。
- 界面重合法によるポリカーボネート樹脂の製造方法であって、安息香酸3−ヒドロキシフェニル又は安息香酸4−ヒドロキシフェニルを用いて末端停止を行うことを特徴とする末端変性ポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の末端変性ポリカーボネート樹脂を含むポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに安息香酸3−ヒドロキシフェニル又は安息香酸4−ヒドロキシフェニルにより末端停止された末端構造を有さないポリカーボネート樹脂を含む、請求項6に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
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