JP5997101B2 - 接着剤組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、接着剤組成物に関する。
従来、ウレタンプレポリマーを含有する1液湿気硬化型ポリウレタン組成物が知られており、例えば接着剤組成物として用いられている。
このような1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法としては、例えば特許文献1に記載された方法が挙げられる。該方法によれば、「合成時間短縮の観点からウレタンプレポリマーの生成に金属触媒を用いても良好な粘度を保持することができ、更に、チクソ性に優れ、外観も良好な1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を得る」ことができるとされている(特許文献1の[0011])。
特開2007−224150号公報
ポリウレタン組成物は自動車、建築用接着剤として使用することができる。自動車のウィンドウガラス、例えば、昇降装置を用いて開閉するウィンドウガラスは、リンク機構のガイドチャンネルに組み付けられた樹脂ホルダーに接着剤で固定されている。またウィンドウガラスをボデーに接着剤で直接取り付ける場合もある。
いずれも接着性の観点からガラス等の被着体にプライマーが使用されることが多いが、近年、環境面、作業性、コスト等の観点からプライマーレス化の要請が高まっている。
そこで、本発明者らが、特許文献1に記載された方法により得られた組成物について、接着付与剤や硬化触媒を添加して、接着剤としての性能を検討したところ、ガラスとの接着性が不十分な場合があり、プライマーレス化が困難であることが分かった。
また、たとえ接着性が比較的良好であっても、貯蔵中に粘度が上昇してしまう場合や、硬化物を熱老化させるとせん断強度が低下する場合があった。
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、ガラスに対する接着性、貯蔵安定性、および、耐熱老化性に優れる接着剤組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ウレタンプレポリマーを含む混合物(ベース材)に、特定の接着付与剤および硬化触媒を特定量配合して得られた接着剤組成物については、ガラスに対する接着性が優れるとともに、貯蔵中の粘度上昇を抑制でき、さらに、熱老化させた後も高いせん断強度を維持できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の接着剤組成物を提供する。
1. 1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物を含有する液体成分(A)と充填剤を含有する粉体成分(B)とを混合し、前記液体成分(A)と前記粉体成分(B)とのペースト状混合物を得る混合工程と、前記混合工程の後、前記ペースト状混合物中の残存水分の少なくとも一部を除去する脱水工程と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(C)と、前記脱水工程後の前記ペースト状混合物とを混合し、前記ポリイソシアネート化合物(C)と前記ペースト状混合物中の前記ポリオール化合物とを反応させることによって、ウレタンプレポリマーを含む混合物を得る生成工程と、を備える方法により得られる前記混合物と、
1分子中に1個以上のイソシアネート基と1個以上のアルコキシシリル基とを有するイソシアネートシラン化合物(D)である接着付与剤と、
チタンアセチルアセトネート系化合物(E)である硬化触媒と、を含有し、
前記イソシアネートシラン化合物(D)の含有量が、前記混合物100質量部に対して0.1〜4.0質量部であり、
前記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)の含有量が、前記混合物100質量部に対して、0.001〜0.4質量部である、接着剤組成物。
2. 前記イソシアネートシラン化合物(D)は、脂肪族ポリイソシアネート化合物(F)と第二級アミノ基含有アルコキシシリル化合物(G)とを反応させることによって製造される、上記1に記載の接着剤組成物。
3. 前記脂肪族ポリイソシアネート化合物(F)が、脂肪族ポリイソシアネート(f1)及び/又はその変性体であり、前記変性体が、脂肪族ポリイソシアネート(f1)のアダクト体(f2)、脂肪族ポリイソシアネート(f1)のビウレット体(f3)及び脂肪族ポリイソシアネート(f1)のイソシアヌレート体(f4)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記2に記載の接着剤組成物。
4. 前記混合物は、更に、未反応の前記ポリオール化合物及び/又は未反応の前記ポリイソシアネート化合物(C)を含む上記1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
5. 前記生成工程において、更に金属触媒を使用する上記1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。
本発明によれば、ガラスに対する接着性、貯蔵安定性、および、耐熱老化性に優れる接着剤組成物を提供することができる。
[接着剤組成物]
本発明の接着剤組成物は、
1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物を含有する液体成分(A)と充填剤を含有する粉体成分(B)とを混合し、前記液体成分(A)と前記粉体成分(B)とのペースト状混合物を得る混合工程と、前記混合工程の後、前記ペースト状混合物中の残存水分の少なくとも一部を除去する脱水工程と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(C)と、前記脱水工程後の前記ペースト状混合物とを混合し、前記ポリイソシアネート化合物(C)と前記ペースト状混合物中の前記ポリオール化合物とを反応させることによって、ウレタンプレポリマーを含む混合物を得る生成工程と、を備える方法により得られる前記混合物と、
1分子中に1個以上のイソシアネート基と1個以上のアルコキシシリル基とを有するイソシアネートシラン化合物(D)である接着付与剤と、
チタンアセチルアセトネート系化合物(E)である硬化触媒と、を含有し、
前記イソシアネートシラン化合物(D)の含有量が、前記混合物100質量部に対して0.1〜4.0質量部であり、
前記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)の含有量が、前記混合物100質量部に対して、0.001〜0.4質量部である、接着剤組成物である。
本発明の接着剤組成物は上記混合物を使用(含有)することによって、生産工程が少なくコスト性に優れる。
また、イソシアネートシラン化合物(D)はアルコキシシリル基を有することからガラスとの接着性に優れ、イソシアネート基を有することから上記混合物と反応及び/又は相互作用することができ、硬化後の接着剤層の強度の向上に寄与することができる。特に、混合物がウレタンプレポリマー、場合によっては未反応のポリオール化合物及び/又は未反応のポリイソシアネート化合物(C)を含む場合、イソシアネートシラン化合物(D)は硬化時にこれらと反応して、硬化後の接着剤層の強度をより高くすることができる。
また、本発明の接着剤組成物はチタンアセチルアセトネート系化合物(E)を含有することによって、混合物とイソシアネートシラン化合物(D)との反応及び/又は相互作用、並びに、イソシアネートシラン化合物(D)とガラスとの接着性に寄与し、組成物の貯蔵安定性を優れたものにすることができる。
以下、上記混合物(「ベース材」ともいう)、上記イソシアネートシラン化合物(D)、および、上記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)について、順に説明する。
〔混合物(ベース材)〕
上記混合物(ベース材)については、まず製造に用いる各成分を説明した後に、その製造の各工程について説明する。
<液体成分(A)>
上記液体成分(A)は、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物を含有する成分であれば特に限定されず、該ポリオール化合物のみ含有するものであってもよく、該ポリオール化合物以外に、例えば、可塑剤等を含有するものであってもよい。
ここで、後述する混合工程の混合時の温度で液体となる観点、および、ウレタンプレポリマー生成時の粘度の観点から、液体成分(A)中のポリオール化合物の融点が80℃以下であるのが好ましく、60℃以下であるのがより好ましい。
上記ポリオール化合物は、ヒドロキシ基(OH基)を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されない。ヒドロキシ基は有機基に結合することができる。ポリオール化合物は、2〜3官能であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい炭化水素基が挙げられる。炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。炭化水素基は、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、不飽和結合を有してもよい。
ポリオール化合物の具体例としては、多価アルコール類;ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオールのような炭素−炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオールが挙げられる。ポリオール化合物は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
なかでも、ポリオール化合物は、液体成分(A)を含有する組成物の硬度、コスト、低温物性に優れる理由から、ポリエーテルポリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオールが挙げられる。
これらのうち、ポリプロピレングリコールであるのが、液体成分(A)を含有する組成物の硬度とせん断強度のバランスおよびコストのバランスに優れる理由から好ましい。
また、重量平均分子量が100〜10000程度であるポリオール化合物が好ましく、1000〜5000であるポリオール化合物がより好ましい。重量平均分子量がこの範囲であると、後述するポリイソシアネート化合物(C)との反応によって生成するウレタンプレポリマーの物性(例えば、硬度、破断強度、破断伸び)および粘度が良好となる。
液体成分(A)に含有される可塑剤としては、具体的には、例えば、アジピン酸ジイソノニル(DINA);フタル酸ジイソノニル(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジイソノニル(DINP)を用いるのが、コストや相溶性に優れる理由から好ましい。
なお、上記液体成分(A)が上記可塑剤を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、上記ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物(C)との合計100質量部に対して、20〜80質量部が好ましく、30〜70質量部がより好ましい。
<粉体成分(B)>
上記粉体成分(B)は、充填剤を含有する成分であれば特に限定されず、該充填剤のみ含有するものであってもよい。
上記充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカのようなシリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、カーボンブラック、重質炭酸カルシウムであるのが、組成物の粘度やチクソ性を調整しやすくなる理由から好ましく、具体的には、カーボンブラックを用いた場合には物性(例えば、硬度、伸び等)に優れ、重質炭酸カルシウムを用いた場合には深部硬化性に優れる。
また、カーボンブラックはペレットカーボンブラックであるのが、作業性が良好となるのみならず、後述するように、上記液体成分(A)との混合工程において、カーボンブラックのみならず、上記液体成分(A)の脱水がより促進する理由から好ましい。
上記粉体成分(B)の配合量は、特に限定されないが、上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物(C)との合計100質量部に対して、50〜150質量部が好ましく、70〜130質量部がより好ましい。
粉体成分(B)は、該充填剤以外に、例えば、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、(D)以外の接着付与剤、粘着付与剤、帯電防止剤のような添加剤を含有するものであってもよい。各種添加剤としては例えば従来公知のものが挙げられる。
<ポリイソシアネート化合物(C)>
上記ポリイソシアネート化合物(C)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物であれば特に限定されない。イソシアネート基は有機基に結合することができる。有機基は上記と同義である。
ポリイソシアネート化合物(C)としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート;これらの変性体が挙げられる。変性体としては、例えば、カルボジイミド変性体、イソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アダクト変性体が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;これらの変性体(例えば、ボジイミド変性体、イソシアヌレート変性体、アダクト変性体、ビウレット変性体)が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、上記ポリイソシアネート化合物(C)としては、生成するウレタンプレポリマーが、後述するイソシアネートシラン化合物(D)と適度な相溶性となり、互いに共存しやすくなることで、接着性がより良好になるという理由から、芳香族ポリイソシアネート及び/又はその変性体であるのが好ましく、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)であるのがより好ましい。
ウレタンプレポリマーがイソシアネートシラン化合物(D)と混ざりすぎることなく適度な相溶性を有する場合、イソシアネートシラン化合物(D)はウレタンプレポリマーと例えば貯蔵中に過剰に反応することなく、優れた貯蔵安定性を維持することができ、接着付与剤としての機能を発揮しやすくなると考えられる。混合物が更に未反応のポリオール化合物及び/又は未反応のポリイソシアネート化合物(C)とを含む場合も同様である。これらは、イソシアネートシラン化合物(D)よりもウレタンプレポリマーに対する親和性が高く、上記の場合でも、イソシアネートシラン化合物(D)と混ざりすぎることなく適度な相溶性を有し、イソシアネートシラン化合物(D)の接着付与剤としての機能、貯蔵安定性を阻害しないと考えられる。
芳香族ポリイソシアネートにおいて、イソシアネート基は芳香族炭化水素に結合すればよい。
ポリイソシアネート化合物(C)の配合量は、特に限定されないが、例えば、上記ポリイソシアネート化合物(C)のイソシアネート基(NCO)と上記ポリオール化合物のヒドロキシ基(OH)との当量比(NCO/OH)が、例えば、1.1〜2.5となる量が好ましい。
<混合工程>
上記混合工程は、上記液体成分(A)と上記粉体成分(B)とを混合し、上記液体成分(A)と上記粉体成分(B)とのペースト状混合物を得る工程である。
ここで、上記液体成分(A)と上記粉体成分(B)とを混合する方法は、従来公知の混合方法であれば特に限定されず、具体的には、ロール、ニーダー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、横型ミキサー(例えば、レーディゲミキサー等)、縦型ミキサー(例えば、プラネタリーミキサー等)、万能かくはん機等を用いて混合する方法が好適に例示される。
また、混合時の温度、時間は、上記液体成分(A)および上記粉体成分(B)の種類により異なるため特に限定されないが、20〜110℃程度、30分〜2時間であるのが好ましい。なお、上記液体成分(A)は混合工程の混合時の温度で液体となる必要があるから、例えば、混合時の温度が100℃である場合は、その温度より低い融点のポリオール化合物を含有する液体成分(A)を用いる必要がある。
本発明においては、このような混合工程を具備することにより、上記液体成分(A)および上記粉体成分(B)中の水分の一部を除去することができる。
これは、上記液体成分(A)と上記粉体成分(B)との混合時に、トルエン等の溶剤が存在しないため上記粉体成分(B)が潰れやすく、その際に生じる圧力や発熱によって水分を除去することができると考えられる。
また、本発明においては、上記粉体成分(B)としてペレットカーボンブラックを用いた場合、上記混合工程は、上記液体成分(A)とペレットカーボンブラックとを、ペレットカーボンブラックを粉砕しながら混合するのが好ましい。
これは、ペレットカーボンブラックの粉砕により、上述した圧力や発熱が増大し、上記液体成分(A)とペレットカーボンブラックの脱水がより促進するためである。
ここで、粉砕しながら混合する方法としては、上記で例示した混合方法のうち、混合時にペレットカーボンブラックに圧力が加わった状態で混合することができる横型ミキサー(例えば、レーディゲミキサー等)等を用いて混合する方法が好適に例示される。
<脱水工程>
上記脱水工程は、上記ペースト状混合物中の残存水分の少なくとも一部を除去する工程である。
ここで、残存水分を除去する方法としては、具体的には、例えば、30〜60℃下、真空(1.2kPa以下、好ましくは0.6〜1.2kPa)下で30分間程度乾燥する方法などが挙げられる。
<生成工程>
上記生成工程は、上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記脱水工程後の上記ペースト状混合物とを混合し、上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記ペースト状混合物中の上記ポリオール化合物とを反応させることによって、ウレタンプレポリマーを含む混合物(ベース材)を得る工程である。
生成工程において、ポリイソシアネート化合物(C)とポリオール化合物とが反応して、ウレタンプレポリマーとなり、ウレタンプレポリマーを含む混合物が得られる。
上記混合物は、上記ウレタンプレポリマーのほか、少なくとも、上記ペースト状混合物に由来する上記粉体(B)を含む。
また、混合物は、ガラスとの接着性、耐熱老化性により優れるという観点から、さらに、未反応のポリオール化合物及び/又は未反応のポリイソシアネート化合物(C)とを含むのが好ましい。
ここで、上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記ペースト状混合物とを混合する方法は、上記混合工程における混合方法と同様の方法が好適に例示される。
また、混合時の温度、雰囲気は、上記ペースト状混合物中のポリオール化合物や上記ポリイソシアネート化合物(C)の種類により異なるため特に限定されないが、ウレタンプレポリマーを生成する観点から、上記ポリイソシアネート化合物(C)の融点以上の温度で混合されるのが好ましく、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下または減圧下で混合されるのが好ましい。
本発明においては、このような生成工程を具備することにより、ウレタンプレポリマーのプレポリマー化に伴う増粘によって上記ペースト状混合物中の粉体成分(B)が潰れ、分散性が良好となり、組成物のチクソ性が良好となる。
また、本発明においては、上記生成工程は、上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記ペースト状混合物とを、この順に添加して混合するのが以下に示す理由から好ましい。
即ち、この順で添加することにより、ポリイソシアネート化合物(C)中にポリオール化合物が添加されることになるため、安定したウレタンプレポリマーの反応が起こり、分子量が均一なウレタンプレポリマーが生成する。
一方、本発明においては、上記生成工程は、上記ペースト状混合物と上記ポリイソシアネート化合物(C)とを、この順に添加して混合するのが以下に示す理由から好ましい。
即ち、この順で添加することにより、例えば、上記ペースト状混合物を得るために上記混合工程で使用した横型ミキサー内に、上記ポリイソシアネート化合物(C)をそのまま添加し、上記生成工程を施すことができるため、作業性が良好になる。
本発明においては、上記生成工程において、上記ポリイソシアネート化合物(C)と、上記ペースト状混合物とを混合した後に、更に、上記ウレタンプレポリマーの生成反応を促進する金属触媒を使用するのが好ましい。金属触媒を使用することでポリオール化合物とポリイソシアネート化合物(C)の反応を促進し生産時間を短縮できる。
これにより、生成するウレタンプレポリマーの粘度を良好に維持できる。これは、粉体成分(B)の存在下に金属触媒が添加されることにより、ウレタンプレポリマーの急激な生成反応が起きないため、粘度を良好に維持できるためと考えられる。
このような金属触媒としては、有機金属系触媒が挙げられ、具体的には、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ラウレート(DOTL)、ジオクチル錫ジラウレート、ビスマス系触媒(例えば、日東化成社製の無機ビスマス(ネオスタンU−600、U−660)等)が挙げられる。
上記金属触媒を用いる場合、その配合量は、上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物(C)との合計100質量部に対して、0.001〜0.03質量部が好ましく、0.002〜0.02質量部がより好ましい。
〔イソシアネートシラン化合物(D)(接着付与剤)〕
上記イソシアネートシラン化合物(D)としては、1分子中に1個以上のイソシアネート基と1個以上のアルコキシシリル基とを有する化合物であれば特に限定されない。
イソシアネートシラン化合物(D)が1分子中に有するイソシアネート基は、ガラスに対する接着性、貯蔵安定性、耐熱老化性により優れ、(機械的)物性に優れるという観点から、2個以上であるのが好ましく、2〜3個であるのがより好ましい。イソシアネートシラン化合物(D)が1分子中にイソシアネート基を2個以上有する場合、混合物に含まれる、ウレタンプレポリマー、場合によっては未反応のポリオール化合物及び/又は未反応のポリイソシアネート化合物(C)と硬化時に反応し、接着剤層の強度(例えばせん断強度)を高くすることができるからである。
イソシアネートシラン化合物(D)は、例えば、ポリイソシアネート化合物(H)と第二級アミノ基含有アルコキシシリル化合物(G)とを反応させることによって製造することができる。
イソシアネートシラン化合物(D)を製造する際に使用されるポリイソシアネート化合物(H)は、ポリイソシアネート化合物(C)と同義である。
ポリイソシアネート化合物(H)が有するイソシアネート基は、1分子中、2個以上であるのが好ましく、3〜6個であるのが好ましく、3〜5個であるのがより好ましい。
イソシアネートシラン化合物(D)は、ガラスに対する接着性、貯蔵安定性、耐熱老化性により優れるという観点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物(F)と第二級アミノ基含有アルコキシシリル化合物(G)とを反応させることによって製造されるイソシアネートシラン化合物(d1)であるのが好ましい。
脂肪族ポリイソシアネートにおいて、イソシアネート基は脂肪族炭化水素に結合すればよい。
イソシアネートシラン化合物(D)を製造する際に使用される脂肪族ポリイソシアネート化合物(F)は、ガラスに対する接着性、貯蔵安定性、耐熱老化性により優れるという観点から、例えば、脂肪族ポリイソシアネート(f1)及び/又はその変性体が好ましい。変性体としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート(f1)のアダクト体(f2)[脂肪族ポリイソシアネート(f1)とトリオールとの反応生成物]、脂肪族ポリイソシアネート(f1)のビウレット体(f3)及び脂肪族ポリイソシアネート(f1)のイソシアヌレート体(f4)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート(f1)としては、例えば、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
ここで、上記トリオールとしては、1分子中に3個のヒドロキシ基を有する化合物であれば特に限定されない。ヒドロキシ基は有機基に結合することができる。有機基は上記と同義である。トリオールとしては、例えば、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−プロパントリオール、1,2,3−ベンゼントリオール、1,2,4−ベンゼントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート化合物(F)としては、接着性の効果がより優れるという理由から、HDIのアダクト体(例えば、HDIとトリメチロールプロパンとの反応生成物)、HDIのビウレット体、および、HDIのイソシアヌレート体からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
イソシアネートシラン化合物(D)を製造する際に使用される第二級アミノ基含有アルコキシシリル化合物(G)は、1分子中に第二級アミノ基(−NH−)と、アルコキシシリル基とを有する化合物であれば特に制限されない。第二級アミノ基とアルコキシシリル基とは有機基を介して結合することができる。有機基は上記と同義である。
第二級アミノ基(−NH−)は、例えばR−NH−*と表すことができる。*は上記有機基との結合を表し、Rは炭化水素基を表す。炭化水素基は上記と同義である。炭化水素基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基のような炭素数が1〜8の分岐してもよいアルキル基;ベンジル基、フェネチル基のような炭素数が7〜18の分岐してもよいアラルキル基;フェニル基、メチルフェニル基(トルイル基)、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基のような炭素数が6以上18以下のアリール基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を有するアリール基が挙げられる。
アルコキシシリル基は、ケイ素原子にアルコキシ基が1個以上3個以下結合している基であれば特に制限されない。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が挙げられる。ケイ素原子に結合しているアルコキシ基が1または2個である場合、ケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基としては例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基が挙げられる。アルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジメトキシエチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジエトキシエチルシリル基が挙げられる。
第二級アミノ基含有アルコキシシリル化合物(G)は、ガラス接着性、貯蔵安定性、耐熱老化性により優れるという観点から、下記式(1)で表されるアルコキシシランであるのが好ましい。
式中、R1は炭化水素基、R2は炭化水素基であり、OR4はアルコキシ基であり、R3はアルキル基であり、nは1〜3の整数である。炭化水素基、アルコキシ基、アルキル基は上記と同義である。R2は2価であればよい。
第二級アミノ基含有アルコキシシリル化合物(G)としては、例えば、N,N−ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリエトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリプロポキシシリル)プロピル]アミンのようなアルコキシシリル基を2個有する化合物;3−(N−ブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−プロピル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシランのようなアルコキシシリル基を1つ有する化合物が挙げられる。なかでも、耐水接着性により優れるという理由から、アルコキシシリル基を1つ有する第二級アミンが好ましく、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−ブチル)アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
第二級アミノ基含有アルコキシシリル化合物(G)は、貯蔵安定性を維持するために、アミノ基(−NH2)を有さないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
第二級アミノ基含有アルコキシシリル化合物(G)は、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
第二級アミノ基含有アルコキシシリル化合物(G)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
イソシアネートシラン化合物(D)の製造方法としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(H)と第二級アミノ基含有アルコキシシリル化合物(G)と、必要に応じて例えば、フタル酸ジイソノニルのような可塑剤と、N2気流中で撹拌しながら、40〜60℃の条件下で反応させる方法が挙げられる。このとき、例えば、イソシアネート基/第二級アミノ基が2.0以上となる量でポリイソシアネート化合物(H)と第二級アミノ基含有アルコキシシリル化合物(G)とを反応させるのが好ましく、2.0以上4.0以下であるのがより好ましい。
本発明の接着剤組成物において、上記イソシアネートシラン化合物(D)の含有量は、上記混合物100質量部に対して0.1〜4.0質量部である。この含有量が少なすぎると接着性が劣り、多すぎると耐熱老化性が劣るが、上記範囲内である本発明の接着剤組成物は、接着性および耐熱老化性が優れる。
上記イソシアネートシラン化合物(D)の含有量は、貯蔵安定性、接着性、耐熱老化性により優れるという理由から、上記混合物100質量部に対して、0.5〜3.0質量部が好ましく、0.8〜2.5質量部がより好ましく、0.8〜1.0質量部がさらに好ましい。
〔チタンアセチルアセトネート系化合物(E)(硬化触媒)〕
上記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)は、金属チタン(Ti)に配位子であるアセチルアセトネートが配位した金属キレートであり、具体的には、例えば、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)[(CO)Ti(C]、チタンテトラアセチルアセトナート[Ti(C]等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ここで、接着剤組成物に含有される硬化触媒として、例えば、ビスマス(Bi)系やジルコニウム(Zr)系の触媒を用いた場合、接着性が劣る。また、チタン(Ti)系であってもアセチルアセトネート系以外のキレート等の場合にも、やはり接着性が劣る。なおスズ(Sn)系を用いた場合には、接着性は比較的良好であるが、貯蔵安定性が不十分となる。
しかし、本発明の接着剤組成物は、硬化触媒として上記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)を含有することにより、接着性及び貯蔵安定性が優れる。
本発明の接着剤組成物において、上記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)の含有量は、上記混合物100質量部に対して0.001〜0.4質量部である。この含有量が少なすぎると接着性が劣り、多すぎると貯蔵安定性が劣るが、上記範囲内である本発明の接着剤組成物は、接着性および貯蔵安定性が優れる。
上記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)の含有量は、貯蔵安定性、接着性、耐熱老化性により優れるという理由から、上記混合物100質量部に対して、0.005〜0.2質量部が好ましく、0.007〜0.1質量部がより好ましい。
チタンアセチルアセトネート系化合物(E)の含有量は、貯蔵安定性、接着性、耐熱老化性により優れるという理由から、イソシアネートシラン化合物(D)1モルに対して、0.003〜30モルが好ましく、0.01〜1モルがより好ましい。
本発明の接着剤組成物を得る方法は、特に限定されず、例えば、上記混合物(ベース材)、上記イソシアネートシラン化合物(D)、および、上記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)を混合し、本発明の接着剤組成物を得る方法が挙げられる。
ここで、上記混合方法として、上記混合工程における混合方法と同様の方法が好適に例示される。
また、混合時の温度、雰囲気は、特に限定されないが、上記イソシアネートシラン化合物(D)の融点以上の温度で混合されるのが好ましく、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下または減圧下で混合されるのが好ましい。
以上説明したように、本発明の接着剤組成物は、接着性、貯蔵安定性、および、耐熱老化性に優れるから、例えば自動車用、建築用などの接着剤として好適である。
具体的には例えば、ガラスと、自動車のウィンドウガラスを昇降させるために使用されるホルダー(例えば樹脂ホルダー)、自動車ボデー(例えば塗装鋼板)との接着に使用することができる。
本発明の接着剤組成物は、ガラスに対する接着性が良好であるから、プライマーレスでガラスに使用することができる。
本発明の接着剤組成物のガラスへの適用方法は特に制限されない。
本発明の接着剤組成物は、例えば、0〜40℃、5〜100RH%の条件下において硬化することができる。
以下、実施例を用いて、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
<混合物(ベース材)の製造>
(混合工程)
まず、レーディゲミキサー(マツボー社製)に、ポリオール化合物1および2ならびに可塑剤を液体成分(A)として添加し、その後、カーボンブラックおよび炭酸カルシウムを粉体成分(B)として添加し、110℃、2時間かくはんしてペースト状混合物を製造した。なお、各成分の配合量(単位:質量部)は、下記第1表に示すとおりである(以下同様)。
(脱水工程)
次に、ペースト状混合物が入ったレーディゲミキサー内を30〜60℃、1.2kPa以下にして、30分間乾燥した。
(生成工程)
次に、プラネタリーミキサーに、MDIをポリイソシアネート化合物(C)として添加し、更に上記乾燥後のペースト状混合物を添加した後に、金属触媒を添加して、60℃、1時間かくはんして、MDIと該ペースト状混合物中のポリオール化合物1および2との反応によりウレタンプレポリマーを生成させ、該ウレタンプレポリマーを含む混合物(ベース材)を得た。
上記第1表に示す各成分は、以下のとおりである。
・ポリオール化合物1:2官能ポリプロピレングリコール(EXCENOL 2020、旭硝子社製)
・ポリオール化合物2:3官能ポリプロピレングリコール(EXCENOL 5030、旭硝子社製)
・可塑剤:フタル酸ジイソノニル(ジェイ・プラス社製)
・カーボンブラック:カーボンブラック1(ニテロン ♯200、新日化カーボン社製)とカーボンブラック2(ニテロン ♯300、新日化カーボン社製)との混合物(質量比=75/25)
・炭酸カルシウム:重質炭酸カルシウム(スーパーS、丸尾カルシウム社製)
・MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート(コスモネートPH、三井化学社製)
・金属触媒:ビスマス系触媒(ネオスタンU−600、日東化成社製)
<接着剤組成物の製造>
次に、上記ベース材を得たプラネタリーミキサーに、下記第2表に示す硬化触媒および接着付与剤を同表に示す配合量(単位:質量部)で添加し、かくはんして、接着剤組成物を得た。表中、数値が2段になっているものは、上段が質量、下段がモル数である。
次に、上記とおり製造された接着剤組成物を用いて、以下の評価を行った。結果を下記第2表に示す。
<貯蔵安定性>
各接着剤組成物を製造した後、これを容器に入れ、窒素ガス置換して容器を密封し、当該容器を40℃で、7日間貯蔵した後のSOD粘度(Pa・s)を測定した。SOD粘度は、JASO M338−89に準拠して、圧力粘度計(ASTM D 1092)を用いて測定した。実用上の観点から、貯蔵後のSOD粘度が100Pa・s未満であれば、貯蔵安定性に優れるものとして評価できる。
<ガラス接着性>
被着材としてガラスを2枚準備し、各接着剤組成物を1枚のガラス上に直径10mm、長さ10cmとなるように塗布し、もう1枚のガラスを接着剤組成物の上に重ねて当該接着剤組成物の厚さが3mmとなるまで圧着し、その後20℃、60%RH(±5%)の雰囲気下で7日間放置して、さらに40℃温水に7日間または30日間浸漬し、取り出して水分を拭き取り、試験片を得た。得られた試験片を用いて、ナイフカットによる手剥離試験を実施した。
手剥離試験の結果、7日間の浸漬後の当該試験で界面剥離部分が確認されたものを接着性に劣るものとして「×」と評価し、7日間の浸漬後の当該試験で組成物の全体が凝集破壊して界面剥離せず、30日間の浸漬後の当該試験で界面剥離したものを接着性に優れるものとして「○」と評価し、30日間の浸漬後の当該試験で組成物の全体が凝集破壊して界面剥離しなかったものを接着性に特に優れるものとして「◎」と評価した。
<耐熱老化性>
被着材としてガラス(25×100×0.8mm)を2枚用い、上記各接着剤組成物を室温下で1枚のガラスに塗布し、接合部の長さを10mmとし、接合部の接着剤組成物の厚さを3mmとして、もう1枚のガラスをこれに重ね合わせて両被着体を圧締し、接着構造物を形成して10分後に初期強度を測定した。この試験片を、80℃で、14日間放置して、熱老化させた。そして、熱老化させた試験片について、JIS K6850−1999に準じて、引張速度5mm/分でせん断強度(単位:MPa)を測定した。実用上の観点から、熱老化後のせん断強度が2MPa以上であれば、耐熱老化性に優れるものとして評価でき、2.5MPa以上である場合耐熱老化性により優れる。
上記第2表に示す硬化触媒は、以下のとおりである。
・Sn系:ジオクチル錫ラウレート(ネオスタンU−810、日東化成社製)
・Bi系:無機ビスマス(ネオスタンU−600、日東化成社製)
・Zr系:ジルコニウムアセチルアセトンキレート(オルガチックスZC−700、マツモトファインケミカル社製)
・Ti系(キレート):チタンアセト酢酸エチルキレート(オルガチックスTC−750、マツモトファインケミカル社製)
・Ti系(アセチルアセトネート):チタンテトラアセチルアセトネート(オルガチックスTC−401、マツモトファインケミカル社製)、分子量444。
また、上記第2表に示す接着付与剤は、以下のとおりである。
・NCO化合物:HDIビウレット体(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、タケネートD−165N、三井化学社製、下記式(2)で表される。分子量476(=168*3-28)。以下同様。)

・NCO−Si(OR)n化合物1:容器にHDIビウレット体32g、およびフタル酸ジイソノニル(商品名:DINP、新日本理科社製。以下、DINPと略す。)32gを入れ、N2気流中で撹拌しながら、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:Y−9669、日本ユニカー社製。分子量255。以下、Y−9669と略す。)16g(NCO/NHの値が3/1)を滴下しながら40℃で4時間反応させることでイソシアネートシラン化合物を得た。得られたイソシアネートシラン化合物をNCO−Si(OR)n化合物1とする。NCO−Si(OR)n化合物1は、1分子中にイソシアネート基を2個及びアルコキシシリル基を1個、平均で有し、その分子量は731(=476+255)である。表中の数値はNCO−Si(OR)n化合物1の正味の量である。
・NCO−Si(OR)n化合物2:HDIビウレット体32gをトリレンジイソシアネート(商品名T−80、三井化学社製。分子量174)44gに、NCO/NHの値を2/1に代えた他は、NCO−Si(OR)n化合物1と同様に反応を行い、NCO−Si(OR)n化合物2を得た。表中の数値はNCO−Si(OR)n化合物2の正味の量である。NCO−Si(OR)n化合物2の分子量は429(=174+255)である。
・Si(OR)n化合物:3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:Y−9669、日本ユニカー社製。下記式(3)で表される。)
上記第2表に示す結果から明らかなように、実施例1〜14は、いずれも貯蔵後の粘度が100Pa・s未満であり、貯蔵安定性に優れていた。また、接着性の結果は、いずれも「◎」又は「○」であり良好であった。さらに、熱老化後のせん断強度が、いずれも2MPa以上であり、耐熱老化性にも優れていた。
これに対して、比較例1〜13は、貯蔵安定性、接着性および耐熱老化性のうち、いずれかの結果が劣っていた。
具体的には、硬化触媒および接着付与剤のいずれか一方または両方を含まない比較例1〜3は、接着性が劣っていた。
また、チタンアセチルアセトネート系化合物(E)以外の硬化触媒を用いた比較例4は、貯蔵安定性に劣り、同様の比較例5〜7は接着性が劣っていた。
また、イソシアネートシラン化合物(D)以外の接着付与剤を用いた比較例8は接着性が劣っており、比較例9は耐熱老化性が劣った。
また、チタンアセチルアセトネート系化合物(E)である硬化触媒の量が少なすぎる比較例10は接着性が劣り、多すぎる比較例11は貯蔵安定性が劣っていた。
また、イソシアネートシラン化合物(D)である接着付与剤の量が少なすぎる比較例12は接着性が劣り、多すぎる比較例13は耐熱老化性に劣っていた。

Claims (5)

  1. 1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物を含有する液体成分(A)と充填剤を含有する粉体成分(B)とを混合し、前記液体成分(A)と前記粉体成分(B)とのペースト状混合物を得る混合工程と、前記混合工程の後、前記ペースト状混合物中の残存水分の少なくとも一部を除去する脱水工程と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(C)と、前記脱水工程後の前記ペースト状混合物とを混合し、前記ポリイソシアネート化合物(C)と前記ペースト状混合物中の前記ポリオール化合物とを反応させることによって、ウレタンプレポリマーを含む混合物を得る生成工程と、を備える製造方法により前記混合物を製造し、
    前記混合物と、
    1分子中に1個以上のイソシアネート基と1個以上のアルコキシシリル基とを有するイソシアネートシラン化合物(D)である接着付与剤と、
    チタンアセチルアセトネート系化合物(E)である硬化触媒と、を混合し
    前記イソシアネートシラン化合物(D)の含有量が、前記混合物100質量部に対して0.1〜4.0質量部であり、
    前記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)の含有量が、前記混合物100質量部に対して、0.001〜0.4質量部である、接着剤組成物を製造する、接着剤組成物の製造方法
  2. 前記イソシアネートシラン化合物(D)は、脂肪族ポリイソシアネート化合物(F)と第二級アミノ基含有アルコキシシリル化合物(G)とを反応させることによって製造される、請求項1に記載の接着剤組成物の製造方法
  3. 前記脂肪族ポリイソシアネート化合物(F)が、脂肪族ポリイソシアネート(f1)及び/又はその変性体であり、前記変性体が脂肪族ポリイソシアネート(f1)のアダクト体(f2)、脂肪族ポリイソシアネート(f1)のビウレット体(f3)及び脂肪族ポリイソシアネート(f1)のイソシアヌレート体(f4)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載の接着剤組成物の製造方法
  4. 前記混合物は、更に、未反応の前記ポリオール化合物及び/又は未反応の前記ポリイソシアネート化合物(C)を含む請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物の製造方法
  5. 前記生成工程において、更に金属触媒を使用する請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物の製造方法
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