JP5994593B2 - 分光光度計 - Google Patents
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Description
また、分光光度計の検出器としては、測定する光の波長領域に応じて、光電子増倍管(PMT)や半導体検出器などが用いられるが、いずれの検出器もその検出感度は波長によって異なる。従って、この場合もS/N比が波長により変化することになる。
a) 少なくとも前記光源部、前記波長変更部、前記検出器を含む測定系を構成する機器の特性に基づき、又は、事前に行われたベースライン測定の結果に基づき、波長毎に設定された、ベースライン測定で得られるベースライン強度が所定の範囲内となるような前記検出器からの測定信号の積算回数又は積算時間である積算条件情報を記憶させた記憶部と、
b) 前記積算条件情報に基づき、前記波長変更部に波長変化速度信号を送る分光測定制御部と
を備えることを特徴とする。
前記波長変化速度信号は、前記単色光の波長を連続的に変化させる信号、あるいは前記単色光の波長をステップ状に(非連続的に)変化させる信号のいずれであってもよい。
例えば、光路上に存在する水蒸気等による光吸収や、測定系を構成する光学素子等による光吸収などの中には、予めその分光測定結果に対する影響の傾向を把握しておくことができるものがある。そのような場合、予め各波長におけるばらつきの程度を測定し、それに基づいてS/N比を一定にするような積算回数や積算時間を定めて記憶部に記憶しておくことにより、これらの変動要因の影響を排除した信頼度の高い分光測定を行うことができるようになる。
また、光源の波長−強度特性や、分光器の分光特性、検出器の波長−感度特性など、測定系を構成する機器に関する既知の波長依存性の情報に基づいて積算条件情報を設定しておくことにより、これらの波長依存性に起因するS/N比の変動を補償することもできる。
さらに、複数の測定系を取り替えて使用する場合には、各測定系に対応した積算条件情報をそれぞれ記憶部に保存しておくことにより、使用する測定系に応じた積算条件情報を選択するだけで簡便に信頼度の高い分光スペクトルを得ることができる。
そのほか、特定の波長範囲において積算回数又は積算時間を増加させた積算条件情報を記憶部に記憶させておくことにより、当該波長範囲においてS/N比を高めたスペクトルを取得することもできる。
このように、本発明に係る分光光度計では、様々な測定目的に対応した複数の積算条件情報を記憶部に記憶させておき、それらを適宜に選択することが可能であるため、種々の目的に合致した分光測定を簡便に行うことができる。
c) 前記分光測定制御部による制御の下で行ったベースライン測定で得られた検出器からの測定信号強度に基づいて、ベースラインのS/N比が所定の条件を満たすように前記積算条件情報を変更し、補正積算条件情報として前記記憶部に保存する積算条件情報変更部
を備え、前記記憶部に補正積算条件情報が保存されると、前記分光測定制御部は該補正積算条件情報に基づいて前記波長変更部に波長変化速度信号を送ることが望ましい。
例えば、積算条件情報変更部は分光測定制御部による制御の下で行ったベースライン測定で得られた検出器からの測定信号強度について、測定波長を含む所定の微小波長範囲の測定値や積算値のばらつき(例えば、数学的な標本分散値や標準偏差など)がすべて所定値以下となるように積算条件情報を調整する。この所定値は、予め設定しておいてもよく、その都度使用者に設定させるようにしても良い。具体的には、ある測定波長に関する積算値の分散が所定値を超える場合に、当該測定波長における積算回数又は積算時間を増加させることによって、S/N比の時間変動を平均化して小さくする。これにより、測定系内にS/N比を時間的に変動させる要因が存在する場合でも、その影響を低減して全波長領域において信頼度の高い分光スペクトルを得ることができる。
さらに、積算条件情報変更部を備える態様の分光光度計を用いると、測定系内にS/N比を時間的に変動させる要因が存在する場合でも、その影響を低減して全波長領域において信頼度の高い分光スペクトルを得ることができる。
図1は本実施例に係る分光光度計の要部構成図である。本実施例の分光光度計は、試料3による波長ごとの吸光度を測定してスペクトルを得る装置であり、光源1、分光器2、検出器4、増幅器5、A/D変換器6、及び所定のプログラムを搭載したコンピュータ30と、コンピュータ30に接続された表示部40、入力部50により構成される。コンピュータ30は、分光測定制御部31、データ処理部32、記憶部33、及び積算条件情報変更部34を有している。
図1において、例えば重水素ランプ等の光源1から発した光は、入口スリット21、回折格子22、出口スリット23、及びステッピングモータ24を含む分光器2に導入され、所定の波長の単色光が取り出される。ステッピングモータ24は、分光測定制御部31から送信される波長変化速度信号を受けて動作し、回折格子22の角度を変化させる。これにより、一定の幅に固定された出口スリット23を通過して取り出される単色光の波長が変化する。出口スリット23から取り出された単色光は試料3に照射される。
はじめに、分光測定制御部31が表示部40に、使用者に分析モードを選択させる画面を表示する。分析モードは標準モードとベースライン一定分散モードの2つに大別される。標準モードでは、予め記憶部33に記憶されている、波長ごとに設定された、検出器4からの測定信号の積算時間である積算条件情報に基づいて試料3の吸光度の測定を行う。一方、ベースライン一定分散モードでは、積算条件情報に基づき、試料3による吸収等がない状態でベースライン測定を行い、その結果に基づいて積算条件情報変更部34に積算条件情報を変更させるとともに補正積算条件情報として記憶部33に保存させ、補正積算条件情報に基づいて試料3の吸光度の測定を行う。それぞれの測定モードについて、以下に説明する。
これに対し、本実施例では、出口スリット23の幅が一定に固定された分光器2を使用し、積算条件情報に基づいて測定波長毎に回折格子22を停止させている時間を変更し、検出器4からの測定信号を積算する。そのため、全波長領域で一律に高い波長分解能で測定を行うことができる。こうして得た測定信号は、増幅器5、A/D変換器6を経てデジタル化されてデータ処理部32に蓄積される。
このような場合に、ベースライン測定の結果に基づいて、測定信号強度の積算値が一定になるように制御すること自体、現象の揺らぎによって困難となってくる。また、波長の全範囲に渡って積算時間を十分長くとることで、揺らぎの影響を押さえ込むことはできるが、それでは測定時間が大幅に長くなってしまうこととなる。
ベースライン一定分散モードは、このような測定系においてS/N比の時間変動を低減するために好適に用いることができる。
ベースライン一定分散モードでは、はじめに、予め記憶部33に記憶された積算条件情報に基づいて、所定の波長範囲に亘り、試料をセットしない状態で測定を実行し(ステップS1)、ベースラインを取得する(ステップS2)。
各測定波長について積算値の分散の計算を終了すると、積算条件情報変更部34は、各測定波長における積算値の分散が使用者により入力された所定値k以下であるかを判定する(ステップS4)。
図6(a)と図6(b)の比較から分かるように、本実施例の分光光度計においてベースライン一定分散モードを実行することにより、従来の移動平均処理に比べて波長分解能を犠牲にすることなくS/N比を高めることができる。
例えば、上記実施例のベースライン一定分散モードにおいて、積算条件情報変更部が使用者に特定の波長範囲を設定させ、設定された波長範囲についてのみ積算値の分散を計算するようにしてもよい。例えば、試料による光吸収等が生じる波長範囲が予め分かっている場合には、この波長範囲についてのみ上述した各ステップを行うことで、目的とする波長範囲において効率よくS/N比を高めることができる。また、特定の波長範囲について他の波長範囲よりも所定値を低く設定し、その波長領域において特にS/N比を高めるようにしてもよい。
また、上記実施例ではS/N比の向上を目的として、積算回数あるいは積算時間を増加させる例について説明した。これとは逆に、十分に高いS/N比が確保されている波長領域では積算回数あるいは積算時間を減らして測定時間の短縮を図ることもできる。この場合には、積算値の分散が所定値kより小さい波長領域において積算回数あるいは積算時間をt-nΔt(n≧1)に短縮する。
また、ベースライン一定分散モードにおいて、作成した補正積算条件情報を記憶部33に蓄積させることが望ましい。これにより、過去に測定を行った系で再度測定を行う際に、上述したステップS5〜ステップS8を行うことなく、過去に作成した補正積算条件情報を選択するだけで簡便に信頼度の高いスペクトルを得ることができる。
2…分光器
3…試料
4…検出器
5…増幅器
6…A/D変換器
21…入口スリット
22…回折格子
23…出口スリット
24…ステッピングモータ
30…コンピュータ
31…分光測定制御部
32…データ処理部
33…記憶部
34…積算条件情報変更部
40…表示部
50…入力部
Claims (5)
- 波長可変の単色光を生成する光源部と、該光源部で生成される単色光の波長を順次変化させる波長変更部と、試料と相互作用した後の光を検出する検出器とを有する分光光度計であって、
a) 少なくとも前記光源部、前記波長変更部、前記検出器を含む測定系を構成する機器の特性に基づき、又は、事前に行われたベースライン測定の結果に基づき、波長毎に設定された、ベースライン測定で得られるベースライン強度が所定の範囲内となるような前記検出器からの測定信号の積算回数又は積算時間である積算条件情報を記憶させた記憶部と、
b) 前記積算条件情報に基づき、前記波長変更部に波長変化速度信号を送る分光測定制御部と
を備えることを特徴とする分光光度計。 - c) 前記分光測定制御部による制御の下で行ったベースライン測定で得られた検出器からの測定信号強度に基づいて、ベースラインのS/N比が所定の条件を満たすように前記積算条件情報を変更し、補正積算条件情報として前記記憶部に保存する積算条件情報変更部
を備え、
前記記憶部に補正積算条件情報が保存されると、前記分光測定制御部は該補正積算条件情報に基づいて前記波長変更部に波長変化速度信号を送ることを特徴とする請求項1に記載の分光光度計。 - 前記積算条件情報変更部が、前記分光測定制御部による制御の下で行ったベースライン測定で得られた検出器からの測定信号強度について、測定波長を含む所定の微小波長範囲の積算値の分散がすべて所定値以下となるように積算条件情報を変更して前記補正積算条件情報とすることを特徴とする請求項2に記載の分光光度計。
- 前記積算条件情報変更部が、使用者に前記積算条件情報の変更を行う波長範囲を設定させることを特徴とする請求項2又は3に記載の分光光度計。
- 前記光源部が白色光源と分光器とを含む構成であり、前記分光器が一定の幅に固定された出口スリットを備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の分光光度計。
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