JP5994127B2 - 新規な組換えbcgワクチン - Google Patents
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Description
そこで、本発明者らは、SOCS1分子の働きを抑制し、Th1型免疫反応を亢進させる、新しい組換えBCG菌の作製を検討した。まず、SOCS1の機能に対し拮抗的に働くアンタゴニストであるSOCS1ドミナントネガティブ変異体(1アミノ酸の変換)を作製し(SOCS1dn)、このSOCS1dn発現ベクターを組み込んだ組換えBCG菌(rBCG−SOCS1dn)を作製した。試験管内での解析により、このrBCG−SOCS1dn感染細胞では、JAK2リン酸化抑制の解除が観察され、SOCS1によるリン酸化抑制が解除できることが明らかとなった。
(1)BCG菌組換え用のサイトカインシグナル抑制因子の発現ベクターであって、
a)ドミナントネガティブな1アミノ酸置換されたサイトカインシグナル抑制因子1(SOCS1)の塩基配列からなるDNA又は当該塩基配列と同一性が90%以上であり当該1アミノ酸置換を有する塩基配列からなるDNA、及び
b)シグナルペプチドをコードする塩基配列からなるDNAを含む、発現ベクター。
(2)BCG菌組換え用のサイトカインシグナル抑制因子の発現ベクターであって、
a)ドミナントネガティブな1アミノ酸置換されたサイトカインシグナル抑制因子1(SOCS1)の塩基配列からなるDNA、
b)SP2、hsp60、hsp70及びAntigen 85Bからなる群から選択されるいずれか一つの遺伝子の転写プロモーターの塩基配列からなるDNA、
c)blaF、blaC、Antigen 85B及びMPB64からなる群から選択されるいずれか一つの遺伝子のシグナルペプチドをコードする塩基配列からなるDNA、
d)SD配列からなるDNA、及び
e)hsp60、Antigen 85B及びM. kansasii由来α抗原からなる群から選択されるいずれか一つの遺伝子の転写ターミネーターの塩基配列からなるDNA
を含む、発現ベクター。
(3)カナマイシン耐性遺伝子をさらに含む、(1)又は(2)に記載の発現ベクター。
(4)発現ベクターが、
a)ドミナントネガティブな1アミノ酸置換されたサイトカインシグナル抑制因子1(SOCS1)の塩基配列からなるDNA、
b)SP2、hsp60、hsp70及びAntigen 85Bからなる群から選択されるいずれか一つの遺伝子の転写プロモーターの塩基配列からなるDNA、
c)blaF、blaC、Antigen 85B及びMPB64からなる群から選択されるいずれか一つの遺伝子のシグナルペプチドをコードする塩基配列からなるDNA、
d)SD配列からなるDNA、及び、
e)hsp60、Antigen 85B及びM. kansasii由来α抗原からなる群から選択されるいずれか一つの遺伝子の転写ターミネーターの塩基配列からなるDNA
を含む、大腸菌−抗酸菌シャトルベクターである、(1)〜(3)のいずれかに記載の発現ベクター。
(5)大腸菌−抗酸菌シャトルベクターがpSO246である、(4)に記載の発現ベクター。
(6)シグナルペプチドをコードする塩基配列が、blaFシグナル配列である、(1)〜(5)のいずれかに記載の発現ベクター。
(7)転写ターミネーターをコードする塩基配列が、Antigen 85Bターミネーター配列である、(1)〜(6)のいずれかに記載の発現ベクター。
(8)1アミノ酸の置換部位がSOCS1のキナーゼ阻害領域である、(1)〜(7)のいずれかに記載の発現ベクター。
(9)1アミノ酸の置換部位がN末から59位の位置である、(1)〜(8)のいずれかに記載の発現ベクター。
(10)59位のアミノ酸が、フェニルアラニンから、アスパラギン酸に変わっている、(1)〜(9)のいずれかに記載の発現ベクター。
(11)ドミナントネガティブな1アミノ酸置換されたサイトカインシグナル抑制因子1(SOCS1)の塩基配列が配列番号1である、(1)〜(10)のいずれかに記載の発現ベクター。
(12)(1)〜(11)のいずれかの発現ベクターを、BCG菌に導入して得られた組換えBCG菌(rBCG−SOCS1dn)。
(13)BCG菌がBCG東京株である、(12)に記載の組換えBCG菌。
(14)(12)又は(13)の組換えBCG菌を含有する、BCGワクチン。
(15)結核予防用ワクチンである、(14)に記載のBCGワクチン。
(16)サイトカイン及び/又はケモカインの産生誘導能を増強させる、(14)又は(15)に記載のワクチン。
(17)サイトカイン及びケモカインの産生誘導能が、IFN−γ、THF−α及びRANTESからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインの産生誘導能及び/又はAntigen 85B特異的細胞性免疫誘導能である、(14)〜(16)のいずれかに記載のワクチン。
(18)(14)〜(17)のいずれかに記載のワクチンを投与することを含む、結核の感染防御方法。
(19)(1)〜(11)のいずれかの発現ベクターをBCG菌に導入することを含む、BCGワクチンの製造方法。
(20)BCG菌にドミナントネガティブな1アミノ酸置換されたサイトカインシグナル抑制因子1(SOCS1)を発現させることを含む、BCG菌に対する免疫の増強方法。
本発明の第一の態様において、SOCS1ドミナントネガティブ変異体の遺伝子配列を含有するベクターが提供される。当該ベクターの例には、配列番号2で表される塩基配列からなるベクターが挙げられる。
本発明において使用される「SOCS1ドミナントネガティブ変異体(SOCS1dn)」は、SOCS1の活性を阻害する変異タンパク質であって、野生型のSOCS1タンパク質のキナーゼ阻害領域に存在するアミノ酸が1アミノ酸置換を起こした変異体タンパク質であり得る。特に好ましい例としては、野生型のSOCS1タンパク質のPhe−59がAsp−59に1アミノ酸置換を起こしたタンパク質が挙げられる。このようなSOCS1dnをコードする遺伝子は、野生型のSOCS1遺伝子のPhe−59をAsp−59に1アミノ酸置換を起こすような遺伝子変異を導入することにより得ることができる(Hanada et al. J. Biol. Chem. 276, 40746−40754 (2001))。また、その変異の導入方法としては、PCRプライマー内に変異を導入し、PCRでその変異を含むDNAを増幅後クローニングする方法や、Kunkel法による部位特異的変異導入法などの公知の方法を用いることができる。
また、本発明が提供する発現ベクターは、野生型のSOCS1のアミノ酸配列と80%以上、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるSOCS1変異体をコードするDNAを含んでもよい。そのような同一性を有するアミノ酸配列からなるSOCS1変異体は、野生型のSOCS1タンパク質のキナーゼ阻害領域に存在するアミノ酸が1アミノ酸置換を起こした変異体タンパク質であって、SOCS1の活性を阻害する蛋白質であり得る。
SOCS1dn遺伝子の例には、配列番号1で表される塩基配列からなる遺伝子が挙げられる。
本発明において使用される「転写プロモーター」は、本発明の目的遺伝子の発現に関わる重要な因子であり、その強度が強くて、mRNAを多量に産生できるものであり得る。好ましいものとして、例えばSP2(Spratt et al., FEMS Microbiol. Lett.224:139−142(2003))、hsp60、hsp70、Antigen 85Bなどのプロモーターを挙げることができる。より好ましくは、SP2を挙げることができる。
本発明において使用される「転写ターミネーター」は、転写を止めてRNAポリメラーゼのターンオーバーを改善する目的で搭載されるものであり得、例えばhsp60、Antigen 85B、M. kansasii由来α抗原などのターミネーターを挙げることができる。好ましいものとしては、Antigen 85Bのターミネーターを挙げることができる。
本発明において使用される「SD配列」は、転写で産生されたmRNAが、16SリボゾームRNAの3′末端と相補性を持つことで結合し、タンパク質への翻訳を進めるための重要な配列であり得る。例えば、4−5塩基の通常SD配列と共に、結合力がより強力でmegaSDと呼ばれる11塩基(AGAAGGAGAAG)のものを使用することができる(Mederie et al. Infect. Immun.70:303−314(2002))。このましいSD配列としては、megaSDを挙げることができる。
本発明において使用される「大腸菌−抗酸菌シャトルベクター」は、BCG菌のような抗酸菌と大腸菌の両方で発現可能なベクターであり得、このベクターにSOCS1dn遺伝子と転写プロモーター、シャインダルガーノ(SD)配列、シグナルペプチドおよび転写ターミネーターを包含させるとことにより、より効率的にSOCS1dnタンパク質を発現することができる。本発明で使用可能な大腸菌−抗酸菌シャトルベクターは、公知のもので特に限定されるものはなく、例えば、pSO246、PNN2等のものを挙げることができる。
本発明の第二の態様において、SOCS1の59位がフェニルアラニン(Phe)からアスパラギン酸(Asp)に変化したドミナントネガティブ変異体の遺伝子配列を含有したベクターで形質転換された組換えBCG菌が提供される。
本明細書において、「BCG菌」とは、ウシ型結核菌が継代培養されて人に対する毒性が失われて抗原性だけが残った細菌のことであり、作製者の名前を取って名付けられたカルメット・ゲラン桿菌(Bacille de Calmette et Guerin)の略称である。BCG菌の例には、BCG東京株が挙げられる。
発現ベクターをBCG菌に導入する方法としては、抗酸菌への発現ベクターの導入方法を利用することができる。本発明が提供する発現ベクターを用いて電気穿孔法でBCG菌に導入する方法を用いてもよい。また、相同組換えを利用して部位特異的にゲノムDNAに当該遺伝子を挿入することも可能である。
本発明が提供する「組換えBCG菌」は、本発明が提供する発現ベクターで組換えられ、SOCS1dnタンパク質を発現するようになったBCG菌であり得る。組換えBCG菌を選択するためには、BCG菌に本発明の発現ベクターを導入した後、市販の抗酸菌培養用の7H10等の寒天培地にカナマイシンやハイグロマイシン等の薬剤を加えた寒天培地上で、約3週間37℃で培養することによって得られるコロニーをピックアップすることにより、組換えBCG菌を選択することができる。
本発明の第三の態様において、上記組換えBCG菌を有効成分とするBCGワクチンが提供される。
本発明が提供する「BCGワクチン」は、IFN−γ等の種々のサイトカイン産生能が向上したBCG生菌ワクチンであり得る。例えば、本発明が提供するBCGワクチンは、IFN−γ、THF−α及びRANTESからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインの産生誘導能及び/又はAntigen 85B特異的細胞性免疫誘導能が増強されたワクチンであり得る。好ましくは、本発明が提供するBCGワクチンは、結核予防ワクチンとして使用される。
一つの実施態様において、本発明は、宿主のBCG東京株由来のワクチンと比較して、IFN−γ産生細胞数が増大すると共にAntigen 85B特異的細胞性免疫誘導能が増強され、TNF−αとRANTESの産生量が増大するBCGワクチンを提供する。
また、一つの実施態様において、本発明が提供するBCGワクチンは、投与されたSOCS1ドミナントネガティブ変異体(SOCS1dn)により、投与された対象(ヒト)で、サイトカインとケモカイン(例えば、IFN−γ、THF−α、RANTES)の産生の増加が惹起され、BCG菌に対する免疫(例えば、BCG菌に対する抗体産生)が増強される。
「サイトカインとケモカインの産生誘導能」は、本発明が提供する組換えBCG菌の免疫原性を評価する指標となり得るものであり、以下の方法で評価することができる。まず、適当量の組換えBCGの生菌を生理食塩水等の媒体に懸濁させたものをマウス、モルモット等の小動物に皮下接種する。2−8週後の脾細胞を採取し、Antigen 85BやPPD等のBCGあるいは結核菌由来抗原蛋白質で刺激した後、IFN−γ産生細胞数をELISPOT法により測定することにより評価することができる。更に、上記免疫感作動物の脾細胞をin vitroで一定期間培養後、培養上清中の種々のサイトカインもしくはケモカインの濃度をELISA法により定量することにより、サイトカインもしくはケモカイン産生能を評価することができる。これらの評価試験の結果、本明細書実施例において作製されたBCGワクチンは、それが投与された動物(例えば、マウス)において、IFN−γ産生細胞数が増大すると共にAntigen 85B特異的細胞性免疫誘導能が増強され、TNF−αとRANTESの産生量が増大していることが示された。
なお、本発明が提供するBCGワクチンは、従来のBCGワクチンと同様の処方でヒトに投与できる。投与量は、適宜、効果を勘案して調整することができる。
また、本発明が提供するBCGワクチンは、結核予防用組成物であり得、医薬品として許容できる担体(添加剤も含む)と共に製剤化することができる。医薬品として許容できる担体としては、例えば、賦形剤(例えば、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロース等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等)、溶剤(例えば、水、食塩水、大豆油等)、保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エステル等)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。よって、本発明は、一つの実施態様において、本発明が第二の態様で提供するBCG菌と医薬品として許容できる担体を混合することを含む、BCGワクチンの製造方法を提供する。また、本発明は、一つの実施態様において、本発明が提供するBCGワクチンをヒトに投与することを含む、結核感染防御方法を提供する。
構築の流れ図を図1に示す。まず、SP2プロモーター(Spratt et al.,FEMS Microbiol. Lett.224:139−142(2003))、megaSD配列(Mederie et al. Infect.Immun.70:303−314 (2002))、M. fortuitum由来β−lactamase遺伝子(blaF)のシグナルペプチド遺伝子(Genbank L25634 (ヌクレオチド番号1274−1369))、及びM. kansasii由来α抗原ターミネーター遺伝子(Genbank X53897 (ヌクレオチド番号1221−1396))を、5‘側からこの順に並んだ発現カセットをpUC18プラスミドに搭載してpA717Nベクター(配列番号3)を作製した。次に、pcDNA3.1(Invitrogen社製)にクローニングされている、N末端にHAタグを持つSOCS1dn遺伝子をXhoI−EcoRI消化により切り出し、pCR2.1−TOPOベクターにサブクローニングしてpCR2.1−TOPO−SOCS1dnを得た。このプラスミドからNcoI−BamHI消化によりNcoI以降終止コドンまでを含むDNA断片を切り出し、blaFシグナル配列の 3’末端の一部とSOCS1dnの 5’末端の一部を含む合成DNAアダプターを介して、pA717NプラスミドのSP2プロモーターの下流に位置するNarI−BamHI部位にクローニングし、pA717N−SOCS1dn(配列番号2)を得た。このプラスミドからSOCS1dn発現カセットをKpnI消化で切り出し、大腸菌−抗酸菌シャトルベクターpSO246 [Matsumoto et al. FEMS Microbiol Lett. 135:237−43 (1996)]のKpnI部位に導入し、SOCS1dn分泌発現ベクターpSO−SOCS1dnを得た(図2(a))。
pSO−SOCS1dnおよびpSO246(配列番号4)を常法により電気穿孔法でBCG東京株に形質転換し、カナマイシン添加7H10−OADC寒天培地(ベクトンディッキンソン社製)で2−3週間、37℃で培養した。コロニーをピックアップし、カナマイシン添加7H9−ADCエンリッチメント液体培地(ベクトンディッキンソン社製)中で2週間振とう培養した。OD600nmが0.5に達した時点で菌体を遠心分離で集め、超音波破砕にて菌体抽出液を調製した。その一部をSDS−PAGEに供し、PVDF膜にブロットした後に、一次抗体としてヤギ抗SOCS1ポリクローナル抗体、二次抗体としてHRP標識抗ヤギIgG抗体(Gene Tex社製)と反応させた(ウエスタンブロット解析)。バンドの検出にはECL Advanced Western Blotting Detection Kit(GE Healthcare社製)を用いた。結果を図2(b)に示す。pSO−SOCS1dnを導入したBCGでは、空ベクターのpSO246を導入したBCGには見られない特異的なバンドが認められ、SOCS1dn蛋白質が著量発現していることがわかった。一方、同じ組換えBCGクローンを、ADCエンリッチメントを含まず2%グリセリン含有、カナマイシン添加7H9液体培地(ベクトンディッキンソン社製)で2−3週間、37℃で培養し、OD600nmが0.5に達した時点で菌体を遠心分離で除いて上清を回収後、0.45μmのフィルター(ミリポア社製)を通して完全に除菌した。この上清1mlに等量の10%トリクロロ酢酸水溶液を加えて混和し、氷中で30分間静置後、遠心分離にて沈殿したタンパク質の混合物を回収した。このサンプルを上記と同様にウエスタンブロット解析を行なったところ、発現したSOCS1dnタンパク質がBCG菌体外に分泌されていることがわかった。
RAW246.7細胞を12 well plateに2×105個/wellに調整して播き、RPMI1640培地中、37℃, 5% CO2存在下で18時間培養後、MOI=10になるようにBCG−TokyoまたはrBCG−SOCS1dnを加え、さらに24時間培養を行った。培養後、細胞を回収し、100μlのLysis Buffer (50mM Tris−HCl(pH7.4)、250mM NaCl、50mM NaF、5mM EDTA、0.1% Nonidet P−40、1% protease inhibitor mix (GE Healthcare社製)を加え、4℃で1時間溶解させた。さらに超音波処理にて細胞を破砕し、細胞抽出液とした。これをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で展開後、PVDF膜にブロットし、ウサギ抗JAK2抗体(EPITOMICS社製)及びウサギ抗pJAK2抗体(EPITOMICS社製)を用いてウエスタンブロット解析を行なった。結果を図3に示す。
BCG Tokyo感染RAW264.7細胞では、非感染細胞に比べてJAK2のリン酸化が抑制されており、SOCS1の発現亢進による効果だと考えられる。一方、rBCG−SOCS1dn感染細胞では、JAKリン酸化が認められ、SOCS1によるリン酸化抑制が解除されていることがわかった。
Balb/cマウスにBCG東京株又はrBCG−SOCS1dnそれぞれを0.1 mgずつ皮下接種し、4週後の脾臓を採取して脾細胞を調製後、組換えAntigen 85B蛋白質あるいはAntigen 85B発現型組換えワクシニアウイルスで刺激した後のIFN−γ産生細胞数を市販のELISPOT kit(MABTEC社製)で測定した。結果を図4(a)に示す。rBCG−SOCS1dn免疫群ではBCG東京免疫群と比較して有意に高い頻度でspot−forming cellが認められ、Antigen 85B特異的細胞性免疫誘導能が増強されていることがわかった。また免疫マウスの脾細胞を各種抗原で刺激後に培養し、培養上清中のTNF−αおよびRANTESを定量したところ、rBCG−SOCS1dn免疫群ではBCG東京免疫群と比較してこれらの濃度が高く、サイトカインおよびケモカイン産生誘導能が増強されていることがわかった(図4(b))。
Balb/cマウスにBCG東京株とrBCG−SOCS1dnをそれぞれ0.5 mgずつ皮下接種し、陰性対照として生理食塩水のみを皮下接種した群をおいた。免疫4週後に結核菌H37Rv株(マウス1匹あたり47 colony forming unit)を、Glas−Col社製噴霧感染装置model 099C A4212
を用いて噴霧感染させた。感染4週および8週後に肺および脾臓を採取し、一定重量の臓器をグラインダーですり潰して1%小川培地(日本ビーシージー製造(株)製品)に播き培養した。培養4週後に結核菌のコロニー数を計測し、BCG東京株免疫マウスよりも菌数が少ないかどうかで、感染防御能増強効果を評価した(図5)。肺ではBCG東京株およびrBCG−SOCS1dn免疫で差がなく、むしろBCG親株の方が防御効果が高い傾向にあったが、脾臓ではrBCG−SOCS1dn免疫マウスの方が菌数が低く、結核菌防御効果が増強されていた。
Claims (9)
- 発現ベクターが、
a)サイトカインシグナル抑制因子1(SOCS1)のキナーゼ阻害領域のフェニルアラニンがアスパラギン酸に1アミノ酸置換された変異体タンパク質をコードする塩基配列からなるDNA、
ここでキナーゼ阻害領域の1アミノ酸置換の位置は、配列番号1の塩基配列がコードする変異体タンパク質アミノ酸配列のN末から59位に対応する位置である、
b)SP2、hsp60、hsp70及びAntigen 85Bからなる群から選択されるいずれか一つの遺伝子の転写プロモーターの塩基配列からなるDNA、
c)blaF、blaC、Antigen 85B及びMPB64からなる群から選択されるいずれか一つの遺伝子のシグナルペプチドをコードする塩基配列からなるDNA、
d)SD配列からなるDNA、及び、
e)hsp60、Antigen 85B及びM. kansasii由来α抗原からなる群から選択されるいずれか一つの遺伝子の転写ターミネーターの塩基配列からなるDNA
を含む、pSO246の大腸菌−抗酸菌シャトルベクターであることを特徴とする、発現ベクター。 - カナマイシン耐性遺伝子をさらに含む、請求項1に記載の発現ベクター。
- シグナルペプチドをコードする塩基配列が、blaFシグナル配列である、請求項1又は2に記載の発現ベクター。
- 転写ターミネーターをコードする塩基配列が、Antigen 85Bターミネーター配列である、請求項1〜3のいずれかに記載の発現ベクター。
- 1アミノ酸置換されたサイトカインシグナル抑制因子1(SOCS1)をコードする塩基配列が配列番号1である、請求項1〜4のいずれかに記載の発現ベクター。
- 請求項1〜5のいずれかの発現ベクターを、BCG菌に導入して得られた組換えBCG菌。
- 請求項6に記載の組換えBCG菌を含有する、BCGワクチン。
- サイトカインとケモカインの産生誘導能を増強させる、請求項7に記載のワクチン。
- 請求項6に記載のBCG菌を含む、結核発症予防用組成物。
Applications Claiming Priority (3)
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