JP2006501304A5 - - Google Patents

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Description

組換え型細胞内病原体免疫原性組成物および使用方法
政府への言及
この発明は、健康および福祉部門からの研究助成金番号AI31338による政府の支援によりなされた。政府は、この発明に対して一定の権利を有する。
(発明の分野)
本発明は、一般に、組換え型の弱毒化細胞内病原菌に由来する免疫原組成物に関する。より詳しくは、本発明は主要細胞外のタンパク質を過剰発現および分泌する組換え型の弱毒化ミコバクテリアを含む免疫原組成物に関する。さらに、本発明の免疫原組成物も、栄養要求性菌株を含む組換え型の弱毒化ミコバクテリアを含む。本発明の免疫原組成物は、宿主で免疫応答を誘発するにとって有用である。
(発明の背景)
動物に感染して疾患を起こしたり、しばしば死に至らしめる能力を寄生微生物が備えていると、長いあいだ認識されていた。病原体は、歴史全体にわたって主要な死因であり、計り知れない苦痛を負わせ続けている。ここ数百年の間、多くの感染症の予防および処置における劇的な進歩が見られたにも係わらず、複雑な宿主−寄生生物相互作用が治療的手段の普遍的な効果をいまだ制限している。多くの病原微生物によって示される複雑な浸潤メカニズムに対処する際の問題点は、細菌およびウイルスの薬剤抵抗性株が数多く出現していることと同様に、結核等の種々の疾患の再起によって明示されている。
主要な疫学的懸念であるそれらの病原体のなかでも、細胞内細菌が、治療的または予防的な方策にもかかわらず、特に扱いにくいことが判明している。細胞内細菌(マイコバクテリウム属を含む)は、細胞外よりはむしろ、感染宿主細胞の細胞内で該細菌のライフサイクルのすべてまたは一部を終える。世界中で、細胞内細菌は、数え切れないほどの苦痛の原因であり、また毎年何百万もの死亡の原因でもある。結核症は、世界的にみて単一病因物質(病原体)による死因のトップであり、毎年1000万人が新たに罹患し、また190万人が死亡している。加えて、細胞内細菌は、何百万例ものライ病の原因となる。細胞内病因物質が媒介する他の衰弱性疾患として、皮膚リーシュマニア症および内臓リーシュマニア症、アメリカトリパノソーマ症(シャーガス病)、リステリア症、トキソプラズマ症、ヒストプラスマ症、トラコーマ、オウム病、Q熱、ならびにレジオネラ病が挙げられる。
現在、世界人口の約3分の1がヒト型結核菌(M.tuberculosis)に感染し、毎年何百万例もの肺結核症をもたらしていると考えられている。より詳しくは、主にヒト型結核菌(M.tuberculosis)に起因するヒト肺結核症は、発展途上国の主要死因である。マクロファージおよび単核細胞中で生存することができるので、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)は慢性的細胞内感染症をもたらす可能性がある。ヒト型結核菌(M.tuberculosis)は、それ自身が外来因子の検出および免疫のその後の活性化の役割を果たす細胞内に潜伏することで、宿主生物の通常の防御を回避することは比較的成功する。さらに、結核症の処置に用いられる最前線の化学療法剤の多くは、細胞外の形式と比較すると、細胞内生物に対して相対的に活性が低い。これらの同じ病原性の特徴は、結核感染症に対する免疫療法剤または免疫原組成物の効果をこれまで制限していた。
近年では、1種類以上の薬剤に対して耐性である結核症がアメリカ合衆国50州のうちの36州で報告されている。ニューヨーク市では、試験した全例の3分の1で主要薬剤の1種類以上に対して耐性がみられた。長期間にわたる抗生物質投与によって非耐性の結核症が治癒できるにもかかわらず、薬剤耐性株に関する見通しは厳しい。2種類以上の主要な抗生物質に対して耐性を示す株により感染した患者の死亡率は、約50%である。したがって、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)のそのような種類に対して免疫原組成物が安全かつ有効であることがつよく求められている。
ヒト型結核菌(M.tuberculosis)の初感染は、病原体が湿った痰または乾燥した痰中で数週間または数ヶ月間にわたって生存可能なままでありうることから、エアロゾル化した粒子の吸入を通して、ほとんどいつでも起こる。感染症の原発部位が肺であるにもかかわらず、上記微生物は、限定されるものではないが、骨、脾臓、腎臓、髄膜、および皮膚を含むほとんどどのような器官であっても、感染を引き起こすこともできる。特定の株の菌力ならびに宿主の耐性に依存して、感染および組織に対応した損害は、軽度であるか広範囲にわたる。ヒトの場合、最初の抗原投与を、細菌の毒性株にさらされる個々の患者の大部分で、制御される。最初の抗原投与に続く獲得免疫の発現は、細菌の増殖を減らすことで、病変の治癒および無症状であることが多い患者の治癒および放置をおこなう。
ヒト型結核菌(M.tuberculosis)が感染被験体によって抑えられない場合、それはしばしば肺組織の広範囲な分解に帰着する。結核菌が肺胞または肺マクロファージの中で繁殖するにつれて、感受性のあるヒトでは、病変は通常肺で形成される。微生物が増えるため、リンパ系を介して末梢リンパ節へ、また血流を介して肺尖部、骨髄、腎臓、および脳を囲む髄膜に広がる可能性がある。主に細胞媒介過敏症反応の結果として、特徴的な肉芽腫病巣または結節は、感染症の重症度に比例して発生される。これらの病巣は、単核細胞、リンパ球、および繊維芽細胞によって境をなす類上皮細胞からなる。ほとんどの場合、病巣または結節は、最終的に壊死性炎になり、乾酪化(柔らかいチーズのような物質への患部組織の変換)を受ける。
ヒト型結核菌(M.tuberculosis)が重大な病原体である一方で、マイコバクテリウム属の他の種もヒトを含む動物で疾患を引き起こし、明らかに本発明の範囲内である。例えば、ウシ型結核菌(M.bovis)はヒト型結核菌(M.tuberculosis)に密接に関連があって、家畜(例えば牛、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌ、およびネコ)での結核感染症の原因となる。さらに、ウシ型結核菌(M.bovis)は、腸管を経て、概して生乳の摂取から、ヒトに感染する可能性がある。局所腸内感染後に、最終的に気道まで広がり、結核症の古典的な症状がすぐに起こる。マイコバクテリウム属のもう一つの重要な病原性ベクターは、古くからの疾患であるライ病の何百万もの症例を引き起こすライ菌(M.leprae)である。動物およびヒトで疾患を引き起こすこの属の他の種として、M.kansasii、M.avium intracellulare、M.fortuitum、M.marinum、M.chelonei、およびM.scrofulaceumが挙げられる。病原性ミコバクテリア種は、各々のDNAおよび対応するタンパク質配列でしばしば高度な相同性を示し、いくつかの種(例えばヒト型結核菌(M.tuberculosis)とM.ウシ型結核菌(M.bovis)とでは関連性が高い。
明らかな実際的理由および倫理上の理由から、そのような苦しみに関する実験的な組成物の有効性を判断するためにヒトで最初に研究することは不可能である。したがって、どのような薬剤または免疫原組成物の初期開発でも、安全および経費の理由から適当な実験動物モデルを用いることは、標準的な手順である。実験動物モデルを用いることが成功するかは、免疫原の抗原決定基がしばしば異なる宿主種で活性化されるという条件による。このように1つの種(例えば、齧歯動物またはモルモット)の免疫原性抗原決定基は一般にヒト等の異なる種で免疫反応性がある。適当な動物モデルが十分に開発された後でのみ、ヒトでの免疫原組成物の安全性および有効性をさらに示すためにヒトでの臨床試験が実施される。
ヒト型結核菌(M.tuberculosis)による肺胞または肺感染に関して、モルモット・モデルは、多くの点で、疾患に関するヒトの病理学にかなり類似している。したがって、当業者は、この疾患のモルモット・モデルからヒトおよび他のほ乳類動物について推定することは適当であると、十分に理解している。ヒトと同様に、モルモットはエアロゾル化した低量のヒト病原ヒト型結核菌(M.tuberculosis)で、結核感染症にかかりやすい。初感染が一般に抑えられるヒトとは異なり、モルモットはエアロゾル化した病原体への暴露に応じて一貫して播種性の疾患を呈し、それ以降の分析を容易にする。さらに、モルモットおよびヒトは、皮膚遅延型過敏反応を示す。この反応は、皮膚試験部位で高密度単核細胞硬結または硬い領域の発達によって特徴づけられる。最後に、ヒトおよびモルモットの特徴的な結核病巣は、ラングハンス巨細胞の存在を含む類似の形態を示す。モルモットがヒトより初感染と病勢悪化に影響されやすいことから、この動物モデルを使用している実験で与えられる何らかの防御は、ヒトまたは感受性が劣る他のほ乳類動物で同じ防御免疫が発生する可能性があることを強く示唆している。したがって、限定することを目的とするのではなく説明することのみを目的として、本発明の説明を、ほ乳類動物の宿主としてモルモットを用いる典型的な状況で、主におこなう。ヒトおよび家畜を含む他のほ乳類動物の宿主で本発明を実施することが可能であるということは、当業者に理解してもらえる。
免疫原組成物を用いて結核症を根絶する試みは、カルメット(Calmette)およびゲラン(Guerin)がフランスのリールにあるパスツール研究所(Insitut
Pasteur in Lille, France)でウシ型結核菌(M.bovis)の毒性株の弱毒化に成功した後、1921年に始められた。この弱毒化ウシ型結核菌(M.bovis)は、カルメット−ゲラン杆菌(Bacille Calmette and Guerin)または略してBCGとして知られるようになった。約80年後に、BGCに由来する免疫原組成物は、現在使用されている結核症の唯一の予防治療のままである。実際に、今日利用できる全てのBCG免疫原組成物は、パスツール研究所でカルメットおよびゲランによって開発されたウシ型結核菌(M.bovis)の原株に由来する。
世界保健機構は、BCG免疫原組成物を、世界的規模、特に発展途上国で結核を制圧するための必須要因と考えている。理論的には、BCG免疫原組成物は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)に免疫学的に関連がある弱毒化されたミコバクテリアに対して細胞性免疫を与える。結果として生じる免疫応答は、一次結核を阻害しなければならない。したがって、一次結核が阻害される場合、不顕性感染は起こらず、疾患再活性化が回避される。
現行のBCG免疫原組成物は、滅菌希釈剤で再水和されているリホフィライゼーションされた培養液(lyphophilized culture)として提供される。開発途上国および先進国を含むBCGワクチン接種を実施している国々では、出生時、乳児期、および早期小児期に投与される。高用量の伝染性ミコバクテリアにさらされる可能性のある風土病地域を訪れる成人は、皮膚試験が非反応性であるならばBCGを予防薬として受けることができる。免疫原組成物に対する副作用は希であり、通常、注射部位の近くで皮膚潰瘍形成およびリンパ節炎に限られている。しかし、希なこれらの副作用にもかかわらず、BCG免疫原組成物は、1930年以降世界的に30億回以上投与された他に類のない安全性の歴史がある。
しかし、伝統的なBCG免疫組成物の他に類のない安全性は、さらに詳しく調べられており、保健医療医にとってパラドックスが生じている。ミコバクテリア感染に最も感染しやすい個体群は、免疫抑制された個体群である。初期または後期HIV感染者は、特に感染しやすい。残念なことに、HIV感染症初期の多くのヒトは、自分自身の免疫状態を知らない。これらのヒトは固有のリスクを前もって知らされることなくBCG等の弱毒化生組成物を用いた免疫処置を自発的に受ける可能性がある。さらに、穏やかに免疫抑制された他のヒトもまた、ミコバクテリア症の回避を望むBCGによる免疫処置を無意識に受ける可能性がある。したがって、より安全でより有効なBCGおよびBCG様免疫原組成物が望まれている。
最近、種々の細胞関連抗原を発現する免疫原組成物の生産に形質転換BCG株を用いることが著しく注目されている。例えば、C.K.Stover等は、ライム病関連ボレリア(Borrelia burgdorferi)の膜結合リポタンパク質OspAを発現する組換え型BCG(rBCG)を用いたライム病免疫原組成物を報告している。同様に、同じ著者は、肺炎連鎖球菌の肺炎球菌性表面タンパク質(PsPA)を発現するrBCG免疫原組成物も作った(Stover, C.K., G.P.Bansal, S.Langerman, and M.S.Hanson.1994.Protective Immunity Elicited by rBCG Immunogenic compositions In: Brown F.(ed): Recombinant Vectors in Immunogenic composition Development.Dev Biol Stand.Dasel, Karger, Vol.82, 163−170)。
米国特許第5,504,005号(’005号特許)および米国特許第5,854,055号(’055特許)は共にB.R.Bloom他に対して発行されたもので、数多くの微生物種由来の広範囲の細胞関連融合タンパク質を発現する理論的rBCGベクターを開示している。それらの特許に記載された理論的ベクターは、細胞外非融合タンパク質抗原とは対照的に、細胞関連融合タンパク質に対して向けられ、また/あるいはrBCGはかすかに関連した種由来の融合タンパク質を理論的に発現している。さらに、これらのモデルで発現される組換え型細胞関連融合タンパク質は、宿主ゲノムに組み込まれ、かつ熱ショック・プロモータの制御下にあるDNA上にコードされる。したがって、発現される抗原は融合タンパクであり、発現はほぼベクターの天然タンパク質に等しいレベルあるいはそれよりも少ないレベルに限られている。
さらにまた、’005号特許および’055号特許のどちらも、ヒトの疾患を密接に模倣する動物系での動物モデル安全性試験、免疫応答発現、または保護免疫を開示していない。加えて、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)融合タンパク質を発現している理論的rBCGベクターのみが’005特許および’055特許に開示されており、実際の免疫組成物は使用可能ではない。開示されるヒト型結核菌(M.tuberculosis)に対するそれらの免疫原組成物モデルは、細胞関連熱ショック融合タンパク(細胞外非融合タンパク質でない)を目的とする。
米国特許第5,830,475号(’475号特許)もまた、融合タンパクの発現に用いられる理論上のミコバクテリア免疫原組成物を開示している。
これらの融合タンパク質をコードするDNAは、ミコバクテリア熱ショック・タンパク質およびストレス・タンパク質プロモータの制御下、染色体外プラスミドにある。開示された免疫原組成物は、該組成物に対する抗体産生を目的としてヒト以外の動物で免疫応答を引き出すことを意図したものであり、ほ乳類動物での細胞内病原体疾患を予防するために示されたものではない。そのうえ、’475号特許では、細胞外の非融合タンパク質を発現するためにタンパク質特異的なプロモータを使用する組換え型の免疫原組成物を開示されていない。
本発明者に対して付与された米国特許第6,467,967号は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)の30kDa主要細胞外タンパク質をコードする遺伝子を含む細胞外核酸配列を持つ組換え型BCGを含み、該ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質が過剰発現され、かつ分泌される免疫組成物を開示している。さらに、本発明者は、他のヒト型結核菌(M.tuberculosis)主要細胞外タンパク質を過剰発現する組換え型BCGを追加してクレームしている一部継続(2002年9月30日出願の米国特許出願第10/261981号)を出願している。
したがって、免疫原組成物に密接に関連がある細胞内病原体の主要細胞外非融合タンパク質を発現する組換え型の細胞内病原体免疫原組成物がいまだ求められている。さらにまた、非熱ショック遺伝子プロモータまたは非ストレス・タンパク質遺伝子プロモータを持つ細胞質DNAによって組換え型の細胞外非融合タンパク質を過剰発現することができる組換え型の細胞内病原体免疫原組成物が求められている。
具体的には、BCG免疫原組成物レシピエントが与えられる防御よりも優れた防御をレシピエントに提供する細胞内病原体免疫原組成物を生成する切迫した必要性が残っている。さらに、先進国および発展途上国の両方に対して、費用効率が高く、結核および他の細胞内病原体に対して免疫療法的および予防的である処置を提供する切迫した必要性が存在する。
それに加えて、免疫抑制または部分的に免疫抑制されたヒトに対して安全に投与されうる細胞内病原体免疫原組成物の必要性が、いまだある。
したがって、本発明の目的は、細胞内病原体に起因する疾患の診断、処置、予防、阻害、または緩和するための免疫原組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、細胞内病原体に起因する疾患の診断、処置、予防、阻害、または緩和に、同じ細胞内病原体、別の細胞内病原体、または両方の主要組換え型免疫原性抗原を発現するために形質転換された細胞内病原体を使用する免疫原組成物を、提供することである。
本発明のさらに別の目的は、病原性ミコバクテリアの細胞外タンパク質を発現する組換え型BCGを用いて、ミコバクテリア疾患によって引き起こされる疾患の診断、処置、予防、阻害、または緩和のための免疫原組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、ヒト結核菌の1種類以上の主要細胞外タンパク質の発現および分泌をおこなうBCG組換え型菌株を使用した結核症の診断、処置、予防、阻害、または緩和のための免疫原組成物を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、上述した免疫原組成物を免疫抑制または部分的に免疫抑制性されたヒトに対して安全に投与されうる形態で、上記の免疫原組成物を提供することである。
(発明の概要)
本発明は、ほ乳類動物における細胞内病原体疾患の診断、処置、予防、阻害、または緩和のための新たな部類の免疫原組成物および免疫療法剤と方法とを提供する。歴史的に、細胞内病原体免疫原組成物および免疫療法剤は、細胞内病原体自体または密接に関連した種から調製されていた。これらの昔ながらの免疫原組成物モデルは、完全な微生物またはそのサブユニットから構成されていた。例えば、第一に、また現在のところ入手可能な免疫原組成物は、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対して、近縁種である細胞内病原体ウシ型結核菌(M.bovis)から得た弱毒化生免疫原組成物である。近年では、本発明者は、増殖培地中に分泌される細胞内病原体の特異的な細胞外生産物が、個々のサブユニットまたは該サブユニットの組み合わせとして、ほ乳類動物で強力な免疫応答を引き出すために用いることができることを発見した。しかし、これらのサブユニット免疫原組成物は、ウシ型結核菌(M.bovis)に由来する原弱毒化免疫原組成物より優れているとは証明されなかった。
本発明は、形質転換して別の細胞内病原体または同一の細胞内病原体の細胞外タンパク質(または複数の細胞外タンパク質)(組み換え型免疫原性抗原)を発現させる組換え型弱毒化細胞内病原体から構成される免疫原組成物および免疫療法剤を詳細に述べる。一実施形態では、本発明の免疫原組成物は、カルメット−ゲラン杆菌またはBCGの組換え型菌株を用いて作られる。この実施形態では、病原性ミコバクテリアの主要細胞外タンパク質を発現するもので、該病原性ミコバクテリアとして、2、3例を挙げると、限定されるものではないが、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)、ライ菌(M.leprae)、ウシ型結核菌(M.bovis)が挙げられる。
組換え型BCGによって発現される主要細胞外タンパク質として、限定されるものではないが、12kDa、14kDa、16kDa、23kDa、23.5kDa、30kDa、32AkDa、32BkDa、45kDa、58kDa、71kDa、80kDa、および110kDaのミコバクテリア種(Mycobacterium sp.)、および各々の類似体、相同体、およびサブユニットであり、それらの組換え型非融合タンパク質、融合タンパク質、および誘導体が挙げられる。ミコバクテリアおよび他の細胞内病原体の主要細胞外タンパク質を同定するために用いられる分子量は近似値であることのみを意図していることは、当業者にとって明らかである。組換技術および分子生物学分野の当業者は、これらのタンパク質が切断型で発現させることも可能であることから、これらのタンパク質を、追加のアミノ酸、ポリペプチド、およびタンパク質とともに同時発現(同時翻訳)させることが可能であることを、理解する。結果として生ずるタンパク質は、天然、非融合タンパク質、融合タンパク質、ハイブリッド・タンパク質、またはキメラ・タンパク質と呼ばれるかどうかに関わりなく、本発明の範囲内であると考えられる。本発明の目的のために、融合タンパク質として、限定されるものではないが、一緒にクローニングされ、かつ翻訳後に単一のポリペプチド配列を形成する異なる遺伝子に由来する2種類以上のコード配列の産物が挙げられる。
本発明もまた、他の細胞内病原体の少なくとも1つに由来する非融合タンパク質を過剰発現する組換え型弱毒化細胞内病原体免疫原組成物を記載する。このことは、少なくとも1つの組換え型免疫原性抗原を発現させるために染色体外核酸を用い、この遺伝子を非熱ショック・タンパク質遺伝子プロモータまたは非ストレス・タンパク質遺伝子プロモータ、好ましくはタンパク質特異的プロモータ配列の制御下に置くことによって、達成される。したがって、組換え型免疫原性抗原をコードする遺伝子が安定的に免疫原組成物のゲノムDNAに組み込まれている場合に、可能である量よりも多く発現される非融合、組換え型免疫原性抗原を有する免疫原組成物が提供される。
さらに、本発明は、細胞内病原体によって引き起こされるほ乳類動物の疾患を本発明の免疫原組成物を用いて処置および予防する方法を説明する。弱毒化微生物および/または組換え型免疫原性抗原の源として利用可能である多くの細胞内病原体の部分的リストとして、限定されるものではないが、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)、ライ菌(M.leprae)、カサンシー菌(M.Kansasii)、トリ型結核菌(M.avium)、ミコバクテリア種(Mycobacterium sp.)、レジュネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、レジオネラ・ロングビーチェ(L.longbeachae)、レジオネラ・ボウズマニイ(L.bozemanii)、レジオネラ種(Legionella sp.)、ロッキー山紅斑熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)、発疹熱リケッチア(Rickettsia typhi)、リケチア種(Rickettsia sp.)、エーリキア属(Ehrlichia chaffeensis、Ehrlichia phagocytophila geno群、Ehrlichia sp.)、コキシエラ属(Coxiella bumetii)、リーシュマニア種(Leishmania sp.)、トキソプラズマ原虫(Toxplasma gondii)、クルーズ・トリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、クラミジア肺炎病原体(Chlamydia pneumoniae)、クラミジア種(Chlamydia sp.)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、リステリア種(Listeria sp.)、およびヒストプラスマ種(Histoplasma sp.)が挙げられる。
本発明の免疫原組成物の投与は、適当な免疫応答をもたらす任意の方法でおこなうことが可能であると考えられ、該方法として、限定されるものではないが、皮内、皮下、筋肉内、鼻腔内、腹膜内、口腔、または吸入が挙げられる。接種後適当な期間を経て、ほ乳類動物に対して、伝染性のヒト型結核菌(M.tuberculosis)エアゾールによる抗原投与をおこなった。本発明の免疫原組成物の投与を受けたほ乳類動物は、意外なことにBCG単独、主要細胞外タンパク質単独、またはそれのいかなる組合せの投与を受けたほ乳類動物と比較して、発症がなかった。
本発明の一実施形態では、染色体外核酸配列と少なくとも1つのミコバクテリア細胞外タンパク質をコードする遺伝子とを持つ組換え型BCGとを含む免疫原組成物であって、免疫応答が動物で誘導されるように、該ミコバクテリア主要細胞外タンパク質が過剰発現される免疫原組成物を提供する。
別の実施形態では、プロモータによる制御下、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)23.5kDa主要細胞外非融合タンパク質をコードする遺伝子を含む染色体外核酸配列を持つ組換え型BCGを含む免疫原組成物であって、該プロモータが熱ショック・プロモータまたはストレス・タンパク質プロモータではなく、また動物に免疫応答を誘導するように23.5 kDa主要細胞外非融合タンパク質が過剰発現および分泌される免疫原組成物を提供する。
本発明のさらに別の実施形態では、プロモータによる制御下、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)32A kDa主要細胞外非融合タンパク質をコードする遺伝子を含む染色体外核酸配列を持つ組換え型BCGを含む免疫原組成物であって、該プロモータが熱ショック・プロモータまたはストレス・タンパク質プロモータではなく、また動物に免疫応答を誘導するようにして32A kDa主要細胞外非融合タンパク質が過剰発現および分泌される免疫原組成物を提供する。
別の実施形態は、ヒト型結核菌(Mycobacteria tuberculosis) (Mtb)30kDa主要細胞外タンパク質およびMtb23.5kDa主要細胞外非融合タンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子を持つ遺伝子構築物を含む染色体外核酸配列を持つ組換え型BCGを含む免疫原組成物であって、動物に免疫応答を誘導するようにして該Mtb30kDa主要細胞外タンパク質およびMtb23.5kDa主要細胞外非融合タンパク質が過剰発現および分泌される免疫原組成物を提供する。
別の典型的な実施形態では、プロモータの制御下、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質をコードする遺伝子を持つ組換え型BCGを含む免疫原組成物であって、該プロモータが熱ショック・プロモータまたはストレス・タンパク質プロモータではなく、体液性免疫応答および細胞性免疫応答の両方が動物で誘導されるように、上記組換え型BCGからウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質が過剰発現および分泌される免疫原組成物を提供する。
開示された本発明のさらに別の実施形態は、プロモータの制御下、ライ菌(Mycobacterium leprae)30kDa主要細胞外非融合タンパク質をコードする遺伝子を含む染色体外核酸を有する組換え型BCGを含む免疫原組成物であって、該プロモータが熱ショック・プロモータまたはストレス・タンパク質プロモータではなく、体液性免疫応答および細胞性免疫応答の両方が動物で誘導されるように、上記組換え型BCGからライ菌(Mycobacterium leprae)30kDa主要細胞外非融合タンパク質が過剰発現および分泌される免疫原組成物を提供する。
本発明の他の実施形態として、弱毒化細胞内病原体(例えば、組換え型BCG)が増殖制御可能な栄養要求性微生物である免疫原組成物が挙げられる。
本明細書で用いられるように、「増殖制御可能な(growth regulatable)」とは、特定の栄養素が与えられた場合に増殖する栄養要求性微生物のことをいう。特定の栄養素は、免疫原組成物と同時投与または引き続いて免疫原組成物レシピエントに与えられる。
一実施形態では、増殖可能な栄養要求性微生物は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)の少なくとも1つの主要細胞外タンパク質を過剰発現および分泌するために形質転換された組換え型BCGである。
本発明の別の実施形態では、増殖制御可能な栄養要求性微生物の増殖を制御するために必要な特定の栄養素がアミノ酸である。
本発明のもう一つの実施形態は、硝酸レダクターゼαサブユニット遺伝子(narG遺伝子)が対立遺伝子の置換によって中断された弱毒化組換え型BCG(タイス(Tice)株)を含む。つぎに、この非常に弱毒化されたnarG BCGは、少なくとも1つの主要細胞外Mtbタンパク質をコードする異種核酸により形質転換される。結果として生ずる非常に弱毒化されたnarG変異体形質転換体は、免疫抑制ほ乳類動物で免疫原組成物として有用である。
本発明の他の目的ならびに特徴および利点は、最初に手短に説明される図面と共に以下の詳細な説明を検討することで、当業者に明らかになる。
(用語の簡単な定義)
以下の詳細な説明、実施例、および添付された特許請求の範囲の理解を容易にするために、以下の定義に言及することは有用である。これらの定義は事実上非限定的であり、あくまでも読者に便宜を与えるだけである。
栄養要求株または栄養要求性: 本明細書で用いられるように、「栄養要求株(auxotroph)」とは、野生型微生物では必要とされない特定の栄養要求性を持つ微生物のことをいう。要求された栄養素がない場合、野生型が増殖できるにもかかわらず栄養要求性株は増殖しない。
遺伝子: 本明細書で用いられるように、「遺伝子(gene)」とは遺伝子構築物の発現に必要またはそれを修飾するプロモータおよび/または他の調節配列を持つ遺伝子構築物の少なくとも一部のことをいう。
遺伝子構築物: 本明細書で用いられるように、「遺伝子構築物(genetic construct)とは、少なくとも1つの細胞外病原体に由来する少なくとも1つの主要細胞外タンパク質をコードする核酸配列のことをいう。本発明の一実施形態では、遺伝子構築物は染色体外DNAである。
増殖制御可能: 本明細書で用いられるように、用語「増殖制御可能(growth regulatable)」とは、本発明の免疫原組成物の栄養要求性形態のことをいう。増殖の制御は、増殖を誘導するのに十分な濃度で、栄養供給株の増殖に必須の栄養素を投与することによっておこなう。
宿主: 本明細書で用いられるように、「宿主(host)」とは、本免疫原組成物のレシピエントのことをいう。典型的な宿主は、ほ乳類動物であり、限定されるものではないが、霊長類、齧歯動物、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、およびブタが挙げられる。本発明の一実施形態では、宿主はヒトである。
免疫原: 本明細書で用いられるように、用語「免疫原(immunogen)」とは、宿主の免疫応答を引き出す任意の基質を意味する。本発明の免疫原として、限定されるものではないが、主要細胞外タンパク質、およびその組換え型形態であり、細胞内病原体、例えばミコバクテリア属に属するものに由来するが、それに限定されるものではない。
免疫原組成物: 本明細書で用いられるように、「免疫原組成物(immunogenic composition)」は、宿主の免疫応答を引き出す免疫原を生体内(in
vivo)で発現および/または分泌する細胞内病原体等のアジュバントの有無にかかわらず、組換えベクターを含む。本明細書で開示される免疫原組成物は、形質転換体として栄養要求性微生物を含む、または含まないものであってもよい。
核酸配列: 本明細書で用いられるように、用語「核酸配列(nucleic acid sequence)」は、核酸の任意の連続した配列を意味する。
形質転換体: 本明細書で用いられるように、「形質転換体(transformant)」とは、発現および/または分泌されるポリペプチドをコードする少なくとも1つの異種核酸によって形質転換されている微生物のことをいう。本発明の一実施形態では、該形質転換体はBCGである。
(発明の詳細な説明)
本発明は、一般に、同一種または別種の組換え型免疫原性抗原を発現および/または分泌する弱毒化または非病原性の組換え型細胞内病原体を含む免疫原組成物に関する。本発明の別の実施形態では、弱毒化細胞内病原体は、対立遺伝子の置換(allelic exchange)を介して弱毒化される。本発明の典型的な実施形態は、弱毒化または非病原性の組換え型BCGに基づいている。しかし、本発明は、組換え型BCGに限定されるものではない。
免疫原組成物は、限定されるものではないが、皮下、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、皮内、経口、または吸入等の1種類以上のルートを用いて、投与される。本発明の免疫原組成物は、生体内原位置(in situ)で免疫原を発現および分泌する宿主内で生存する。栄養要求性の株が用いられる場合、免疫原組成物は、宿主に対して適当な栄養素が十分な量与えられるまで、基本的に免疫学的不活性のままである。ひとたび必須の栄養素が与えられると、栄養要求性免疫原組成物(栄養要求株)は免疫原の発現および分泌を開始する。後で、必要に応じて、必須栄養素を保留することは、栄養要求株の増殖および生体内原位置(in situ)での抗原発現を停止させることができる。
本発明の免疫原組成物が免疫原を発現する栄養要求性形質転換体を利用する場合、宿主内で栄養要求株の増殖を開始させるのに必要とする必須栄養素を、免疫原組成物の投与直前、同時、または直後に投与することができる。また、免疫原組成物の投与後、必須栄養素の投与を数日または数週間も遅らせることも、本発明の範囲内である。さらに、必須栄養素は、さらにまた、必須栄養素は栄養要求性形質転換体の激増を止めるために、免疫原組成物の投与後いつでも、宿主に控えさせることができる。
本発明は、限定されるものではないが、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)、ウシ型結核菌(M.bovis)、またはライ菌(M.leprae)の主要細胞外非融合タンパク質を過剰発現しているBCG株を含む種々の細胞内病原体に対して免疫原組成物を調製する上で有用である。本発明の教示にもとづいて作られる免疫原組成物は、宿主の免疫応答を引き出す際に有用である。誘導された免疫応答は、体液性(抗体をベースとする)または細胞性のいずれかであり、診断、予防、または緩和の用途に有用である。
本発明のそれぞれの免疫原組成物は、所定の細胞内病原体に対して特異的な種々の分子量の少なくとも1つの免疫原を発現することができる。例えば、本発明者らは、事前にヒト型結核菌(M.tuberculosis)免疫原を同定している。限定されるものではないが、該ヒト型結核菌(M.tuberculosis)免疫原は、主要細胞外タンパク質12kDa、14kDa、16kDa、23kDa、23.5kDa、30kDa、32AkDa、32BkDa、45kDa、58kDa、71kDa、80kDa、110kDa、および各々の類似体、相同体、サブユニット、さらにそれらの変性変異体が挙げられ、組換え型非融合タンパク質、融合タンパク質、およびそれらの誘導体が含まれる(係属中の米国特許出願第08/156,358号、第09/157,689号、第09/175,598号、第09/226,539号、および第09/322,116号を参照せよ。なお、これらの内容全体を本明細書では援用する)。ミコバクテリアおよび他の細胞内病原体の主要細胞外タンパク質を同定するために用いられる分子量は近似値であることのみを意図していることは、当業者にとって明らかである。組換技術および分子生物学分野の当業者は、これらのタンパク質が切断型で発現させることも可能であることから、これらのタンパク質を、追加のアミノ酸、ポリペプチド、およびタンパク質とともに同時発現(同時翻訳)させることが可能であることを、理解する。結果として生ずるタンパク質は、天然、非融合タンパク質、融合タンパク質、ハイブリッド・タンパク質、またはキメラ・タンパク質と呼ばれるかどうかに関わりなく、本発明の範囲内であると考えられる。本発明の目的のために、融合タンパク質として、限定されるものではないが、一緒にクローニングされ、かつ翻訳後に単一のポリペプチド配列を形成する異なる遺伝子に由来する2種類以上のコード配列の産物が挙げられる。
細胞外タンパク質を含む抗原発現は、一般に、組換え型非融合タンパク質をコードする遺伝子が、宿主ゲノムに組み込まれることよりもむしろ、1つ以上のプラスミド(染色体外DNA)上に配置かつ該プラスミドの制御下にある場合に、増強される。さらに、特定のタンパク質に特異的なプロモータ配列によって駆動されるタンパク質発現は、非融合タンパク質抗原の発現増強ならびに改善されたタンパク質折り畳みおよびプロセッシングを提供する。したがって、本発明は、非熱ショック遺伝子プロモータまたは非ストレス・タンパク質遺伝子プロモータ、好ましくはタンパク質特異的プロモータ配列によって制御される染色体外DNA上にコードされる組換え型細胞外非融合タンパク質を提供する。
本発明は、近縁および/または他の細胞内病原体の組換え型細胞外非融合タンパク質を発現するrBCG等の組換え型弱毒化細胞内病原体免疫原組成物を提供する。しかし、80年におよぶ研究から、BCG内在性細胞外タンパク質単独では全てのレシピエントで完全な防御が与えられないことが示されている。さらに、以下により詳細に説明するように、本発明者は、伝統的なBCGとともにヒト型結核菌(M.tuberculosis)細胞外タンパク質を単に同時に注射するだけではBCG単独よりも優れている免疫原組成物を得ることはできないことも示した。
本発明の一実施形態では、免疫原組成物は、1つの免疫原のみを発現する組換え型BCG免疫原組成物を含む。免疫原としては、限定されるものではないが、例えばヒト型結核菌(M.tuberculosis)の23.5kDa、30kDa、または32kDa主要細胞外タンパク質が挙げられる。本発明の別の実施形態では、組換え型BCGは2種類以上の免疫原、例えばヒト型結核菌(M.tuberculosis)の23.5kDaおよび30kDa主要細胞外タンパク質を発現することが可能である。この後者の実施形態は、ほ乳類動物の疾患を予防する免疫原組成物として特に有効であると思われる。本発明者らは、組換え型BCGによるヒト型結核菌(M.tuberculosis)の23.5kDaおよび30kDa主要細胞外タンパク質の同時過剰発現が本発明の細胞内病原体に対するほ乳類動物の免疫応答を高めるために相乗的に作用することが可能であるという非限定的な理論を提案した。この理論は、野生型および組換え型BCGが自己の23.5kDa主要細胞外タンパク質を自然に発現しないウシ型結核菌(M.bovis)の欠失突然変異体であるという観察に、部分的に基づいている。
しかし、形質転換体としてBCGを利用している免疫原組成物は、エイズ患者等の免疫無防備状態であるヒトで播腫性疾患を生じる場合がある。まれなケースでは、播腫性疾患は致命的となりうる。したがって、本発明の別の実施形態では、免疫抑制された宿主で免疫応答を引き出す際の使用が安全であると予期される複数の組換え型BCG株(BCGタイス(Tice)株を野生型親として使用)が得られている。これらの株のうちの4種類が栄養要求株であることから、それらの株が栄養要求するアミノ酸の過剰量が存在する場合のみ、それらの株が増殖する。本発明の一実施形態では、非限定的な典型例として、BCGトリプトファンまたはグルタミン栄養要求株が挙げられる。この理由から、それらの株の増殖を、さらに以下に説明するように、宿主によって制御することが可能である。免疫抑制または部分的免疫抑制されたほ乳類動物での使用に適した2つのさらなるBCG株は、栄養要求株ではないので、増殖制御可能ではない。これらの非栄養要求性BCG株は、対立遺伝子置換突然変異体であって、免疫無防備状態の宿主で弱毒化されることが予期される。
しかし、すでに説明したように、本発明は形質転換体の非限定的栄養要求性株である。本発明は、栄養要求株が本発明の免疫原組成物が要求されるすべての用途に対して適するわけではないことを予期する。例えば、栄養要求株は生体内(in vivo)で形質転換体の増殖制御に有用である一方で、宿主が所望の免疫応答を生ずることを確実にするために、適切な時期に確実に、第2の組成物を投与することが必要である。このことは、個人、宿主および該宿主をケアするヒトの両者に投与することに対する注意が必要である。そのため、免疫原組成物関連疾患を広めるリスクを最小限にする場合、非栄養要求性形質転換体を投与することがより望ましい。したがって、遺伝子構築物、プラスミド、および医薬組成物を含む本発明の種々の実施形態に関連する以下の記述は、栄養要求性および非栄養要求性の形質転換体の両方に均しく適用される。
微生物学の当業者は、栄養要求性株の増殖に必須の栄養素が要求されることを除いて、以下の増殖条件、培地、温度、時間等が一般に栄養要求株および非栄養要求株にとって同じであることを容易に理解する。さらに、免疫学の当業者は、宿主に対する免疫原組成物の投与が栄養要求性および非栄養要求性組成物に関して同じことであると理解する。
本発明の1つの典型的な実施形態では、組換え型BCG免疫原組成物は、グルタミンシンテターゼ遺伝子(glnA1)に直に隣接する上流領域からプラスミドpNBV1およびプロモータを利用することで、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)主要細胞外タンパク質を発現する。別の典型的な実施形態では、組換え型BCG免疫原組成物は、細胞外タンパク質をコードしている遺伝子に直に隣接して上流領域からプラスミドpNBV1およびプロモータを利用することで、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)主要細胞外タンパク質を発現する。本発明のさらに別の典型的な実施形態では、組換え型BCG免疫原組成物は、30kDa細胞外タンパク質をコードする遺伝子に直に隣接する上流領域からプラスミドpNBV1およびプロモータを利用して、ウシ型結核菌(M.bovis)30kDa主要細胞外タンパク質を発現する。もう一つの典型的な実施形態では、組換え型BCG免疫原組成物は、30kDa細胞外タンパク質をコードする遺伝子に直に隣接する上流領域からプラスミドpNBV1およびプロモータを利用して、ライ菌(M.leprae)30kDa主要細胞外タンパク質を発現する。
簡潔さを目的として、起こりうる非常に複雑な説明のために、限定を意図したものではないが、本発明を、予防接種剤としての組換え型BCG(rBCG)と、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)、ウシ型結核菌(M.bovis)、およびライ菌(M.leprae)細胞外非融合タンパク質、特にヒト型結核菌(M.tuberculosis)の23.5kDa、30kDa、および32AkDa主要細胞外非融合タンパク質、ウシ型結核菌(M.bovis)の30kDa主要細胞外非融合タンパク質、およびライ菌(M.leprae)とを、本発明の典型的な実施形態として用いて、より具体的に説明する。さらに、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)の23.5kDaおよび30kDa主要細胞外非融合タンパク質を過剰発現および分泌する多重異種抗原の例として、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)の23.5kDaおよび30kDa主要細胞外非融合タンパク質がrBCGから同時発現および分泌される。
任意の組換え型免疫原性抗原が任意の組換え型弱毒化細胞内病原体によって発現されると考えられる。さらに、本発明の免疫原組成物は、該免疫原組成物としてのrBCGに限定されるものではない。さらに、上記免疫原はヒト型結核菌(M.tuberculosis)、ウシ型結核菌(M.bovis)、およびライ菌(M.leprae)の主要細胞外非融合タンパク質に限定されるものではない。
免疫原組成物株変化の効果を決定するために、異なるBCG株、すなわちBCGタイス(Tice)株およびBCGコノート(Connaugh)株を用いて本発明の種々の実施形態を調製した。野生型ウシ型結核菌(M bovis)BCGタイス(Tice)株は、オルガノン(Organon)から購入し、野生型ウシ型結核菌(M.bovis)BCGコナート(Connaugh)株は、コナート・ラボラトリー(Connaught Laboratories, Toronto, Canada)から入手した。上記株を、5%CO−95%大気雰囲気下、37℃で7H9培地(pH6.7)(Difco)中で静置培養して維持した。培養物を毎週1〜2回、5分間、超音波水浴中で超音波処理して細菌の凝集を減らした。
(非免疫無防備状態宿主での使用に適した免疫原組成物)
A.組換え型BCGタイス(Tice)(rBCG30タイス(Tice))
ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質を発現する組換え型BCGタイス(TICE)(rBCG30 Tice)は、以下のように調製した。プラスミドpMTB30(大腸菌(E.coli)/ミコバクテリア・シャトル・プラスミドpSMT3の組換え型構築物)は、Harth, G., B.−Y.Lee and M.A.Horwitz.1997, “High−level heterologous expression and secretion in
rapidly growing nonpathogenic mycobacteria of four major Mycobacterium tuberculosis extracellular proteins considered to be leading immunogenic candidates and drug targets”, Infect.Immun.65:2321−2328(この文献の全内容を本明細書で援用する)で本発明者らが既に記述したとおりに調製した。
B.組換え型BCG30タイス(Tice) II (pNBV1−pglnA−MTB30)
ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa細胞外非融合タンパク質を過剰発現する組換え型BCG30タイス(Tice)II(pNBV1−pglnA−MTB30)株を以下のように調製した。ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa遺伝子のコード領域(開始コドンにNdel制限部位および停止コドンの直下流にHindIII制限部位を含む)を増幅し、このPCR産物をpNBV1−BFRBのNdel→HindIII制限部位のヒト型結核菌(M.tuberculosis)gln1部位の下流にクローニングすることによって、プラスミドpNBV1 −pgInA1 −MTB30を構築した (Tullius, M., G.Harth, and M.A.Horwitz.2001, “The high extracellular levels of Mycobacterium tuberculosis glutamine synthetase and superoxide dismutase are primarily due to high expression and extracellular stability rather than to a protein specific export mechanism”, Infect.Immun.69:6348−6363)。 切断解析によってプラスミドが正しかったことを確認した後に、上記プラスミドをウシ型結核菌(M bovis)BCGタイス(Tice)株に電気穿孔によって導入し、形質転換体を50μgmL −1ハイグロマイシンにより7H11培地上で選別した。いくつかの個々のハイグロマイシン耐性クローンをランダムに選択して50μgmL −1ハイグロマイシン含有7H9培地で培養した。組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDaタンパク質の発現および送出をポリアクリルアミド・ゲル電気泳動および高特異性多価ウサギ抗30kDaタンパク質免疫グロブリンによる免疫ブロットによって確認した。rBCG30タイス(Tice)II株が、ベクター(pNBV1)に単に組み込まれているBCGタイス(Tice)株に比べて、培養液1mlあたり24倍以上の30kDa抗原を産生することがわかった。
C.組換え型BCG23.5タイス(Tice)I(pNBVI−pglnA−MTB23.5)
ヒト型結核菌(M.tuberculosis)23.5kDa細胞外非融合タンパク質を過剰発現する組換え型BCG23.5タイス(Tice)I(pNBV1−pglnA−MTB23.5)株を以下のように調製した。ヒト型結核菌(M.tuberculosis)23.5kDa遺伝子のコード領域(開始コドンにNdel制限部位ならびに停止コドンの直下流にBamHI制限部位およびHindIII制限部位を含む)を増幅し、このPCR産物をpNBV1−BFRBのNdel→HindIII制限部位のヒト型結核菌(M.tuberculosis)gln1部位の下流にクローニングすることによって、プラスミドpNBV1 −pgInA1 −MTB23.5を構築した(Tullius, M., G.Harth, and M.A.Horwitz.2001, “The high extracellular levels of Mycobacterium tuberculosis glutamine synthetase and superoxide dismutase are primarily due to high expression and extracellular stability rather than to a protein specific export mechanism”, Infect.Immun.69:6348−6363)。切断解析によってプラスミドが正しかったことを確認した後に、上記プラスミドをウシ型結核菌(M bovis)BCGタイス(Tice)株に電気穿孔によって導入し、形質転換体を50μgmL −1ハイグロマイシンにより7H11培地上で選別した。いくつかの個々のハイグロマイシン耐性クローンをランダムに選択して50μgmL −1ハイグロマイシン含有7H9培地で培養した。組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)23.5kDaタンパク質の発現および送出をポリアクリルアミド・ゲル電気泳動および高特異性多価ウサギ抗23.5kDaタンパク質免疫グロブリンによる免疫ブロットによって確認した。rBCG23.5タイス(Tice)II株が、rBCG30タイスII株によって産生される組換え型30kDaタンパク質と等量またはそれよりもわずかに多い量である高レベルで、23.5kDaタンパク質を産生した。BCGが23.5kDaタンパク質をコードする遺伝子を持たないことから、30kDaタンパク質でなされたような親株との比較をおこなうことができない(BCGタイス(Tice)は23.5kDaタンパク質を発現しない。なぜなら、対応するヒト型結核菌(M.tuberculosis)遺伝子Rv1978ないしRv1988[23.5kDaタンパク質遺伝子=Rv1980]を包含する〜11.5kbのRD2ゲノム欠失(欠失は、1931前の野生型ウシ型結核菌(M.bovis)由来のBCG株の発生のあいだに起こった)であるためである)。
D.組換え型BCG30/23.5タイス(Tice)I (pNBV1−pgInA−MTB30/23.5)
ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDaおよび23.5kDa細胞外非融合タンパク質を過剰発現する組換え型BCG30/23.5タイス(Tice)I(pNBV1−pglnA−MTB30/23.5)株を以下のように調製した。プラスミドpNBV1 −pgInA1 −MTB30/23.5を、pNVB1−pglnA1−MTB23.5(ヒト型結核菌(M.tuberculosis)glnA1プロモータおよび23.5kDaコード領域の各々を完全に含む)から1kbBamHIフラグメントをpNBV1−pglnA1−MTB30のユニークBamHI制限部位にクローニングすることによって、構築した。2つのタンパク質をコードする遺伝子を、30kDaタンパク質をコードする遺伝子の上流に23.5kDaタンパク質をコードする遺伝子がある上記プラスミド上の同一方向に配置した。切断解析によってプラスミドが正しかったことを確認した後に、上記プラスミドをウシ型結核菌(M bovis)BCGタイス(Tice)株に電気穿孔によって導入し、形質転換体を50μgmL −1ハイグロマイシンにより7H11培地上で選別した。いくつかの個々のハイグロマイシン耐性クローンをランダムに選択して50μgmL −1ハイグロマイシン含有7H9培地で培養した。組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDaおよび23.5kDaタンパク質の発現および送出をポリアクリルアミド・ゲル電気泳動および高特異性多価ウサギ抗30kDaタンパク質および抗23.5kDaタンパク質免疫グロブリンによる免疫ブロットによって確認した。rBCG30/23.5タイス(Tice)I株が、ベクター(pNBV1)に単に組み込まれているBCGタイス(Tice)株に比べて、培養液1mlあたり24倍以上の30kDa抗原を産生することがわかった。この株はまた、組換え型30kDaタンパク質と等量またはそれよりもわずかに多い量である高レベルで、23.5kDaタンパク質を産生した。なぜなら、BCGは23.5kDaタンパク質をコードする遺伝子を持たないので、30kDaタンパク質でなされたような親株との比較がおこなえなかったからである。
E.組換え型BCG30タイス(Tice)III (pNBV−1−MTB30)
ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa細胞外タンパク質を過剰発現する組換え型BCG30タイス(Tice)III(pNBV−1−MTB30)株を以下のように調製した。この組換え型の株の生成は、ベクター主鎖と、ClaIおよびBamHI制限部位によってフランクされ、30kDa主要細胞外タンパク質とコード領域の直上流にあるプロモータ領域とを含むヒト型結核菌(M.tuberculosis)エルドマン(Erdman)DNAの〜1.5キロ塩基対(kB)断片とを含む組換え型プラスミドpNBV1を、BCGタイス(Tice)株菌(ストック#2)に電気穿孔によって導入することによって、おこなった。この株は、組換え型プラスミドを安定に維持し、30kDaタンパク質特異的抗血清による免疫ブロットによって確認されるように(分析開始時のBCGタイス(Tice)野生型よりも14.4倍高く、また該分析終了時で11.5倍高い)、組換え型30kDaタンパク質発現のレベルを抗生物質無しで12ヶ月間にわたりほぼ一定に保った。ストック(ストック#1)を、2.5x10粒子/mlの濃度で10%グリセロール中に確立し、−80℃で保存した。
F.組換え型BCG23.5タイス(Tice)II (pNBV−1−MTB23.5)
ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa細胞外タンパク質を過剰発現する組換え型BCG23.5タイス(Tice)II(pNBV−1−MTB23.5)株を以下のように調製した。この組換え型の株の生成は、ベクター主鎖と、PstIおよびBamHI制限部位によってフランクされ、23.5kDa主要細胞外タンパク質とコード領域の直上流にあるプロモータ領域とを含むヒト型結核菌(M.tuberculosis)エルドマン(Erdman)DNAの〜1.4キロ塩基対(kb)断片とを含む組換え型プラスミドpNBV1を、BCGタイス(Tice)株菌(ストック#2)に電気穿孔によって導入することによって、おこなった。この株は、組換え型プラスミドを安定に維持し、23.5kDaタンパク質特異的抗血清による免疫ブロットによって確認されるように(分析開始時で16.2mg/L、また該分析終了時で15.1mg/L)、組換え型23.5kDaタンパク質発現のレベルを抗生物質無しで12ヶ月間にわたりほぼ一定に保った。なぜなら、BCGは23.5kDaタンパク質をコードする遺伝子を持たないので、30kDaタンパク質でなされたような親株との比較がおこなえなかったからである。ストック(ストック#1)を、3x10粒子/mlの濃度で10%グリセロール中に2001年8月24日に確立し、−80℃で保存した。
G.組換え型BCG30/23.5タイス(Tice)IIA (pNBV1−MTB30/23.5↑↑)
組換え型BCG30/23.5タイス(Tice)IIA (pNBV1−MTB30/23.5↑↑)(以下に用いられるように、「↑↑」は、遺伝子構築物の5′末端に関して、各タンパク質をコードする核酸配列[遺伝子]が同一方向に配向している複数の主細胞外タンパク質をコードする遺伝子構築物を示す)は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDaおよび23.5kDa主要細胞外タンパク質の両方を過剰発現する。これら2つのタンパク質をコードする遺伝子が同一方向に配向している。この組換え型の株の生成は、ベクター主鎖と、ClaIおよびNdeI制限部位(30kDaタンパク質遺伝子およびプロモータ)ならびにNdeIおよびNdeI−BamHI(23.5kDaタンパク質遺伝子およびプロモータ)制限部位によってフランクされ、30および23.5kDa主要細胞外タンパク質の2つのコード領域の各々の直上流にあるコード領域およびプロモータ領域とを含むヒト型結核菌(M.tuberculosis)エルドマン(Erdman)DNAの〜1.5および〜1.4キロ塩基対(kb)の2つの断片とを含む組換え型プラスミドpNBV1を、BCGタイス(Tice)株菌(ストック#2)に電気穿孔によって導入することによって、おこなった。この株は、組換え型プラスミドを安定に維持し、30および23.5kDaタンパク質特異的抗血清による免疫ブロットによって確認されるように(30kDaタンパク質に関しては、発現が分析開始時ではBCGタイス(Tice)野生型バックグラウンド・レベルの23.3倍を上回り、また該分析の終了時ではBCGタイス(Tice)野生型バックグラウンド・レベルの16.5倍を上回り、さらに23.5kDaタンパク質に関しては、分析開始時で18.7mg/L、また該分析終了時で12.2mg/Lであった)、組換え型30および23.5kDaタンパク質発現のレベルを抗生物質無しで12ヶ月間にわたりほぼ一定に保った。上記したように、組換え型23.5kDaタンパク質の発現は、絶対項で測定する。なぜなら、BCGタイス(Tice)は、23.5kDaタンパク質を発現しないからである。ストック(ストック#1)を、3x10粒子/mlの濃度で10%グリセロール中に確立し、−80℃で保存した。
H.組換え型BCG30/23.5タイス(Tice)IIB(pNBV1−MTB30/23.5↑↓)
組換え型BCG30/23.5タイス(Tice)IIB(pNBV1−MTB30/23.5↑↓)(以下に用いられるように、「↑↓」は、遺伝子構築物の5′末端に関して、各タンパク質をコードする核酸配列[遺伝子]が反対方向に配向している複数の主要細胞外タンパク質をコードする遺伝子構築物を示す)は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDaおよび23.5kDa主要細胞外タンパク質の両方を過剰発現する。これら2つのタンパク質をコードする遺伝子が相反する方向に配向している。この組換え型の株の生成は、ベクター主鎖と、ClaIおよびNdeI制限部位(30kDaタンパク質遺伝子およびプロモータ)ならびにNdeIおよびNdeI−BamHI(23.5kDaタンパク質遺伝子およびプロモータ)制限部位によってフランクされ、30および23.5kDa主要細胞外タンパク質の2つのコード領域の各々の直上流にあるコード領域およびプロモータ領域とを含むヒト型結核菌(M.tuberculosis)エルドマン(Erdman)DNAの〜1.5および〜1.4キロ塩基対(kB)の2つの断片とを含む組換え型プラスミドpNBV1を、BCGタイス(Tice)株菌(ストック#2)に電気穿孔によって導入することによって、おこなった。直前に記載した株(rBCG30/23.5タイス(Tice)IIA)と比較して、23.5kDaタンパク質のコードおよびプロモータ領域を担持するNdeI制限フラグメントの配向が逆転している。この株は、組換え型プラスミドを安定に維持し、30および23.5kDaタンパク質特異的抗血清による免疫ブロットによって確認されるように(30kDaタンパク質に関しては、発現が分析開始時ではBCGタイス(Tice)野生型バックグラウンド・レベルの25.7倍を上回り、また該分析の終了時ではBCGタイス(Tice)野生型バックグラウンド・レベルの21.1倍を上回り、さらに23.5kDaタンパク質に関しては、分析開始時で16.67mg/L、また該分析終了時で12.8mg/Lであった)、組換え型30および23.5kDaタンパク質発現のレベルを抗生物質無しで12ヶ月間にわたりほぼ一定に保った。上記したように、組換え型23.5kDaタンパク質の発現は、絶対項で測定する。なぜなら、BCGタイス(Tice)は、23.5kDaタンパク質を発現しないからである。ストック(ストック#1)を、3x10粒子/mlの濃度で10%グリセロール中に確立し、−80℃で保存した。
I.組換え型BCG32Aタイス(Tice)I(pNBV1−MTB32A)
ヒト型結核菌(M.tuberculosis)32AkDa主要細胞外タンパク質(a.k.a.抗原85A)を過剰発現する組換え型BCG32Aタイス(Tice)IB(pNBV1−MTB32A)を以下のように調製した。この組換え型の株の生成は、ベクター主鎖と、ClaIおよびBamHI制限部位によってフランクされ、32AkDa主要細胞外タンパク質のコード領域と該コード領域の直上流にあるプロモータ領域とを含むヒト型結核菌(M.tuberculosis)エルドマン(Erdman)DNAの〜1.5キロ塩基対(kB)の断片とを含む組換え型プラスミドpNBV1を、BCGタイス(Tice)株菌(ストック#2)に電気穿孔によって導入することによって、おこなった。この株は、組換え型プラスミドを安定に維持し、32AkDaタンパク質特異的抗血清による免疫ブロットによって確認されるように(分析開始時ではBCGタイス(Tice)野生型バックグラウンド・レベルの10.5倍を上回り、また該分析の終了時では8.1倍であった)、組換え型32AkDaタンパク質発現のレベルを抗生物質無しで12ヶ月間にわたりほぼ一定に保った。ストック(ストック#1)を、3x10粒子/mlの濃度で10%グリセロール中に確立し、−80℃で保存した。
J.組換え型BCG(MB)30タイス(Tice)(pNBV1−MB30)
ウシ型結核菌(M.bovis)30kDa主要細胞外タンパク質を過剰発現する組換え型BCG30タイス(Tice)(pNBV1−MB30)を以下のように調製した。この組換え型の株の生成は、ベクター主鎖と、ClaIおよびBamHI制限部位によってフランクされ、30kDa主要細胞外タンパク質のコード領域と該コード領域の直上流にあるプロモータ領域とを含むウシ型結核菌(M.bovis)野生型(ATCC#19210)DNAの〜1.5kb断片とを含む組換え型プラスミドpNBV1を、BCGタイス(Tice)株菌(ストック#2)に電気穿孔によって導入することによって、おこなった。この株は、組換え型プラスミドを安定に維持し、30kDaタンパク質特異的抗血清による免疫ブロットによって確認されるように(分析開始時ではBCGタイス(Tice)野生型バックグラウンド・レベルの9.7倍を上回り、また該分析の終了時では7.8倍であった)、組換え型30kDaタンパク質発現のレベルを抗生物質無しで12ヶ月間にわたりほぼ一定に保った。ストック(ストック#2)を、2.5x10粒子/mlの濃度で10%グリセロール中に確立し、−80℃で保存した。
K. 組換え型BCG(ML)30タイス(Tice)(pNBV1−ML30)
ライ菌(M.leprae)30kDa主要細胞外タンパク質を過剰発現する組換え型BCG(ML)30タイス(Tice)(pNBV1−ML30)を以下のように調製した。この組換え型の株の生成は、ベクター主鎖と、ClaIおよびBamHI制限部位によってフランクされ、30kDa主要細胞外タンパク質のコード領域と該コード領域の直上流にあるプロモータ領域とを含むライ菌(M.leprae DNAの〜1.3kb断片とを含む組換え型プラスミドpNBV1を、BCGタイス(Tice)株菌(ストック#2)に電気穿孔によって導入することによって、おこなった。この株は、組換え型プラスミドを安定に維持し、30kDaタンパク質特異的抗血清による免疫ブロットによって確認されるように(分析開始時ではBCGタイス(Tice)野生型バックグラウンド・レベルの9.7倍を上回り、また該分析の終了時では9.3倍であった)、組換え型30kDaタンパク質発現のレベルを抗生物質無しで12ヶ月間にわたりほぼ一定に保った。ストック(ストック#1)を、3x10粒子/mlの濃度で10%グリセロール中に確立し、−80℃で保存した。
(免疫無防備状態宿主での使用に適した免疫原組成物)
I.増殖制御可能なBCG(栄養要求株)の発生
A.BCGタイス(Tice)glnA1
BCGタイス(Tice)glnA1遺伝子を、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)glnA1突然変異体を生成するために以前に本発明者らが用いたプラスミドpEX1−Mtb−glnA1::Kmを用いて対立遺伝子置換を介して中断させた(M.V., G.Harth, and M.A.Horwitz.2003, “Glutamine Synthetase (GlnA1) is essential for growth of Mycobacterium tuberculosis in human macrophages and in guinea pigs”, Infect.Immun.Vol.71:7)。プラスミドpEX1−Mtb−glnA1::Kmは、温度感受性sacBベクターpPR27に由来するもので、hyg遺伝子とglnA1コード領域の中間近くに位置したユニーク部位に挿入されたKmカセットを持つヒト型結核菌(M.tuberculosis)glnA1遺伝子座を含む1.8kbフラグメントとを含む(Pelicic, V., M.Jackson, J.M.Reyrat, W.R.Jacobs, Jr., B.Gicquel, and C.Guilhot.1997, “Efficient allelic exchange and transposon mutagenesis in
Mycobacterium tuberculosis”, Proc.NatI.Acad.Sci.USA 94:10955−10960)。プラスミドpEX1−Mtb−glnA1::Km をBCGタイス(Tice)に電気穿孔によって導入し、形質転換体を50μgmL−1ハイグロマイシンにより7H11培地上で選択した。 プレートを最初に許容温度(32℃)に6日間保ち、つぎに制限温度(39℃)で46日間インキュベートした。単一の形質転換体を50μgmL−1カナマイシンおよび20mM
L−グルタミン含有7H9−10%OADC−0.05%TWEEN−80ブロス培地中、上記制限温度で、約25世代にわたって増殖させ、さらに2%(w/v)スクロース、20mM L−グルタミン、および50μgmL−1カナマイシンを含む7H11上で平板培養することで、第2の相同性組換えイベントをおこなったクローンの選択をおこなった。ランダムに選択した35のKmクローンのうちの12クローンが正しい表現型(すなわち、Hygおよびグルタミン栄養要求性)を持つことがわかった。純粋培養を確実にするために、本発明者らは12クローンのうちの1クローンを低密度で平板培養し、単一のコロニーを再び単離した。上記株の最初の凍結ストックを再単離クローンから調製した。突然変異体の正しい遺伝子型を、サザンブロット分析によって確認した。
BCGタイス(Tice)glnA1株は、グルタミン栄養要求株である。L−グルタミンの添加無しで7H11プレート上では、増殖は観察されなかった。さらに、glnA1突然変異体は、ヒトのマクロファージを0.2mMのL−グルタミン含有組織培養培地(野生型株が正常に増殖する条件下)で培養したところ、該マクロファージではほとんど細胞内増殖を示さなかった。しかし、野生型株と類似の細胞内増殖が、かなり過剰のL−グルタミン(10mM)を組織培養培地に添加することで、達成された。相補分析を、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)glnA1遺伝子含有のプラスミド(pNBV1−MtbGS)またはネズミチフス菌(S.typhimurium)glnA遺伝子含有のプラスミド(pNBV1−StGS)によって、BCGタイス(Tice)glnA1を形質転換させることでおこなった。両方のプラスミドは、野生型増殖表現型を変異体に戻した。
このBCGglnA1栄養要求性株のL−グルタミン要求性は、本発明者らが以前に詳細に特徴づけをおこなったヒト型結核菌(M.tuberculosis)glnA1株のものに非常に類似していると期待される(Tullius, M.V., G.Harth, and M.A.Horwitz, 2003, “Glutamine Synthetase (GlnA1) is essential for growth of Mycobacterium tuberculosis in human macrophages and in guinea pigs”, Infect.Immun.Vol.71:7)。ヒト型結核菌(M.tuberculosis)glnA1 株の場合、突然変異体を正常に増殖させるための固体培地に高レベルのL−グルタミン(10〜20mM)が必要であった。液体培地では、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)glnA1突然変異体は、1mMのL−グルタミンで正常の増殖率で増殖した。1〜2mMのL−グルタミンでは初期の増殖が正常ではあるが、これらの培養物は5mMおよび20mMのL−グルタミンを含む培養液と同様に高い密度を達成することはできず、対数増殖期後直ちに生存力の急激な低下が示された。ヒト型結核菌(M.tuberculosis)glnA1 株は、L−グルタミン結合培地に希釈した場合にその生存力を急激に喪失する。ヒトのマクロファージを0.2mMのL−グルタミン存在下(野生型が正常に増殖する条件)で培養した場合、該マクロファージではヒト型結核菌(M.tuberculosis)glnA1突然変異の増殖はおこらなかった。ヒトマクロファージでのヒト型結核菌(M.tuberculosis)glnA1 突然変異体の増殖は、該マクロファージが2mMのL−グルタミンを含む標準的組織培養培地で培養した場合に劣っていた。しかし、野生型株に類似の細胞内増殖は、マクロファージがかなり過剰のL−グルタミン(10mM)中で培養された場合に、達成された。ヒト型結核菌(M.tuberculosis)glnA1 突然変異体は、肺結核症のモルモット・モデルで非常に弱毒化される。
B. BCGタイス(Tice)trpD
BCGタイス(Tice)trpD遺伝子を対立遺伝子置換を介して中断させた。対立遺伝子置換基質の生成は、588bpの欠失を有するBCGタイス(Tice)trpD遺伝子座が生成され、かつKmカセットが該欠失の部位に挿入されるPCR戦略を用いておこなった。この突然変異体対立遺伝子は、対立遺伝子置換ベクターpEX2(緑色蛍光タンパク質をコードするgfpuv遺伝子が、シトシン・デミナーゼをコードする大腸菌(E.coli)codBAオペロンによって置換されるpEX1の誘導体)に導入されて、pEX2ΔtrpD::Km(Tullius, M.V., G.Harth, and M.A.Horwitz.2003, “Glutamine Synthetase (GlnA1) is essential for growth of
Mycobacterium tuberculosis) in human macrophages and in guinea pigs”, Infect.Immun.Vol.71:7)を生成する。
電気穿孔によってpEX2 ΔtrpD::KmをBCGタイス(Tice)に導入し、形質転換体を許容温度(32℃)で50μgmL−1ハイグロマイシンにより7H11培地上で選択した。プールした形質転換体を10μgmL−1カナマイシンおよび50μgmL−1L−トリプトファン含有7H9−10%OADC−0.05%TWEEN−80ブロス培地中、上記許容温度で、約10世代にわたって増殖させ、さらに2%(w/v)スクロース、50μgmL−1カナマイシン、および50μgmL−1L−トリプトファンを含む7H10上で、制限温度(39℃)で平板培養することで、相同性組換えイベントをおこなったクローンの選択をおこなった。ランダムに選択した10のKmクローンのうちの4クローンが正しい表現型(すなわち、Hygおよびトリプトファン栄養要求性)を持つことがわかった。純粋培養を確実にするために、4クローンのうちの1クローンを低密度で平板培養し、単一のコロニーを再び単離した。上記株の最初の凍結ストックを再単離クローンから調製した。突然変異体の正しい遺伝子型を、サザンブロット分析によって確認した。
BCGタイス(Tice)TrpD株は、トリプトファン栄養要求性株である。L−トリプトファン無添加の7H11プレート上では増殖が観察されなかった。ブロス培地では、BCGタイス(Tice)trpD株は、10μgmL−1のL−トリプトファン存在下で野生型株と類似の率で増殖した。増殖は、3μgmL−1L−トリプトファンで2倍ほど遅く、上記株はL−トリプトファン結合培地に希釈された場合に生存力を失った。trpD突然変異体は、ヒトのマクロファージを5μgmL−1含有の標準的組織培養培地(野生型株が正常に増殖する条件)で培養した場合、該マクロファージでの細胞内増殖をほとんど示さなかった。しかし、その組織培養培地に対して、さらに100μgmL−1のL−トリプトファンを添加することによって、野生型株に類似の細胞内増殖が達成された。BCGタイス(Tice)trpD遺伝子を含むプラスミド(pNBV1−trpD)で、BCGタイス(Tice)trpDを形質転換させることで、相補的分析がおこなわれた。このプラスミドは、突然変異を野生型増殖表現型に戻した。
II. ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要分泌タンパク質を過剰発現する増殖制御可能なBCG(栄養要求株)。
A. BCGタイスglnA1 pSMT3−MTB30
プラスミドpSMT3−MTB30を、BCGタイス(Tice)glnA1に電気穿孔によって導入し、形質転換体を50μgmL −1ハイグロマイシン、50μgmL −1カナマイシン、および20mM L−グルタミンにより7H11寒天上で選別した。それぞれ別個の2種類のハイグロマイシンおよびカナマイシン耐性クローンをランダムに選択して、50μgmL −1ハイグロマイシン、50μgmL −1カナマイシン、および20mM L−グルタミンを含有する7H9培地で培養した。組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDaタンパク質の発現および送出を、ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動および高特異性多価ウサギ抗30kDaタンパク質免疫グロブリンによる免疫ブロットによって確認した。BCGタイス(Tice)glnA1pSMT3−MTB30がBCGタイス(Tice)glnA1 よりも培養液1mLあたりの30kDa抗原が約10〜20倍多く産生されることがわかった。BCGタイス(Tice)glnA1pSMT3−MTB30は、親株であるBCGタイス(Tice)glnA1と同様に、グルタミン栄養要求株である。
B. BCGタイス(Tice)trpD pSMT3−MTB30
プラスミドpSMT3−MTB30を、BCGタイス(Tice) TrpDに電気穿孔によって導入し、形質転換体を50μgmL −1ハイグロマイシン、50μgmL −1カナマイシン、および50μgmL −1 L−トリプトファンにより7H11寒天上で選別した。それぞれ別個の10種類のハイグロマイシンおよびカナマイシン耐性クローンをランダムに選択して、50μgmL −1ハイグロマイシン、50μgmL −1カナマイシン、および50μgmL −1 L−トリプトファン含有7H9−10%OADC−0.05% TWEEN−80ブロスで培養した。組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDaタンパク質の発現を、ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動および高特異性多価ウサギ抗30kDaタンパク質免疫グロブリンによる免疫ブロットによって確認した。BCGタイス(Tice)TrpDpSMT3−MTB30が対照BCGタイス(Tice)株よりも培養液1mLあたりの30kDa抗原が約10〜20倍多く産生されることがわかった。
III. 弱毒化BCG(非栄養要求株)BCGタイス(Tice)narG
BCGタイス(Tice)narG遺伝子(硝酸レダクターゼαサブユニットをコード)は、対立遺伝子置換を介して中断された。対立遺伝子置換基質の生成は、2952bpの欠失を有するBCGタイス(Tice)narG遺伝子座が生成され、かつKmカセットが該欠失の部位に挿入されるPCR戦略を用いておこなった。この突然変異体対立遺伝子は、対立遺伝子置換ベクターpEX2(gfpuv遺伝子が、大腸菌(E.coli)codBAオペロンによって置換されるpEX1の誘導体)に導入されて、pEX2ΔnarG::Km(Tullius, M.V., G.Harth, and M.A.Horwitz.2003, “Glutamine Synthetase (GlnA1) is essential for growth of Mycobacterium tuberculosis) in human macrophages and in guinea pigs”, Infect.Immun.Vol.71:7)を生成する。
pEX2ΔnarG::KmをBCGタイス(Tice)(2001年12月13日)に電気穿孔によって導入し、形質転換体を50μgmL−1ハイグロマイシンおよび50μgmL −1カナマイシン、および50μgmL−1 L−トリプトファンを含有する7H11寒天上で、許容温度(32℃)で選別した。プールした形質転換体を10μgmL−1カナマイシン含有7H9−10%OADC−0.05%TWEEN−80ブロス培地中、上記許容温度で、約30世代にわたって増殖させ、さらに2%(w/v)スクロースおよび10μgmL−1カナマイシンを含む7H10寒天上で、制限温度(39℃)で平板培養することで、相同性組換えイベントをおこなったクローンの選択をおこなった。ランダムに選択した8のKmrクローンのうちの8クローンが正しい表現型(すなわち、Hyg)を持つことがわかった。純粋培養を確実にするために、8クローンのうちの1クローンを低密度で平板培養し、単一のコロニーを再び単離した。上記株の最初の凍結ストックを再単離クローンから調製した。突然変異体の正しい遺伝子型を、サザンブロット分析によって確認し、突然変異体が完全長のnarGを欠いていることが示された。
narG突然変異体は、ブロス培養でプレート上で正常に増殖し、マクロファージ内で細胞内増殖する。しかし、他で発生するBCGnarG突然変異体は、免疫不全SCIDマウス・モデルで、親BCG株に比べてかなり弱毒化されることが報告されている(Weber, I., Fritz, C., Ruttkowski.S.,Kreft,
A., and F.C. Bang. 2000. “Anaerobic nitrate reductase (narGHJI) activity of Mycobacterium bovis BCG in vitro and its contribution to virulence in immunodeficient mice”, Mol. Microbiol. 35(5):1017−1025)。それ故、narG突然変異株が同様にSCIDマウスで弱毒化されて、加えて、免疫無防備状態のヒトで弱毒化されることが予想される。
IV. ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要分泌タンパク質を過剰発現する弱毒化BCG(非栄養要求株)
BCGタイス(Tice) narG pSMT3−MTB30
プラスミドpSMT3−MTB30を、BCGタイス(Tice)narGに電気穿孔によって導入し、形質転換体を50μgmL−1ハイグロマイシンおよび10μgmL−1カナマイシンにより7H11培地上で選択した。それぞれ別個の5種類のハイグロマイシンおよびカナマイシン耐性クローンをランダムに選択して、50μgmL−1ハイグロマイシン含有7H9−10%OADC−0.05%TWEEN−80ブロス培地で培養した。
50μgmL−1ハイグロマイシン。組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDaタンパク質の発現を、ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動および高特異性多価ウサギ抗30kDaタンパク質免疫グロブリンによる免疫ブロットによって確認した。BCGタイス(Tice)narG pSMT3−MTB30が対照BCGタイス(Tice)株よりも培養液1mLあたりの30kDa抗原が約10〜20倍多く産生されることがわかった。
上記した方法を組み換え技術に関する当業者に公知の方法と共に用いることで、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)32(A)kDa主要細胞外非融合タンパク質、16kDa主要細胞外非融合タンパク質、23.5kDa主要細胞外非融合タンパク質、および他のヒト型結核菌(M.tuberculosis)主要細胞外非融合タンパク質を発現している組換え型BCG株(栄養要求株および非栄養要求株)を、調製することができることが、理解される。さらに、類似の方法論を用いて、ライ菌(M.leprae)主要細胞外非融合タンパク質を発現する組換え型BCG株を調製することができ、限定されるものではないが、該タンパク質として、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質 (a.k.a. 抗原85B)のホモログであるライ菌(M.leprae)30kDa主要細胞外非融合タンパク質、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)32(A)kDa主要細胞外非融合タンパク質(a.k.a.抗原85A)のホモログであるライ菌(M.leprae)32(A)kDa主要細胞外非融合タンパク質、および他のライ菌(M.leprae)主要細胞外非融合タンパク質が挙げられる。
さらに、類似の方法論もまた、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質(a.k.a.抗原85B)のホモログであるウシ型結核菌(M.bovis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質を発現する組換え型ウシ型結核菌(M.bovis)、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)32(A)kDa主要細胞外タンパク質 (a.k.a.抗原85A)のホモログであるウシ型結核菌(M.bovis) 32(A)kDa主要細胞外非融合タンパク質、および他のウシ型結核菌(M.bovis)主要細胞外タンパク質の調製に用いることができる。
(プラスミドおよび形質転換体を調製するための典型的な方法)
簡潔に言えば、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)エルドマン(Erdoman)30kDa主要細胞外非融合タンパク質を発現させるために、組換えDNA技術の当業者に公知の方法を用いて、30kDa非融合タンパク質遺伝子と広範囲のフランキングDNA配列とを含む大きなゲノムDNA制限フラグメントをプラスミドのマルチ・クローニング部位に挿入することによって、プラスミドpMTB30を操作した。最初にプラスミドを大腸菌(E.coli)DH5αに導入して、組換え型プラスミドを大量に得た。組換え型大腸菌(E.coli)株(ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa非融合タンパク質を発現させることができない)を250μg/mlハイグロマイシンの存在下で増殖させ、プラスミド・インサートのDNA配列を完全に決定した。陽性形質転換体を大量に得るための条件として6.25kV/cm、25pF、および1000mQを用いた電気穿孔法によって、プラスミドを恥垢菌(M.segmatis)に導入した。本発明は、組換えDNA技術の当業者に公知の方法を用いて、ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動および多価の高特異的ウサギ抗30kDa非融合タンパク質免疫グロブリンによる免疫ブロットによって、50μg/mlハイグロマイシンの存在下での増殖と組換え型30kDa非融合タンパク質の構成的発現および送出とから組換え型プラスミドの存在を確認した。さらに、本発明者は、N末端アミノ酸配列決定法ではその天然の相対物から見分けがつかない組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa非融合タンパク質の正しい発現および処理を確認した。
最適電気穿孔条件として6.25kV/cm、25μF、および200mΩを用いて、組換え型pSMT3プラスミドpMTB30を引き続いてウシ型結核菌(M.bovis)BCGタイス(Tice)に導入した。形質転換体を、エンバイロメンタル・シェーカー内で2%グルコース添加7H9培地で、37℃、4時間にわたりインキュベートし、引き続いて20μg/mlハイグロマイシン含有7H11寒天上で平板培養した。形質転換体を新しい増殖培地に継代培養するので、ハイグロマイシンの濃度を徐々に50μg/mlまで上げた。組換え型BCGタイス(Tice)培養物を、50μg/mlハイグロマイシン含有7H9培地以外は野生型と同一の条件下に維持した。
組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDaタンパク質の発現および送出を、ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動および高特異性多価ウサギ抗30kDa非融合タンパク質免疫グロブリンによる免疫ブロットによって確認した。一般に、10個の形質転換体のうち1つが他の形質転換体よりも著しく大量の組換え型非融合タンパク質を発現および送出し、そのような形質転換体の2つを選択し、それら形質転換体の大きなストックを調製し、10%グリセロール含有7H9培地中で−70℃に凍結した。これらを形質転換体を用いてモルモットでの免疫原組成物の有効性を検討した。図1aは、SDS−PAGEゲルおよび免疫ブロット上での組換え型BCGタイス(Tice)によるヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質の発現を示す。この組換え型菌株は、クマシー・ブルー染色ゲルおよび免疫ブロットの両方で、野生型よりもヒト型結核菌(M.tuberculosis) 30kDa主要細胞外非融合タンパク質をより多く発現した。
次に、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質を発現するウシ型結核菌(M.bovis) BCGコナート(Connaugh)株 (rBCG30 Conn)を、上記したpMTB30プラスミドを用いて、組換え型BCGタイス(Tice)(rBCG30 Tice)について上記したものと同様に調製した。その株を、組換え型BCGタイス(Tice)株についての記載と同様の条件下で、濃度が50μg/mlのハイグロマイシンを含む培地中で維持した。図1bは、SDS−PAGEゲルおよび免疫ブロット上での組換え型BCGコンナート(Connaught)によるヒト型結核菌(M.tuberculosis) 30kDa主要細胞外非融合タンパク質の発現を示す。この組換え型菌株は、クマシー・ブルー染色ゲルおよび免疫ブロットの両方で、野生型よりもヒト型結核菌(M.tuberculosis) 30kDa主要細胞外非融合タンパク質をより多く発現した。
さらに、プラスミドpNBV1と、グルタミン・シンセターゼ遺伝子glnA1または細胞外タンパク質をコードする遺伝子に直に隣接した上流領域のプロモータとを利用して、rBCG株内の主要細胞外タンパク質の相対的発現を親BCG株と比較した。各々の組換え型菌株から得た各々の組換え型タンパク質の免疫ブロットを、クレオサイテックス・エバースマート・ジャズ(CreoScitex EverSmart Jazz)スキャナーを用いてデジタル化し、タンパク質のバンドを、NIHイメージ1.62ソフトウェア・プログラムを使用して、領域測定によって、デンシトメトリー分析した。これらの組換え型タンパク質の発現レベルを表8に示す。
BCGの組換え型菌株のプラスミド安定性を、生化学的に評価した。この生化学的分析は、ハイグロマイシン存在下、組換え型BCG株のブロス培養物が3ヶ月の増殖期間にわたって、組換え型非融合タンパク質発現の定常レベルを維持する。ハイグロマイシンが存在しない場合、同一培養物は非融合タンパク質発現がわずかに減少するだけであり(一細胞あたりを基準にして)、組換え型プラスミドが安定に維持され、かつ選択圧なしに細菌の増殖がかなり少しずつ失われるだけであることを示している(図1aおよび図1b、レーン3)
プラスミドPNBV1とグルタミン・シンセターゼ遺伝子glnA1または細胞外タンパク質をコードする遺伝子に直に隣接した上流領域のプロモータとを利用して、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)主要細胞外タンパク質を発現する本発明の種々の組換え型BCG株の安定性を、調べた。rBCG30タイス(Tice)II、rBCG23.5タイス(Tice)I、およびrBCG30/23.5タイス(Tice)Iによる30kDaおよび/または23.5kDaタンパク質の発現は、プラスミドの陽性選択のためにハイグロマイシンを含んだ培地中で少なくとも3ヶ月にわたる連続培養(約30世代)で安定であった。ハイグロマイシン欠乏培地での1ヶ月(約10世代)に対する株の培養では、発現レベルの低下は無かった。しかし、ハイグロマイシンを含まない連続培養を6ヶ月間おこなった後(約60世代)では、rBCG30タイス(Tice)IIによる30kDaタンパク質の発現は大きく減少し、rBCG30/23.5タイス(Tice)Iによる30kDaおよび23.5kDaタンパク質の発現は検出不可能なレベルまで減少した。rBCG23.5タイス(Tice)Iによる23.5kDaの発現のみが高いままであった。2つの株での発現の低下は、培養物に占める割合が大きい細胞からプラスミドが失われることによる(ハイグロマイシンを含むまたは含まない7H11プレート上に上記株を平板培養して測定)。rBCG23.5タイス(Tice)Iは、ハイグロマイシン無しでの6ヶ月間にわたる培養後でも高い発現が保たれていることと一致してプラスミドの喪失は示されなかった(細胞の約100%がハイグロマイシン耐性)。
さらに、プラスミドPNBV1と細胞外タンパク質をコードする遺伝子に直に隣接した上流領域のプロモータとを利用したヒト型結核菌(M.tuberculosis)、ウシ型結核菌(M.bovis)、およびライ菌(M.leprae)腫瘍細胞外タンパク質を発現する新規の組換え型BCGの安定性もまた、調べた。組み換え型タンパク質(すなわちヒト型結核菌(M.tuberculosis)の30、23.5、および32AkDa主要細胞外タンパク質ならびにウシ型結核菌(M.bovis)、およびライ菌(M.leprae)の30kDa主要細胞外タンパク質)の発現は、ハイグロマイシン(プラスミドpNBV1の陽性選択マーカー)含有または欠乏培地での少なくとも12ヶ月にわたる連続培養(〜120世代)に対して安定であった。プラスミドの喪失は検出されなかった。
これらの実験は、種々の組換え型菌株が、組換え型タンパク質の発現レベルに関して幅広い範囲の安定性を表したことを示している。一般に、内在性のプロモータ領域に融合した組換え型タンパク質のコードDNA配列を含むプラスミドは、少なくとも12ヶ月にわたって組換え型タンパク質をかなり安定して発現し、時間とともにそのレベルが概ね低下したにもかかわらず、細菌細胞の代謝状態と対応の内因性タンパク質の発現と組換え型タンパク質の発現および分泌を釣り合わせる可能性が最も高い。対照的に、異種glnA1プロモータが組み換え型タンパク質の発現を駆動するプラスミドを含む株は、時間経過にともなった発現の安定性の大きなばらつきを示した。組換え型のタンパク質が上記した株から発現されるものと同一である点に留意する必要がある。したがって、発現のばらつきは、明らかにプロモータ配列の機能である。
(本発明の免疫組成物の安全性および有効性を試験するための典型的な方法)
免疫原組成物の生産が成功した後、本発明の免疫原組成物を、動物モデルを使用して安全性および有効性について試験する。モルモットは特に臨床的、免疫学的、および病理学的にヒト結核症に関連していることから、モルモットを研究に用いた。マウスおよびラットとは対照的に、しかしヒトのように、モルモットは、(a)エアロゾル化した低量のヒト型結核菌(M.tuberculosis)に対して感受性があり、(b)ツベルクリンに対して強い皮膚DTHを示し、(c)肺病巣でラングハンス巨細胞および乾酪化を示す。しかし、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)に感染する約10%の免疫能力のあるヒトだけが、その寿命にわたって活動性疾患を呈するのに対して(暴露後半分が早く、潜在性期間の後に半分)、感染したモルモットは常に初期の活動性疾患を呈する。モルモットがこの点でヒトと異なる一方で、モルモットがヒト型結核菌(M.tuberculosis)に感染した後、活動性疾患を呈する一貫性は免疫原組成物の有効性を試行する上での利点である。
本発明の教示にもとづいて作られる免疫化接種材料の調製は、対数的に増殖する野生型または組換え型BCG培養物(「細菌」)から採取した一定分量(アリコート)からおこなった。細菌の各々の一定分量を、15分間3,500x gで遠心することによってペレット化し、つぎに1xリン酸緩衝食塩水(1xPBS、50mMリン酸ナトリウム、pH7、150mM塩化ナトリウム)で洗浄した。つぎに、免疫化接種材料を最終濃度が1xPBSの1mlあたり1x10コロニー形成単位に再懸濁し、100μlあたり1,000個の生菌が含まれた。
チャールズ・リバー・ブリーディング・ラボラトリーズ(Charles River
Breeding Laboratories)から入手した特異的病原体を持たない250〜300gの非近交系雄ハートレイ(Hartley)株モルモットを9匹の群にして、以下のうちの1つによって皮内経由で免疫化した。すなわち、(1)BCGコナート(Connaught)[10コロニー形成単位(CFU)]1回のみ(時間0週)、(2)rBCG30コナート(Connaught)(10CFU)1回のみ(時間0週)、(3)精製組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質(r30)、100μlシンテックス(Syntex)アジュバント製剤(SAF)中100μg、3週間隔で3回(時間0、3、および6週目)、SAFは、プルロニック(Pluronic L121)、スクアレン、およびTween80から構成され、さらに第1回目の免疫化では、アラニル・ムラミル・ジペプチドを含み、さらに(4)SAFのみ(100μl)(偽免疫化)、3週間隔で3回(時間0、3、および6週目)である。3匹の動物からなる追加の群は、SAFのみ(100μl)で偽免疫化し、皮膚試験の対照群とした。これらおよび3〜6匹の他の偽免疫化動物を、抗原投与実験の際の非感染対照とした。
単一免疫化(BCGおよびrBCG30群)または第1の免疫化(r30群および偽免疫化皮膚試験群)後9週目、モルモットの背部を剃り、10μgの精製組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質(r30)を含む100μlリン酸緩衝食塩水を皮内に注射した。24時間後、紅斑および硬化の直径を測定した(抗原投与検査で使用される偽免疫化動物とは別の偽免疫化動物からなる群を用いて皮膚試験をおこった)。抗原投与検査で用いられる偽免疫化動物は、皮膚試験そのものが出力に影響を及ぼす影響を取り除くために、抗原投与検査で用いた偽免疫化動物は皮膚検査に用いなかった)。
第1回目の免疫化または単回のみの免疫化から9週目および皮膚試験直後に、ヒト型結核菌(M. tuberculosis)を1x10コロニー形成単位(CFU)含む10ml単一細胞懸濁液から生じたエアゾールによって、抗原投与をおこなった。毒性を保つために、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)エルドマン(Erdoman)株(ATCC35801)を非近交系モルモットに継代接種し、7H11寒天上で培養し、穏やかに超音波処理にかけて単一細胞懸濁液を得て、動物抗原投与実験で使用するために−70℃で凍結した。抗原投与エアゾール用量は、〜40個の生菌を各々の動物の肺に送達した。肺結核症に関しては自然な感染経路であることから、風媒性の感染経路を用いた。比較的短期間(10週)で100%の対照動物で測定可能な臨床疾患を誘発するために、大用量を用いた。その後、層流バイオハザード安全エンクロージャーに含まれるステンレススチール製ケージにモルモットを個々に収容し、標準的な飼料および水が自由に得られるようにした。動物に対して疾患の観察および体重測定を10週間にわたり毎週おこない、その後安楽死させた。各動物の右肺および脾臓を取り出し、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)のCFUのために培養した。
2つの実験の各々で、偽免疫化動物および野生型BCGによって免疫化された動物は、組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質(r30)による試験の際に、紅斑および硬化をわずかに示すかまたは全く示さなかった。それとは対照的に、r30またはrBCG30によって免疫化された動物は、偽免疫化または野生型BCG免疫化動物よりも著しく高い顕著な紅斑および硬化を示した(表1および図2)。
2つの実験の各々で、非感染対照群では、rBCG30または野生型BCGのいずれかによって免疫された動物でなされるように、抗原投与後、正常に体重の増加が生じた(図3)。実際、これら3種類の群のあいだでは、体重の増加に著しい違いはなかった。それとは対照的に、偽免疫化動物およびより小さい範囲のr30免疫化動物では、示された体重増加の減少が実験の進行中おこる(表2および図3)。したがって、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)による抗原投与後、BCGおよびrBCG30は、この慢性感染症のモルモット・モデルで、完全に体重減少からの動物、ヒトの結核症の主要理学的徴候から動物を完全に保護した。
2つの実験の各々で、10週間にわたる観察期間の終わりに、モルモットを安楽死させ、各々の動物の右肺および脾臓を無菌的に取り出し、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)のコロニー形成単位を評価した。偽免疫化動物は、肺および脾臓で最も高い細菌負荷があった(表3ならびに図4aおよび図4b)。r30で予防接種をされた動物は、偽免疫化動物よりも肺および脾臓の微生物が少ない。BCG免疫化動物は、r30免疫化動物よりも微生物が少ない、また驚くべきことに、rBCG30免疫化動物はBCG免疫化動物よりも微生物が少ない。平均値を比較するための分散方法の二方向階乗分析を用いる統計学的試験によって、実験1の4つの「処理(treatment)」群(偽、r30、BCG、およびrBCG30)の平均値は、実施例2の4つの処理群の平均値とはあまり変わらなかったことが示された。複合データを表4および図3に示す。最大の関心および需要性は、rBCG30免疫化動物は肺に0.5log未満の微生物が生息し、BCG免疫化動物よりも脾臓の微生物がほぼ1 log未満である。統計分析では、統計的有意差を評価するために、平均値とチューキー−フィッシャー(Tukey−Fisher )最小有意差(LSD)基準とを比較するために分散法の分析を用い、肺と腎臓との両方にある4つの群の各々の平均は、他の各々の手段とは著しくことなっていた(表4)。rBCG30免疫化動物とBCG免疫化動物との間の肺での違いは、ρ=0.02で有意であり、また脾臓ではρ=0.001である。肺でのCGUの違いを近似させるために、全体的検査で、rBCG30免疫化動物の肺は、BCG免疫化動物と比べて、肺の破壊が少ない(20±4%対35±5%平均値±SE)。
したがって、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質を発現する組換え型BCGの投与は、肺結核症の非常に感受性のあるモルモット・モデルでヒト型結核菌(M.tuberculosis)によるエアゾール抗原投与に対して高水準の防御を誘発した。それとは対照的に、以下の実施例で説明するように、アジュバントとして同一のミコバクテリア細胞外非融合タンパク質(ヒト型結核菌(M.tuberculosis)組換え型30kDa主要細胞外非融合タンパク質)をBCGとともに投与することで、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)によるエアゾール抗原投与に対する高レベルの防御が誘発されず、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質組換え型恥骨菌(M. smegmatis)が投与されず、BCGとほぼ同様の大きさであり、BCGのように60〜90日かけてタンパク質をゆっくり放出することがないヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質のミクロスフェアの状態でヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質を投与することではなく、またリポソームにカプセル化したヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外非融合タンパク質の投与でもない。
この発明の非常に驚くべき態様は、たとえ野生型が内在性の高相同性30kDa主要細胞外タンパク質を発現および分泌するとしても、rBCG30株は野生型BCGよりも優れた防御を誘導した(図1参照)。亜株BCGコナート(Connaught)由来の30kDaタンパク質をコードする遺伝子の配列決定はなされなかった。しかし、BCGの2つの別の亜株の30kDaの配列は、それらの亜株のクローン化された遺伝子の配列から推論されるもので、1つのアミノ酸(BCG Paris 1173P2)または2つのアミノ酸が追加された5つのアミノ酸(BCG Tokyo)のヒト型結核菌(M.tuberculosis)とは異なる(pages 3041−3042 of Harth, G., B.−Y. Lee, J. Wang, D.L. Clemens, and M.A. Horwitz. 1996, “Novel insights into the genetics, biochemistry, and immunocytochemistry of the 30−kilodalton major extracellular protein of Mycobacterium tuberculosis”, Infect. Immun. 64:3038−3047を参照せよ。なお、本明細書ではこれらの文献の内容全体を援用する)。したがって、組換え型菌株の改善された防御は、組換え型タンパク質と内在型タンパク質との小さなアミノ酸の違いにもとづく可能性が低い。より詳しくは、内在性タンパク質と比較して、組換え型非融合タンパク質の強化された発現による。そうであるならば、コピー数の多いプラスミドを用いて得られる豊富な発現が、組み換え型免疫原組成物の成功にとって自分が重要な因子である。
第3の実施形態では、チャールズ・リバー・ブリーディング・ラボラトリーズ(Charles River Breeding Laboratories)から入手した特異的病原体を持たない250〜300gの非近交系雄ハートレイ(Hartley)株モルモットを9匹の群にして、以下の株のうちの1つを10CFUで皮内経由で免疫化した。
A群: BCG Tice 親対照
B群: rBCG30 Tice I (pSMT3−MTB30)
C群: rBCG30 Tice II (pNBV1−pglnA1−MTB30)

D群: rBCG23.5 Tice I (pNBV1−pglnA1−MTB23.5)
E群: rBCG30/23.5 Tice II (pNBV1−pglnA1−MTB30/23.5)
F群: rBCG30 TiceII (pNBV1−pglnA1−MTB30)およびrBCG23.5Tice I (pNBV1−pglnA1−MTB23.5)
(各株5x10
また、18匹の動物を以下のようにして緩衝液のみで偽免疫化した。すなわち、G群:
12匹の偽動物(後の抗原投与のみ)およびH群: 6匹の偽動物(皮膚試験のみ)。
免疫化後9週目、上記したA〜F群の各々の9匹のモルモットと偽群Hの6匹の動物とに対して背部を剃り、10μgの精製組換え型ヒト型結核菌(M. tuberculosis) 30 kDa主要細胞外タンパク質 (r30)を含む100μlのリン酸緩衝食塩水を皮内注射した。r23.5(A、D、E、またはF群)を発現する株で免疫化した動物とH群の偽動物6匹に対して、10μgの精製組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)23.5kDa主要細胞外タンパク質を含む100μlリン酸緩衝食塩水で、さらに皮膚試験をおこなった。24時間後、紅斑および硬化の直径を測定した(抗原投与検査で使用したものとは別の群の偽免疫化動物を皮膚試験に用いた。抗原投与検査に用いた偽免疫化動物は、皮膚試験それ自体が結果に影響を及ぼす可能性を排除するために、皮膚試験をおこなわなかった)。
表9にまとめたように、結果は、親BCGタイス(Tice)株(A群)によって免疫化された動物および偽免疫化動物(H群)はr30またはr23.5によって試験された際に、紅斑および硬化をわずかに有するかまたは全く有さないことを示した。対象的に、r30で発現した組換え型BCGにより免疫化した動物は、BCGタイス(Tice)または偽免疫化動物よりも著しく高いr30に応答して、顕著な紅斑および硬化を示した。同様に、r23.5を発現する組換え型BCG株により免疫化した動物は、BCGタイス(Tice)または偽免疫化動物よりも著しく高いr23.5に応答して、顕著な紅斑および硬化を示した。さらに、r30およびr23.5の朗報を発現する組換え型BCGによって免疫化された動物は、BCGタイス(Tice)または偽免疫化動物よりも著しく高いそれらのタンパク質に応答して、顕著な紅斑および硬化を示した。最後に、同時に組換え型BCGの異なる2つの株(一方がr30を発現し、他方がr23.5を発現する)によって免疫化された動物は、BCGタイス(Tice)または偽免疫化動物よりも著しく高いこれらのタンパク質の両方に応答して、顕著な紅斑および硬化を示した。
面白いことに、新規の組換え型BCG株(C、D、E、およびF群)によって免疫化された動物(そのすべてがヒト型結核菌(M.tuberculosis)glnA1遺伝子の上流領域から誘導したプロモータを利用して組換え型タンパク質を発現する)は、30kDa主要細胞外タンパク質をコードするヒト型結核菌(M.tuberculosis)の上流領域に由来するプロオー他を利用してr30を発現するrBCG30タイス(Tice)I株により免疫化された動物よりもr30に対して、より多くの紅斑および硬化を持たない。
免疫後9週および皮膚試験直後、A〜G群のすべての動物に対して、5x104コロニー形成単位(CFU)のヒト型結核菌(M.tuberculosis)を含む10mlの単一細胞懸濁液から生成したエアゾールにより、抗原投与を施した(抗原投与に秋だって、抗原投与株であるヒト型結核菌(M.tuberculosis)エルドマン(Erdoman)株[ATCC35801]を非近交系モルモットに継代投与して毒性を維持し、7H11寒天上で培養し、穏やかに超音波処理にかけて単一細胞懸濁液を得て、動物抗原投与実験で使用するために−70℃で凍結した)。抗原投与用量は、〜20個の生菌を各々の動物の肺に送達した。肺結核症に関しては自然な感染経路であることから、風媒性の感染経路を用いた。比較的短期間(10週)で100%の対照動物で測定可能な臨床疾患を誘発するために、大用量を用いた。その後、層流バイオハザード安全エンクロージャーに含まれるステンレススチール製ケージにモルモットを個々に収容し、標準的な飼料および水が自由に得られるようにした。動物に対して疾患の観察および体重測定を10週間にわたり毎週おこない、その後安楽死させた。各動物の右肺および脾臓を取り出し、37℃、5%CO−95%大気雰囲気で2週間にわたり、ミドルブルーク(Middlebrook)7H11寒天、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)上で、CFUのために培養した。
肺および脾臓でのCFUのアッセイ結果を、表10に示す。これらの結果は、BCGまたは任意の組換え型BCG株によって免疫化された動物がかなり低いCFUを持っていたことを示している。もちろん、任意の組換え型BCG株で免疫化した動物は、親BCGタイス(Tice)株で免疫化した動物よりも肺および脾臓のほうが低いCFUを有した。しかし、この実験で試験した組換え体でrBCG30タイス(Tice)Iよりも優れているものはなかった。
第4の実験で、チャールズ・リバー・ブリーディング・ラボラトリーズ(Charles River Breeding Laboratories)から入手した特異的病原体を持たない250〜300gの非近交系雄ハートレイ(Hartley)株モルモットを6匹の群にして、以下の株のうちの1つを10CFUで皮内経由で免疫化した。
I群: BCG Tice 親対照
J群: rBCG30 Tice I (pSMT3−MTB30)
K群: rBCG30 Tice III (pNBV1−MTB30)
L群: rBCG23.5 Tice II (pNBV1−MTB23.5)
M群: rBCG30/23.5 Tice IIA (pNBV1−MTB30/23.5↑↑)
N群: rBCG30/23.5 TiceIIB (pNBV1−MTB30)および
rBCG23.5Tice I (pNBV1−MTB30/23.5↑↓)
O群: rBCG32A Tice I (pNBV1−MTB32A)
P群: 緩衝液のみで免疫化した偽物(6匹の動物)。
免疫後9週間で、上記I〜P群のモルモットの背部を剃った。r30を発現する株(I、J、K、M、およびN群)で免疫化した動物ならびにP群の6匹の偽免疫化動物に対して、10μgの精製組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質(r30)を含む100μlリン酸緩衝食塩水を皮内に注射した。r23.5を発現する株(L、M、およびN群)で免疫化した動物ならびにP群の6匹の偽免疫化動物に対して、10μgの精製組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)23.5kDa主要細胞外タンパク質を含む100μlリン酸緩衝食塩水で皮膚試験をおこなった。r32A(0群)を発現する株を注射された動物とp群の偽動物6匹とを、10μgの精製組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)32AkDa主要細胞外タンパク質)を含む100μlリン酸緩衝食塩水で皮膚試験をおこなった。24時間後、紅斑および硬化の直径を測定した。
表11にまとめているように、結果は、親BCGタイス(Tice)株(A群)によって免疫化された動物は、r30による試験に対してなんら紅斑および硬化を示さなかったが、組換え型30kDタンパク質を発現する株で、免疫化された動物(J、K、M、およびN群)は顕著な紅斑および硬直を示した。さらに、rBCG30タイス(Tice)Iよりもかなり大量にあるr30を発現し、30kDプロモータ遺伝子の上流領域から誘導されたプロモータを用いる株によって免疫化された動物(K、M、およびN群)は、rBCG30タイス(Tice)Iにより免疫化した動物よりも、よりいっそうの硬化、紅斑よりも皮膚遅延型過敏症のよりいっそう信頼性の高い指標である。r23.5を発現する組換え型BCG株により免疫化された動物(L、M、およびN群)(親BCG株に存在しないタンパク質)は、r23.5に反応して顕著な紅斑および硬化を示した。一方、偽免疫化微生物は、ほとんど紅斑がなく、また硬化が認められなかった。r32Aを過剰発現する組換え型BCG株で免疫化した動物(0群)は、偽免疫化動物よりも32AkDaタンパク質に応答してより多くの紅斑および硬化を示した。
さらに、免疫化10週間後に、1−P群のいくつかのモルモットから血液を採取し、精製組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質(r30)、32AkDa主要細胞外タンパク質(r32A)、および23.5kDa主要細胞外タンパク質(r23.5)に対して、血清抗体力価を測定した。抗体力価は、ELISAによって定量し、各動物について相互の抗体価を決定した。図6は、これらの結果をグラフにして示す。
免疫化したほ乳類動物での感染からの保護を説明するために設計された第5の実験では、チャールズ・リバー・ブリーディング・ラボラトリーズ(Charles River
Breeding Laboratories)から入手した特異的病原体のない250〜300gの非近交系雄ハートレイ(Hartley)株モルモットを6匹の群にし、以下の1つの株の10CFUで皮内経由で免疫化する。すなわち、
I群: BCG Tice 親対照
J群: rBCG30TiceI (pSMT3−MTB30)
K群: rBCG30TiceIII (pNBV1−MTB30)
L群: rBCG23.5TiceII (pNBV1−pMTB23.5)
M群: rBCG30/23.5TiceIIA (pNBV1−MTB30/23.5↑↑)
N群: rBCG30/23.5 Tice IIB (pNBV1− MTB30/23.5↑↓)
O群: rBCG32ATiceI (pNBV1−MTB32A)
P群: 抗原を含まない緩衝液で免疫化した12匹の偽動物。
免疫化9週後および皮膚試験直後に、I−P群の動物全てを、5x10コロニー形成単位(CFU)のヒト型結核菌(M.tuberculosis)を含む10mlの単一細胞懸濁液から生成したエアゾールによって抗原投与をおこなった(抗原投与前、毒性を維持するために、抗原投与株であるヒト型結核菌(M.tuberculosis)エルドマン(Erdoman)株 (ATCC 35801)を非近交系モルモットで継代培養し、7H11寒天上で培養し、穏やかに超音波処理して単一細胞懸濁液を得て、さらに−70℃で凍結した)。エアゾール用量は、〜20個の生菌を各々の動物の肺に送達した。肺結核症に関しては自然な感染経路であることから、風媒性の感染経路を用いた。比較的短期間(10週)で100%の対照動物で測定可能な臨床疾患を誘発するために、大用量を用いた。その後、層流バイオハザード安全エンクロージャーに含まれるステンレススチール製ケージにモルモットを個々に収容し、標準的な飼料および水が自由に得られるようにした。動物に対して疾患の観察および体重測定を10週間にわたり毎週おこない、その後安楽死させた。各動物の右肺および脾臓を取り出し、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)のCFUのために培養した。結果は、以下の表12に示す。
Figure 2006501304
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以下の実施例は、本発明の新規の態様を例示するのに役立つ。各実施例は、本発明の免疫原組成物に密接に関連するが異なる技術を用いて、本発明の免疫原を送達する手段を例示する。具体的には、実施例1は、本発明の免疫原を、BCGとともに投与するが、BCGによって生体内(in vivo)では発現されない際、高レベルの感染防御免疫が達成されないことを実証する。
実施例2は、BCGに密接に関連するがほ乳類宿主中で複製できないミコバクテリア(Mycobacterium)種を用いた本発明の免疫原の生体内(in vivo)発現が、ヒト型結核菌(M. tuberculosis)での抗原投与に対して有意なレベルの防御を誘導しないことを実証する。実施例3および4は、合成免疫原組成物マイクロキャリアによる本発明の免疫原の徐放も、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)での抗原投与に対して有意なレベルの防御を誘導しないことを実証する。
実施例5は、本発明の栄養要求性実施形態を投与するための代表的な方法を提供する。同様に、実施例6は、本発明の非栄養要求性弱毒化菌株の使用を詳述する。
したがって、以下の実施例は、本発明の細胞内病原体免疫組成物が感染症免疫学分野の代表例であるという全く驚くべき注目に値する進歩を強調するのに役立つ。これらの実施例は、説明目的であって、限定するものではない。
実施例1
BCGと組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質(r30)とでのモルモットの免疫化は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)での抗原投与に対して高レベルの防御を誘導しない。
本発明者らは、事前に、強力なアジュバント(SAF,Syntex Adjuvant Formulation)中のBCGとr30とでモルモットを免疫化した。r30タンパク質(一免疫化当たり100μg)を3回皮内投与した。これは、r30に対して強力な皮膚遅延型過敏症(C−DTH)応答を誘導した(図5)。実際に、C−DTH応答は、r30を発現する組換え型BCGによって誘導されるC−DTH応答に匹敵した。それにも関わらず、BCGおよびr30両方での免疫化は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)での抗原投与に対して高レベルの防御を誘導しなかった(表5)。BCGおよびr30両方で免疫化された動物は、BCG単独で免疫化された動物よりも肺および脾臓中でCFUのレベルが低いというわけではなかった。この結果は、r30を発現する組換え型BCGで免疫化された動物がヒト型結核菌(M.tuberculosis)で抗原投与された際に高レベルの防御を示したという上記の結果と直接的に違っている。
実施例2
自然の形態と識別不能な形態のヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質(r30)を発現する生存恥垢菌(M.smegmatis)でのモルモットの免疫化は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)での抗原投与に対して高レベルの防御を誘導しない。
本発明者らがBCGで動物を免疫化した同様の実験のうちの1つでは、本発明者らは、自然の形態と識別不能な形態のヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質(r30)を発現する生存組換え型恥垢菌(M.smegmatis)でモルモットを免疫化した。恥垢菌(M.smegmatis)によるヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質(r30)の発現および分泌は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質を発現および分泌する組換え型BCG菌株のそれ以上であった。さらに、組換え型恥垢菌(M.smegmatis)、すなわち10個の細菌の投与量は、動物宿主中での恥垢菌(M.smegmatis)の乏しい増殖を埋め合わせてあり余るほど非常に高く、組換え型BCG(10個の細菌)の投与量の100万倍であった。さらに埋め合わせるために、組換え型恥垢菌(M.smegmatis)を3回皮内投与し、一方で、組換え型BCGを1回だけ皮内投与した。r30タンパク質を発現する組換え型恥垢菌(M.smegmatis)での免疫化は、r30に対して強力な皮膚遅延方過敏症(C−DTH)応答を誘導した。実際に、C−DTH応答は、r30を発現する組換え型BCGによって誘導されるC−DTH応答に匹敵するか、またはそれ以上であった。それにも関わらず、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質を発現する生存組換え型恥垢菌(M.smegmatis)は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)での抗原投与に対して高レベルの防御を誘導しなかった(表6)。ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質を発現する生存組換え型恥垢菌(M.smegmatis)で免疫化された動物は、BCG単独で免疫化された動物よりも肺および脾臓中でCFUのレベルが低いというわけではなかった。この結果は、r30を発現する組換え型BCGで免疫化された動物がヒト型結核菌(M.tuberculosis)で抗原投与された際に高レベルの防御を示したという上記の結果と直接的に違っている。
実施例3
BCGとほぼ同じ大きさであり、かつBCGと同様に60〜90日にわたってヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質(r30)を徐放するミクロスフェアでのモルモットの免疫化は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)での抗原投与に対して高レベルの防御を誘導しない。
本発明者らがrBCG30およびBCGで動物を免疫化した同様の実験のうちの1つでは、本発明者らは、BCGとほぼ同じ大きさであり、かつBCGと同様に60〜90日にわたってヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質(r30)を徐放するミクロスフェアでモルモットを免疫化した。動物の1セットを、r30を10mg含有するミクロスフェアで1回免疫化した。動物の別のセットを、r30を3.3mg含有するミクロスフェアで3回免疫化した。この量は、組換え型BCG菌株によって発現されるr30タンパク質の量を大きく超えるように算出された。ミクロスフェアのいずれかの療法での免疫化は、r30に対して強力な皮膚遅延型過敏症(C−DTH)応答を誘導した。実際に、C−DTH応答は、r30を発現する組換え型BCGによって誘導されるC−DTH応答に匹敵した。それにも関わらず、BCGとほぼ同じ大きさであり、かつBCGと同様にヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質を徐放するミクロスフェアでの免疫化は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)での抗原投与に対して高レベルの防御を誘導しなかった(表7)。該ミクロスフェアで免疫化された動物は、BCG単独で免疫化された動物よりも肺および脾臓中でCFUのレベルが低いというわけではなかった。この結果は、r30を発現する組換え型BCGで免疫化された動物がヒト型結核菌(M.tuberculosis)で抗原投与された際に高レベルの防御を示したという上記の結果と直接的に違っている。
実施例4
ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質を含有するリポソームでのモルモットの免疫化は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)での抗原投与に対して高レベルの防御を誘導しない。
実施例3と同様の実験では、本発明者らは、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質を含有するリポソームでモルモットを免疫化した。r30を50μg含有するリポソームで動物を3回免疫化した。これは、r30に対して適度に強力な皮膚遅延型過敏症(C−DTH)応答を誘導した。このC−DTH応答は、BCGおよび対照リポソームによって誘導されたC−DTH応答以上であったが、r30を発現する組換え型BCGによって誘導されたC−DTH応答より少なかった。それにも関わらず、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質を含有するリポソームでの免疫化は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)での抗原投与に対して高レベルの防御を誘導しなかった(表7)。ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質を含有するリポソームで免疫化された動物は、BCG単独で免疫化された動物よりも肺および脾臓中でCFUのレベルが低いというわけではなかった。この結果は、r30を発現する組換え型BCGで免疫化された動物がヒト型結核菌(M.tuberculosis)で抗原投与された際に高レベルの防御を示したという上記の結果と直接的に違っている。
実施例5
増殖調節可能な栄養要求性菌株の使用
増殖調節可能な栄養要求性ワクチンを次のように用いる。免疫無防備状態のヒトを、ワクチン、例えば、トリプトファン栄養要求株BCG菌株で免疫化する。該ヒトは、該栄養要求株が正常レベルで増殖して結核に対する高レベルの感染防御免疫を誘導するように充分に高量のトリプトファンを用いた食事を即座に補給し始める。大部分のヒトでは、組換え型BCGの増殖は、健康問題を引き起こさない。該生物は、組織中で少なめのレベルへ増殖し、その後、免疫系によって排除される。しかし、複数の免疫無防備状態のヒトでは、細菌増殖に由来する播種性疾患または他の問題が発症する。その後、これらのヒトは、食事補給を即座に止める。食事補給の不在下では、栄養要求株は、急速に死滅し、健康問題を引き起こすことを止める。
このアプローチは、医療が容易に利用可能ではないであろう発展途上国では、特に興味をそそるアプローチである。ヒトが免疫化から不都合な結果を有する場合、該ヒトは、高価でありかつ/または容易に入手可能ではないであろう、健康医療制度にアクセスする必要がないか、または抗生物質を入手する必要がない。該ヒトは、食事補給を摂取すること止めることだけが必要であり、すなわち、能動的な介入よりむしろ受動的な介入である。
実施例6
非栄養要求性弱毒化菌株の使用
BCGワクチンを投与する、すなわち任意の食事補給なしでの通常の方法で、これらの菌株を免疫無防備状態のヒトに投与する。
本発明の免疫組成物は、細胞内病原体に対する免疫応答の誘導へ全く新規なアプローチを表す。一連の充分に計画された実験および綿密な分析を介して、本発明者らは、本発明の教示に従って、正確に選択された細胞内病原体または密接に関連する種を形質転換して同一または異なる細胞内病原体の組換え型細胞外タンパク質を発現させると、感染防御免疫がついに達成されることを完全に実証した。
本発明を用いて、複数の細胞内病原体に対して診断、予防、および治療的利点を同時に提供することもできる。例えば、ウシ型結核菌(M.bovis)のような組換え型弱毒化細胞内免疫原組成物を設計して、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)およびレジオネラ(Legionella)種に対する免疫防御的免疫原を同時に発現させることができる。したがって、免疫原組成物を送達する上で優れた効率性を達成することが可能である。ヒト型結核菌(M.tuberculosis)の主要細胞外タンパク質を発現する組換え型BCGの非限定的な例は、本発明の充分に可能な実施形態として役立つのみならず、医療、および総じて人類社会への有意な進歩も表す。
特に指示しない限り、本明細書および請求項で用いられる成分の量、分子量等の特性、反応条件等を表す数字全ては、用語「約(about)」によって全ての例で調整されるとして理解されるだろう。したがって、それと逆の指示がない限り、以下の明細書および添付の請求項で記載される数値的なパラメータは、本発明によって得ることが求められる所望の特性によって変わりうる概算である。最低限でも、さらに請求項の範囲と等価物の教義の適用を限定しようとするのではなく、各数値的なパラメータは、少なくとも、報告される有意な数字の数値を鑑みて解釈されるべきであり、通常の丸めの技術を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広い範囲を記載する数値的な範囲およびパラメータが概算であるということに関わらず、特定の例で記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、任意の数値は、本質的に、代表的な試験測定値で見出される標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を含む。
本明細書で特に指示しないか、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明を記載する文脈(特に、以下の請求項の文脈)で用いられる用語「1つ(aおよびan)」および「特定の(the)」ならびに類似の指示物は、単数形および複数形両方を網羅すると解釈される。本明細書での値の範囲の詳述は、単に、該範囲内にある別々の値それぞれを個々に言及する速記の方法として役立つことを意図するのみである。本明細書で特に指示しない限り、個々の値それぞれは、該値が本明細書で個々に詳述されるように本明細書に組み込まれる。本明細書で特に指示しないか、文脈によって明らかに矛盾しない限り、本明細書に記載される全ての方法は、任意の適当な順序で実行されうる。本明細書で提供される任意の例および全ての例、または例示的な言語(例えば、「等の(such as)」の使用は、単に、本発明をより良く説明することを意図するのみであり、特に請求される本発明の範囲に何ら限定を課さない。本明細書中の言語は、本発明の実施に不可欠な請求されない要素のいずれも指示するものとして解釈されるべきではない。
本明細書に開示される本発明の代替的な要素または実施形態の分類は、限定として解釈されるものではない。各群構成要素は、個々に、または本明細書で見出される群の他の構成要素または他の要素との任意の組合せで、言及および請求されうる。群の1つ以上の構成要素は、便宜および/または特許性上の理由のために、群に包括されるか、または群から消去されうることが予想される。任意のそのような包括または消去が発生する際、本明細書は、本明細書で、添付の請求項で用いられるマーカッシュ群全ての記載を満たすように改変される群を含むものとする。
この発明の好ましい実施形態は、本発明を実行するために本発明者らが既知である最良の形態を含んで、本明細書に記載される。当然、それらの好ましい実施形態に対する変更は、前述の記載を解釈した上で当業者には自明である。本発明者らは、当業者がそのような変更を適宜用いることを期待し、かつ本発明者らは、本発明が本明細書で特に記載されるものと別に実行されることを意図する。したがって、この発明は、該当する法律によって許可されるように、本明細書に付随する請求項で列挙される主題の全ての改変および等価物を含む。さらに、本明細書で特に指示しないか、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、全ての考えられる変更での上記の要素の任意の組み合わせが本発明によって包括される。
さらに、この明細書全体を通して、特許および印刷された刊行物を多数の参考文献としてきた。上記の参考文献および印刷された刊行物のそれぞれは、その全文を本明細書に個々に援用される。
終わりに、本明細書に開示される本発明の実施形態は本発明の原理を説明するものであることが理解される。用いられうる他の改変は、本発明の範囲内である。したがって、一例として、限定するものではないが、本発明の代替的な構成が本明細書の教示にしたがって使用可能である。したがって、本発明は、提示および記載されるものに全く限定されるものではない。
本明細書中において参考として援用されるさらなる参考文献
Figure 2006501304
図1は、培養濾液から得たBCGの形質転換株によるヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis) 組換え体30kDaの分泌物を示す1aおよび1bと標示されたクマシー・ブルー染色ゲルを表す図である。 図2は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)の30kDa主要細胞外タンパク質を発現する組換え型BCG免疫原組成物の皮膚試験結果をBCG単独、組換え型30kDaタンパク質単独、または偽免疫原組成物の場合と比較するように設計された2aおよび2bと標示された2通りの実験から得られた結果をグラフに示す。 図2は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)の30kDa主要細胞外タンパク質を発現する組換え型BCG免疫原組成物の皮膚試験結果をBCG単独、組換え型30kDaタンパク質単独、または偽免疫原組成物の場合と比較するように設計された2aおよび2bと標示された2通りの実験から得られた結果をグラフに示す。 図3は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)による免疫化抗原投与後の3aおよび3bと標示されたモルモットでの体重変化をグラフに示す。 図3は、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)による免疫化抗原投与後の3aおよび3bと標示されたモルモットでの体重変化をグラフに示す。 図4aは、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)による免疫化抗原投与後のモルモット肺から回収された感染性ヒト型結核菌(M.tuberculosis)のコロニー形成単位(CFU)をグラフに示す。図4bは、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)による免疫化抗原投与後のモルモット脾臓から回収された感染性ヒト型結核菌(M.tuberculosis)のコロニー形成単位(CFU)をグラフに示す。 図4aは、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)による免疫化抗原投与後のモルモット肺から回収された感染性ヒト型結核菌(M.tuberculosis)のコロニー形成単位(CFU)をグラフに示す。図4bは、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)による免疫化抗原投与後のモルモット脾臓から回収された感染性ヒト型結核菌(M.tuberculosis)のコロニー形成単位(CFU)をグラフに示す。 図5は、偽免疫原組成物、BCG単独、およびヒト型結核菌(M.tuberculosis)の組換え型30kDaに対するモルモットの皮膚試験応答をグラフに示す。 図6は、生成組換え型ヒト型結核菌(M.tuberculosis)30kDa主要細胞外タンパク質(r30)、32AKDa主要細胞外タンパク質(r32A)、および23.5KDa主要細胞外タンパク質(r23.5)に対する抗体力価をグラフに示す。
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