以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置を含む電気自動車の駆動システムの概要図である。図2は図1の駆動システムの回路図である。詳細な図示は省略するが、本例の電気自動車は、三相交流電力モータなどの電動機2を走行駆動源として走行する車両であり、電動機2は電気自動車の車軸に結合されている。以下、電気自動車を例に説明するが、本発明は、ハイブリッド自動車(HEV)にも適用することができ、また車両以外の装置に搭載される電力変換装置にも適用可能である。なお、本例の電力変換装置は、後述する接続回路100及び導電体200を備えているが、図1及び図2では、接続回路100及び導電体200の図示を省略している。
本例の駆動システムは、直流電源1と、電動機2と、シールド線50、90と、電力変換装置とを備えている。
直流電源1は、複数の二次電池を直列又は並列に接続した電池と、当該電池の正極端子及び負極端子により構成され、シールド線50により電力変換装置に接続されている。直流電源1は、車両の動力源となり、電力変換装置に直流電力を供給する。電力変換装置は、直流電源1と電動機2との間に接続され、直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換し電動機2に供給する。
シールド線50は、一対のシールド線で構成され、一方のシールド線51は直流電源1の正極端子と給電母線11とを接続し、他方のシールド線52は直流電源1の負極端子と給電母線31とを接続する。シールド線51は、線状の金属線51aの外周を、樹脂により形成された樹脂部51bで被覆することで構成される電線である。シールド線52は、シールド線51と同様に構成されている。
電動機2は、例えば、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータである。電動機2は、電力変換装置から出力される交流電力により、電磁気的な作用で動作して、回転力を発生する。電動機2は、図1の駆動システムを搭載した車両の駆動源となる。
シールド線90は三本のシールド線により構成され、3本のシールド線90、91、92は、電動機2のU相、V相、W相と対応して、バスバ80と電動機2とを接続する。シールド線90は、シールド線50と同様に構成されている。
電力変換装置は、金属筐体3と、給電母線11、21〜23、31、41〜43と、パワーモジュール60と、コンデンサ70と、バスバ80とを備えている。また、電力変換装置は、図1及び図2では図示しない、接続回路100及び導電体200を備えている。
金属筐体3は、電力変換装置の外装部材であって、電力変換装置内で発生するノイズの外部への漏洩を防ぐための筐体である。金属筐体3は、金属製の部材で形成されており、内部に、給電母線11、21〜23、31、41〜43と、パワーモジュール60と、コンデンサ70と、バスバ80と、接続回路100と、導電体200とを収容する。
給電母線11、21〜23、31、41〜43は、板状(平板状)の導電体により形成され、直流電源1とパワーモジュール60との間を電気的に接続する導電性の部材である。給電母線11、31は、直流電源から出力される電力をパワーモジュール60に給電する一対の電源線である
給電母線11は、シールド線51を介して、直流電源1の正極側に接続されており、パワーモジュール60を構成するインバータ回路のうち、P側の電源線に相当する。また、給電母線31は、シールド線52を介して、直流電源1の負極側に接続されており、パワーモジュール60を構成するインバータ回路のうち、N側の電源線に相当する。
給電母線11、31は、互いの主面(長手方向に沿う面の内、最も幅の広い面)同士を対向するよう配置されており、給電母線11、31の互いに対向する対向面の間に隙間を設けて、配置されている。すなわち、給電母線11の上下面(主面に沿った面)のうち、下面が給電母線31と対向し、給電母線31の上下面のうち、上面が給電母線11と対向している。また、給電母線11と給電母線31は、インダクタンス成分を低減させるために、近接している。給電母線11、31の一部、又は、給電母線11、31の先端部分が、電力変換装置の端子(タブ)となって、シールド線50の先端に接続されている。
給電母線21、41、給電母線22、42及び給電母線23、43は、PN電源線である給電母線11、21の電力を、パワーモジュール60のインバータ回路の各相に、それぞれ給電する、一対の配線である。
給電母線21〜23は、給電母線11及びパワーモジュール60に接続されており、パワーモジュール60のインバータ回路のうち、U、V、W相の上アーム回路へのそれぞれの接続用配線に相当する。給電母線41〜43は、給電母線31及びパワーモジュール60に接続されており、パワーモジュール60のインバータ回路のうち、U、V、W相の下アーム回路へのそれぞれの接続用配線に相当する。
給電母線21、41は、互いの主面同士を対向するよう配置されており、給電母線21、41の互いに対向する対向面の間に隙間を設けて、配置されている。すなわち、給電母線21の上下面(主面に沿った面)のうち、下面が給電母線41と対向し、給電母線41の上下面のうち、上面が給電母線21と対向している。また、給電母線21と給電母線41は、インダクタンス成分を低減させるために、近接して配置されている。
給電母線21の長手方向の両端部のうち、一方の先端部の側面は、給電母線11の長手方向に沿う側面と、面同士で接触した状態で、給電母線11の側面に接続されている。給電母線21の長手方向の両端部のうち、他方の先端部の側面は、パワーモジュール60の端子に接続されている。給電母線22、23も同様に、長手方向の両端部の側面は、給電母線11の側面、及び、パワーモジュール60の端子にそれぞれ接続されている。また、給電母線21と給電母線22との間、及び、給電母線22と給電母線23との間には、一定の隙間が空くように、給電母線21〜23が配置されている。
給電母線41の長手方向の両端部のうち、一方の先端部の側面は、給電母線31の長手方向に沿う側面と、面同士で接触した状態で、給電母線31の側面に接続されている。給電母線41の長手方向の両端部のうち、他方の先端部の側面は、パワーモジュール60の端子に接続されている。給電母線42、43も同様に、長手方向の両端部の側面は、給電母線31の側面、及び、パワーモジュール60の端子にそれぞれ接続されている。また、給電母線41と給電母線42との間、及び、給電母線42と給電母線43との間には、一定の隙間が空くように、給電母線41〜43が配置されている。
給電母線11及び給電母線21〜23は、それぞれの主面が面一になるよう、配置されている。また、給電母線31及び給電母線41〜43は、それぞれの主面が面一になるよう、配置されている。
なお、給電母線21〜23、41〜43とパワーモジュール60との接続位置は、図1では、直方体の形状のパワーモジュール60に対して正面に設けたが、給電母線21〜23、41〜43の主面がパワーモジュール60の底面に沿うように配置され、給電母線21〜23、41〜43の主面とパワーモジュール60の底面同士を接続するようにしてもよい。また、給電母線21〜23、41〜43は、パワーモジュール60の他の面に接続されてもよい。
パワーモジュール60は、IGBT又はMOSFET等のモジュール化された、複数の半導体スイッチング素子のスイッチ群を基板上に複数有している。そして、図示しないコントローラからの制御信号に基づき、当該半導体スイッチング素子をオン及びオフさせることで直流電源からの電力を変換して、バスバ80を介して電動機2に電力を出力するインバータである。
パワーモジュール60のインバータの回路は、図2に示すように、複数のスイッチング素子(S1、S2)を直列に接続し、かつ、当該複数のスイッチング素子に対して還流ダイオード(D1、D2)を逆並列にそれぞれ接続した直列回路を、PN電源線(給電母線11、31に相当)の間に接続している。V相及びW相のアーム回路を構成するスイッチング素子(S3〜S6)及びダイオード(D3〜D6)も、それぞれ直列に接続されている。そして、インバータ回路は、複数の当該直列回路をPN電源線の間で、並列に複数接続している
コンデンサ70は、パワーモジュール60のインバータ回路の平滑コンデンサであり、給電母線11と給電母線31との間に接続されている。コンデンサ70は、パワーモジュール60の上に載置されている。なお、図1では、図示を省略しているが、コンデンサ70は、給電母線11、31と配線により電気的に接続されている。また、コンデンサ70は、給電母線21〜23と給電母線41〜43との間に、配線により接続されていてもよい。
バスバ80は、導電材料により板状の、3本の導電板81〜83で形成されており、パワーモジュール60とシールド線90とをそれぞれ接続する。バスバ80の先端部分が、電力変換装置の端子(タブ)となって、シールド線90の先端に接続されている。
次に、図3〜図5を用いて、接続回路100及び導電体200の構成を説明する。図3は、本例の電力変換装置うち、U相に相当する給電母線21、41と給電母線11、31との接続部分の斜視図である。図4は図3のIV−IV線に沿う断面図である。図5は図3で示す構成の等価回路である。
図3及び図4に示すように、給電母線11の側面のうち、給電母線31と対向する対向面に対して、給電母線31とは反対側の側面(給電母線11と対向しない側面であり、給電母線31の上側の側面)には、所定の隙間を空けた状態で、板状の導電体210が設けられている。導電体210は、給電母線21の側面のうち、給電母線41と対向する対向面に対して、給電母線41とは反対側の側面の一部と、所定の間隔を空けた状態で、配置されている。言い換えると、導電体210は、所定の間隔を空けた状態で、給電母線11の主面の一部、給電母線21の主面の一部、及び、給電母線11と給電母線21との接続部分を覆うように、配置されている。導電体210は、給電母線11、21の主面と平行に沿った板状の部材であり、導電材により形成されている。
導電体210は、給電母線11、21と近接した位置に配置されている。そして、導電体210及び給電母線11、21は導電性の材料により形成されている。そのため、導電体210及び給電母線11、21との間には、結合容量(キャパシタンス)が発生し、導電体210及び給電母線11、21はコンデンサとして作用する。これにより、導電体210は、給電母線11及び給電母線21と容量結合されている。
給電母線31の側面のうち、給電母線11と対向する対向面に対して、給電母線11とは反対側の側面(給電母線11と対向しない側面であり、給電母線31の下側の側面)には、所定の隙間を空けた状態で、板状の導電体220が設けられている。導電体220は、給電母線41の側面のうち、給電母線21と対向する対向面に対して、給電母線21とは反対側の側面の一部と、所定の間隔を空けた状態で、配置されている。言い換えると、導電体220は、所定の間隔を空けた状態で、給電母線31の主面の一部、給電母線41の主面の一部、及び、給電母線31と給電母線41との接続部分を覆うように、配置されている。また、導電体220は、給電母線31、41の主面と平行に沿った板状の部材であり、導電材により形成されている。
導電体220は、給電母線31、41と近接した位置に配置されている。そして、導電体220及び給電母線31、41は導電性の材料により形成されている。そのため、導電体220及び給電母線31、41との間には、結合容量(キャパシタンス)が発生するため、導電体220及び給電母線31、41はコンデンサとして作用する。これにより、導電体220は、給電母線31及び給電母線41と容量結合されている。
導電体210、220の長手方向に両端部のうち、一方の端部は開放端になっている。また、当該両端部のうち、他方の端部は接続回路100にそれぞれ接続されている。
接続回路100は、抵抗101を含む回路であって、導電体210と導電体220とを接続する回路である。接続回路100に含まれる抵抗101は、接続回路100に抵抗成分を持たせるために設けられた素子である。抵抗101の抵抗値は、少なくとも導電体13、23の抵抗値より高く設定されている。抵抗101は、接続回路100を構成する導電性の板材の内部に形成され、又は、接続回路100の内部配線に素子を接続することで構成される。これにより、接続回路100は、導電体210と導電体220との間を電気的に接続しつつ、抵抗101により、導電体210と導電体220との間で短絡することを防ぐように、構成されている。
なお、接続回路100における、導電体210と導電体220との間の電気的な接続は、抵抗100を導電体210と導電体220に直接的に接続する接続形態と、抵抗100を、配線等を介して、導電体210と導電体220を間接的に接続する接続形態を含んでいる。
上記のように、導電体210及び導電体220は、所定の隙間(絶縁層に相当)を空けた状態で、給電母線11、21及び給電母線31、41にそれぞれ容量結合しているため、図5に示すように、導電体210と給電母線11、21との間、及び、導電体220と給電母線31、41との間は、コンデンサとして作用する。そして給電母線11、21と給電母線31、41との間は、当該コンデンサと、抵抗101とを接続する等価回路で表される。
ところで、パワーモジュール60に含まれるスイッチング素子がスイッチング動作すると、スイッチングノイズが発生する。スイッチングノイズは、スイッチング素子のスイッチングのタイミングに応じて様々な周波数のノイズとなり、さらに給電母線11、21〜23、31、41〜43において特定の周波数でピーク値をもつノイズ発生源となるため、電力変換装置の外部へ漏洩する可能性がある。そして、電力変換装置を備えた車両に搭載されている車載ラジオの周波数帯域と、ノイズの周波数とが干渉した場合には、ラジオの聴取を困難にしたり、ノイズがユーザにとって耳障りとなる雑音になったりする可能性もある。さらに、ノイズが、車両に搭載された他の電子機器へ悪影響を及ぼす可能性もある。
本例では、導電体210及び導電体220が、給電母線11、21〜23及び給電母線31、41〜43にそれぞれ容量結合されているため、パワーモジュール60のスイッチングノイズにより、給電母線11、21〜23、31、41〜43でノイズが発生した場合には、当該ノイズを、容量結合させた部分(図5で等価的に示すコンデンサに相当)で誘起させる。そして、容量結合させた部分で誘起されたノイズ電流を、抵抗31で熱として消費させる。これにより、ノイズを抑制し、電力変換装置100から外部へノイズの漏洩を防ぐ。
次に、接続回路100の抵抗101の抵抗値について説明する。まず、図6及び図7を用いて、給電母線11(21)と給電母線31(41)の電気的特性を説明する。図6、7は、給電母線11(21)と給電母線21(41)の斜視図である。
図6に示すように、給電母線11(21)と給電母線31(41)との間の距離をdとし、給電母線11(21)と給電母線31(41)の互いに対向する対向面の面積をSとし、給電母線11(21)と給電母線31(41)との間の誘電率をεとする。
給電母線11(21)及び給電母線31(41)は、板状であって、断面が略長方形になるよう、構成されている。そして、給電母線11(21)と給電母線31(41)との間の結合容量をCとすると、結合容量(C)は、下記の式(1)で表される。
ただし、ε
0は真空の誘電率を示し、ε
rは比誘電率を示す。また、ε=ε
0・ε
rで表される。
図7に示すように、給電母線11(21)と給電母線31(41)との間の距離をdとし、給電母線11(21)及び給電母線31(41)の高さをHとし、給電母線11(21)及び給電母線31(41)の幅をwとし、給電母線11(21)及び給電母線31(41)の長さをlとする。
給電母線11(21)及び給電母線31(41)は、導電性の部材であり、各給電母線11〜41の自己インダクタンス(L)及び、対向する給電母線11(21)、給電母線31(41)間の相互インダクタンスMは、以下の式(2)及び式(3)でそれぞれ表される。
給電母線11と給電母線31との特性インピーダンスをZ
abとした場合に、各特性インピーダンス(Z
ab)は、下記の式(4)で表される。
ただし、L
abは給電母線11と給電母線31との間の誘導成分(インダクタンス成分)を示し、C
abは給電母線11と給電母線31との間の容量成分(キャパシタンス成分)である。
そして、式(4)に式(1)を代入すると、以下の式(5)が導出される。
給電母線21、41についても同様に、給電母線21と給電母線41との特性インピーダンスをZ
cdとした場合に、各特性インピーダンス(Z
cd)は、下記の式(6)で表される。
そして、式(6)に式(1)を代入すると、以下の式(7)が導出される。
図8に、図5の等価回路上における、各給電母線11、21、31、41の特性インピーダンスの関係を示す。給電母線11(31)と給電母線21(41)は、全く同じ形状ではなく、長さ等が異なるため、各母線の電気的特性が異なる。そのため、給電母線内を導通する交流成分(ノイズ成分)について、給電母線11(31)と給電母線21(41)との接続部分で、反射が生じる。この時、給電母線11(31)及び給電母線21(41)の合成インピーダンスの大きさ(R
pn)は、以下の式(8)で近似される。
給電母線11(31)と給電母線21(41)との接続部分で反射するノイズ成分を、効率よく、接続回路100に流して、抵抗101で消費させるためには、当該接続部分に電気的に接続されている抵抗101の抵抗値と、当該接続部分に接続されている給電母線11(31)及び給電母線21(41)のインピーダンスをマッチングさせることが求められる。
すなわち、抵抗101の抵抗値を式(8)で示されるインピーダンスの大きさに設定する。これにより、接続回路100と、給電母線11(31)、給電母線21(41)の接続部分との間で、インピーダンスマッチングがとれるため、ノイズの漏洩を防ぐことができる。
そして、式(8)に式(4)及び式(6)を代入することで、上記のマッチングをとるために、抵抗101の抵抗値は、給電母線11と給電母線31との間の容量成分の平方根に対する、給電母線11と給電母線31との間の誘導成分の平方根の比と、給電母線21と給電母線41との間の容量成分の平方根に対する、給電母線21と給電母線41との間の誘導成分の平方根の比との和に比例するよう設定される。
また、式(8)に式(5)及び式(7)を代入することで、上記のマッピングをとるために、抵抗101の抵抗値は、給電母線11と対向する給電母線31の対向面の面積の平方根に対する、給電母線11と給電母線31との間の距離の平方根の比と、給電母線21と対向する給電母線41の対向面の面積の平方根に対する、給電母線21と給電母線41との間の距離の平方根の比との和に比例するよう設定されている。
次に、パワーモジュール60のスイッチングノイズの周波数に対する、インピーダンス特性について説明する。ここで、給電母線11、21の接続点及び給電母線31、41の接続点からみた、容量結合部分及び接続回路100の特性インピーダンスをZoとし、抵抗101の抵抗値(R)を抵抗値(Rpn)とマッチングさせた場合(R≒Rpn)のインピーダンス特性を図9のグラフaに示し、抵抗101の抵抗値を抵抗値(Rpn)に対して十分に大きい場合(R>>Rpn)、または、抵抗101の抵抗値を抵抗値(Rpn)に対して十分に小さい場合(R<<Rpn)のインピーダンス特性を図9のグラフbで示す。
グラフbに示すように、給電母線11、21、31、41の抵抗値(Rpn)に対して、抵抗101の抵抗値(R)が十分に大きい、または、十分に小さい場合には、鋭い共振を示し、共振点でのインピーダンスの変化量が大きくなっている。一方、グラフaに示すように、抵抗101の抵抗値(R)が給電母線11、21、31、41の抵抗値(Rpn)に近似している場合には、共振が緩くなり、共振点でのインピーダンスの変化量が小さくなるため、共振点に相当する周波数のノイズが抑制される。これにより、抵抗101の抵抗値(R)を、給電母線11、21、31、41の抵抗値(Rpn)に基づいて設定することで、ノイズを抑制することができる。
また、共振点付近に、ラジオの周波数等、干渉させたくない周波数帯域(図9の帯域Aに相当)がある場合でも、抵抗101の抵抗値(R)と給電母線11、21、31、41の特性インピーダンスの絶対値(Rpn)とをマッチングさせることで、共振周波数におけるインピーダンス(Zo)の変化量を抑制し、その結果として、当該周波数帯域におけるノイズを抑制することができる。
また、本例において、抵抗101の抵抗値は、必ずしも、給電母線11、21、31、41の特性インピーダンスの大きさ(Rpn)の近似値とする必要はなく、当該特性インピーダンスの大きさ(Rpn)を中心とした、所定の範囲内になるように設定すればよい。
図10は、抵抗101の抵抗値に対するノイズ強度の特性を示すグラフである、ノイズ強度は、パワーモジュール60の動作により、給電母線11、21、31、41等から漏洩するノイズの大きさを示す。
図10に示すように、ノイズ強度は、抵抗101の抵抗値(R)をR
pnに設定した場合に、最も低減する。また、抵抗101の抵抗値(R)を以下の範囲に設定した場合も、十分なノイズ低減効果を得ることができる。
次に、ノイズを抵抗101で吸収する際の応答性に説明する。パワーモジュール60から接続回路100に流れるノイズに代わる入力値として、ステップ状の電流を、給電母線21、41の端部から入力する。そして、図11は、ステップ状の入力電流を入れた際に、抵抗101に流れる電流(抵抗電流)の時間特性を示している。グラフaは本発明の特性を示す。グラフbは、本発明とは異なる比較例の特性を示し、比較例は、導電体200を、給電母線11、31のみと容量結合させて、給電母線21、41と容量結合させていない(言い換えると、導電体200は、給電母線11、31の側面の一部を、所定の間隔を空けて覆うのみであって、給電母線21、41の側面を、所定の間隔を空けて、覆っていない。)グラフcは、本発明及び比較例の電力変換装置にそれぞれ入力される入力値の特性を示す。
図11に示すように、ステップ入力が、時間(t0)で、入った場合に、本例では、時間(t1)で、ステップ入力に応答するよう、抵抗電流が立ち上がる。一方、比較例では、時間(t1)より遅い時間(t2)で、抵抗電流が立ち上がる。すなわち、本例の応答性は、比較例と比較して、時間(Δt=t2−t1)分だけ早くなる。
比較例では、導電体200が給電母線11、31のみ容量結合されているため、給電母線21、41を伝播するステップ入力(ノイズに相当)が、導電体200と対向する給電母線11、31の部分まで導通しなければ、当該ステップ入力は、接続回路100に流れない。一方、本例では、導電体200が給電母線11、31に加えて給電母線21、41にも容量結合されている。そのため、給電母線21、41を伝播するステップ入力(ノイズ)は、給電母線11、31に到達する前に、導電体200に誘起され、導電体200を流れ始め、接続回路100の抵抗に抵抗電流が流れるタイミングが、比較例よりも早くなる。これにより、パワーモジュール60でノイズが発生した場合には、本例の方が、抵抗101で熱で吸収する応答性を早めることができ、ノイズ成分の低減の応答特性を早めることができる。
上記のように、本例は、給電母線11及び給電母線21と容量結合された導電体210と、給電母線31及び給電母線41と容量結合された導電体220と、抵抗101を含み、導電体210と導電体220との間を電気的に接続する接続回路100とを備えている。これにより、パワーモジュール60のスイッチング素子S1〜S6のオン、オフ動作により生じるノイズを、接続回路100の抵抗101で吸収することができるため、ノイズを低減させることができる。また、ノイズを低減する際の応答特性を早めることができる。
また、本例において、抵抗101の抵抗値は、給電母線11と給電母線31との間の容量成分の平方根に対する、給電母線11と給電母線31との間の誘導成分の平方根の比と、給電母線21と給電母線41との間の容量成分の平方根に対する、給電母線21と給電母線41との間の誘導成分の平方根の比との和に比例するよう設定されている。これにより、本例は、給電母線11、21、31、41の合成インピーダンスの大きさに基づいて、抵抗101の抵抗値が設定されるため、パワーモジュール60で発生するノイズを、抵抗101で吸収させる、ノイズの低減効果を高めることができる。
また、本例において、抵抗101の抵抗値は、給電母線11と対向する給電母線31の対向面の面積の平方根に対する、給電母線11と給電母線31との間の距離の平方根の比と、給電母線21と対向する給電母線41の対向面の面積の平方根に対する、給電母線21と給電母線41との間の距離の平方根の比との和に比例するよう設定されている。これにより、本例は、給電母線11、21、31、41の合成インピーダンスの大きさに基づいて、抵抗101の抵抗値が設定されるため、パワーモジュール60で発生するノイズを、抵抗101で吸収させる、ノイズの低減効果を高めることができる。
また、本例において、抵抗101の抵抗値は、導電体210又は導電体220の抵抗値より高い値に設定されている。これにより、接続回路100により導電体210と導電体220との間を接続した場合に、導電体210、220間の短絡を防ぎ、パワーモジュール60のノイズを抑制することができる。また、給電母線21、41で発生したノイズを、抵抗101へ導き易くすることができる。
また、本例において、抵抗101の抵抗値は、式(9)を満たすように設定されている。これにより、抵抗101の抵抗値と、給電母線11、21、31、41の合成インピーダンスの大きさ(絶対値)との間でマッチングをとることができるため、上記のノイズ低減効果を高めることができる。
また、本例において、抵抗101の抵抗値(R)は、以下の式(10)を満たすように設定されている。
これにより、抵抗101の抵抗値と、給電母線11、21、31、41の合成インピーダンスの大きさ(絶対値)との間でマッチングをとることができるため、上記のノイズ低減効果を高めることができる。
なお、本例において、接続回路100の抵抗101と、給電母線11、21、31、41の合成インピーダンスの大きさとの間でマッチングとる際に、抵抗101の抵抗値と、給電母線11、21、31、41と導電体200との間の容量結合部分の静電容量を、パワーモジュール60で発生するスイッチングノイズの周波数に応じて設定してもよい。すなわち、スイッチングノイズは、ピーク値をとる複数の周波数を持っており、給電母線11、21、31、41の形状等により、特定の周波数のノイズが、給電母線11、21、31、41で発生するため、当該特定の周波数のノイズのピーク値を抑制するよう、ノイズ成分に応じて抵抗101の抵抗値及び容量結合部分の静電容量を設定することで、ノイズのピークを抑制することができる。
なお、給電母線11と、給電母線21〜23との、それぞれの接続部分について、給電母線11、21〜23を一体化させることで、当該接続部分で継ぎ目がないように、それぞれの給電母線を接続してもよい。同様に、給電母線31、41〜43を一体化させることで、給電母線31と、給電母線41〜43との接続部分で継ぎ目がないように、それぞれの給電母線を接続してもよい。
なお、本例はU相に相当する給電母線21、41と容量結合させるように導電体210、220を設けたが、V相に相当する給電母線22、42、又は、W相に相当する給電母線23、43と容量結合させるように、導電体210、220を設けてもよい。
上記給電母線11が本発明の「第1の給電母線」に、給電母線21が本発明の「第2の給電母線」に、給電母線31が本発明の「第3の給電母線」に、給電母線41が本発明の「第4の給電母線」に、導電体210が本発明の「第1の導電体」に、導電体220が本発明の「第2の導電体」に相当する。
《第2実施形態》
図12は、発明の他の実施形態に係る電力変換装置のうち、U相に相当する給電母線21、41と給電母線11、31との接続部分の斜視図である。図13は図12のXIII−XIII線に沿う断面図である。本例では上述した第1実施形態に対して、誘電体510、520を設ける点が異なる。これ以外の構成は、上述した第1実施形態と同じであるため、その記載を適宜、援用する。
図12、13に示すように、本例の電力変換装置は、第1実施形態に係る電力変換装置の構成に加えて、誘電体510及び誘電体520を備えている。
誘電体510は、板状(平板)に形成され、給電母線11、21及び導電体210より誘電率の高い材料で、例えば樹脂等により形成されている。誘電体510の両側面は、給電母線11、21の主面及び導電体210の主面とそれぞれ対向して、給電母線11、21と導電体210との間に設けられ、給電母線11、21と導電体210との間に狭持されている。
誘電体520は、板状(平板)に形成され、給電母線31、41及び導電体220より誘電率の高い材料で、例えば樹脂等により形成されている。誘電体520の両側面は、給電母線31、41の主面及び導電体220の主面とそれぞれ対向して、給電母線31、41と導電体220との間に設けられ、給電母線31、41と導電体220との間に狭持されている。
上記のように、本例は、給電母線11及び給電母線21と、導電体210との間に設けられた誘電体510と、給電母線31及び給電母線41と、導電体220との間に設けられた誘電体520とを備えている。これにより、パワーモジュール60のスイッチング素子S1〜S6のオン、オフ動作により生じるノイズを、接続回路100の抵抗101で吸収することができるため、ノイズを低減させることができる。また、ノイズを低減する際の応答特性を早めることができる。
また本例は、給電母線11、21と導電体210との間、及び、給電母線31、41と導電体220との間の容量結合がそれぞれ強くなるため、ノイズの抑制効果を高めることができる。また、本例は、導電体210、220は、誘電体510、320を介して、給電母線11、21及び給電母線31、41の近傍にそれぞれ配置されているため、容量結合を強くすることができ、ノイズの抑制効果を高めることができる。
なお、本例はU相に相当する給電母線21、41と導電体210、220との間に導電体210、220をそれぞれ設けたが、V相に相当する給電母線22、42と導電体210、220との間、又は、W相に相当する給電母線23、43と導電体210、220との間に、誘電体510、520を設けてもよい。
また、導電体210、220は、例えば誘電体510、520に金属テープをそれぞれ貼り付けることで誘電体510、520の表面に取り付けられてもよい。
上記誘電体510が本発明の「第1の誘電体」に相当し、誘電体520が本発明の「第2の誘電体」に相当する。
《第3実施形態》
図14は、発明の他の実施形態に係る電力変換装置のうち、U相に相当する給電母線21、41と給電母線11、31との接続部分、V相に相当する給電母線22、42と給電母線11、31との接続部分、及び、W相に相当する給電母線23、43と給電母線11、31との接続部分の斜視図である。本例では上述した第2実施形態に対して、導電体210、220及び誘電体510、520を、V相及びW相に相当する、給電母線22、23、42、43に設け、それぞれの導電体210、220を接続回路100で電気的に接続する点が異なる。これ以外の構成は、上述した第2実施形態と同じであるため、第1又は第2実施形態の記載を適宜、援用する。
図14に示すように、導電体210、220は、給電母線21、41に加えて、給電母線22、42及び給電母線23、43とそれぞれ容量結合するよう設けられている。そして、導電体210と給電母線11、22との間には誘電体510が設けられ、導電体220と給電母線31、42との間には誘電体520が設けられている。同様に、導電体210と給電母線11、23との間には誘電体510が設けられ、導電体220と給電母線31、43との間には誘電体520が設けられている。
さらに、給電母線11及び給電母線21、22、23と容量結合するよう設けられた複数の導電体210と、給電母線31及び給電母線41、42、43と容量結合するよう設けられた複数の導電体220と間は、複数の接続回路100でそれぞれ接続されている。
なお、本例の接続回路100、導電体210、220及び誘電体510、520は、第1及び第2実施形態に係る、接続回路100、導電体210、220及び誘電体510、520と、同様の構成である。
これにより、複数の接続回路100は、パワーモジュール60内のインバータ回路の各相を構成する複数のスイッチング素子の直列回路と、それぞれ対応しつつ、導電体210と導電体220との間に接続されている。
図15は、図14で示す構成の等価回路である。ここで、給電母線22と給電母線42との特性インピーダンスをZc’d’とし、給電母線23と給電母線43との特性インピーダンスをZc’’d’’とする。
図15に示すように、給電母線11と給電母線31との間の電気的特性は、給電母線22と給電母線42との間の電気的特性と異なり、また給電母線23と給電母線43との間の電気的特性とも異なる。そのため、給電母線11と給電母線22、23とのそれぞれの接続部分、及び、給電母線31と給電母線42、43とのそれぞれの接続部分でノイズの反射が生じる。
本例では、導電体210、220が、給電母線11、31、給電母線21〜23、41〜43、給電母線11と給電母線22、23とのそれぞれの接続部分、及び、給電母線31と給電母線42、43とのそれぞれの接続部分で、容量結合されている。さらに、接続回路100の抵抗101の抵抗値が、これらの接続部分における合成インピーダンスの大きさとマッチングをとるように、設定されている。そのため、各相で発生するノイズの漏洩を防ぐことができる。
上記のように、本例は、複数の接続回路100は、パワーモジュール60内のインバータ回路の各相を構成する複数のスイッチング素子の直列回路と、それぞれ対応しつつ、導電体210と導電体220との間に接続されている。これにより、パワーモジュール60の各相で発生するノイズを、複数の接続回路100の抵抗101でそれぞれ吸収することができるため、ノイズを低減させることができる。また、ノイズを低減する際の応答特性を早めることができる。また、パワーモジュール60の各相に接続された、給電母線31〜33、41〜43の電気的特性が異なる場合に、各相に対応して接続回路100を接続し、各相の給電母線の電気的特性に応じて、各接続回路100の抵抗101の抵抗値を設定することができるため、電気的特性の違いによる、給電母線の接続部分のノイズの反射を抑制することができる。
図16に、本発明の変形例に係る電力変換装置を示す。図16は、本発明の変形例係る電力変換装置のうち、U相に相当する給電母線21、41と給電母線11、31との接続部分、V相に相当する給電母線22、42と給電母線11、31との接続部分、及び、W相に相当する給電母線23、43と給電母線11、31との接続部分の斜視図である。
本発明の変形例に係る電力変換装置では、図16に示すように、1枚の板状の導電体210が、給電母線11、31〜33とそれぞれ容量結合され、1枚の板状の導電体220が、給電母線21、41〜43とそれぞれ容量結合されている。また、導電体210と給電母線11、31〜33との間には、1枚の板状の誘電体510が狭持され、導電体220と給電母線11、41〜43との間には、1枚の板状の誘電体520が狭持されている。そして、複数の接続回路100が、パワーモジュール60内のインバータ回路の各相を構成する複数のスイッチング素子の直列回路と、それぞれ対応しつつ、導電体210と導電体220との間に接続されている。図16は、本発明の変形例に係る電力変換装置のうち、U相に相当する給電母線21、41と給電母線11、31との接続部分、V相に相当する給電母線22、42と給電母線11、31との接続部分、及び、W相に相当する給電母線23、43と給電母線11、31との接続部分の斜視図である。これにより、結合させる容量を高めることができる。
《第4実施形態》
図17は、発明の他の実施形態に係る電力変換装置の構成の一部を示す斜視図である。本例では上述した第1実施形態に対して、接続部品300を構成する導電体210、220で、給電母線11、21〜24、31〜34、41と容量結合させている点が異なる。それ以外の構成は、第1〜第3実施形態の記載を適宜、援用する。なお、図17の接続部品300に描かれたコンデンサ及び抵抗は、接続部品300と給電母線との間で容量結合されていること、及び、接続部品300に抵抗成分が含まれていることを、示している。また、他の図22についても、同様である。
給電母線11、31の主面は、直方体形状のパワーモジュール60の側面及びコンデンサ70の側面と平行になるように配置されている。また、給電母線11、31は、主面に沿う方向において、パワーモジュール60の天面とコンデンサ70の底面との間に配置されている。
給電母線11は、パワーモジュール60の各相に電力を供給するために、各相と対応して分岐している。給電母線11の分岐部分は、給電母線11の主面に沿って、パワーモジュール60の側面及びコンデンサ70の側面と平行に、延在している。また、同様に、給電母線11は、コンデンサ70と電気的に接続するために分岐している。給電母線31は、給電母線11と同様に構成されている。
給電母線21〜23の主面は、パワーモジュール60の底面に配置され、パワーモジュール60の底面から導出する端子(図示しない)に接続されている。また、給電母線21〜23の主面上に、パワーモジュール60の底面が設けられている。また、給電母線21〜23は、給電母線11、31の主面と平行なパワーモジュール60の側面に沿うように屈曲している。給電母線21〜23は、板状の導電体を屈曲させた形状になっている。給電母線21〜23及び給電母線11は、導電体により一体化されている。そのため、給電母線11の本体部(長い矩形状の部分)から、各相に対応して分岐させた部分は、給電母線21〜23を屈曲させた部分になる(当該部分は、給電母線11と給電母線21〜23との接続部分になる。)。
給電母線24は、導電体で板状に形成されており、給電母線11とコンデンサ70とを接続する電源線である。給電母線24の主面は、コンデンサ70の底面に接続され、給電母線24の主面上に、コンデンサ70の底面が設けられている。また、給電母線24は、給電母線11、31の主面と平行なコンデンサ70の側面に沿うように屈曲している。給電母線24は、板状の導電体を屈曲させた形状になっている。給電母線24及び給電母線11は、導電体で一体化されている。そのため、給電母線11の本体部(長い矩形状の部分)から、コンデンサ70に向けた分岐させた部分は、給電母線24を屈曲させた部分になる(当該部分は、給電母線11と給電母線24との接続部分になる。)。
なお、給電母線41〜43は、給電母線21〜23と同様に構成されているため、詳細な説明を省略する。給電母線44は、導電体で板状に形成されており、給電母線11とコンデンサ70とを接続する電源線である。給電母線44は、給電母線24と同様に構成されているため、詳細な説明を省略する。
接続部品300は、給電母線11、21と給電母線31、41、給電母線11、22と給電母線31、42、給電母線11、23と給電母線31、43、及び、給電母線11、24と給電母線31、44をそれぞれ電気的に接続する部材である。
ネジ400は、接続部品300と、給電母線11、21〜24、31、41〜44をネジ止めにより締結する部材である。
次に、図18〜図20を用いて、接続部品300と、給電母線11、21及び給電母線31、41との接続部分の構成について説明する。図18は図17の矢印XVIIIの矢視図であり、図19は図18のXIX−XIX線に沿った断面図である。図20は図19の等価回路である。
接続部品300は、導電体210、220と接続回路100を備えている。導電体210、220は接続回路100を狭持するよう配置されている。また、接続部品300は、導電体210、220と接続回路100とをモジュール化することで一体化させている。なお、接続部品300のモジュールは、例えば、導電体210、220及び接続回路100を樹脂等の絶縁部材で覆うことで、各部品を一体化させている。または、接続部品300は、基板上に、導電体210、220及び接続回路100を実装させることで、モジュール化してもよい。
導電体210及び導電体220には、ネジ400を締結させるための締結孔が設けられており、締結孔の側面には、雌ねじが切られている。また、給電母線11と給電母線21との接続部分にも、同様の締結孔が設けられ、当該締結孔の側面には雌ねじか切られている。
図19に示すように、ネジ400は、給電母線11、21と、導電体210との間に、所定の間隔を設けた状態で、給電母線11、21と導電体210を締結する。ネジ400のうち、少なくとも雄ねじが切られている部分の表面は絶縁材によりコーティングされているため、給電母線11、12と、導電体210との間は、所定の間隔を空けつつ、絶縁された状態で、かつ、互いに近接して配置されている。そのため、図20に示すように、導電体210と給電母線11、21との間には、結合容量(キャパシタンス)が発生し、導電体210及び給電母線11、21はコンデンサとして作用する。これにより、導電体210は、給電母線11及び給電母線21と容量結合されている。
また、ネジ400は、他の締結部分も同様に、給電母線11、21〜24、31、41〜44と、導電体210、220との間に、所定の間隔を設けた状態で、給電母線11、21〜24、31、41〜44と、導電体210、220を締結する。そのため、導電体210と給電母線11、22との間、導電体210と給電母線11、23との間、導電体210と給電母線11、24との間、導電体220と給電母線31、41との間、導電体220と給電母線31、42との間、導電体220と給電母線31、43との間、及び、導電体220と給電母線31、44との間には、結合容量(キャパシタンス)が発生し、各母線と導電体210、200との間はコンデンサとして作用する。これにより、導電体210、220は、給電母線11、21〜24、31、41〜44とそれぞれ容量結合されている。
次に、各接続部品300に含まれる抵抗101の抵抗値について説明する。図21は、図17に示す構成の等価回路である。ここで、給電母線24と給電母線44との特性インピーダンスをZc’’’d’’’とする。
図21に示すように、給電母線11と給電母線31との間の電気的特性は、給電母線24と給電母線44との間の電気的特性と異なる。そのため、給電母線11と給電母線24との接続部分、及び、給電母線31と給電母線44との接続部分でノイズの反射が生じる。
そのため、第1〜第3実施形態と同様に、給電母線11、24及び給電母線31、44と容量結合する接続部品300の抵抗101の抵抗値は、上記の接続部分の合成インピーダンスの大きさとマッチングをとるように、設定されている。なお、給電母線24と給電母線44との特性インピーダンス(Zc’’’d’’’)は、式(2)〜(5)で導出される。そして、接続部分の合成インピーダンス(ZabとZc’’’d’’’との合成インピーダンス)は、式(8)により導出される。
そして、他の接続部品300の抵抗101の抵抗値も、同様に、各給電母線11、21〜23、31、41〜43の接続部分の合成インピーダンスとマッチングをとるように、設定されている。これにより、本例は、ノイズを低減させることができる。
上記のように、本例において、導電体210、220及び接続回路101は、接続部品300により、モジュール化された一体の部材で構成されている。これにより、これにより、パワーモジュール60のスイッチング素子S1〜S6のオン、オフ動作により生じるノイズを、接続部品300の抵抗101で吸収することができるため、ノイズを低減させることができる。また、ノイズを低減する際の応答特性を早めることができる。
また、本例は、給電母線11、21と導電体210を、又は、給電母線31、41と導電体220を、所定の間隔を空けた状態で、ネジ400により締結している。これにより、給電母線11、21と導電体210を、又は、給電母線31、41と導電体220を容量結合するため、パワーモジュール60のスイッチング動作により、発生したノイズが、容量結合させた部分で誘起され、抵抗31で熱として消費させることができる。その結果として、ノイズを低減させることができる。
また、本例において、接続回路100は、給電母線11等を介して、コンデンサ70に電気的に接続されている。これにより、給電母線11等の電気的特性の違いにより生じるノイズの反射を抑制することができる。
なお、本例は、コンデンサ70に接続された給電母線24、44と、給電母線11、21との接続部分に対して、接続部品300を容量結合させることで、接続回路100をコンデンサ70に電気的に接続させたが、第1実施形態に示すように、導電体210、220を、それぞれの接続部分に対して容量結合させて、導電体210と導電体220とを接続回路100により接続させることで、接続回路100をコンデンサ70に電気的に接続させてもよい。
なお、本発明の変形例として、図22に示すように、コンデンサ70を、各相に対応して分けた上で、それぞれのコンデンサ70に接続される給電母線24、44を、パワーモジュール60の各相に対応させて、それぞれ3本設ける。そして、複数の接続部品300が、それぞれ3本の給電母線24、44と給電母線11、31との各接続部分に、ネジ400(図22には図示していない)により締結させてもよい。図22は、本発明の変形例に係る電力変換装置の構成の一部を示す斜視図である。
上記ネジ400が本発明の「締結部」に相当する。
《第5実施形態》
図23は、発明の他の実施形態に係る電力変換装置の構成の一部を示す斜視図である。本例では上述した第4実施形態に対して、接続部品300を、給電母線11及びシールド線51の接続点と、給電母線31及びシールド線52の接続点との間で、電気的に接続させている点が異なる。それ以外の構成は、第4実施形態の記載を適宜、援用する。なお、図23の接続部品300に描かれたコンデンサ及び抵抗は、接続部品300と給電母線との間で容量結合されていること、及び、接続部品300に抵抗成分が含まれていることを、示している。
図23に示すように、接続部品300に含まれる導電体210(図18を参照)は、シールド線51と給電母線11の先端部分との接続点に対して、容量結合されている。また、接続部品300に含まれる導電体220(図18を参照)は、シールド線52と給電母線31の先端部分との接続点に対して、容量結合されている。導電体210、220と給電母線11、31との間は、第4実施形態と同様に、ビス400により、所定の間隔を空けた状態で締結させることで、容量結合されている。
次に、各接続部品300に含まれる抵抗101の抵抗値について説明する。図24は、図23に示す構成の等価回路である。ここで、シールド線51とシールド線52との特性インピーダンスをZefとする。
図24に示すように、給電母線11と給電母線31との間の電気的特性は、シールド線51とシールド線52との間の電気的特性と異なる。そのため、給電母線11とシールド線51との接続点、及び、給電母線31とシールド線52との接続点でノイズの反射が生じる。
そのため、接続部品300の抵抗101の抵抗値は、上記の接続点における合成インピーダンスの大きさとマッチングをとるように設定されている。なお、合成インピーダンスは、ZabとZefとを用いて、式(8)により導出される。
上記のように、本例は、シールド線51と給電母線11の一端との接続点(本発明の「第1の接続点」に相当)と、シールド線52と給電母線31の一端との接続点(本発明の「第2の接続点」に相当)との間を、接続部品300で、電気的に接続している。これにより、パワーモジュール60で発生するノイズを、接続部品300の抵抗101で吸収することができるため、ノイズを低減させることができる。また、ノイズを低減する際の応答特性を早めることができる。さらに、シールド線51、52の電気的特性の違いにより生じるノイズの反射を抑制することができる。
《第6実施形態》
図25は、発明の他の実施形態に係る電力変換装置の構成の一部を示す斜視図である。本例では上述した第5実施形態に対して、接続部品300を、給電母線11の一端と、給電母線31の一端との間で、電気的に接続させている点が異なる。それ以外の構成は、第5実施形態の記載を適宜、援用する。なお、図25の接続部品300に描かれたコンデンサ及び抵抗は、接続部品300と給電母線との間で容量結合されていること、及び、接続部品300に抵抗成分が含まれていることを、示している。
図25に示すように、給電母線11の長手方向の両端部のうち、一方の端部には、シールド線51が接続され、他方の端部には、接続部品300が容量結合されている。同様に、給電母線31の長手方向の両端部のうち、一方の端部には、シールド線52が接続され、他方の端部には、接続部品300が容量結合されている。当該接続部品300に含まれる導電体210、220(図18を参照)と給電母線11、31との間は、第4実施形態と同様に、ビス400により、所定の間隔を空けた状態で締結させることで、容量結合されている。
次に、各接続部品300に含まれる抵抗101の抵抗値について説明する。図26は、図25に示す構成の等価回路である。
給電母線11、31の端部に、接続部品300を電気的に接続していない場合には、当該端部は開放端となり、給電母線11、31を導通するノイズは当該開放端で反射されることになる。一方、本例では、開放端の部分に、接続部品300が、給電母線11、31の端部との間で容量結合するように、電気的に接続されている。また、接続部品300の抵抗101は、当該開放端に相当する部分のインピーダンスとマッチングをとるように、設定されている。これにより、ノイズの反射を抑制しつつ、ノイズを低減させることができる。
上記のように、本例は、給電母線11、31の両端のうち、シールド線51、52と接続する一端とは反対側である他端と、接続部品300とを電気的に接続している。これにより、パワーモジュール60で発生するノイズを、接続部品300の抵抗101で吸収することができるため、ノイズを低減させることができる。また、ノイズを低減する際の応答特性を早めることができる。さらに、当該他端におけるノイズの反射を抑制することができる。