JP5990029B2 - 毛髪の分析法 - Google Patents

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Description

本発明は、生体に含まれる元素の濃度を分析する方法に関する。また、本発明は、生体の元素分析による癌の検出方法に関する。
本発明者は、これまで、毛髪又は体毛のCa濃度の測定に基づいて、Ca代謝異常を検出する方法等を提案してきた(例えば、特許文献1。)。
特許第4612355号公報
本発明の目的は、生体に含まれる元素の濃度を、十分に高い精度で分析する方法を提供することにある。
血液中における各元素の濃度が一定値に維持されることを反映して、健常者の乾燥血清、乾燥血漿、毛髪又は体毛における元素の濃度は、一定の値(標準値)に維持されると考えられる。
以上のような知見に基づいて鋭意検討した結果、本発明者は本発明を完成するに至った。本発明は以下の方法に関する。
[1] 被験者の毛髪または体毛等の生体を元素分析し、同族元素XとZの毛髪等の生体濃度[X]及び[Z]とを求め、XとZの比例関係、すなわち、それぞれの標準値[X]HC及び[Z]HCとの比の間に[X]/[X]HC=[Z]/[Z]HCが成立する場合を、正常、または、不成立の[X]/[X]HC≠[Z]/[Z]HCの場合より正常に近いと判定する、生体に含まれる元素の濃度を分析する方法。
[2] [1]に記載の元素XとZがCaと同族元素ストロンチウムSrであって、[1]に記載の[X]HCと[Z]HCが[Ca]HCと[Sr]HCであり、これらは両元素のイオンが毛髪を作る細胞の細胞膜を通過できる共通の通路が閉じている場合の標準値である。前記通路の開閉によって細胞内のイオンが流入する場合の毛髪濃度高値の標準値[Ca]HOと[Sr]HOが測定できる。毛髪濃度の測定値が[Ca]と[Sr]で、[Ca]HC≦[Ca]<[Ca]HOの範囲で、式
[Sr]/[Ca]=[Sr]HO/[Ca]HO
が成立するとき、細胞のCaイオンの通路が開閉している状態がつづいた時期が被験者の過去に有ったと判定し、
[Sr]/[Ca]<[Sr]HO/[Ca]HO
のときには癌が存在する可能性があると判定する方法。
[3] 毛髪または体毛の単位質量当たりのCaの濃度[Ca]または同族元素Srの濃度[Sr]が、Ca剤の摂取、またはCaを含む大気汚染微粒子、黄砂等の吸引によって、正常値以下の[Ca]≦[Ca]HCまたは[Sr]≦[Sr]HCに降下すれば非癌であるとし、[Ca]HC<[Ca]≦[Ca]HOまたは[Sr]HC<[Sr]≦[Sr]HOの範囲にとどまれば癌である可能性があると判定する、Ca摂取を併用した、生体に含まれる元素の濃度を分析する方法。
[4] Ca剤の摂取、またはCaを含む大気汚染微粒子等の吸引によって、[2]に記載のCaの毛髪濃度[Ca]の範囲が[Ca]≦[Ca]HCになる場合を非癌と判定し、[Ca]HC<[Ca]≦[Ca]HOにとどまる場合を、癌である可能性があると判定する方法。
本発明によれば、生体に含まれる元素の濃度を、十分に高い精度で分析する方法が提供される。また、本発明によれば、生体に含まれる元素の濃度に基づいて、血液の状態、及び細胞膜のCaチャンネルの開閉状態等を簡便且つ高い精度で判定する方法を提供できる。
乾燥血清における元素濃度の測定結果を示すグラフである。 毛髪における元素濃度の測定結果を示すグラフである。 毛髪における元素濃度の測定結果を示すグラフである。 毛髪における元素濃度の測定結果を示すグラフである。 毛髪における元素濃度の測定結果を示すグラフである。 毛髪における元素濃度の測定結果を示すグラフである。 毛髪における元素濃度の測定結果を示すグラフである。 毛髪における元素濃度の測定結果を示すグラフである。 毛髪における元素濃度の測定結果を示すグラフである。 毛髪における元素濃度の測定結果を示すグラフである。 毛髪における元素濃度の測定結果を示すグラフである。 毛髪における元素濃度の測定結果を示すグラフである。 毛髪における元素濃度の測定結果を示すグラフである。 血清中のPTH,PTHrPと血清及び毛髪の元素濃度との関係を示す図である。 Ca代謝の4つの型に対する毛髪元素濃度と血清のPTH濃度との関係を示す表である。 Gamble図を示すグラフである。 毛髪における元素濃度の測定結果を示すグラフである。 毛髪における元素濃度の測定結果を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。重複する説明は適宜省略される。
1.元素濃度の定義
本明細書において用いる元素の濃度の記号の定義を、当該元素が「A」である場合について以下にまとめて示す。
[A]:乾燥血清又は乾燥血漿における元素Aの全濃度
[A]:Aイオンまたは元素Aを含む化合物イオン(多原子イオン)を取り除いてから乾燥した血清における元素Aの濃度
[A]:血清中にイオンまたは元素Aを含む化合物イオンとして存在する元素A由来の乾燥血清中の元素Aの濃度、すなわち、[A]=[A]−[A]
[A]:毛髪、体毛、爪等を含む生体中の元素Aの濃度(生体濃度)例えば、毛髪又は体毛における元素Aの毛髪又は体毛の単位質量当たりの濃度
[A]HO:元素Aのイオンまたは元素Aを含む化合物イオンが通過する細胞膜の通路が開閉している状態に対応する[A]の標準値
[A]HC:元素Aのイオンまたは元素Aを含む化合物イオンが通過する細胞膜の通路が閉じている状態に対応する[A]の標準値
血清は、アルブミン、グロブリン及びフィブリノーゲンなどの多種の蛋白質を含んでいる。一般に、血清に含まれる元素は、蛋白質分子に乗った原子と、液体中のイオンとに分かれる。したがって、乾燥血清における元素Aの全濃度[A]は、下記式(1)により表される。
[A]=[A]+[A] ・・・(1)
血清は、水91%、蛋白質7%、及びミネラル0.9%を含む。乾燥血清は主に血清蛋白質から構成されることから、[A]は、血清蛋白質分子当たりの元素Aの原子数とみなされる。
成長している毛髪又は体毛における元素Aの含有量は、毛髪を作っている毛根部の細胞(HM細胞、Hair−Making cell)に血液から流入する元素Aの量と等しい(流入・流出等値則)。したがって、[A]のホメオスタシス制御された値(標準値)は、細胞膜のイオンの通路(イオンチャンネル)が開閉している状態に対応する標準値([A]HO)と、細胞膜野のイオンの通路(イオンチャンネル)が閉じている状態に対応する標準値([A]HC)の、大きく離れた二つのレベルに分かれる。
2.生体に含まれる元素の濃度を分析する方法
本実施形態に係る方法は、主として、被験者から採取された乾燥血清若しくは乾燥血漿、又は毛髪若しくは体毛における元素の濃度を測定する工程と、各元素の濃度の標準値との比較により、乾燥血清若しくは乾燥血漿、又は毛髪若しくは体毛における各元素の濃度の測定値を評価する工程とから構成される。
乾燥血清若しくは乾燥血漿、又は毛髪若しくは体毛における元素Aの濃度[A]は、特許文献1に記載のような蛍光X線分析によって測定することができる。濃度を対数スケールで表すことにより、試料の厚さの影響を排除して濃度の値を取り扱うことができる。蛍光X線スペクトルにおいて、異なる厚さを有する試料に関して測定された元素由来のピークの高さをそれぞれA及びBとすると、比例乗数をαとして、A=αBが成り立つ。すなわち、logA=logαB=logB+logαとなるから、濃度が等しければ、logα分だけ平行移動すれば、logAとlogBとは一致して重なる。それゆえ、試料における濃度は、当該元素のピークの強度をPとし、バックグラウンドの散乱X線の強度をSとして、式:
log[A]=logP−logS=log(P/S) ・・・(2)
で与えられる。この測定により求められる濃度[A]は、試料の厚さに関係しない。バックグラウンドの散乱X線の強度Sは、試料が励起X線ビームで照射されている部分の質量に比例するので、P/Sは密度に相当するからである。言い換えると、式(2)で定義される濃度[A]は、一義的には、強度Sを単位とする試料の単位質量当たりの濃度に相当する。
試料としての毛髪又は体毛に細い放射光X線ビーム(例えば、0.2×0.2mm)を照射することにより、式(2)から[A]が求められる。毛根における元素濃度は、試料採取時点の被験者の状態を反映する。1本の試料について、長さ方向に沿って複数の箇所で各元素の濃度を測定することにより、各元素の濃度の経時的な変化を過去に遡って追跡することができる。毛髪及び体毛は1ヶ月に約10mm程度成長することから、各測定位置に対応する時期を特定することができる。
元素Cu,Ti,Ca,Sr,P,Cl,Br,K,S等の血清濃度は、腎臓、または肝臓で制御されており、Ca代謝の状態によって変動する。それゆえ、男5人と女5人の健常者がCa剤を1日当たりCaで900mgを2週間服用した後に、血液を採取し、血清を分離して乾燥した試料を作製して、X線蛍光分析した。その10人の蛍光X線スペクトルをバックグランドが一致するように重ねて図1に示した。10人の被験者の蛍光X線スペクトルはよく一致する。乾燥血清の元素濃度は万人共通の標準値をもつことが分かる。各元素のピークから元素濃度[A]Sを式(2)により求めて表1に示した。この[A]Sの測定値から毛髪標準濃度を計算し、また、多くのヒトの毛髪分析値から得られた式(2)で表される毛髪濃度標準値[A]HC及び[A]HOを[A]とともに表1に示す。計算方法については後に述べる。
Figure 0005990029

測定には誤差があるので、表1の値の±25%の範囲を標準値とする。本明細書に記載のすべての標準値は±25%の範囲にある。
以上のように、乾燥血清、乾燥血漿、毛髪又は体毛における元素の濃度を、標準値と比較することにより、生体における各元素の濃度を高い精度で評価することができる。
3.血液の状態を判定する方法
上述の分析方法は、例えば、以下に説明する方法のように元素の濃度の測定値を評価することにより、被験者の代謝の状態、各種蛋白質の分泌状態等の検査のために利用することができる。
3−1.第一実施形態
第一実施形態に係る方法は、被験者から採取された毛髪若しくは体毛におけるCa及びSrの濃度[Ca]及び[Sr]を測定する工程と、Ca及びSrの濃度の標準値が[Ca]HC、[Sr]HC、[Ca]HO及び[Sr]HOである場合に、[Ca]が[Ca]HC<[Ca]<[Ca]HOの範囲にあって、式:
([Sr]−[Sr]HC)/([Ca]−[Ca]HC
=([Sr]HO−[Sr]HC)/([Ca]HO−[Ca]HC) (22)
が成立するとき、副甲状腺ホルモンPTH及び癌細胞から分泌される副甲状腺ホルモン関連ペプチドPTHrPが被験者の血液中に共存していると判定する工程とを有する。
被験者の細胞のCaイオンチャンネルが副甲状腺ホルモンPTHによって開閉する状態が続くCa代謝の異常が生じると、開閉の度に流入した[Ca]は、累積されて高い標準値[Ca]HOに維持される。この高い標準値のときに、癌細胞が発生し得ると考えられる。癌が発生すると、癌細胞により分泌されるPTHrPが血液中にPTHと共存した状態となり、PTHrPはCaチャンネルを開かせる頻度が低く、[Ca]は、血清[PTHrP]の増加とともに[Ca]HOから[Ca]HCまで減少する。この過程において、毛髪[Ca]と[Sr]の減衰曲線が式(22)に従う期間が生じる。
第一実施形態に係る方法は、[Ca]が[Ca]HC<[Ca]<[Ca]HOの範囲にあって、式:
[Sr]/[Ca]=[Sr]HO/[Ca]HO
が成立するとき、細胞膜のCaイオンチャンネルが開閉している状態が続いた時期が被験者の過去に有ったと判定し、式:
[Sr]/[Ca]<[Sr]HO/[Ca]HO
が成立するとき、副甲状腺ホルモンPTH及び副甲状腺ホルモン関連ペプチドPTHrPが被験者の血液中に共存していると判定する工程を有していてもよい。PTHrPが血清中に存在していると判定された場合、被験者に癌が発生している可能性がある。
第一実施形態に係る方法は、更に、毛髪若しくは体毛の長さ方向に沿って複数の箇所で[Ca]及び[Sr]を測定することにより、[Ca]及び[Sr]の濃度の経時的な変化を過去に遡って追跡し、[Ca]=[Ca]HO及び[Sr]=[Sr]HOの状態が続いた後、[Sr]だけが[Sr]<[Sr]HOに低下したとき、被験者の血液中に免疫に関連する蛋白質が形成されていると判定することもできる。
細胞のCaイオンチャンネルの開閉する状態が続くとき、[Ca]=[Ca]HO、且つ[Sr]=[Sr]HOとなる。その後、免疫に関連する蛋白質が形成されると、Srの濃度が希釈されて、[Sr]が[Sr]<[Sr]HOに低下する。これを観測することにより、被験者の血液における、免疫に関連する蛋白質の形成状態を判定することができる。
3−2.第二実施形態
第二実施形態に係る方法は、被験者から採取された毛髪若しくは体毛におけるSの濃度[S]を測定する工程と、Sのイオン(硫酸イオンSO 2−)が通過する細胞膜の通路が閉じている状態に対応する[S]の標準値が[S]HCであり、各元素の前記通路が開閉している状態に対応するSの濃度の標準値が[S]HOである場合に、[S]=[S]HOであるとき、被験者の血液中の硫酸イオンが不足している、又は、被験者の血液における副甲状腺ホルモンPTH若しくは副甲状腺ホルモン関連ペプチドPTHrPの濃度が高いと判定し、[S]=[S]HCであるとき、被験者の血液中の硫酸イオンが充足している、又は、被験者の血液における副甲状腺ホルモンPTH若しくは副甲状腺ホルモン関連ペプチドPTHrPの濃度が低いと判定する工程とを有する。
[S]は、高い標準値[S]HOと、低い標準値[S]HCとを有する。硫酸チャンネルの存在は確認されていないが、これら2つの標準値は、細胞膜の硫酸イオンチャンネルの開閉状態に由来すると推定される。
血清中のSのイオン濃度[S]は、主として近接尿細管の細胞膜にあるNa依存型陰イオン共輸送分子による腎再吸収で制御されている。この共輸送は、尿細管細胞で発現したPTH受容体によって阻害される。そのため、血清中のPTH濃度が増加すると、硫酸イオン不足になって細胞の負イオンチャンネル(硫酸イオンチャンネル)が開閉している状態となる。血清中のPTHrPの濃度が増加した場合も受容体が共通で同様である。したがって、[S]が[S]HOと実質的に等しい状態は、血液中の硫酸イオンが不足していること、及び、PTH及び/またはPTHrPの濃度が高いことに対応する。一方、PTH及びPTHrPの濃度が低いときは、血液中の硫酸イオンが充足することから、硫酸イオンチャンネルが閉じた状態となる。その結果、[S]は[S]HCと実質的に等しくなる。
3−3.第三実施形態
第三実施形態に係る方法は、被験者から採取された毛髪若しくは体毛におけるPの濃度[P]を測定する工程と、リン酸イオンチャンネルが閉じている状態に対応する[P]の標準値が[P]HCであり、リン酸イオンチャンネルが開閉している状態に対応する[P]の標準値が[P]HOである場合に、[P]=[P]HOであるとき、被験者の血液におけるリン酸イオン濃度が正常である、又は、被験者の血液における副甲状腺ホルモンPTH若しくは副甲状腺ホルモン関連ペプチドPTHrPの濃度が低いと判定し、[P]=[P]HCであるとき、被験者の血液におけるリン酸イオン濃度が過剰である、又は、被験者の血液における副甲状腺ホルモンPTH若しくは副甲状腺ホルモン関連ペプチドPTHrPの濃度が高いと判定する工程とを有する。
Ca不足で分泌されるPTHは、骨溶解を引き起こし、骨から血清へPが放出されて、血清中のリン酸イオン(HPO 2−)が増加する。このリン酸イオンの増加は、PTHによる腎再吸収の抑制効果を超えると考えられる。そのため、Ca不足であるときに、血清中のリン酸イオン濃度が増加し、その結果、細胞膜のリン酸イオンチャンネルが閉じると考えられる。
[P]=[P]HOの状態は、PTH及び/又はPTHrPの濃度が高まることなく、リン酸イオン濃度が正常な低いレベルに維持されていることを示す。[P]=[P]HCの状態は、PTH及び/又はPTHrPの濃度が高くなって、骨から放出された過剰のリン酸イオンが血液中に含まれていることを示す。
3−4.第四実施形態
第四実施形態に係る方法は、被験者から採取された毛髪若しくは体毛におけるKの濃度[K]を測定する工程と、Kイオンチャンネルが閉じている状態に対応する[K]の標準値が[K]HCである場合に、[K]が[K]HCと比較して低いほど、被験者の血液における副甲状腺ホルモンPTH及び/又は副甲状腺ホルモン関連ペプチドPTHrPの濃度が高いと判定する工程とを有する。
PTH(PTHrP)は腎臓の近接尿細管細胞の受容体で発現すると、H/Na交換分子のNaを取り入れてHを排出する作用を阻害し、血清[H]を高める。その結果、細胞内のK/H交換によって細胞内のKが流出し、[K]は[K]HCよりも低くなる。[K]が[K]HCと比較して低いことは、血清Ca濃度が低く、血清のPTH及び/又はPTHrPの濃度が高いことを意味する。
3−5.第五実施形態
第五実施形態に係る方法は、被験者から採取された毛髪若しくは体毛におけるCl及びBrの濃度[Cl]及び[Br]を測定する工程と、Clイオンチャンネルが閉じている状態に対応する[Cl]及び[Br]の標準値がそれぞれ[Cl]HC及び[Br]HCであり、Clイオンチャンネルが開閉している状態に対応する[Cl]及び[Br]の標準値がそれぞれ[Cl]HO及び[Br]HOである場合に、式:
[Cl]/[Cl]HC=[Br]/[Br]HC>[Cl]HO/[Cl]HC
が成立するとき、被験者の血液が酸性に傾いていると判定し、式:
[Cl]/[Cl]HC<1、且つ、[Cl]/[Cl]HC<[Br]/[Br]HCが成立するときは、被験者の血液がアルカリ性に傾いている、又は、被験者のCa代謝に異常があると判定する工程とを有する。
第五実施形態に係る方法は、更に、被験者の血液がアルカリ性に傾いていると判定された場合に、式:
[Cl]/[Cl]HC<[Br]/[Br]HC≦1
が成立するときは、被被験者が、Cl及びBrの濃度をそれぞれ独立にホメオスタシス制御している独立型であると判定し、式:
[Cl]/[Cl]HC<1<[Br]/[Br]HCが成立するときは、被験者が、Cl不足をBrで補う補償型であると判定する工程を有していてもよい。
4.1 銅Cu及びチタンTi
必須元素であるCu、Fe及びZn等は、血清蛋白質中にだけ存在する。すなわち、これらの元素については[A]=[A]、[A]=0である。4.2の項で述べるように、これらの元素の乾燥血清における濃度[A]と毛髪又は体毛における濃度[A]は、式(2)によって測定できる。X線蛍光分析は、8keVのCuKα、6.4keVのFeKα、及び8.6keVのZnKαを使って行われた。標準値はlog[Cu]=log[Cu]=[logP−logS]st=log20、log[Fe]=log[Fe]=log15、log[Zn]=log[Zn]=log20であった。後に見られるように、Ca、Sr、Cl及びBrの標準値はlog[A]=log[A]=logP−logS=log10であるので、これらの元素と比較するために観測値[logP−logS]を上記の健常人の標準値[logP−logS]stにより次式で規格化した。
log[A]=[logP−logS]/[logP−logS]st (3)
前述の通り、[Cu]=[Cu]、[Cu]=0である。Cuの血清濃度は、過剰のCuを胆汁排泄する肝臓の機能によってホメオスタシス制御されている。つまり、[Cu]の標準値は、余分に摂られたCuのうち過剰分を排泄することにより維持されている。それゆえ、[Cu]が標準値以下であることは、Cu不足を意味する。図2は、無作為に選ばれた30代から70代までの女性50人の毛根について測定された式(2)による[Ti]及び、式(3)で規格化された[Cu]を示すグラフである。被験者のラベルのローマ数字は齢の年代を示し、棒グラフを年齢順に並べている。[Cu]のホメオスタシスが認められる。大部分が[Cu]の規格化された標準値10又はそれより少し低い値を示している。この結果から乾燥血清と毛髪標準値の間に規格化スケールで
[Cu]=[Cu]=[Cu]=10 (4)
の関係があることが分かる。式(3)によるこの結果は、乾燥血清の濃度と毛髪の濃度は比例関係にあることを意味する。その比例常数は、一般に知られている濃度データを用いて得られる。血清は比重1.028で水90〜92%を含むので、1リットルの血清を乾燥すると82〜103グラムの乾燥血清が得られる。血清1リットル中のCuの濃度は17μmol/Lであると知られている。乾燥血清におけるCuの濃度は170〜207μmol/kgとなる。これは毛髪について報告されているCuの濃度200μmol/kgとよく一致する。
この事実から、[A]と[A]との比例関係の比例常数は1であり、[A]=0であるか、又はHM細胞(hair−making cells)へのイオンチャンネルを通じた元素Aの流入がない場合には、下記式の関係が成立する。
[A]=[A] (5)
式(5)の関係は式(2)で定義される濃度でも、式(3)による規格化された濃度でも成立する。なお、本明細書では銅Cuだけ規格化された濃度値を使っている。他の元素はすべて式(2)の定義による濃度値を使用している。
一般的には[A]が正常標準値を超えた場合でも式(5)が成立する。しかし、図2で、[Cu]が規格化した標準値で10より大きい場合でも[Cu]=10であった。この結果は[Cu]は10で飽和することを示している。この飽和は肝臓による排泄で保たれるホメオスタシスをさらに支援していることになる。それゆえ、[Cu]>10の結果は、肝機能の低下で血清中の飽和値を超えたCuは、肝臓に蓄積されるだけでなく、全身の細胞の中に堆積されることを示唆している。血清中の正常値で飽和するので、[Cu]は、肝臓の検査に使えるほど高感度である。
すなわち、被験者IV−6、IV−7、V−3、V−4、VI−1、VI−4、VII−6、VII−7、VII−10に見られる標準値10より高い[Cu]は、過剰のCuを排泄する肝機能の低下を示している。これはCa不足で開いたCaイオンチャンネルを通して肝細胞にCaが流入したためである(5.2参照)。ラベル「LD」と「DE」は、図15に示すCa代謝のタイプを表示している。高い[Cu]の値は肝臓病に対しても現れ、VII−6及びN2は、毛髪におけるGe濃度[Ge]の高い値から、アルコール障害(「Alc」と表示)と同定された。
チタンTiは血清に溶解しない。通常、蛍光X線分析におけるTiのピークはノイズレベルであり、log[Ti]=logP−logS=0である。また、log[Ti]=0([Ti]=1、[Ti]=1)である。図1に見られるように、[Ti]は非常に低い。Tiは血清に不溶で食物に多く含まれるので、[Ti]は、肝臓検査に適している。Ca不足又はアルコール障害による肝機能の低下は、[Cu]と同様に、[Ti]も増加させる。二つのタイプがあって、たとえば、図2の被験者N2では[Cu]が非常に高くて[Ti]が低い(Cuタイプ)。被験者VII−2では、[Ti]が10より大きいのに、[Cu]は10より小さい(Tiタイプ)。被験者によっては両方が高くなるCu&Tiタイプの場合もある。
要約すると、肝機能の低下は、[Ti]及び[Cu]だけでなく、種々の金属元素の毛髪濃度を高める。Cr、Mn、Ni及びPbなど大抵の金属元素は血清に不溶性であり、毛髪にこれらの元素の低いピークが現れる。これは5.2項に述べるように、過去に長期にわたってCaチャンネルの開閉が続く状態(LD型)があって、肝細胞にもCaが流入して堆積し肝機能が劣化したことによる。Geは血清に不溶であるが、[Ge]のピークはアルコール肝障害にだけ現れる。図2にAlcとして表示されるように、アルコール肝障害により[Cu]及び[Ti]も高くなる。
4.2カルシウムCa
血清は[Ca]=[Ca]+[Ca]=8.5〜10.3mg/dLのCaを含み、イオン濃度は[Ca]=4.2〜5.0mg/dLである。したがって、健常人の正常状態では[Ca]=[Ca]とみなすことができる。Caイオンは細胞信号伝達の主役である。Caイオンセンサー「CaSR」を有する副甲状腺細胞の作用によって[Ca]はホメオスタシス制御の一定値に維持されている。一方、[Ca]は、[Ca]と平衡していて、血液が酸性に傾くアシドーシスのときは減少し、血液がアルカリ性に傾くアルカローシスのときは増加する。
血清中の[Ca]をホメオスタシスの一定値に維持するシステムは知られている。[Ca]が増加すると甲状腺からカルシトニンが分泌され、Caを骨に移行させる。Ca不足で[Ca]が低下すると、副甲状腺ホルモンPTHが分泌され、PTHの作用により骨を溶かして血清のCa濃度[Ca]を上昇させる。PTHは、更に、腎臓による尿からのCaの再吸収を増加させ、ビタミンDを活性化して腸からのCaの吸収を高める。PTH分子は細胞膜上にあるレセプターに結合して、その細胞のCaイオンチャンネルを開かせ、その結果Caが流入して細胞内Ca濃度が高まる。毛髪の定常成長では、流入・流出等値則が成り立つ。すなわち、細胞内には小胞体及びミトコンドリアなどのCaの貯蔵庫があるが、[Ca]はHM細胞への血清からの流入量に等しい。それゆえ、[Ca]には、細胞のCaイオンチャンネルが開閉している状態及び閉じている状態それぞれに対応した高低の二つのレベルが観察される。
図3は図2と同じ毛髪試料の測定結果である。図3に示されるように、式(2)によって得られる[Ca]の測定値は、高い標準値50(=[Ca]HO)と、低い標準値10の二つのレベルに分かれている。ほとんどの試料の[Ca]の値は、低い標準値の近傍に分布している。被験者V−3、V−4、VI−4、VII−5、VII−7及びVII−8の[Ca]はいずれも標準値50に等しく、如何に[Ca]が厳密に制御されているかが分かる(式(6)を参照)。Ca剤の3ACa(Active Absorbable Algal Calcium)を1日当たりCa900mgの割合で10日間服用すると、高値の[Ca]は低値にまで減少する。それゆえ高値の[Ca]は、Ca不足で開いたCaイオンチャンネルを通して起こるCaイオンの流入によると結論できる。つまり、[Ca]=50の毛髪濃度は、HM細胞の開閉するCaイオンチャンネルを通して、一定値に制御された血清イオン濃度[Ca]と直接に平衡している。
[Ca]の2つのレベルの間の遷移は、瞬間的に起こるので、毛髪濃度の測定値は高い値と低い値に明確に分かれる。[Ca]を常に低値に維持している人は健康であり、このような人を、本明細書では「EE型」(Ca Ever Enough for closing the channels)と呼ぶ。
図3から分かるように、[Ca]の値が標準値10より大きく下回る人がいる。これは血液が酸性に傾いたことによるものである。図3の右の方の被験者S1からS5まではCa剤服用の効果を調べたもので、1日にCa900mgの割合で2ヶ月間服用して、服用前の分析値には“B”(Before)を付し、服用後には”A”(After)を付している。S4AとS4Bの比較から分かるように[Ca]の低い値はCa剤の服用によって回復する。この酸性化は4.5項で述べるようにPTHの作用による。長期にわたって[Ca]<<10の状態が続く人を、本明細書では「DA型」(Ca deficiency deviated toward Acidosis)と呼ぶ。
しばしば、イオンチャンネルの開閉が続く状態と閉じた状態が頻繁に入れ換わり、Ca不足に対して細胞内Caイオン濃度を調整している。この場合、[Ca]は平均として標準値10より少し高くなる。このような人を、本明細書では「DE型」(Ca Deficiency for Excitation of Channnel gating)と呼ぶ。被験者IV−6とIV−7の[Ca]は50よりわずかに低く、「DE型」である。しかし、Caイオンチャンネルが開いている時間の総和が長いので、次に述べる「LD型」への遷移の段階にあると考えられる。この場合、“DE−LD”のラベルを表示している。
X線蛍光分析の励起ビーム幅が1.4mmであることから、図3で[Ca]が高い標準値50に等しいことは、Caイオンチャンネルが開閉している状態が少なくとも5日間続いたことを意味する。多くの場合、[Ca]の高値が長期間続く。これを本明細書では「LD型」(Long−term Ca Deficiency)と呼ぶ。
チャンネル開閉の場合
図3の[Ca]HO=50は開閉しているイオンチャンネルを通してHM細胞にCaイオンが流入したことによる。PTHはCa不足のときに分泌され、血液に乗って巡回し、全身の細胞のPTH受容体に付くとCaイオンチャンネルを開かせる。受容体にはPTH分子が付いたり離れたりするので、チャンネルは頻繁に開閉する。開くたびにパルス流として流入したCa2+は細胞内に堆積して細胞内[Ca2+]は上昇して血清イオン濃度[Ca]と等しくなる。Ca2+を細胞外へ汲み出す分子ポンプの作用は小さい。毛髪に取り込まれる毛髪蛋白はHM細胞内に形成され、Ca原子は、HM細胞から毛髪蛋白に2個の対として入る。HM細胞液から毛髪蛋白にCaが入る速さは、細胞液内のイオンの衝突確率[Ca] に比例し、毛髪蛋白に入ったCa原子対が分離して細胞液へ戻る確率は、1回の分離で2個の原子が分離するので2[Ca]HOに比例する。化学平衡では両方向への速さが等しくなるので、rとqを比例乗数として、2r[Ca]HO=q{[Ca]である。血清イオン濃度に乾燥血清の[Ca]の標準値10を用いると、q=rとなる。このような考察から、チャンネルが開閉している状態に対応する毛髪濃度の標準値は次式で表せる。
[Ca]HO=(1/2)[Ca] (6)
この[Ca]HOは血清イオン濃度[Ca]と直接に平衡しており、血清の蛋白質量とは無関係である。図3のV−3、V−4、VI−4、VII−5、VII−7、VII−8の[Ca]HOの高さが揃うのは、血清の単位体積当たりのCaイオン濃度が厳密に制御されていることによる。[Ca]=10を式(6)に代入して、一定の値[Ca]HO=(1/2)(10)=50を得る。
チャンネル閉の場合
Ca剤服用の10人の被験者が標準の毛髪[Ca]=10を示した。被験者の乾燥血清は[Ca]=20であり(表1) 毛髪[Ca]の2倍である。すなわち、正常の場合には
[Ca]=[Ca]=[Ca]HC (7)
が成立する。
正常状態では、Caは血清の液相と蛋白質相に等しい濃度[Ca]=[Ca](等しい化学ポテンシャル)で分配される。Caイオンチャンネルが閉じているとき、[Ca]の半分を持つ血清蛋白質だけが細胞に取り込まれ、細胞内イオン濃度[Ca]CIが生じる。それが式(6):[Ca]=(1/2)[Ca]CI にしたがって毛髪蛋白に入る。この[Ca]CIは毛髪の定常成長では血清からの流入と毛髪への流出が等しくなるように自然に調整されるので、Caイオンチャンネルが閉じている状態に対応する標準値[Ca]HCは、血清蛋白質由来の乾燥血清の[Ca]と等しい。
式(6)と(7)は、実験結果と一致する。[Ca]HC=[Ca]=[Ca]=10なので、血清イオン濃度と平衡する[Ca]HO=(1/2)(10)=50となる。一方、[Ca]HCは血清からの蛋白質経由の供給量で制限される定常状態にある。
ここで、[Ca]から[Ca]の絶対値を計算すると、[Cu]の場合と同様に、5mg/dLの血清蛋白質[Ca]から毛髪1g当たり[Ca]=[Ca]HC=0.49〜0.6mg/gになる。また、チャンネル開の[Ca]HOは[Ca]HCの5倍の[Ca]HO=2.5mg/gとなる。
4.3 リンP
Ca不足で分泌されるPTHは骨溶解(骨吸収)を引き起こし、その際、骨から血清へリンがリン酸イオンとして放出される。このリン酸イオン(HPO 2−)の増加は、PTHによる腎再吸収(近接尿細管細胞のNa−HPO 2−共輸送)の抑制効果を超えると考えられる。それゆえ、Ca不足が血清中のリン酸イオンを増加させ、細胞のリン酸イオンチャンネルが閉じると思われる。
図4は、図2と同じ試料に対して測定された[P]を示す。30代から70代の50人の女性被験者のほぼすべてが高値[P]=10〜14を示している。図4の右側の男性被験者S2〜S5でCa剤服用の効果が見られ、高値の[P]は低値[P]=5に遷移することから、低値が正常の標準であることが示される。50人の女性の被験者中ただ一人、VII−3だけが正常値[P]=5なのは注目に値する。他の実験では男性19人中5人が正常であった。
ここで、表1の[P]=4と毛髪正常値[P]=5との関係を考える。Gamble図によると、細胞内のHPO 2−濃度は血清濃度より遥かに高い。すなわち、Kの場合と同様に、HPO 2−イオンは細胞膜の分子ポンプによって汲み入れられている。それゆえ、高値[P]≧10と低値[P]=5は、それぞれリン酸イオンチャンネルが閉じている状態と開いている状態(開閉の繰り返しの状態)に対応する。P原子はHM細胞内でピロリン酸pyrophosphate(diphosphate)P 4−のような原子対として存在し、毛髪蛋白内では単原子とすると、細胞内イオン濃度[P]CIを用いて毛髪濃度は式(6)場合と同様な考え方で次式を得る。
[P]={2[P]CI1/2 (8)
ピロ燐酸はDNA合成の副産物であり、毛髪成長で遺伝子が発現しているHM細胞内に存在すると考えられる。
細胞内リンイオン濃度[P]CIは、Gambleの血清−細胞外液−細胞内液イオン分配図から得られる。式(2)による濃度は蛋白質分子当たりのP原子数であるので、Gamble図(図16)から得られる血清の[HPO 2−]/[Protein](=2/16)と細胞内の[HPO 2−]/[Protein](=110/71)が乾燥血清の無機リン濃度[P](=[P]+[P])と細胞内の[P]Cellにそれぞれ対応するとして、[P]Cell/[P]=[P]CI/[P]=(110/71)/(2/16)=12.4となる。Gamble図では細胞分子ポンプが作動してチャンネル開の標準の場合を示すと考えている。血清は無機リン[P]=[P]+[P]と負の電荷HPO 2−を持つリン脂質を含み、脂質分子は血清蛋白質分子と対を作り中性になっている。血清内では分子対、蛋白質分子上及び液相でのHPO 2−の化学ポテンシャルが等しいとして、全血清リン濃度[P]=4はこれらの3つの位置に2:1:1の比率で分配されているとすると、[P]=4/4=1となる。式(8)から、[P]=(2×1×12.4)1/2=5を得る。この値は正常標準値として観察される[P]HO=5と一致している。この値は、Caが充足でCaとPは骨に移り、血清リン濃度が減少して細胞のPイオンチャンネルが開いた状態に対応していると考えられる。
一方、高値[P]=10はイオンチャンネル閉の細胞にイオンを細胞膜の分子ポンプで汲み入れて達成される。これはPTHによって骨吸収が増加した場合と考えられる。さらに高い毛髪リン濃度[P]>10は、DE型で現れ、5.2項で述べるように細胞へのCaのパルス流入の刺激によると思われる。
結論として、低値[P]HO=5(Gamble図から計算すると、毛髪1g当たり1.67mg/gに相当する)はCa充足の正常標準値であり、高値[P]≧10(≧3.34mg/gに相当)はPTHによる骨吸収で起こる血清[P]の増加による。
4.4 ストロンチウムSr
Srは同族元素のCaと類似の挙動を示す。[Sr]=[Sr]+[Sr]で[Sr]〜[Sr]である。健常人では血清[Sr]は毛髪[Sr]の2倍であることが確かめられている。すなわち、CaイオンチャンネルがSrイオンの通路としても働き、チャンネルが閉じているとき、下記式の関係が成立する。
[Sr]HC=[Sr] (9)
同族元素なのでCaチャンネル閉の状態では[Ca]と[Sr]は比例しており、実際には[Sr]<<[Ca]であるが、式(2)で定義される濃度では次式が成り立つ。
log[Ca]=log[Sr] (10)
式(2)による乾燥血清と毛髪の濃度の測定値から、[Sr]と[Ca]の値が揃う。すなわち、
[Sr]HC=[Sr]=[Ca]=[Ca]HC (11)
式(10)、式(11)は、式(2)で定義される元素濃度で成立し、一般の測定で得られる濃度値は、血清[Ca]=5mM/Lと[Sr]=0.3nM/Lのように桁違いである。式(2)の導出の過程からわかるように、一般の濃度表示を使う場合には、標準値[Ca]stと[Sr]stを用いて、Caチャンネル閉の場合には式(10)に代えて[Ca]/[Ca]st=[Sr]/[Sr]stが成立する。
式(11)の関係は図3でみることできる。毛髪濃度の多くは、Caイオンチャンネルが閉じていて、標準値[Sr]HC=10と[Ca]HC=10の近傍に分布する。[Sr]と[Ca]は比例関係にある。
しかし、図3において各被験者の[Sr]と[Ca]を比較すると、Caイオンチャンネルの開閉が続く状態にあるとき、[Sr]は[Ca]とは違った挙動を示す。[Sr]の低値は[Sr]HC=10であるけれども、[Sr]の高値はCaの高値[Ca]HOよりかなり高く、[Ca]HO=50に対して[Sr]HO=200である。図3から、[Ca]=[Ca]HOの時に[Sr]=[Sr]HOであるので、高値[Sr]HOは、開いたCaイオンチャンネルを通じたSrイオンのHM細胞への流入によることが分かる。[Sr]=[Sr]+[Sr]=20を考慮に入れると、
[Sr]HO=(1/2){[Sr]+[Sr] (12)
が成り立つことが分かる。すなわち、全血清濃度[Sr]が毛髪濃度に貢献する。式(12)は、細胞内のSr原子は全部イオンとして存在することを示唆している。さらに、毛髪に沿って走査して分析すると、低値から高値への遷移において[Sr]の立ち上がりが[Ca]より遅れることが分かった。このことは、SrイオンはCaイオンチャンネルを通過しにくいことを示唆している。この性質によって、[Sr]はCaの高低の2値間の遷移に追従できず、その様子が図3のDE型のIII−9、IV−6、IV−7、VI−1、VII−5、VII−8で見られる。また、高値[Sr]HO=200は、Caイオンチャンネルが開閉している状態が長期に続くLD型(V−3、V−4、VI−4、VII−7)で観察される。
既報のデータ、血清濃度[Sr]=0.3nM/Lを用いて、毛髪の低値は[Sr]HC=0.13ng/gで、高値は[Sr]HO=2.6ng/gと計算できる。
4.5 塩素Clと臭素Br
血清は、ClとBrを、蛋白質分子に原子として、液体にイオンとして含む。
[Cl]=[Cl]+[Cl]
[Br]=[Br]+[Br]
一般にClとBrは同族元素として比例関係を持つので、CaとSrの関係と同様に、式(2)で得られる濃度の間には次式が成立する。
log[Cl]=log[Br] (13)
一般の濃度表示の場合は、CaとSrの関係と同様に、標準値[Cl]stと[Br]stを用いて、式(13)に代えて[Cl]/[Cl]st=[Br]/[Br]stが成立する。
図5は、図2と同じ毛髪試料について式(2)による[Cl]と[Br]の値を示す。[Cl]の低い場合を除いて、多くの毛髪試料で式(13)が成り立ち、式(2)の定義で[Cl]=[Br]である。また、高低二値のホメオスタシスのレベルがあって、高値は[Cl]=[Br]=22で、低値は[Cl]=[Br]=10である。流入・流出等値則から、これらは、ClとBrに共通に働くClイオンチャンネルが開閉している状態と閉じている状態に対応している。
チャンネルの開閉が続く場合
高値[Cl]HO=[Br]HO=22は、Clイオンチャンネルが開閉を反復している状態に対応しており、チャンネルを通じて細胞内イオン濃度は血清イオン濃度[Cl]=[Br]=250と等しくなると考える。[Cl]HOと[Cl]〜[Cl]([Br]HOと[Br]〜[Br])の比較から次式の関係を得る。
[Cl]HO =2[Cl] (14)
[Cl]HO =22×22=484であり、[Cl]〜[Cl]=250なので、式(14)は誤差の範囲内で成立している。式(14)を書き直して、
[Cl]HO={2[Cl]1/2 (15)
式(6)に対する考察に従えば、式(14)は毛髪蛋白とHM細胞内液との間の平衡関係を示し、Clは毛髪内では単独原子で、細胞内では原子対として存在すると考えられる。すなわち、細胞内Clは電気的に中性の原子対として存在し、血清内[Cl]と等しい濃度を持つ(Clが等しい化学ポテンシャルで分配される。)。
血清塩素濃度の正常値は[Cl]=103mM(mEq/L)であり、HCO の増加によって[Cl]<97mM(mEq/L)になると代謝性アルカローシスになり、[Cl]>109mMでアシドーシスになる。両値は正常値から6%以下の変動である。血清と毛髪の[Cl]、[Br]の比較から、毛髪高値の[Cl]HO=22と[Br]HO=22は6%以上高い血清[Cl]=によることが分かった。すなわち、Clイオンチャンネルの開閉はアシドーシスによるものである。このClイオンチャンネルの開閉は血清中の過剰の[Cl]を細胞内に収容するために起こり、塩素移動で赤血球へのCl移動と同期している。
チャンネル閉の場合
血清蛋白質だけがHM細胞に取り込まれ、式(5)により次式を得る。
[Cl]HC=[Cl]=[Br]=[Br]HC (16)
これは式(2)で定義される濃度に対して成立し、[Cl]と[Br]は比例関係にあることは言うまでもない。図5の毛髪試料の大部分は正常標準値[Cl]HC=[Br]HC=10である。式(16)によって、血清蛋白質濃度[Cl]は毛髪濃度[Cl]HC(または[Br]HC)を測定して得られる。[Cl]HC/[Cl]=10/250であるから、全血清濃度[Cl]の4%の[Cl]が細胞に入る。これは正常標準として知られているGamble図の細胞内/細胞外Clモル比5/108と一致する。
[Cl]は恒常的な[Cl]と平衡しており、血清pHに依存して変動する。[Cl]と[Br]は、血清pHが減少すると増加し、血清pHが増加すると減少する。これは[Ca]とは逆である。一般に、血清pHの変化により、正と負のイオンは血清蛋白質と液体イオンの間を逆方向に動く。
[Cl]は血清のPTH濃度に依存して腎機能によって制御されている。それゆえ、図5で被験者S1〜S5のCa剤服用前後の[Cl]と[Br]の値から分かるように、正常標準の毛髪濃度[Cl]HC=[Br]HC=10は、血清のPTH濃度が低いときに達成される。
アシドーシス:DA型
DA型のアシドーシスは、尿細管細胞のH/Na交換分子の作用を阻害するPTHによる。その結果、血清のH濃度が増加し、血清電気的中性を保つためにCl濃度が増加する。
図3と図5とを比較すると、「DA」と表示したサンプルIII−6、III−8、III−10、IV−1、IV−2、IV−4、V−9、VI−7、VI−9、VII−4、VII−6、VII−9、VII−10からわかるように、低い毛髪[Ca]<<10は、高値を超えた[Cl]=[Br]>22と密接に関連している。[Ca]<<10のどのサンプルも[Cl]=[Br]>22であり、これはClイオンチャンネルが閉じていてアシドーシスによって[Cl]と[Br]が増大した結果と考えられる。図5の被験者S1〜S5で見られるCa剤服用の効果から、低値[Cl]=[Br]=10はCa充足の健康状態を意味し、アシドーシスはCa不足に起因している。アシドーシスは、Caイオンチャンネルを閉じたままで、Ca不足を血清蛋白質のCa原子をイオン化してしのいでいると解釈できる。図5から分かるように、30代から70代の多くの被験者は、Ca不足の[Cl]HC=[Br]HC≧22である。男性については、別に毛髪分析をした結果、正常低値の[Cl]HC=[Br]HC=10が多い。
アルカローシス:LD型
低い[Cl](=[Cl])の値が図5の何人かの被験者で見られる。これらは[Ca]=50のLD型のV−3、V−4、VI−4、VII−7、LD型の終端に現れるDE型(“DE←LD”、5.2項参照)のIII−1、IV−6、IV−7、VI−5、VI−6、VII−5、VII−8、N1、及び、癌患者のRC1〜RC3である。すなわち、低い値の[Cl]<<10はCaイオンチャンネル開と関連している。赤血球へのCaの流入は血清pHを正常に保つ「塩素移動」を劣化させる。言い換えると、LD型の長期に続くチャンネル開閉が血清のCl濃度を低下させ、アルカローシスになる(図11の癌の効果も参照)。
アルカローシスには2つのタイプがある。一つは図5のIV−7、VI−5のように正常[Br]=10で低い[Cl]<10を持ち、もう一つはV−3とV−4で見られるように低い[Cl]<10と高い[Br]>10を示す。後者は低い[Cl]を高い[Br]で補償する傾向を示している。実際には、標準値は[Cl]=103mM(mEq/L)、[Br]=60μM(μEq/L)で大きな差があり、完全な補償は不可能であり、したがって[Cl]+[Br]の和がなお低くてアルカローシスを引き起こしている。しかし、低い[Cl]=[Cl]を高い[Br]=[Br]で補償する傾向によって、[Cl]=[Cl]<10<[Br]=[Br](式(2)の定義による濃度)になっている。
この補償型と対照的に、前者はいつも正常な[Br]値を持ち、[Cl]=[Cl]<[Br]=[Br]=10である。Brは[Cl]とは独立に振る舞っている。Brイオンが赤血球細胞膜を超えて移動できず、塩素移動に貢献しないで、血清Brイオン濃度が正常値に保たれる(6.2項参照)。
上の結果は次のように説明できよう。LD型で長期にわたって開いたCaチャンネルを通じた赤血球へのCaの流入によって塩素移動の機能が劣化し、乾燥血清と毛髪での式(2)による比例関係[Cl]=[Br]が失われ、[Cl]<[Br]のアルカローシスの低い[Cl]が生じる。そのアルカローシスには二つのタイプ、「補償型」と「独立型」とがある。前者では、ClとBrは同じ挙動をし、[Cl]+[Br]の和が腎臓制御の恒常性をもつ。一方、独立型は[Br]=10を維持し、[Cl]が恒常性をもち、Brは自然の一定比Br/Clで存在し、赤血球の細胞膜を超えて移動しない。
既報の全血清濃度[Cl]=10mmol/dLと[Br]=6μmol/dLを用いて、毛髪濃度の低値と高値は[Cl]HC=1.7mg/g、[Cl]HO=3.8mg/g、[Br]HC=2.2μg/g、 [Br]HO=4.8μg/gと計算できる。
4.6 カリウムK
血清Kはイオンであり、[K]=[K]、[K]=0である。全身のKの98%は細胞内に存在する。これに対してNaは主に細胞外に存在し、細胞外のNa濃度は細胞内のK濃度とほぼ等しい。細胞はNaを汲み出し、同時にKを汲み入れる分子ポンプNa/K−ATPaseを持っている。また、細胞膜にはNaチャンネルとKチャンネルがある。XFAはNaに対する感度が低いので、Kの濃度だけが測定された。
図6は、図2と同じサンプルで観察された[K]の値である。[K]の値は[K]〜1から300の広い範囲の値をとっている。図6の被験者S1〜S5から分かるようにCa剤の服用は[K]の低い値を[K]≧100の高い値に変える。それゆえ、[K]=300の最高値が標準であり、低い[K]はCaの不足による。
高い標準値[K]=300は、チャンネル閉のHM細胞に細胞外液からKイオンを分子ポンプNa/K−ATPaseで汲み入れて達成できる。この標準[K]値は、標準の血清と細胞内イオン濃度との関係を示すGamble図(図16)を使って説明できる。最初にGamble図のリットル当たりの濃度を式(2)で定義される乾燥血清、乾燥細胞、毛髪の濃度に変換する。4.3項のPの場合と同様に、乾燥血清の濃度[K]と乾燥細胞の濃度[K]は、それぞれ、蛋白質分子当たりのKイオン数である、血清中の[K]/[Protein](=5/16)と細胞内の[K]/[Protein](=157/71)とに比例すると考えると、[K]/[K]=(157/71)/(5/16)=7.08となる。また、表1から[K]=40なので、[K]=7.08×40=283となる。この値は毛髪観測値[K]=300(Gamble図から計算すると、16mg/gに相当する)と良い一致を示し、[K]は細胞内濃度に等しいことを示ししている。すなわち、一般に[K]=[K](乾燥)である。
図6の被験者の多くは非常に低い[K]濃度を持っていて、[K]はCa不足で低くなっている。前述のように、PTHは近接尿細管細胞のH/Na交換分子のHを排泄する働きを阻害する。その結果、血清[H]が増加し、細胞内に流入してK/H交換を起こし、Kリークチャンネルを通してKイオンを細胞外に追いやる。
[Ca]と[K]とを比較すると、図3で正常の[Ca]を持つ多くの被験者が図6で異常に低い[K]を示している。このことから、[K]は[Ca]より血清のPTH濃度に敏感であることが分かる。すなわち、Kイオンのチャンネル開閉を起こす血清のPTH濃度の範囲は、Caのそれより低い。[Cl]と[Br]は血清のHの濃度を反映し、毛髪[K]は細胞内のHの濃度を反映しているらしい。しかし、[K]は[Cl]と[Br]より血清のPTH濃度に敏感である。
4.7 硫黄S
硫黄Sは主として硫黄を含むアミノ酸、メチオニンとシステインによって摂取される。非常に高い毛髪硫黄濃度が標準として報告されている。しかしながら、毛髪の[S]は、チャンネルの開閉に対応する二つのレベルを持つことが見出された。ただし、イオンSO 2−に対するチャンネルの存在は、まだ報告されていない。
図6は図2と同じサンプルの毛根[S]の値を示す。50人の被験者の大部分は[S]=200の高さに揃っている。しかし、S1〜S5のサンプルから、Ca剤を服用すると高値の[S]=200が低値の[S]=20に降下することが分かる。また、N1(女)とN2(男)は本来Caが充足で低値の[S]を持っている。毛髪[S]の低値と高値はHM細胞のSO 2−に対するイオンチャンネルの閉と開に対応している。図6で高低2値の間の中間値はチャンネルの開閉の平均値として観察される。
Caの場合と同様に、血清はイオンSO 2−と蛋白質に乗ったものとして硫黄Sを含む。すなわち、[S]=[S]+[S]である。[S]の低値と高値は、それぞれ血清の[S]と[S]と関係している。表1と図6から分かるように、[S]=40は毛髪低値の[S]=20の2倍である。すなわち、[S]=[S]である。イオンチャンネルが閉じているとき、血清蛋白質のSだけが毛髪に取り込まれ、毛髪[S]HCは血清蛋白質のSから由来する乾燥血清の濃度[S]に等しくなる。
[S]HC=[S] (17)
イオンチャンネルの開閉が続く場合には、細胞内イオン濃度は開閉するチャンネルを通じて常に血清イオン濃度[S]=20に維持される。Sは原子対(二重結合)を作って毛髪蛋白分子に取り込まれ、毛髪濃度は次式で与えられる。
[S]HO=(1/2)[S] (18)
血清イオン濃度[S]=20を用いて、[S]HO=200が得られ、図6の観察結果と一致する。2つのレベルはCaと同じようにして得られたけれども、高値は低値の10倍である。
既報の全血清濃度[S]=98mg/dLを用いて、毛髪低値は[S]HC=4.9mg/g、高値は[S]HO=49mg/gと計算できる。
血清イオンSO 2−濃度[S]は主として近接尿細管(PCT)の細胞膜にあるNa依存型陰イオン共輸送分子による腎再吸収で制御されている。この共輸送は尿細管細胞で発現したPTH受容体によって阻害される。血清中のPTH濃度が増加すると、SO 2−不足になって細胞の負イオンチャンネルが開くので、[S]の高値はCa不足で分泌されるPTHによる。
図6で、たとえばV−6とV−10は[K]>100の正常値を持つが、[S]の値は標準値よりはるかに高い。それゆえ、Sイオンの開閉に対応する血清のPTH濃度の範囲はKイオンのそれよりは低い。血清のPTH濃度に対する[S]の高い感度は、図6の[S]と[K]との比較からも分かる。[S]の低値は男性被験者ではしばしば観察されるが、女性では少なく、Ca代謝は女性にとって厳しい問題である。最後に、[S]を[P]と比較すると、図4と図6のN1とN2のように、低値の[S]をもつ被験者にも高値の[P]を示すものがあるので、[P]の低値は血清のPTH濃度に最も感度が高く、PTH濃度が最低の完全なCa代謝を示している。[P]が低値の時には、図4と図6のVII−3で見られるように、他の元素Ca、Cl、Br、K、Sはすべて正常になる。
Ca代謝の4タイプと毛髪元素濃度[X]との関係を図15にまとめた。
5.Ca代謝の分類
EE型とDA型はCaチャンネル閉を保つ。ここではチャンネルの開閉を伴うDE型とLD型の元素濃度の時間変化について述べる。
5.1 DE型
図2〜6の被験者N2はDE型の一例である。毛根から先端まで分析すると、[Ca]=7〜9で、[Cl]=[Br]=38のDA型が長期に続いていて最後に現れたDE型であることが分かった。そこで励起X線ビーム幅を50μmに集束して毛髪の軸方向に毛根部を50μmの間隔で測定した結果を図7に示す。[Ca]は大きくゆらぐが、[Sr]は4.4項に記したようにそのゆらぎに追従できない。観察結果から、血清のPTH濃度は、Caチャンネルを開閉させる程度には高いが、[Ca]が高値になるまでに細胞内Caを堆積させるほど高くないことが示される。[Ca]の挙動とは対照的に、[K]は正常高値[K]〜300に維持されている。一方、[S]は大きく変動する。そして[P]は高値を持つ。この観察から[K]は[S]よりは正常になりやすく、[P]は最も正常になりにくいことが分かる。[Cl]=[Br]=10が図7のほぼ全域で見られる。DE型は正常に近い状態であり、[Cl]=[Br]>22のDA型とは異質である。DE型では血清のPTH濃度が高く、Caチャンネルを開閉して、Ca不足に対して細胞内Caイオン濃度を調整している。この調整により細胞機能が正常化すると考えられる。
5.2 LD型
LD型は慢性のCa不足によって長期にわたってCaチャンネルの開閉が続くCa代謝異常である。長い毛髪試料を使ったX線蛍光分析はLD型の全プロセスを明らかにできる。
2人の女性被験者によってLD型の典型的な例を図8に示す。それぞれからの毛髪一本を毛根から先端まで分析した。[Ca]と[Sr]は毛根からの距離とともにゆっくり増加して両元素は式(6)の高値[Ca]=50と式(12)の[Sr]=200に達する。その先端部では慢性のCa不足によって、この高値が6ヶ月以上も続いている。[Ca]と[Sr]のそれぞれの減衰曲線は両被験者で同じ形であり、一方を水平方向にずらすと重なる。
[Ca]=10から[Ca]=50に至る変化の全領域で[Sr]と[Ca]の両曲線は互いに平行である。両曲線の間の縦方向の距離は[式(12)−式(6)]で与えられる。すなわち、式(10)のlog[Sr]=log[Ca]と[Sr]=[Sr]とを用いて次式を得る。
log[Sr]HO−log[Ca]HO=2log{1+[Sr]/[Sr]
=log4 (19)
対数スケール上のこの距離は比[Sr]/[Ca]=4と等価である。図8から分かるように、この比は濃度変化の全域にわたって[Sr]/[Ca]=4に保たれている。毛根近くでは式(11)が成立し、[Ca]=[Sr]〜10となる。以下では、両曲線の距離log[Sr]−log[Ca]を「Sr/Ca比」と呼ぶ。
図8は[Ca]の高値から低値への回復に10カ月もかかることを示している。この結果は、長期にわたるイオンチャンネルの開閉によってHM細胞に大量の堆積したCaとSrを示唆していると考えられるかもしれない。しかし、LD型の過程でCa剤を服用(10日間Ca900mg/日)すれば、Caチャンネルが閉じて標準値より低い[Ca]<10に降下することが分かっている。それゆえ、Caの堆積量はそれほど多くないと考えられる。[Ca]の10カ月減衰は、血清[PTH]のゆるやかな減少によるCaチャンネル開閉の頻度がゆっくり下がることによる。この過程では、細胞内と毛髪濃度との関係が維持され、Sr/Ca比はいつも[Sr]/[Ca]=4に保たれる。
LD型のCaの細胞への流入は細胞機能にいろいろな効果を及ぼす。4.1項で述べたように、金属元素の多くは過剰分を胆汁に排泄する肝機能によってホメオスタシス制御されている。この機能が肝細胞へのCaのチャンネル流入によって劣化する。実際、[Ca]の高値と共に種々の金属(Cr、Ni、Mn、Pb等)の低いピークが毛髪のX線蛍光スペクトルに多数現れる。それらはEE型やDA型では決して現れない。図8では、これらの金属の中でも[Cu](式(3)による規格値)または[Ti]の高い値が[Ca]=50と[Sr]=200のときに見られる。これらは“LD−Cu type”、“LD−Ti type”と呼び、図8では、それぞれ“C”と“T”とラベルを付けている。被験者二人とも細胞(脂肪細胞)への長期のCa(Sr)の流入による脂肪肝であった。
4.5項で述べたように、LD型被験者は[Cl]<[Br]のアルカローシスになっている。図8の両被験者は補償型である。すなわち、“C”と印したLD−Cu型は[Ca]=50の継続期間から正常値[Ca]=10に降下するまでの全減衰プロセスで、[Cl]と[Br]は大きく分離し、[Cl]≦10と[Br]=160になっている。この高い[Br]の値はCl不足を補っているからで、計算すると[Br]=160は正常の[Cl]の約1%に当たる。毛根の近傍で、[Ca]が正常値に回復した時、高値の[Cl]=[Br]が現れる。この状態は、かなり高い[K]が観察されるので、DE型と判定できる。
“T”と印したLD−Ti型も、[Br]と[Cl]とが分離した同様なプロセスを示している。毛根近くの2ヶ月間ほどで、[Ca]は正常より低く、[Cl]が[Cl]=[Br]で高値を超えている。この観察結果[Ca]<10と[Cl]=[Br]>22は、アシドーシスDA型を意味する。毛根で[Ca]が高値に急上昇し、同時に[S]が半分に低下していることから、毛根の時点でDE型になっている。
図9には、31才から84才の9人で見られるように、[Ca]の減衰曲線の形はLD型の人に共通で、年齢によらない。図の毛髪の多くは短いため全減衰曲線を観察できないが、全部ほぼ等しい勾配を持っている。図9では[Sr]を示していないけれども、減衰曲線は[Sr]/[Ca]=4の比を持ち、アルカローシスによる[Cl]<[Br]であることを確かめている。被験者のうち2人は毛根近傍で[Ca]の低値から高値への急峻な遷移を示している。
図8と図9の観察から、LD型はいくつかの区分からなるプロセスを極めて長い周期で繰り返していると結論できる。すなわち、プロセスは、長期に開閉が続くCaチャンネルを通してCaの細胞への流入と堆積(LD型)、その堆積によるCaの充足でチャンネル開閉の頻度が低下、堆積Caの放出(細胞内[Ca]の減衰)、DA型、DE型、そして再びLD型という一連の区分を繰り返している。図8の毛根部で見られるように、LD型から正常に回復した後、Ca不足が再びDA型からスタートし、さらに進んでDE型のチャンネルの開閉を引き起こし、そして次のLD型がはじまる。それゆえ、血清のPTH濃度はDA型よりもDE型の方が高いと考えられる。一般には、しかし、DA型は低い[K]値と高値の[S]=200を持つのに対して、DE型は良好で[K]が高くて[S]<200である。それゆえ、図7で見たように、Ca不足に対してDE型のチャンネルの開閉によって細胞内Caイオン濃度を調整していて、KやSに対するチャンネルと分子ポンプを正常に働かすらしい。しかし、LD型ではCaの流入が細胞機能を劣化させ、[K]〜0と[S]=200となる。結論として、血清のPTH濃度の増加とともに、DA型からDE型を経て、LD型に進む。
LD型の慢性のCa不足は、多分、遅い骨吸収による。もし骨吸収がCa不足にすぐ反応すれば、Caチャンネルの開閉が起こらず、LD型に替ってDA型になるはずである。後に述べるようにLD型は癌発生のリスクを持つ。50歳以上の男女93人の毛髪分析の結果はEE型5%(93人中5人)、DA型34%、DE型33%、LD型28%であった。
Ca代謝の4つの型に対する毛髪元素濃度と血清のPTH濃度[PTH]との関係を図15にまとめた。
6.毛髪中の乳癌の記録
乳癌では石灰化病変がX線マンモグラフィで検出される。それゆえ、患者からの毛髪は癌によるCa代謝の異常を示すはずである。図10は13人の乳癌患者の毛髪に対するX線蛍光分析の結果である。癌が発見されたときには、通常、毛根は[Ca]の低値を示し、その[Ca]は毛根からの距離とともに増加し、高値に達する。つまり、癌はCaイオンチャンネルが開いた[Ca]の高値の時期で発生し、癌の成長とともに[Ca]は低値に向かってゆっくり減少する。[Ca]の値が高値に近ければ近いほど癌はより早期である。“CP9”と印した患者は定期検診で見つかった早期癌で、毛根では高低2値の中間の[Ca]になっている。図10の観察結果はLD型からの癌発生を示す。図8のLD型と比較すると、癌患者の毛髪は多様な[Ca]の減衰曲線を示す。
癌細胞は、PTHに類似した副甲状腺関連ペプチドPTHrP(Parathyroid Hormone related Peptide、主としてアミノ酸配列が未完の断片)を分泌する。PTHrPもPTHと同じ作用だが、Caチャンネルはレセプター(受容体)に付着した瞬間だけ開き、Caが細胞に流入して、すぐ閉じる。PTHのレセプターへの着脱は頻繁で、流入したCaイオンは累積されて血清の濃度と等しくなる。一方、PTHrPはレセプターに滞在する時間がPTHの150倍も長く、着脱頻度が150分の1なので、[Ca]の高値で癌が発生した後、血清中の濃度比[PTHrP]/[PTH]の増加とともに[Ca]は低値へと減少する。
6.1 癌形成の全プロセス
リンパ節に再発した癌の全プロセスを観察できる長くて染めていない毛髪がたまたま得られた。図11に示すように、[Sr]、[Ca]、[Cu]、[Cl]H、[Br]の値を毛髪一本に沿って測定した。毛髪の先端では[S]<200のDE型で、毛髪[Sr]、[Ca]は低値から高値へと急上昇している。それに伴って[Cu]も上昇する。それからLD型のCa高値[Ca]=50が2ヶ月間続き、さらにわずかに低い[Ca]が少し変動しながら8カ月間つづく。この期間を便宜上「疑似LD型」と名付けておく。その後にLD型とは異なる[Ca]と[Cu]とが平行する減衰が続く。つぎに、中間値のCaレベルの長い平坦域が約12カ月もつづいてから、[Ca]はさらに低値へと減少する。
Sr/Ca比はLD型と癌とを識別する最も重要な因子である。すべての細胞のCaチャンネルがPTHによって開いているとき、Sr/Ca比はlog([Sr]/[Ca])=log4(式(19))となる。この状態、[Ca]=50でSr/Ca=4が、癌発生の準備が整った時である。もし癌からのPTHrPがすべての細胞のPTH受容体を占拠してCaチャンネルが閉じると、Sr/Ca比は[Sr]/[Ca]=1([Ca]=[Sr]=10)となる。それゆえ、癌の過程は1<[Sr]/[Ca]<4である。この比の変化が図11で見られる。LD型と疑似LD型の領域では[Sr]/[Ca]=4であり、それが平坦域では減少して[Sr]/[Ca]=2.5になる。この比はさらに減少して、毛根で[Sr]/[Ca]=1.1になる。Sr/Ca比は癌の成長とともに減少すると結論できる。
癌による特異な減衰曲線は、後述のように、Caチャンネルが開と閉の細胞数の比に基づいている。平坦域の高さは、約70%の細胞がチャンネル閉であると計算できる(式(20)と(21)を参照)。それゆえ、[Ca]=50のCa流入による細胞機能の劣化は癌発生によって改善される。その例を2つ次に示す。
図11では[Ca]の減衰曲線と平行して[Cu]が減少していて、これはLD型と異質である。図8のLD型との比較から、肝細胞へのCaの流入・堆積によって起こる過剰金属を排泄する肝機能の劣化を癌は改善するように作用することが分かる。つまり、癌からのPTHrPはCaチャンネルが閉の細胞数を増やし、チャンネル開の細胞数を減らし、その比を増加させる。[Cu]と[Ca]との平行減衰は、細胞機能と細胞内[Ca]との密接な関係を示唆している。これに対して、LD型の[Cu]は細胞内[Ca]が正常になるまで([Ca]が正常値になるまで)高いレベルにとどまり、肝機能の回復が遅い(図8)。
この視点からすれば、4.5項で述べたアルカローシスにも同様に癌の効果が期待できる。実際、図11では[Ca]と[Cu]の平行減衰とほぼ同時に[Cl]が増加していて、[Cl]もまた平坦域を示す。この癌発生による[Cl]の改善は、赤血球の開いたCaチャンネルを通したCaイオンの流入によって塩素移動の機能が劣化してアルカローシスになるとする結論にエビデンスを与えている。
6.2 速い成長の癌
上述のアルカローシスの例(図11)では、全プロセスにわたって[Br]=10の独立型なので塩素移動の機能を観察することができた。図12では、補償型アルカローシスの典型的な例を35歳の患者で見ることにする。毛髪先端部は染めていて情報が得られないが、多分、[Ca]=50と[Sr]=200の継続期間は数カ月以下と思われる。[Ca]高値の終点付近で、癌が発生して、[Ca]と[Sr]の急降下がSr/Ca比、[Sr]/[Ca]=4で始まり、毛根近くで[Sr]/[Ca]〜1.1に減少している。癌成長が速くて[Ca]=50から[Ca]=10までわずか5カ月で降下している。[Br]の値はその高値([Br]=22)を超えて癌の成長とともに急上昇している。これに対して[Cl]はノイズレベル[Cl]〜1にとどまり、[Cl]<10<[Br]の補償型アルカローシスになっている。毛根近くで[Cl]は急増して[Cl]=10に近づき、[Br]は[Br]=280に達し、血清の正常値[Cl]の約2%を補償している計算になる。癌の効果でアルカローシスは毛根近くで改善し、補償型なので[Cl]+[Br]の和が増加する。この結果は補償型では、4.5項で述べたように、Brも赤血球の細胞膜を越えて移動し、塩素移動に参加していることを実証している。手術で癌を除去した後、毛根で[Br]=10に回復しているが、塩素は、なお、[Cl]=2〜3の低いレベルにとどまっている。
癌の肝機能への効果は、Cu−Ti型(肝細胞にCaの流入で[Cu]と[Ti]の両方が増加)なので顕著に現れないが、毛根近くで[Cu]と[Ca]は平行して減衰している。
減衰曲線[Ca]と[Sr]の値は全細胞数に対するCaチャンネルの閉じた細胞数の比率xで与えられる。チャンネル開の細胞数の比率は(1−x)なので、式(6)、(11)、(12)を用いて次式を得る。
[Ca]=[Ca]HCx+[Ca]HO(1−x) (20)
そして
[Sr]=[Sr]HCx+[Sr]HO(1−x) (21)
ここで、式(6)により[Ca]HO=50、また、式(12)により[Sr]HO=200である。チャンネル閉の標準値は[Ca]HC=10、[Sr]HC=10を用いる。
図12に矢印“A”で示した位置では、[Ca]=24なので、式(20)は10x+50(1−x)=24となり、x=0.65を得る。このxの値を使って式(21)の[Sr]は10×0.65+200×(1−0.65)=76となり、矢印Aの位置の曲線上の[Sr]値と一致する。同様に矢印Bの位置では「Ca]=14で、x=0.9となり、得られた[Sr]=29は曲線上の測定値と一致する。式(20)と式(21)から、
([Sr]−[Sr]HC)/([Ca]−[Ca]HC
=([Sr]HO−[Sr]HC)/([Ca]HO−[Ca]HC) (22)
を得る。この式は[Sr]HC=0、[Ca]HC=0と置くとLD型の式(19)になるが、[Sr]HCと[Ca]HCは決して0にならない標準値であり、毛髪に記録されている癌のプロセスは本質的にLD型と異なる。癌の減衰曲線はCaチャンネルの開と閉の細胞数の比で決まり、xの値は癌の成長の評価に用いることができる。これに対してLD型は血清[PTH]の減少のプロセスである。LD型と癌との識別は、減衰曲線が式(19)に従うか式(22)に従うかで判定できる。
補償型は15人の乳癌患者の内7人であった。補償型の減衰曲線の勾配が独立型より大きく、癌の成長が速いようである。もっと多くの症例が必要だが、Brの細胞への流入は有毒と思われる。
6.3 免疫蛋白質の形成による血清蛋白質の増加
図13に示すように、対数スケールで減衰曲線が直線になる理想的な例に46歳の患者の毛髪分析で遭遇した。毛髪の先端の“DE”と印した部分は、[S]<200のDE型で、[Ca]と[Sr]の低値から高値への遷移が起こっている。この時点では癌はまだ発生していない。約4カ月間[Ca]=50の高値が続く。その間に癌が発生し、その成長とともに[Ca]と[Sr]は直線で近似できるようなほぼ一定の勾配で減衰する。明らかに[Sr]と[Ca]の間には式(22)が成立している。
血清は血清蛋白質分子当たりに恒常値に制御された[Br]を持つ。図13の患者は独立型のアルカローシスで、4.5項で述べたように塩素欠乏の[Cl]=[Cl]<10であっても[Br]は正常値[Br]=[Br]=10でなければならない。図13の結果[Br]=[Br]<10は、血清蛋白質の増加によって血清蛋白質に分配されたBr原子が希釈されたこと、すなわち、蛋白質1分子当たりのBr原子数の減少を意味している。その希釈はSrに対しても同じなので、図13の観測値[Br]=[Br]=7は式(12)によって[Sr]HO=(1/2){[Sr]+[Sr]=(7+10)/2=150となり、観察された高値と一致する。[Ca]=7でも、Caの高値はいつでもHM細胞の開いたチャンネルを通じて血清イオンの恒常濃度[Ca]と平衡していて[Ca]=50であり、Sr/Ca比は癌プロセスの始点で既に[Sr]/[Ca]=3になっている。それゆえ、[Br]と[Sr]の低下は血清蛋白質濃度の増加による希釈効果によると結論できる。
一般に、血清に含まれる全蛋白質の増加は免疫蛋白質の形成で起こる。それゆえ、観察結果は癌発生で誘発された免疫蛋白質の形成によると考えられ、それが[Br]<10の領域から分かるように長い過程にわたって続く。
6.4 癌プロセスの数式表示
図13のプロセスは[Ca]([Sr])の直線減衰として数式化できる。まず、PTHとPTHrPの共通の受容体へのそれぞれの滞在時間τとτを導入する。PTHとPTHrPのアミノ酸終端部は類似の構造を持っており、受容体を通して細胞には同じように作用をすると考えられる。PTHまたはPTHrPがCaチャンネルを開閉させる受容体に結合するたびに細胞にCa2+のパルス流入が起こる。それゆえ、頻繁なチャンネルの開閉が細胞内[Ca2+]を血清イオン濃度まで高める。そのプロセスではPTHによるチャンネルの開閉しているCa高値からスタートする。それからPTHrPが癌発生によって加わる。血清に[PTH]と[PTHrP]の濃度で両ホルモンが共存するとき、一つの受容体がPTHとPTHrPによって占められる確率はそれぞれτ[PTH]/(τ[PTH]+τ[PTHrP])とτ[PTHrP]/(τ[PTH]+τ[PTHrP])となる。PTHrPの滞在時間は、PTHの頻繁な刺激によって高値[Ca]=50に達するCaの堆積に要する時間よりも長いと考えて、次式を得る。
(τ[PTHrP])/(τ[PTH])=x/(1−x) (23)
滞在時間の比τ/τを知るために、同じサンプルの毛髪に沿って[K]を測定した。その結果も図13に示した。それは[Sr]と[Ca]の減衰形と全く異なっている。毛髪先端部では、癌は未発生であるが、Caチャンネルが頻繁に開閉する充分に高い[PTH]になっていて、毛髪K濃度も[K]=6の低い値が癌発生まで続く。その後、癌からのPTHrPにより[K]はさらに減少し、ノイズレベルへと急速に降下する。これは[Sr]と[Ca]の直線減衰形とは対照的である。
3.5項で述べたように、PTH(PTHrP)は腎臓の近接尿細管細胞のH/Na交換分子を阻害し、血清[H]を高める。その結果、細胞内のK/H交換によって細胞内[K]濃度が低下する。この腎臓のH排泄作用の劣化は尿細管細胞のPTH/PTHrP共通の受容体にPTHまたはPTHrPが結合して起こる。図13の[K]=6のレベルは、Ca不足で分泌されたPTHによって正常値の[K]=300から降下したものである。それに癌から分泌されるPTHrPが加わって[K]=6からさらに減少する。受容体上の1イベントが細胞内で1回のH/K交換を起こすとすると、[K]の減少分は血清[PTH](または[PTHrP])に比例する。図13に書き入れたように、[K]=300から[K]=6への減少はPTHによるものであり、[K]=6からさらに減少する分はPTHrPによるものである。すると、[PTHrP]/[PTH]=(6−[K])/(300−6)となり、式(23)を使って、[K]=6−(300−6)(τ/τ)x/(1−x)を得る。ここで、xは[Ca]の減衰直線から得られる。τ/τ=150として計算した[K]曲線は測定点とよくフィットした。癌の早期発見ができるのは、PTHとPTHrPの受容体への滞在時間に大きな差があるからである。
滞在時間τはアレニウスの式で与えられる反応速度の逆数である。すなわち、
1/τ= Aexp(−E/kT),
ここでkはボルツマン常数で、Tは温度である。PTHとPTHrP分子は共通の受容体と類似の構造で結びつくので、ほぼ等しい結合エネルギーEを持つ。それゆえ、滞在時間の大きな差は分子の長さに強く依存する振動項Aの差による。実際、PTHは[Ca]の変化に素早く対応するために滞在時間が短くなければならないので、PTHrPとの差は理屈に合っている。
式(23)を使って式(20)を書き直すと、
[Ca]=[Ca]+{(1/2)[Ca] −[Ca]}τ[PTH]/(τ[PTH]+τ[PTHrP]) (24)
対数座標の直線減衰に対しては、
τ[PTH]/(τ[PTH]+τ[PTHrP])=exp(−γt)
と書ける。ここでγは減衰直線の勾配であり、tは図13に示すように癌がPTHrPの分泌を始めた時点からの時間である。この式を次のように書き直す。
(τ[PTHrP])/(τ[PTH])=exp(−γt)−1 (25)
右辺のexp(−γt)−1は幾何級数の総和1+2+2+2+・・・+2n−1=2−1であり、exp(γt)=2で与えられる細胞周期tの癌成長を意味している。それゆえ、式(25)はt=0からtまでの間に分泌されたPTHrPの累計を与えている。nが大きいとき2−1=2なので血清[PTHrP]は癌細胞の数に比例していることを意味している。
癌発生の時刻がt=0でなければならない。4.2項に述べたように、開閉するCaチャンネルを通して、Caが細胞に流入して細胞内イオン濃度が血清のそれと等しくなる。もし血清[Ca]が高ければ、毛髪濃度は[Ca]=50の高値を超えるはずである。それゆえ、図13の減衰曲線はIg形成開始点を癌発生の時刻と考えて、点線で示すように延長する。癌からのPTHrPの増加は細胞のチャンネル開閉によるCaの堆積速度を弱め、Ca高値の終点では[Ca]=50で成長する毛髪にCaを排泄する速度とバランスする。癌の細胞分裂の各周期の始点はt=0、t=t、t=2t、t=3t、t=4t、・・・となる。毛根近くの[Ca]=11で、癌の細胞数が通常の検診で検出可能なサイズの約3000万個に達するとすると、それまでに癌は6回の細胞分裂をするので、その64分の1がt=0の最初の細胞数50万個(1mm以下のサイズ)となる。この初期サイズ(癌の成長核)は開いたイオンチャンネルを通してCaが流入した無秩序状態([Ca]=50)で急速に形成されると考えられる。
毛髪分析で癌の早期検出ができるのは、大きな比のτ/τに基づいている。結論として、乳癌患者の毛髪[Ca]、[Sr]、[K]は血清中の[PTH]と[PTHrP]に依存し、PTH受容体への滞在時間比τ/τ=150の導入によって矛盾なく説明できる。
癌は遺伝子の異常によることが知られているけれども、観察された乳癌はすべて毛髪Caの高値で発生している。しかし、LD型の多くは癌にならない。それゆえ、[Ca]高値の癌発生はP53のような癌抑制遺伝子の劣化・異常によると考えるのが自然である。すなわち、長期に続くCaの細胞への流入と癌抑制遺伝子の異常が合わさって癌が発生する。他の癌、肺癌、肝臓癌、前立腺癌、胃癌についても、これまで遭遇した毛髪試料では、すべて、[Ca]高値での癌発生であった。このような観察から細胞の開いたチャンネルからのCa流入が癌発生の必要条件であると結論できる。
6.5 ブロック図:PTH/PTHrPと血清・毛髪の関係
最後に、血清中のPTH(PTHrP)と血清と毛髪の元素濃度との関係を図14に要約して示した。図の左上の血液からスタートすると、血清[Ca]の増加で甲状腺からカルシトニンが分泌され、これがCaとPを骨に預けるように作用する。Ca不足で血清[Ca]が低下すると、副甲状腺ホルモンPTHが分泌されて、CaとPを骨から血清へ移動させる。PTHは血液に乗って全身に循環し、細胞のCaイオンチャンネルを開かせ、Caの流入で細胞を溢れさせ、毛髪Caは高値[Ca]=50を示す(正常値は[Ca]=10)。このCaの流入は有害で、肝細胞では過剰の金属を排泄する機能が劣化し、赤血球では塩素移動の機能が劣化する。癌は細胞にCaが溢れた状態において形成される。癌細胞は副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)を分泌し、それがPTH/PTHrP共通の受容体に入り、その滞在時間がPTHより遙かに長く、受容体上のPTHの数を減らす。PTHとPTHrPは同じ作用だが、受容体に結合した瞬間にだけCaチャンネルを通してCaイオンの細胞への流入が起こるので、受容体に滞在する時間が150倍長いPTHrPの増加はチャンネルが閉じた細胞数を増やし[Ca]と[Sr]を減衰させ、[Sr]/[Ca]<4となる。それゆえ、Caの流入による細胞機能の劣化が[PTHrP]の増加とともに改善する。PTHとPTHrPの両方とも腎臓の尿細管細胞の共通の受容体に結合して、Na−負イオン共同輸送を阻害して[S]=200の高値にし、Na/H交換分子を阻害して[K]を著しく低下させる。骨吸収はPTHと同様に、PTHrPによっても起こり、[P]を増加させ、[P]が最高値[P]≧10に達している。癌の早期ではPTHrPが希薄なので、滞在時間が長いことによる効果が、[Ca]の減衰プロセスで見たように、顕著に現れる。
7.大気汚染微粒子の飛来
2010年12月の毛髪分析実験で大気汚染微粒子によるとしか考えられない毛髪の元素濃度の異変を検出した。とくに、黄砂は中国奥地の草原の砂漠化で急増し、その成分は珪素Siが24−30%、カルシウムCaが7−12%、アルミニウムAlが7%、鉄Feが4−6%、カリウムKが2−3%、マグネシウムMgが3%で、他に、微量のマンガンMn、チタンTi、リンPなどを含む。また、Caと硫黄Sを多く含むという報告もある。
2009年頃までの毛髪の元素濃度と比較して特異な点を挙げると、(1)必須元素のCuが半減する(大気汚染微粒子にCuと化合する成分があって、その化合物が排泄されるらしい)。(2)吸い込んだ大気汚染微粒子に含まれるCaで血清[PTH]が降下し、細胞のCaチャンネルが閉じるので、一般に毛髪のCaは[Ca]≦10となる。図17は、その1例で、図3で見た高値[Ca]=50が現れない。毛髪Srが標準値を越えたものが多いのは、4.4に記したようにCaチャンネルを通過しにくいことと、Sr/Ca比は[Sr]/[Ca]=4に保たれる傾向が残っているからと考えられる。P,Cl,Br,K,Sの各元素も正常値に向かう。(3)Caチャンネルの開閉が続いたLD型では、過剰の金属を排泄する肝機能が劣化しているので、大気汚染微粒子含有のチタンで毛髪のTi濃度が通常の100〜1000倍になる。この超高Tiはチャンネル閉が続いてきたヒトには出ないので、大気汚染微粒子を吸い込んで[Ca]=50の高値が消えても、過去のCaチャンネルの開閉が毛髪Tiの観測で分かる。つまり、LD型は大気汚染微粒子に含まれるTiで修飾される。(2009年12月の実験では、殆どの被験者でCuの半減もなかった)
Caを含む大気汚染微粒子の吸引で、Caチャンネルが閉じて、EE型、DA型はもとより、DE型、LD型も、すべてCaは正常値以下[Ca]≦10となるのに対して、癌の場合には毛髪Caの高値の癌発生からその成長と共に低値に降下するまでの毛髪Ca値は、大気汚染微粒子や黄砂の影響を受けることなく、そのまま毛髪に現れる。その1例を図17で見ることができる。すなわち、被験者番号073の[Ca]値が突出している。それゆえ、黄砂により、非癌は[Ca]≦10で、癌は10<[Ca]≦50とに峻別される。これに対応して、非癌は[Cl]=[Br]になり、癌では[Cl]<[Br]になる。この様子を図17のサンプルのClとBr値を示した図18で見ることができる。被験者番号073だけ[Cl]が極めて低く、ノイズレベルであり、[Cl]<<[Br]=10である。
大気汚染微粒子に含まれるCaの吸い込みで、血清の[PTH]が降下すると、細胞の受容体はPTHrPで占拠されることになり、尿細管細胞の受容体にPTH分子が頻繁に着脱して起こるCaの再吸収ができなくなって、大気汚染微粒子の吸い込みで入ったCaが尿に出てしまい、Caチャンネルの開閉に影響が無く、癌患者の毛髪に現れた10<[Ca]≦50とSr/Ca比が観察され、また、[Cl]<<[Br]が現れる。
る。
この大気汚染微粒子の効果から分かるように、Ca剤の服用と毛髪分析を併用して、癌の有無の判定ができる。たとえば、毛髪Caが[Ca]=50の時は、LD型と癌発生との識別が分析値からは出来ないが、Ca剤を服用して[Ca]が正常値以下になれば非癌であり、10<[Ca]≦50にとどまれば癌と判定することができる。実際、肝臓癌の患者の毛髪濃度[Ca]=50はCaで900mg/日の服用を続けても正常値にならなかった。
8.結論
癌の全プロセスが一本の毛髪に沿って種々の元素の濃度異常として記憶されている。この記録を読み出すために毛髪の太さに左右されない精密分析法を開発した。細胞膜にイオンチャンネルとポンプを持っている元素にはチャンネルの開閉とポンプとに関連した高低の2値の毛髪濃度があることが分かった。毛髪元素量は毛髪を作る毛根部の細胞への元素の流入量と等しくならねばならない。この法則によって毛髪の[Ca]、[P]、[Sr]、[Cl]、[Br]、[K]、[S]の各元素濃度の高低2値を血清の恒常値の元素濃度から算出できる。癌患者の毛髪には毛根から先端まで記録が残っていて、癌はいつも長期に続くチャンネル開による毛髪[Ca]の高値において発生し、癌の成長とともに毛髪濃度はゆっくり低値(正常値)に向かって減少する。この毛髪[Ca]の減衰は血清中の[PTHrP]/[PTH]濃度比と細胞の共通の受容体上の滞在時間の比τ/τ(=150)の関数として数式で表せる。その式から血清中の[PTHrP]濃度は癌によるPTHrP分泌の開始からの累積値であること、つまり血清[PTHrP]は癌細胞の総数に比例する。このような現象論的アプローチは、大規模の疫学的研究がなくても、毛髪診断の信頼性を高めると考えられる。
無作為抽出した30代から70代の50人の女性被験者の毛髪分析をした結果、Ca代謝を4つのタイプに分類した。この内の一つ、LD型だけが慢性的なCa不足で毛髪[Ca]の高値が長期に続き、癌のリスクを持つ。このタイプから癌が発生すると[Sr]/[Ca]<4となり、癌発生がない場合は[Sr]/[Ca]=4である。毛髪分析は癌の検出だけでなく予防についても指針をあたえることができる。
開いたCaチャンネルを通してCaとSrの流入は全身の細胞の機能を劣化させる。次の二つはその実例である。
(1)肝細胞へのCaの流入は過剰の金属を胆汁として排泄する肝機能を劣化させ、すべての細胞に過剰の金属が流入し、堆積される。
(2)赤血球へのCaイオンの流入は塩素移動を劣化させ、全細胞内でCl不足のアルカローシスになる。
このような異常とCa(Sr)の細胞への流入の効果が合わさって、癌抑制遺伝子が不活性であれば癌が発生すると考えられる。すなわち、LD型と癌との差は癌に関係する遺伝子の発現にある。しかしながら、図10〜13の観察結果から、開いたチャンネルによるCa(Sr)の細胞への流入が癌形成の必要条件であると結論できる。それゆえ、毛髪分析は癌検出の究極の感度を持つと言えるであろう。この方法の欠点は、PTHrPはどの癌からも分泌され、癌の種類を同定できないことである。癌の予防はLD型にならない適切な食物摂取で実現できる。
毛髪分析は細胞イオンチャンネルの開閉についての新しい診断を可能にする。これまで、PTHrPの検出が難しくて見捨てられてきたが、毛髪分析によってPTHrPを腫瘍マーカーとして使えるようになる。毛髪分析は被験者の負担が少なく、癌の早期検出だけでなく予防もできて大きい経済効果をもたらすであろう。

Claims (2)

  1. 元素AがCa、Sr、P、Cl、Br、S、K、Fe、Cu及びZnから選ばれる元素で、
    [A]sが乾燥血清又は乾燥血漿の単位質量あたりの元素Aの濃度の標準値で、
    [A]が毛髪における、元素Aの毛髪の単位質量当たりの濃度であり、
    [A]HOが、元素Aのイオン又は元素Aを含む化合物イオンが細胞膜を通過する通路が存在するときに、その通路を元素Aのイオン又は元素Aを含む化合物イオンが通過する状態に対応する[A]の標準値で、
    [A]HCが、元素Aのイオン又は元素Aを含む化合物イオンが細胞膜を通過する通路が存在するときに、その通路が閉じている状態に対応する[A]の標準値、又は、前記通路が存在しない元素Aの[A]の標準値であるとき、
    各元素の[A]、[A]HC、[A]HOに対する下記表に記載の相対濃度値を用いて得られる[A]HO/[A]及び[A]HC/[A]の比によって[A]から求められる[A]HC及び[A]HOを、[A]と比較する、毛髪の分析法。
    Figure 0005990029
  2. 素AがCaとSrで、[A] が[Ca] と[Sr] で、[A] [Ca]HCと[Sr]HCで、[A] [Ca]HOと[Sr]HOである場合、[Ca]と[Sr]を測定して、
    [Ca]/[Ca]HC=[Sr]/[Sr]HC
    のとき、細胞膜のCaイオンの通路が閉じていると判定し、
    [Ca] HC <[Ca] <[Ca] HO の範囲で、式
    [Sr]/[Ca]=[Sr]HO/[Ca]HO
    が成立するとき、細胞膜のCaイオンの通路をCaイオンが通過し細胞に流入する状態がつづいていると判定し、
    [Ca] HC <[Ca] <[Ca] HO の範囲で、
    [Sr]/[Ca]<[Sr]HO/[Ca]HO
    のときには副甲状腺ホルモン関連ペプチドPTHrPが被験者の血液中に存在している可能性があると判定する、請求項1に記載の髪の分析法。
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