JP5989365B2 - コンタクトレンズ用眼科組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、亜鉛化合物を含有していながら、亜鉛化合物がコンタクトレンズに接触した場合に生じる変色が抑制されたコンタクトレンズ用眼科組成物に関する。また、本発明は、亜鉛化合物との接触により生じるコンタクトレンズの変色を抑制する方法、並びに亜鉛化合物を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物に該変色を抑制する作用を付与する方法に関する。また、本発明は、亜鉛化合物との接触により生じるコンタクトレンズの変色を抑制するための組成物に関する。更に、本発明は、該変色を抑制できる変色抑制物質をスクリーニングする方法に関する。
硫酸亜鉛や乳酸亜鉛に代表される亜鉛化合物は、抗炎症作用や収斂作用により生体に対して有益な効果をもたらす成分として知られている。そして、それらの有益な作用を発揮させるための薬効成分として、点眼薬や洗眼薬等の眼科組成物をはじめ、医薬品や医薬部外品などに広く用いられている(特許文献1〜4)。
ところで、一般に、コンタクトレンズに対して用いられる眼科組成物は、安全性等の影響を十分に考慮して製剤設計することが肝要である。中でもソフトコンタクトレンズは、含水率が高く親水性の素材で作られていることから、薬効成分が吸着し易いなどの問題を生じる場合が多いことが知られている。そのため、ソフトコンタクトレンズに対して用いられる眼科組成物の製剤設計は、特に慎重に検討する必要がある。
これまで、硫酸亜鉛や乳酸亜鉛を配合し、ハードコンタクトレンズ装用時(装用中)に用いることができる点眼薬が市販されている。しかしながら、上述のような製剤設計の困難性から、ソフトコンタクトレンズに対して用いることができる、亜鉛化合物を含有する眼科組成物はこれまで市販されていない。また、亜鉛化合物とコンタクトレンズとを長時間に亘り接触させた場合(例えば、亜鉛化合物を含有する溶液にコンタクトレンズを長時間浸漬した場合等)に該レンズに及ぼされる影響については、これまで全く知られていない。ましてや、亜鉛化合物と他の成分とを組み合せて用いた場合に、コンタクトレンズの色調に対して如何なる影響が及ぼされるのかについては、全く推認すらできないのが現状である。
特開2003−146892号公報 特開2004−203836号公報 特開2004−339104号公報 特開2006−131627号公報
本発明者らは、亜鉛化合物とコンタクトレンズとを接触させた場合の影響について種々の検討を行っていたところ、全く予想していなかったことに、亜鉛化合物をコンタクトレンズに長時間に亘り接触させると、該コンタクトレンズが著しく変色するという全く新しい知見を得た。このようなレンズの著しい変色は、レンズ使用者の不安や不快感を駆り立てる原因となるばかりでなく、レンズ装用者の視界に変化をきたすおそれがあり、ひいては変色したレンズを装用し続けることにより、視力低下などの重篤な問題を引き起こす危険性もある。また、変色したレンズを装用することにより、装用者の眼の色調(特に白目の部分の色調)に変化が生じ、装用者の印象に影響を与える恐れも懸念される。
そこで、亜鉛化合物をコンタクトレンズに接触させた場合に生じる該レンズの著しい変色を効果的に抑制できるコンタクトレンズ用眼科組成物の開発が求められる。とりわけソフトコンタクトレンズにおいて、その色調変化が顕著であることから、かかる色調変化を抑制できるソフトコンタクトレンズ用眼科組成物の開発が望まれる。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、 (A)亜鉛化合物を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物中に、(B)エチレンジアミン酢酸、アミノ酢酸、ヒドロキシ酢酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに(C)モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させると、亜鉛化合物とコンタクトレンズとを接触させた場合に生じる該レンズの変色を著しく抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様のコンタクトレンズ用眼科組成物を提供する。
項1-1. (A)亜鉛化合物、(B)エチレンジアミン酢酸、アミノ酢酸、ヒドロキシ酢酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに (C)モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、コンタクトレンズ用眼科組成物。
項1-2. (A)成分として、塩化亜鉛を含む、項1-1に記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
項1-3. (A)成分を総含有量で0.000001〜0.05w/v%含有する、請求項1-1又は1-2に記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
項1-4. (B)成分として、エチレンジアミン酢酸、アミノ酢酸、及びヒドロキシ酢酸からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1-1〜1-3のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
項1-5. (B)成分を総含有量で0.001〜1.0w/v%含有する、項1-1〜1-4のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
項1-6. (C)成分として、モノエタノールアミン、及び2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1-1〜1-5のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
項1-7. (C)成分を総含有量で0.01〜5.0w/v%含有する、項1-1〜1-6のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
項1-8. 更に緩衝剤を含有する、項1-1〜1-7のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
項1-9. 緩衝剤としてホウ酸緩衝剤を含む、項1-8に記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
項1-10. 水性組成物である、項1-1〜1-9のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
項1-11. コンタクトレンズを浸漬して使用する製剤形態である、項1-1〜1-10のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
項1-12. コンタクトレンズ用眼科組成物が、コンタクトレンズ消毒・洗浄・保存液である、項1-1〜1-11のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
項1-13. コンタクトレンズがソフトコンタクトレンズである、項1-1〜1-12のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
項1-14. ソフトコンタクトレンズが、含水率が50%以上であり、且つ原材料ポリマーの構成モノマーのうち陰イオンを有するモノマーが1mol%以上であるソフトコンタクトレンズである、項1-1〜1-13のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
また、本発明は、下記に掲げる態様の、亜鉛化合物により生じるコンタクトレンズの変色抑制方法、亜鉛化合物を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物にコンタクトレンズの変色を抑制する作用を付与する方法、及び亜鉛化合物により生じるコンタクトレンズの変色を抑制するための組成物を提供する。
項2.(A)亜鉛化合物、(B)エチレンジアミン酢酸、アミノ酢酸、ヒドロキシ酢酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに(C)モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物を、コンタクトレンズに接触させることを特徴とする、該(A)成分により生じるコンタクトレンズの変色を抑制する方法。
項3.(A)亜鉛化合物を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物中に、(B)エチレンジアミン酢酸、アミノ酢酸、ヒドロキシ酢酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに(C)モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、該コンタクトレンズ用眼科組成物に該(A)成分により生じるコンタクトレンズの変色を抑制する作用を付与する方法。
項4.(B)エチレンジアミン酢酸、アミノ酢酸、ヒドロキシ酢酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに(C)モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、(A)亜鉛化合物により生じるコンタクトレンズの変色を抑制するための組成物。
更に、本発明は、下記に掲げる態様の、亜鉛化合物との接触により生じるコンタクトレンズの変色を抑制できる物質のスクリーニング方法を提供する。
項5.亜鉛化合物を接触させることにより生じるコンタクトレンズの変色を抑制できる変色抑制物質をスクリーニングする方法であって、
(a)亜鉛化合物と被験物質とを含む被験溶液を調製する工程、
(b)上記被験溶液とコンタクトレンズとを接触させ、コンタクトレンズの変色の程度を測定する工程、及び
(c)コンタクトレンズの変色の抑制が認められる被験溶液を選び、該被験溶液に含まれる被験物質を上記変色抑制物質として選択する工程
を含むスクリーニング方法。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物によれば、亜鉛化合物を含んでいながら、亜鉛化合物とコンタクトレンズ、特にソフトコンタクトレンズとを接触させた場合に生じる該レンズの変色を効果的に抑制できる。従って、本発明の組成物は、亜鉛化合物を含む眼科組成物でありながら、例えば、コンタクトレンズを浸漬する等の方法によって、コンタクトレンズと比較的長時間に亘り接触させても、レンズを変色させることがなく、該レンズが本来有する視力矯正力等に悪影響を及ぼさず、また外観上の不都合や装用時の不快感等を与えることもない。
試験例1における、ソフトコンタクトレンズの色調変化に及ぼす試験液(実施例1〜6及び比較例1〜6)の影響を評価した結果を示す図である。 試験例2における、ソフトコンタクトレンズの色調変化に及ぼす試験液(比較例7〜12)の影響を評価した結果を示す図である。
1.コンタクトレンズ用眼科組成物
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、亜鉛化合物(以下、(A)成分と表記することもある)を含有する。亜鉛化合物とは、少なくとも1つの亜鉛原子を含む化合物であり、本発明に使用される亜鉛化合物は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されることを限度として、亜鉛、無機亜鉛塩、有機亜鉛塩、これらの水和物等のいずれの形態の亜鉛化合物であっても使用することができる。
本発明に使用される亜鉛化合物として、具体的には、亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、硝酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、2−オキソグルタル酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、アルミン酸亜鉛、弗化亜鉛、沃化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、クロム酸亜鉛、安息香酸亜鉛、酢酸亜鉛、パラアミノ安息香酸亜鉛、パラジメチルアミノ安息香酸亜鉛、パラフェノールスルホン酸亜鉛、パラメトキシ桂皮酸亜鉛、2−メルカプトピリジン−N−オキシド亜鉛、ピクリン酸亜鉛、アスパラギン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、フェノールスルホン酸亜鉛、セバシン酸亜鉛、トリポリリン酸亜鉛ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、カプリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ポリホスホン酸亜鉛、コンドロイチン硫酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、ジンクピリチオン、ヒノキチオール亜鉛、亜鉛ジピコリネート、亜鉛グリセロレート錯体、ビズヒスチジン亜鉛錯体、亜鉛−3,4−ジヒドロキシ安息香酸錯体、及びこれらの水和物等が挙げられる。これらの中でも、コンタクトレンズの変色を一層有効に抑制させるとの観点から、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛が好ましく、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛が更に好ましい。亜鉛化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物における、上記(A)成分含有量は、該(A)成分の種類、他の配合成分の種類等に応じて適宜設定されるが、該コンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、該(A)成分の総含有量は、例えば、0.000001〜0.05w/v%、好ましくは0.00005〜0.025w/v%であり、更に好ましくは0.0001〜0.015w/v%である。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、更にエチレンジアミン酢酸、アミノ酢酸、ヒドロキシ酢酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、(B)成分と表記することもある)を含有する。
エチレンジアミン酢酸は、エチレンジアミンの2つのアミノ基に対して1〜4個のカルボキシメチル基が結合した公知の化合物である。本発明に使用されるエチレンジアミン酢酸は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されない。本発明に使用されるエチレンジアミン酢酸は、具体的には、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸、EDTA)等が挙げられるが、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色を一層有効に抑制させるとの観点から、エチレンジアミン四酢酸が好ましい。エチレンジアミン酢酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
エチレンジアミン酢酸の塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。本発明に使用されるエチレンジアミン酢酸の塩として、具体的には、有機酸塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等)等]、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩等]等が挙げられるが、無機塩基との塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩又はカリウム塩が更に好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。エチレンジアミン酢酸の塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
なお、エチレンジアミン酢酸及びその塩は、水和物の形態であってもよい。
本発明に使用されるエチレンジアミン酢酸又はその塩は、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色を一層有効に抑制させるとの観点から、エチレンジアミン四酢酸又はその塩が好ましくは、エチレンジアミン四酢酸又はそのナトリウム塩がより好ましく、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム又はエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物が更に好ましい。
アミノ酢酸は、グリシンとも称される公知の化合物である。
本発明に使用されるアミノ酢酸の塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、乳酸塩、トシル酸塩、グルコン酸塩、アスパラギン酸塩、シュウ酸塩、メチル硫酸塩、フェノールフタリン酸塩、フェンジゾ酸塩、ヒベンズ酸塩、サリチル酸塩、ジフェニルジスルホン酸塩、タンニン酸塩、テオクル酸塩等の有機酸塩;塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ピリジン塩等の有機塩基との塩;アンモニウム塩、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩等の無機塩基との塩等が挙げられる。アミノ酢酸の塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
なお、アミノ酢酸及びはその塩は、水和物の形態であってもよい。
本発明に使用されるアミノ酢酸又はその塩は、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色を一層有効に抑制させるとの観点から、アミノ酢酸が好ましい。
ヒドロキシ酢酸は、グリコール酸とも称される公知の化合物である。
本発明に使用されるヒドロキシ酢酸の塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、乳酸塩、トシル酸塩、グルコン酸塩、アスパラギン酸塩、シュウ酸塩、メチル硫酸塩、フェノールフタリン酸塩、フェンジゾ酸塩、ヒベンズ酸塩、サリチル酸塩、ジフェニルジスルホン酸塩、タンニン酸塩、テオクル酸塩等の有機酸塩;塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ピリジン塩等の有機塩基との塩;アンモニウム塩、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩等の無機塩基との塩等が挙げられる。ヒドロキシ酢酸の塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
なお、ヒドロキシ酢酸及びはその塩は、水和物の形態であってもよい。
本発明に使用されるヒドロキシ酢酸及びその塩は、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色を一層有効に抑制させるとの観点から、ヒドロキシ酢酸が好ましい。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物において、(B)成分は、エチレンジアミン酢酸、アミノ酢酸、ヒドロキシ酢酸、及びそれらの塩は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。本発明で使用される(B)成分の好適な一例として、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、アミノ酢酸、及びヒドロキシ酢酸が挙げられる。
本発明で使用される(B)成分は、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色を一層有効に抑制させるとの観点から、エチレンジアミン酢酸、アミノ酢酸、又はこれらの塩が好ましく、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、又はアミノ酢酸が更に好ましい。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物における、(B)成分の含有量は、(B)成分の種類、他の配合成分の種類等に応じて適宜設定されるが、コンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、 (B)成分の総含有量は、例えば、0.001〜1.0w/v%、好ましくは0.005〜0.5w/v%である。
(B)成分がエチレンジアミン酢酸及び/又はその塩の場合には、これらの総含有量は、コンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、通常0.0001〜0.5w/v%、好ましくは0.001〜0.1w/v%、更に好ましくは0.005〜0.05w/v%である。
(B)成分がアミノ酢酸及び/又はその塩の場合には、これらの総含有量は、コンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、通常0.0001〜5.0w/v%、好ましくは0.001〜1.0w/v%、更に好ましくは0.01〜0.5w/v%である。
(B)成分がヒドロキシ酢酸及び/又はその塩の場合には、これらの総含有量は、コンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、通常0.0001〜5.0w/v%、好ましくは0.001〜1.0w/v%、更に好ましくは0.01〜0.5w/v%である。
上記(B)成分の含有量は、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色を一層有効に抑制させるという観点から好適である。
また、本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物における、(A)成分に対する(B)成分の含有割合については、特に制限されるものではないが、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色を一層有効に抑制させるという観点から、(A)成分の総含有量100重量部に対して、 (B)成分の総含有量は、例えば、4〜2000000重量部、好ましくは34〜500000重量部である。
(B)成分がエチレンジアミン酢酸及び/又はその塩の場合には、これらの総含有割合は、(A)成分の総含有量100重量部に対して、通常0.2〜50000000重量部、好ましくは4〜200000重量部、更に好ましくは34〜50000)重量部である。
(B)成分がアミノ酢酸及び/又はその塩の場合には、これらの総含有割合は、(A)成分の総含有量100重量部に対して、通常0.2〜500000000重量部、好ましくは4〜2000000重量部、更に好ましくは67〜500000重量部である。
(B)成分がヒドロキシ酢酸及び/又はその塩の場合には、これらの総含有割合は、(A)成分の総含有量100重量部に対して、通常0.2〜500000000重量部、好ましくは4〜2000000重量部、更に好ましくは67〜500000重量部である。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、上記(A)成分及び(B)成分に加えて、モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、(C)成分と表記することもある)を含有する。本発明においては、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を一体として含むことにより、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色を抑制することが可能になる。
モノエタノールアミンは、2−アミノエタノールとも称される公知の化合物である。
本発明に使用されるモノエタノールアミンの塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩等が挙げられる。モノエタノールアミンの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本発明に使用されるモノエタノールアミン及びその塩は、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色を一層有効に抑制させるとの観点から、モノエタノールアミンが好ましい。
2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールは、1,3−プロパンジオールの2位の炭素原子にアミノ基とメチル基が結合している公知の化合物である。
本発明に使用される2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールの塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩等が挙げられる。2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本発明に使用される2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール及びその塩は、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色を一層有効に抑制させるとの観点から、モノエタノールアミンが好ましい。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物において、(C)成分は、モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらの塩は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。本発明で使用される(C)成分の好適な一例として、モノエタノールアミン及び2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールが挙げられる。
本発明で使用される(C)成分は、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色を一層有効に抑制させるとの観点から、モノエタノールアミン、又はその塩が好ましく、モノエタノールアミンが更に好ましい。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物における、(C)成分の含有量は、(C)成分の種類、他の配合成分の種類等に応じて適宜設定されるが、コンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、(C)成分の総含有量は、例えば、0.01〜5.0w/v%、好ましくは0.1〜1.0w/v%である。
(C)成分がモノエタノールアミン及び/又はその塩の場合には、これらの総含有量は、通常0.001〜5.0w/v%、好ましくは0.01〜1.0w/v%、更に好ましくは0.1〜0.5w/v%である。
(C)成分が2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール及び/又はその塩の場合には、これらの総含有量は、通常0.01〜5.0w/v%、好ましくは0.1〜2.0w/v%、更に好ましくは0.5〜1.0w/v%である。
上記(C)成分の含有量は、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色を一層有効に抑制させるという観点から好適である。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物における、(A)成分に対する(C)成分の含有割合については、特に制限されるものではないが、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色を一層有効に抑制させるという観点から、(A)成分の総含有量100重量部に対して、 (C)成分の総含有量は例えば、40〜10000000重量部、好ましくは667〜1000000重量部である。
(C)成分がモノエタノールアミン及び/又はその塩の場合には、これらの総含有割合は、(A)成分の総含有量100重量部に対して、通常2〜500000000重量部、好ましくは40〜2000000重量部、更に好ましくは667〜500000重量部である。
(C)成分が2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール及び/又はその塩の場合には、これらの総含有割合は、(A)成分の総含有量100重量部に対して、通常20〜500000000重量部、好ましくは400〜4000000重量部、更に好ましくは3334〜1000000重量部である。
また、本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物における、(B)成分に対する(C)成分の含有割合については、特に制限されるものではないが、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色を一層有効に抑制させるという観点から、(B)成分の総含有量100重量部に対して、 (C)成分の総含有量は、例えば、2〜20000重量部、好ましくは20〜10000重量部である。
(C)成分がモノエタノールアミン及び/又はその塩の場合には、これらの総含有割合は、(B)成分の総含有量100重量部に対して、通常0.2〜50000重量部、好ましくは2〜10000重量部、更に好ましくは20〜5000重量部である。
(C)成分が2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール及び/又はその塩の場合には、これらの総含有割合は、(B)成分の総含有量100重量部に対して、通常2〜50000重量部、好ましくは20〜20000重量部、更に好ましくは100〜10000重量部である。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、更に緩衝剤を含有していてもよい。本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物中に含有可能な緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物中に含有可能な緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩等が挙げられる。
好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、及びクエン酸緩衝剤であり、より好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、及びリン酸緩衝剤であり、特に好ましい緩衝剤はホウ酸緩衝剤である。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸、又はホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸、又はリン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸、又は炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等の炭酸塩が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸、又はクエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤として、ホウ酸塩又はリン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等);クエン酸緩衝剤として、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等);トリス緩衝剤として、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン又はその塩(塩酸塩、酢酸塩、スルホン酸塩等);アスパラギン酸又はその塩(アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム等)等が挙げられる。これらの緩衝剤の中でも、ホウ酸緩衝剤は、より確実に本発明の効果を奏させることが期待されるため、本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物に好適に使用される。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物において、上記緩衝剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物が緩衝剤を含有する場合、コンタクトレンズ用眼科組成物における該緩衝剤の含有量は、使用する緩衝剤の種類、他の配合成分の種類や量、該眼科組成物の製剤形態等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば、該コンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、該緩衝剤の総含有量は、例えば、0.01〜10w/v%、好ましくは0.1〜5w/v%、更に好ましくは0.5〜2w/v%である。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、更に界面活性剤を含有していてもよい。本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物中に含有可能な界面活性剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されることを限度として特に制限されず、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物に含有可能な非イオン性界面活性剤としては、具体的には、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロクサマー403、ポロクサマー237、ポロクサマー124等のPOE・POPブロックコポリマー類; POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油類;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類等が挙げられる。なお、上記で例示する化合物において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレン、及び括弧内の数字は付加モル数を示す。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物に配合可能な両性界面活性剤としては、具体的には、アルキルジアミノエチルグリシン又はその塩(例えば、塩酸塩等)等が挙げられる。また、本発明の眼科組成物に配合可能な陽イオン性界面活性剤としては、具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。更に、本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物に配合可能な陰イオン性界面活性剤としては、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、脂肪族α−スルホメチルエステル、α−オレフィンスルホン酸等が挙げられる。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物において、上記界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物に使用する界面活性剤として、非イオン性界面活性剤が好ましく;POEソルビタン脂肪酸エステル類、POE硬化ヒマシ油類、又はPOE・POPブロックコポリマー類がより好ましく;ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポロクサマー407が更に好ましい。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物が界面活性剤を含有する場合、コンタクトレンズ用眼科組成物における該界面活性剤の含有量については、該界面活性剤の種類、他の配合成分の種類や配合割合、該眼科組成物の製剤形態等に応じて適宜設定できる。界面活性剤の含有量は、コンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、該界面活性剤が総含有量で、例えば、0.001〜1.0w/v%、好ましくは0.005〜0.7w/v%、更に好ましくは0.01〜0.5w/v%である。
また、本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、更に等張化剤を含有していてもよい。本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物に含有可能な等張化剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物中に含有可能な等張化剤の具体例として、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール等が挙げられる。本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物に使用する等張化剤として、グリセリン、プロピレングリコール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、又は塩化マグネシウムが好ましく、塩化ナトリウム又はグリセリンが更に好ましく、塩化ナトリウムが特に好ましい。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物において、上記等張化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物が等張化剤を含有する場合、該等張化剤の含有量については、使用する等張化剤の種類等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、コンタクトレンズ用眼科組成物の総含有量を基準として、該等張化剤が総含有量で、例えば、0.01〜10w/v%、好ましくは0.05〜5w/v%、更に好ましくは0.1〜3w/v%である。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物のpHとして、例えば、4.0〜9.5、好ましくは5.0〜9.0、更に好ましくは6.2〜8.5、特に好ましくは6.5〜8である。
また、本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物の浸透圧比は、例えば、0.3〜5.0、好ましくは0.4〜3.0、更に好ましくは0.5〜1.5である。浸透圧の調整は無機塩、多価アルコール、糖アルコール、糖類等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十六改正日本薬局方に基づき286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に、種々の薬理活性成分や生理活性成分を組み合わせて適当量含有してもよい。かかる成分は特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造(輸入)承認基準2000年版(薬事審査研究会監修)に記載された眼科用薬における有効成分が例示できる。具体的には、眼科用薬において用いられる成分としては、次のような成分が挙げられる。
抗ヒスタミン剤:例えば、イプロヘプチン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸ケトチフェン、ペミロラストカリウム等。
充血除去剤:例えば、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硫酸ナファゾリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェドリン等。
殺菌剤:例えば、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン等。
ビタミン類:例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、酢酸トコフェロール等。
アミノ酸類:例えば、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム等。
消炎剤:例えば、グリチルリチン酸二カリウム、プラノプロフェン、アラントイン、アズレン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グアイアズレン、ε−アミノカプロン酸、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、塩化リゾチーム、甘草等。
その他:例えば、クロモグリク酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム等。
また、本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や製剤形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択し、1種又はそれ以上を併用して適当量含有させてもよい。それらの添加物として、例えば、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性担体。
増粘剤:例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸、ポリビニルアルコール(完全、又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、グリセリン、ポリエチレングリコール、マクロゴール等。
糖類:例えば、シクロデキストリン等。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、グローキル(ローディア社製 商品名)、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩等。
pH調節剤:例えば、塩酸、ホウ酸、イプシロン−アミノカプロン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、リン酸、ポリリン酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム等。
安定化剤:例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン等。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、上記(A)〜(C)成分、及び必要に応じて他の配合成分を所望の配合割合となるように添加することにより調製される。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物の剤型については、眼科分野で使用可能である限り特に制限されないが、例えば、液状、軟膏状等が挙げられる。これらの中でも、液状が好ましい。また液状の中でも水性液状が好ましい。本発明の眼科組成物を水性液状にする場合、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される水を水性担体として使用すればよく、このような水として、具体的には、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等が例示される。これらの定義は第十六改正日本薬局方に基づく。ここで、水性液状とは、水を含有する液状の形態を意味する。また、水性組成物とは、通常は、コンタクトレンズ用眼科組成物中に水を1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは20重量%以上、更に好ましくは50重量%以上を含有する組成物を意味する。水性組成物に使用する水は、上記と同様、具体的には、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等が例示される
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、眼科分野で用いられるものであってコンタクトレンズに接触するように使用されるものであれば、その製剤形態については制限されない。例えば、コンタクトレンズ用点眼剤(コンタクトレンズを装着したまま使用可能な点眼剤)、コンタクトレンズ用洗眼剤(コンタクトレンズを装着したまま使用可能な洗眼剤)、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用液剤(コンタクトレンズ消毒液、コンタクトレンズ保存液、コンタクトレンズ洗浄液、及びコンタクトレンズ洗浄保存液等)等を挙げることができる。
これらの中でも、コンタクトレンズケア用剤、特にコンタクトレンズ消毒・洗浄・保存液(マルチパーパスソリューション)は、コンタクトレンズを浸漬することによって使用するため、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色抑制が強く求められる製剤形態である。そのため、本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物の好適な製剤形態として、コンタクトレンズケア用剤、特にコンタクトレンズ消毒・洗浄・保存液が挙げられる。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物において、適用対象となるコンタクトレンズの種類については特に制限されず、現在市販されている、或いは将来市販される全てのコンタクトレンズ〔ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、及び酸素透過性ハードコンタクトレンズのいずれをも包含する。また、ソフトコンタクトレンズは、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズと非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(即ち、シリコーンハイドロゲルレンズでは無いソフトコンタクトレンズ)の双方を包含する〕を適用対象にできる。亜鉛化合物によって引き起こされるコンタクトレンズの変色の程度は、特にソフトコンタクトレンズにおいて顕著であることが確認されているが、本発明によれば、このような酷い変色であっても効果的に抑制することができる。かかる観点に鑑みれば、本発明の適用対象となる好適なコンタクトレンズとして、ソフトコンタクトレンズが挙げられ、より好ましくは、含水率が50%以上であり、且つ原材料ポリマーの構成モノマーのうち陰イオンを有するモノマーが1mol%以上であるソフトコンタクトレンズが挙げられる。この含水率が50%以上であり、且つ原材料ポリマーの構成モノマーのうち陰イオンを有するモノマーが1mol%以上であるソフトコンタクトレンズは、平成11年3月31日付医薬審第645号厚生労働省医薬安全局審査管理課長通知「ソフトコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズ用消毒剤の製造(輸入)承認申請に際し添付すべき資料の取り扱い等について」において規定された「ソフトコンタクトレンズの分類方法について」においてグループIVとして分類されるソフトコンタクトレンズである。尚、本分類はFDA(米国食品医薬品局)によるソフトコンタクトレンズ分類方法に従うものである。
更に、適用対象となるコンタクトレンズの好適な例として、上記グループIVに分類されるソフトコンタクトレンズの中でも、メタクリル酸モノマーを含有する素材により製造されたソフトコンタクトレンズを挙げることができる。メタクリル酸モノマーを含有する素材により製造されたソフトコンタクトレンズは、亜鉛化合物によって変色が生じる傾向が強いが、本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物によれば、該ソフトコンタクトレンズに対しても変色を有効に抑制することができる。メタクリル酸モノマーを含有する素材としては、USAN(United States Adopted Names)に基づく素材の名称として、例えば、Etafilcon A、Ocufilcon A、Ocufilcon B、Ocufilcon C、Ocufilcon D、Ocufilcon E、Methafilcon A、Methafilcon B、Focofilcon A、Perfilcon A、Vifilcon A、Vifilcon B等を挙げることができる。本発明の適用対象となるソフトコンタクトレンズとして、最も好ましくは、Etafilcon Aを素材とするソフトコンタクトレンズが挙げられる。
また、コンタクトレンズの含水率とは、コンタクトレンズ中の水の割合を示し、具体的には以下の計算式により求められる。
含水率(%)=(含水した水の重量/含水状態のコンタクトレンズの重量)×100
かかる含水率は、ISO18369-4:2006の記載に従って重量測定方法により測定され得る。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、任意の容器に収容して提供することができる。本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物を収容する容器については特に制限されず、当該分野で一般的な容器に使用することができる素材を用いたものであればよく、例えば、ガラス素材及びプラスチック素材(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂)など、目的、用途に応じて適宜選択して用いることができる。また、本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。コンタクトレンズ用眼科組成物の溶液量の確認及び、製造工程での異物検査等が容易であることから、特に透明容器が好ましい。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器及び有色透明容器の双方が含まれる。
2.亜鉛化合物により生じるコンタクトレンズの変色抑制方法、亜鉛化合物を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物にコンタクトレンズの変色を抑制する作用を付与する方法、及び亜鉛化合物により生じるコンタクトレンズの変色を抑制するための組成物
前述するように、上記(A)成分との接触によって生じるコンタクトレンズの変色を、上記(B)成分及び(C)成分を組み合わせて使用することによって抑制することができる。
従って、本発明は、更に別の観点から、(A)亜鉛化合物、(B)エチレンジアミン酢酸、アミノ酢酸、ヒドロキシ酢酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに(C)モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物を、コンタクトレンズに接触させることを特徴とする、該(A)成分により生じるコンタクトレンズの変色(色調変化)を抑制する方法を提供する。
また、本発明は、(A)亜鉛化合物を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物中に、(B)エチレンジアミン酢酸、アミノ酢酸、ヒドロキシ酢酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに(C)モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、コンタクトレンズ用眼科組成物に該(A)成分により生じるコンタクトレンズの変色(色調変化)を抑制する作用を付与する方法を提供する。
更に、(B)エチレンジアミン酢酸、アミノ酢酸、ヒドロキシ酢酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに(C)モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、(A)亜鉛化合物により生じるコンタクトレンズの変色を抑制するための組成物を提供する。
これらの方法及び組成物において、コンタクトレンズ用眼科組成物に(A)成分、(B)成分、及び(C)成分が共存すればよく、それらの添加順序は特に限定されない。
これらの方法及び組成物において、使用する(A)〜(C)成分の種類や含有量、含有割合、配合割合、その他に配合される成分の種類や配合割合、コンタクトレンズ用眼科組成物の製剤形態、適用対象となるコンタクトレンズの種類等については、前記「1.コンタクトレンズ用眼科組成物」と同様である。
3.亜鉛化合物との接触により生じるコンタクトレンズの変色を抑制できる物質のスクリーニング方法
また、前述するように、本発明者らによって、コンタクトレンズが上記(A)成分の接触によって変色するという新たな知見が得られている。そこで、更に、本発明は、亜鉛化合物を接触させることにより生じるコンタクトレンズの変色を抑制できる変色抑制物質をスクリーニングする方法をも提供する。具体的には、本スクリーニング方法は、下記(a)〜(c)工程を包含する方法である:
(a)亜鉛化合物と被験物質とを含む被験溶液を調製する工程、
(b)上記被験溶液とコンタクトレンズとを接触させ、コンタクトレンズの変色の程度を測定する工程、及び
(c)コンタクトレンズの変色の抑制が認められる被験溶液を選び、該被験溶液に含まれる被験物質を上記変色抑制物質として選択する工程
を含むスクリーニング方法。
本スクリーニング方法において、被験物質とは、スクリーニングに供される上記変色抑制物質の候補物質である。また、候補物質は、コンタクトレンズ用眼科組成物に配合できるように、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであることが望ましい。被験物質は、1種単独の化合物であってもよく、また2種以上の化合物の組合せであってもよい。
上記(a)工程において、被験溶液は、水や緩衝液等の水性担体に、亜鉛化合物を、例えば0.0001〜0.015w/v%を添加し、更に被験物質を適当量添加することにより調製される。ここで、被験物質は段階的に希釈しておき、複数の濃度の被験物質を含む被験溶液を調製しておくことが望ましい。
また、上記(b)工程において、上記被験溶液とコンタクトレンズとを接触させるには、特に限定されるものではないが、上記被験溶液中に、1〜40℃で12〜24時間程度、コンタクトレンズを浸漬させればよい。また、上記(b)工程においてコンタクトレンズの変色の程度の測定は、例えば、目視にてコンタクトレンズの変色の程度を定性的に測定してもよく、また分光測色計や色彩色差計を用いて変色の程度を定量的に測定してもよい。
上記(c)工程において、コンタクトレンズの変色の抑制が認められる被験溶液を選択するには、スクリーニングに供した被験溶液の内、上記(c)工程においてコンタクトレンズが変色されていないもの、或いはコンタクトレンズが殆ど変色されていないものを選択すればよい。また、本(c)工程において、コンタクトレンズの変色の抑制が認められる被験溶液を正確に選びだすために、被験物質を含まない以外は上記被験溶液と同組成の比較溶液と、コンタクトレンズとを上記(b)工程と同条件で接触させた場合のコンタクトレンズの変色の程度と比較してもよい。即ち、上記比較溶液よりも被験溶液の方が変色の程度が低い場合、被験溶液はコンタクトレンズの変色を抑制しているとより正確に判定できる。
斯くして選ばれた被験溶液に含まれる被験物質が、亜鉛化合物を接触させることにより生じるコンタクトレンズの変色を抑制できる物質(変色抑制物質)として選択される。
本スクリーニング方法により得られる変色抑制物質は、亜鉛化合物を接触させた場合に生じるコンタクトレンズの変色を抑制するために、亜鉛化合物を含むコンタクトレンズ用眼科組成物に配合することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
試験例1:コンタクトレンズの色調変化の評価(1)
下記表1に従い、比較例1〜6及び実施例1〜6の各試験液を調製した。
各試験液3mLを12ウェルマルチウェルプレートに入れ、その中にソフトコンタクトレンズ(商品名:2ウィークアキュビュー(ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)、グループIV、USAN:EtafilconA、主要構成モノマー:2-HEMA〔ヒドロキシエチルメタクリレート〕およびMAA〔メタクリル酸〕)を一枚ずつ浸漬した。室温で24時間に亘り静置した後に、レンズを引上げ、表面の水分を十分に拭い去り、白色台紙に透明テープでできるだけ平面になるように貼り付けた。また比較対照として、如何なる処理も行わなかった新品の2ウィークアキュビュー(未処理レンズ)も同様に白色台紙に貼り付けた。そして、白色台紙に貼り付けた各レンズの中心部の色を、分光測色計(CM3500d、株式会社ミノルタ製)を用いて測定した。測定後、試験液処理レンズと新品の未処理レンズとの色差(ΔE*ab)を算出した。
Figure 0005989365
この結果を図1に示す。図1より明らかなように、塩化亜鉛を含有する比較例1の試験液で処理したソフトコンタクトレンズは、著しく高い色差を示し、その変色は目視でも明らかに分かるレベルであった。塩化亜鉛と共に、AMPD又はMEAを含有する試験液で処理した場合にも、ソフトコンタクトレンズの塩化亜鉛による変色の抑制効果は殆ど認められず、目視でもソフトコンタクトレンズの変色が認識できるレベルであった(比較例2−3)。その上、塩化亜鉛と共に、ヒドロキシ酢酸を含有する試験液で処理した場合には、ソフトコンタクトレンズの色差はより大きくなり、色調の悪化が認められた(比較例4)。
一方、全く予想外なことに、塩化亜鉛と共に、単独で添加した場合に色調の悪化が認められたヒドロキシ酢酸と、それぞれ単独では殆ど塩化亜鉛による変色に対する抑制作用を有さないAMPD又はMEAとを、組み合せて用いることにより、目視でも明らかに確認できる程度に塩化亜鉛によるレンズ変色を抑制する効果が発揮されることが明らかとなった(実施例1〜2)。更に、塩化亜鉛と共に、EDTA又はアミノ酢酸と、AMPD又はMEAとを、組み合せて用いた場合にも、相乗的に著しく高いレンズ変色抑制効果が認められ(実施例3〜6)、その抑制効果は目視では変色が全く気にならないほどのレベルであった。
試験例2:コンタクトレンズの色調変化の評価(2)
下記表2に従い、実施例7〜12の各試験液を調製した。これらの試験液を用いて、上記試験例1と同様にして、コンタクトレンズの色調に及ぼす影響について評価を行った。
Figure 0005989365
この結果を図2に示す。図2より明らかなように、各含有成分の含有割合や含有量を変えた場合であっても、ヒドロキシ酢酸、EDTA、又はアミノ酢酸と、AMPD又はMEAとを組み合せて用いることにより、亜鉛化合物との接触によって生じるコンタクトレンズの変色が高度に抑制されることが認められた。
製剤例
表3に記載の処方で、常法によりコンタクトレンズ用眼科組成物を調製する。
Figure 0005989365

Claims (8)

  1. (A)塩化亜鉛、(B)アミノ酢酸、ヒドロキシ酢酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに (C)モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、眼科組成物。
  2. (A)塩化亜鉛の含有量が、眼科組成物の総量に対して0.000001〜0.05w/v%である、請求項1に記載の眼科組成物。
  3. (A)塩化亜鉛の含有量100重量部に対して、(C)モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の総含有量が40〜10000000重量部である、請求項1又は2に記載の眼科組成物。
  4. pHが4.0〜9.5である、請求項1〜3のいずれかに記載の眼科組成物。
  5. 更に緩衝剤を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の眼科組成物。
  6. コンタクトレンズ用である、請求項1〜5のいずれかに記載の眼科組成物。
  7. 水性組成物である、請求項1〜のいずれかに記載の眼科組成物。
  8. (A)塩化亜鉛を含有する眼科組成物中に、(B)アミノ酢酸、ヒドロキシ酢酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに(C)モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、該組成物にコンタクトレンズの変色抑制作用を付与する方法。
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