1.第一の実施形態
本発明に係る制御装置の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る制御装置3は、駆動装置1を制御対象としている。ここで、駆動装置1は、図1に示すように、車輪15の駆動力源として内燃機関E及び回転電機MGの双方を備えた車両(ハイブリッド車両)を駆動するための、車両用駆動装置(ハイブリッド車両用駆動装置)である。以下、本実施形態に係る制御装置3について、詳細に説明する。
なお、以下の説明では、「駆動連結」とは、2つの回転部材が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を意味し、当該2つの回転部材が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転部材が一又は二以上の伝動部材(軸、歯車機構、ベルト等)を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。なお、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置が含まれていても良い。また、差動歯車装置の各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該差動歯車装置が備える3つ以上の回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。
また、以下の係合装置(摩擦係合装置)についての説明では、「係合した状態」とは、係合装置に伝達トルク容量が生じている状態、すなわち、係合装置の伝達トルク容量が零より大きい状態である。よって、係合装置が係合した状態では、当該係合装置の係合部材間(入力側係合部材と出力側係合部材との間)で回転及びトルクが伝達される。ここで、伝達トルク容量とは、摩擦係合装置が摩擦により伝達することができる最大のトルクの大きさであり、伝達トルク容量の大きさは、摩擦係合装置の係合圧(入力側係合部材と出力側係合部材とを相互に押し付け合う圧力)に比例して変化する。
そして、「係合した状態」には、「直結係合した状態」と「スリップ係合した状態」とが含まれる。「直結係合した状態」とは、「係合した状態」であって、且つ、係合装置の係合部材間に回転速度差(滑り)がない状態(回転速度差が零の状態)である。「スリップ係合した状態(滑り係合した状態)」とは、「係合した状態」であって、且つ、係合装置の係合部材間に回転速度差(滑り)がある状態(回転速度差が零より大きい状態)である。
また、「解放した状態」とは、係合装置に伝達トルク容量が生じていない状態、すなわち、係合装置の伝達トルク容量が零の状態である。よって、係合装置が解放した状態では、当該係合装置の係合部材間で回転及びトルクは実質的に伝達されない。なお、摩擦係合装置には、制御装置3により伝達トルク容量を生じさせる指令が出されていない場合でも、係合部材(摩擦部材)同士の引き摺りによって伝達トルク容量が生じる場合がある。本明細書では、係合圧がゼロの状態で生じるこのような引き摺りトルクは、係合の状態の分類に際しての伝達トルク容量には含めず、伝達トルク容量を生じさせる指令が出されていない場合に係合部材同士の引き摺りによって伝達トルク容量が生じている状態も、「解放した状態」に含まれるものとする。
さらに、以下の係合圧についての説明では、「解放圧」は、係合装置が定常的に解放した状態となる圧を表す。「解放境界圧」は、係合装置が解放した状態とスリップ係合した状態との境界状態となる圧を表す。「係合境界圧」は、係合装置がスリップ係合した状態と直結係合した状態との境界状態となる圧を表す。「完全係合圧」は、係合装置が定常的に直結係合した状態となる圧を表す。
1−1.駆動装置の構成
制御装置3による制御対象となる駆動装置1の構成について説明する。駆動装置1は、図1に示すように、内燃機関Eと車輪15とを結ぶ動力伝達経路に沿って、内燃機関Eの側から順に、切離用クラッチC0、回転電機MG、及び変速機構13を備えている。回転電機MGと車輪15との間の動力伝達経路には、係合装置が設けられている。当該係合装置は、変速機構13内に設けられる係合装置(変速用係合装置)、又は変速機構13とは別に設けられる係合装置とされる。本実施形態では、回転電機MGと車輪15との間の動力伝達経路には複数の係合装置が設けられており、当該複数の係合装置のそれぞれが、変速用係合装置とされている。そして、駆動装置1は、内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方の出力トルクを車輪15に伝達して車両を走行させる。本実施形態では、切離用クラッチC0が、本発明における「切離用係合装置」に相当する。
内燃機関Eは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン等)である。内燃機関Eは、図1に示すように、駆動装置1の入力部材としての入力軸Iに駆動連結されている。本例では、内燃機関Eのクランクシャフト等の内燃機関出力軸が、入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。内燃機関Eは、切離用クラッチC0を介して回転電機MGに駆動連結されている。本実施形態では、内燃機関Eにはスタータ・オルタネータが備えられておらず、内燃機関Eの始動時には、切離用クラッチC0を介して伝達される回転電機MGの駆動力により内燃機関Eの出力軸が回転駆動(クランキング)される。また、本実施形態では、車両には回転電機MGとは別のオルタネータ(発電機)が備えられておらず、本実施形態に係る駆動装置1は、オルタネータレス車両用の駆動装置とされている。
切離用クラッチC0は、内燃機関Eと回転電機MGとの間の動力伝達経路に設けられ、車輪15及び回転電機MG等から内燃機関Eを切り離すための内燃機関切離用係合装置として機能する。具体的には、切離用クラッチC0の入力側係合部材が、当該切離用クラッチC0の出力側係合部材を介することなく入力軸Iに駆動連結され、切離用クラッチC0の出力側係合部材が、当該切離用クラッチC0の入力側係合部材を介することなく中間軸Mに駆動連結されている。切離用クラッチC0の係合の状態に応じて、内燃機関Eと回転電機MGとが連結した状態と、内燃機関Eと回転電機MGとが分離した状態とが、選択的に実現される。すなわち、切離用クラッチC0が係合した状態では、内燃機関Eと回転電機MGとが連結した状態となり、切離用クラッチC0が解放した状態では、内燃機関Eと回転電機MGとが分離した状態となる。
ここで、「連結した状態」とは、対象となる2つの回転部材の間での連結が維持される状態(連結維持状態)である。この連結維持状態では、当該2つの回転部材の間で駆動力の伝達が行われる。また、「分離した状態」とは、対象となる2つの回転部材の間での連結が解除された状態(連結解除状態)である。この連結解除状態では、当該2つの回転部材の間で駆動力の伝達は実質的に行われない。ここでも、上述した引き摺りトルクは考慮しないものとする。すなわち、対象となる2つの回転部材の間に介在する係合装置が係合した状態(具体的には、直結係合した状態又はスリップ係合した状態)である場合に、当該2つの回転部材が連結した状態となり、対象となる2つの回転部材の間に介在する係合装置が解放した状態である場合に、当該2つの回転部材が分離した状態となる。
切離用クラッチC0は、摩擦係合装置として構成されている。本実施形態では、切離用クラッチC0は、供給される油圧に応じて動作する油圧サーボ機構を備えた油圧駆動式の係合装置(例えば湿式多板クラッチ)として構成されており、切離用クラッチC0の係合圧は、当該切離用クラッチC0に供給される油圧の大きさに比例して変化する。すなわち、本実施形態では、切離用クラッチC0の伝達トルク容量の大きさは、当該切離用クラッチC0に供給される油圧の大きさに比例して変化する。
回転電機MGは、切離用クラッチC0と車輪15との間(具体的には、切離用クラッチC0と変速機構13との間)の動力伝達経路に設けられている。回転電機MGは、ロータとステータとを有して構成され、モータ(電動機)としての機能とジェネレータ(発電機)としての機能との双方を果たすことが可能である。回転電機MGのロータは、変速入力軸としての中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。図4に示すように、回転電機MGは、インバータ装置24(直流交流変換装置)を介して蓄電装置21に電気的に接続されている。回転電機MGは、蓄電装置21から電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関Eの出力トルクや車両の慣性力により発電(回生)した電力を蓄電装置21に供給して蓄電させる。蓄電装置21は、例えばバッテリやキャパシタ等により構成される。
変速機構13は、車輪15に駆動連結される出力軸Oを備え、変速入力軸としての中間軸Mの回転速度を変速比(ギヤ比)に基づき変速して、変速出力軸としての出力軸Oに伝達する。ここで、「変速比」は、出力軸O(変速出力軸)の回転速度に対する、中間軸M(変速入力軸)の回転速度の比である。出力軸Oは、出力用差動歯車装置14を介して左右2つの車輪15に駆動連結されており、出力軸Oに伝達されたトルクは、出力用差動歯車装置14により分配されて2つの車輪15に伝達される。
本実施形態では、変速機構13は、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に構成された自動有段変速機構である。複数の変速段を形成するため、変速機構13は、歯車機構と、当該歯車機構の回転要素の係合又は解放を行う複数の変速用係合装置とを備え、複数の変速用係合装置のそれぞれの係合の状態を制御することで、変速段が切り替えられる。変速用係合装置には図2に示すように、第一クラッチC1、第二クラッチC2、第三クラッチC3、第一ブレーキB1、及び第二ブレーキB2が含まれる。これらの変速用係合装置も、それぞれ摩擦係合装置として構成されている。本実施形態では、変速用係合装置のそれぞれは、供給される油圧に応じて動作する油圧サーボ機構を備えた油圧駆動式の係合装置(例えば湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキ)として構成されている。すなわち、本実施形態では、変速用係合装置の係合圧や伝達トルク容量は、当該変速用係合装置に供給される油圧の大きさに比例して変化する。
図2に示すように、本実施形態に係る変速機構13は、第一差動歯車装置PG1及び第二差動歯車装置PG2の2つの差動歯車装置を組み合わせて構成されている。第一差動歯車装置PG1は、第一サンギヤS1、第一キャリヤCA1、及び第一リングギヤR1を有するシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、第一差動歯車装置PG1は、回転速度の順に、第一回転要素X1、第二回転要素X2、及び第三回転要素X3を有し、第一サンギヤS1が第一回転要素X1を構成し、第一キャリヤCA1が第二回転要素X2を構成し、第一リングギヤR1が第三回転要素X3を構成している。ここで、「回転速度の順」は、「各回転要素の回転状態における回転速度の高い順又は低い順」を意味し、各回転要素の速度線図(共線図、図5参照)における配置順(各回転要素に対応する軸の配置される順番)に等しい。
第二差動歯車装置PG2は、第二サンギヤS2、第三サンギヤS3、第二キャリヤCA2、及び第二リングギヤR2を有するラビニヨ型の遊星歯車機構により構成されている。具体的には、第二差動歯車装置PG2は、第二サンギヤS2、第二キャリヤCA2、及び第二リングギヤR2が構成するシングルピニオン型の遊星歯車機構と、第三サンギヤS3、第二キャリヤCA2、及び第二リングギヤR2が構成するダブルピニオン型の遊星歯車機構とが、ピニオンギヤの一部とキャリヤとリングギヤとを共用して構成されている。すなわち、第二差動歯車装置PG2は、回転速度の順に、第一回転要素X1、第二回転要素X2、第三回転要素X3、及び第四回転要素X4を有し、第二サンギヤS2が第一回転要素X1を構成し、第二キャリヤCA2が第二回転要素X2を構成し、第二リングギヤR2が第三回転要素X3を構成し、第三サンギヤS3が第四回転要素X4を構成している。
第一差動歯車装置PG1の第三回転要素X3(本例では第一リングギヤR1)は、中間軸Mに駆動連結され、本例では中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。第二差動歯車装置PG2の第三回転要素X3(本例では第二リングギヤR2)は、出力軸Oに駆動連結され、本例では出力軸Oと一体回転するように駆動連結されている。第一差動歯車装置PG1の第二回転要素X2(本例では第一キャリヤCA1)は、第一クラッチC1を介して、第二差動歯車装置PG2の第四回転要素X4(本例では第三サンギヤS3)に駆動連結されているとともに、第三クラッチC3を介して、第二差動歯車装置PG2の第一回転要素X1(本例では第二サンギヤS2)に駆動連結されている。第一差動歯車装置PG1の第三回転要素X3(本例では第一リングギヤR1)は、第二クラッチC2を介して、第二差動歯車装置PG2の第二回転要素X2(本例では第二キャリヤCA2)に駆動連結されている。
また、第一差動歯車装置PG1の第一回転要素X1(本例では第一サンギヤS1)は、非回転部材としてのケース(変速機構ケース)に固定されている。第二差動歯車装置PG2の第一回転要素X1(本例では第二サンギヤS2)は、第一ブレーキB1により選択的にケースに固定される。第二差動歯車装置PG2の第二回転要素X2(本例では第二キャリヤCA2)は、第二ブレーキB2により選択的にケースに固定されるとともに、一方向クラッチ(ワンウェイクラッチ)F1により、ケースに対する相対回転の方向が一方向のみに制限される。本実施形態では、第二キャリヤCA2の正回転が許容され、第二キャリヤCA2の負回転が規制されるように、一方向クラッチF1が設けられている。
変速機構13は、図3の係合表に示すように、複数の変速用係合装置のうちの特定の1つ又は2つを係合した状態(基本的に、直結係合した状態)に制御すると共にそれ以外を解放した状態に制御して、各時点における目標変速段を形成する。図3では、「○」は当該変速用係合装置が係合した状態(基本的に、直結係合した状態)に制御されることを示し、「無印」は当該変速用係合装置が解放した状態に制御されることを示している。また、「●」は内燃機関Eの回転抵抗を利用した制動(いわゆるエンジンブレーキ)を行う際に係合した状態(基本的に、直結係合した状態)に制御されることを示している。
図3において、「1st」は第一速段、「2nd」は第二速段、「3rd」は第三速段、「4th」は第四速段、「5th」は第五速段、「6th」は第六速段を表し、これらは全て前進用の変速段(前進変速段)である。また、「Rev」は後進用の変速段(後進変速段)を表している。前進変速段の変速比は、第一速段から第六速段に向かって段階的に小さくなるように設定されている。例えば、第一クラッチC1を係合した状態に制御することで第一速段が形成される。この第一速段では、内燃機関E及び回転電機MGの少なくとも一方が出力した正方向のトルクが、第一差動歯車装置PG1を介して第二差動歯車装置PG2の第三サンギヤS3に伝達される。そして、一方向クラッチF1により負回転が規制された状態の第二キャリヤCA2が、第三サンギヤS3に作用する正方向のトルクの反力を受けることにより、当該正方向のトルクが第二リングギヤR2及び出力軸Oに伝達される。また、例えば、第一クラッチC1を係合した状態に制御するとともに、第一ブレーキB1を係合した状態に制御することで、第二速段が形成される。なお、本明細書では、各部材の回転及びトルクの方向に関して、内燃機関Eの回転方向と同じ方向を「正」とし、その逆方向を「負」としている。
図5に示す速度線図は、変速機構13の動作状態を表し、縦軸は、各回転要素の回転速度に対応している。すなわち、縦軸に対応して記載している「0」は、回転速度が零であることを示しており、上側が正回転(回転速度が正)、下側が負回転(回転速度が負)である。図5に示す速度線図上において、内燃機関Eの回転速度、回転電機MGの回転速度、及び出力軸Oの回転速度のそれぞれを、互いに異なる記号で示している。また、図5において、回転要素がブレーキにより固定されている状態を、白抜きの「X」字状の記号で表している。
1−2.制御装置の構成
本実施形態に係る制御装置3の構成について、図4を参照して説明する。図4に示すように、本実施形態に係る制御装置3は、複数の機能部を備えている。複数の機能部は、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。制御装置3は、CPU等の演算処理装置を中核として備えると共に、RAMやROM等の記憶装置等を有して構成されている。そして、ROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、制御装置3の各機能部が構成されている。なお、プログラムにより構成される機能部については、制御装置3が備える演算処理装置が、当該プログラムを実行するコンピュータとして動作する。
制御装置3は、車両の各部に備えられたセンサSe1〜Se7による検出結果の情報を取得可能に構成されている。第一回転センサSe1は、内燃機関E或いは入力軸Iの回転速度を検出するセンサである。第二回転センサSe2は、回転電機MGのロータ或いは中間軸Mの回転速度を検出するセンサであり、本例ではレゾルバにより構成されている。第三回転センサSe3は、出力軸Oの回転速度を検出するセンサである。制御装置3は、第三回転センサSe3の検出結果に基づいて、車輪15の回転速度或いは車速を導出する。
アクセル開度センサSe4は、車両に備えられたアクセルペダル90の操作量を検出することによりアクセル開度を検出するセンサである。本実施形態では、アクセルペダル90が全く操作されていない場合のアクセル開度を0〔%〕とし、アクセルペダル90の操作量が最大の場合のアクセル開度を100〔%〕として、アクセルペダル90の操作量を検出する。蓄電装置センサSe5は、蓄電装置21の状態を検出するセンサであり、本例では、蓄電装置21のSOC(state of charge:充電状態)或いは蓄電量と、蓄電装置21の温度とを検出する。ブレーキ操作センサSe6は、車両に備えられたブレーキペダル91の操作量を検出するセンサである。車輪15にはブレーキ装置(図示せず、例えばディスクブレーキ装置)が設けられており、制御装置3は、ブレーキペダル91の操作量に応じた制動力が車輪15に作用するように、ブレーキ制御装置(図示せず)を介してブレーキ装置を制御する。
勾配センサSe7は、車両が走行する道路(路面)の勾配を検出するセンサであり、車両の前後方向の水平面に対する傾斜角を検出することにより路面の勾配を検出する。勾配センサSe7は、例えば、振子部材を備えた傾斜センサにより構成される。本明細書では、勾配は、上り坂を正、下り坂を負として定義している。
制御装置3は、内燃機関Eの動作制御を行う内燃機関制御ユニット23との間で、情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。内燃機関制御ユニット23は、制御装置3からの指令に基づき、内燃機関Eの動作点(出力トルク及び回転速度)を制御する。例えば、内燃機関制御ユニット23は、制御装置3から出力トルクの目標値(目標トルク)が指令されている場合には、内燃機関Eの出力トルクを目標トルクに追従させる(或いは近づける)制御であるトルク制御を行う。また、内燃機関制御ユニット23は、制御装置3からの指令に基づき、燃料噴射や点火の開始制御や停止制御を行い、内燃機関Eの状態を動作状態(始動状態)と停止状態との間で切り替える。
1−2−1.油圧制御部の構成
油圧制御部34は、各係合装置(C0,C1,C2,C3,B1,B2)への油圧の供給を制御する機能部である。油圧制御部34は、実現すべき走行モードと形成すべき変速段とに応じて各係合装置に対する油圧指令を出力し、油圧制御装置26を介して各係合装置に供給される油圧を制御する。各係合装置の係合の状態は、供給される油圧に応じて、直結係合した状態、スリップ係合した状態、及び解放した状態の内のいずれかの状態に制御される。本実施形態では、油圧制御装置26は比例ソレノイド等を備えており、油圧制御部34の油圧指令に応じて各係合装置への供給油圧を連続的に制御可能とされている。
油圧制御部34は、トルク制御又は回転速度制御により各係合装置の動作制御を行う。ここで、「トルク制御」は、係合装置の伝達トルク容量の目標値(目標伝達トルク容量)を設定し、当該係合装置の伝達トルク容量を目標伝達トルク容量に追従させる(或いは近づける)制御である。また、「回転速度制御」は、係合装置により係合される2つの係合部材の間の回転速度差の目標値(目標回転速度差)を設定し、当該係合装置の伝達トルク容量を制御して上記回転速度差を目標回転速度差に追従させる(或いは近づける)制御である。なお、回転速度制御では、2つの係合部材の内の一方の係合部材の回転速度が他の要因(例えば車速等)により一意に定まる場合には、他方の係合部材の回転速度を目標回転速度に追従させる(或いは近づける)制御となる。
1−2−2.回転電機制御部の構成
回転電機制御部33は、回転電機MGの動作を制御する機能部である。回転電機制御部33は、インバータ装置24を制御することで、回転電機MGの動作点(出力トルク及び回転速度)を制御する。本実施形態では、回転電機制御部33は、トルク制御又は回転速度制御により回転電機MGの動作制御を行う。ここで、「トルク制御」は、回転電機MGの出力トルクの目標値(目標トルク)を設定し、回転電機MGの出力トルクを目標トルクに追従させる(或いは近づける)制御である。また、「回転速度制御」は、回転電機MGの回転速度の目標値(目標回転速度)を設定し、回転電機MGの出力トルクを制御して回転電機MGの回転速度を目標回転速度に追従させる(或いは近づける)制御である。
内燃機関E及び回転電機MGは、基本的に、内燃機関Eの出力トルクと回転電機MGの出力トルクとの和が要求トルク(車両要求トルク)に等しい均衡関係となるように制御される。変速機構13の変速比が「1」でない場合には、動力伝達経路における同一の回転部材に伝達された場合のトルクに換算して上記の均衡関係が成立する。要求トルクは、車輪15に伝達されることが要求されるトルクである。制御装置3は、例えば、車速、アクセル開度、蓄電装置21の状態(例えばSOC)等に基づいて、要求トルクマップ(図示せず)を参照する等して要求トルクを決定する。また、制御装置3は、例えば、車速、アクセル開度等に基づいて、変速マップ(図示せず)を参照する等して変速機構13にて形成すべき変速段を決定する。
制御装置3は、例えば蓄電装置21の充電の必要性や車両全体のエネルギ効率等を考慮して、内燃機関Eに対して要求する出力トルクである内燃機関要求トルク(すなわち、要求トルクの内の内燃機関Eによる負担分)、及び回転電機MGに対して要求する出力トルクである回転電機要求トルク(すなわち、要求トルクの内の回転電機MGによる負担分)を決定する。回転電機MGに発電を行わせる場合には、回転電機要求トルクは、目標発電電力を発電するために必要となる負トルクに設定される。以下では、この負トルクの絶対値を「発電トルク」という。この場合、回転電機要求トルクが負の値となることで、内燃機関要求トルクは、要求トルクよりも発電トルク分だけ大きな値とされる。発電トルクの目標値である目標発電トルクは、目標発電電力を回転電機MGの回転速度(目標値又は検出値)で除算することで得られる。なお、蓄電装置21の充電の必要性は、蓄電装置21のSOCに基づき判定される。
制御装置3は、基本的に、内燃機関要求トルクが零の場合に電動走行モードを選択し、内燃機関要求トルクが零でない場合にハイブリッド走行モードを選択する。ここで、電動走行モードでは、切離用クラッチC0を解放した状態に制御して、回転電機MGのトルクを車輪15に伝達させて車両を走行させる。また、ハイブリッド走行モードでは、切離用クラッチC0を係合した状態(基本的に、直結係合した状態)に制御して、内燃機関E及び回転電機MGの双方のトルクを車輪15に伝達させて車両を走行させる。この際、蓄電装置21の充電を行う場合には、回転電機MGは負のトルク(発電トルク)を出力するように制御され、回転電機MGによる発電が行われる。
1−2−3.特定停止状態検出部の構成
特定停止状態検出部30は、特定停止状態の発生を検出する機能部である。ここで、「特定停止状態」とは、内燃機関Eのトルクが車輪15に伝達されていると共に内燃機関Eと車輪15とを結ぶ動力伝達経路に設けられた少なくとも1つの係合装置がスリップ係合した状態において、車両が停止している状態である。本実施形態では、内燃機関Eと車輪15とを結ぶ動力伝達経路には、切離用クラッチC0が設けられているとともに、変速機構13に備えられる変速用係合装置(C1,C2,C3,B1,B2)が設けられている。そして、内燃機関Eと車輪15とを結ぶ動力伝達経路に設けられた少なくとも1つの係合装置がスリップ係合した状態であるか否かの情報は、例えば、油圧制御部34が実行中の制御内容に基づき取得される構成とすることができる。また、入力軸Iと出力軸Oとの間の回転速度差等に基づき、内燃機関Eと車輪15とを結ぶ動力伝達経路に設けられた少なくとも1つの係合装置がスリップ係合した状態であるか否かの情報が取得される構成とすることもできる。
特定停止状態は、動作状態の内燃機関Eと、回転速度が実質的にゼロの車輪15とが連結された状態で、車両が停止している状態である。この際、内燃機関Eには自立運転を継続可能な回転速度の下限値があるため、内燃機関Eと車輪15とを結ぶ動力伝達経路に設けられた少なくとも1つの係合装置を、スリップ係合した状態に制御する必要がある。車両が停止している状態で内燃機関Eを停止状態にすることも可能であるが、車両の停止中に回転電機MGに発電を行わせる必要がある場合には、内燃機関Eを動作状態に維持する必要がある。また、車両が上り坂又は下り坂に停車している状態では、車輪15に対して路面の勾配に応じた大きさのトルク(以下、「路面勾配トルクTo」という。)が作用する。このような坂道において、アクセルペダル90の操作により路面勾配トルクToを打ち消すためのトルクを少なくとも内燃機関Eに発生させ、車両を停止させた状態に維持する場合にも、内燃機関Eを動作状態に維持する必要がある。
本実施形態では、特定停止状態検出部30は、第三回転センサSe3の検出結果に基づき、車両が停止しているか否かの判定を行う。例えば、第三回転センサSe3が検出した出力軸Oの回転速度が、予め定められた停止判定閾値未満である場合に、車両が停止していると判定される構成とすることができる。この停止判定閾値は正数に設定され、例えば、車速に換算した場合に0.5〔km/h〕〜2〔km/h〕の範囲に含まれる値に設定することができる。また、停止判定閾値を、第三回転センサSe3の検出限界に基づき設定することも可能である。なお、停止判定閾値を車速を表す値とし、停止判定閾値と、第三回転センサSe3の検出結果に基づき取得される車速との比較に基づき、車両が停止しているか否かの判定が実行される構成とすることもできる。
1−2−4.回転規制制御部の構成
回転規制制御部31は、少なくとも特定停止状態の発生の検出を条件として、変速用係合装置の係合の状態を制御して出力軸Oの回転を規制する回転規制制御(言い換えれば、回転規制開始制御)を実行する機能部である。本実施形態では、回転規制制御部31は、特定停止状態の発生の検出に加えて、路面の勾配が予め定められた勾配判定閾値以上であって、更に、特定停止状態の継続時間が予め定められた継続判定閾値以上である場合に、回転規制制御の開始条件が成立したと判定し、回転規制制御を実行する。よって、本実施形態では、車両が上り坂において停止している場合に、回転規制制御が実行され得る。勾配判定閾値は正数に設定され、例えば、水平方向の変化に対する水平面からの距離の比で表した場合に5〔%〕〜15〔%〕の範囲に含まれる値に設定し、或いは、角度に換算した場合に3度〜10度の範囲に含まれる値に設定することができる。また、継続判定閾値は正数に設定され、例えば、1秒〜2秒の範囲に含まれる値に設定することができる。この継続判定閾値を、特定停止状態においてスリップ係合した状態に制御されている係合装置の冷却性能に基づき設定することもできる。
本実施形態では、変速機構13は図2に示すように歯車機構が構成されている。よって、本実施形態では、第一ブレーキB1及び第二ブレーキB2の双方を直結係合した状態に制御することで、第二差動歯車装置PG2を構成する2つの回転要素(具体的には、第一回転要素X1としての第二サンギヤS2、及び第二回転要素X2としての第二キャリヤCA2)が固定され、出力軸Oが駆動連結された第三回転要素X3としての第二リングギヤR2の回転が規制されて固定された状態となる。
上述したように、本実施形態では、第二差動歯車装置PG2の第二回転要素X2(第二キャリヤCA2)には、正回転のみを許容するように一方向クラッチF1が設けられている。そのため、図5(c)から明らかなように、車両の停止状態であり、且つ、負方向の路面勾配トルクToが車輪15及び出力軸Oに対して作用している状態では、第一ブレーキB1を直結係合した状態に制御することで、出力軸Oが駆動連結された第三回転要素X3としての第二リングギヤR2の回転を規制して固定することができる。本実施形態では、上記のように、車両が上り坂において停止している場合に、回転規制制御が実行され得るため、本実施形態に係る回転規制制御部31は、回転規制制御として、第一ブレーキB1を直結係合した状態にする制御を実行する。
回転規制制御部31による回転規制制御は、回転規制制御の終了が決定されるまでの間、継続して実行される。本実施形態では、回転規制制御の終了は、アクセルペダル90の操作量に応じて変化する情報(本例では、アクセル開度の情報)に基づき、回転規制制御部31により決定される。具体的には、回転規制制御部31は、アクセル開度が予め定められた開度判定閾値以上となった場合に、回転規制制御の終了条件が成立したと判定し、回転規制制御の終了を決定する。この開度判定閾値は本例では百分率で表され、例えば、30〔%〕〜80〔%〕の範囲に含まれる値に設定することができる。開度判定閾値を、路面の勾配に基づき可変に設定することも可能である。また、開度判定閾値を、回転規制制御の実行開始時のアクセル開度よりも大きい値に設定するように構成しても良い。
詳細は後述するが、回転規制制御の終了が決定されると、後述する回転規制制御部31により、スリップ係合制御と連結維持制御とが実行される。回転規制制御部31は、これらのスリップ係合制御及び連結維持制御の実行を条件として、回転規制終了制御として出力軸Oの回転の規制を解除する制御を実行し、回転規制制御を終了する。本実施形態では、回転規制制御部31は、回転規制終了制御として第一ブレーキB1を解放した状態にする制御を実行することで、回転規制制御を終了する。
このように、本実施形態では、回転規制制御部31は、変速用係合装置(具体的には、第一ブレーキB1)の係合の状態を制御することで、回転規制制御を実行し、或いは、回転規制制御を終了する。そして、本実施形態では、回転規制制御部31は、変速用係合装置(具体的には、第一ブレーキB1)の係合の状態を制御する際に、当該変速用係合装置の係合圧(本例では油圧)の指令値を出力するように構成され、油圧制御部34が、当該指令値に基づき当該変速用係合装置の係合の状態を制御する。この際、回転規制制御部31は、係合圧の指令値を目標値に向かって漸増(言い換えれば、次第に増加、或いはスイープアップ)させることで回転規制制御を実行し、又、係合圧の指令値を漸減(言い換えれば、次第に低下、或いはスイープダウン)させることで回転規制制御を終了するように構成されている。
1−2−5.伝達状態制御部の構成
伝達状態制御部32は、回転規制制御の実行を条件として、回転電機MGと出力軸Oとの間の連結の状態を分離した状態に制御する連結解除制御と、切離用クラッチC0を係合した状態に制御する係合制御と、を実行する機能部である。本実施形態では、連結解除制御として、変速機構13を構成する第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2との間の連結を解除する制御を実行する。すなわち、本実施形態では、連結解除制御は、第一クラッチC1、第二クラッチC2、及び第三クラッチC3の全てを解放した状態にする制御である。
例えば、連結解除制御の実行前の状態において変速機構13が第一速段(1st)を形成している場合には、図3から明らかなように、連結解除制御として、第一クラッチC1を解放した状態にする制御が実行される。また、例えば、連結解除制御の実行前の状態において変速機構13が後進変速段(Rev)を形成している場合には、図3から明らかなように、連結解除制御として、第三クラッチC3を解放した状態にする制御が実行される。本実施形態では、上述したように、車両が上り坂において停止している場合に、回転規制制御が実行され得るため、連結解除制御の実行前の状態において変速機構13が第一速段(1st)を形成しており、連結解除制御として、第一クラッチC1を解放した状態にする制御が実行される。
また、本実施形態では、伝達状態制御部32は、係合制御として、切離用クラッチC0を直結係合した状態にする制御を実行する。なお、係合制御の実行前の状態において切離用クラッチC0が直結係合した状態である場合には、係合制御として切離用クラッチC0の係合の状態を維持する制御が実行される。例えば、特定停止状態において変速機構13が備える変速用係合装置(例えば第一クラッチC1)がスリップ係合した状態に制御されている場合に、係合制御の実行前の状態において切離用クラッチC0が直結係合した状態に制御されている状況が生じ得る。
本実施形態では、伝達状態制御部32は、連結解除制御を実行した後、係合制御を実行するように構成されている。具体的には、本実施形態では、伝達状態制御部32による連結解除制御の実行を条件として、回転電機制御部33が、内燃機関Eに伝達された場合の回転速度に換算した回転電機MGの換算回転速度と、内燃機関Eの回転速度との間の回転速度差が第二差回転閾値未満である第二同期状態となるように、回転電機MGを制御する。第二差回転閾値は、例えば、10〔rpm〕〜100〔rpm〕の範囲に含まれる値に設定することができる。そして、伝達状態制御部32は、上記の第二同期状態となった後に、切離用クラッチC0を係合した状態に制御する係合制御を実行する。すなわち、本実施形態では、連結解除制御は、回転規制制御の実行を条件として実行され、係合制御は、回転規制制御の実行に加えて第二同期状態となったことを更なる条件として実行される。
ここで、換算回転速度は、対象回転部材の回転速度(ここでは回転電機MGの回転速度)と、当該対象回転部材と換算先の回転部材(ここでは内燃機関Eの出力軸)との間の動力伝達経路に配置された伝動部材の構成(ギヤ比等)とに応じて定まる。この際、当該動力伝達経路に係合装置が配置されている場合には、当該係合装置が直結係合した状態であるとして回転速度の換算を行う。本実施形態では、切離用クラッチC0が直結係合した状態において内燃機関Eと回転電機MGとは一体回転するため、内燃機関Eに伝達された場合の回転速度に換算した回転電機MGの換算回転速度は、回転電機MGの回転速度に等しくなる。
回転電機MGを制御する回転電機制御部33は、回転規制制御の実行中は、上記の連結解除制御及び係合制御の実行を条件として、回転電機MGに発電を行わせる。本明細書では、連結解除制御及び係合制御の実行を条件として回転電機MGによる発電が行われている状態を「特定発電状態」という。この特定発電状態では、連結解除制御の実行により回転電機MGと出力軸Oとの間の連結の状態が分離した状態に制御されているため、トルクの方向は互いに逆方向であるが、内燃機関Eの出力トルクと回転電機MGの発電トルクとを等しくする(損失を考慮すると、実質的に等しくする)制御が実行される。更に、本実施形態では、係合制御の実行により切離用クラッチC0が直結係合した状態に制御されているため、切離用クラッチC0がスリップ係合した状態である場合に比べて、回転電機MGで発電する際における内燃機関Eのエネルギの利用率を高めることが可能となっている。
なお、本実施形態では、上述したように、車両には回転電機MGとは別の発電機が備えられていない。すなわち、本実施形態では、車両(駆動装置1)に必要な発電量を全て回転電機MGで賄う構成となっている。そのため、本実施形態では、回転規制制御の実行中は、少なくとも車載機器を安定して動作させるために必要な電力(以下、「車載機器用電力」という。)を回転電機MGにより発電させる。具体的には、蓄電装置21の充電の必要性がある場合には、目標発電電力が、車載機器用電力と、蓄電装置21のSOCを目標値に近づけるために必要な電力との和に設定される。また、蓄電装置21の充電の必要性がない場合には、目標発電電力が車載機器用電力に設定される。そして、回転電機MGの目標発電トルクは、目標発電電力を回転電機MGの回転速度(目標値又は検出値)で除算することで得られるトルクに設定され、内燃機関Eの目標トルクも、回転電機MGの目標発電トルクと同じ大きさのトルク(損失を考慮すると、実質的に同じ大きさのトルク)に設定される。
なお、車載機器とは、車両が備える機能を果たすために電力を消費する機器(電力消費機器)である。車載機器には、例えば、ECU(Electronic Control Unit)、エアコンディショナ用のコンプレッサ、電動ポンプ、灯火装置、内燃機関の点火装置等が含まれ得る。すなわち、一般的に「補機」或いは「車載電装品」等と呼ばれる電力消費機器が車載機器とされ、制御装置3も車載機器に含まれる。
また、伝達状態制御部32は、回転規制制御の終了の決定を条件として、内燃機関Eと車輪15とを結ぶ動力伝達経路に設けられた少なくとも1つの係合装置をスリップ係合した状態に制御するスリップ係合制御と、回転電機MGと出力軸Oとの間の連結の状態を連結した状態に制御する連結維持制御と、を実行する。本実施形態では、スリップ係合制御として、切離用クラッチC0をスリップ係合した状態にする制御を実行する。
本実施形態では、連結維持制御として、変速機構13を構成する第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2との間の連結を復帰させる制御を実行する。具体的には、連結維持制御として、第一クラッチC1、第二クラッチC2、及び第三クラッチC3の少なくともいずれかを係合した状態にする制御を実行する。この際、連結維持制御の実行により、連結解除制御により解放した状態に制御された係合装置が、係合した状態に制御される構成とすることができる。なお、連結解除制御により解放した状態に制御された係合装置とは異なる係合装置が、連結維持制御により係合した状態に制御される構成とすることもできる。本実施形態では、連結維持制御として、第一クラッチC1を係合した状態(基本的に、直結係合した状態)にする制御が実行される。そして、連結維持制御の実行直後の状態では、第一クラッチC1が係合した状態に制御されているとともに、回転規制制御により第一ブレーキB1が直結係合した状態に制御されているため、図3から明らかなように、変速機構13において第二速段(2nd)が形成された状態となる。
本実施形態では、伝達状態制御部32は、スリップ係合制御を実行した後、連結維持制御を実行するように構成されている。具体的には、本実施形態では、回転規制制御の終了の決定を条件として、回転電機制御部33が、出力軸Oに伝達された場合の回転速度に換算した回転電機MGの換算回転速度と、出力軸Oの回転速度(実質的にゼロ)との間の回転速度差が第一差回転閾値未満である第一同期状態となるように、回転電機MGを制御する。本実施形態では、連結維持制御の実行直後の状態では変速機構13により第二速段(2nd)が形成されるため、出力軸Oに伝達された場合の回転速度に換算した回転電機MGの換算回転速度は、回転電機MGの回転速度を第二速段の変速比で除算した値となる。第一差回転閾値は、例えば、10〔rpm〕〜100〔rpm〕の範囲に含まれる値に設定することができ、上記の第二差回転閾値と同じ値に設定することも可能である。そして、伝達状態制御部32は、上記の第一同期状態となった後に、回転電機MGと出力軸Oとの間の連結の状態を連結した状態に制御する連結維持制御を実行する。すなわち、本実施形態では、スリップ係合制御は、回転規制制御の終了の決定を条件として実行され、連結維持制御は、回転規制制御の終了の決定に加えて第一同期状態となったことを更なる条件として実行される。
1−3.回転規制開始制御及び回転規制終了制御の具体的内容
本実施形態に係る制御装置3により実行される回転規制開始制御及び回転規制終了制御の具体的内容について、図6のタイムチャートを参照して説明する。ここでは、特定停止状態として、内燃機関Eが発生するアクセル開度に応じたトルクにより路面勾配トルクToが打ち消されて車両が停止しているとともに、切離用クラッチC0がスリップ係合した状態に制御されている状態(図5(a)に示す状態)を想定している。この際、アクセル開度に応じて設定される切離用クラッチC0の係合圧の指令値は、切離用クラッチC0の伝達トルク容量と、路面勾配トルクToを打ち消すために内燃機関Eが出力する必要のあるトルクとを一致させる圧となり、解放境界圧より高く係合境界圧より低い圧(以下、「スリップ係合圧」という。)に設定される。また、車両が停止している路面の勾配が勾配判定閾値以上であるとともに、第一クラッチC1が直結係合した状態に制御されて変速機構13により第一速段(1st)が形成されている場合を想定している。
時刻T01は、時刻T01以前に検出された特定停止状態の継続時間が、継続判定閾値に到達する時刻である。なお、特定停止状態の継続時間は、制御装置3が備えるタイマー機能により計測される。時刻T01以前の状態では、図5(a)に示すように、内燃機関Eのトルク(内燃機関トルクTe)が、スリップ係合した状態に制御された切離用クラッチC0及び第一差動歯車装置PG1を介して、第二差動歯車装置PG2の第三サンギヤS3に入力トルクT1として伝達されている。そして、一方向クラッチF1により負回転が規制された状態の第二キャリヤCA2が、第三サンギヤS3に作用する入力トルクT1の反力を受けることにより、当該入力トルクT1が第二リングギヤR2に伝達される。この結果、路面勾配トルクToが内燃機関トルクTe(入力トルクT1)により打ち消されて車両が停止している。
時刻T01において回転規制制御の開始条件が成立すると、回転規制制御部31が回転規制制御を実行する。具体的には、回転規制制御として、第一ブレーキB1の係合の状態を、解放した状態から直結係合した状態へ移行させる移行制御を実行し、第一ブレーキB1が直結係合した状態へ移行した後は、第一ブレーキB1を直結係合した状態に維持する維持制御を実行する。本例では、図6に示すように、第一ブレーキB1の係合圧の指令値を、解放圧から完全係合圧に向けて一定の変化率で漸増させることで、移行制御を実行する。このように、第一ブレーキB1の係合圧の指令値を漸増させる構成とすることで、第三回転センサSe3の検出結果に誤差がある場合におけるショックの発生を抑制することができる。
第一ブレーキB1が直結係合した状態へ移行したと判定されると(時刻T02)、伝達状態制御部32が連結解除制御を実行する。図5(b)は、第一ブレーキB1が直結係合した状態に制御され、第二差動歯車装置PG2の第二サンギヤS2が固定されている状態を示している。なお、本実施形態では、第一ブレーキB1の係合圧の指令値が完全係合圧に到達した時点において、第一ブレーキB1が直結係合した状態へ移行したと判定する。なお、時刻T01からの経過時間が予め定められた移行判定時間に到達した時点において、第一ブレーキB1が直結係合した状態へ移行したと判定する構成とすることもできる。
時刻T02において実行される連結解除制御では、第一クラッチC1の係合の状態を、直結係合した状態から解放した状態へ移行させる移行制御を実行し、第一クラッチC1が解放した状態へ移行した後は、第一クラッチC1を解放した状態に維持する維持制御を実行する。本例では、第一クラッチC1の係合圧の指令値を、完全係合圧から解放圧にステップ的に低下させることで、移行制御を実行する。時刻T02においては、回転電機制御部33による第二同期状態への移行制御も実行される。本実施形態では、第二同期状態への移行制御は、回転電機MGの回転速度を内燃機関Eの回転速度(例えばアイドル回転速度)に一致させる制御とされる。本例では、図6に示すように、回転電機MGの回転速度が一定の変化率で漸増するように、回転電機MGの回転速度フィードバック制御を実行する。
時刻T03において第二同期状態となったと判定されると、伝達状態制御部32が係合制御を実行する。本実施形態では、係合制御として、切離用クラッチC0の係合の状態を、スリップ係合した状態から直結係合した状態へ移行させる移行制御を実行し、切離用クラッチC0が直結係合した状態へ移行した後は、切離用クラッチC0を直結係合した状態に維持する制御を実行する。本例では、図6に示すように、切離用クラッチC0の係合圧の指令値を、スリップ係合圧から完全係合圧にステップ的に上昇させることで、移行制御を実行する。そして、回転電機制御部33は、時刻T03において回転電機MGの目標トルクを、目標発電電力に基づく目標発電トルクに設定し、回転電機MGによる発電が開始される(図5(c)に示す状態)。
時刻T04において回転規制制御の終了条件が成立すると、伝達状態制御部32は、スリップ係合制御を実行する。本実施形態では、スリップ係合制御として、切離用クラッチC0の係合の状態を、直結係合した状態からスリップ係合した状態へ移行させる移行制御を実行し、切離用クラッチC0がスリップ係合した状態へ移行した後は、切離用クラッチC0をスリップ係合した状態に維持する維持制御を実行する。本例では、図6に示すように、切離用クラッチC0の係合圧の指令値を、完全係合圧からスリップ係合圧にステップ的に低下させる。この際のスリップ係合圧は、時刻T04におけるアクセル開度の上昇分(すなわち、車両要求トルクの上昇分)だけ、時刻T03以前の状態でのスリップ係合圧よりも高くなる。時刻T04においては、回転電機制御部33による第一同期状態への移行制御も実行される。なお、この状態では出力軸Oの回転速度は実質的にゼロであるため、第一同期状態への移行制御は、回転電機MGの回転速度をゼロに一致させる制御とされる。本例では、図6に示すように、回転電機MGの回転速度が一定の変化率で漸減するように、回転電機MGの回転速度フィードバック制御を実行する。
時刻T05において第一同期状態となったと判定されると、伝達状態制御部32が連結維持制御を実行する。本実施形態では、連結維持制御として、第一クラッチC1の係合の状態を、解放した状態から係合した状態(本例では、直結係合した状態)へ移行させる移行制御を実行し、第一クラッチC1が係合した状態(本例では、直結係合した状態)へ移行した後は、第一クラッチC1を係合した状態(本例では、直結係合した状態)に維持する維持制御を実行する。本例では、図6に示すように、時刻T04において、第一クラッチC1の係合圧の指令値がゼロから、解放境界圧より低い圧に上昇されており、連結維持制御では、第一クラッチC1の係合圧の指令値を、解放境界圧より低い当該圧から完全係合圧にステップ的に上昇させることで、移行制御を実行する。上述したように、第一クラッチC1の係合の状態が係合した状態へ移行することで、変速機構13により第二速段(2nd)が形成された状態(図5(b)に示す状態)となる。
時刻T05においては、回転規制制御部31による回転規制終了制御も実行される。具体的には、回転規制終了制御として、第一ブレーキB1の係合の状態を、直結係合した状態から解放した状態へ移行させる移行制御を実行し、第一ブレーキB1が解放した状態へ移行した後は、第一ブレーキB1を解放した状態に維持する維持制御を実行する。本例では、図6に示すように、第一ブレーキB1の係合圧の指令値を、完全係合圧から解放圧に向けて一定の変化率で漸減させることで、移行制御を実行する。そして、時刻T06において図5(a)に示す状態に移行する。
なお、ここでは、時刻T01以前の状態において、第一クラッチC1が直結係合した状態に制御されており、回転電機MGの回転速度がゼロである場合について説明した。しかし、時刻T01以前の状態において、第一クラッチC1がスリップ係合した状態に制御されており、回転電機MGの回転速度がゼロより正回転側に高く制御されて、回転電機MGにより発電が行われている場合においても、上記と同様に各制御を実行することができる。この場合、第一クラッチC1をスリップ係合した状態に維持した状態で(すなわち、回転電機MGの回転速度をゼロより高く維持した状態で)、上述した時刻T01以降の制御が開始される構成とし、或いは、回転電機MGの回転速度をゼロまで低下させた後、上述した時刻T01以降の制御が開始される構成とすることができる。
1−4.回転規制開始制御の処理手順
本実施形態に係る回転規制開始制御の処理手順について、図7のフローチャートを参照して説明する。以下に説明する各処理手順は、制御装置3の各機能部により実行される。なお、各係合装置の係合の状態は、移行時を除いて、現在の状態が維持されるように制御されているものとする。
回転規制制御の開始条件が成立すると(ステップ#01:Yes)、第一ブレーキB1の直結係合した状態への移行制御を開始する(ステップ#02)。第一ブレーキB1が直結係合した状態となるまでの間は(ステップ#03:No)、この移行制御を継続して実行する(ステップ#02)。そして、第一ブレーキB1が直結係合した状態に移行すると(ステップ#03:Yes)、第一クラッチC1の解放した状態への移行制御を開始するとともに(ステップ#04)、第二同期状態への移行制御を開始する(ステップ#05)。ステップ#05の処理を、ステップ#04の処理と同時に開始することもできる。
第二同期状態となるまでの間は(ステップ#06:No)、第二同期状態への移行制御を継続して実行する(ステップ#05)。なお、第一クラッチC1の解放した状態への移行は、第二同期状態となるまでの間に完了する。そして、第二同期状態となると(ステップ#06:Yes)、切離用クラッチC0の直結係合した状態への移行制御を開始し(ステップ#07)、回転電機MGによる発電を開始する(ステップ#08)。ステップ#08の処理を、ステップ#07の処理と同時に開始することもできる。
1−5.回転規制終了制御の処理手順
本実施形態に係る回転規制終了制御の処理手順について、図8のフローチャートを参照して説明する。以下に説明する各処理手順は、制御装置3の各機能部により実行される。なお、各係合装置の係合の状態は、移行時を除いて、現在の状態が維持されるように制御されているものとする。
回転規制制御の終了条件が成立すると(ステップ#11:Yes)、切離用クラッチC0のスリップ係合した状態への移行制御を開始するとともに(ステップ#12)、第一同期状態への移行制御を開始する(ステップ#13)。ステップ#13の処理を、ステップ#12の処理と同時に開始することもできる。
第一同期状態となるまでの間は(ステップ#14:No)、第一同期状態への移行制御を継続して実行する(ステップ#13)。なお、切離用クラッチC0のスリップ係合した状態への移行は、第一同期状態となるまでの間に完了する。そして、第一同期状態となると(ステップ#14:Yes)、第一クラッチC1の直結係合した状態への移行制御を開始するとともに(ステップ#15)、第一ブレーキB1の解放した状態への移行制御を開始する(ステップ#16)。ステップ#16の処理を、ステップ#15の処理と同時に開始することもできる。
2.第二の実施形態
本発明に係る制御装置の第二の実施形態について、図9〜図12を参照して説明する。本実施形態では、第二差動歯車装置PG2の第二回転要素X2(第二キャリヤCA2)の回転を規制する一方向クラッチF1が設けられていない点で、上記第一の実施形態とは異なる。以下では、上記第一の実施形態との相違点を中心に説明し、特に明記しない点については上記第一の実施形態と同様とする。
本実施形態では、回転規制制御部31は、回転規制制御として、第一ブレーキB1に加えて第二ブレーキB2も直結係合した状態にする制御を実行する。これにより、図9(d)に示すように、第二差動歯車装置PG2を構成する2つの回転要素(具体的には、第一回転要素X1としての第二サンギヤS2、及び第二回転要素X2としての第二キャリヤCA2)が固定され、出力軸Oが駆動連結された第三回転要素X3としての第二リングギヤR2の回転が規制されて固定された状態となる。
本実施形態では、一方向クラッチF1が設けられていないため、第二差動歯車装置PG2の第二回転要素X2(第二キャリヤCA2)は、第二ブレーキB2により固定されていない状態では、正回転に加えて負回転も許容される。そのため、第一クラッチC1及び第二ブレーキB2の双方を直結係合した状態に制御することで、第一速段(1st)が形成される。すなわち、本実施形態に係る変速機構13の作動表は、図3における「●」を「○」に置き換えたものに相当する。
そして、図9(a)に示すように、内燃機関Eが発生するアクセル開度に応じたトルクにより路面勾配トルクToが打ち消されて車両が停止しているとともに、第一クラッチC1が直結係合した状態に制御されている状態において、第二ブレーキB2をスリップ係合した状態に制御することで、回転電機MGの回転速度をゼロより正回転側に高くして回転電機MGに発電を行わせることができる。図9(a)に示す状態では、切離用クラッチC0がスリップ係合した状態に制御されているが、切離用クラッチC0を直結係合した状態に制御して回転電機MGに発電を行わせることも可能である。なお、図9において、「T2」は、スリップ係合した状態に制御された第二ブレーキB2の伝達トルク容量により生じるスリップトルクを表している。
2−1.回転規制開始制御及び回転規制終了制御の具体的内容
本実施形態に係る制御装置3により実行される回転規制開始制御及び回転規制終了制御の具体的内容について、図10のタイムチャートを参照して説明する。上記第一の実施形態に係る図6と同様、特定停止状態として、内燃機関Eが発生するアクセル開度に応じたトルクにより路面勾配トルクToが打ち消されて車両が停止しているとともに、切離用クラッチC0がスリップ係合した状態に制御されている状態(図9(a)に示す状態)を想定している。なお、図6の場合と異なり、図9(a)に示す状態では、第二ブレーキB2をスリップ係合した状態に制御して回転電機MGに発電を行わせている。すなわち、図9(a)に示す特定停止状態においては、内燃機関Eと車輪15とを結ぶ動力伝達経路に設けられた2つの係合装置(具体的には、切離用クラッチC0及び第二ブレーキB2)が、スリップ係合した状態に制御されている。
時刻T10において回転規制制御の開始条件が成立すると、第一同期状態への移行制御が実行される。第一同期状態への移行制御は、回転電機MGの回転速度をゼロに一致させる制御とされ、本例では、図10に示すように、回転電機MGの回転速度が一定の変化率で漸減するように、回転電機MGの回転速度フィードバック制御を実行する。そして、時刻T11において第一同期状態となったと判定されると、時刻T11〜時刻T16において、図6の時刻T01〜時刻T06における処理と同様の処理が実行される。図9(b)、図9(c)、及び図9(d)に示す各状態が、それぞれ、図5(a)、図5(b)、及び図5(c)に示す各状態に対応する。なお、本例では、図6に示す例とは異なり、回転電機MGは、常に負のトルク(発電トルク)を出力するように制御される。
本実施形態では、第二差動歯車装置PG2の第二回転要素X2(第二キャリヤCA2)の回転を規制する一方向クラッチF1が設けられていない。そのため、時刻T11において、第二ブレーキB2の係合の状態を、スリップ係合した状態から直結係合した状態へ移行させる移行制御が実行され、第二ブレーキB2が直結係合した状態へ移行した後は、第二ブレーキB2を直結係合した状態に維持する維持制御が実行される。本例では、図10に示すように、第二ブレーキB2の係合圧の指令値を、スリップ係合圧から完全係合圧にステップ的に上昇させることで、移行制御を実行する。
また、図10に示す例では、時刻T16において、第二ブレーキB2の係合の状態を、直結係合した状態からスリップ係合した状態へ移行させる移行制御が実行され、第二ブレーキB2がスリップ係合した状態へ移行した後は、第二ブレーキB2をスリップ係合した状態に維持する維持制御が実行される。本例では、図10に示すように、第二ブレーキB2の係合圧の指令値を、完全係合圧からスリップ係合圧にステップ的に低下させることで、移行制御を実行する。その後、回転電機MGの回転速度を増加させることで、図9(a)に示す状態となる。
2−2.回転規制開始制御の処理手順
本実施形態に係る回転規制開始制御の処理手順について、図11のフローチャートを参照して説明する。以下に説明する各処理手順は、制御装置3の各機能部により実行される。なお、各係合装置の係合の状態は、移行時を除いて、現在の状態が維持されるように制御されているものとする。
回転規制制御の開始条件が成立すると(ステップ#21:Yes)、第一同期状態への移行制御を開始する(ステップ#22)。第一同期状態となるまでの間は(ステップ#23:No)、第一同期状態への移行制御を継続して実行する(ステップ#22)。そして、第一同期状態となると(ステップ#23:Yes)、第二ブレーキB2の直結係合した状態への移行制御を開始し(ステップ#24)、処理はステップ#25に進む。ステップ#25〜ステップ#31の各処理は、図7のステップ#02〜ステップ#08の各処理に対応するため、説明は省略する。なお、第二ブレーキB2の直結係合した状態への移行は、第一ブレーキB1が直結係合した状態に移行するまでの間に完了する。
2−3.回転規制終了制御の処理手順
本実施形態に係る回転規制終了制御の処理手順について、図12のフローチャートを参照して説明する。以下に説明する各処理手順は、制御装置3の各機能部により実行される。なお、各係合装置の係合の状態は、移行時を除いて、現在の状態が維持されるように制御されているものとする。
図12のステップ#41〜ステップ#46の各処理は、図8のステップ#11〜ステップ#16の各処理に対応するため、説明は省略する。第一ブレーキB1が解放した状態となるまでの間は(ステップ#47:No)、第一ブレーキB1の解放した状態への移行制御を継続して実行する(ステップ#46)。そして、第一ブレーキB1が解放した状態に移行すると(ステップ#47:Yes)、第二ブレーキB2のスリップ係合した状態への移行制御を開始する(ステップ#48)。
3.その他の実施形態
最後に、本発明に係る制御装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。
(1)上記第一及び第二の実施形態では、制御装置3による制御対象となる駆動装置1において、回転電機MGのロータが、変速機構13の変速入力軸としての中間軸Mと常時一体回転する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、回転電機MGのロータが固定されたロータ軸と中間軸Mとの間の動力伝達経路に他の装置(以下、「介在装置」という。)が介在する構成とすることも可能である。すなわち、回転電機MGと変速機構13との間の動力伝達経路に、介在装置が設けられた構成とすることができる。
例えば、上記の介在装置として、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータ(流体継手の一例)を備えた構成とすることができる。このような構成では、特定停止状態において、少なくともロックアップクラッチがスリップ係合した状態に制御される構成とすることができる。この場合、回転規制制御の開始条件の成立の有無に用いられる継続判定閾値を、トルクコンバータの冷却性能に基づき設定することが可能である。
また、上記の介在装置として、クラッチ(以下、「第四クラッチ」という。)を備えた構成とすることもできる。このような構成では、特定停止状態において、少なくとも第四クラッチがスリップ係合した状態に制御される構成とすることができる。この場合、第四クラッチをスリップ係合した状態に維持した状態で(すなわち、回転電機MGの回転速度をゼロより高く維持した状態で)、回転規制制御を実行して出力軸Oの回転を規制する構成とすることができる。また、このような構成では、第四クラッチを、連結解除制御や連結維持制御により係合の状態を制御する係合装置とすることも可能である。
(2)上記第一及び第二の実施形態では、変速出力軸としての出力軸Oが、直接、出力用差動歯車装置14に駆動連結された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、出力軸Oと出力用差動歯車装置14との間の動力伝達経路に、クラッチ(以下、「第五クラッチ」という。)を備えた構成とすることもできる。このような構成では、特定停止状態において、少なくとも第五クラッチがスリップ係合した状態に制御される構成とすることができる。この場合、回転規制制御を実行する際には、第五クラッチを直結係合した状態に制御する。
(3)上記第一及び第二の実施形態では、伝達状態制御部32によるスリップ係合制御として、切離用クラッチC0をスリップ係合した状態にする制御を実行する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、変速機構13が備える変速用係合装置であって、連結維持制御の実行により形成される変速段を形成するために係合した状態に制御される係合装置(例えば、第一クラッチC1)を、スリップ係合制御によりスリップ係合した状態に制御する構成とすることもできる。この場合、スリップ係合制御の実行により連結維持制御も同時に実行される構成となり、この場合の連結維持制御は、上記第一及び第二の実施形態とは異なり、係合装置をスリップ係合した状態にする制御となる。
(4)上記第一及び第二の実施形態では、特定停止状態の発生の検出に加えて、路面の勾配が予め定められた勾配判定閾値以上であって、更に、特定停止状態の継続時間が予め定められた継続判定閾値以上である場合に、回転規制制御の開始条件が成立したと判定される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、上記の各条件に加えて更に蓄電装置21の充電の必要性がある場合に、回転規制制御の開始条件が成立したと判定される構成とすることもできる。このような構成は、例えば、回転電機MGとは別の発電機(例えば、内燃機関Eのスタータ・オルタネータ)が車両に備えられている場合に適用することが可能である。
(5)上記第一及び第二の実施形態では、アクセル開度が予め定められた開度判定閾値以上となった場合に、回転規制制御の終了条件が成立したと判定される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、回転規制制御を開始してからの経過時間が予め定められた終了判定閾値以上となった場合に、回転規制制御の終了条件が成立したと判定される構成とすることもできる。
(6)上記第一及び第二の実施形態では、回転規制制御部31が、係合圧の指令値を目標値に向かって漸増させることで回転規制開始制御を実行し、又、係合圧の指令値を漸減させることで回転規制終了制御を実行する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、回転規制開始制御及び回転規制終了条件の少なくとも一方の実行に際して、回転規制制御部31が、係合圧の指令値をステップ的に変化させる構成とすることも可能である。
(7)上記第一及び第二の実施形態では、伝達状態制御部32が、係合制御として、切離用クラッチC0を直結係合した状態にする制御を実行する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、伝達状態制御部32が、係合制御として、切離用クラッチC0をスリップ係合した状態にする制御を実行する構成とすることも可能である。この場合でも、スリップ係合した状態の切離用クラッチC0を介して内燃機関Eから回転電機MGに伝達されるトルクにより、回転電機MGに発電を行わせることができる。
(8)上記第一及び第二の実施形態では、特定停止状態検出部30が、第三回転センサSe3の検出結果に基づき、車両が停止しているか否かの判定を行う構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、特定停止状態検出部30が、第二回転センサSe2の検出結果に基づき、車両が停止しているか否かの判定を行う構成とすることもできる。
(9)上記第一及び第二の実施形態では、係合制御が、回転規制制御の実行に加えて第二同期状態となったことを更なる条件として実行される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、係合制御が、連結解除制御と同様、回転規制制御の実行のみを条件として実行される構成とすることもできる。この場合、係合制御に際して、制御対象の係合装置の係合圧の指令値を、目標値に向かって漸増させる構成とすると好適である。
(10)上記第一及び第二の実施形態では、連結維持制御が、回転規制制御の終了の決定に加えて第一同期状態となったことを更なる条件として実行される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、連結維持制御が、スリップ係合制御と同様、回転規制制御の終了の決定のみを条件として実行される構成とすることもできる。この場合、連結維持制御に際して、制御対象の係合装置の係合圧の指令値を、目標値に向かって漸増させる構成とすると好適である。
(11)上記第一及び第二の実施形態では、制御装置3とは別に内燃機関制御ユニット23が備えられた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、内燃機関制御ユニット23が制御装置3に一体化された構成とすることも可能である。また、上記第一及び第二の実施形態で説明した制御装置3における機能部の割り当ては単なる一例であり、複数の機能部を組み合わせたり、1つの機能部を更に区分けしたりすることも可能である。
(12)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。