(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明を自動車の内燃機関に適用した第1実施形態について説明する。第1実施形態に係る内燃機関は、走行用の動力源として車両に搭載された内燃機関1と、内燃機関1の運転制御を行うECU2(電子制御装置)とを備えている。内燃機関1は、4ストロークの内燃機関である。
内燃機関1は、機関本体3に複数の気筒4と気筒4に対応して形成された燃焼室5とを有し、燃焼室5に空気を供給する吸気通路6と、燃焼室5から排気ガスを排出する排気通路7とを有している。吸気通路6には、上流側から吸気入口11、エアクリーナ(不図示)、スロットル弁12、過給機13、インタークーラー14、吸気マニホールド15、吸気ポート16が記載の順序で直列に設けられている。排気通路7には、上流側から排気ポート21、排気マニホールド22、触媒コンバータ23、消音器(不図示)、排気出口24が記載の順序で直列に設けられている。
内燃機関1の吸気通路6及び排気通路7の間には、EGR装置26が設けられている。EGR装置26は、排ガスの一部を吸気側に還流させ、その還流させた排ガスを各気筒4の燃焼室5に空気と共に供給する装置である。EGR装置26は、排気通路7と、吸気通路6における過給機13よりも上流側部分とを接続する第1EGR通路27を有している。詳細には、第1EGR通路27は、排気通路7における触媒コンバータ23よりも下流側部分と、吸気通路6におけるスロットル弁12と過給機13との間の部分とに接続されている。
第1EGR通路27には、排気通路7側から順に、通路を通過するガスを冷却する排気ガス冷却手段としてのEGRクーラー28と、通路を開閉する第1EGR弁29とが設けられている。第1EGR弁29の開度を制御することで、EGR率(燃焼室5に供給する新気量に対するEGRガス(排ガス)量の割合)を制御することが可能となっている。
また、EGR装置26は、第1EGR通路27における第1EGR弁29よりも吸気通路6側の部分と、吸気通路6における過給機13よりも下流側部分とを接続する第2EGR通路31を有している。詳細には、第2EGR通路31は、吸気通路6における過給機13とインタークーラー14との間の部分に接続されている。第2EGR通路31には、通路を開閉する第2EGR弁32が設けられている。
第1EGR通路27と第2EGR通路31とは、吸気通路6において、過給機13とインタークーラー14とを迂回するバイパス通路としても機能する。第2EGR弁32は、バイパス通路を開閉するバイパス弁として機能する。
第1EGR弁29が閉じられた状態では、排気通路7から吸気通路6へEGRガス(排気)は還流されない。第1EGR弁29が開かれ、かつ第2EGR弁32が閉じられた状態では、EGRガスは第1EGR通路27を通り、スロットル弁12と過給機13との間の部分から吸気通路6に供給される。第1EGR弁29及び第2EGR弁32が開かれた状態では排気は、排気は第1EGR通路27及び第2EGR通路31を通り、スロットル弁12と過給機13との間の部分、及びインタークーラー14と吸気マニホールド15との間の部分から吸気通路6に供給される。吸気通路6における過給機13の上流側及び下流側へのEGRガスの分配比は、第2EGR弁32の開度及び、吸気通路6における過給機13の上流側及び下流側の圧力差等によって決まる。
スロットル弁12は、電動式のスロットル弁12であり、その開度が図示しない電動モータによって制御される。
過給機13は、機械式過給機(スーパーチャージャー)13である。過給機13は、ルーツ式やリショルム式、スクロール式等の公知の機械式過給機であってよい。過給機13の回転軸13Aは、遊星歯車機構35を介して電動モータ36及び機関本体3の駆動軸であるクランク軸37に接続される。
過給機13の回転軸13Aは、第1クラッチ41を介して過給機13のケーシング42に連結されている。ケーシング42は、車体に対して変位不能に固定されている。第1クラッチ41は、ECU2によって制御され、接続状態で過給機13の回転軸13Aとケーシング42とを連結して過給機13の回転軸13Aの回転を規制し、切断状態で過給機13の回転軸13Aとケーシング42とを切断して過給機13の回転軸13Aの回転を許容する。第1クラッチ41は、通常時において接続を維持する常閉型であることが好ましい。例えば、第1クラッチ41は、電力によって駆動されるクラッチであり、電力の供給を受けたときに接続を遮断するとよい。
遊星歯車機構35は、外歯を有する太陽歯車44と、太陽歯車44と同軸に配置される内歯車45と、太陽歯車44及び内歯車45の双方に噛み合う複数の遊星歯車46と、各遊星歯車46を回転可能に支持すると共に、太陽歯車44と同軸に配置された遊星キャリア47とを有する。太陽歯車44は、過給機13の回転軸13Aに連結され、一体に回転する。内歯車45の外周部には外歯45Aが形成されており、この外歯45Aは電動モータ36の回転軸36Aに設けられたギヤ36Bと噛み合う。これにより、電動モータ36と内歯車45とは同期して回転する。遊星キャリア47は、動力伝達機構50を介してクランク軸37に接続される。
遊星歯車機構35の変速比を遊星歯車機構変速比ρ1とすると、遊星歯車機構変速比ρ1は、Zr/Zsで表される。ここで、Zrは内歯車45の歯数であり、Zsは太陽歯車44の歯数である。
動力伝達機構50は、第1プーリ51と、第2プーリ52と、第1プーリ51及び第2プーリ52に掛け渡されたベルト53と、第1プーリ51とクランク軸37との間に設けられた第2クラッチ54とを有している。第2プーリ52は、遊星キャリア47に同軸に結合され、一体となって回転する。第2クラッチ54は、接続及び切断がECU2によって制御される。
動力伝達機構50の変速比である動力伝達機構変速比ρ2は、第1プーリ51の直径を第2プーリ52の直径で除した値である。第2クラッチ54が接続された状態では、第2プーリ52はクランク軸37の回転数に動力伝達機構変速比ρ2を掛けた値の回転数で回転する。
内歯車45を固定した状態では、エンジン回転数(クランク軸37の回転数)をNEとすると、過給機13の回転軸13Aの回転数NSCは、NSC=(1+ρ1)×ρ2×NEで表される。
過給機13は、過給機13の回転軸13Aが回転しない停止モードと、過給機13の回転軸13Aが回転する第1〜第3駆動モードを取り得る。停止モードでは、第1クラッチ41が接続(ON)され、過給機13の回転軸13A及び太陽歯車44の回転が禁止される。停止モードでは、クランク軸37と電動モータ36とが所定の変速比をもって同期して回転する。これにより、電動モータ36がクランク軸37の駆動力を受けて発電することができる。また、電動モータ36の駆動力がクランク軸37に伝達され、クランク軸37の駆動をアシストすることができる。例えば、内燃機関1の始動時に、電動モータ36の駆動力をクランク軸37に伝達し、クランキングを行うことができる。
各駆動モードでは、第1クラッチ41が切断(OFF)され、過給機13の回転軸13A及び太陽歯車44の回転が許容される。第1駆動モードでは、内歯車45が固定され、過給機13の回転軸13Aは、クランク軸37に対して所定の変速比で回転する。第2駆動モードでは、電動モータ36及びクランク軸37の駆動力が遊星歯車機構35を介して過給機13に伝達される。この状態では、電動モータ36の回転数を制御することによって、過給機13の回転数を増減することができ、過給機13の回転数をクランク軸37の回転数に対して変化させることができる。第3駆動モードでは、遊星キャリア47が固定され、過給機13の回転軸13Aは、電動モータ36に対して所定の変速比で回転する。
過給機13は、回転軸13Aの回転数が変化することによって、吐出する空気量(以下、SC吐出量という)が変化する。
機関本体3には、吸気ポート16を開閉するための吸気バルブ61と、排気ポート21を開閉するための排気バルブ62と、吸気バルブ61を開閉駆動する吸気バルブ駆動機構63と、排気バルブ62を開閉駆動する排気バルブ駆動機構64とが設けられている。
吸気バルブ駆動機構63は、各気筒4の燃焼室5の実効圧縮比を可変的に制御し、アトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関1の運転を実現するために、吸気バルブ61の開弁期間の位相角を変化させるための公知のバルブ位相可変機構65(VTC)と、吸気バルブ61の吸気バルブ61のリフト量(最大開度)と開弁期間の角度幅とを変化させるための公知のバルブリフト可変機構66(VTEC)とを有する構成とされている。吸気バルブ61の開弁期間の角度幅は、吸気バルブ61の開弁開始から開弁終了までの開弁期間を、内燃機関1の出力軸であるクランク軸37の回転角度で表したものである。
図2に示すように、吸気バルブ駆動機構63のバルブリフト可変機構66は、気筒4毎に、2つの吸気カム69A、69Bを備えている。各吸気カム69A、69Bは、吸気側カムシャフト70と一体に回転するように吸気側カムシャフト70に結合されている。吸気カム69A、69Bのプロフィールは、吸気バルブ61のリフト量(最大開度)と開弁期間の角度幅とが互いに異なるように設定されている。吸気カム69A、69Bのプロフィールは、リフト量及び開弁期間の角度幅が互いに異なる。
大リフト吸気カム69Aによる吸気バルブ61の開弁期間の角度幅は、小リフト吸気カム69Bよる吸気バルブ61の開弁期間の角度幅よりも広く、180°に近い角度幅に設定されている。小リフト吸気カム69Bによる吸気バルブ61の開弁期間の角度幅は、180°よりも小さく、例えば、100°程度に設定されている。小リフト吸気カム69Bは、内燃機関1の低負荷運転用の吸気カムとして用いられ、大リフト吸気カム69Aは、内燃機関1の高負荷運転用の吸気カムとして用いられる。
吸気バルブ駆動機構63のバルブリフト可変機構66は、油圧を利用してロッカアーム71を介して吸気バルブ61を開閉駆動する吸気カムを、小リフト吸気カム69Bと大リフト吸気カム69Aとの間で選択する。このようなバルブリフト可変機構66の詳細は、公知であり、例えば特開2005−180306号公報等を参照されたい。
吸気バルブ駆動機構63のバルブ位相可変機構65は、吸気側カムシャフト70とクランク軸37との間に設けられ、クランク軸37に対する吸気側カムシャフト70の位相を変化させる。より詳細には、バルブ位相可変機構65は、吸気側カムシャフト70の端部に設けられ、タイミングチェーン(不図示)によって、クランク軸37に設けられたクランクスプロケット(不図示)と連結されている。バルブ位相可変機構65は、吸気側カムシャフト70の端部に設けられた第1部材(不図示)と、第1部材に対して回転可能に支持され、第1部材との間に油室を形成する第2部材(不図示)とを有する。第2部材の外周部には、スプロケット(不図示)が形成されている。第2部材のスプロケットは、クランク軸37に設けられたクランクスプロケットとタイミングチェーンによって連結されている。
バルブ位相可変機構65は、油室に作動油が供給されることによって、第1部材及び第2部材の相対角度が変化し、クランク軸37に対する吸気側カムシャフト70の位相を変化させる。バルブ位相可変機構65によって、小リフト吸気カム69B及び大リフト吸気カム69Aのそれぞれは、開弁期間の位相角を所定の範囲で連続的に変化させる。
このようなバルブ位相可変機構65の詳細は、公知であり、例えば、上記した特開2005−180306号公報を参照されたい。バルブ位相可変機構65は、クランク軸37の位相角に対する小リフト吸気カム69B及び大リフト吸気カム69Aの位相角を所定の範囲で連続的に変化させることができる機構であれば他の構成のものを採用してもよい。
上記のように吸気バルブ駆動機構63がバルブ位相可変機構65とバルブリフト可変機構66とを備えることで、各気筒4の燃焼室5の実効圧縮比を可変的に設定することが可能となっている。すなわち、バルブ位相可変機構65とバルブリフト可変機構66は、実効圧縮比可変機構を構成する。
小リフト吸気カム69Bによる吸気バルブ61の開閉駆動時には、吸気バルブ61の閉弁開始の位相角が、下死点の位相角よりも進角側の位相角になるように開弁期間の位相角を設定することによって、実効圧縮比が膨張比よりも小さくなるアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関1の運転が実現される。
大リフト吸気カム69Aによる吸気バルブ61の開閉駆動時には、吸気バルブ61の閉弁開始の位相角が、下死点の位相角よりも遅角側の位相角になるように開弁期間の位相角を設定することによって、実効圧縮比が膨張比よりも小さくなるアトキンソンサイクル(ミラーサイクル)での内燃機関1の運転が実現される。吸気バルブ61の開弁開始及び開弁終了が、それぞれ上死点、下死点とほぼ同じ位相角で行われる場合には、実効圧縮比が膨張比とほぼ同一となるオットーサイクルでの内燃機関1の運転が実現されることとなる。
さらに、吸気バルブ61を開閉駆動する吸気カム69A、69Bを、小リフト吸気カム69B及び大リフト吸気カム69Aの一方から他方に切り替えることによって、実効圧縮比を増加又は減少させることもできる。この場合、小リフト吸気カム69Bを使用する場合よりも大リフト吸気カム69Aを使用する場合の方が、実効圧縮比をより高めることができる。
排気バルブ62は、機関本体3に設けられた排気バルブ駆動機構64によって駆動される。排気バルブ駆動機構64は、内燃機関1のクランク軸37に連動して回転する(クランク軸37の2回転毎に1回転する)排気側カムシャフト72に、各排気バルブ62に対応して排気側カムシャフト72に設けられた排気カム73を有している。なお、排気カム73のプロフィールは、例えば大リフト吸気カム69Aのプロフィール(図3の実線cのパターン)と同様のパターンに設定され、排気バルブ62の開弁期間の角度幅が、各気筒4のピストンの下死点の位相角と上死点の位相角との間の角度差(180deg)よりも若干大きい角度幅に設定される。
また、機関本体3には、各燃焼室5に燃料を噴射する燃料噴射装置74が設けられている。なお、他の実施形態では、燃料噴射装置74は吸気ポート16等の吸気通路6に燃料を噴射するようにしてもよい。また、機関本体3の各気筒4の燃焼室5には、圧縮される混合気に点火する点火プラグ75が設けられている。
以上が本実施形態の内燃機関1(機関本体3及びこれに付帯する補機等)の機構的な構成である。
ECU2は、CPU、RAM、ROM等を含む電子回路ユニットであり、スロットル弁12、吸気バルブ駆動機構63のバルブ位相可変機構65及びバルブリフト可変機構66(実効圧縮比可変機構)、EGR装置26の第1EGR弁29及び第2EGR弁32、過給機13の第1クラッチ41、動力伝達機構50の第2クラッチ54、電動モータ36、燃料噴射装置74及び点火プラグ75の動作を制御する。
ECU2には、各種のセンサの検出信号が入力される。本実施形態のシステムでは、以下に示すような、クランク角センサ81、アクセルセンサ(不図示)、空気流量センサ83、第1吸気圧センサ84、第2吸気圧センサ85、排気圧センサ86等が設けられており、これらのセンサの検出信号がECU2に入力される。
クランク角センサ81は、機関本体3にクランク軸37に隣接して設けられ、クランク軸37の回転数(回転速度)を検出するための信号(詳しくは、クランク軸37の所定の回転角度毎に発生するパルス信号)を出力する。アクセルセンサは、図示しないアクセルペダルに設けられ、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量(操作量)をアクセル操作量として検出する。
空気流量センサ83は、吸気通路6のスロットル弁12よりも上流側に設けられ、吸気通路6を流れる空気の流量を検出する。第1吸気圧センサ84は、吸気通路6におけるスロットル弁12と過給機13との間の部分に設けられ、この部分を通過するガスの圧力を検出する。第2吸気圧センサ85は、吸気通路6におけるインタークーラー14(過給機13)と吸気マニホールド15との間の部分に設けられ、この部分を通過するガスの圧力を検出する。排気圧センサ86は、排気通路7における排気マニホールド22と触媒コンバータ23との間の部分に設けられ、この部分を通過するガスの圧力を検出する。
次に、本実施形態の内燃機関1の作動を説明する。ECU2は、図3のフローチャートに示す制御処理と、図4のフローチャートに示す制御処理とを実行することで、内燃機関1の運転制御を行う。
図3に示す制御処理は、内燃機関1の各気筒4の燃焼室5に供給されるEGRガス(排気)及び新気を含むガスを制御するために、吸気バルブ駆動機構63の動作状態と、EGR装置26の第1EGR弁29及び第2EGR弁32の開度と、スロットル弁12の開度と、第1クラッチ41及び第2クラッチ54の接続・切断と、過給機13を駆動する電動モータ36の回転数とを制御する。
吸気バルブ駆動機構63の動作状態の制御は、吸気バルブ61を開閉駆動する吸気カム69A、69Bの選択及び吸気カム69A、69Bの位相の制御であり、各気筒4の燃焼室5の目標実効圧縮比に基づいて行われる。第1EGR弁29及び第2EGR弁32の開度の制御は、目標EGR率に基づいて行われる。第1クラッチ41及び第2クラッチ54の接続・切断、過給機13を駆動する電動モータ36の回転数の制御は、過給機13の吐出量である目標SC吐出量に基づいて行われる。
図3のフローチャートに示す制御処理では、ECU2は、まず、ステップS1で、クランク角センサ81の検出信号に基づいてエンジン回転数を取得し、アクセルセンサの検出信号に基づいてアクセル開度を取得する。
次に、ECU2は、ステップS2において、エンジン回転数とアクセル開度とに基づいて内燃機関1の要求トルクを設定する。要求トルクは、例えば、予め設定された所定のマップを参照し、エンジン回転数とアクセル位置とに基づいて設定される。要求トルクは、図5に示すように、例えば、エンジン回転数が増加するほど増加し、かつアクセル開度が増加するほど増加するように設定される。
ECU2は、ステップS3において、エンジン回転数と要求トルクとに基づいて、内燃機関1の運転領域を決定する。運転領域は、図6に示すように、エンジン回転数と要求トルクとに応じて、領域A、領域B、領域Cのいずれかに設定される。要求トルクが小さい状態では運転領域は低負荷領域である領域Aに設定され、要求トルクが大きい状態では運転領域は高負荷領域である領域Bに設定され、要求トルクが中程度の状態では運転領域は領域Aと領域Bに挟まれた中負荷領域として領域Cに設定される。領域Aは、過給機13の回転軸13Aの回転が禁止される運転領域であり、領域B及び領域Cは過給機13の回転軸13Aの回転が許容される運転領域である。
エンジン回転数が一定の場合には、要求トルクが小さい状態から大きい状態に変化すると、運転領域は、領域Aから、領域Cを経て領域Bに変化する。エンジン回転数が高くなるにつれて、運転領域は領域Aが拡張されて、領域Bが縮小される。これにより、要求トルクが一定の場合には、エンジン回転数が高くなるにつれて、運転領域は、領域Bから、領域Cを経て領域Aに変化する。
ECU2は、ステップS4において、ステップS3で設定された運転領域が領域Aであるか否かを判定する。判定がYesの場合にはステップS5に進み、ECU2は第1クラッチ41を接続するように制御し、第2クラッチ54を接続するように制御する。第1クラッチ41が接続されることによって、過給機13の回転が禁止される。
また、ECU2は、図8に示すマップを参照し、要求トルクに基づいて第2EGR弁32の開度を設定する。図8に示すように、マップは要求トルクと第2EGR弁32の開度との関係を規定する。運転領域が領域Aにあるときには第2EGR弁32の開度は要求トルクに関わらず全開であり、運転領域が領域B又はCにあるときには第2EGR弁32の開度は要求トルクに関わらず全閉となる。なお、図8に示すマップは、エンジン回転数に応じて変化する運転領域に対応して変化する。エンジン回転数が増加すると、領域C及び領域Bは右側(要求トルクが増加する側)にずれ、各領域に対応して第2EGR弁開度を表すグラフもずれる。
運転領域が領域Aにあるときには、第2EGR弁32が全開となることによって、スロットル弁12を通過した新気及びEGR通路から供給されるEGRガスを含むガスは、第1EGR通路27及び第2EGR通路31によって構成されるバイパス通路及び第2EGR弁32を通過し、過給機13及びインタークーラー14を迂回して燃焼室5に供給される。
第2クラッチ54が接続されることによって、クランク軸37と遊星歯車機構35の遊星キャリア47とは動力伝達機構50を介して接続される。領域Aにおいては、第1クラッチ41が接続され、太陽歯車44が固定されるため、電動モータ36とクランク軸37との間で駆動力の伝達が可能になる。そのため、電動モータ36の駆動力をクランク軸37に伝達した機関本体3のアシスト(クランキング等)や、クランク軸37の駆動力を電動モータ36に伝達した発電が可能になる。なお、他の実施形態では、領域Aにおいて第2クラッチ54を切断してもよい。
次に、ECU2は、ステップS6において、目標新気量、目標EGR率、目標実効圧縮比を設定する。目標新気量は、スロットル弁12を通過して燃焼室5に流れる新気量の目標値である。新気量とEGRガス量とを合計した値を空気量とする。
図7(A)は要求トルクと目標新気量との関係を規定するマップであり、図7(B)は要求トルクと目標EGR率との関係を規定するマップであり、図7(C)は要求トルクと目標実効圧縮比との関係を規定するマップである。図7の各図において所定の要求トルクに対して引いた実線及び破線は、エンジン回転数を所定の値とした場合の運転領域の境界を示す。
ECU2は、図7(A)に示すマップを参照し、要求トルクに基づき、要求トルクを実現するために必要な目標新気量を設定する。図7(A)に示すように、要求トルクが大きいほど、目標新気量が大きくなるようにマップは設定されている。なお、目標新気量は、EGRガスを含まない空気の目標量であり、スロットル弁12を通過する空気の目標量である。
ECU2は、図7(B)に示すマップを参照し、要求トルクに基づきEGR率の目標値である目標EGR率を設定する。図7(B)に示すように、要求トルクが小さい値から大きい値に変化するときに、要求トルクが比較的小さい領域では要求トルクの増加に応じて目標EGR率が増加し、その後、要求トルクが中程度の領域では要求トルクの増加に応じて目標EGR率が減少し、その後、要求トルクが比較的大きい領域では要求トルクの増加に応じて目標EGR率が再び増加するようにマップは設定されている。要求トルクが比較的小さい領域は運転領域が領域Aに対応し、要求トルクが中程度の領域は運転領域が領域Cに対応し、要求トルクが比較的大きい領域は運転領域が領域Bに対応する。
ECU2は、図7(C)に示すマップを参照し、要求トルクに基づき実効圧縮比の目標値である目標実効圧縮比を設定する。図7(C)に示すマップの基本的な傾向は、要求トルクが中程度で目標実効圧縮比が最も大きくなるように設定されている。目標実効圧縮比が最も大きくなるときの要求トルクは、運転領域が領域Bにあり、比較的要求トルクが小さい範囲に対応する。
次に、ECU2は、ステップS7において、ステップS6で設定した目標新気量の補正を行う。新気にEGRガスが導入されると、ノッキングが抑制され、熱効率が向上することから新気量を低減することができる。そのため、EGR率に応じて新気量を低減し、要求トルクに応じた新気量にする。目標新気量の補正は、EGR率とステップS6で設定した目標新気量とに基づいて行う。例えば、EGR率と目標新気量補正値との関係を規定するマップを参照し、EGR率に基づいて目標新気量補正値を設定する。そして、ステップS6で設定した目標新気量から目標新気量補正値を減算することによって、補正後の目標新気量を設定するとよい。他の方法では、EGR率、目標新気量、及び補正後の目標新気量の関係を規定するマップを参照し、EGR率及び目標新気量に基づいて補正後の目標新気量を設定するようにしてもよい。
次に、ECU2は、ステップS8において、図9に示す、目標新気量、第1吸気圧センサ84が検出する第1吸気圧、エンジン回転数、及びスロットル弁12の開度の目標値である目標スロットル開度の関係を規定するマップを参照し、目標新気量、第1吸気圧、及びエンジン回転数に基づいて目標スロットル開度を設定する。ここで使用される目標新気量は、ステップS7において設定された補正後の目標新気量である。図9に示すように、目標新気量が大きいほど目標スロットル開度が増加し、また、第1吸気圧が大きいほど目標スロットル開度が減少するようにマップは設定されている。また、エンジン回転数が大きいほど目標スロットル開度が増加するようにマップが設定されている。
また、ECU2は、ステップS8において、図10(A)、(B)に示す、目標EGR率と、第1吸気圧又は第2吸気圧と、第1EGR弁29の開度である目標第1EGR弁開度との関係を規定するマップを参照し、目標EGR率及び第2吸気圧に基づいて目標第1EGR弁開度を設定する。運転領域が領域Aである場合には、図10(A)に示すマップを使用し、運転領域が領域B又はCである場合には、図10(B)に示すマップを使用する。図10(A)、(B)に示すように、目標EGR率が大きいほど目標第1EGR弁開度が増加し、また、第1吸気圧又は第2吸気圧の圧力が低いほど(負圧が大きいほど)目標第1EGR弁開度が減少するように設定されている。
また、ECU2は、ステップS8において、目標実効圧縮比を実現するための、バルブリフト可変機構66(VTEC)及びバルブ位相可変機構65(VTC)の駆動量を設定する。ECU2は、目標実効圧縮比に基づいて、大リフト吸気カム69A及び小リフト吸気カム69Bの一方を選択し、選択した吸気カムを使用するためのバルブリフト可変機構66の駆動量を設定する。また、ECU2は、目標実効圧縮比と選択した吸気カム69A、69Bとに基づいて、バルブ位相可変機構65の駆動量を設定する。
また、ECU2は、設定した目標スロットル開度、目標第1EGR弁開度、バルブリフト可変機構66(VTEC)及びバルブ位相可変機構65(VTC)の駆動量を実現するために、スロットル弁12、第1EGR弁29、バルブリフト可変機構66及びバルブ位相可変機構65を制御する。
ステップS4での判定がNoの場合、すなわち運転領域が領域B又は領域Cである場合、ECU2はステップS9において、ステップS3で設定された運転領域が領域Bであるか否かを判定する。判定がYesの場合にはステップS10に進み、第1クラッチ41を切断するように制御し、第2クラッチ54を接続するように制御する。第1クラッチ41が切断されることによって、過給機13の回転が許容される。
第2クラッチ54が接続されることによって、クランク軸37と遊星歯車機構35の遊星キャリア47とは動力伝達機構50を介して接続される。これにより、動力伝達機構50及び遊星歯車機構35を介してクランク軸37、電動モータ36の回転軸36A、及び過給機13の回転軸13Aの間で駆動力の伝達が可能になる。
また、ECU2は、図8に示すマップを参照し、要求トルクに基づいて第2EGR弁32の開度を設定する。図8に示すように、運転領域が領域Bにあるときには第2EGR弁32は要求トルクに関わらず全閉に設定される。
このように領域Bでは、第2EGR弁32が全閉に制御されることによって、スロットル弁12を通過した新気は、全て過給機13及びインタークーラー14を通過する流路を流れる。また、EGRガスは、全て過給機13よりも上流側から吸気通路6に供給される。
次に、ECU2は、ステップS11において、目標新気量、目標EGR率、目標実効圧縮比を設定する。ステップS11での目標新気量、目標EGR率、目標実効圧縮比の設定方法は、ステップS6での設定方法と同様である。
次に、ECU2は、ステップS12において、ステップS11で設定した目標新気量の補正を行う。ステップS11の目的及び処理は、ステップS7と同様である。
次に、ECU2は、ステップS13において、スロットル弁12の開度、第1EGR弁29の開度、バルブリフト可変機構66(VTEC)及びバルブ位相可変機構65(VTC)の駆動量を設定する。ステップS13での、スロットル弁12の開度、第1EGR弁29の開度、バルブリフト可変機構66(VTEC)及びバルブ位相可変機構65(VTC)の駆動量の設定方法は、ステップS8での設定方法と同様である。なお、スロットル開度の設定は、ステップS12において補正した目標新気量に基づいて行う。
次に、ECU2は、ステップS14において、図7(D)に示す要求トルクと目標SC吐出量との関係を規定するマップを参照し、要求トルクに基づき、過給機13の吐出量の目標値である目標SC吐出量を設定する。図7(D)に示すように、要求トルクが領域Aに対応する範囲では目標SC吐出量は0であり、要求トルクが領域C及び領域Bに対応する範囲では目標SC吐出量は要求トルクの増加に応じて増加するようにマップは設定されている。領域Cと領域Bでは、要求トルクに対する目標SC吐出量の増加率が異なり、領域Cの方が領域Bよりも増加率が大きく設定されている。
また、ECU2は、目標SC吐出量に基づいて過給機13の出口圧の目標値である目標出口圧を設定する。目標SC吐出量の増加するほど、目標出口圧が増加するように設定される。
次に、ECU2は、ステップS15において、ステップS14で設定した目標SC吐出量及び目標出口圧の補正を行う。第2EGR弁32の開度が減少し、EGRガスが過給機13を通過するようになると、過給機13を通過するガスの内で新気の割合が低下する。これにより、燃焼室5に供給される新気量が低下する。そのため、過給機13を通過するEGRガス量の増加に応じて、目標SC吐出量及び目標出口圧を増加させるべく、補正を行う。目標SC吐出量及び目標出口圧の補正は、EGR率、第2EGR弁32の開度、及びステップS14で設定した目標SC吐出量及び目標出口圧に基づいて行う。例えば、EGR率及び第2EGR弁32の開度と目標SC吐出量補正値との関係を規定するマップを参照し、EGR率及び第2EGR弁32の開度に基づいて目標SC吐出量補正値を設定する。そして、ステップS14で設定した目標SC吐出量に目標SC吐出量補正値を加算することによって、補正後の目標SC吐出量を設定する。EGR率及び第2EGR弁32の開度と目標SC吐出量補正値との関係を規定するマップでは、EGR率が増加するほどSC吐出量補正値が増加し、第2EGR弁32の開度が増加するほどSC吐出量補正値が減少するように設定されている。
他の方法では、EGR率、第2EGR弁32の開度、目標SC吐出量及び補正後の目標SC吐出量の関係を規定するマップを参照し、EGR率、第2EGR弁32の開度、及び目標SC吐出量に基づいて補正後の目標新気量を設定するようにしてもよい。補正後の目標出口圧は、補正後の目標SC吐出量に基づいて設定するとよい。
補正後の目標出口圧は、補正後の目標SC吐出量が増加するほど、増加するように設定される。
次に、ECU2は、ステップS16において目標SC吐出量を実現するために、目標SC吐出量制御を行う。目標SC吐出量制御は、図4に示すフローチャートに従って実行される。
図4に示すように、ECU2は、最初にステップS31において、ステップS15で設定された補正後の目標SC出口圧に基づいて、過給機13の回転軸13Aの回転数の目標値である目標SC回転数を設定する。目標SC回転数の設定は、目標SC出口圧と目標SC回転数との関係を規定したマップを参照して行われる。マップでは、目標SC出口圧が高くなるほど、目標SC回転数が高くなるように設定されている。
次に、ECU2は、ステップS32において、目標SC回転数及び目標SC出口圧に基づいて、過給機13の体積効率の推定値であるSC体積効率推定値を算出する。目標SC回転数の設定は、図11に示す、目標SC回転数、目標SC出口圧、及びSC体積効率推定値の関係を規定したマップに基づいて行われる。マップでは、目標SC回転数が高くなるほど、或いは目標SC出口圧が高くなるほど、SC体積効率推定値が高くなるように設定されている。
次に、ECU2は、ステップS33において、目標SC回転数とSC体積効率推定値とに基づいて過給機13の吐出量の推定値であるSC吐出量推定値を算出する。
次に、ECU2は、ステップS34において、ステップS33で推定したSC吐出量推定値と目標SC吐出量とが一致するか否かを判定する。なお、SC吐出量推定値が目標SC吐出量に一致するというのは、厳密に等しいということを意味するものではなく、それらの差の絶対値がある所定値以下に収まる状態を意味する。
このステップS34での判定結果がYesである場合には、ECU2は、ステップS35において、目標SC回転数を実現するための電動モータ36の回転数である目標モータ回転数を設定し、この目標モータ回転数を実現するように電動モータ36を制御する。
このステップS34での判定結果がNoである場合には、ステップS36において目標SC回転数を変更する。目標SC回転数の変更は、SC吐出量推定値が目標SC吐出量より大きい場合には目標SC回転数を所定値だけ減少させ、SC吐出量推定値が目標SC吐出量より小さい場合には目標SC回転数を所定値だけ増加させることによって行う。ステップS36の処理を行った後は、ステップS32に戻る。
ステップS36、ステップS32、及びステップS33の処理は、ステップS34での判定結果がYesとなるまで繰り返される。これにより、過給機13の吐出量が、目標SC吐出量と等しくなるように制御される。
ステップS9での判定がNoの場合、すなわち運転領域が領域Cである場合、ECU2は以下のステップS17〜S22及びS16に従って、差圧制御モードで過給機13を制御する。ECU2は、ステップS17において、第1クラッチ41を切断するように制御し、第2クラッチ54を接続するように制御する。第1クラッチ41が切断されることによって、過給機13の回転が許容される。これにより、動力伝達機構50及び遊星歯車機構35を介してクランク軸37、電動モータ36の回転軸36A、及び過給機13の回転軸13Aの間で駆動力の伝達が可能になる。
また、ECU2は、図8に示すマップを参照し、要求トルクに基づいて第2EGR弁32の開度を設定する。図8に示すように、運転領域が領域Bにあるときには第2EGR弁32は要求トルクに関わらず全閉に設定される。
次に、ECU2は、ステップS18において、目標EGR率、目標実効圧縮比を設定する。ステップS18での目標EGR率、目標実効圧縮比の設定方法は、ステップS6での設定方法と同様である。
次に、ECU2は、ステップS19において、第1EGR弁29の駆動量を設定する。ステップS19での、第1EGR弁29の駆動量の設定方法は、ステップS8での設定方法と同様である。
また、ECU2は、ステップS19において、バルブリフト可変機構66(VTEC)及びバルブ位相可変機構65(VTC)の駆動量を設定する。バルブリフト可変機構66(VTEC)及びバルブ位相可変機構65(VTC)の駆動量は、ステップS18において設定した目標実効圧縮比を達成し、かつ吸気バルブ61の開弁開始時が排気バルブ62の開弁期間と重なるように設定される。すなわち、吸気バルブ61及び排気バルブ62の開弁期間に、両方が共に開いた期間であるバルブオーバーラップが設定されるように駆動量が設定される。
次に、ECU2は、ステップS20において、排気圧センサ86の検出信号に基づいて排気圧を取得する。
次に、ECU2は、ステップS21において、ステップS20で取得した排気圧に基づいて、目標SC出口圧を設定し、更に目標SC出口圧に基づいて目標SC吐出量を設定する。目標SC出口圧は、排気圧より大きく、かつ排気圧との差が所定値となるように設定される。すなわち、目標SC出口圧は、排気圧より所定値だけ大きい値に設定される。
目標SC出口圧と排気圧との差である所定値は、吸気バルブ61及び排気バルブ62が共に開いくバルブオーバーラップの期間において、吸気通路6から燃焼室5に供給されるガスが、燃焼室5を通過して排気通路7に流れる、いわゆる吹き抜けが発生しない値に設定され、0より大きい所定の範囲内の値に設定される。この所定値は、吸気ポート16及び排気ポート21の形状や大きさ、位置、バルブオーバーラップの期間等に影響を受け、最適値が変化する。
ECU2は、目標出口圧に基づいて過給機13の目標SC吐出量を設定する。目標出口圧が増加するほど、目標SC吐出量が増加するように設定される。
次に、ECU2は、ステップS21において、目標SC吐出量とEGR率とに基づいて目標新気量を設定し、目標新気量に基づいてスロットル弁12の開度の目標値である目標スロットル開度を設定する。目標SC吐出量は、目標新気量と、目標新気量にEGR率を掛けて算出されるEGRガス量とを加算したものであるため、この関係から目標SC吐出量とEGR率とに基づいて目標新気量を算出することができる。目標スロットル開度の設定は、ステップS8と同様に、図9に示すマップを参照し、目標新気量及び第1吸気圧に基づいて目標スロットル開度を設定する。
次に、ECU2は、ステップS16に進み、領域Bの場合と同様に図4に示す手順にしたがって、目標SC吐出量に基づいて電動モータ36の回転数を設定し、電動モータ36を制御する。
以下に、本実施形態に係る内燃機関1の作動について説明する。この内燃機関1では、要求トルク及びエンジン回転数に基づいて、運転領域が領域A〜Cのいずれかに設定され、各領域に応じて過給機13、EGR装置26、吸気バルブ駆動機構63が制御される。
運転領域が領域Aにあるときには、過給機13の回転が禁止される。このとき、バイパス弁としての第2EGR弁32が開かれるため、スロットル弁12を通過した新気は、第1EGR通路27の一部と第2EGR通路31とによって構成されるバイパス通路を通過し、過給機13を迂回して流れる。EGRガスは、第1EGR通路27及び第2EGR通路31を通過して過給機13の下流側部分から吸気通路6に供給される。
領域Aでは、要求トルクの増加に応じて新気量、実効圧縮比が増加するように制御され、内燃機関1の出力が増加する。EGR率は、領域Aにおける要求トルクが小さい範囲では要求トルクの増加に応じて増加し、領域Aにおける要求トルクが大きい範囲では要求トルクの増加に応じて減少する。これにより、領域Aにおける要求トルクが中程度の範囲では、EGRガス量を増加させてポンピングロスを低減し、要求トルクが大きい範囲では、EGRガス量を低減して出力の増加を図ることができる。
運転領域が領域Bにあるときには、過給機13の回転が可能になる。領域Bでは、第2EGR弁32は、全閉になり、新気及びEGRガスは全て過給機13を通過するようになる。領域Bでは、要求トルクの増加に応じて新気量及びEGR率が増加し、実効圧縮比が減少するように制御され、内燃機関1の出力が増加する。これにより、要求トルクが増加して新気量が増加しても、EGR率が増加、及びバルブ位相可変機構65及びバルブリフト可変機構66による実効圧縮比の低下によって、ノッキングの発生が抑制される。また、EGRクーラー28によってEGRガスを冷却し、吸気温度を低下させることによって、ノッキングの抑制効果を一層向上させることができる。
このように、EGR率は、領域Aではポンピングロスの低減を目的として制御され、領域B及びCではノッキングの抑制を目的として制御される。また、実効圧縮比は、領域A及びCでは熱効率の向上を目的として制御され、領域Bではノッキングの抑制を目的として制御される。新気量は、EGR率に応じて補正され、低減されるため、新気による内燃機関1の過度な冷却が抑制され、熱効率の低下が抑制される。
領域Bにおいて、過給機13の吐出量がEGR率及び第2EGR弁32の開度に応じて補正されるため、要求トルクに応じた新気量が確保される。過給機13の吐出量が設定された場合において、EGRガスが過給機13を通過すると、EGRガスの流量分だけ過給機13を通過するべき新気量が低下することになるが、EGR率及び第2EGR弁32の開度に応じて過給機13の吐出量を補正することにより、所期の新気量が確保される。
領域Cでは、過給機13は差圧制御モードによって制御される。差圧制御モードでは、吸気通路6の過給機13よりも下流側部分のガス圧が、排気通路7の触媒コンバータ23よりも上流側部分のガス圧よりも所定の範囲で高くなるように設定される。そして、吸気バルブ61及び排気バルブ62の開弁期間に、共に開弁するバルブオーバーラップが設定されるため、吸気通路6から燃焼室5に流入する吸気によって、燃焼室5内の排気を排気通路7へと押し出す掃気が可能になる。このとき、吸気通路6の過給機13よりも下流側部分のガス圧と、排気通路7の触媒コンバータ23よりも上流側部分のガス圧との差圧が所定の範囲内に収まるように過給機13の吐出量(出口圧)が設定されるため、吸気の吹き抜けが抑制される。
(第2実施形態)
第2実施形態では、図12に示すように、第1実施形態の内燃機関1の構成に加えて、吸気通路6におけるインタークーラー14と吸気マニホールド15の間の部分と、排気通路7における排気マニホールド22と触媒コンバータ23との間の部分とを接続する冷却用通路91が設けられている。冷却用通路91には、通路を開閉する開閉弁92が設けられている。
開閉弁92は、運転状態が領域Cにあるとき、すなわち過給機13が差圧制御モードで制御されるときに開かれる。過給機13が差圧制御モードで制御されるときに、開閉弁92が開かれることによって、冷却用通路91の両端部には所定の差圧が生じ、吸気通路6におけるインタークーラー14及び吸気マニホールド15間の部分のガスが冷却用通路91を通って排気通路7における排気マニホールド22及び触媒コンバータ23間の部分に流れる。冷却用通路91を通過したガスが排気通路7に流入し、排気と混合されることによって、排気通路7を流れるガスの温度が低下する。開閉弁92は開度変更が可能であり、冷却用通路91を流れるガスの流量を調整することができるため、開閉弁92の開度変更によって排気通路7を流れるガスの温度を調整し、触媒コンバータ23の温度調整が可能になる。
開閉弁92が開くと、吸気通路6から燃焼室5に流れるガスの流量が低下するため、開閉弁92の開度の増加に応じて、SC吐出量が増加し、かつ新気量が増加するように、過給機13(電動モータ36)及びスロットル弁12を制御するとよい。