図1は、ネットワーク設計装置を含むネットワークの一例を示す構成図である。ネットワーク設計装置1は、LAN(Local Area Network)などの監視制御用ネットワークNWを介して、複数のWDM装置20と接続されている。ネットワーク設計装置1は、例えばNMS(Network Management System)などのネットワーク管理装置と同一の機能を備えるものであってもよい。
WDM装置20は、例えば ROADM(Reconfigurable Optical Add−Drop Multiplexer)などと称される光分岐挿入装置である。各WDM装置20は、互いに光ファイバにより接続され、例えばリング型のネットワーク2を構成する。なお、ネットワーク2は、図1に示された形態に限定されず、例えばメッシュ型の形態であってもよい。
各WDM装置20は、任意の波長λin1,λin2,λin3・・・の光信号が入力され、該光信号を波長多重し、他のWDM装置20に波長多重光信号として伝送する。また、各WDM装置20は、他のWDM装置20から伝送された波長多重光信号から、任意の波長λout1,λout2,λout3・・・の光信号を分離して出力する。
ネットワーク設計装置1は、ネットワーク2に設けられた複数のパスに、各WDM装置20に入出力される光信号の波長を割り当てる。これにより、任意のWDM装置20の間において所定波長の光信号が伝送される。なお、以降の説明において、外部からWDM装置20への光信号λin1,λin2,λin3・・・の入力を「挿入」と表記し、WDM装置20から外部への光信号λout1,λout2,λout3・・・の出力を「分岐」と表記する。また、複数の波長の光信号を多重することにより得られる信号を「波長多重光信号」と表記し、所定波長の光信号が、WDM装置20に挿入された後、他のWDM装置20から分岐されるまでに伝送される通信経路を「パス」と表記する。
WDM装置20が波長多重光信号に多重可能な波長の総数(上限数)は、使用される波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)の性能などに応じて有限(例えば88波)である。このため、隣り合う2台のWDM装置20を通るパス数が、多重可能な波長の総数を超える場合、当該WDM装置20間の伝送路、つまり光ファイバ、及び、WDM装置20自体の増設が必要とされる。
図2には、同一波長を使用する2本のパスが設けられたネットワークの一例が示されている。このネットワークにおいて、WDM装置(A)〜(D)20が設けられており、WDM装置(A)20は、光ファイバ3を介して、他のWDM装置(B)〜(D)20と接続されている。ここで、WDM装置(A)20は、WDM装置(C)20と接続される方路#1、WDM装置(D)20と接続される方路#2、及び、WDM装置(B)20と接続される方路#3を有する。
このネットワークは、WDM装置(C)20、WDM装置(A)20、及びWDM装置(D)20を経由する複数のパスP1〜Pnが設けられており、複数のパスP1〜Pnには、複数の波長λ1〜λnがそれぞれ割り当てられているとする。波長λ1〜λnが波長多重光信号に多重可能な全ての波長であるとすると、WDM装置(B)20、WDM装置(A)20、及びWDM装置(D)20を経由する新たなパスPiを設ける場合に、WDM装置(A)20、及びWDM装置(D)20間において波長が不足する。
このため、WDM装置(A)20、及びWDM装置(D)20は、伝送路が二重に設けられている。すなわち、WDM装置(A)20、及びWDM装置(D)20は、2組の一対の光ファイバ3を介して接続されている。なお、本例において、波長多重光信号は、一対の光ファイバ3によって双方向伝送されるが(図3中の矢印参照)、これとは異なり、単一の光ファイバ3によって双方向伝送する一芯双方向方式を採用してもよい。
また、WDM装置(A)20、及びWDM装置(D)20は、伝送路だけでなく、波長多重光信号を伝送するための伝送ユニットも冗長化されている。図3は、WDM装置(A)20の機能構成を示す構成図である。
WDM装置20は、各方路#1〜#3に対応する複数の伝送ユニット20a〜20dと、制御部21と、複数のDEMUX部22と、複数のMUX部23と、複数の送受信器(TP)24とを有する。複数の伝送ユニット20a〜20dは、それそれ、増幅部201、及びスイッチ部202を含む。なお、図3には、伝送ユニット20a,20bのみについて、増幅部201、及びスイッチ部202が示されているが、他の伝送ユニット20c,20dも同様の構成を有する。また、複数のDEMUX部22と、複数のMUX部23には、伝送ユニット20a,20bと接続されているもののみが示されているが、他の伝送ユニット20c,20dにも同様に、DEMUX部22及びMUX部23が接続されている。
増幅部201は、それぞれ、方路#1,#2から入力された波長多重光信号を増幅する入力側増幅器201b、及び、方路#1,#2に出力される波長多重光信号を増幅する出力側増幅器201aを含む。また、スイッチ部202は、それぞれ、波長選択スイッチ(WSS)202a、及び光スプリッタ(SPL)202bを有する。
光スプリッタ202bは、入力ポートに入力された波長多重光信号を分岐して、複数の出力ポートから出力する。なお、本例では、分岐手段として光スプリッタ21を用いているが、これに限定されず、波長選択スイッチなどを用いて、所定の波長の光信号のみを分岐してもよい。
光スプリッタ202bの入力ポートは、入力側増幅器201bと接続され、一方、複数の出力ポートは、DEMUX部22、他方路の波長選択スイッチ201aと接続されている。光スプリッタ202bは、入力側増幅器201bから入力された波長多重光信号を、DEMUX部22、他方路の波長選択スイッチ202aにそれぞれ出力する。
波長選択スイッチ202aは、複数の入力ポートから、波長が異なる複数の光信号が入力され、選択された波長の光信号を、波長多重光信号に多重して出力ポートから出力する。波長の選択は、制御部21からの設定に基づいて、入力ポートごとに行われる。
波長選択スイッチ202aの複数の入力ポートは、MUX部23、及び、他方路の光スプリッタ202bと接続され、一方、出力ポートは、出力側増幅器201aと接続されている。波長選択スイッチ22は、MUX部23から挿入された光信号と、選択した波長の光信号とを多重し、出力側増幅器201aを介して、対応する方路に出力する。
DEMUX部22は、光信号を分岐するため、スプリッタ202bの出ry九ポートと接続され、所定の方路より入力された波長多重光信号を、各波長の光信号に分離して外部に出力する。DEMUX部22は、複数の送受信器24と接続され、各送受信器24に対応するチューナブルフィルタを有する。DEMUX部22は、スプリッタ202bから入力された波長多重光信号から、チューナブルフィルタにより選択された波長の光信号を分離して送受信器24に出力する。
チューナブルフィルタにおける波長の選択は、制御部21からの設定に従って送受信器24ごとに行われる。送受信器24に出力された光信号は、外部の装置に出力される。なお、チューナブルフィルタは、送受信器24内の受信処理部に設けられてもよい。
MUX部22は、光信号を挿入するため、複数の送受信器24と接続され、外部の装置から送受信器24を介して入力された光信号を、波長選択スイッチ202aの入力ポートに出力する。MUX部22は、アレイ導波路格子などを含み、複数の送受信器24からの光信号を束ねて、波長選択スイッチ202aに出力する。
制御部21は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算処理回路であり、所定のプログラムに基づいてWDM装置20を制御する。なお、制御部21は、このようにソフトウェアにより機能するものに限定されることはなく、特定用途向け集積回路などのハードウェアにより機能するものであってもよい。
制御部21は、監視制御用ネットワークNWを介して、ネットワーク設計装置1と通信し、パスごとに割り当てる波長を示す波長割当情報を取得する。制御部21は、波長割当情報に基づいて、波長選択スイッチ202aに対し、選択する波長の設定を行う。
WDM装置(A)20は、方路#1及び#3に対して単一の伝送ユニット20a、20dがそれぞれ設けられ、他方、方路#2に対して、2つの伝送ユニット20b、20cが設けられている。一方、図4に示されるように、WDM装置(D)20も、同一の方路#2に対し、2つの伝送ユニット20e,20fが設けられている。WDM装置(A)20の2つの伝送ユニット20b、20cは、一対の光ファイバ3を介して、WDM装置(D)20の2つの伝送ユニット20e,20fとそれぞれ接続されている。
この構成によると、WDM装置(A)20、及びWDM装置(D)20の間において、異なる2つの波長多重光信号を伝送することができるから、図2に示されるように、同一波長λ1を使用する異なる2本のパスP1,Piの設定が可能となる。このように、隣り合う2つのWDM装置(A),(D)20の間において、波長多重光信号を伝送するために使用される一対の伝送ユニット(20b,20e),(20c,20f)を、以降の説明において「伝送システム」(符号30参照)と表記する。
次に、本実施例に係るネットワーク設計装置1が行う波長割り当てに関して説明する。図5には、ネットワークに設けられた複数のパスの一例が示されている。このネットワークは、ノード(A)〜(J)が、この順序で直列に接続されたものである。なお、「ノード」とは、局舎などに設置されるWDM装置20などの通信機器を指す。
ネットワークは、複数のパスP1〜P9が設けられている。各パスP1〜P9は、両端の矢印が示す範囲内のノード、及びリンクをそれぞれ経由する。例えば、パスP1は、ノード(A)〜(D)、及びノード(A)〜(D)間の各リンクをそれぞれ経由する。また、パスP2は、ノード(E)〜(G)、及びノード(E)〜(G)の間の各リンクをそれぞれ経由する。なお、「リンク」とは、ネットワーク内において隣り合う2つのノード間を結ぶ仮想的な線路を指す。
このパス設定によると、例えばパスP1によって、ノード(A)のWDM装置20に挿入された光信号は、ノード(D)のWDM装置20から分岐され、逆に、ノード(D)のWDM装置20に挿入された光信号は、ノード(A)のWDM装置20から分岐される。また、パスP2によって、ノード(E)のWDM装置20に挿入された光信号は、ノード(G)のWDM装置20から分岐され、逆に、ノード(G)のWDM装置20に挿入された光信号は、ノード(E)のWDM装置20から分岐される。なお、他のパスP3〜P9についても同様に、各光信号が挿入及び分岐される。
図6には、図5に示されたパスP1〜P9に対する波長割り当ての一例が示されている。ここで、WDM装置20が波長多重光信号に多重可能な波長の総数は4波であり、1つの伝送システムにおいて、波長λ1〜λ4が使用可能であるものとする。また、点線で描かれた枠は、各伝送システム(1),(2)において使用される各波長λ1〜λ4を示す。例えば、パスP1は、一方の伝送システム(1)の波長λ2が割り当てられている。
本例において、パスP2及びP9は、ノード(E)及び(F)間のリンクにおいて、重複して同一波長λ1が割り当てられている。また、パスP3及びP8は、ノード(E)〜(H)間の各リンクにおいて、重複して同一波長λ2が割り当てられている。このため、本例の波長割り当てによると、ノード(E)〜(H)までの伝送区間において、2つの伝送システム(1),(2)を設ける必要がある。
また、図7には、図5に示されたパスに対する波長割り当ての他例が示されている。本例では、図6の例と異なり、パスP7に、伝送システム(1)の波長λ1が割り当てられている。また、パスP8には、ノード(E)及び(F)間において、伝送システム(2)の波長λ4が割り当てられるとともに、ノード(F)〜(H)間において、伝送システム(1)の波長λ4が割り当てられている。ここで、パスP8の光信号は、ノード(F)のWDM装置20に設けられた波長選択スイッチ202aの設定により、一方の伝送システム(2)と他方の伝送システム(1)との間で伝送手段が切り替えられる。
本例の波長割り当てによると、ノード(E)及び(F)間のみにおいて、2つの伝送システム(1),(2)を設けられるため、図6の例と比較した場合、設備コストが低減される。図7に示されるような効率的な波長割り当ては、ネットワーク設計装置1が、数理計画法などの手法を用いて、ネットワークの適切なモデルを構築し、最適な解(パスごとに割り当てる波長)を導くことによって実現される。
図8には、ネットワーク設計装置1の構成が示されている。ネットワーク設計装置1は、例えばサーバなどのコンピュータ装置である。ネットワーク設計装置1は、CPU10、ROM(Read Only Memory)11、RAM(Random Access Memory)12、HDD(Hard Disk Drive)13、通信処理部14、可搬型記憶媒体用ドライブ15、入力処理部16、及び画像処理部17などを備えている。
CPU10は、演算処理手段であり、ネットワーク設計プログラムに従って、パスに対する波長の割り当て処理を行う。CPU10は、各部11〜17とバス18を介して通信可能に接続されている。なお、ネットワーク設計装置1は、ソフトウェアにより動作するものに限定されず、CPU10に代えて、特定用途向け集積回路などのハードウェアが用いられてもよい。
RAM12は、CPU10のワーキングメモリとして用いられる。また、ROM11及びHDD13は、ネットワーク設計装置1を動作させるプログラムなどを記憶する記憶手段として用いられる。通信処理部14は、LANなどのネットワークを介して外部の装置と通信を行うネットワークカードなどの通信手段である。図1に示された構成を例に挙げると、通信処理部14は、監視制御用ネットワークNWを介し、複数のWDM装置20との通信を処理する。
可搬型記憶媒体用ドライブ15は、可搬型記憶媒体150に対して、情報の書き込みや情報の読み出しを行う装置である。可搬型記憶媒体150の例としては、USBメモリ(USB:Universal Serial Bus)、CD−R、及びメモリカードなどが挙げられる。
ネットワーク設計装置1は、情報の入力操作を行うための入力デバイス160、及び、画像を表示するためのディスプレイ170を、さらに備える。入力デバイス160は、キーボード及びマウスなどの入力手段であり、入力された情報は、入力処理部16を介して
CPU10に出力される。ディスプレイ170は、液晶ディスプレイなどの画像を表示する表示手段であり、表示される画像データは、CPU10から画像処理部17を介してディスプレイに出力される。なお、入力デバイス160、及びディスプレイ170に代えて、これらの機能を備えるタッチパネルなどのデバイスを用いることもできる。
CPU10は、ROM11、またはHDD13などに格納されているプログラム、または可搬型記憶媒体用ドライブ15が可搬型記憶媒体150から読み取ったプログラムを実行する。このプログラムには、OS(Operating System)だけでなく、上記のネットワーク設計プログラムも含まれる。なお、プログラムは、通信処理部14を介してダウンロードされたものであってもよい。
CPU10は、ネットワーク設計プログラムを実行すると、複数の機能が形成される。図9には、CPU10に形成される機能の構成が示されている。CPU10は、計数処理部100と、設定処理部101と、生成処理部102と、割当処理部103と、送信処理部104とを含む。また、図9には、CPU10の機能部100〜104だけでなく、該機能に関連してHDD13内に記憶する各種の情報130〜134も示されている。なお、情報130〜134の記憶手段は、HDD13に限定されず、ROM11や可搬型記憶媒体150であってもよい。
計数処理部100は、複数の波長の光信号がそれぞれ伝送される複数のパスが設けられたネットワークにおけるノード間のリンクごとに、リンクを経由する該パスの数を計数する。計数処理部100は、HDD13から、設計対象となるネットワークに関するトポロジ情報130、及びパス情報131を読み出し、これらの情報を用いて計数処理を行う。
トポロジ情報130は、ネットワークの形態、つまり、リンクを介したノード間の接続関係を示す情報である。トポロジ情報130は、例えば、ネットワーク内の各リンクの識別子に、該リンクを介して接続されている一対のノードの識別子を対応付けて構成されている。ネットワーク設計装置1は、トポロジ情報130、及びパス情報131を自装置1で生成してもよいし、例えば監視制御ネットワークNW、可搬型記憶媒体150、または入力デバイス160を介して、外部から取得してもよい。
一方、パス情報131は、ネットワークに設定されるパスごとの経路を示す情報である。パス情報131は、例えば、パスの始点及び終点にそれぞれ対応するノードの識別子と、始点から終点に至るまでに経由する1以上のリンクの識別子とを含む。
図5のパスを例に挙げると、計数処理部100は、例えば、ノード(A)及び(B)間のリンクのパス数を1、ノード(B)及び(C)間のリンクのパス数を2、ノード(E)及び(F)間のリンクのパス数を6と計数する。この計数処理より、ネットワーク内のリンクごとに、パスの混雑の程度(集中の程度)が把握される。
設定処理部101は、計数処理部100により計数されたパスの数に基づいて、リンクごとに、波長多重光信号を伝送するために用いられる伝送システム(図4の符号30参照)の上限数を設定する。設定処理部101は、例えば、リンクごとのパス数を、波長多重光信号に多重可能な波長の総数で除算して得た値に基づいて、伝送システムの上限数を決定してもよい。この場合、伝送システムの上限数は、除算で得た商の小数点以下の値を切り上げることにより整数として求められる。
図5の例において、WDM装置20が波長多重光信号に多重可能な波長の総数は4波である。したがって、伝送システムの上限数は、例えば、ノード(A)及び(B)間のリンクについて、1÷4を算出することにより1となる。また、ノード(B)及び(C)間のリンクについては、2÷4を算出することにより2となり、ノード(E)及び(F)間のリンクについては、6÷4を算出することにより2となる。
伝送システムの上限数は、さらに、当該ネットワークにおける将来的なパスの増加を見込んで決定されてもよい。この場合、設定処理部101は、外部からの操作に応じて、伝送システムの上限数を補正する。例えば、入力デバイス160を介して、ノード(A)及び(B)間のリンクにおけるパス増加の見込み数として、6が入力された場合、設定処理部101は、当該リンクの伝送システムの上限数を、1から2に補正する。これにより、将来的なパスの増加を見込んだネットワーク設計が可能となる。
このように伝送システムの上限数を設定することにより、伝送システムが低減されるようにネットワーク設計が行われる。設定処理部101は、伝送システムの上限数を、計数処理部100から得たパス数とともに、伝送システム情報132として、HDD13に書き込む。
図10には、図5に示されたネットワークに関する設計情報が示されている。図10において、「パス数」及び「伝送システム上限数」は、伝送システム情報132を示す。「パス数」は、計数処理部100により計数されたリンクごとのパス数を示し、「伝送システム上限数」は、設定処理部101により設定された伝送システムの上限数を示す。なお、他の情報については、後述する。
割当処理部103は、リンクごとに、重複して使用可能な同一波長の光信号の数を、設定処理部により設定された伝送システムの上限数以下とする制約条件に従って、波長多重光信号に多重される光信号の波長を複数のパスの各々に割り当てる。したがって、割当処理部103は、同一リンクにおいて同一波長の光信号の使用を可能とし、さらに、ネットワーク内の伝送システムの総数を最小とするように波長を割り当てる。
割当処理部103は、HDD13内のトポロジ情報130、パス情報131、及び伝送システム情報132に基づいて波長を割り当てる。より具体的には、割当処理部103は、これらの情報を変数として、数理計画モデルを構築し、所定の制約条件の下で最適な解を求める。
以下に、波長割り当て処理において使用される数理計画モデルについて説明する。割当処理部103は、目的関数として、例えば、以下の式(1)を用いる。また、図11には、以降の式において用いられる変数の内容が示されている。
式(1)によると、割当処理部103は、パスごとに用いられる波長のラベル番号の合計が最少となるように、波長を割り当てる。ここで、ラベル番号は、波長ごとに付与された名称に該当する情報である。割当処理部103は、ラベル番号が小さい方から優先的に、割り当てる波長を選択する。
また、割当処理部103は、制約条件として、例えば、以下の式(2)、及び式(3)を用いる。
式(2)によると、割当処理部103は、各パスには、単一の波長が割り当てられるという制約条件に従って、波長を割り当てる。この制約条件は、パスの途中で、光信号の波長を他の波長に切り替えることはできないという技術的制約に基づく。
一方、式(3)によると、割当処理部103は、同一のリンクにおいて、重複して使用可能な同一波長の数は、伝送システムの上限数以下であるという制約条件に従って、波長を割り当てる。この制約条件は、1つの波長多重光信号に多重可能な複数の波長は、互いに異なるため、1つの伝送システム(図4参照)は、当該複数の波長を、1組しか伝送できないという技術的制約に基づく。例えば、図5の例の場合、ノード(E)及び(F)間のリンクにおける伝送システムの上限数は2であるから(図10参照)、各波長を2つまで使用することが可能であり、他のリンクの上限数は1であるため、各波長を1つずつしか使用することができない。
上述したような数理計画モデルを構築して最適解を得ることによって、割当処理部103は、図7に例示されるように、結果的に、使用される伝送システム数が最少となるように、効率的な波長割り当てを行う。ここで、数理計画モデルにおける目的関数としては、上記の式(1)に限定されることはなく、例えば、以下の式(4)が用いられてもよい。ここで、変数Sys(s)は、各リンクsにおいて実際に使用される伝送システムの数を表す。
式(4)によると、割当処理部103は、パスごとに用いられる波長のラベル番号の合計だけでなく、使用される伝送システム数も最少となるように、波長を割り当てる。なお、割当処理部103は、制約条件として、例えば、上記の式(2)、及び式(3)に加えて、以下の式(5)を用いる。式(5)は、使用される伝送システム数を導くために用いられる。なお、割当処理部103は、数理計画法に限定されず、他の解析手法を用いて波長割り当てを行ってもよい。
割当処理部103は、制約条件のために波長を割り当てられない場合、制約条件を緩和して、波長を割り当てる。より具体的には、割当処理部103は、制約条件のために波長を割り当てられない場合、リンクの各々の優先度を示す優先度情報133に基づいて選択したリンクに対応する伝送システムの上限値を増加させる。なお、制約条件のために波長を割り当てられない場合、つまり数理計画モデルの最適解が得られない場合の具体例については後述する。
図9に示されるように、優先度情報133は、割当処理部103からの指示に従って、生成処理部102により生成される。以下に、図10を参照して、優先度情報133の生成手法について述べる。
生成処理部102は、ネットワークにおいて所定数以上のパスが経由するリンクを混雑リンクとして選択し、その他のリンクを非混雑リンクとして選択する。例えば、図5の例において、5以上のパスが経由するリンクを混雑リンクとする場合、ノード(E)及び(F)間のリンクが混雑リンクに該当し(「混雑リンク」参照)、その他のリンクが非混雑リンクに該当する(「非混雑リンク」参照)。
生成処理部102は、波長多重光信号に多重可能な波長の総数に対する、リンクを経由するパスの数の比率を算出し、この比率(以下、「使用率」と表記)が閾値以上となるリンクを、高使用率リンクとして選択する。高使用率グループは、非混雑リンクから選択される。例えば、該閾値を70(%)とした場合、ノード(F)及び(G)間のリンクは、パス数が4本であり、多重可能な波長の総数(4波)に対する使用率が100(%)となるため、高使用率リンクに該当する。すなわち、本例では、パス数が3以上であるリンクが、高使用率リンクに該当する(「高使用率リンク」参照)。
また、生成処理部102は、混雑リンクを除くリンクごと、つまり非混雑リンクごとに、該非混雑リンクを経由するパスのうち、混雑リンクを経由するパスの数を、混雑関連指標値として算出する。この混雑関連指標値は、非混雑リンクごとに、混雑リンクに関連するパスの数を示す。例えば、ノード(F)及び(G)間のリンクは、混雑リンク(ノード(E)及び(F)間のリンク)を経由するパスP2,P3,P8の3本が経由するから、当該混雑関連指標値は3となる。また、ノード(D)及び(E)間のリンクは、混雑リンクを経由するパスP4,P6の2本が経由するから、当該混雑関連指標値は2となる(「混雑関連指標地」参照)。
生成処理部102は、リンクごとに、上記の使用率(つまり、高使用率リンクに該当するか否か)、及び、混雑関連指標値に基づいて、優先度情報を生成する。本例では、生成処理部102は、高使用率リンクに該当するリンクに対し、他のリンクより高い優先度を与える。さらに、生成処理部102は、混雑関連指標値が高いリンクほど、高い優先度を与える。つまり、生成処理部102は、優先度を決定するにあたって、高使用率リンクに該当するか否かの条件を優先的に判断し、その次の段階において、混雑関連指標値を判断する。
この手法に従って生成した優先度情報133は、図10において、「優先度」として示されている。優先度は、「1」が最も高く、「8」が最も低い。なお、高使用率リンクに該当するリンク同士、または高使用率リンクに該当しないリンク同士の混雑関連指標値が同一である場合、何れのリンクの優先度を高くしてもよい。
割当処理部103は、制約条件のために波長を割り当てられない場合、優先度情報133に基づいて選択したリンクに対応する伝送システムの上限値を増加させる。図10に示された例において、割当処理部103は、波長を割り当てられないとき、まず、優先度が「1」であるノード(F)及び(G)間のリンクに対応する伝送システムの上限値を増加させる。
該上限値の増加によっても、波長を割り当てられないとき、割当処理部103は、さらに、優先度が「2」であるノード(G)及び(H)間のリンクに対応する上限値を増加させる。このようにして、割当処理部103は、波長割り当てが成功するまで、優先度の順に、各非混雑リンクに対応する伝送システムの上限値を順次に増加させて、上記の式(3)に該当する制約条件を繰り返し緩和する。
これにより、割当処理部103は、確実に、最適な波長割り当てを行うことができる。なお、優先度情報133は、各リンクを、優先度の順に並べた優先度リストとして形成されてもよい。また、本例において、生成処理部102は、上記の使用率、及び混雑関連指標値に基づいて、優先度情報133を生成したが、優先度情報133は、何れか一方に基づいて生成されてもよい。
さらに、本例では、単一の混雑リンクを含むネットワークを挙げたが、複数の混雑リンクを含むネットワークも存在する。以下に、複数の混雑リンクを含むネットワークの場合の優先度情報133の生成手法を述べる。図12には、複数の混雑リンクを含むネットワークの例が示されている。
ノード(A)〜(L)は、メッシュ状のネットワークを構成するように、各リンクを介して接続されている。また、複数のパスP1〜P18は、両端の矢印が示すノード間に設けられている。なお、一点鎖線で表された円は、リンクごとに、該リンクを共通に経由するパスP1〜P18を取り囲んでいる。
本例において、6本以上のパスP1〜P18を経由するリンクを混雑リンクとすると、ノード(D)及び(E)間のリンク、ノード(E)及び(F)間のリンク、及びノード(H)及び(I)間のリンクの3つが、混雑リンクに該当する(太線参照)。生成処理部102は、パスP1〜P18ごとに、該パスが経由する混雑リンクの数に応じた重み度数を決定し、混雑リンクを経由するパスの重み度数に基づいて、優先度情報133を生成する。
例えば、パスP2は、2つの混雑リンクを経由するから、当該重み度数を2とする。パスP8,P9,P14は、それぞれ、1つの混雑リンクを経由するから、当該重み度数を1とする。
次に、例として、非混雑リンクに該当するノード(E)及び(H)間のリンクの混雑関連指標値を算出する。当該リンクを経由するパスは、パスP2,P8,P9,P14は、である。したがって、該リンクの混雑関連指標値は、4本のパスP2,P8,P9,P14の各重み度数の合計(2+1+1+1)を算出することにより、5に決定される。このように、パスが経由する混雑リンクの数に応じた重み度数に基づいて優先度情報133を生成することにより、複数の混雑リンクを含むネットワークについても、適切に優先度情報133を生成することが可能となる。
割当処理部103は、図9に示されるように、波長割り当ての結果を、波長割当情報134としてHDD13に書き込む。波長割当情報134は、各波長の識別子と、割り当てられたパスの識別子との対応関係を示す。なお、波長割当情報134の内容は、操作者が認識するように、ディスプレイ170に表示されてもよい。
また、送信処理部104は、HDD13から波長割当情報134を読み出し、監視制御ネットワークNWを介して、WDM装置20に送信する。波長割当情報134は、通信処理部14から監視制御ネットワークNWに出力される。そして、WDM装置20の制御部21は、波長割当情報134を受信すると、波長割当情報134に基づいて、各波長選択スイッチ202aに対して設定処理を行う。なお、波長割当情報134の送信は、例えば、入力デバイス160による指示操作に基づいて実行される。
このように、ネットワーク設計装置1は、波長割当情報134をWDM装置20に送信するから、ネットワーク設計が完了した後、迅速に、パスに対する波長の割り当て設定を行うことができる。なお、波長割当情報134の送信処理は、これに限定されず、ネットワーク管理装置などの他の装置によって行われてもよい。
次に、ネットワーク設計装置1の波長割り当て処理の流れを、図13を参照して述べる。波長割り当て処理は、例えば、入力デバイス160からの操作に応じて開始される。波長割り当て処理が開始されると、計数処理部100は、HDD13からトポロジ情報130、及びパス情報131を取得する(ステップSt1)。
次に、計数処理部100は、トポロジ情報130、及びパス情報131に基づき、複数の波長の光信号がそれぞれ伝送される複数のパスが設けられたネットワークにおけるノード間のリンクごとに、リンクを経由する該パスの数を計数する(ステップSt2)。次に、設定処理部101は、計数処理部100により計数されたパスの数に基づいて、リンクごとに、波長多重光信号を伝送するために用いられる伝送システムの上限数を設定する(ステップSt3)。
次に、割当処理部103は、リンクごとに、重複して使用可能な同一波長の光信号の数を、設定処理部101により設定された伝送システムの上限数以下とする制約条件に従って、波長多重光信号に多重される光信号の波長を複数のパスの各々に割り当てる(ステップSt4)。このとき、割当処理部103は、上述した数理計画モデルを構築して、最適解を求めることによって、波長割り当てを行う。
次に、割当処理部103は、割り当てが成功したか否かを判定する(ステップSt5)。割り当てが成功した場合(ステップSt5のYES)、割当処理部103は、処理を終了する。一方、割り当てが失敗した場合(ステップSt5のYES)、割当処理部103は、当該失敗が、実行中の波長割り当て処理が開始された後の最初の失敗であるか否かを判定する(ステップSt6)。
最初の失敗である場合(ステップSt6のYES)、生成処理部102は、優先度情報133を生成する(ステップSt7)。このように、生成処理部102は、制約条件のために波長を割り当てられない場合に優先度情報133を生成する。つまり、優先度情報133は、波長割り当ての失敗後に、初めて生成される。
したがって、ネットワーク設計装置1は、一度も失敗することなく、波長割り当てに成功した場合、優先度情報133の生成に要する時間を省くことができる。なお、優先度情報133は、これに限定されず、例えば、割当処理部103が波長を割り当てる(ステップ4)以前に生成されてもよい。また、最初の失敗であるか否かの判定は、例えば、失敗するたびに加算される変数を用意しておき、この変数の値を参照することにより行われてもよい。
一方、最初の失敗ではない場合(ステップSt6のNO)、割当処理部103は、優先度情報133に基づいて選択したリンクに対応する伝送システムの上限値を増加させる(ステップSt8)。すなわち、上限値を増加させる対象となるリンクの選択は、上述した「優先度」の順に従う。
図10の例の場合、最初に失敗したとき、優先度が「1」であるノード(F)及び(G)間のリンクが選択され、2回目に失敗したとき、優先度が「2」であるノード(G)及び(H)間のリンクが選択される。これにより、非混雑リンクは、混雑リンクに対する関連の程度が高い順に、上記の式(3)で表される制約条件が緩和される。なお、本処理は、上記のステップSt7の処理後も同様に行われる。
次に、割当処理部103は、ステップSt4の処理を再度、実行する。すなわち、割当処理部103は、制約条件のために波長を割り当てられない場合、割り当てが成功するまで、制約条件を緩和して波長割り当てを試みる。このネットワーク設計方法によれば、優先度の順に従って、各リンクに関する制約条件が順次に緩和されるから、伝送システムの数を無駄に増加させることなく、効率的に波長割り当てを行うことができる。
上記のステップSt5の処理に関して、波長割り当て処理の成功例、及び失敗例を挙げて説明する。図14には、ネットワークに設けられた複数のパスP1〜P7の例が示されている。これまで述べた例と同様に、複数のパスP1〜P7は、それぞれ、両矢印により示されている。例えば、パスP1は、ノード(A)、ノード(B)、及びノード(C)を、この順に通るように設けられている。
このネットワークにおいて、ノード(B)は、ノード(A)、ノード(C)、及びノード(D)と接続され、ノード(D)は、ノード(C)と接続されている。また、本例において、WDM装置20が多重可能な波長の総数は4波とし、5波以上のパスが経由するリンクを混雑リンクとする。
図15には、上記のネットワークに関する伝送システム情報132が示されている。ノード(A)及び(B)間のリンク(「A−B」参照)は、5つのパスP1〜P5が経由するため、伝送システムの上限数が2に設定され、他のリンクの上限数は1に設定されている。
図16には、図15に示された伝送システムの上限数を制約条件(上記の式(3))として、各パスP1〜P7に波長λ1〜λ4を割り当てた結果が示されている。図16において、丸で囲まれた数字は、リンクごとに設定された伝送システムの上限値を示す。また、各パスP1〜P7の表示に付随するカッコ内には、当該パスP1〜P7に割り当てた波長λ1〜λ4が示されている。
本例では、ノード(B)及び(C)間のリンクにおいて使用可能な波長が不足するため、2つのパスP6,P7に波長を割り当てることができない(「NG」印参照)。つまり、当該リンクは、伝送システムの上限値が1であるため(図15参照)、波長λ1〜λ4を1組しか使用できず、2つのパスP6,P7に、他のパスP1,P2と同一波長λ1,λ2を割り当てることができない。
また、これらのパスP6,P7に、当該リンクで使用されていない波長λ3,λ4を割り当てたとしても、波長λ3,λ4は、ノード(B)及び(D)間のリンクにおいて他のパスP3,P4に割り当てられている。そして、当該リンクは、伝送システムの上限値が1であるため(図15参照)、やはり、パスP6,P7に、他のパスP3,P4と同一波長λ1,λ2を割り当てることができない。このように、本例の波長の割り当ては、制約上限のために失敗しているため、生成処理部102は、優先度情報133を生成する。
図17には、伝送システム情報132に加え、本例のネットワークに関する優先度情報133が示されている。5本以上のパスが経由するリンクを混雑リンクとした場合、ノード(A)及び(B)間のリンク(「A−B」参照)は混雑リンクに該当し、その他のリンクは非混雑リンクに該当する。さらに、高使用率リンクには、その判断基準となる使用率を70(%)とした場合、使用率が100(%)(パス数4/使用可能波長の総数4)であるノード(B)及び(C)間のリンク、及び、ノード(A)及び(D)間のリンクが該当する。
また、混雑関連指標値は、混雑リンク(A−B)を経由するパスの数に基づいて決定される。例えば、ノード(A)及び(D)間のリンクは、混雑リンクを経由するパスP1〜P5のうち、2つのパスP1,P2が経由するから、混雑関連指標値は2となる。
優先度は、図11を参照して述べた手法に従って決定される。その結果、ノード(A)及び(C)間のリンクの優先度が最も高いため、割当処理部103は、当該リンクに対応する伝送システムの上限値を1から2に増加させる(「1→2」参照)。そして、割当処理部103は、新たな上限値に基づく制約条件に従い、再度、波長を割り当てる。なお、一度に増加させる数は、1に限定されず、2以上であってもよい。
図18には、再度の波長割り当ての結果が示されている。上述したように、ノード(A)及び(C)間のリンクに対応する伝送システムの上限値が2に増加したから、当該リンクにおいて使用可能な複数の波長λ1〜λ4が2組となる。これにより、パスP6,P7に対して、他のパスP1,P2と同一波長λ1,λ2をそれぞれ割り当てられることが可能である。このように、本例の波長の割り当ては、制約上限を緩和したことによって、2回目で成功している。
本例では、ノード(A)及び(C)間のリンクに、優先度「1」を与えたが、これに代えて、混雑関連指標値が同一であるノード(B)及び(D)間のリンクに優先度「1」を与えてもよい。この場合、当該リンクの伝送システム数が2となるから、パスP6,P7に対して、波長λ3,λ4をそれぞれ割り当てることによって、波長割り当ては、やはり成功する。
これまで、ネットワーク設計装置1の適用例として、小規模なネットワークを挙げたが、図19に示されるような大規模なネットワークにも、ネットワーク設計装置1を適用可能である。このネットワークは、リンクを介して接続された40個のノードN1〜N40を有し、574本のパス(図示せず)が設けられている。また、本例において、WDM装置20が波長多重光信号に多重可能な波長の総数を88波とする。以下に、発明者が、本例について、上述したネットワーク設計方法を用いて得られた設計結果を説明する。
図20には、図19に示されたネットワークにおける混雑リンクの一覧表が示されている。「リンク」欄に関し、例えば、「N3_N4」は、ノードN3及びN4間のリンクを表し、また、「パス数」欄は、対応する混雑リンクを経由するパスの数を表している。なお、これらの欄は、以降の説明においても同様である。ここでは、パスの数が88本を超えるリンクを、混雑リンクとして選択し、各混雑リンクの伝送システムの上限数を2としている。
図21には、図19に示されたネットワークにおける非混雑リンクの一覧表が示されている。「重み度数」欄は、図12を参照して述べた重み度数1〜4の各々に該当するパスの数を示す。例えば、リンクN2_N3について、重み度数1のパスが13本、重み度数2のパスが2本、重み度数3のパスが7本、重み度数4のパスが19本、重み度数5のパスが5本、重み度数6のパスが35本となる。
「混雑関連指標値」欄は、重み度数に基づいて決定された混雑関連指標値を示す。例えば、リンクN2_N3の混雑関連指標値は、1×13+2×2+3×7+4×19+5×5+6×35を計算することにより349となる。
また、符号Gは、高使用率リンクに該当するリンクを示している。本例では、高使用率リンクに該当する基準として、上記の比率を90(%)としている。また、各リンクは、表の上部から優先度が高い順に並べられている。
本例について、上記の式(1)〜(3)に基づく数理計算モデルを構築して、波長割り当てを試みた結果、1〜5回目において失敗し、6回目において成功した。失敗のたびに、リンクN2_N3、N10_N2、N35_N24、N21_N11、及びN26_33の伝送システムの上限数が、優先度の順に従って順次に増加した。このため、5回の制約条件の緩和によって、混雑リンクだけでなく、リンクN2_N3、N10_N2、N35_N24、N21_N11、及びN26_33の伝送システムの上限数も2となった。
図22には、ネットワーク設計装置1により得られた波長割当情報134が示されている。「パス」欄は、パスの識別子を示し、「リンク」欄は、対応するパスが経由するリンクごとに、割り当てられた波長のラベル番号を示す。各パスは、上記の式(2)の制約条件に従って、単一の波長が割り当てられている。例えばパス(2)に割り当てられた波長は、ラベル番号「38」の波長のみである。なお、「リンク」欄の「−」は、対応するパスが、当該リンクを経由しないことを示す。
また、上記の式(3)の制約条件に従って、異なるパスに、同一波長が割り当てられている。例えば、パス(0)及びパス(100)は、ともにラベル番号「32」の波長が割り当てられ、また、パス(1)及びパス(20)は、ともにラベル番号「37」の波長が割り当てられている(一点鎖線の枠参照)。
図23には、図19に示されたネットワークに使用される伝送システムの数が示されている。図23において、丸で囲まれた「M」は、混雑リンク(図20参照)を示し、混雑リンクには、2つの伝送システムが用いられる。また、丸で囲まれた「2」は、2つの伝送システムが用いられる非混雑リンクを示す。
本例のネットワーク設計によると、48のリンクのうち、11のリンクにおいて2つの伝送システムが必要になるという結果が得られた。また、設計の所要時間は、およそ5分であった。なお、1回の波長割り当ての所要時間は、およそ1分であった。
一方、上記の式(2)〜(5)に基づく数理計算モデルを構築して、波長割り当てを行った結果、48のリンクのうち、19のリンクにおいて2つの伝送システムが必要という結果が得られた。また、設計の所要時間は、およそ1時間であった。したがって、式(1)〜(3)に基づく数理計算モデルによれば、式(2)〜(5)に基づく数理計算モデルの場合に対して、伝送システム数が30(%)以上削減され、設計時間が80(%)以上短縮されるという好適な設計結果が得られた。これは、前者の数理計算モデルのモデルサイズが、後者に比べて小さいためである。
また、上述した数理計算法との比較のため、ヒューリスティック(Heuristic)法を用いて、波長割り当てを行った結果、48のリンクのうち、40のリンクにおいて2つの伝送システムが必要という結果が得られた。本例では、リンクが少ない順に従ってパスを選択して波長を割り当て、波長が不足すると、伝送システムの数を増加させた。この手法によると、設計結果がパスの選択順序によるため、最適な解を得ることが原理的に難しい。
これまで述べたように、実施例に係るネットワーク設計装置1は、複数のパスが設けられたネットワーク内のリンクごとに計数されたパスの数に基づいて、リンクごとに、波長多重光信号を伝送するために用いられる伝送システムの上限数を設定する。このため、伝送システムの上限数が、リンクごとに、精度よく設定される。
また、ネットワーク設計装置1は、リンクごとに、重複して使用可能な同一波長の光信号の数を、伝送システムの上限数以下とする制約条件に従って、波長多重光信号に多重される光信号の波長を複数のパスの各々に割り当てる。このため、同一波長の光信号が、リンクごとの伝送システムの上限数に応じて、異なるパスに割り当てられる。
さらに、ネットワーク設計装置1は、上記の制約条件のために波長を割り当てられない場合、制約条件を緩和して、波長を割り当てる。このため、割り当てる波長が不足した場合であっても、波長割り当てを繰り返して試みることにより、確実に波長割り当てが行われる。
したがって、ネットワーク設計装置1によれば、多数のパスが設けられた複雑なネットワークの設計できるという効果が得られる。なお、上述したネットワーク設計方法、及びネットワーク設計プログラムも、ネットワーク設計装置1と同様の構成を有するため、同様の作用効果を奏する。
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1) 複数の波長の光信号がそれぞれ伝送される複数のパスが設けられたネットワークにおけるノード間のリンクごとに、前記リンクを経由するパスの数を計数する計数処理部と、
前記計数処理部により計数されたパスの数に基づいて、前記リンクごとに、波長多重光信号を伝送するために用いられる伝送システムの上限数を設定する設定処理部と、
前記リンクごとに、重複して使用可能な同一波長の光信号の数を、前記設定処理部により設定された前記上限数以下とする制約条件に従って、前記波長多重光信号に多重される光信号の波長を前記複数のパスの各々に割り当てる割当処理部とを有し、
前記割当処理部は、前記制約条件のために波長を割り当てられない場合、前記制約条件を緩和して、波長を割り当てることを特徴とするネットワーク設計装置。
(付記2) 前記リンクの各々の優先度を示す優先度情報を生成する生成処理部を、さらに有し、
前記割当処理部は、前記制約条件のために波長を割り当てられない場合、前記優先度情報に基づいて選択した前記リンクに対応する前記上限値を増加させることによって、前記制約条件を緩和することを特徴とする付記1に記載のネットワーク設計装置。
(付記3) 前記生成処理部は、前記波長多重光信号に多重可能な波長の総数に対する、前記リンクを経由する前記パスの数の比率に基づいて前記優先度情報を生成することを特徴とする付記2に記載のネットワーク設計装置。
(付記4) 前記生成処理部は、前記ネットワークにおいて所定数以上の前記パスが経由する前記リンクを混雑リンクとして選択し、前記混雑リンクを除く前記リンクごとに、該リンクを経由する前記パスのうち、前記混雑リンクを経由する前記パスの数に基づいて前記優先度情報を生成することを特徴とする付記2または3に記載のネットワーク設計装置。
(付記5) 前記生成処理部は、前記ネットワークが複数の前記混雑リンクを有する場合、前記パスごとに、該パスが経由する前記混雑リンクの数に応じた重み度数を決定し、前記混雑リンクを経由するパスの前記重み度数に基づいて、前記優先度情報を生成することを特徴とする付記4に記載のネットワーク設計装置。
(付記6) 前記生成処理部は、前記制約条件のために波長を割り当てられない場合に前記優先度情報を生成することを特徴とする付記2乃至5の何れかに記載のネットワーク設計装置。
(付記7) 前記設定処理部は、前記計数処理部により計数されたパスの数を、前記伝送システムにより前記波長多重光信号に多重可能な波長数で除算して得た値に基づいて、前記上限数を設定することを特徴とする付記1乃至6の何れかに記載のネットワーク設計装置。
(付記8) 前記設定処理部は、外部からの操作に応じて、前記上限数を補正することを特徴とする付記1乃至7の何れかに記載のネットワーク設計装置。
(付記9) 複数の波長の光信号がそれぞれ伝送される複数のパスが設けられたネットワークにおけるノード間のリンクごとに、前記リンクを経由するパスの数を計数し、
計数されたパスの数に基づいて、前記リンクごとに、波長多重光信号を伝送するために用いられる伝送システムの上限数を設定し、
前記リンクごとに、重複して使用可能な同一波長の光信号の数を、前記設定処理部により設定された前記上限数以下とする制約条件に従って、前記波長多重光信号に多重される光信号の波長を前記複数のパスの各々に割り当て、
前記波長を割り当てる処理において、前記制約条件のために波長を割り当てられない場合、前記制約条件を緩和して、波長を割り当てることを特徴とするネットワーク設計方法。
(付記10) 前記制約条件のために波長を割り当てられない場合、前記リンクの各々の優先度を示す優先度情報に基づいて選択した前記リンクに対応する前記上限値を増加させることによって、前記制約条件を緩和することを特徴とする付記9に記載のネットワーク設計方法。
(付記11) 前記優先度情報は、前記波長多重光信号に多重可能な波長の総数に対する、前記リンクを経由する前記パスの数の比率に基づいて生成されることを特徴とする付記10に記載のネットワーク設計方法。
(付記12) 前記優先度情報は、前記ネットワークにおいて所定数以上の前記パスが経由する前記リンクを混雑リンクとして選択し、前記混雑リンクを除く前記リンクごとに、該リンクを経由する前記パスのうち、前記混雑リンクを経由する前記パスの数に基づいて生成されることを特徴とする付記10または11に記載のネットワーク設計方法。
(付記13) 前記優先度情報は、前記ネットワークが複数の前記混雑リンクを有する場合、前記パスごとに、該パスが経由する前記混雑リンクの数に応じた重み度数を決定し、前記混雑リンクを経由するパスの前記重み度数に基づいて生成されることを特徴とする付記12に記載のネットワーク設計方法。
(付記14) 前記優先度情報は、前記制約条件のために波長を割り当てられない場合に生成される(ことを特徴とする付記10乃至13の何れかに記載のネットワーク設計方法。
(付記15) 前記上限数は、計数されたパスの数を、前記伝送システムにより前記波長多重光信号に多重可能な波長の総数で除算して得た値に基づいて設定されることを特徴とする付記9乃至14の何れかに記載のネットワーク設計方法。
(付記16) 前記上限数は、外部からの操作に応じて補正されることを特徴とする付記9乃至15の何れかに記載のネットワーク設計方法。
(付記17) 複数の波長の光信号がそれぞれ伝送される複数のパスが設けられたネットワークにおけるノード間のリンクごとに、前記リンクを経由するパスの数を計数し、
計数されたパスの数に基づいて、前記リンクごとに、波長多重光信号を伝送するために用いられる伝送システムの上限数を設定し、
前記リンクごとに、重複して使用可能な同一波長の光信号の数を、前記設定処理部により設定された前記上限数以下とする制約条件に従って、前記波長多重光信号に多重される光信号の波長を前記複数のパスの各々に割り当てる、処理をコンピュータに実行させ、
前記波長を割り当てる処理において、前記制約条件のために波長を割り当てられない場合(St5)、前記制約条件を緩和して、波長を割り当てることを特徴とするネットワーク設計プログラム。
(付記18) 前記制約条件のために波長を割り当てられない場合、前記リンクの各々の優先度を示す優先度情報に基づいて選択した前記リンクに対応する前記上限値を増加させることによって、前記制約条件を緩和することを特徴とする付記17に記載のネットワーク設計プログラム。
(付記19) 前記優先度情報は、前記波長多重光信号に多重可能な波長の総数に対する、前記リンクを経由する前記パスの数の比率に基づいて生成されることを特徴とする付記18に記載のネットワーク設計プログラム。
(付記20) 前記優先度情報は、前記ネットワークにおいて所定数以上の前記パスが経由する前記リンクを混雑リンクとして選択し、前記混雑リンクを除く前記リンクごとに、該リンクを経由する前記パスのうち、前記混雑リンクを経由する前記パスの数に基づいて生成されることを特徴とする付記18または19に記載のネットワーク設計プログラム。
(付記21) 前記優先度情報は、前記ネットワークが複数の前記混雑リンクを有する場合、前記パスごとに、該パスが経由する前記混雑リンクの数に応じた重み度数を決定し、前記混雑リンクを経由するパスの前記重み度数に基づいて生成されることを特徴とする付記20に記載のネットワーク設計プログラム。
(付記22) 前記優先度情報は、前記制約条件のために波長を割り当てられない場合に生成されることを特徴とする付記18乃至21の何れかに記載のネットワーク設計プログラム。
(付記23) 前記上限数は、計数されたパスの数を、前記伝送システムにより前記波長多重光信号に多重可能な波長の総数で除算して得た値に基づいて設定されることを特徴とする付記17乃至22の何れかに記載のネットワーク設計プログラム。
(付記24) 前記上限数は、外部からの操作に応じて補正されることを特徴とする付記17乃至23の何れかに記載のネットワーク設計プログラム。