JP5982549B1 - リグノセルロース系バイオマスの前処理方法及び前処理装置 - Google Patents

リグノセルロース系バイオマスの前処理方法及び前処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】特別な設備を使用せずに、短時間でリグノセルロース系バイオマス中の触媒濃度を均一にするリグノセルロース系バイオマスの前処理方法及び前処理装置を提供する。【解決手段】本発明は、リグノセルロース系バイオマスの前処理方法であって、前処理反応系の含水率がリグノセルロース系バイオマス中の含水率以上となるようにリグノセルロース系バイオマスに触媒溶液を添加する工程と、前記リグノセルロース系バイオマスから前記触媒溶液を搾汁する工程と、前記搾汁された触媒溶液を回収し循環させて、リグノセルロース系バイオマスへの添加に再利用する工程と、を有することを特徴とする前処理方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、リグノセルロース系バイオマスの前処理方法及び前処理装置に関する。
近年、地球温暖化対策や、廃棄物の有効活用の観点から、植物資源を原料とするバイオマスの利用が注目されている。一般に、バイオマスからエタノール等の化合物を製造するための原料としては、サトウキビ等の糖質やトウモロコシ等のデンプン質が多く用いられている。しかしながら、これらの原料はもともと食料又は飼料として用いられており、長期的に工業用利用資源として活用することは、食料又は飼料用途との競合を引き起こし、原料価格の高騰を招く危険性がある。
従って、非食用バイオマスをエネルギー資源として活用する技術開発が進められている。非食用バイオマスとしては、地球上に最も多く存在するセルロースがあげられるが、その大部分は芳香族ポリマーのリグニンやヘミセルロースとの複合体であるリグノセルロースとして存在する。このリグノセルロースは、セルロース、ヘミセルロース、リグニンが強固に結合した構造をしており、発酵に使用可能である五炭糖若しくは六炭糖の単糖やオリゴ糖に分解するのは容易ではない。
従って、酸やアルカリ等の触媒添加と蒸煮からなる前処理工程が必要となる。前処理工程の目的は、リグノセルロースを構成するヘミセルロースやリグニンといったポリマーを分解し、後工程におけるセルロースの反応性を向上させることである。
リグノセルロースを用いた製紙プラントやエタノールプラントの前処理蒸煮装置は、多くの場合スクリュー型の連続処理設備が採用されている。これらの装置では、スクリュー内の高圧雰囲気を維持するために、投入前のリグノセルロースにおいて充填率を高める目的で圧搾処理が行われ、リグノセルロース含水率が50%程度に制御されることが一般的である。バガスなどの原料リグノセルロースは水分率が50%付近であるため、触媒添加前後で含水率が変化しない。
前処理工程における酸や塩基などの触媒添加量制御は非常に重要であり、不足の場合はポリマーの分解が不十分となり、過剰な場合は糖化分解物が発生しその後の工程を阻害することが知られている。触媒の添加量を適切に制御した場合においても、リグノセルロース内で触媒濃度がばらついていると、部分的な前処理の不足や過分解が生じ、その後の工程における収率や反応速度を低下させてしまう。
非特許文献1には、原料リグノセルロースに対して、目的触媒濃度及び目的含水率を達成するよう、水および触媒を添加した後、混練を行う方法が開示されている。
特許文献1には、触媒添加および混練工程の前に、リグノセルロースの温度が80〜100℃になるよう常圧下で蒸気加熱した後、圧搾処理を行う方法が開示されている。
特表2014−520538号公報
食品総合研究所、J.Appl.Glycosci.(2013)60,177−185
非特許文献1は、プロセスフローがシンプルであり、必要な装置が少ないという利点がある。しかしながら、含水率が高いと蒸煮時の熱量を多く消費してしまうこと、更には設備制約があることから、硫酸による処理後のバイオマス含水率を小さくするために、添加する硫酸が少量である。このため、リグノセルロース粒子に均等に硫酸を添加することが難しく、粒子間で濃度のばらつきが大きくなってしまう。また、高濃度の硫酸を添加するため、リグノセルロース粒子表面の濃度が非常に大きくなり、粒子内外の硫酸濃度差が大きくなってしまう。
特許文献1は、蒸気処理及び圧搾処理により、繊維を軟化させ、水分及び化学触媒を均一に分散させることができる。また、阻害要因となる不純物を、圧搾処理によって除去できる。しかしながら、含水率が高いと蒸煮時の熱量を多く消費してしまうこと、更には設備制約があることから、硫酸による処理後のバイオマス含水率を小さくするために、添加する硫酸が少量かつ高濃度であるため、非特許文献1と同様の問題が生じる。また、蒸気処理及び圧搾処理用に装置と電力が必要となる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、特別な設備を使用せずに、短時間でリグノセルロース系バイオマス中の触媒濃度を均一にするリグノセルロース系バイオマスの前処理方法及び前処理装置を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)蒸煮工程に移行される前に実施されるリグノセルロース系バイオマス前処理方法であって、前処理反応系の含水率がリグノセルロース系バイオマス中の含水率以上となるようにリグノセルロース系バイオマスに触媒溶液を添加する工程と、前記触媒溶液添加工程の後、前記リグノセルロース系バイオマスから前記触媒溶液を搾汁する工程と、前記搾汁された触媒溶液を回収し循環させて、リグノセルロース系バイオマスへの添加に再利用する工程と、を有することを特徴とする前処理方法。
(2)さらに、前記触媒溶液添加工程の後であって、前記触媒溶液搾汁工程の前に、
前記リグノセルロース系バイオマスと前記触媒溶液とを混練する工程を有する(1)に記載の前処理方法。
(3)使用するリグノセルロース系バイオマスが高含水率のとき、前記触媒溶液添加工程の前にリグノセルロース系バイオマスから水分を搾汁する工程を有する(1)又は(2)に記載の前処理方法。
(4)前記触媒溶液添加工程において、触媒溶液添加後のリグノセルロース系バイオマスの含水率が55%以上となるように触媒溶液の添加量を調整する(1)〜(3)のいずれか一つに記載の前処理方法。
(5)前記触媒溶液搾汁工程の後のリグノセルロース系バイオマスの含水率が70%未満である(1)〜(4)のいずれか一つに記載の前処理方法。
(6)前記回収された触媒溶液のpHを測定する工程と、前記回収された触媒溶液に濃縮触媒溶液を混合し、添加する触媒溶液のpHが一定になるように管理する工程と、を有する(1)〜(5)のいずれか一つに記載の前処理方法。
(7)前記回収された触媒溶液の量が、触媒溶液の循環再利用工程での保管許容量を超えるとき、前記回収された触媒溶液を再利用せずに廃棄する工程を有する(1)〜(6)のいずれか一つに記載の前処理方法。
(8)前記触媒溶液が、硫酸溶液、塩酸溶液、硝酸溶液、リン酸溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、水酸化カルシウム溶液及びアンモニア水溶液からなる群から選択された少なくとも1つである(1)〜(7)のいずれか一つに記載の前処理方法。
(9)蒸煮器の前に配設されるリグノセルロース系バイオマスの前処理装置であって、触媒溶液が添加されたリグノセルロース系バイオマスから前記触媒溶液を搾汁するための搾汁機と、前記触媒溶液を循環させて再利用するための触媒溶液循環機構と、を備えることを特徴とする前処理装置。
(10)前記搾汁機が、前記リグノセルロース系バイオマスと前記触媒溶液とを混練するための混練機を備える(9)に記載の前処理装置。
(11)前記触媒溶液循環機構は、前記搾汁された触媒溶液を保管し、再利用するための第一の触媒溶液保管槽を備える(9)又は(10)に記載の前処理装置。
(12)さらに、前記触媒循環機構は、濃縮触媒溶液を前記第一の触媒溶液保管槽に補充するための第二の触媒溶液保管槽を備える(11)に記載の前処理装置。
(13)さらに、前記第一の触媒溶液保管槽のpHを一定に保つために、前記第一の触媒溶液保管槽に配設されたpHモニタリング装置と、前記第一の触媒溶液保管槽と前記第二の触媒溶液保管槽との間に配設され、前記pHモニタリング装置のpHに応じて開閉が制御された投入弁と、を備える(12)に記載の前処理装置。
(14)前記搾汁機に配設され、触媒溶液をリグノセルロース系バイオマスに噴霧する噴霧器を備える(9)〜(13)のいずれか一つに記載の前処理装置。
(15)前記搾汁機を用いた搾汁後のリグノセルロース系バイオマスの含水率が70%未満である(9)〜(14)のいずれか一つに記載の前処理装置である。
(16)前記搾汁された触媒溶液の量が前記触媒溶液循環機構内の容量を超えるとき、前記搾汁された触媒を再利用せずに廃棄する(9)〜(15)のいずれか一つに記載の前処理装置。
(17)前記触媒溶液が、硫酸溶液、塩酸溶液、硝酸溶液、リン酸溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、水酸化カルシウム溶液及びアンモニア水溶液からなる群から選択された少なくとも1つである(9)〜(16)のいずれか一つに記載の前処理装置。
本発明のリグノセルロース系バイオマスの前処理方法及び前処理装置によれば、特別な設備を使用せずに、短時間でリグノセルロース系バイオマス中の触媒濃度が均一になり、反応性を定常に保つことができる。また、触媒を再利用することでコストを抑えることができる。
本発明の第一実施形態に係るリグノセルロース系バイオマスの前処理装置の概略構成を示す図である。 (a)従来技術のリグノセルロース系バイオマスの前処理方法におけるリグノセルロースバイオマス中の水、固形、触媒の含有量の変化を示す図である。(b)従来技術のリグノセルロース系バイオマスの前処理方法におけるバイオマス粒子中の触媒濃度の変化を示す図である。 (a)本発明に係るリグノセルロース系バイオマスの前処理方法におけるリグノセルロースバイオマス及び触媒溶液中の水、固形、触媒の含有量の変化を示す図である。(b)本発明に係るリグノセルロース系バイオマスの前処理方法におけるバイオマス粒子中の触媒濃度及び触媒溶液の濃度の変化の一例を示す図である。 本発明の第二実施形態に係るリグノセルロース系バイオマスの前処理装置の概略構成を示す図である。 本発明の第三実施形態に係るリグノセルロース系バイオマスの前処理装置の概略構成を示す図である。 本発明の第四実施形態に係るリグノセルロース系バイオマスの前処理装置の概略構成を示す図である。 本発明の第五実施形態に係るリグノセルロース系バイオマスの前処理装置の概略構成を示す図である。 試験例1において、pHの異なる前処理済バガスを糖化することで得られたグルコース及びキシロースの収量を示したグラフである。 試験例1において、pHの異なる前処理済バガス中に含まれる発酵阻害物質の量を示したグラフである。 試験例2において、実施例1及び比較例1で採取したサンプルのpHのばらつきを示したグラフである。
本発明の製造方法で処理対象となるリグノセルロース系バイオマスは主に、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンを含有するものであり、例えば針葉樹、広葉樹、建築廃材、林地残材、剪定廃材、稲藁、籾殻、麦藁、木材チップ、木材繊維、化学パルプ、古紙、合板等の農林産物資源、サトウキビバガス、サトウキビ茎葉、コーンスト―バー、ネピアグラス等の農林産物廃棄物、農林産物加工品及び大型藻類、微細藻類等の植物組織である。これらのリグノセルロース系バイオマスは単独であってもよく、混合物であってもよい。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する、なお、各図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態に係るリグノセルロース系バイオマスの前処理装置の概略構成を示す図である。
本実施形態のリグノセルロース系バイオマスの前処理装置10は、(混練)搾汁機1と、触媒循環機構2と、が配管を介して配設されている。
(混練)搾汁機1は、後工程である蒸煮工程において、リグニンの分解若しくは軟化、又は、ヘミセルロース及びセルロースの分解をおこなうために、リグノセルロース系バイオマスに触媒溶液を添加し、さらに、触媒溶液を添加したリグノセルロース系バイオマスから余分な触媒溶液を取り除くために搾汁するための装置である。また、(混練)搾汁機1は、前記リグノセルロース系バイオマスと前記触媒溶液とを混練するための混練機を備えることが好ましい。たとえば、スクリュープレスなどが挙げられる。
本実施形態において、触媒溶液とは、リグニンの分解若しくは軟化、又は、ヘミセルロース及びセルロースの分解をおこなうためのものであって、濃縮された触媒を水で希釈したものを意味する。例えば、硫酸溶液、塩酸溶液、硝酸溶液、リン酸溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、水酸化カルシウム溶液およびアンモニア水溶液から選択された少なくとも1つであることが好ましい。
触媒溶液循環機構2は、回収された触媒溶液を保管し、(混練)搾汁機1へ投入するように触媒溶液を循環させて再利用するための機構であり、特別な制限はないが、耐酸性又は耐アルカリ性を有することが好ましい。
次に、図1に示す前処理装置10を用いたリグノセルロース系バイオマスの前処理方法の一例について説明する。
まず、(混練)搾汁機1において、前処理反応系の含水率がリグノセルロース系バイオマス中の含水率以上となるようにリグノセルロース系バイオマスに触媒溶液を添加する。さらに、前記リグノセルロース系バイオマスから前記触媒溶液を搾汁する。このとき、前記触媒溶液を添加する工程の後であって、前記触媒溶液を搾汁する工程の前に、前記リグノセルロース系バイオマスと前記触媒溶液とを混練する工程を有することが好ましい。
前処理済リグノセルロース系バイオマスは次の工程である蒸煮工程に移行する。また、(混練)搾汁機1において搾汁された触媒溶液を回収し、触媒溶液循環機構2において循環させて、リグノセルロース系バイオマスへの添加に再利用する。
本実施形態の前処理方法は、常温において行うことができるため、温度調整のための特別な工程等を必要としない。また、本実施形態の前処理装置は、温度調整のための特別な設備等を必要としない。
図2に示すように、従来技術では、濃度が高く少量の触媒溶液とリグノセルロース系バイオマスとを混練していたため、リグノセルロース系バイオマス粒子に均等に硫酸を添加することが難しく、粒子間で濃度のばらつきが大きくなっていた。したがって、触媒溶液が薄いところでは、リグノセルロース系バイオマスの分解が進まず、また、触媒溶液が濃いところでは、リグノセルロース系バイオマスが過分解し、発酵阻害物質が生成されてしまっていた。
一方、図3に示すように、本実施形態では、触媒を多量の水で希釈した、濃度が低く多量の触媒溶液を添加しており、粒子間で添加量のばらつきが生じにくい。さらに、低濃度の触媒溶液を添加しているため、リグノセルロース系バイオマス粒子に浸透した触媒溶液の濃度についてもばらつきが生じにくい。したがって、リグノセルロース系バイオマスが均一に分解され、単糖を多く得ることができ、さらに発酵阻害物質が生成されにくい。
本実施形態において、発酵阻害物質とは、酵素を用いた糖化工程や発酵工程で、酵素反応や発酵反応を妨害する物質のことである。代表的な発酵阻害物質としては、糖の過分解物、リグニンやリグニン由来の芳香族化合物、接着剤若しくは塗料由来の化合物が挙げられる。この中で、接着剤若しくは塗料などの人工的な薬品に由来する化合物は、それらの処理が施されていない自然由来のリグノセルロース系バイオマスを使用することにより、ある程度回避可能である。しかし、リグノセルロース系バイオマスを原料とする限り、糖の過分解物やリグニン由来の芳香族化合物の生成を回避することが困難である。ここで、発酵阻害物質がリグニンのような不溶性固体であり、セルロース、ヘミセルロース、単糖及び/またはオリゴ糖が可溶性である場合には、通常の固液分離によって除去することが可能な場合もある。しかしながら、発酵阻害物質も有用物も可溶性である場合には、通常の固液分離が適用できないため、本発明の後述の発酵阻害物質を除去する処理方法が好ましく適用される。すなわち、本発明で、主に処理対象とする発酵阻害物質は、実質的にセルロース、ヘミセルロース、単糖及び/またはオリゴ糖との混合溶液を形成しているものであり、通常の固液分離では分離できないかまたは分離し難い状態のものを指す。そのような発酵阻害物質としては、例えば、酢酸、ギ酸、レブリン酸、糖の過分解物であるフルフラール、5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)、リグニン由来の芳香族化合物であるバニリン、アセトバニリン、グアヤコールなどが挙げられる。これら発酵阻害物質のうち、代表的な発酵阻害物質は酢酸、ギ酸、フルフラール、5−HMFである。
また、低濃度で多量の触媒溶液を添加するため、従来技術と比較して、触媒溶液の添加時におけるリグノセルロース系バイオマス中の触媒濃度を均一することができる。そのため、従来技術において混練時間が4時間程度要するのに対し、本実施形態においては、混練時間は、30分以下でよく、また、混練工程を有さずとも、リグノセルロース系バイオマス中の触媒濃度を均一にすることができる。
通常、サトウキビバガス等のリグノセルロース系バイオマスの含水率は50%程度であるが、使用するリグノセルロース系バイオマスが50%以上の高含水率のときは、前記触媒溶液添加工程前にリグノセルロース系バイオマスから水分を搾汁することで、上述のようにリグノセルロース系バイオマス中に短時間で均一に触媒溶液を浸透させることができる。
また、本実施形態の前処理方法は、触媒溶液添加工程において、触媒溶液添加後のリグノセルロース系バイオマスの含水率が55%以上となるように触媒溶液の添加量を調整することが好ましく、65%以上となるように調整することがより好ましく、75%以上となるように調整することがさらに好ましい。触媒溶液添加後のリグノセルロース系バイオマスの含水率を55%以上に高めることにより、上述のようにリグノセルロース系バイオマス中に短時間で均一に触媒溶液を浸透させることができる。
また、触媒溶液が酸であるとき、リグノセルロース系バイオマスは酸による加水分解を受けるが、この加水分解反応の触媒はプロトンであることから、本発明の前処理後に実施される蒸煮工程時の酸強度のパラメーターを支配しているのは、リグノセルロース系バイオマス中の酸濃度ではなく、リグノセルロース系バイオマス中の水分のpHであると考えられる。なお、本明細書において、「リグノセルロース系バイオマス中の酸濃度」とは、リグノセルロース系バイオマスの乾燥時の重量に対する触媒溶液の重量の比を意味する。
そのため、リグノセルロース系バイオマス中の含水率を低下させることで、前処理における加水分解強度を変化させることなく、触媒溶液の消費重量を削減できる。またリグノセルロース系バイオマス中の含水率を低下させると、蒸煮工程に必要な熱量を潜熱分だけ削減できる。
したがって、触媒溶液搾汁工程後のリグノセルロース系バイオマスの含水率は、80%未満が好ましく、70%未満がさらに好ましい。
回収された触媒溶液にはリグノセルロース系バイオマス由来の固形分のうち、可溶化しているものと、可溶していないものが混在する。可溶化している固形分濃度および可溶化していない固形分濃度は、一定運転時間後は消費量と投入量が一致し、いずれも一定濃度に達するため、触媒溶液を再利用し続けることに対して問題とならない。従って、触媒溶液は制限なく繰り返し利用し続けることが可能である。しかしながら、前処理反応系内において触媒溶液の保管及び投入を制御する触媒循環機構の容量に限りがあるため、触媒溶液の循環再利用工程での保管許容量を超えるとき、前記回収された触媒溶液を再利用せずに廃棄する。
<第二実施形態>
図4は、本発明の第二実施形態に係るリグノセルロース系バイオマスの前処理装置の概略構成を示す図である。
本実施形態のリグノセルロース系バイオマスの前処理装置20は、(混練)搾汁機1と、搾汁された触媒溶液を保管し、再利用するための第一の触媒溶液保管槽2Aと、が配管を介して配設されている。
本実施形態のリグノセルロース系バイオマスの前処理装置20は、第一の触媒溶液保管槽2Aが配設されている点で、図1に示す前処理装置10と相違し、その他の構成は前処理装置10と同じである。
なお、図4において、図1に示す構成要素と同一のものについては同じ符号を用いている。
第一の触媒溶液保管槽2Aは、触媒溶液循環機構2を構成するものであって、リグノセルロース系バイオマスと混練し、搾汁された触媒溶液を回収し、再利用するために保管する槽であり、特別な制限はないが、耐酸性又は耐アルカリ性を有する素材で作られていることが好ましい。
次に、図4に示す前処理装置20を用いたリグノセルロース系バイオマスの前処理方法一例について説明する。
触媒溶液添加工程、触媒溶液搾汁工程までは第一実施形態と同様であり、搾汁された触媒溶液は、第一の触媒溶液保管槽2Aに保管される。触媒溶液添加工程と触媒溶液搾汁工程との間に混練工程があってもよい。保管された触媒溶液は、リグノセルロース系バイオマスが投入される際に、必要な量だけ配管を介して(混練)搾汁機1に投入され、利用される。
<第三実施形態>
図5は、本発明の第三実施形態に係るリグノセルロース系バイオマスの前処理装置の概略構成を示す図である。
本実施形態のリグノセルロース系バイオマスの前処理装置30は、(混練)搾汁機1と、第一の触媒溶液保管槽2Aと、さらに、濃縮触媒溶液を前記第一の触媒溶液保管槽に補充するための第二の触媒溶液保管槽2Bと、が配管を介して配設されている。
本実施形態のリグノセルロース系バイオマスの前処理装置30は、第二の触媒溶液保管槽2Bが配設されている点で、図4に示す前処理装置20と相違し、その他の構成は前処理装置20と同じである。
なお、図5において、図4に示す構成要素と同一のものについては同じ符号を用いている。
第二の触媒溶液保管槽2Bは、触媒溶液循環機構2を構成するものであって、濃縮触媒溶液を保管し、第一の触媒溶液保管槽2Aに補充するための槽であり、第一の触媒溶液保管槽2Aの近くに配設されている。第一の触媒溶液保管槽2Aと同様に、特別な制限はないが、耐酸性又は耐アルカリ性を有する素材で作られていることが好ましい。
本実施形態において、濃縮触媒溶液とは、濃縮された上述の触媒溶液を意味し、購入したばかりの新しいものでも、一度本実施形態において使用したものを濃縮させたものでもかまわない。
次に、図5に示す前処理装置30を用いたリグノセルロース系バイオマスの前処理方法の一例について説明する。
触媒溶液添加工程、触媒溶液搾汁工程までは第一実施形態および第二実施形態と同様であり、搾汁された触媒溶液は、第一の触媒溶液保管槽2Aに保管される。触媒溶液添加工程と触媒溶液搾汁工程との間に混練工程があってもよい。第二の触媒溶液保管槽2Bは必要に応じて、第一の触媒溶液保管槽2Aに触媒溶液を補充する。補充された触媒溶液は、リグノセルロース系バイオマスが投入される際に、必要な量だけ配管を介して(混練)搾汁機1に投入され、利用される。
<第四実施形態>
図6は、本発明の第四実施形態に係るリグノセルロース系バイオマスの前処理装置の概略構成を示す図である。
本実施形態のリグノセルロース系バイオマスの前処理装置40は、(混練)搾汁機1と、第一の触媒溶液保管槽2Aと、第二の触媒溶液保管槽2Bと、第一の触媒溶液保管槽2AのpHを一定に保つために、第一の触媒溶液保管槽2Aに配設されたpHモニタリング装置2Cと、第一の触媒溶液保管槽2Aと第二の触媒溶液保管槽2Bとの間に配設され、pHモニタリング装置2CのpHに応じて開閉が制御された投入弁2Dと、が配管を介して配設されている。
本実施形態のリグノセルロース系バイオマスの前処理装置40は、pHモニタリング装置2Cと、投入弁2Dと、が配設されている点で、図5に示す前処理装置30と相違し、その他の構成は前処理装置30と同じである。
なお、図6において、図5に示す構成要素と同一のものについては同じ符号を用いている。
pHモニタリング装置2Cは、触媒溶液循環機構2を構成するものであって、第一の触媒溶液保管槽2Aに配設され、第一の触媒溶液保管槽2内のpHを計測するための装置であり、特別な制限はないが、pHを計測する電極が酸性又はアルカリ性領域を正確に計測できるように校正されていることが好ましい。
投入弁2Dは、触媒溶液循環機構2を構成するものであって、第一の触媒溶液保管槽2Aと第二の触媒溶液保管槽2Bとの間に配設され、pHモニタリング装置2Cが測定したpHに応じて、開閉が制御されており、第一の触媒溶液保管槽2A内のpHを一定に保つようにするためのものである。特別な制限はないが、耐酸性又は耐アルカリ性を有する素材で作られていることが好ましい。
次に、図6に示す前処理装置40を用いたリグノセルロース系バイオマスの前処理方法の一例について説明する。
触媒溶液添加工程、触媒溶液搾汁工程までは第一実施形態、第二実施形態および第三実施形態と同様であり、搾汁された触媒溶液は、第一の触媒溶液保管槽2Aに保管される。触媒溶液添加工程と触媒溶液搾汁工程との間に混練工程があってもよい。pHモニタリング装置2Cは、第一の触媒溶液保管槽2Aに配設されており、第一の触媒溶液保管槽2A内のpHを測定する。pHの値に応じて、投入弁2Dが開閉して第一の触媒溶液保管槽2Aの触媒溶液に、第二の触媒溶液保管槽2Bの濃縮触媒溶液を混合し、添加する触媒のpHが一定になるように管理する。
<第五実施形態>
図7は、本発明の第五実施形態に係るリグノセルロース系バイオマスの前処理装置の概略構成を示す図である。
本実施形態のリグノセルロース系バイオマスの前処理装置50は、(混練)搾汁機1と、第一の触媒溶液保管槽2Aと、第二の触媒溶液保管槽2Bと、が配管を介して配設され、さらに、pHモニタリング装置2Cが第一の触媒溶液保管槽2Aに配設されており、投入弁2Dが第一の触媒溶液保管槽2Aと第二の触媒溶液保管槽2Bとの間に配設されている。また、触媒溶液をリグノセルロース系バイオマスに噴霧する噴霧器3が、(混練)搾汁機1に配設されている。(混練)搾汁機1のリグノセルロース系バイオマスを投入する投入口付近に噴霧器3を配設することで、リグノセルロース系バイオマスと触媒溶液とをまんべんなく混合することが可能となる。
本実施形態のリグノセルロース系バイオマスの前処理装置50は、噴霧器3が配設されている点で、図6に示す前処理装置40と相違し、その他の構成は前処理装置40と同じである。
なお、図7において、図6に示す構成要素と同一のものについては同じ符号を用いている。
噴霧器6は、触媒溶液をリグノセルロース系バイオマスに均一にまんべんなく噴霧するための装置であり、特別な制限はない。触媒溶液が酸性又はアルカリ性の溶液であることから、耐酸性又は耐アルカリ性を有する素材で作られていることが好ましい。また、バイオマス由来の不溶性の固形分が希硫酸溶液中に存在すると想定される。このため、バイオマス由来の不溶性の固形分による目詰まりを防ぐことから、噴霧器の穴径は、プラグスクリューフィーダーなどの(混練)搾汁機内に配設された、パンチメタルなどの孔あけが施された板状やシート状の金属製部品の穴径より大きいことが好ましい。
次に図7に示す前処理装置50を用いたリグノセルロース系バイオマスの前処理方法の一例について説明する。
まず、第一の触媒溶液保管槽2A中の触媒溶液を、配管を介してポンプ等により噴霧器6に投入する。次いで、前処理反応系中の含水量がリグノセルロース系バイオマス中の含水率以上となるように、噴霧器6により触媒溶液をまんべんなくリグノセルロース系バイオマスに添加し、(混練)搾汁機に投入する。触媒溶液搾汁工程、及び触媒溶液の循環再利用工程については、第四実施形態と同様である。触媒溶液添加工程と触媒溶液搾汁工程との間に混練工程があってもよい。
上述した本実施形態のリグノセルロース系バイオマスの前処理方法および前処理方法は、リグノセルロース系バイオマス由来化合物の製造方法および製造装置において、好適に用いられる。
上述の本実施形態によれば、前処理でのリグノセルロース系バイオマスの分解度が均一化し、高い糖化率と低い発酵阻害物質発生率が両立することで、リグノセルロース系バイオマス由来化合物の収率が向上する。
本実施形態において、リグノセルロース系バイオマス由来化合物とは、リグノセルロース系バイオマスを分解して得られた単糖及びオリゴ糖を、酵母などが摂取することにより生成された化合物を意味し、例えば、エタノール、ブタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロールなどのアルコール、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸、乳酸など有機酸、イノシン、グアノシンなどのヌクレオシド、イノシン酸、グアニル酸などのヌクレオチド、カダベリンなどのジアミン化合物などが好ましく、エタノールが最も好ましい。発酵によって得られた化合物が乳酸などのモノマーである場合は、重合によりポリマーに変換することもある。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
[試験例1]リグノセルロース系バイオマスの前処理方法においてpHによる影響の検証
<リグノセルロース系バイオマスの希硫酸による前処理>
サトウキビ搾汁後の残渣であるサトウキビバガスを前処理原料とし、サトウキビバガス40kg(含水率約50%;サトウキビ乾燥重量20kg+水分20kg)に対して、ヴァーダーフレックスホースポンプ(日機装エイコー社製、型番VF15FCP−E−W2670H1−1)を用いて、pH1.0、1.1、1.2、1.5の希硫酸を含水率が75%(サトウキビ乾燥重量20kg+希硫酸添加前の水分20kg+希硫酸40kg)〜90%(サトウキビ乾燥重量20kg+希硫酸添加前の水分20kg+希硫酸160kg)となるようにそれぞれ添加し、スクリュープレス(SHX−150×1000 富国工業)を用いて、混練および搾汁を実施した。当社製の蒸煮装置を用いて蒸煮を実施し、前処理済サトウキビバガスを各約10kgずつ得た。
<酵素処理>
前処理済サトウキビバガスを10質量%の濃度となるように、それぞれ水で希釈した。酵素(Genencor社製、ACCELLERASE TRIO)を前処理済サトウキビバガスそれぞれに添加した。
50℃で48時間、酵素による糖化を行い、HPLC(島津製作所社製、検出器の型番228−45095−31)を用いて、酵素によって生成されたグルコース及びキシロースの量を測定し、HPLC(島津製作所社製、検出器の型番228−45095−31)を用いて、発酵阻害物質であるフルフラール、5−メチルフルフラール(5−HMF)、ギ酸及び酢酸の量を測定した。結果は、図8及び図9に示したとおりである。
<結果及び考察>
図8から、pH1.5では分解強度が弱いため、グルコースの収量が小さく、pH1.0〜1.1では分解強度が強いため、過分解が増加しグルコースの収量が小さい。一方、pH1.2では分解強度が適切であるため、グルコースの収量が大きく、またグルコースとキシロースの合計収量も大きい。
図9から、pH1.5では、分解強度が弱いため、発酵阻害物質の量が小さく、pH1.0〜1.1では、分解強度が強いため、過分解が増加し発酵阻害物質の量が非常に大きい。一方、pH1.2では、分解強度が適切であるため、発酵阻害物質の量はやや大きい程度でとどまっている。
したがって、pHは分解強度に大きな影響を与えるパラメーターであることが明らかとなった。糖の収量を大きくし、発酵阻害物質の量を小さくするためには、pHを適切な値に制御することが必要であり、適切なpHは前処理の温度又は時間によって変化する。今回のように180℃、5分間蒸煮工程を行う場合には、pHは1.2が適切であった。
[実施例1]
サトウキビバガス12kg(含水率約50%)を前処理原料として使用し、パレットの中に投入した。約1.46質量%の希硫酸12.2kgを、三本線を引くようにパレットの右端から左端へ三回にわけて添加した。1kg‐wetずつ袋に小分けした。1kg‐wetとは、1kgの希硫酸を含んだサトウキビバガスを示している。希硫酸を含んだサトウキビバガスの含水率は、約75%であった。次に、スクリュープレス((SHX−150×1000 富国工業)にて混練及び搾汁を行った。原料添加速度は6kg−wet/h(1時間に6kgの希硫酸が添加された原料が処理されることを示している。)、スクリュー回転速度を4rpmに設定し、スクリュープレス内のバガスの滞留時間は20〜30分であり、混練開始から20〜30分後からスクリュープレスの出口から前処理済バガスが搬出され始めた。混練開始30分後から、30分毎に4回(つまり、混練開始から30分後、60分後、90分後、120分後)、10g‐wetを各3サンプル、無作為にサンプリングし、合計12サンプルを後述の試験例2に用いた。
[比較例1]
触媒添加工程は実施例1と同様に、サトウキビバガス12kg(含水率約50%)をパレットの中に投入し、50質量%の希硫酸120gを、三本線を引くようにパレットの右端から左端へ三回にわけて添加した。続いて、1kg‐wetずつ袋に小分けした。希硫酸を含んだサトウキビバガスの含水率は、約50%であった。次に、スクリュープレス((SHX−150×1000 富国工業)にて背圧を与えず、混練のみを行った。原料添加速度は3kg−wet/h(1時間に3kgの希硫酸が添加された原料が処理されることを示している。)、スクリュー回転速度を4rpmに設定し、スクリュープレス内のバガスの滞留時間は20〜30分であり、混練開始から20〜30分後からスクリュープレスの出口から前処理済バガスが搬出され始めた。添加開始から30分毎に4回(つまり、添加から30分後、1時間後、1時間30分後、2時間後)、10gのサンプルを各3サンプル、無作為にサンプリングし、合計12サンプルを後述の試験例2に用いた。
[試験例2]本発明の前処理方法によるリグノセルロース系バイオマス中のpHのばらつき抑制効果の検証
実施例1および比較例1の前処理済サトウキビバガス(各12サンプル、合計24サンプル)のpHをpH Ion Meter (Horiba F−53) 電極 (Horiba Model 9680)を用いて計測した。なお、前処理済みサトウキビバガスは含水率50%であるため、搾汁を実施し搾汁液のpHを測定することは困難である。そのため前処理済みサトウキビバガス10gに水90gを添加してスターラーによる撹拌を行った後、水中のpHを測定し、以下の式[1]で表される換算式から前処理済みサトウキビバガスのpH算出を行った。前処理済みサトウキビバガスは含水率50%であることから、水の添加でプロトン濃度は20倍希釈されていると考えられる。結果を図10に示した。
Figure 0005982549
<結果及び考察>
図10から比較例1では各サンプルでのpHのばらつきが大きいのに対し、実施例1では各サンプルでのpHのばらつきが小さかった。これは、比較例1では、添加する希硫酸の濃度が高く量が少ないため、サトウキビバガス粒子間での希硫酸の添加量のばらつきが生じているのに対し、実施例1では、添加する希硫酸の濃度が低く量が多いため、サトウキビバガス粒子間での希硫酸の添加量のばらつきが生じにくいからである。
したがって、添加する希硫酸の濃度が低く量が多くすることで、サトウキビバガス粒子に希硫酸がまんべんなく浸透し、サトウキビバガスの分解強度を均一化できることが明らかとなった。
以上のことから、本発明に係るリグノセルロース系バイオマスの前処理方法及び前処理装置において、リグノセルロース系バイオマス中の含水率以上となるようにリグノセルロース系バイオマスに触媒溶液を添加し、搾汁することで、特別な設備を使用せずに、短時間でリグノセルロース系バイオマス中の触媒濃度を均一にできることが明らかとなった。
1…(混練)搾汁機、2…触媒溶液循環機構、2A…第一の触媒溶液保管槽、2B…第二の触媒溶液保管槽、2C…pHモニタリング装置、2D…投入弁、3…噴霧器、10,20,30,40,50…前処理装置。

Claims (17)

  1. 蒸煮工程に移行される前に実施されるリグノセルロース系バイオマス前処理方法であって、
    前処理反応系の含水率がリグノセルロース系バイオマス中の含水率以上となるようにリグノセルロース系バイオマスに触媒溶液を添加する工程と、
    前記触媒溶液添加工程の後、前記リグノセルロース系バイオマスから前記触媒溶液を搾汁する工程と、
    前記搾汁された触媒溶液を回収し循環させて、リグノセルロース系バイオマスへの添加に再利用する工程と、
    を有することを特徴とする前処理方法。
  2. さらに、前記触媒溶液添加工程の後であって、前記触媒溶液搾汁工程の前に、
    前記リグノセルロース系バイオマスと前記触媒溶液とを混練する工程を有する請求項1に記載の前処理方法。
  3. 使用するリグノセルロース系バイオマスが高含水率のとき、前記触媒溶液添加工程の前にリグノセルロース系バイオマスから水分を搾汁する工程を有する請求項1又は2に記載の前処理方法。
  4. 前記触媒溶液添加工程において、触媒溶液添加後のリグノセルロース系バイオマスの含水率が55%以上となるように触媒溶液の添加量を調整する請求項1〜3のいずれか一項に記載の前処理方法。
  5. 前記触媒溶液搾汁工程の後のリグノセルロース系バイオマスの含水率が70%未満である請求項1〜4のいずれか一項に記載の前処理方法。
  6. 前記回収された触媒溶液のpHを測定する工程と、
    前記回収された触媒溶液に濃縮触媒溶液を混合し、添加する触媒溶液のpHが一定になるように管理する工程と、
    を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の前処理方法。
  7. 前記回収された触媒溶液の量が、触媒溶液の循環再利用工程での保管許容量を超えるとき、前記回収された触媒溶液を再利用せずに廃棄する工程を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の前処理方法。
  8. 前記触媒溶液が、硫酸溶液、塩酸溶液、硝酸溶液、リン酸溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、水酸化カルシウム溶液及びアンモニア水溶液からなる群から選択された少なくとも1つである請求項1〜7のいずれか一項に記載の前処理方法。
  9. 蒸煮器の前に配設されるリグノセルロース系バイオマスの前処理装置であって、
    触媒溶液が添加されたリグノセルロース系バイオマスから前記触媒溶液を搾汁するための搾汁機と、
    前記触媒溶液を循環させて再利用するための触媒溶液循環機構と、
    を備えることを特徴とする前処理装置。
  10. 前記搾汁機が、前記リグノセルロース系バイオマスと前記触媒溶液とを混練するための混練機を備える請求項9に記載の前処理装置。
  11. 前記触媒溶液循環機構は、前記搾汁された触媒溶液を保管し、再利用するための第一の触媒溶液保管槽を備える請求項9又は10に記載の前処理装置。
  12. さらに、前記触媒溶液循環機構は、濃縮触媒溶液を前記第一の触媒溶液保管槽に補充するための第二の触媒溶液保管槽を備える請求項11に記載の前処理装置。
  13. さらに、前記第一の触媒溶液保管槽のpHを一定に保つために、前記第一の触媒溶液保管槽に配設されたpHモニタリング装置と、
    前記第一の触媒溶液保管槽と前記第二の触媒溶液保管槽との間に配設され、前記pHモニタリング装置のpHに応じて開閉が制御された投入弁と、
    を備える請求項12に記載の前処理装置。
  14. 前記搾汁機に配設され、触媒溶液をリグノセルロース系バイオマスに噴霧する噴霧器を備える請求項9〜13のいずれか一項に記載の前処理装置。
  15. 前記搾汁機を用いた搾汁後のリグノセルロース系バイオマスの含水率が70%未満である請求項9〜14のいずれか一項に記載の前処理装置。
  16. 前記搾汁された触媒溶液の量が前記触媒溶液循環機構内の容量を超えるとき、前記搾汁された触媒を再利用せずに廃棄する請求項9〜15のいずれか一項に記載の前処理装置。
  17. 前記触媒溶液が、硫酸溶液、塩酸溶液、硝酸溶液、リン酸溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、水酸化カルシウム溶液及びアンモニア水溶液からなる群から選択された少なくとも1つである請求項9〜16のいずれか一項に記載の前処理装置。
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