以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る貨幣処理装置1を正面側から見た斜視図である。
図1に示す貨幣処理装置1は、銀行等に設置される両替機である。
貨幣処理装置1は、中空のボックス状の装置本体2と、装置本体2内に収容されるカード処理ユニット3、バラ硬貨処理ユニット4、包装硬貨処理ユニット5、紙幣処理ユニット6およびレシート処理ユニット7とを備えている。
装置本体2では、その前側上部がL字状に切り欠かれていて、装置本体2の前側面は、略垂直に延びる垂直面8と、垂直面8の上端から後側へ略水平に延びる水平面9と、水平面9の後端から後上側へ少し傾斜して延びる傾斜面10とを含んでいる。
傾斜面10では、その幅方向略中央位置に、タッチパネルディスプレイを有する操作部11が設けられ、操作部11の左隣には、貨幣処理装置1が取扱中であるか否かを表示する取扱表示部12と、バラ硬貨取出口13とが、上からこの順番で設けられている。バラ硬貨取出口13は、専用のシャッター14によって開閉される。傾斜面10における操作部11の右隣には、顧客のカードを受け入れるカード挿入口15と、レシートが発行されるレシート発行口16とが、上からこの順番で設けられている。
水平面9では、左側に包装硬貨取出口17が形成され、右側に紙幣入出金口18が形成されている。包装硬貨取出口17は、専用のシャッター19によって開閉され、紙幣入出金口18は、専用のシャッター20によって開閉される。
垂直面8の右側上部には、貨幣処理装置1内に入金された貨幣に混ざっていた異物を返却するための異物返却口21が形成されている。
カード処理ユニット3は、カード挿入口15の後側に設けられている。カード処理ユニット3は、カード挿入口15に挿入された顧客のカードから必要な情報を読み取る。
バラ硬貨処理ユニット4は、バラ硬貨取出口13の後側に設けられている。バラ硬貨処理ユニット4は、バラ硬貨を収納し、両替の際、必要に応じた額のバラ硬貨をバラ硬貨取出口13に払い出す。
包装硬貨処理ユニット5は、所定数ごとにまとまった状態で包装された硬貨(包装硬貨)を収納している。包装硬貨処理ユニット5は、両替の際、必要に応じた額に相当する個数の包装硬貨を包装硬貨取出口17に払い出す。
紙幣処理ユニット6は、紙幣を金種毎に収納していて、両替の際、必要な額に相当する金種および枚数の紙幣を紙幣入出金口18に払い出すとともに、紙幣入出金口18に払い込まれた顧客の紙幣を収納する。
レシート処理ユニット7は、レシート発行口16の後側に設けられていて、両替に係る明細を記載したレシートをレシート発行口16から発行する。
貨幣処理装置1での両替に係る動作の概要を説明すると、顧客は、まず、操作部11を操作して、自分の紙幣をどの金種の貨幣(紙幣および硬貨の少なくともいずれか)に両替するのかを選択する。この際、顧客は、自分のカードをカード挿入口15に挿入して、今回の両替取引に係る履歴をカードや貨幣処理装置1に記録させてもよい。
顧客が両替したい金種を選択した後、シャッター20が開き、顧客は、両替したい自分の紙幣を紙幣入出金口18に投入する。
その後、シャッター20が閉まり、貨幣処理装置1内において両替処理が行われる。具体的には、入金された顧客の紙幣が紙幣処理ユニット6に回収されるとともに、顧客が両替を希望する金種の貨幣が、バラ硬貨処理ユニット4、包装硬貨処理ユニット5および紙幣処理ユニット6の少なくともいずれかから払い出される。払い出された貨幣を顧客が受け取ると、両替に係る取引が完了する。なお、取引完了の際、今回の両替に係る明細を記載したレシートがレシート発行口16から発行される。
図2は、貨幣処理装置1を背面側から見た斜視図であって、後扉26を開いた状態を示している。
図2を参照して、装置本体2の後面には、装置本体2内部に後方からアクセスするための本体開口部25が形成されている。本体開口部25は、装置本体2の後面のほぼ全域に亘る大きさであり、縦長の略矩形状である。
装置本体2には、後扉26が設けられている。後扉26は、本体開口部25をちょうど覆う大きさを有する縦長の略矩形板状である。後扉26は、装置本体2の後面の背面視における左端部に設けられたヒンジ(図示せず)を介して装置本体2に連結されていて、ヒンジを中心に回動することによって、本体開口部25を開閉する。
図2に示すように後扉26を後側へ開くと、装置本体2の内部が本体開口部25から後側へ露出される。図2では、紙幣処理ユニット6の後端部に設けられた3つのサブ収納庫27が露出されている。各サブ収納庫27には、紙幣を収納できる。3つのサブ収納庫27は、縦に並んで配置されている。そのため、貨幣処理装置1では、複数のサブ収納庫27を備えながら、横方向における大型化を回避できる。縦に並んだ3つのサブ収納庫27は、一体化されてサブ収納ユニット31を構成している。
サブ収納庫27は、たとえば幅広の略直方体形状をなす中空のボックス状であり、その後面には、収納庫開口部28が形成されている。収納庫開口部28は、サブ収納庫27の後面のほぼ全域に亘る大きさであり、横長の略矩形状である。収納庫開口部28は、サブ収納庫27の内部を後側(本体開口部25側)へ露出させる。そのため、貨幣処理装置1が稼動中であっても、装置本体2の後面側において、後扉26を開くと、本体開口部25側に露出された収納庫開口部28を介して、各サブ収納庫27に貨幣を装填することができる。
サブ収納庫27には、収納庫開口部28を開閉する収納庫扉29が設けられている。収納庫扉29は、サブ収納庫27の後面の背面視における右端部に設けられたヒンジ30を介してサブ収納庫27に連結されていて、ヒンジ30を中心に回動することによって、収納庫開口部28を開閉する。図2では、縦に並んだ3つのサブ収納庫27において、最上位のサブ収納庫27では収納庫扉29が開いていて、残りのサブ収納庫27では収納庫扉29が閉じている。
図3は、紙幣処理ユニット6の斜視図である。図4は、貨幣処理装置1を背面側から見た斜視図であって、後扉26を開いて紙幣処理ユニット6を引き出している途中の状態を示している。
図3を参照して、紙幣処理ユニット6は、横方向(貨幣処理装置1の前後方向)に長手である。
紙幣処理ユニット6は、ユニット本体32と、複数(ここでは5つ)のメイン収納庫33と、前述した3つのサブ収納庫27(サブ収納ユニット31)とを含んでいる。
ユニット本体32は、横方向(前後方向)に長手の中空体であり、上面が開放されている。ユニット本体32の上面において開放された部分は、メイン収納庫33の数(ここでは5つ)の着脱口34に区分されている。5つの着脱口34は、ユニット本体32の長手方向に並んでいる。また、ユニット本体32の内部空間は、ユニット本体32の長手方向において5つの収容室(図示せず)に仕切られていて、各収容室は、ユニット本体32の長手方向において同じ位置にある着脱口34に対して下から連通している。
メイン収納庫33は、前後に扁平で上下に長手の中空のボックス状であり、内部に紙幣を収納することができる。また、メイン収納庫33の上端部には、略U字状のハンドル35が取り付けられている。略U字状のハンドル35の2つの遊端部がメイン収納庫33の上端部を挟んでいて、ハンドル35は、これらの遊端部を中心として回動可能である。
メイン収納庫33は、ユニット本体32に対して着脱可能である。図3では、奥(後)から2つ目のメイン収納庫33が着脱途中の状態にあり、残りのメイン収納庫33はユニット本体32に装着された状態にある。メイン収納庫33は、予め定められた着脱口34を介してユニット本体32の内部空間(前述した収容室)に挿入されることで、ユニット本体32に装着される。装着後のメイン収納庫33の上端部は、着脱口34から上方にはみ出ている。そして、この状態のメイン収納庫33を着脱口34から上に引き上げることで、メイン収納庫33をユニット本体32から離脱させることができる。
メイン収納庫33を着脱する際には、上向きに立てられたハンドル35が把持される。
ユニット本体32に装着されたメイン収納庫33では、ハンドル35は斜め下向きに傾いている。
サブ収納ユニット31は、ユニット本体32の後端部に対して後側から取り付けられていて、ユニット本体32と一体化されている。サブ収納ユニット31は、最も後側のメイン収納庫33に隣接している。この状態で、サブ収納ユニット31の各サブ収納庫27の収納庫開口部28は、後方を臨んでいる(図2および図4参照)。
装置本体2の後扉26を後側へ開いて本体開口部25を開放すると、紙幣処理ユニット6が本体開口部25から後方へ露出される(図2参照)。このとき、紙幣処理ユニット6では、後端に位置するサブ収納ユニット31が、本体開口部25から後方へ露出される(図2参照)。
図4に示すように、紙幣処理ユニット6の底面には、キャスター36が取り付けられているので、後扉26を開いた状態で紙幣処理ユニット6を後側へ引っ張ると、キャスター36が床面を転がることによって、紙幣処理ユニット6を後側へ引き出すことができる。逆に、引き出した紙幣処理ユニット6を装置本体2内部へ押し込めば、装置本体2に装着することができる(図2参照)。
図5は、貨幣処理装置1の要部の図解的な縦断面構造図である。図5では、紙幣処理ユニット6と、装置本体2において紙幣処理ユニット6に関連する部分とを抜き出して示している。
図5における左側が装置本体2の正面(前面)であり、その反対側(右側)が装置本体2の背面(後面)である。
図5における装置本体2の左上側に、前述した紙幣入出金口18が設けられている。図5では、紙幣入出金口18が、専ら紙幣が入金される紙幣入金口18Aと、専ら紙幣が出金される紙幣出金口18B(出金口)とに分けられている。また、装置本体2には、装填リジェクト部40および出金リジェクト部41という2つの収容室が設けられている。
そして、装置本体2内には、取込経路42と、搬送路43と、取出経路44と、識別部45(リジェクト貨幣検出手段)とが内蔵されている。
取込経路42は、紙幣入金口18Aに入金された紙幣を1枚ずつ取り込み、搬送路43へと送るための経路である。
搬送路43は、取込経路42から送られた紙幣を搬送するためのものであって、上下に扁平なループ状をなしており、搬送路43内の紙幣は、紙幣処理ユニット6の5つのメイン収納庫33の上方で、循環するように搬送される。搬送路43内の紙幣の搬送方向は、入金時や出金時で異なっており、図5における時計回りと反時計回りの方向である。
取出経路44は、搬送路43内の紙幣を紙幣出金口18Bへ送るための経路である。
識別部45は、搬送路43の上側部分の途中に配置されていて、搬送路43を搬送される紙幣の金種、正損、真偽等を識別する。つまり、識別部45は、リジェクトすべき紙幣(リジェクト紙幣)を検出する。
搬送路43の下側部分には、分岐路46、47、48、49、50、51の各一端が、搬送路43内の紙幣の(ここでは、反時計回りの)搬送方向における上流側から、この順番で接続されている。
分岐路46の他端は、図5における最も左(前)側のメイン収納庫33の内部につながっている。分岐路47の他端は、図5における左側から2番目のメイン収納庫33の内部につながっている。分岐路48の他端は、図5における左側から3番目のメイン収納庫33の内部につながっている。分岐路49の他端は、図5における左側から4番目のメイン収納庫33の内部につながっている。分岐路50の他端は、図5における最も右(後)側のメイン収納庫33の内部につながっている。
分岐路51の他端は、途中で分岐することによって、3つのサブ収納庫27のそれぞれの内部につながっている。
搬送路43の上側部分において、搬送路43内の識別部45の右(後)側には、分岐路52の一端が接続されている。分岐路52の他端は、装填リジェクト部40につながっている。
取込経路42の途中には、分岐路53の一端がつながっている。分岐路53の他端は、出金リジェクト部41につながっている。
また、装置本体2には、取込経路42や搬送路43内の紙幣を搬送するローラー54が設けられている。各メイン収納庫33には、分岐路46、47、48、49、50における対応する分岐路からの紙幣をメイン収納庫33内部に取り込んだり、メイン収納庫33内の紙幣を当該分岐路へ送り出したりするためのローラー55が設けられている。各サブ収納庫27には、分岐路51からの紙幣をサブ収納庫27内部に取り込んだり、サブ収納庫27内の紙幣を分岐路51へ送り出したりするためのローラー56が設けられている。
そして、搬送路43と分岐路46〜52のそれぞれとの接続位置には、分岐爪57が設けられており、分岐爪57を切り換えることによって、搬送路43内の紙幣を所望の分岐路46〜52へ搬送することができる。また、分岐爪57は、取込経路42と搬送路43との接続位置、取込経路42と分岐路53との接続位置、および、取出経路44と搬送路43との接続位置のそれぞれにも設けられている。
ここで、5つ並んだメイン収納庫33のうち、3つのメイン収納庫33は、出金のために準備された紙幣が収納される出金庫33Aとされ、別の1つのメイン収納庫33は、入金された紙幣が収納される入金庫33Bとされ、残りの1つのメイン収納庫33は、一時保留部(略して「一保(いちほ)」)33Cとされる。図5では、3つの出金庫33A、一保33C、入金庫33Bが、右側(前側)からこの順番で並んでいる。
3つの出金庫33Aは、たとえば、千円札、五千円札、二千円札に応じて区別されていて、いずれかの出金庫33Aには、千円札、五千円札および二千円札のいずれかの所定の金種の紙幣が収納される。
なお、図5では、出金庫33Aは3つ設けられているが、出金庫33Aの数は、任意で設定されるので、1つであってもよいし、4つ以上であってもよい。出金庫33Aが4つ以上あれば、4つ目以降の出金庫33Aには、千円札、五千円札および二千円札のいずれかの金種の紙幣が収納され、これにより、所定の金種の紙幣が2つ以上の出金庫33Aに収納されることになる。また、それぞれの金種の新券を設定、収納することもできる。
ここで、前述した3つのサブ収納庫27も、出金庫33Aと同様に、千円札、五千円札、二千円札に応じて区別されていて、各サブ収納庫27には、千円札、五千円札および二千円札のいずれかの所定の金種の紙幣が収納される。これらのサブ収納庫27は、紙幣の収納、紙幣出金口18Bへの出金、出金庫33A(メイン収納庫33)への紙幣の装填のうち、少なくとも2つをするために用いることができる。このように、一例として、複数のサブ収納庫27を金種毎に区別して、予備の紙幣を金種毎に分けて、対応するサブ収納庫27に収納することで、各サブ収納庫27に別々の役割を与えることができる。その結果、サブ収納庫27の用途を広げることができる。
貨幣処理装置1での紙幣に関する両替動作について説明すると、顧客の紙幣は、紙幣入金口18Aに払い込まれることで入金され、その後、取込経路42を通って搬送路43内を搬送される。その際、紙幣は、搬送路43によって時計回りに搬送され、識別部45で識別される。識別部45で識別された紙幣のうち、識別部45によってリジェクト紙幣であると識別された紙幣は、一保33C上を通過して搬送路43から取出経路44へと搬送され、紙幣出金口18Bから顧客に返却される。
識別部45によってリジェクト紙幣でないと識別された紙幣は、分岐路49を経て一保33Cに一時保留される。
その後、顧客によって指定された金種の紙幣が、一保33Cに一時保留されている紙幣の総額分だけ、対応する出金庫33Aから取り出されて搬送路43を搬送され、取出経路44へと搬送された後に、紙幣出金口18Bから顧客に出金される。これに応じて、一保33Cの紙幣は、入金庫33Bに収納され、以上で、紙幣に関する一連の両替動作が完了する。つまり、貨幣処理装置1は、入金された紙幣を、出金庫33A(メイン収納庫33)の紙幣で両替することができる。
ここで、出金庫33Aから取り出されて搬送路43を搬送されている出金途中の紙幣は、識別部45を通過する。その際、この紙幣がリジェクト紙幣であるか否かが識別部45によって識別される。識別部45によってリジェクト紙幣であると識別された出金途中の紙幣は、搬送路43から取込経路42および分岐路53を搬送され、出金リジェクト部41に収納される。出金リジェクト部41のリジェクト紙幣は、係員によって回収される。
また、出金庫33A内の紙幣がなくなった場合には、前述したように、開放された本体開口部25から紙幣処理ユニット6が後側へ引き出され、紙幣がなくなった出金庫33Aがユニット本体32から上方へ引き出される(図4参照)。そして、この出金庫33Aに、該当する金種の紙幣が補充された後、この出金庫33Aがユニット本体32に再び装着され、紙幣処理ユニット6が装置本体2に装着される(図2参照)。
なお、前述した3つのサブ収納庫27も、出金庫33Aと同様に、千円札、五千円札、二千円札に応じて区別されていて、いずれかのサブ収納庫27には、千円札、五千円札および二千円札のいずれかの所定の金種の紙幣が収納される。これらのサブ収納庫27は、出金庫33Aの紙幣が所定量未満まで減少したときに、両替中であれば、不足分の金種の紙幣を出金庫33Aの代わりに払い出し(出金)し、待機中であれば、当該出金庫33Aに紙幣を補充する。つまり、各サブ収納庫27は、出金庫33Aのバックアップ用として用いることができる。
図6は、貨幣処理装置1の制御回路ブロック図であり、この発明の特徴と関連する部分のみを示すブロック図である。
図6に示すように、貨幣処理装置1には、マイクロコンピュータ等で構成された制御部70(出金手段、補充手段)が備えられている。制御部70は、貨幣処理装置1の動作を制御する。特に、制御部70は、入金された紙幣と引き換えに出金(両替)される金種の紙幣の必要枚数を算出して、どの出金庫33Aから紙幣を出金するのかを決定する。
また、制御部70には、前述した識別部45および分岐爪57と、搬送モータ71と残量センサ72とが電気的に接続されている。なお、厳密には、制御部70には、分岐爪57を切り換えるモータ(図示せず)が接続されている。
搬送モータ71は、前述したローラー54,55,56(図5参照)を回転させる。残量センサ72は、各メイン収納庫33(図5参照)内の紙幣の有り高を検出する。残量センサ72は、各サブ収納庫27に紙幣があるか否かも検出する。
制御部70は、搬送モータ71を駆動することによってローラー54,55,56(図5参照)を回転させ、紙幣を貨幣処理装置1内で搬送する。この際、制御部70が各分岐爪57を動かすことによって、紙幣の搬送先が切り換えられる。そして、制御部70は、識別部45の識別結果によって、リジェクト紙幣の有無や紙幣の金種等を把握する。また、制御部70は、残量センサ72の検出結果によって、各メイン収納庫33(特に出金庫33A)における紙幣の有り高や、各サブ収納庫27における各金種の紙幣の有無を把握する。
図7は、貨幣処理装置1において行われる制御動作の一例を示すフローチャートである。
次に、図7を参照して、制御部70の行う制御動作の一例を説明する。ここでの制御動作は、出金庫33A内の有り高が所定量未満まで減ったときに行われる。ここでの所定量未満とは、補充が必要な程度に少ない(いわゆるニアエンプティに相当する)量である。
まず、貨幣処理装置1において両替が行われていない待機中の場合(ステップS1でYES)、制御部70は、有り高が所定量未満まで減少した出金庫33Aがあるか否かを確認する(ステップS2)。
有り高が所定量未満まで減少した出金庫33Aがあれば(ステップS2でYES)、制御部70は、この出金庫33Aが収納する紙幣と同一金種の紙幣を収納するサブ収納庫27があるか否かを確認する(ステップS3)。
該当するサブ収納庫27があれば(ステップS3でYES)、制御部70は、このサブ収納庫27から紙幣を引き出して、有り高が所定量まで減少した出金庫33Aに補充する(ステップS4)。これにより、サブ収納庫27に当該金種の紙幣がある限り、待機中に当該金種の紙幣をサブ収納庫27からメイン収納庫33(出金庫33A)に補充することで、メイン収納庫33からの当該金種の紙幣の出金(両替)が引き続き可能となる。そのため、サブ収納庫27に当該金種の紙幣がある間は、メイン収納庫33へ当該金種の紙幣を外部から補充するために貨幣処理装置1の運転を休止せずに済む。この結果、貨幣処理装置1の運転休止までの稼動時間を延ばすことができる。なお、紙幣を外部から補充するということは、紙幣処理ユニット6を装置本体2から引き出して、さらにメイン収納庫33(出金庫33A)をユニット本体32から引き出して当該メイン収納庫33に紙幣を補充するということである(図4参照)。
ステップS4での補充によって、紙幣が補充された出金庫33Aの有り高が前記所定量以上になった場合(ステップS5でYES)、制御部70は、今回の処理を終了する。
また、この補充によってサブ収納庫27の紙幣が少なくなってきたら、貨幣処理装置1が稼動中であっても、係員は、後扉26を開いて当該サブ収納庫27の収納庫扉29を開き、これによって開放された収納庫開口部28から当該サブ収納庫27に紙幣を手差しで補充できる(図2参照)。これにより、貨幣処理装置1の運転休止までの稼動時間をさらに延ばすことができ、いわゆる貨幣処理装置1のノンストップ運用が可能になる。
一方、紙幣が補充された出金庫33Aの有り高が前記所定量以上でない場合(ステップS5でNO)、制御部70は、該当する金種の紙幣を収納するサブ収納庫27が他にないか検索する(ステップS3)。該当する金種の紙幣を収納するサブ収納庫27が他にあれば(ステップS3でYES)、制御部70は、ステップS4およびS5の処理を繰り返す。
有り高が所定量未満の出金庫33Aがあるにもかかわらず、この出金庫33Aと同一金種の貨幣を収納するサブ収納庫27がなければ(ステップS3でNO)、制御部70は、ステップS6の処理を行う。ここでは、前提として、補充したい金種の紙幣を収納する出金庫33Aが2つ以上設けられている。
ステップS6では、制御部70は、有り高が前記所定量を超えていない出金庫33Aと同じ金種の紙幣を収納する他の出金庫33Aがあるか否かを確認する(ステップS6)。
該当する他の出金庫33Aがあれば(ステップS6でYES)、制御部70は、同一金種を収納する出金庫33Aの有り高の合計(合計有り高)が所定量以上あるかどうかを確認し、当該合計有り高が前記所定量以上あった場合(ステップS7でYES)、制御部70は、今回の処理を終了する。しかし、出金庫33Aの合計有り高が前記所定量以上でない場合(ステップS7でNO)、制御部70は、ステップS8の処理を行う。
ステップS8では、制御部70は、出金庫33Aに補充すべき金種の紙幣を紙幣入金口18A(図5参照)へ装填すること、または、この出金庫33Aを装置本体2から引き出して当該金種の紙幣を出金庫33Aに装填することを、操作部11(図1参照)において、所定時間報知する。この報知により、係員によって、装置本体2から出金庫33Aが引き出され、この出金庫33Aに対応する金種の紙幣が補充されたり(図4参照)、紙幣が紙幣入金口18Aに装填され、搬送路43を通じて当該出金庫33Aに補充されたりする(図5参照)。
このように、出金庫33A内の紙幣が所定量未満になった場合には、サブ収納庫27内の紙幣で補充することによって、係員が出金庫33Aへの紙幣の補充処理を直接行わなくても、貨幣処理装置1の稼動を極力継続できるようにしている。
一方、貨幣処理装置1において待機中でない両替中の場合(ステップS1でNO)、制御部70は、出金すべき金種のうち、不足する紙幣の金種があるか否かを確認する(ステップS9)。
紙幣が不足する金種がなければ(ステップS9でNO)、両替による出金は問題なく行われる。
紙幣が不足する金種があっても(ステップS9でYES)、制御部70は、当該金種について不足分の紙幣を、その金種の紙幣を収納するサブ収納庫27から引き出して出金するので、両替は滞りなく行われる(ステップS10)。よって、両替中に、メイン収納庫33(出金庫33A)において、出金すべき金種の紙幣がなくなっても、サブ収納庫27に当該金種の紙幣がある限り、出金庫33Aに代わってサブ収納庫27から当該金種の紙幣を出金(「代替出金」という)することで両替を継続できる(図5参照)。そのため、サブ収納庫27に当該金種の紙幣がある間は、メイン収納庫33への当該金種の紙幣の補充のために貨幣処理装置1の運転を休止せずに済む。この結果、貨幣処理装置1の運転休止までの稼動時間を延ばすことができる。
また、この代替出金によってサブ収納庫27の紙幣が少なくなってきたら、貨幣処理装置1が稼動中であっても、係員は、後扉26を開いて当該サブ収納庫27の収納庫扉29を開き、これによって開放された収納庫開口部28から当該サブ収納庫27に紙幣を手差しで補充できる(図2参照)。これにより、貨幣処理装置1の運転休止までの稼動時間をさらに延ばすことができ、いわゆる貨幣処理装置1のノンストップ運用が可能になる。
特に、出金庫33A(紙幣処理ユニット6)を装置本体2から引き出して出金庫33Aに紙幣を補充する場合、出金庫33Aを装置本体2に戻した時に、出金庫33A内の紙幣を識別部45で識別しなければならないので、貨幣処理装置1が休止状態から復旧するのにある程度の時間がかかる。しかし、後扉26を開いてサブ収納庫27に紙幣を手差しで補充する場合には、そもそも貨幣処理装置1を休止しなくてよい。
ちなみに、サブ収納庫27内の紙幣は、代替出金または補充されるために搬送路43を流れるときに、識別部45によって識別されるので、サブ収納庫27内にリジェクト紙幣があっても、そのリジェクト紙幣は、装填リジェクト部40に回収されることとなり、代替出金または補充に用いられることはない(図5参照)。
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述した実施形態では、紙幣処理ユニット6における出金庫33Aにサブ収納庫27の紙幣を補充したり、不足分の紙幣を出金庫33Aの代わりにサブ収納庫27から代替出金したりしているが、この発明は、紙幣に限らず、硬貨を含む貨幣全般について適用可能である。そのため、バラ硬貨処理ユニット4や包装硬貨処理ユニット5(図1参照)が、出金庫33Aおよびサブ収納庫27に相当する構成を備えていて、出金庫33Aに相当する構成において不足した硬貨を、サブ収納庫27に相当する構成に収納された硬貨で補充したり、代替出金したりしても構わない。
また、この発明は、両替機以外に、貨幣の入出金処理を行う貨幣処理装置(ATMや出納機等)にも適用できる。
また、サブ収納庫27は、両替頻度の低い種類の貨幣を収納するための用途に用いることができる。一例として、二千円札や、お年玉用の新札(金種は問わない)等が、サブ収納庫27に収納される。この場合、これらの貨幣は、サブ収納庫27から直接出金される。
また、サブ収納庫27の少なくとも1つが、一保33C(図5参照)として機能してもよい。つまり、サブ収納庫27は、入金された貨幣を一時保留するための用途に用いることができる。
また、サブ収納庫27の少なくとも1つが、入金庫33B(図5参照)として機能してもよい。つまり、サブ収納庫27は、入金された貨幣を収納するための用途に用いることができる。この場合、制御部70は、一保33C、または一保33Cをなすサブ収納庫27に一時保留された(入金された)貨幣を、サブ収納庫27(一保33Cをなすサブ収納庫27以外のサブ収納庫27)へ搬送する。
また、サブ収納庫27の少なくとも1つが、装填リジェクト部40または出金リジェクト部41(図5参照)として機能してもよい。つまり、サブ収納庫27は、リジェクト貨幣を収納するための用途に用いることができる。この場合、制御部70は、識別部45によって検出されたリジェクト貨幣をサブ収納庫27へ搬送する。
なお、サブ収納庫27は複数(3つ)あるので、たとえば、1つまたは2つのサブ収納庫27が、一保33Cや入金庫33Bや装填リジェクト部40や出金リジェクト部41として機能する一方で、残りのサブ収納庫27は、前述したように出金庫33Aに貨幣を補充したり、不足分の貨幣を出金庫33Aの代わりに代替出金したりしてもよい。
以上のように、サブ収納庫27を複数設けて、これらを出金庫33Aのバックアップ(拡張された出金庫33Aの一部)として用いたり、一保33Cや入金庫33Bや装填リジェクト部40や出金リジェクト部41(図5参照)として用いたりすることができる。
もちろん、サブ収納庫27の数は、2つ以上であれば、必要に応じて適宜設定される。