[実施の形態1]
本発明の実施の形態1によるインバータは、図1に示すように、NチャネルMOSトランジスタ1〜10、コンデンサ11,12、ダイオード13,14、ゲート電源15,16、およびゲートドライバ17,18を備える。トランジスタ1〜10は、それぞれ寄生ダイオード1a〜10aを内蔵している。
寄生ダイオード1a〜10aのアノードはそれぞれ対応のトランジスタ1〜10のソースに接続され、寄生ダイオード1a〜10aのカソードはそれぞれ対応のトランジスタ1〜10のドレインに接続されている。
トランジスタ1,3,5,7の各々は、ソース−ドレイン間耐圧がたとえば600Vの高耐圧トランジスタである。トランジスタ2,4,6,8の各々は、ソース−ドレイン間耐圧がたとえば30Vの低耐圧トランジスタである。一般に低耐圧トランジスタ2,4,6,8のリカバリ電流は、高耐圧トランジスタ1,3,5,7のリカバリ電流よりも小さい。低耐圧トランジスタ2,4,6,8の寄生ダイオード2a,4a,6a,8aの各々は、還流ダイオードとして動作する。
なお、トランジスタのソース−ドレイン間距離を長くすると、トランジスタのソース−ドレイン間耐圧が高くなる。また、トランジスタのチャネルの不純物濃度を低くすると、トランジスタのソース−ドレイン間耐圧が高くなる。また、寄生ダイオード中の不純物濃度を高くすると、少数キャリアのライフタイムが短くなってリカバリ電流は小さくなる。低耐圧トランジスタ2,4,6,8の不純物濃度は高耐圧トランジスタ1,3,5,7の不純物濃度よりも高いので、低耐圧トランジスタ2,4,6,8のリカバリ電流は高耐圧トランジスタ1,3,5,7のリカバリ電流よりも小さい。
トランジスタ1,5のドレインは、ともに電源電圧VCCを受ける。トランジスタ2,6のドレインはそれぞれトランジスタ1,5のソースに接続され、トランジスタ2,6のソースはそれぞれ出力ノードN1,N2に接続される。トランジスタ3,7のドレインはそれぞれ出力ノードN1,N2に接続される。トランジスタ4,8のドレインはそれぞれトランジスタ3,7のソースに接続され、トランジスタ4,8のソースはともに接地電圧GNDのラインに接続される。トランジスタ1,2は左上アームを構成し、トランジスタ3,4は左下アームを構成し、トランジスタ5,6は右上アームを構成し、トランジスタ7,8は右下アームを構成している。負荷19は、出力ノードN1,N2間に接続される。
ダイオード13のカソードは、トランジスタ1のゲートに接続される。トランジスタ9のソースは、ダイオード13のアノードおよびトランジスタ3のゲートに接続される。ゲート電源15の出力ノードは、トランジスタ9のドレインに接続される。ゲート電源15は、高耐圧トランジスタ1,3(たとえば、しきい値電圧VTH=0.1〜7Vのエンハンスメント型トランジスタ)の各々のしきい値電圧VTHとダイオード13の順方向降下電圧との和の電圧よりも高い直流電圧(たとえば、0.2〜50V)を出力する。
ダイオード14のカソードは、トランジスタ5のゲートに接続される。トランジスタ10のソースは、ダイオード14のアノードおよびトランジスタ7のゲートに接続される。ゲート電源16の出力ノードは、トランジスタ10のドレインに接続される。ゲート電源16は、高耐圧トランジスタ5,7(たとえば、しきい値電圧VTH=0.1〜7Vのエンハンスメント型トランジスタ)の各々のしきい値電圧VTHとダイオード14の順方向降下電圧との和の電圧よりも高い直流電圧(たとえば、0.2〜50V)を出力する。
コンデンサ11は、トランジスタ1のゲートと出力ノードN1との間に接続される。コンデンサ12は、トランジスタ5のゲートと出力ノードN2との間に接続される。なお、コンデンサ11は、出力ノードN1の電圧とゲート電源15の出力電圧とを加算した電圧をトランジスタ1のゲートに印加するために設けられている。コンデンサ12は、出力ノードN2の電圧とゲート電源16の出力電圧とを加算した電圧をトランジスタ5のゲートに印加するために設けられている。例えば、出力ノードN1が接地電位にあるときは、ゲート電源15の出力電位はトランジスタ9およびダイオード13を介して高耐圧トランジスタ1のゲートに印加される。その後、出力ノードN1の電位が上昇しても、コンデンサ11の容量カップリングにより、出力ノードN1と高耐圧トランジスタ1のゲートとの間の電位差は保たれる。同様に、出力ノードN2と高耐圧トランジスタ5のゲートとの間の電位差も、ゲート電源16の出力電圧分に保たれる。
トランジスタ1〜4,9のゲートおよび出力ノードN1は、ゲートドライバ17に接続される。トランジスタ5〜8,10のゲートおよび出力ノードN2は、ゲートドライバ18に接続される。ゲートドライバ17,18は、トランジスタ1〜10のゲート電圧を制御してトランジスタ1〜10をオン/オフ制御し、直流電源電圧VCCを交流電圧に変換して負荷19に供給する。
次に、このインバータの動作について説明する。負荷19に交流電力を供給する場合は、トランジスタ9,10がオンされ、高耐圧トランジスタ1,3,5,7の各々のゲートに、高耐圧トランジスタ1,3,5,7のしきい値電圧VTHよりも高い直流電圧が印加される。この状態で、まず低耐圧トランジスタ2,8がオンされる。これにより、高耐圧トランジスタ1,7もオンし、電源電圧VCCのラインからトランジスタ1,2、負荷19、およびトランジスタ7,8を介して接地電圧GNDのラインに電流が流れ、負荷19が誘導性負荷である場合は、負荷19に電磁エネルギーが蓄えられる。
次に、低耐圧トランジスタ2,8がオフされる。負荷19が誘導性負荷である場合は、負荷19に蓄えられた電磁エネルギーにより、接地電圧GNDのラインから寄生ダイオード4a、トランジスタ3、負荷19、寄生ダイオード6a、およびトランジスタ5を介して電源電圧VCCのラインに電流が還流する。
次いで、還流電流が無くなるタイミングで、低耐圧トランジスタ4,6がオンされる。これにより、高耐圧トランジスタ3,5もオンし、電源電圧VCCのラインからトランジスタ5,6、負荷19、およびトランジスタ3,4を介して接地電圧GNDのラインに電流が流れる。
次に、低耐圧トランジスタ4,6がオフされる。負荷19が誘導性負荷である場合は、負荷19に蓄えられた電磁エネルギーにより、接地電圧GNDのラインから寄生ダイオード8a、トランジスタ7、負荷19、寄生ダイオード2a、およびトランジスタ1を介して電源電圧VCCのラインに電流が還流する。以下、同様にして、負荷19に交流電力が供給される。
負荷19への交流電力の供給を停止する場合は、トランジスタ9,10がオフされ、トランジスタ1,3,5,7のゲートが「L」レベルにされてトランジスタ1,3,5,7がオフされる。また、トランジスタ2,4,6,8もオフ状態に固定される。なお、トランジスタ3,4のゲート間に1つのキャパシタを接続するとともに、トランジスタ7,8のゲート間にもう1つのキャパシタを接続してもよい。また、トランジスタ3,4のゲートに1つのダイオードのカソードおよびアノードをそれぞれ接続するとともに、トランジスタ7,8のゲートにもう1つのダイオードのカソードおよびアノードをそれぞれ接続してもよい。
ところで、このようなインバータでは、負荷19に供給する電力を調整するため、左上アーム(トランジスタ1,2)をオンさせて右下アーム(トランジスタ7,8)をオン/オフさせるチョッピング動作と、右上アーム(トランジスタ5,6)をオンさせて左下アーム(トランジスタ3,4)をオン/オフさせるチョッピング動作とを交互に行なう場合がある。
逆に、右下アーム(トランジスタ7,8)をオンさせて左上アーム(トランジスタ1,2)をオン/オフさせるチョッピング動作と、左下アーム(トランジスタ3,4)をオンさせて右上アーム(トランジスタ5,6)をオン/オフさせるチョッピング動作とを交互に行なう場合もある。
このようなチョッピング動作を行なう場合、リカバリ電流が問題となる。そこで、図1で示したインバータを昇圧チョッパとして動作させ、リカバリ電流および損失を測定した。図2は、その昇圧チョッパの構成を示す回路ブロック図である。図2において、この昇圧チョッパでは、トランジスタ5のドレインに直流電源20の出力電圧(150V)を印加し、出力ノードN1,N2間にコイル21を接続した。また、トランジスタ1のドレインに出力端子22を接続し、出力端子22と接地電圧GNDのラインとの間に負荷23とコンデンサ24を並列接続した。
また、トランジスタ9,10をオンさせ、高耐圧トランジスタ1,3,5,7の各々のゲートに、高耐圧トランジスタのしきい値電圧VTHよりも高い直流電圧を印加した。また、低耐圧トランジスタ2,8をオフさせ、低耐圧トランジスタ6をオンさせ、低耐圧トランジスタ4をオン/オフさせた。つまり、右上アームをオンさせ、左下アームをオン/オフさせた。
次に、この昇圧チョッパの動作について説明する。トランジスタ4をオンさせると、直流電源20からトランジスタ5,6、コイル21、およびトランジスタ3,4を介して接地電圧GNDのラインに電流が流れ、コイル21に電磁エネルギーが蓄積される。
このとき、右上アームでは直流電源20から出力ノードN2に向けて(図2の下方向に)電流が流れており、トランジスタ5およびトランジスタ6は共にオン状態である。また、左下アームでは出力ノードN1から接地電圧GNDのラインに向けて(図2の下方向に)電流が流れており、トランジスタ3およびトランジスタ4は共にオン状態である。
次に、トランジスタ4をオフさせると、トランジスタ4に電流が流れなくなるが、コイル21が電流を流し続けるため、トランジスタ3のソース電圧が上昇し、トランジスタ3がオフ状態になる。トランジスタ3,4がオフした後もコイル21が電流を流し続けるため、トランジスタ2のソース電圧が上昇する。トランジスタ2のソース電圧の上昇とともにゲートドライバ17からトランジスタ2のゲートに与えられる電圧も上昇し、トランジスタ2はオフ状態に維持される。トランジスタ2のソース電圧がドレイン電圧よりも高くなると、トランジスタ2のソースから寄生ダイオード2aを介してトランジスタ2のドレインに還流電流が流れる。
このとき、トランジスタ1のソース電圧はトランジスタ2のソース電圧よりも低くなっている。また、トランジスタ1のゲート電圧は、コンデンサ11の容量カップリングにより、トランジスタ2のソース電圧よりもゲート電源15が発生する電圧だけ(例えば12V)高い電圧が維持されているため、トランジスタ1はオン状態になっている。このため、トランジスタ1のチャネルに電流が流れ、寄生ダイオード1aに流れる電流は小さく抑制される。また、トランジスタ3は、トランジスタ4のソース−ドレイン間電圧を降下させる電圧降下素子として働く。
このとき、直流電源20からトランジスタ5,6、コイル21、寄生ダイオード2aおよびトランジスタ1を介して出力端子22に電流が流れ、コイル21の電磁エネルギーが解放される。
このとき、右上アームでは直流電源20から出力ノードN2に向けて(図2の下方向に)電流が流れており、トランジスタ5およびトランジスタ6は共にオン状態である。また、左上アームでは出力ノードN1から出力端子22に向けて(図2の上方向に)電流が流れており、トランジスタ1はオン状態であり、トランジスタ2はオフ状態である。
次に、トランジスタ4をオンさせると、トランジスタ4に電流が流れ、トランジスタ3のソース電圧が低下してトランジスタ3もオン状態になる。これにより、トランジスタ3,4がオンし、コイル21の電流はトランジスタ3,4に流れはじめ、トランジスタ2のソース電圧が低下する。トランジスタ2のソース電圧がドレイン電圧よりも低下すると、トランジスタ2にリカバリ電流が流れ、それと同時にまたは続いてトランジスタ1にリカバリ電流が流れる。その後、トランジスタ2のソース電圧が十分に低下すると、直流電源20からトランジスタ5,6、コイル21、およびトランジスタ3,4を介して接地電圧GNDのラインに電流が流れ、コイル21に電磁エネルギーが蓄積される。このようにして、デューティ比が50%の条件でトランジスタ4をオン/オフさせると、昇圧チョッパの出力電圧Voutは約300Vになった。
この昇圧チョッパの動作時に、トランジスタ3のドレイン電圧Vd(V)およびドレイン電流Id(A)を測定した。また、比較例として、各アームが高耐圧トランジスタのみで構成される従来の昇圧チョッパを作成した。比較例では、本実施の形態1と同じ高耐圧トランジスタを使用した。比較例の昇圧チョッパを実施の形態1と同様に動作させて、左下アームの高耐圧トランジスタのドレイン電圧Vd(V)およびドレイン電流Id(A)を測定した。
図3は、それらの測定結果を示す図である。その結果、本実施の形態1におけるリカバリ電流の電荷量は、比較例におけるリカバリ電流の電荷量の1/5に低減されることが分かった。なお、本明細書では、リカバリ電流が減少するという表現は、厳密にはリカバリ電流の電荷量が減少することを指している。図3では、本実施の形態1におけるリカバリ電流のピーク値は比較例におけるリカバリ電流のピーク値を超えている。しかしながら、リカバリ電流の時間積分、すなわちリカバリ電流の電荷量は、実施の形態1の方が圧倒的に少ない。また、図4は、スイッチング時における電力損失を示す図である。斜線を施した部分の面積が1回のスイッチングで発生する電力損失を示している。本実施の形態1における電力損失は、比較例における電力損失の1/8に低減されることが分かった。また、比較例におけるインバータ全体の損失は4.1%であったのに対し、本実施の形態1におけるインバータ全体の損失は1.3%に低減された。
このような結果が得られた理由は、次のように考えられる。すなわち、コイル21からの還流電流が低耐圧トランジスタ2の寄生ダイオード2aに流されるので、トランジスタ4がオンすると低耐圧トランジスタ2にリカバリ電流が流れるが、一般的に低耐圧トランジスタ2のリカバリ電流は、高耐圧トランジスタのリカバリ電流よりも小さい。また、本実施の形態1では、コイル21からの還流電流が高耐圧トランジスタ1のチャネルに流され、寄生ダイオード1aに流れる電流は小さいので、高耐圧トランジスタ1のリカバリ電流は小さい。言い換えれば、左上アームに出力ノードN1から出力端子22に向けて(図2の上方向に)電流を流す際にトランジスタ1をオン状態としていたため、寄生ダイオード1aに流れる電流が小さく、その結果高耐圧トランジスタ1のリカバリ電流が小さくなったのである。
これに対して比較例では、コイルからの還流電流の全てが左上アームである高耐圧トランジスタの寄生ダイオードに流されるので、左下アームがオンしたときに高耐圧トランジスタに大きなリカバリ電流が流れる。この結果、本実施の形態1では、高耐圧トランジスタのみで構成されていた従来のインバータよりもリカバリ電流を小さくすることができ、電力損失を小さくすることができる。
なお、図3において、本実施の形態1では、リカバリ電流が小さいのでトランジスタ3のドレイン電圧Vdが急速に低下するのに対し、比較例では、リカバリ電流が大きいので左下アームのトランジスタのドレイン電圧Vdの低下が遅延している。また、本実施の形態1では、トランジスタ3のドレイン電圧Vdが約250Vから降下するときに180V付近で一瞬止まっている。これは、本実施の形態1ではスイッチング速度が高速であり、回路の寄生インダクタンスで70Vの電圧降下が起こっているからである。
また、本実施の形態1では、高耐圧の還流ダイオードを別途設ける必要がないので、特許文献1,2に記載の従来技術に比べ、装置の低コスト化を図ることができる。
なお、低耐圧トランジスタ2,4,6,8のソース−ドレイン間耐圧は、3〜200Vの範囲内であることが好ましい。低耐圧トランジスタ2,4,6,8のソース−ドレイン間耐圧が200Vを越えると、低耐圧トランジスタ2,4,6,8におけるリカバリ電流が増大してしまう。また、低耐圧トランジスタ2,4,6,8のソース−ドレイン間耐圧が3V未満の場合は、電源回路のノイズに対する低耐圧トランジスタ2,4,6,8の耐性が低下してしまう。
また、高耐圧トランジスタ1,3,5,7のソース−ドレイン間耐圧は、低耐圧トランジスタ2,4,6,8のソース−ドレイン間耐圧の3倍以上で100倍以下の範囲内であることが好ましい。高耐圧トランジスタ1,3,5,7のソース−ドレイン間耐圧が低耐圧トランジスタ2,4,6,8のソース−ドレイン間耐圧の3倍よりも小さい場合は、高耐圧トランジスタのリカバリ電流と低耐圧トランジスタのリカバリ電流との差が小さくなり、本実施の形態1の効果が小さくなってしまう。また、高耐圧トランジスタ1,3,5,7のソース−ドレイン間耐圧が低耐圧トランジスタ2,4,6,8のソース−ドレイン間耐圧の100倍よりも大きい場合は、スイッチングノイズに対する低耐圧トランジスタの耐性が低下してしまう。
本実施の形態では、高耐圧トランジスタ1,3,5,7のゲートには、それぞれ低耐圧トランジスタ2,4,6,8のソースの電位に対して、それぞれ高耐圧トランジスタ1,3,5,7のしきい値電圧を加算した電圧よりも高い電圧を印加している。そのため、高耐圧トランジスタ1,3,5,7のソースとドレイン間の電圧差をほぼ無くすことができる。したがって、高耐圧トランジスタ1,3,5,7のリカバリ電流を減らす効果を最大限発揮することができる。
また、本実施の形態では、高耐圧トランジスタ1,5のゲートと出力ノードN1,N2の間には、それぞれコンデンサ11,12が接続されている。さらに、高耐圧トランジスタ1,5のゲートにはそれぞれダイオード13,14のカソードが接続されている。ダイオード13,14のアノードには、それぞれ高耐圧トランジスタ1,5のしきい値電圧よりも高い電圧を印加する構成となっている。これにより、負荷19への交流電力供給時に出力ノードN1,N2の電圧が変動しても、コンデンサ11,12による容量カップリングにより、高耐圧トランジスタ1,5をオンさせるに十分な電位を高耐圧トランジスタ1,5のゲートに与え続けることができるので、高耐圧トランジスタ1,5のリカバリ電流を確実に低減することができる。
また、本実施の形態では、負荷19に電力供給を行わない場合は高耐圧トランジスタ1,3,5,7をオフさせることができる構成となっている。そのため、ゲートドライバ17,18が故障した場合でもトランジスタ1〜4またはトランジスタ5〜8に貫通電流が流れて、発火、爆発が生じるのを防止して安全性を高めることができる。
より具体的には、高耐圧トランジスタ1,3,5,7のゲートに耐圧トランジスタ1,3,5,7のしきい値以上の電圧を与えるために設けられたゲート電源15,16と、ダイオード13,14との間に、それぞれトランジスタ9,10を設けている。負荷19に電力供給を行う場合は、トランジスタ9,10をオン状態として、高耐圧トランジスタ1,3,5,7をオンするに足る電圧を供給する。一方、負荷19に電力供給を行わない場合は、トランジスタ9,10をオフ状態とすることにより、高耐圧トランジスタ1,3,5,7をオフ状態として安全性を確保する。
さらに、負荷19に電力供給を行わない場合は、コンデンサ11の容量カップリングにより、高耐圧トランジスタ1,5のゲートの電位は、それぞれ出力ノードN1,N2の電位に近い電位で安定する。そのため、サージ等により高耐圧トランジスタ1,5が不正にオンすることを防ぐことができるため、安全性を更に高めることができる。
なお、負荷19に交流電力を供給する場合は高耐圧トランジスタ1,3,5,7をオンさせ、負荷19への交流電力の供給を停止させる場合は高耐圧トランジスタ1,3,5,7をオフさせるような直流電圧を出力するゲート電源15,16を使用すれば、トランジスタ9,10は不要である。
また、ヒューズ、リレーなどによって別の安全対策を採用した場合は、高耐圧トランジスタ1,3,5,7を常時オンさせてもよい。たとえば、トランジスタ9,10およびゲート電源の代わりに電池を設け、その電池の出力電圧をダイオード13,14のアノードおよびトランジスタ3,7のゲートに直接与えてもよい。
なお、本実施の形態1では、直列接続された高耐圧トランジスタおよび低耐圧トランジスタからなるアームを備えたインバータおよび昇圧チョッパ(非絶縁型DC/DCコンバータ)について説明したが、そのアームを用いて他のスイッチング電源装置を構成可能であることは言うまでもない。他のスイッチング電源装置としては、絶縁型DC/DCコンバータ、PFC(Power Factor Correction:力率改善)回路などがある。
[実施の形態2]
図5は、この発明の実施の形態2による双方向チョッパの構成を示す回路ブロック図であって、図2と対比される図である。図5において、この双方向チョッパは、図2の回路のうちのトランジスタ5〜8、コンデンサ12、ダイオード14、ゲート電源16、ゲートドライバ18、およびコイル21と、ダイオード30〜35、コンデンサ36,37および入出力端子T1,T2とを備える。
高耐圧トランジスタ5および低耐圧トランジスタ6は、入出力端子T2とノードN2との間に直列接続される。高耐圧トランジスタ7および低耐圧トランジスタ8は、ノードN2と接地電圧GNDのラインとの間に直列接続される。コンデンサ12は、トランジスタ5のゲートとノードN2との間に接続される。ダイオード14のカソードはトランジスタ5のゲートに接続され、そのアノードはトランジスタ7のゲートおよびゲート電源16の出力ノードに接続される。トランジスタ5〜8のゲートおよびノードN2は、ゲートドライバ18に接続される。
ダイオード30,31のアノードは互いに接続され、それらのカソードはそれぞれトランジスタ5のゲートおよびソースに接続される。ダイオード30,31はツェナーダイオードとするのが好ましい。トランジスタ5のゲート−ソース間電圧が所定電圧を越えるとダイオード30,31がオンするので、トランジスタ5のゲート−ソース間電圧を所定電圧以下に制限して回路を安定に動作させることができる。
ダイオード32のアノードおよびカソードは、それぞれトランジスタ6のソースおよびドレインに接続される。トランジスタ6のソース−ドレイン間電圧がダイオード32のしきい値電圧を越えるとダイオード32がオンするので、トランジスタ6のソース−ドレイン間電圧をダイオード32のしきい値電圧以下に制限して回路を安定に動作させることができる。ダイオード32のしきい値電圧は、トランジスタ6のソース−ドレイン間耐圧よりも低く設定されている。ダイオード32は、後述する理由によりツェナーダイオードを用いるのが好ましい。
同様に、ダイオード33,34のアノードは互いに接続され、それらのカソードはそれぞれトランジスタ7のゲートおよびソースに接続される。ダイオード33,34はツェナーダイオードとするのが好ましい。トランジスタ7のゲート−ソース間電圧が所定電圧を越えるとダイオード33,34がオンするので、トランジスタ7のゲート−ソース間電圧を所定電圧以下に制限して回路を安定に動作させることができる。
ダイオード35のアノードおよびカソードは、それぞれトランジスタ8のソースおよびドレインに接続される。トランジスタ8のソース−ドレイン間電圧がダイオード35のしきい値電圧を越えるとダイオード35がオンするので、トランジスタ8のソース−ドレイン間電圧をダイオード35のしきい値電圧以下に制限して回路を安定に動作させることができる。ダイオード35のしきい値電圧は、トランジスタ8のソース−ドレイン間耐圧よりも低く設定されている。ダイオード35は、後述する理由によりツェナーダイオードを用いるのが好ましい。
コイル21は、入出力端子T1とノードN2の間に接続されている。コンデンサ36は、入出力端子T1と接地電圧GNDのラインとの間に接続される。コンデンサ37は、入出力端子T2と接地電圧GNDのラインとの間に接続される。
次に、この双方向チョッパの昇圧動作について説明する。入出力端子T1にたとえば140Vを印加し、入出力端子T2に280Vを出力する場合、高耐圧トランジスタ5,7の各々のゲートに、高耐圧トランジスタのしきい値電圧VTHよりも高い直流電圧(たとえば、12V)を印加する。また、低耐圧トランジスタ6をオフさせ、昇圧比(2倍)に応じたデューティ比(たとえば、50%)で低耐圧トランジスタ8をオン/オフさせる。
トランジスタ8がオンすると、入出力端子T1からコイル21およびトランジスタ7,8を介して接地電圧GNDのラインに電流が流れ、コイル21に電磁エネルギーが蓄積される。次に、トランジスタ8がオフすると、コイル21から寄生ダイオード6aおよびトランジスタ5を介して入出力端子T2に電流が還流され、入出力端子T2の電圧が昇圧される。入出力端子T2の電圧は、入出力端子T1の電圧(140V)よりも高い280Vになる。
コイル21から寄生ダイオード6aおよびトランジスタ5を介して入出力端子T2に電流が還流されているときに、トランジスタ8をオンさせると、低耐圧トランジスタ6の寄生ダイオード6aにリカバリ電流が流れる。しかし、低耐圧トランジスタ6のリカバリ電流は高耐圧トランジスタのリカバリ電流よりも小さい。また、高耐圧トランジスタ5の寄生ダイオード5aには還流電流がほとんど流れないので、高耐圧トランジスタ5のリカバリ電流も小さい。したがって、昇圧動作におけるリカバリ電流は小さく抑えられる。
ところで、トランジスタ8をオンさせると、ノードN2の電位が低下していく。すると、コンデンサ12によりノードN2と容量カップリングしているトランジスタ5のゲート電位も低下していく。トランジスタ6はオフ状態であり、トランジスタ5のソースの電位は変わらないため、トランジスタ5はオフ状態となる。このようにして、トランジスタ5,6は共にオフ状態となって、トランジスタ5のソースおよびトランジスタ6のドレインの電位(中間電位)は周囲の寄生容量による容量カップリングにより決まることとなる。そのため、ノードN2の電位が下がり続けると、低耐圧トランジスタ6のソースとドレイン間には大きな電圧がかかることとなる。ダイオード32をツェナーダイオードとすれば、ノードN2と中間電位の電位差を一定値以上にすることを防ぐことができる。ツェナーダイオードの逆方向耐圧は、トランジスタ6のソースとドレイン間の耐圧よりも小さくすることが好ましい。
同様に、トランジスタ8をオフさせたときには、ダイオード35をツェナーダイオードとすることにより、トランジスタ7のソースとトランジスタ8のドレインの電位(中間電位)と、接地電位との差を制限することができる。トランジスタ8をオフさせると、中間電位は上昇していく。すると、トランジスタ7のソース電位の上昇により、やがてトランジスタ7はオフ状態となる。トランジスタ7,8は共にオフ状態となって、中間電位は周囲の寄生容量による容量カップリングにより決まることとなる。そのため、ノードN2の電位が上がり続けると、容量カップリングにより中間電位も上昇し、低耐圧トランジスタ8のソースとドレイン間には大きな電圧がかかることとなる。ダイオード35をツェナーダイオードとすれば、接地電位と中間電位の電位差を一定値以上にすることを防ぐことができる。ツェナーダイオードの逆方向耐圧は、トランジスタ8のソースとドレイン間の耐圧よりも小さくすることが好ましい。
以上のことから明らかなように、アノードが低耐圧トランジス6,8のソースに、カソードが低耐圧トランジスタ6,8のカソードにそれぞれ接続されたダイオード32,35をツェナーダイオードとすることにより、低耐圧トランジスタ6,8の信頼性を向上し、または低耐圧トランジスタ6,8の耐圧を低くすることによりリカバリ電流を小さくして、更にスイッチング電源装置の高効率化を図ることができる。
次に、この双方向チョッパの降圧動作について説明する。入出力端子T2にたとえば280Vを印加し、入出力端子T1に140Vを出力する場合、高耐圧トランジスタ5,7の各々のゲートに、高耐圧トランジスタのしきい値電圧VTHよりも高い直流電圧(たとえば、12V)を印加する。また、低耐圧トランジスタ8をオフさせ、降圧比(2倍)に応じたデューティ比(たとえば、50%)で低耐圧トランジスタ6をオン/オフさせる。
トランジスタ6がオンすると、入出力端子T2からトランジスタ5,6およびコイル21を介して入出力端子T1に電流が流れ、コイル21に電磁エネルギーが蓄積される。次に、トランジスタ6がオフすると、接地電圧GNDのラインから寄生ダイオード8a、トランジスタ7、およびコイル21を介して入出力端子T1に電流が還流され、入出力端子T1の電圧が降圧される。入出力端子T1の電圧は、入出力端子T2の電圧(280V)よりも低い140Vになる。
接地電圧GNDのラインから寄生ダイオード8a、トランジスタ7、およびコイル21を介して入出力端子T1に電流が還流されているときに、トランジスタ6をオンさせると、低耐圧トランジスタ8の寄生ダイオード8aにリカバリ電流が流れる。しかし、低耐圧トランジスタ8のリカバリ電流は高耐圧トランジスタのリカバリ電流よりも小さい。また、高耐圧トランジスタ7の寄生ダイオード7aには還流電流がほとんど流れないので、高耐圧トランジスタ7のリカバリ電流も小さい。したがって、昇圧動作におけるリカバリ電流は小さく抑えられる。
降圧動作の場合も、ダイオード32,35をツェナーダイオードとすることにより、低耐圧トランジスタ6,8のソースとドレイン間の電圧を制限することができる。したがって、低耐圧トランジスタ6,8の信頼性を向上し、または低耐圧トランジスタ6,8の耐圧を低くすることによりリカバリ電流を小さくして、更にスイッチング電源装置の高効率化を図ることができる。
この実施の形態2でも、実施の形態1と同様、リカバリ電流を低減して電力損失を低減することができる。また、高耐圧トランジスタ5,7としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor: 絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)ではなくMOSトランジスタを使用できるので、高耐圧トランジスタのオン損失(導通損)を低減できる。
なお、スイッチングさせない低耐圧トランジスタ6(または8)を常にオフさせて寄生ダイオード6a(または8a)に電流を流したが、これに限るものではなく、同期整流を行なってもよい。同期整流では、寄生ダイオード6a(または8a)に電流が流れ始めると低耐圧トランジスタ6(または8)をオンさせ、スイッチングしている低耐圧トランジスタ8(または6)がオンする直前、すなわち低耐圧トランジスタ6(または8)に電流が流れなくなる直前に低耐圧トランジスタ6(または8)をオフさせる。これにより、電力損失をさらに低減することができる。
なお、この実施の形態2では、直列接続された高耐圧トランジスタおよび低耐圧トランジスタからなるアームを備えた双方向チョッパについて説明したが、そのアームを用いて一方向チョッパを構成可能であることは言うまでもない。
[実施の形態3]
図6は、この発明の実施の形態3による三相モータ制御インバータの構成を示す回路ブロック図である。図6において、このインバータは、U相ドライバ41、V相ドライバ42、およびW相ドライバ43を備える。
U相ドライバ41は、図1に示したインバータのうちのトランジスタ1〜4、コンデンサ11、ダイオード13、ゲート電源15、およびゲートドライバ17を含む。高耐圧トランジスタ1および低耐圧トランジスタ2は、直流電源40とノードN1との間に直列接続される。高耐圧トランジスタ3および低耐圧トランジスタ4は、ノードN1と接地電圧GNDのラインとの間に直列接続される。ノードN1は、モータ44のU相端子(U相コイルの一方端子)に接続される。
コンデンサ11は、トランジスタ1のゲートとノードN1との間に接続される。ダイオード13のカソードはトランジスタ1のゲートに接続され、そのアノードはトランジスタ3のゲートおよびゲート電源15の出力ノードに接続される。トランジスタ1〜4のゲートおよびノードN1は、ゲートドライバ17に接続される。
V相ドライバ42は、U相ドライバ41からゲート電源15を除去したものである。V相ドライバ42のトランジスタ1〜4のゲートおよびノードN1は、ゲートドライバ17に接続される。ダイオード13のアノードは、U相ドライバ41のゲート電源15の出力ノードに接続される。V相ドライバ42のノードN1は、モータ44のV相端子(V相コイルの一方端子)に接続される。
W相ドライバ43は、U相ドライバ41からゲート電源15を除去したものである。W相ドライバ43のトランジスタ1〜4のゲートおよびノードN1は、ゲートドライバ17に接続される。ダイオード13のアノードは、U相ドライバ41のゲート電源15の出力ノードに接続される。W相ドライバ43のノードN1は、モータ44のW相端子(W相コイルの一方端子)に接続される。モータ44のU相コイル、V相コイル、およびW相コイルの他方端子は互いに接続されている。
このインバータは、いわゆる120度通電方式によりモータ44に給電してモータ44のロータを回転駆動させる。120度通電方式では、U相ドライバ41、V相ドライバ42、およびW相ドライバ43の上側アーム(トランジスタ1,2)が120度ずつ順次オンされるとともに、それに180度遅延してU相ドライバ41、V相ドライバ42、およびW相ドライバ43の下側アーム(トランジスタ3,4)が120度ずつ順次オンされる。これにより、3相交流電力がモータ44に供給され、モータ44のロータが回転駆動される。
次に、直流電源40からU相ドライバ41の上側アーム、モータ44、およびV相ドライバ42の下側アームを介して接地電圧GNDのラインに電流を流す場合について説明する。この場合は、ドライバ41,42の高耐圧トランジスタ1,3のゲートに、高耐圧トランジスタ1,3のしきい値電圧よりも高い電圧(たとえば、12V)を印加する。また、U相ドライバ41の低耐圧トランジスタ4をオフさせ、V相ドライバ42の低耐圧トランジスタ2をオフさせ、V相ドライバ42の低耐圧トランジスタ4をオンさせる。この状態で、U相ドライバ41の低耐圧トランジスタ2をオン/オフさせる。
U相ドライバ41の低耐圧トランジスタ2をオンさせると、直流電源40からU相ドライバ41のトランジスタ1,2、モータ44のU相コイル、V相のコイル、およびV相ドライバ42のトランジスタ3,4を介して接地電圧GNDのラインに電流が流れる。
次に、U相ドライバ41の低耐圧トランジスタ2をオフさせると、モータのU相コイルおよびV相コイルが電流を流し続けようとする。このため、接地電圧GNDのラインからU相ドライバ41の寄生ダイオード4aおよび高耐圧トランジスタ3、モータ44、およびV相ドライバ42のトランジスタ3,4を介して接地電圧GNDのラインに還流電流が流れる。
同様に、3つのドライバ41〜43を制御することにより、図7に示すような正弦波状の電流をモータ44に供給することができる。なお、図7では、図面の簡単化のため、U相電流の波形とV相電流の波形のみが示され、W相電流の波形は省略されている。
この実施の形態3でも、実施の形態1,2と同様、リカバリ電流を小さくして電力損失を小さくすることができる。
また、この実施の形態3でも、実施の形態2と同様、高耐圧トランジスタ1,3としてIGBTではなくMOSトランジスタを使用できるので、高耐圧トランジスタのオン損失(導通損)を低減できる。また、実施の形態2と同様、低耐圧トランジスタ2,4の同期整流を行なってもよい。
[実施の形態4]
図8は、この発明の実施の形態4によるプッシュプル型DC/DCコンバータの構成を示す回路ブロック図である。図8において、このコンバータは、ゲート電源50、ゲートドライバ51、直流電源52、NチャネルMOSトランジスタ53,54、トランス55、ドライバ56,57、および負荷58を備える。
ゲート電源50は、ゲート電圧を出力する。トランス55は、1次巻線55aおよび2次巻線55bを含む。直流電源52の正極は、1次巻線55aの中点に接続される。トランジスタ53は、1次巻線55aの一方端子と直流電源52の負極との間に接続される。トランジスタ54は、1次巻線55aの他方端子と直流電源52の負極との間に接続される。トランジスタ53,54のゲートは、ゲートドライバ51に接続される。ゲートドライバ51は、ゲート電源50からのゲート電圧をトランジスタ53,54のゲートに交互に与える。これにより、トランジスタ53,54が交互にオンし、トランス55の2次巻線55bには交流電圧が発生する。
ドライバ56は、図1に示したインバータのうちのトランジスタ1〜4、コンデンサ11、ダイオード13、ゲート電源15、およびゲートドライバ17を含む。高耐圧トランジスタ1および低耐圧トランジスタ2は、負荷58とノードN1との間に直列接続される。高耐圧トランジスタ3および低耐圧トランジスタ4は、ノードN1と接地電圧GNDのラインとの間に直列接続される。ノードN1は、トランス55の2次巻線55bの一方端子に接続される。
コンデンサ11は、トランジスタ1のゲートとノードN1との間に接続される。ダイオード13のカソードはトランジスタ1のゲートに接続され、そのアノードはトランジスタ3のゲートおよびゲート電源15の出力ノードに接続される。トランジスタ1〜4のゲートおよびノードN1は、ゲートドライバ17に接続される。
ドライバ57は、ドライバ56からゲート電源15を除去したものである。ドライバ57のトランジスタ1〜4のゲートおよびノードN1は、ゲートドライバ17に接続される。ダイオード13のアノードは、ドライバ56のゲート電源15の出力ノードに接続される。ドライバ57のノードN1は、トランス55の2次巻線55bの他方端子に接続される。
次に、このコンバータの動作について説明する。ドライバ56,57の高耐圧トランジスタ1,3の各々のゲートに、高耐圧トランジスタのしきい値電圧VTHよりも高い直流電圧(たとえば、12V)を印加する。また、ドライバ56,57の低耐圧トランジスタ2,4をオフさせ、トランジスタ53と54を交互にオンさせる。
トランジスタ54をオフ状態にしてトランジスタ53をオンさせると、直流電源52からトランス55の1次巻線55aおよびトランジスタ53に電流が流れ、トランス55の2次巻線55bに正電圧が誘起される。これにより、接地電圧GNDのラインからドライバ56の寄生ダイオード4aおよび高耐圧トランジスタ3と、2次巻線55bと、ドライバ57の寄生ダイオード2aおよび高耐圧トランジスタ1と、負荷58とを介して接地電圧GNDのラインに電流が流れる。負荷58には、トランス55の巻線比に応じた値の電圧が印加される。
次に、トランジスタ53をオフさせると、直流電源52からトランス55の1次巻線55aに流れる電流が遮断され、2次巻線55bに流れる電流も遮断される。このとき、ドライバ56の寄生ダイオード4aおよびドライバ57の寄生ダイオード2aに流れている電荷や、回路の寄生容量に蓄積された電荷がリカバリ電流として流れる。
次いで、トランジスタ53をオフ状態にしてトランジスタ54をオンさせると、直流電源52からトランス55の1次巻線55aおよびトランジスタ54に電流が流れ、トランス55の2次巻線55bに負電圧が誘起される。これにより、接地電圧GNDのラインからドライバ57の寄生ダイオード4aおよび高耐圧トランジスタ3と、2次巻線55bと、ドライバ56の寄生ダイオード2aおよび高耐圧トランジスタ1と、負荷58とを介して接地電圧GNDのラインに電流が流れる。負荷58には、トランス55の巻線比に応じた値の電圧が印加される。
次に、トランジスタ54をオフさせると、直流電源52からトランス55の1次巻線55aに流れる電流が遮断され、2次巻線55bに流れる電流も遮断される。このとき、ドライバ57の寄生ダイオード4aおよびドライバ56の寄生ダイオード2aに流れている電荷や、回路の寄生容量に蓄積された電荷がリカバリ電流として流れる。
この実施の形態4では、高耐圧トランジスタ1,3の寄生ダイオード1a,3aにはほとんど電流が流れないので、リカバリ電流を大幅に低減することができ、高効率のコンバータを実現できる。
また、この実施の形態4でも、実施の形態2と同様、高耐圧トランジスタ1,3としてIGBTではなくMOSトランジスタを使用できるので、高耐圧トランジスタのオン損失(導通損)を低減できる。また、実施の形態2と同様、低耐圧トランジスタ2,4の同期整流を行なってもよい。
なお、上記実施の形態1〜4のスイッチング電源装置(インバータ、コンバータ)は、エアーコンディショナー、ソーラーパワーコントローラ、自動車などに使用可能である。上記実施の形態1〜4のスイッチング電源装置(インバータ、コンバータ)をエアーコンディショナー、ソーラーパワーコントローラ、自動車などに使用することにより、エアーコンディショナー、ソーラーパワーコントローラ、自動車などの高効率化を図ることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。