JP5979805B1 - コンクリート構造物の補強方法 - Google Patents

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【課題】無機系の注入材を使用して短時間に十分な強度でコンクリート構造物を補強する。【解決手段】超微粒子セメント、水およびケイ酸系混和剤を混合してなる無機注入材をコンクリート構造物(コンクリート製ブロック1)に生じた空隙内に注入し硬化させる。無機注入材において、超微粒子セメント1に対して水とケイ酸系混和剤の混合液の混合重量割合を0.4〜0.7の範囲とし、かつ水1に対してケイ酸系混和剤の混合重量割合を0.3〜0.5の範囲として、前記無機注入材を0.1N/mm2を超え0.4N/mm2以下の圧力で前記空隙内に注入する。【選択図】図1

Description

本発明はコンクリート構造物の補強方法に関し、特にひび割れ等によって劣化したコンクリート構造物を短時間に十分な強度で補強できるコンクリート構造物の補強方法に関するものである。
この種の補強方法として、ひび割れ等によって生じたコンクリート構造物の空隙内に注入材を注入する方法があり、特許文献1には、空隙に連通するコンクリート構造物の表面開口に連結されて薬液(注入材)を空隙内に充填する用途に使用される自動薬液注入器が示されている。このような自動薬液注入器で使用される注入材は従来、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等の有機系注入材が多い。
特開平4−254668
しかし、有機系注入材を使用した上記従来の補強方法では、有機系注入材がコンクリート構造物と異質なものであり、また硬化後に収縮することによる不具合を生じることがあるため、このような不具合を生じない、コンクリート構造物と同質の無機系の注入材を使用した補強方法が望まれていた。
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、無機系の注入材を使用して短時間に十分な強度でコンクリート構造物を補強できるとともに止水性能にも優れたコンクリート構造物の補強方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本第1発明は、超微粒子セメント、水およびケイ酸塩系混和剤を混合してなる無機注入材をコンクリート構造物に生じた空隙内に注入し硬化させるコンクリート構造物の補強方法であって、前記無機注入材において、超微粒子セメント1に対して水とケイ酸塩系混和剤の混合液の混合重量割合を0.4〜0.7の範囲とし、かつ水1に対してケイ酸塩系混和剤の混合重量割合を0.3〜0.5の範囲としたことを特徴とするコンクリート構造物の補強方法。
本第1発明によれば、注入材を無機系としたから、コンクリート構造物となじみが良く、短時間に十分な強度でコンクリート構造物を補強することができる。特にケイ酸塩系混和剤を使用したことにより、いわゆる自己治癒効果も生じる。ここで、超微粒子セメント1に対する混合液の混合重量割合を0.4より小さくすると混合時に既に粘性が強く、硬化開始が早く注入材として適さない。また0.7より大きくすると強度が出ない。また粘性が少なく90分で硬化が開始されるが液状で止水ができない。さらに、水1に対してケイ酸塩系混和剤の混合重量割合を0.3より小さくすると強度が出ない。また粘性が少なく90分で硬化が開始されるが液状で止水ができない。また、0.5より大きくすると混合時に既に粘性が強く、硬化開始が早く注入材として適さない。さらに、注入圧力は0.1N/mm2を超え0.4N/mm2以下の範囲とするのが良い。
本第2発明では、一端が開口する伸縮可能なベローズ状容器(4)と当該容器(4)を収縮方向へ付勢するバネ部材(6)を備えた注入器(I)の、前記容器(4)内に前記無機注入材を収容し、容器(4)の開口(42)を、前記空隙に連通するコンクリート構造物(1)表面の開口に連通させて、バネ部材(6)の付勢力によって前記無機注入材を空隙内に注入する。
本第2発明においては、簡易な構造で注入材を自動注入できる。
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
以上のように、本発明のコンクリート構造物の補強方法によれば、無機系の注入材を使用したことによりコンクリート構造物と同質のものなので環境に負担を与えず、かつ短時間に十分な強度でコンクリート構造物を補強することができるとともに優れた止水性能を得ることができる。
コンクリート製ブロックの全体斜視図である。 注入台座を設置したコンクリート製ブロックの全体斜視図である。 注入器を設置したコンクリート製ブロックの全体斜視図である。 注入材の注入を終了した状態のコンクリート製ブロックの全体斜視図である。 注入材を注入した部分でブロックをコア抜きしたものの側面図である。 注入器の部分断面分解斜視図である。
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
本発明方法の効果確認試験の一例を以下に説明する。図1に示すように、コンクリート構造物として幅(W)1200mm、高さ(H)1500mm、奥行(D)400mmのコンクリート製ブロック1を用意する。このブロック1は背後上部のコンクリートが斫ってあり、そこに水を溜めてある。そしてブロック1には内部に空隙として貫通クラック(ひび割れ)が予め形成してあり、このため、ブロック1の幅方向の前面中央部には漏水Lが生じている。
続いて、後述する注入材を注入するために、漏水しているブロック1の前面中央部に、上下方向に一定間隔(例えば100mm)で、水平方向へ延び貫通クラックに連通する複数の注入孔(例えばφ7mm、深さ50mm)を削孔する。その後、注入孔を洗浄し、その開口にそれぞれ注入器の注入台座2を設置する(図2)。ここで、注入孔の削孔間隔やその径・深さはクラックや漏水の状況によって適宜変更されるものである。
本試験に使用した注入器は実用新案登録第3185526号に記載されているもので、その構造を、図6の分解斜視図を参照しつつ説明する。上記注入台座2は円板状の基部21と、基部21の中心に立設された筒状連結部22よりなり、連結部22の内周には雌ネジ部が形成されている。このような注入台座2の基部21板面を上記ブロック1の表面に接着等によって設置する。
注入器Iは円筒状のケーシング3を備えており、その前半部内に、伸縮可能なベローズ状の容器4が収容されている。この容器4内に、後述する注入材が収容される。容器4は後端開口が着脱可能な蓋体41で閉鎖され、前端には小径の筒状開口部42が形成されている。ケーシング3の前端開口31にはキャップ51が捩じ込み固定され、当該キャップ51の中心に形成された筒状開口の後半部511の雌ネジ部に、容器4の開口部42外周の雄ネジ部が捩じ込み固定されている。
ケーシング3の後半部内にはコイル状のバネ部材6が挿入されており、バネ部材6は後端が、ケーシング3の後端開口32に捩じ込み固定されるキャップ52に当接するとともに、バネ部材6の前端はケーシング3内に配設された端板61に当接している。端板61は、キャップ52を貫通してバネ部材6の中心をケーシング3内へ延びた操作棒7の先端に固定されている。
キャップ52を貫通してケーシング3外へ延出した操作棒7の基端には操作片71が装着されており、また、操作棒7の長手方向の適宜位置には外周の径方向対称位置に一対の係止突起72が形成されている(一方のみ示す)。上記キャップ52には係止突起72を通過させる切欠き521が形成されており、操作片71によって操作棒7を外方へ引き出すと、バネ部材6は収縮状態に変形して所定の伸長バネ力を生じる。所定量引き出した操作棒7を90度回転させてその係止突起72をキャップ52の外周面に係合させると、バネ部材6は収縮状態でキャップ52と端板61の間に保持される。
注入材を収容した容器4をキャップ51に固定し、当該キャップ51をケーシング3の前端開口31に固定することによってケーシング3の前半部内に容器4を収容するとともに、バネ部材6を収縮させた状態でキャップ52をケーシング3の後端開口52に固定する。この状態で、キャップ51から突出する筒状開口の前半部512外周の雄ネジ部を、ブロック1に設置した注入台座2(図2参照)の連結部22の雌ネジ部に捩じ込み固定する。
これにより、注入器Iは、内設された容器4がブロック1に形成された注入孔と連通した状態で、各注入台座2によってブロック1に固定設置される(図3)。その後、操作棒7を90度戻し回転させて係止突起72とキャップ52の係合を解消すると、容器4にバネ部材6の伸張バネ力が印加して当該容器4が収縮させられ,所定の圧力(例えば0.11N/mm2)で注入材が注入孔を経て貫通クラック内に注入される。
ここで、本試験に使用した注入材は、超微粒子セメント、水およびケイ酸塩系混和剤を混合したものである。より詳細には、クリンカー(ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、鉄アルミン酸カルシウム)、石こう(硫酸カルシウム)、高炉スラグ微粉末等よりなるブレーン値(比表面積)が8860(cm2/g)と通常のセメント粒子の3倍ほどの超微粒子セメント1000gに、水350gとケイ酸塩(ケイ酸ナトリウム)系混和剤150gの混合液を加えて注入材とする。なお、ケイ酸塩系混和剤によって硬化が促進される。
このような注入材は、ゲル化タイムが約40分、硬化開始時間が約60分となって、60分〜90分程度は注入作業が可能であるとともに、注入材の流動化が早期に終了するために2時間以内で注入作業を完了することができる。加えて、強度試験結果は、一週強度(σ7)が63.0N/mm2、四週強度(σ28)が67.6N/mm2となって、早期に十分な強度でブロック1を補強することができる。
注入作業の完了後、注入器Iを注入台座2から離脱させ、さらに注入台座2をブロック1から取り去った状態(作業開始から60分)で、水漏れは完全に解消されており(図4)、完全に止水される。
注入材の充填状況を確認するために、注入材を注入した部分でブロック1をコア抜きしたものを図5に示す。これより明らかなように、充填された注入材Iwは貫通クラックに沿って十分深い位置まで浸入しており、良好な浸透性を発揮している。
ここで、表1には、注入材における、超微粒子セメント1に対する混合液の混合重量割合と、水1に対するケイ酸塩系混和剤の混合重量割合を種々変更して、各注入材を0.11N/mm2で注入施工した場合の判定結果を示す。なお、表1中の判定事項1は硬化時間、判定事項2はブリージングの有無、判定事項3は注入性(粘性)、判定事項4は強度である。また、表1中、二重丸は十分に満足できる結果が得られたことを示し、一重丸は使用上問題が無い結果が得られたことを、バツは施工不能であったことを示す。
表1の結果によると、超微粒子セメント1に対する混合液の混合重量割合は0.4〜0.7の範囲、水1に対するケイ酸塩系混和剤の混合重量割合は0.3〜0.5の範囲とするのが良い。特に、超微粒子セメント1に対する混合液の混合重量割合を0.45〜0.55の範囲にすると十分に満足できる結果が得られる。
すなわち、超微粒子セメント1に対する混合液の混合重量割合が0.35では、混合時に既に粘性が強く、硬化開始が早く注入材として適さない。また0.75では強度が出ない。水1に対してケイ酸塩系混和剤の混合重量割合を0.25にすると、強度が出なくなる。また、0.55にすると、混合時に既に粘性が強く、硬化開始が早いなるため、注入材として適さない。
なお、注入材の注入は上記実施形態で使用した注入器以外のものを使用することもできる。
1…コンクリート製ブロック(コンクリート構造物)、2…注入台座、3…ケーシング、4…容器、42…開口(筒状開口部)、6…バネ部材、7…操作棒。

Claims (2)

  1. 超微粒子セメント、水およびケイ酸塩系混和剤を混合してなる無機注入材をコンクリート構造物に生じた空隙内に注入し硬化させるコンクリート構造物の補強方法であって、前記無機注入材において、超微粒子セメント1に対して水とケイ酸塩系混和剤の混合液の混合重量割合を0.4〜0.7の範囲とし、かつ水1に対して前記ケイ酸塩系混和剤の混合重量割合を0.3〜0.5の範囲としたことを特徴とするコンクリート構造物の補強方法。
  2. 一端が開口する伸縮可能なベローズ状容器と当該容器を収縮方向へ付勢するバネ部材を備えた注入器の、前記容器内に前記無機注入材を収容し、前記容器の開口を、前記空隙に連通するコンクリート構造物表面の開口に連通させて、前記バネ部材の付勢力によって前記無機注入材を前記空隙内に注入するようにした請求項1に記載のコンクリート構造物の補強方法。
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