以下、図面を参照して、本発明に係る結合構造体の一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、2つの部材がボルトによって締結されることで結合された締結構造体を挙げて説明を行う。ただし、本発明は、ボルトによって締結された結合構造体に限られるものではなく、接着や溶接によって2つの部材が結合された結合構造体に適用することも可能である。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る締結構造体1の概略構成図であり、(a)が縦断面図であり、(b)が平面図である。これらの図に示すように、本実施形態の締結構造体1は、ベースプレート2(第1部材)と、ボルテッドプレート3(第2部材)と、ボルト4とを備えている。
ベースプレート2は、例えば円板状の金属からなる板材であり、中央にボルト4が挿通されるボルト孔を有している。ボルテッドプレート3は、ベースプレート2よりも小さな円板状の板材であり、中央にボルト4が挿通されるボルト孔を有している。ボルト4は、重ねて配置されるベースプレート2とボルテッドプレート3とのボルト孔に対して挿通されており、ベースプレート2とボルテッドプレート3とを締結している。なお、ベースプレート2及びボルテッドプレート3の形状は一例であり、実際には、締結対象である部品形状に応じた形状となる。
このように本実施形態の締結構造体1は、ベースプレート2と、このベースプレート2と接触状態で結合されるボルテッドプレート3と、これらを締結するボルト4とから構成されている。ベースプレート2とボルテッドプレート3との接触面5には、ボルト4の締結力に起因する接触応力が作用する。ボルト4に近づく程、ボルト4の締結力は強く作用することから、接触応力は、ボルト4を中心として半径方向に向かうに連れて弱まる分布を有している。このような締結構造体1に、ベースプレート2とボルテッドプレート3とを相対移動させようとする振動が付与されると、接触面5において、接触応力の強い中心付近の領域では、ベースプレート2とボルテッドプレート3とのすべりが生じず、接触応力の弱い外側の領域では、ベースプレート2とボルテッドプレート3とのすべりが生じる。なお、本発明は、中心付近の領域においてすべりが生じ、外側の領域においてすべりが生じない締結構造体に適用することも可能である。
本出願の発明者が発表する論文「機械構造の結合部における摩擦減衰の解析と定量的予測 品川幹、社本英二、日本機械学会、原稿受付2012年03月01日」では、このように接触面5を固着領域とすべり領域とに分けて考えることにより、正確に減衰特性をシミュレーションによって求められることについて詳細に説明されている。このようなシミュレーションの正確性から、実際の締結構造体においても、振動が付与されたときに、接触面が固着領域とすべり領域とに分かれているものと考えることが妥当である。
以下、接触面5において、所定の振動が付与されたときに振動周期内にてベースプレート2とボルテッドプレート3とが滑らない領域を固着領域Raと称し、所定の振動が付与されたときに振動周期内にてベースプレート2とボルテッドプレート3とが滑る領域をすべり領域Rbと称する。これらの固着領域Raとすべり領域Rbとの境界の位置の算出方法は、上記論文に記載されており、ここでの詳細な説明は省略する。なお、振動が付与されたときに、実際に滑っている領域と滑っていない領域との境界は、振動変位の大きさに応じて大きく変位する。つまり、振動の振幅変位がゼロである瞬間には、実際に滑っている領域は存在しない。ただし、本実施形態で言う「固着領域Raとすべり領域Rbとの境界」とは、上述のような実際に滑っている領域と滑っていない領域との境界を意味するものではなく、所定の振幅の振動が付与されたときに、振動周期内において全く滑りが生じない領域を固着領域Raとし、振動周期内において短時間でも滑りが生じる領域をすべり領域Rbとし、これらの境界を意味している。なお、所定の振動の振幅や周期については、締結構造体1が使用される条件等を考慮して設定される。
また、以下の説明では、接触面5の固着領域Raを表面とするベースプレート2の部位を固着部位2aと称し、接触面5のすべり領域Rbを表面とするベースプレート2の部位をすべり部位2bと称する。また、接触面5の固着領域Raを表面とするボルテッドプレート3の部位を固着部位3aと称し、接触面5のすべり領域Rbを表面とするボルテッドプレート3の部位をすべり部位3bと称する。
本実施形態の締結構造体1では、ボルテッドプレート3のすべり部位3bがベースプレート2と同じ金属材によって形成されており、ボルテッドプレート3の固着部位3aがすべり部位3bよりも弾性率の小さな材料によって形成されている。例えば、ボルテッドプレート3のすべり部位3bが鉄によって形成されている場合には、ボルテッドプレート3の固着部位3aは、銅、アルミニウム、プラスチックによって形成することができる。これによって、ボルテッドプレート3の固着部位3aは、すべり部位3bと比較して剛性が低い部位となっている。すなわち、本実施形態においては、通常であれば、ベースプレート2やボルテッドプレート3のすべり部位3bと同一の材料で形成されるボルテッドプレート3の固着部位3aが、弾性率の小さな材料に変えて形成され、これによって固着部位3aの剛性が低くなるように調節されている。
剛性が低いということは、変形し易いことを意味する。つまり、ベースプレート2とボルテッドプレート3とが相対変位するように、ボルト4の軸方向と直交する方向に振幅する振動が付与されたときに、ボルテッドプレート3の固着部位3aは、ベースプレート2の固着部位2aの変位に追従して変形する。このため、固着部位2aとすべり領域2bとを設定するために考慮した所定の振動振幅よりも大きな振動振幅の振動が発生した場合や、何らかの原因によりボルト4による締結力が小さくなっている場合であっても、ベースプレート2の固着部位2aとボルテッドプレート3の固着部位3aとのすべりが生じ難くなる。よって、ボルテッドプレート3の固着部位3aの剛性が低く調節されない場合と比較し、固着領域Raにおける締結性を向上させることできる。このようなボルテッドプレート3の固着部位3aは、ボルテッドプレート3の一部からなり、ボルテッドプレート3の一部の剛性を調節することにより、ベースプレート2とボルテッドプレート3との締結性を高め、後に説明するようにすべり領域Rbにおける摩擦損失量を増加(変更)可能とする。すなわち、本実施形態の締結構造体1においては、ボルテッドプレート3の固着部位3aが、本発明の剛性調節部として機能する。なお、ここでの締結性とは、外力が作用したときのベースプレート2とボルテッドプレート3との接触面における滑りの発生し難さを意味している。
また、本実施形態の締結構造体1のようにボルト4による締結構造であるならば、ボルト4側に固着領域Raが生じ、固着領域Raの外側にすべり領域Rbが生じる。このため、実際の固着領域Raとすべり領域Rbとの境界を知らなくとも、ボルテッドプレート3のボルト4側の部位を固着部位3aとして剛性を低く調節し、その外側の部位をすべり部位3bとして固着部位3aよりも剛性を高くする構造を採用しても良い。
以上のような本実施形態の締結構造体1によれば、剛性調節部として機能するボルテッドプレート3の固着部位3aによって、結合されるベースプレート2とボルテッドプレート3のうちボルテッドプレート3の一部の剛性が低く調節される。このようにボルテッドプレート3の固着部位3aの剛性が低くなることによって、接触面5の一部である固着領域Raにおけるすべり易さが低下し、ベースプレート2とボルテッドプレート3との締結性を高めることができる。このようにベースプレート2とボルテッドプレート3との締結性を高めることによって、すべり部位3bにおいて締結性を得る必要性が低下し、すべり部位3bにおいて積極的にベースプレート2とボルテッドプレート3とを滑らせることが可能となる。そして、すべり部位3bにおいて大きくベースプレート2とボルテッドプレート3とを滑らせることによって、すべり部位3bにおける摩擦損失量が大きく増大し、振動の減衰特性を大きくすることが可能となる。このような本実施形態の締結構造体1によれば、すべり部位3bにおけるベースプレート2とボルテッドプレート3との滑り量の設定範囲を広くとることができ、その範囲において振動の減衰特性を任意に調節することが可能となる。
また、本実施形態の締結構造体1によれば、ボルテッドプレート3のすべり部位3bのすべり方向(振動の振幅方向)の剛性が、剛性調節部のすべり方向の剛性よりも高い。このため、振動が付与されたときに、剛性調節部であるボルテッドプレート3の固着部位3aよりも、ボルテッドプレート3のすべり部位3bが変形し難く、確実にすべり部位3bを大きく滑らすことが可能となる。このため、摩擦損失量を大きくし、大きな摩擦減衰を得ることが可能となる。
また、図1(a)に示すように、固着部位3aとすべり部位3bとの境界部分に切欠き3cを形成することが好ましい。これによって、固着領域Raとすべり領域Rbとが分断され、固着領域Raの影響を受けることなくすべり領域Rbの全域でベースプレート2とボルテッドプレート3とが滑ることが可能となる。よって、摩擦損失量をより大きくすることが可能となる。
なお、本実施形態においては、ボルテッドプレート3の固着部位3aの剛性を低く調節することによって固着領域Raにおける摩擦損失量を低減させる構成を採用した。しかしながら、ボルテッドプレート3の固着部位3aの剛性を低く調節する換わりに、ベースプレート2の固着部位2aの剛性を低く調節しても良い。この場合には、ベースプレート2の固着部位2aが本発明の剛性調節部として機能し、同様に固着領域Raにおける摩擦損失量が低減される。
また、ボルテッドプレート3の固着部位3aの剛性を低く調節するのではなく、ボルテッドプレート3のすべり部位3bの剛性を高く調節することも考えられる。このような場合には、同じ振動が付与されるとすれば、振動によるボルテッドプレート3のすべり部位3bの変形量が小さくなり、ベースプレート2のすべり部位2bとボルテッドプレート3のすべり部位3bとがすべり易くなる。これによって、すべり領域Rbにおける摩擦損失量が増加され、振動の減衰量を大きくすることが可能となる。なお、ベースプレート2のすべり部位2bの剛性を高く調節した場合にも、同様にすべり領域Rbにおける摩擦損失量が増加される。
また、例えば、固着部位3a及びすべり部位3bを弾性率に異方性を有するCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)を用いることも考えられる。CFRPは、炭素繊維からなる織物に対してプラスチックを含浸させることによって形成される材料であり、炭素繊維の方向によって弾性率が異なる。このようなCFRPを用いて、例えば、固着部位3aをベースプレート2とボルテッドプレート3の結合方向に高剛性でこの結合方向と直交する方向に低剛性とし、すべり部位3bをベースプレート2とボルテッドプレート3の結合方向に低剛性でこの結合方向と直交する方向に高剛性とする。このような場合には、左右前後方向及びねじり方向(すなわち上記結合方向と直交する面内での方向)での振動に対して、固着部位3aが滑らずに変位し、すべり部位3bが変形せずに大きく滑る構成を実現することができる。なお、CFRPはあくまでも一例である。CFRP以外であっても、弾性率の異方性を持つものであれば、CFRPに換えて用いることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
図2(a)は、本実施形態の締結構造体11の概略構成を示す縦断面図であり、図2(b)は、締結構造体11が備えるボルテッドプレート13の下面図である。図2(a)に示すように、本実施形態の締結構造体11は、ベースプレート12と、ボルテッドプレート13と、ボルト14とを備えている。
ベースプレート12は、例えば円板状の金属からなる板材であり、中央にボルト14が挿通されるボルト孔を有している。ボルテッドプレート13は、ベースプレート12よりも小径の円板状の板材であり、中央にボルト14が挿通されるボルト孔を有している。ボルト14は、重なるように当接して配置されるベースプレート12とボルテッドプレート13とのボルト孔に対して挿通されており、ベースプレート12とボルテッドプレート13とを締結している。
ボルテッドプレート13は、ボルト14側の部位である固着部位13aと、固着部位13aの外側の部位であるすべり部位13bとから構成されている。固着部位13aは、その下面がベースプレート12の上面と接触されている。この下面は、ベースプレート12とボルテッドプレート13とが接触する接触面15の一部を構成しており、接触面15の固着領域Rcを形成している。なお、固着領域Rcとは、上記第1実施形態の固着領域Raと同様に、締結構造体11に対して、ベースプレート12とボルテッドプレート13とを相対移動させようとする振動が付与されたときにベースプレート12とボルテッドプレート13とが滑らない領域である。このように、固着部位13aは、固着領域Rcを表面とするボルテッドプレート13の一部からなる。
また、固着部位13aは、図2(b)に示すように、下面側に複数の同心円状スリット13c及び放射状スリット13dを備えている。同心円状スリット13cは、ボルト14を中心とする環状のスリットであり、ボルト14を中心とする半径方向に複数配列されている。これらの同心円状スリット13cは、ボルト14から離れるに連れて深く形成されている。放射状スリット13dは、ボルト14を中心とする半径方向に延びる直線状のスリットであり、ボルト14を中心とする周方向に複数配列されている。なお、同心円状スリット13cは、必ずしもボルト14から離れるに連れて深く形成されている必要はない。また、同心円状スリット13cの配列間隔は、ボルト14から離れるに連れて狭くなるようにしても良い。また、同心円状スリット13cの配列間隔を一定とし、スリット幅がボルト14から離れるに連れて広くなるようにしても良い。
このような固着部位13aは、同心円状スリット13cを備えることによって、ボルト14を中心とする半径方向に変形し易い構造となっている。すなわち、固着部位13aは、同心円状スリット13cによって、ボルト14を中心とする半径方向(ベースプレート12とボルテッドプレート13との結合方向であるボルト14の軸方向と直交する方向)の剛性が低くなるように調節されている。また、固着部位13aは、放射状スリット13dを備えることによって、ボルト14を中心とする円周方向に変形し易い構造となっている。すなわち、固着部位13aは、放射状スリット13dによって、ボルト14を中心とする周方向(ベースプレート12とボルテッドプレート13との結合方向であるボルト14の軸方向と直交する方向)の剛性が低くなるように調節されている。
すべり部位13bは、円板状の板ばね13eと、ブロック13fとから構成されている。板ばね13eは、ボルト14から見て固着部位13aの外縁に接続される環状のばね部材である。この板ばね13eは、ボルト14の軸方向に撓み、当該軸方向と直交する方向には撓み難いよう、ボルト14の軸方向に薄い板形状とされている。このような板ばね13eは、ボルト14の軸方向に撓むことが可能となっている。このため、ボルト14の軸方向(ベースプレート12とボルテッドプレート13との結合方向)においてすべり部位13bが弾性を有している。ブロック13fは、板ばね13eの外縁に接続されており、その下面がベースプレート12の上面と接触されている。この下面は、ベースプレート12とボルテッドプレート13とが接触する接触面15の一部を構成しており、接触面15のすべり領域Rdを形成する。なお、すべり領域Rdとは、上記第1実施形態のすべり領域Rbと同様に、締結構造体11にベースプレート12とボルテッドプレート13とを相対移動させようとする振動が付与されたときにベースプレート12とボルテッドプレート13とが滑る領域である。このように、すべり部位13bは、すべり領域Rdを表面とするボルテッドプレート13の一部からなる。
接触面15は、ベースプレート12とボルテッドプレート13とが接触している面であり、固着部位13aとベースプレート12とが接触する固着領域Rcと、すべり部位13b(ブロック13f)とベースプレート12とが接触するすべり領域Rdとから構成されている。
本実施形態の締結構造体11では、上述のようにボルテッドプレート13の固着部位13aは、同心円状スリット13cを備えることによって、ボルト14を中心とする半径方向に変形し易い構造となっている。すなわち、本実施形態においては、通常であれば、同心円状スリット13cが形成されない固着部位13aが、同心円状スリット13cが形成されることによって、ボルト14の軸方向と直交する直線方向に対する剛性が低くなるように調節されている。
このような本実施形態の締結構造体11では、ボルト14の軸方向と直交する直線方向に振幅する振動が付与されたときに、ボルテッドプレート13の固着部位13aは、ベースプレート12の変位に追従して変形し易い。このため、固着部位13aとすべり領域13bとを設定するために考慮した所定の振動振幅よりも大きな振動振幅の振動が発生した場合や、何らかの原因によりボルト14による締結力が小さくなっている場合であっても、ベースプレート12に対してボルテッドプレート13の固着部位13aがすべり難くなり、ボルテッドプレート13の固着部位13aの剛性が調節されていない場合と比較し、高い締結性を得ることができる。
また、本実施形態の締結構造体11では、上述のようにボルテッドプレート13の固着部位13aは、放射状スリット13dを備えることによって、ボルト14を中心とする周方向に変形し易い構造となっている。すなわち、本実施形態においては、通常であれば、放射状スリット13dが形成されない固着部位13aに、放射状スリット13dが形成されており、これによって、固着部位13aの剛性が、ボルト14を中心とするねじり方向に対して低くなるように調節されている。
したがって、本実施形態の締結構造体11に対して、ボルト14を中心とするねじり方向に振幅する振動が付与されたときに、ボルテッドプレート13の固着部位13aは、ベースプレート12の変位に追従して変形する。このため、固着部位13aとすべり領域13bとを設定するために考慮した所定の振動振幅よりも大きな振動振幅の振動が発生した場合や、何らかの原因によりボルト14による締結力が小さくなっている場合であっても、ベースプレート12に対してボルテッドプレート13の固着部位13aがすべり難くなり、ボルテッドプレート13の固着部位13aの剛性が調節されていない場合と比較して高い締結性を得ることができる。
このように、ボルテッドプレート13の固着部位13aは、ボルテッドプレート13の一部からなり、ボルテッドプレート13の一部の剛性を調節することにより、固着領域Rcにおける締結性を高める。これによって、すべり領域Rdにおいて積極的にすべり部位13bを滑らせることが可能となり、すべり領域Rdにおける摩擦損失量を増加させることが可能となる。すなわち、本実施形態の締結構造体11においては、ボルテッドプレート13の固着部位13aが、本発明の剛性調節部として機能する。
以上のような本実施形態の締結構造体11によれば、剛性調節部として機能するボルテッドプレート13の固着部位13aによって、結合されるベースプレート12とボルテッドプレート13のうちボルテッドプレート13の一部の剛性が低く調節される。このようにボルテッドプレート13の固着部位13aの剛性が低くなることによって、接触面15の一部である固着領域Rcにおけるすべり易さが低下し、ベースプレート12とボルテッドプレート13との締結性を高めることができる。このようにベースプレート12とボルテッドプレート13との締結性を高めることによって、すべり部位13bにおいて締結性を得る必要性が低下し、すべり部位13bにおいて積極的にベースプレート12とボルテッドプレート13とを滑らせることが可能となる。そして、すべり部位13bにおいて大きくベースプレート12とボルテッドプレート13とを滑らせることによって、すべり部位13bにおける摩擦損失量が大きく増大し、振動の減衰特性を大きくすることが可能となる。このような本実施形態の締結構造体11によれば、すべり部位13bにおけるベースプレート12とボルテッドプレート13との滑り量の設定範囲を広くとることができ、その範囲において振動の減衰特性を任意に調節することが可能となる。
また、本実施形態の締結構造体11においては、板ばね13eを備えることにより、ボルテッドプレート13のすべり部位13bが、ベースプレート12とボルテッドプレート13との結合方向に弾性を有する。このため、ブロック13fが常にベースプレート12の上面に押さえつけられることになり、ブロック13fとベースプレート12との間の垂直抗力の大きさを安定させることができる。ブロック13fとベースプレート12との間の垂直抗力の大きさによって、すべり領域Rdで生じる摩擦損失量が変化するため、板ばね13eによって、ブロック13fとベースプレート12との間の垂直抗力の大きさを安定させることで、摩擦損失量も安定させることができ、常に振動の減衰量を一定に保つことが可能となる。
また、本実施形態の締結構造体11では、ボルテッドプレート13の固着部位13aは、ボルト14の軸方向と直交する方向に並ぶ同心円状スリット13c及び放射状スリット13dによって、ボルト14の軸方向と直交する方向では低剛性とされているものの、ボルト14の軸方向には剛性が維持された構成となっている。このため、ベースプレート12とボルテッドプレート13との締結性を維持することができる。
また、ブロック13fとベースプレート12との間の垂直抗力の大きさによって、すべり領域Rdで生じる摩擦損失量が変化するため、板ばね13eのばね定数と変位を調節して上記垂直抗力を調節することによって、すべり領域Rdで生じる摩擦損失量を容易に調節することが可能である。
また、本実施形態においては、同心円状スリット13cは、ボルト14の締結力が強く伝達される中央部で浅く、接触応力が低くなる外側で深くなる。このため、接触応力が低く固着の限界(静止摩擦係数)が低い領域において、固着部位13aがより柔軟に変形して振動吸収することで固着領域Rcに働く剪断応力を減少させることができる。よって、固着領域Rcにおいてよりベースプレート12とボルテッドプレート13とが滑ることを防止することができる。
なお、本実施形態においては、ボルテッドプレート13の固着部位13aに対して同心円状スリット13c及び放射状スリット13dを形成する構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ベースプレート12側の固着部位に対して同心円状スリット及び放射状スリットを設けても良い。この場合には、ベースプレート12の固着部位が、剛性が調節される部位となり、剛性調節部として機能することになる。また、ボルト14の軸方向に直交しかつ互いに直交する2つの方向に複数の直線状のスリットを設け、スリットを格子状に配列しても良い。
また、本実施形態においては、ボルテッドプレート13が板ばね13e及びブロック13fを備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、ボルテッドプレート13から板ばね13e及びブロック13fを削除し、下端がベースプレート12と接触し、上端がボルテッドプレート13に固定された環状の皿ばね16を設置するようにしても良い。このような場合には、皿ばね16とベースプレート12とが接触する面が接触面15のすべり領域Rdとなり、皿ばね16が、板ばね13eとブロック13fと同じ機能を果たすことになる。このような場合には、本発明の第2部材は、ボルテッドプレート13及び皿ばね16とから構成されることになる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
図4(a)は、本実施形態の締結構造体21の概略構成を示す縦断面図である。この図に示すように、本実施形態の締結構造体21は、ベースプレート22と、ボルテッドプレート23と、ボルト24とを備えている。
ベースプレート22は、例えばボルト24を中心として半径方向に広がることが可能なように分割された金属からなる板材であり、中央にボルト24が挿通されるボルト孔を有している。ボルテッドプレート23は、ベースプレート22よりも広い板材であり、中央にボルト24が挿通されるボルト孔を有している。ボルト24は、重ねて配置されるベースプレート22とボルテッドプレート23とのボルト孔に対して挿通されており、ベースプレート22とボルテッドプレート23とを締結している。また、本実施形態においては、ボルト24がベースプレート22を貫通して基台Xと螺合されており、これによってベースプレート22がボルテッドプレート23と基台Xとに挟まれるようにして締結構造体21が基台X上に固定されている。
ベースプレート22は、ボルト24側の部位である固着部位22aと、固着部位22aの外側の部位であるすべり部位22bとから構成されている。
固着部位22aは、その上面がボルテッドプレート23の下面と接触されている。この上面は、ベースプレート22とボルテッドプレート23とが接触する接触面25の一部を構成しており、接触面25の固着領域Reを形成している。なお、固着領域Reとは、上記第1実施形態の固着領域Raと同様に、締結構造体21に対して上下方向の振動が付与されたときにベースプレート22とボルテッドプレート23とが滑らない領域である。このように、固着部位22aは、固着領域Reを表面とするベースプレート22の一部からなる。
また、固着部位22aは、図4(a)に示すように、ボルト24の軸に対して傾斜された複数の斜めスリット22cを備えている。これらの斜めスリット22cは、図4(a)に示すように、ベースプレート22の表面から深さ方向に向かうに連れて、ボルト24から見て外側に向かうように傾斜されている。この固着部位22aでは、これらの斜めスリット22cによって、斜めスリット22cの法線方向(斜めスリット22cの断面形状が示す斜辺と直交する方向)への剛性が低くなる。すなわち、本実施形態では、固着部位22aの剛性が、ベースプレート22とボルテッドプレート23との結合方向、及び、この結合方向と直交する方向の2方向において調節されている。このような固着部位22aは、ボルト24の軸方向から押されると、ポアソン比による変形を超えてボルト24から見て外側に突出するように変形する。
すべり部位22bは、接続部22d、板ばね22e及びブロック22fから構成されている。接続部22dは、ボルト24から見て固着部位22aの外縁に接続されており、固着部位22aの変形によって押し出されるように、ボルト24の軸方向と直交する方向に剛性の高い環状部材である。板ばね22eは、接続部22dの外縁に接続されており、ボルト24の軸方向に撓むように形状設定されている。なお、図4(a)に示すように、板ばね22eは、接続部22dの上下に1つずつ設置されている。ブロック22fは、板ばね22eを介して接続部22dに接続されている。このブロック22fも接続部22dの上下に1つずつ設置されている。接続部22dの上側に設置されるブロック22fの上面がボルテッドプレート23の下面と接触されている。この上面は、ベースプレート22とボルテッドプレート23とが接触する接触面25の一部を構成しており、接触面25のすべり領域Rfを形成する。なお、すべり領域Rfとは、上記第1実施形態のすべり領域Rbと同様に、締結構造体21に主に上下振動が付与されたときにベースプレート22とボルテッドプレート23とが滑る領域である。このように、すべり部位22bは、すべり領域Rfを表面とするベースプレート22の一部からなる。
接触面25は、ベースプレート22とボルテッドプレート23とが接触している面であり、固着部位22aとボルテッドプレート23とが接触する固着領域Reと、すべり部位22bとボルテッドプレート23とが接触するすべり領域Rfとから構成されている。
本実施形態の締結構造体21では、上述のようにベースプレート22の固着部位22aは、斜めスリット22cを備えることによって、斜めスリット22cの法線方向に変形し易い構造となっている。すなわち本実施形態においては、通常であれば、斜めスリット22cが形成されない固着部位22aが、斜めスリット22cが形成されることによって、斜めスリット22cの法線方向に剛性が低くなっている。
このような本実施形態の締結構造体21では、ボルト24の軸方向に振幅する振動が付与されたときに、ベースプレート22の固着部位22aがボルト24の軸方向に伸縮され、これによって固着部位22aがボルト24の軸方向と直交する方向に伸縮する。例えば、固着部位22aは、ボルト24の軸方向に潰されたときにはボルト24の軸方向と直交する方向において伸び、ボルト24の軸方向に引っ張られたときにはボルト24の軸方向と直交する方向において縮む。このような固着部位22aのボルト24の軸方向と直交する方向の伸縮によって、接続部22d及び板ばね22eを介してブロック22fがボルト24の軸方向と直交する方向に大きく移動され、すべり領域Rfにおける摩擦損失量を増大させることができる。
このように、ベースプレート22の固着部位22aは、ベースプレート22の一部からなり、ベースプレート22の一部の剛性を調節することにより、ベースプレート22とボルテッドプレート23との接触面25の一部であるすべり領域Rfにおける摩擦損失量を増大(変更)する。すなわち、本実施形態の締結構造体21においては、ベースプレート22の固着部位22aが、本発明の剛性調節部として機能する。
以上のような本実施形態の締結構造体21によれば、剛性調節部として機能するベースプレート22の固着部位22aによって、ベースプレート22の一部の剛性が斜めスリット22cの法線方向に低くなるように調節されている。このようにベースプレート22の固着部位22aの剛性が斜めスリット22cの法線方向に低くなることによって、固着部位22aでの滑りを防止して締結性を向上するとともに、接触面25の一部であるすべり領域Rfにおけるブロック22fの移動量を大きくし、すべり領域Rfにおける摩擦損失量を増大させることができる。したがって、本実施形態の締結構造体21によれば、振幅の方向がボルト24の軸方向と一致する振動の減衰量を大きくすることができる。
なお、本実施形態の締結構造体21では、ベースプレート22は、基台X側にもブロック22fを備えている。このため、ブロック22fと基台Xとの間でも摩擦損失が生じ、振幅の方向がボルト24の軸方向と一致する振動の減衰量をより大きくすることができる。
また、本実施形態の締結構造体21においては、板ばね22eを備えることにより、ベースプレート22のすべり部位22bが、ベースプレート22とボルテッドプレート23との結合方向に弾性を有する。このため、ブロック22fが常にボルテッドプレート23の下面に押さえつけられることになり、ブロック22fとボルテッドプレート23との間の垂直抗力の大きさを安定させることができる。ブロック22fとボルテッドプレート23との間の垂直抗力の大きさによって、すべり領域Rfで生じる摩擦損失量が変化するため、板ばね22eによって、ブロック22fとボルテッドプレート23との間の垂直抗力の大きさを安定させることで、摩擦損失量も安定させることができ、常に振動の減衰量を一定に保つことが可能となる。
また、ブロック22fとボルテッドプレート23との間の垂直抗力の大きさによって、すべり領域Rfで生じる摩擦損失量が変化するため、板ばね22eのばね定数と変位を調節して上記垂直抗力を調節することによって、すべり領域Rfで生じる摩擦損失量を容易に調節することが可能である。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
図4(b)は、本実施形態の締結構造体31の概略構成を示す縦断面図である。この図に示すように、本実施形態の締結構造体31は、ベースプレート32と、ボルテッドプレート33と、ボルト34とを備えている。
ベースプレート32は、例えば円板状の金属からなる板材であり、中央にボルト34が挿通されるボルト孔を有している。ボルテッドプレート33は、ベースプレート32よりも広い板材であり、中央にボルト34が挿通されるボルト孔を有している。ボルト34は、重ねて配置されるベースプレート32とボルテッドプレート33とのボルト孔に対して挿通されており、ベースプレート32とボルテッドプレート33とを締結している。また、本実施形態においては、ボルト34がベースプレート32を貫通して基台Xと螺合されており、これによってベースプレート32がボルテッドプレート33と基台Xとに挟まれるようにして締結構造体31が基台X上に固定されている。
ベースプレート32は、ボルト34側の部位である固着部位32aと、固着部位32aの外側の部位であるすべり部位32bとから構成されている。
固着部位32aは、その上面がボルテッドプレート33の下面と接触されている。この上面は、ベースプレート32とボルテッドプレート33とが接触する接触面35の一部を構成しており、接触面35の固着領域Rgを形成している。なお、固着領域Rgとは、上記第1実施形態の固着領域Raと同様に、締結構造体31に対して振動が付与されたときにベースプレート32とボルテッドプレート33とが滑らない領域である。このように、固着部位32aは、固着領域Rgを表面とするベースプレート32の一部からなる。
また、固着部位32aは、弾性率が小さな(異なる)材料(例えば、銅、アルミニウム、プラスチック等)によって形成されている。このような固着部位32aは、ボルト34の軸方向から押されると、ボルト34の軸方向に大きく変形し、これに伴ってボルト34から見て外側に大きく突出するように変形する。
すべり部位32bは、板ばね32c及びブロック32dから構成されている。板ばね32cは、固着部位32aの外縁に接続されており、ボルト34の軸方向に撓むように形状設定されている。なお、図4(b)に示すように、板ばね32cは、ボルト34の軸方向に離間して上下に1つずつ設置されている。ブロック32dは、板ばね32cを介して固着部位32aに接続されている。このブロック32dも上下に1つずつ設置されている。上側に設置されるブロック32dの上面がボルテッドプレート33の下面と接触されている。この上面は、ベースプレート32とボルテッドプレート33とが接触する接触面35の一部を構成しており、接触面35のすべり領域Rhを形成する。なお、すべり領域Rhとは、上記第1実施形態のすべり領域Rbと同様に、締結構造体31に振動が付与されたときにベースプレート32とボルテッドプレート33とが滑る領域である。このように、すべり部位32bは、すべり領域Rhを表面とするベースプレート32の一部からなる。
接触面35は、ベースプレート32とボルテッドプレート33とが接触している面であり、固着部位32aとボルテッドプレート33とが接触する固着領域Rgと、すべり部位32bとボルテッドプレート23とが接触するすべり領域Rhとから構成されている。
本実施形態の締結構造体31では、上述のようにベースプレート32の固着部位32aは、弾性率の低い材料にて形成されることによって剛性が低くなるように調節されており、ボルト34の軸方向に押圧されたときにボルト34の軸方向と直交する方向に大きく突出する。すなわち、本実施形態では、固着部位32aの剛性が、ベースプレート32とボルテッドプレート33との結合方向、及び、この結合方向と直交する方向の2方向を含んで調節されている。
このような本実施形態の締結構造体31では、ボルト34の軸方向に振幅する振動が付与されたときに、ベースプレート32の固着部位32aがボルト34の軸方向に伸縮され、これによって固着部位32aがボルト34の軸方向と直交する方向に伸縮する。例えば、固着部位32aは、ボルト34の軸方向に潰されたときにはボルト34の軸方向と直交する方向において伸び、ボルト34の軸方向に引っ張られたときにはボルト34の軸方向と直交する方向において縮む。このような固着部位32aのボルト34の軸方向と直交する方向の伸縮によって、板ばね32cを介してブロック32dがボルト34の軸方向と直交する方向に大きく移動され、すべり領域Rhにおける摩擦損失量を増大させることができる。
このように、ベースプレート32の固着部位32aは、ベースプレート32の一部からなり、ベースプレート32の一部の剛性を調節することにより、ベースプレート32とボルテッドプレート33との接触面35の一部であるすべり領域Rhおける摩擦損失量を増大(変更)する。すなわち、本実施形態の締結構造体31においては、ベースプレート32の固着部位32aが、本発明の剛性調節部として機能する。
以上のような本実施形態の締結構造体31によれば、剛性調節部として機能するベースプレート32の固着部位32aによって、ベースプレート32の一部の剛性が低くなるように調節されている。このようにベースプレート32の固着部位32aの剛性が低くなることによって、接触面35の一部であるすべり領域Rhにおけるブロック32dの移動量大きくし、すべり領域Rhにおける摩擦損失量を増大させることができる。したがって、本実施形態の締結構造体31によれば、振幅の方向がボルト34の軸方向と一致する振動の減衰量を大きくすることができる。
なお、本実施形態の締結構造体31では、ベースプレート32は、基台X側にもブロック32dを備えている。このため、ブロック32dと基台Xとの間でも摩擦損失が生じ、振幅の方向がボルト34の軸方向と一致する振動の減衰量をより大きくすることができる。
また、本実施形態の締結構造体31においては、板ばね32cを備えることにより、ベースプレート32のすべり部位32bが、ベースプレート32とボルテッドプレート33との結合方向に弾性を有する。このため、ブロック32dが常にボルテッドプレート33の下面に押さえつけられることになり、ブロック32dとボルテッドプレート33との間の垂直抗力の大きさを安定させることができる。ブロック32dとボルテッドプレート33との間の垂直抗力の大きさによって、すべり領域Rhで生じる摩擦損失量が変化するため、板ばね32cによって、ブロック32dとボルテッドプレート33との間の垂直抗力の大きさを安定させることで、摩擦損失量も安定させることができ、常に振動の減衰量を一定に保つことが可能となる。
また、ブロック32dとボルテッドプレート33との間の垂直抗力の大きさによって、すべり領域Rhで生じる摩擦損失量が変化するため、板ばね32cのばね定数と変位を調節して上記垂直抗力を調節することができ、すべり領域Rhで生じる摩擦損失量を容易に調節することが可能である。
(第5実施形態)
上記第3実施形態及び第4実施形態は、付与される振動の振幅方向がボルトの軸方向であるときに、振動方向を固着部位によってボルトの軸方向と直交する方向に変換し、これによってすべり領域におけるすべり量を大きくする構成である。このような構成の他の形態としては、図5(a)に示すような形態も考えられる。
図5(a)に示す締結構造体41は、ベースプレート42と、ボルテッドプレート43と、弾性部材44と、皿ばね45と、ブロック46と、ボルト47とを備えている。なお、本実施形態においては、ボルテッドプレート43、弾性部材44、皿ばね45及びブロック46が一体化されており、集合構造体49(本発明における第2部材)を構成している。
ベースプレート42は、例えば円板状の金属からなる板材であり、中央にボルト47が挿通されるボルト孔を有している。ボルテッドプレート43は、ベースプレート42より小さな板材であり、中央にボルト47が挿通されるボルト孔を有している。ボルト47は、ベースプレート42とボルテッドプレート43とのボルト孔に対して挿通されており、ボルテッドプレート43、弾性部材44、皿ばね45及びブロック46の集合構造体49とボルテッドプレート43とを締結している。
弾性部材44は、蛇腹44aを有する管状部材であり、ボルト47を囲むようにしてベースプレート42とボルテッドプレート43との間にボルテッドプレート43に固定された状態で配置されている。この弾性部材44は、ボルト47の軸方向のみに蛇腹44aによって伸縮可能とされている。すなわち、弾性部材44は、ボルト47の軸方向に剛性が低く、ボルト47の軸方向に直交する方向の剛性が高い構造とされている。この弾性部材44の下面は、ベースプレート42の上面と接触されている。この弾性部材44の下面は、上記集合構造体49とベースプレート42との接触面48の一部を構成しており、固着領域Riとされている。なお、固着領域Riとは、上記第1実施形態の固着領域Raと同様に、締結構造体41に対して振動が付与されたときに集合構造体49とベースプレート42とが滑らない領域である。このように、弾性部材44は、集合構造体49の一部であり、固着領域Riを表面としている。
皿ばね45は、ボルト47から見て弾性部材44の外側に配置され、ボルテッドプレート43に対して上端が固定されている。この皿ばね45は、縦断面がボルト47の軸方向に斜めとなるように形状設定されている。このように斜めに配置された皿ばね45は、断面形状が示す斜辺の法線方向への剛性が低く、この法線方向と直交する方向の剛性が高く調節された部材と言う事ができる。このような皿ばね45は、ボルト47の軸方向から押されると、外縁(下端)側をボルト47から見て外側に押し広げるようにして変形される。ブロック46は、皿ばね45の外縁に接続されており、その下面がベースプレート42の上面と接触されている。この下面は、ベースプレート42と上記集合構造体49との接触面48の一部を構成しており、接触面48のすべり領域Rjを形成する。なお、すべり領域Rjとは、上記第1実施形態のすべり領域Rbと同様に、締結構造体41に振動が付与されたときにベースプレート42と上記集合構造体49とが滑る領域である。このように、皿ばね45及びブロック46は、上記集合構造体49の一部からなり、さらにブロック46はすべり領域Rjを表面としている。
接触面48は、上記集合構造体49とベースプレート42が接触している面であり、弾性部材44とベースプレート42とが接触する固着領域Riと、ブロック46とベースプレート42とが接触するすべり領域Rjとから構成されている。
このような本実施形態の締結構造体41では、ボルト47の軸方向に振幅する振動が付与されたときに、皿ばね45の外縁がボルト47の軸方向と直交する方向に移動する。例えば、皿ばね45の外縁は、ボルト47の軸方向に潰されたときにはボルト47の軸方向と直交する方向において広がるように移動し、ボルト47の軸方向に引っ張られたときにはボルト47の軸方向と直交する方向において縮むように移動する。このような皿ばね45の外縁の移動によって、皿ばね45を介してブロック46がボルト47の軸方向と直交する方向に大きく移動され、すべり領域Rjにおける摩擦損失量を増大させることができる。
このように、上記集合構造体49に含まれる皿ばね45は、当該集合構造体49の一部の剛性を調節することにより、上記集合構造体49とベースプレート42との接触面48の一部であるすべり領域Rjにおける摩擦損失量を増大(変更)する。すなわち、本実施形態の締結構造体41においては、皿ばね45が本発明の剛性調節部として機能する。
以上のような本実施形態の締結構造体41によれば、剛性調節部として機能する皿ばね45によって、集合構造体49の一部の剛性が調節されている。このように集合構造体49の一部の剛性が変わることによって、接触面48の一部であるすべり領域Rjにおけるブロック46の移動量を大きくし、すべり領域Rjにおける摩擦損失量を増大させることができる。したがって、本実施形態の締結構造体41によれば、振幅の方向がボルト47の軸方向と一致する振動の減衰量を大きくすることができる。
また、本実施形態の締結構造体41においては、皿ばね45によって集合構造体49がベースプレート42と集合構造体49との結合方向に弾性を有する。このため、ブロック46が常にベースプレート42の上面に押さえつけられることになり、ブロック46とベースプレート42との間の垂直抗力の大きさを安定させることができる。ブロック46とベースプレート42との間の垂直抗力の大きさによって、すべり領域Rjで生じる摩擦損失量が変化するため、皿ばね45によって、ブロック46とベースプレート42との間の垂直抗力の大きさを安定させることで、摩擦損失量も安定させることができ、常に振動の減衰量を一定に保つことが可能となる。
また、ブロック46とベースプレート42との間の垂直抗力の大きさによって、すべり領域Rjで生じる摩擦損失量が変化するため、皿ばね45のばね定数と変位を調節して上部推力抗力を調節することができ、すべり領域Rjで生じる摩擦損失量を容易に調節することができる。
また、本実施形態の締結構造体41においては、弾性部材44が、ボルト47の軸方向に伸縮するための蛇腹44aを備えている。このため、ボルト47の軸方向に振幅する振動が付与されたときに、ベースプレート42に対してボルテッドプレート43を大きく移動させることができ、皿ばね45の撓み量を大きくし、ブロック46の移動量をより大きく確保することができる。したがって、すべり領域Rjで生じる摩擦損失量をより大きくすることが可能となる。
また、例えば、弾性部材44を上記第1実施形態の固着部位3aのように弾性率の低い材料によって形成することも可能である。これによって、上下、左右、前後、回転のすべての振動を許容する固着部位となり、どのような振動が付与された場合であっても、皿ばね45及びブロック46の移動量を大きく確保することができ、すべり領域Rjにおいて大きな摩擦損失を得ることが可能となる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
図5(b)は、本実施形態の締結構造体51の概略構成を示す縦断面図である。図5(b)に示すように、本実施形態の締結構造体51は、ベースプレート52と、ボルテッドプレート53と、ボルト54とを備えている。
ベースプレート52は、例えば円板状の金属からなる板材であり、中央にボルト54が挿通されるボルト孔を有している。ボルテッドプレート53は、ベースプレート52よりも小さな板材であり、中央にボルト54が挿通されるボルト孔を有している。ボルト54は、重ねて配置されるベースプレート52とボルテッドプレート53とのボルト孔に対して挿通されており、ベースプレート52とボルテッドプレート53とを締結している。
ボルテッドプレート53は、ボルト54側の部位である内側部位53aと、内側部位53aの外側の部位である外側部位53bとから構成されている。内側部位53aは、その下面がベースプレート52の上面と接触されている。この下面は、ベースプレート52とボルテッドプレート53とが接触する接触面55の一部を構成している。外側部位53bは、その下面がベースプレート52の上面と接触されている。この下面は、ベースプレート52とボルテッドプレート53とが接触する接触面55の一部を構成している。また、外側部位53bは、図5(b)に示すように、下面側に複数の同心円状スリット53cを備えている。同心円状スリット53cは、ボルト54を中心とする環状のスリットであり、ボルト54を中心とする半径方向に複数配列されている。
このような外側部位53bは、同心円状スリット53cを備えることによって、ボルト54を中心とする半径方向に変形し易い構造となっている。すなわち、外側部位53bは、同心円状スリット53cによって、ボルト54を中心とする半径方向(ベースプレート52とボルテッドプレート53との結合方向であるボルト54の軸方向と直交する方向)の剛性が低くなるように調節されている。
本実施形態の締結構造体51では、上述のようにボルテッドプレート53の外側部位53bは、同心円状スリット53cを備えることによって、ボルト54を中心とする半径方向に変形し易い構造となっている。すなわち、本実施形態においては、通常であれば、同心円状スリット53cが形成されない外側部位53bが、同心円状スリット53cが形成されることによって、ボルト54の軸方向と直交する直線方向に対する剛性が低くなるように調節されている。
このような本実施形態の締結構造体51では、ボルト54の軸方向と直交する直線方向に振幅する振動が付与されたときに、ボルテッドプレート53の外側部位53bは、ベースプレート52の変位に追従して変形し易い。このため、ベースプレート52に対してボルテッドプレート53の外側部位53bがすべり難くなり、接触面55の全域が固着領域Rkとなる。なお、固着領域Rkとは、上記第1実施形態の固着領域Raと同様に、締結構造体51に対して振動が付与されたときにボルテッドプレート53とベースプレート52とが滑らない領域である。
このように、ボルテッドプレート53の外側部位53bは、ボルテッドプレート53の一部からなり、ボルテッドプレート53の一部の剛性を調節することにより、外側部位53bとベースプレート52と接触領域における摩擦損失量を低減(変更)する。すなわち、本実施形態の締結構造体51においては、ボルテッドプレート53の外側部位53bが、本発明の剛性調節部として機能する。
以上のような本実施形態の締結構造体51によれば、剛性調節部として機能するボルテッドプレート53の外側部位53bによって、結合されるベースプレート52とボルテッドプレート53のうちボルテッドプレート53の一部の剛性が低く調節される。このようにボルテッドプレート53の外側部位53bの剛性が低くなることによって、外側部位53bとベースプレート52と接触領域におけるすべり易さが低下し、本実施形態の締結構造体51における振動の減衰特性を低くすることが可能となる。このような本実施形態の締結構造体51によれば、外部から付与される振動を減衰させることなく他の部材等に伝達することが可能となる。
なお、接触圧力の減少に従って、図6(a)に示すように、同心円状スリット53cの間隔を外側ほど狭くしたり、図6(b)に示すように、同心円状スリット53cの深さを増加させたりしても良い。また、同心円状スリット53cの配列間隔を一定とし、外側ほどスリット幅を広くしても良い。
また、同心円状スリット53cに加え、外側部位53bの下面に放射状スリットを設けても良い。これによって、外側部位53bがボルト54を中心とするねじり方向にも低剛性化される。したがって、本実施形態の締結構造体51に、ボルト54を中心とするねじり方向に振幅する振動が付与されたときであっても、外側部位53bとベースプレート52と接触領域において滑りが発生することを防止し、本実施形態の締結構造体51における振動の減衰特性を低くすることが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、ボルトによって2つの部材が締結された締結構造体について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、リベット、接着剤、溶接等の他の方法によって、2つの部材が結合された結合構造体全般に対して適用することが可能である。
また、図7に示すように、上記第2実施形態において、例えば、すべり部位13bの下部をダイアフラム状の板ばね構造13gとしても良い。このような構造においても、固着部位13aが水平方向(ボルト14の軸と直交する方向)に低剛性となることで締結性が向上し、すべり部位13gが鉛直方向(ボルト14の軸方向)に低剛性となることで、安定して大きな摩擦損失量を得ることが可能となる。