JP5112226B2 - 締結機構およびそれを用いた防振装置 - Google Patents

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Description

本発明は、第1部材の上下側に弾性部材を配置した状態で、固定治具により第1部材を第2部材に固定する締結機構およびそれを用いた防振装置に係り、特に弾性部材の改良に関する。
自動車産業や、精密機器産業、家電、建築等の各種分野では、振動伝達を抑制する防振装置が使用されている。具体的には、対象物と支持部との間に設けられる防振装置は、エンジンや、高速回転するモータ、洗濯機の脱水槽、建築物等に適用されている。防振装置では、対象物と支持部により構成される系の固有振動数を、所定の振動数帯域よりも十分に低く設定することが有効である。その手法として、支持部のばね定数を小さくすることが考えられるが、この場合、ばね定数を小さくすると、荷重を支えるためには、ばねを大きくしなければならない。
そこで、防振装置に弾性部材として皿ばねを用いる手法が提案されている。皿ばねの荷重特性は、図9に示す曲線のように設計することができるから、荷重を支えることができるとともにばね定数を小さく設定することができる領域Aを設定することができる。
このような荷重特性を示す皿ばねは、たとえば図10に示すように、防振装置用の締結機構に適用されている(たとえば特許文献1)。締結機構200は、第1部材201(対象物)を第2部材202(支持部)に固定する固定治具203を備え、第1部材201の下側および上側に下側皿ばね204および上側皿ばね205が配置されている。このような締結機構200では、第1部材201と第2部材202との間で生じる振動の伝達を皿ばね204,205により抑制している。
しかしながら、締結機構200の初期状態(取付状態)では、下側皿ばね204への荷重が、第1部材201の重力Mg(Mは第1部材の質量、gは重力定数)と固定治具203の軸力Fとの和になり、上側皿ばね205への荷重が、固定治具203の軸力Fになり、皿ばね204,205への荷重が相違する。このため、皿ばね204,205として同じ荷重特性を有する皿ばねを用いる場合、たとえばばね定数の小さな領域Aで下側皿ばね204を使用するように設定すると、上側皿ばね205は、ばね定数の大きな領域で使用することになってしまう。
これにより、皿ばね204,205をともに領域Aで使用するためには、図11(A)に示すように、皿ばね204,205を異なる荷重特性に設定する必要があるから、いずれかの皿ばねの使用範囲を制限しなければならなかった。特に、図11(B)に示すように、第1部材201の重力Mgが固定治具203の軸力Fに対して非常に大きい場合、この問題は深刻となる。そこで、図11(C)に示すように、皿ばね204,205を同じ荷重特性に設定するために、第1部材201の重力Mgの影響が無視できる程度に固定治具203の軸力Fを大きくすることが考えられるが、この場合、それに対応するために皿ばね204,205を大型にしなければならない。
また、皿ばね204,205は、その形状が荷重印加により略平坦状をなすように変形するときに、皿ばね204,205の内周縁部および外周縁部が、相手部材に対して摺動して摩擦が発生する。このため、皿ばね204,205の使用範囲を図9の領域Aの範囲に設定した場合、実際の荷重曲線には、図12(A)に示すヒステリシスが生じる。その結果、皿ばね204,205の使用範囲での実質的な動的ばね定数は、図12(A)の点Pと点Qを結ぶ対角線lの傾きとなる。この場合、使用範囲の振幅を小さくしたとき、図12(B)に示すように、対角線lの傾きが大きくなるため、動的ばね定数が大きくなってしまう。このように皿ばねが適用された締結機構では、高周波振動のような微振幅の振動を入力すると、皿ばねの動的ばね定数が大きくなるため、系の固有振動数が増加し、その結果、高周波振動の伝達を抑制できないという問題があった。
特開2003−112533号公報
したがって、本発明は、荷重曲線で使用範囲の制限が生じることを防止することができるのはもちろんのこと、大型にすることなく、同じ荷重特性の弾性部材を用いることができるとともに、高周波振動の伝達を抑制することができる締結機構およびそれを用いた防振装置を提供することを目的としている。
本発明の締結機構は、第1部材と第2部材とを固定する固定治具と、第1部材の上側および下側に配置される上側弾性部材および下側弾性部材とを備え、上側弾性部材の上側には、第2部材および固定治具の一端部のうちの一方が配置されるとともに、下側弾性部材の下側には、第2部材および固定治具の一端部のうちの他方が配置され、固定治具の一端部によって上側弾性部材および下側弾性部材による第1部材の被狭持状態を維持するとともに固定治具の他端部を第2部材に固定する締結機構において、上側弾性部材および下側弾性部材は金属製であり、上側弾性部材とその上下側に配置されている部材との当接部、および、下側弾性部材とその上下側に配置されている前記部材との当接部のうち少なくとも上側弾性部材の当接部が固定され、上側弾性部材は、初期状態において上下方向の引張荷重を受けるように設定されていることを特徴としている。
本発明の締結機構では、上側弾性部材とその上下側に配置されている部材との当接部、および、下側弾性部材とその上下側に配置されている前記部材との当接部のうち少なくとも上側弾性部材の当接部が固定されているので、初期状態において上下方向の引張荷重を受けるように上側弾性部材を設定することができる。したがって、上側弾性部材は、第1部材の自重を受けることが可能になるので、上側弾性部材を適宜設計することにより、上側弾性部材および下側弾性部材はともに、その間に配置されている第1部材の自重を半分受けることができる。また、この場合、固定治具の軸力をゼロに設定することができるので、上側弾性部材および下側弾性部材は、初期状態において同一の荷重を受けることができる。よって、上側弾性部材および下側弾性部材を大型にすることなく、それら弾性部材が示す荷重特性を一致させることができるので、使用範囲の制限が生じることを防止することができる。
相手部材との当接部を固定することができる弾性部材としては、たとえば、次のようなばねを用いることができる。すなわち、弾性部材は、孔部を有する本体部と、本体部の内周部および外周部のうちの少なくとも一方の周部に設けられた筒状部と、本体部と筒状部との境界部に形成された角部とを有するばねを用いることができる。この場合、ばねの本体部は、そのばねの上下側に位置する相手部材からの押圧力の方向に交差する方向に延在し、ばねの筒状部は、本体部の周部からばねの上下側に位置する相手部材のいずれかに向けて突出している。
この場合、角部は、上記のような位置関係にある本体部と筒状部の境界部に形成された部位であるから、そのような角部は、荷重印加時にその角度を変化させながら、本体部の延在方向における筒状部が設けられた周部の外部側に移動することができる。なお、ここでいう外部側とは、筒状部が設けられた周部が内周部の場合、内周部の内側のことであり、筒状部が設けられた周部が外周部の場合、外周部の外側のことである。
以上のように荷重印加時に角部は弾性変形することができるので、筒状部における角部と相手部材との間の距離を適宜設定することにより、荷重印加時に筒状部の相手部材近傍の部位の変形を防止することができる。これにより、筒状部の相手部材に対する摺動を防止することができるので、筒状部と相手部材との間に摩擦が発生しなく、その結果、ばねの荷重特性にヒステリシスが発生しない。したがって、相手部材に摺動しないばねの所定の使用範囲での動的ばね定数は、使用範囲の中心での荷重曲線への接線の傾き(すなわち、静的ばね定数である)となるから、使用範囲の振幅を小さくしても、接線の傾きが変化しない。
よって、動的ばね定数は大きくならないから、系の固有振動数を小さくすることができ、高周波振動の振動伝達率を低減することができる。また、相手部材に摺動しないばねでは、動的ばね定数は相手部材の動摩擦係数に依存しないので、ばねの設置時に動的ばね定数を相手部材に応じて調べることが不要となり、その結果、手間がかからない。
本発明の締結機構は種々の構成を用いることができる。たとえば、第1部材、第2部材、および、締結機構を備えた系の固有振動数をf、第1部材および第2部材のいずれかの振動の振動数をfとすると、数式1を満足することが好適である。この態様では、高周波振動の振動伝達率を効果的に低減することができる。
Figure 0005112226
以上のような本発明の締結機構は、防振装置に適用することができる。
本発明の締結機構あるいはそれを用いた防振装置によれば、使用範囲の制限が生じることを防止することができるのはもちろんのこと、大型にすることなく、同じ荷重特性の弾性部材を用いることができるとともに、高周波振動の伝達を抑制することができる等の効果を得ることができる。
(1)実施形態の構成
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係る防振装置用の締結機構100の設置状態を表す概略側断面図である。締結機構100は、ブラケット101(第1部材)と車体102(第2部材)との間で生じる振動の伝達をばね1,2(下側弾性部材、上側弾性部材)により抑制している。ブラケット101は、ボルト104(固定治具)により車体102に固定されている。ブラケット101には、エンジンやプロペラシャフト等の振動源103が載置されている。締結機構100は、ばね1,2を備え、下側ばね1は、ブラケット101と車体102との間に配置され、上側ばね2は、ボルト104の大径部104Aとブラケット101との間に配置されている。
ボルト104の大径部104Aの下面は、上側ばね2の上端部に配置され、ボルト104の小径部104Bは、上側ばね2の孔20A、ブラケット101の孔101A、および、下側ばね1の孔10Aを挿通されている。ブラケット101と上側ばね2との当接部2Aは固定され、ボルト104の大径部104Aの下面と上側ばね2との当接部2Bは固定されている。当接部2A,2Bの固定は、機械的な固定手段や溶接等により行われる。
ボルト104の小径部104Bには、雄ネジが形成され、その下端部は車体102における雌ネジが形成された孔102Aと螺合している。この場合、ボルト104の小径部104Bの径は、上側のばね2の孔20Aの径、ブラケット101の孔101Aの径、および、下側ばね1の孔10Aの径よりも小さく、それらの孔に当接していない。
図2は、下側ばね1の構成を表し、(A)は下側ばね1の斜視図、(B)は、ブラケット101と車体102の間に配置された下側ばね1の右側部分の側断面図である。図3は、上側ばね2の構成を表し、(A)は上側ばね2の斜視図、(B)は、ボルト104の大径部104Aとブラケット101との間に配置されている下側ばね1の右側部分の側断面図である。
下側ばね1は、図2に示すようにたとえば、ばね鋼や強化材プラスチックからなる。下側ばね1は、たとえば中心部に孔部10Aが形成された本体部10を備えている。本体部10は、たとえばブラケット101および車体102からの押圧力の方向に対して交差する方向に延在する円錐部である。その円錐部は、たとえば内周部から外周部へ向かうに従って下方に傾斜して皿ばねとしての機能を有する。
孔部10Aは、たとえば円形状をなしている。本体部10の内周部には、車体102に向けて突出する第1円筒部11(筒状部)が設けられている。第1円筒部11の上端部は、車体102に当接する当接部である。本体部10の外周部には、ブラケット101に向けて突出する第2円筒部12(筒状部)が設けられている。第2円筒部12の下端部は、ブラケット101に当接する当接部である。
本体部10と第1円筒部11との境界部には第1角部13が形成され、本体部10と第2円筒部12との境界部には第2角部14が形成されている。第1角部13および第2角部14は、ブラケット101および車体102からの押圧力に応じて、その角度を変化させるように弾性変形可能である。第1角部13および第2角部14が円弧状をなす場合、その曲率半径は、たとえば本体部10および円筒部11,12の板厚と等しくする。
上側ばね2は、下側ばね1の孔部10A、第1円筒部11、第2円筒部12、第1角部13、および、第2角部14に対応する孔部20A、第1円筒部21、第2円筒部22、第1角部23、および、第2角部24を有している。上側ばね2は、たとえば図3に示すように、円錐部である本体部20が内周部から外周部への方向に向かうに従って上方に傾斜している点において、下側ばね1と相違している。上側ばね2では、初期状態(取付状態)において、本体部20が上記のような形状をなすことにより、上側ばね2は、上下方向の引張荷重を受けるように設定されている。
ばね1,2の第1角部および第2角部は、種々の手法により形成することができる。たとえば第1角部および第2角部は、本体部と第1円筒部の境界部および本体部と第2円筒部の境界部を折り曲げて形成することができる。また、たとえば、本体部と第1円筒部の溶接および本体部と第2円筒部の溶接により形成することができる。
ばね1,2の動的ばね定数の設定について、おもに図4,5を参照して説明する。なお、ばね1,2は、動的ばね定数の設定が同様であるから、以下の説明では、ばね1を用いている。図4は、図1のばね1の左側部分の動作状態を表し、(A)は、ばね1の動作前(点線)と動作時(実線)の側断面図であり、(B)は、ばね1の動作時の第1角部13および第2角部14の拡大側断面図である。図5は、ばねの荷重特性を表し、(A)は本発明の締結機構に用いられるばね(以下、本発明例のばね)の荷重曲線、(B)は従来の締結機構に用いられる皿ばね(以下、従来例の皿ばね)の荷重曲線である。
図4(A)の点線で示すように、ブラケット101と車体102の間に配置されたばね1に対して、ブラケット101から下側方向の荷重を加える。すると、図4(B)の実線で示すように、ばね1は撓んでブラケット101が下方に移動する。図中の符号dは、ばね1の撓みの大きさを示している。
ここで、本体部10は、図4(A)に示すように、ブラケット101からの押圧力の方向に交差する方向に延在し、ばね1の上側において、第2円筒部12は、本体部10の外周部からブラケット101に向けて突出してそこに当接している。そのような本体部10と第2円筒部12の境界部に形成した第2角部14は、荷重印加時に車体102からの押圧力に応じて角度αが変化するように弾性変形することができる。この場合、第2角部14は、上記のような位置関係にある本体部10と第2円筒部12の境界部に形成された部位であるから、そのような第2角部14は、荷重印加時に角度αを変化させながら、本体部10の外周部の外側(図の左側)に移動することができる。
このように荷重印加時に第2角部14は弾性変形することができるので、第2円筒部12が荷重印加時にブラケット101側の不変形部分(図4(B)中の点Sより上側)を有するように第2円筒部12の長さを適宜設定することにより、第2円筒部12のブラケット101側の部分変形を防止することができる。
一方、ばね1の下側において、第1円筒部11は、本体部10の内周部からブラケット101に向けて突出してそこに当接している。この場合、第2角部14と同様な機能を有する第1角部13は、荷重印加による弾性変形時に、ブラケット101からの押圧力に応じて、角度βを変化させながら、本体部10の内周部の内側(図の右側)に移動することができる。
このように荷重印加時に第1角部13は弾性変形することができるので、第1円筒部11が荷重印加時に車体102側の不変形部分(図4(B)中の点Tより下側)を有するように第1円筒部11の長さを適宜設定することにより、第1円筒部11の車体102側の部分変形を防止することができる。
以上のことから、第1円筒部11および第2円筒部12の摺動を防止することができるので、第1円筒部11と車体102との間および第2円筒部12とブラケット101との間に摩擦が発生しない。
図5(B)に示すように、相手部材と摺動する従来例の皿ばねでは、荷重曲線に摩擦によるヒステリシスが発生するため、従来例の皿ばねの使用範囲Aでの実質的な動的ばね定数は、図5(B)の点Uと点Vを結ぶ対角線nの傾きとなる。この場合、使用範囲Aの振幅を小さくしたとき、対角線nの傾きが大きくなるため、動的ばね定数が大きくなってしまう。
これに対して、上記のように相手部材と摺動しない本発明例のばねでは、図5(A)に示すように、荷重曲線に摩擦によるヒステリシスが発生しない。これにより、相手部材と摺動しない本発明例のばね1の使用範囲Aでの実質的な動的ばね定数は、使用範囲の中心である点Rでの荷重曲線への接線mの傾き(すなわち、静的ばね定数)となるから、使用範囲Aの振幅を小さくしたときも、接線mの傾きが変化しないため、動的ばね定数は大きくならない。
(2)実施形態の動作
締結機構100の動作について、おもに図6〜8を参照して説明する。図6は、本発明の締結機構で用いるばねとその比較例のばねの荷重特性を表している。
締結機構100では、以上のようにばね1,2の第1円筒部および第2円筒部の摺動を防止することができるので、相手部材と摺動するため相手部材への固定が不可能となっている皿ばねと異なり、ばね1,2とその上下側に位置している相手部材との当接部を固定することができる。
ここで仮に、ばね1,2をともに、初期状態において皿ばねと同様に圧縮荷重を受けるように設定すると、下側ばね1への荷重が、ブラケット101および振動源103の重力Mg(Mは車体の質量、gは重力定数)と固定治具104の軸力Fとの和になり、上側ばね2への荷重が、固定治具104の軸力Fになる。このようにばね1,2への荷重が、ブラケット101および振動源103の自重分だけ相違するから、ばね1,2をともにばね定数が小さな領域で使用するためには、ばね1,2を異なる荷重特性に設定しなければならない。具体的には、図6(B)に示すように、下側ばね1を曲線Jに示される荷重特性に設定し、上側ばね2を曲線Iに示される荷重特性に設定しなければならない。
しかしながら、本実施形態では、ブラケット101と上側ばね2との当接部2Aを固定し、ボルト104の大径部104Aの下面と上側ばね2との当接部2Bを固定しているので、初期状態において上下方向の引張荷重を受けるように上側弾性部材2を設定することができる。したがって、ブラケット101および振動源103の自重を受けることが可能になるので、上側ばね2を適宜設計することにより、ばね1,2はともに、その間に配置されているブラケット101および振動源103の自重の半分(=Mg/2)を受けることができる。また、この場合、固定治具104の軸力Fをゼロに設定することができるので、ばね1,2は、初期状態において同一の荷重(=Mg/2)を受けることができる。よって、ばね1,2が示す荷重特性を図6(A)に示す曲線Hのように一致させることができるので、ばね1,2を大型にすることなく、図5(A)に示す荷重曲線で使用範囲Aの制限が生じることを防止することができる。
特に、ばね1,2は、以上のように使用範囲Aを小さくしたときも、動的ばね定数は大きくならないから、系の固有振動数を小さくすることができ、図7に示すように、高周波振動の振動伝達率を低減することができる。その結果、振動源103によるブラケット101から車体102への振動の伝達は、下側ばね1により防止することができる。また、ボルト104の大径部104Aとブラケット101の間に、上側ばね2を配置しているので、ボルト104を通じたブラケット101から車体102への振動の伝達を防止することができる。
ここで、ブラケット101、車体102、および、締結機構100を備えた系の固有振動数f、着目する振動の振動数をfとした場合、その系の固有振動数fを図8に示す振動数fに一致させると、振動の振動数をfは、系の振動特性(図の右側破線の曲線)における振動入力よりも出力の大きな領域のなかにあるので、その振動が増幅されてしまう虞がある。そこで、本実施形態では、その系の固有振動数fを図8に示す振動数fに一致させている。これにより、着目する振動の振動数をfは、系の振動特性(図の左側実線の曲線)における振動入力よりも出力の小さな領域のなかにあるので、その振動が減衰される。したがって、系の固有振動数fと振動の振動数fとが数1を満足すると、振動数をfは、系の振動特性において振動の出力が入力よりも小さな領域に入るので、振動の伝達を効果的に防止することができる。このように数1を満足することが好適である。
また、相手部材に摺動しないばね1,2では、動的ばね定数は相手部材の動摩擦係数に依存しないので、ばね1,2の設置時に動的ばね定数を相手部材に応じて調べることが不要となり、その結果、手間がかからない。また、特に、ボルト104の小径部104Bの端部の車体102への締結具合を変化させることにより、必要に応じて動的ばね定数を調整することができる。
(3)変形例
以上のように上記実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。なお、以下の変形例では、上記実施形態と同様な構成要素には同符号を付し、その説明は省略している。
本発明の締結機構に用いられるばねは、種々の形状を用いることができる。本発明の防振装置のばねの本体部および筒状部には、軽量化のためにスリットを形成することができる。本発明の本体部は、たとえばS字状や、階段状、平坦状をなすことができる。筒状部は、筒状であればよく、その側断面形状は、曲線状でもよい。 ボルト104は、種々の形状を用いることができる。たとえば、小径部104Bの孔102Aへの螺合が過剰に行われたり不十分に行われたりすることを防止するために小径部104Bにストッパを設ける等してもよい。
上記実施形態では、固定治具としてボルト104を用いたが、ボルト104に限定されるものではなく、一端部によりブラケット101を車体102に向けて押圧するとともに他端部を車体102に固定することができるものであればよい。また、ばね1,2では、第1円筒部および第2円筒部を本体部の内周部および外周部に形成したが、第1円筒部11および第2円筒部12のいずれか一方のみに形成してもよい。また、第1角部および第2角部の形状は、図示の形状に限定されるものではなく、曲面形状等の種々の形状に変更可能である。また上記実施形態では、車体102と下側ばね1との当接部およびブラケット101と下側ばね1との当接部の固定を行わなかったが、必要に応じて、それらの固定を行い、下側ばね1でも引張荷重を受けるように設定してもよい。
さらに上記実施形態では、上側ばね2の上側にボルト104の大径部104Aを配置するとともに、下側ばね1の下側に車体102を配置したが、これに限定されるものではなく、上側ばね2の上側に車体102を配置するとともに、下側ばね1の下側にボルト104の大径部104Aを配置してもよい。また、本発明の弾性部材としてばね1,2に限定されるものではなく、相手部材との固定が可能であればよく、たとえばコイルばねを用いることができる。
本発明の締結機構が適用される防振装置は、防振のための種々の補助部材を用いることができる。たとえば、ブラケット101と車体102との間におけるばね1の周囲に、エストラマ弾性体等のダンパ材を並列に配置することができる。ばね1では、相手部材との摺動を防止することにより、振動の減衰を行うというよりも振動の伝達を防止しており、防振の機能的側面が強い。したがって、上記態様では、制振機能を有するダンパ材を併用することにより、防振機能に加えて、制振機能を有することができ、その結果、早期に制振を行うことができる。
さらに、上記実施形態では、ブラケット101(第1部材)が振動する例について説明したが、車体102(第2部材)を振動させた場合も、上記実施形態と同様な手法により同様な効果が得られるのは言うまでもない。本発明の締結機構を防振装置に適用したが、これに限定されるものではなく、種々の装置に適用することができる。以上のような各種変形例は適宜組み合わせることができるのは言うまでもない。
本発明の一実施形態に係る防振装置用の締結機構の設置状態を表す概略側断面図である。 本発明の一実施形態に係る下側ばねの構成を表し、(A)は下側ばねの斜視図、(B)は、部材間に配置された下側ばねの右側部分の側断面図である。 本発明の一実施形態に係る上側ばねの構成を表し、(A)は上側ばねの斜視図、(B)は、部材間に配置された上側ばねの右側部分の側断面図である。 図1の下側ばねの左側部分の動作状態を表し、(A)は、ばねの動作前(点線)と動作時(実線)の側断面図であり、(B)は、ばねの動作時の第1角部および第2角部の拡大側断面図である。 ばねの荷重特性を表し、(A)は本発明の締結機構に用いられるばねの荷重曲線、(B)は従来の締結機構に用いられる皿ばねの荷重曲線である。 (A)は本発明の締結機構で用いるばねの荷重曲線、(B)は、その比較例のばねの荷重曲線である。 本発明の締結機構のばねと従来の締結機構の皿ばねの高周波振動の振動伝達率を表すグラフである。 系の固有振動数の設定を説明するための振動特性のグラフである。 皿ばねの荷重特性を表すグラフである。 従来の防振装置用の締結機構の設置状態を表す概略側断面図である。 皿ばねの荷重特性を表し、(A)〜(C)は従来の防振装置用の締結機構に配置される上側皿ばねおよび下側皿ばねの荷重特性の各設定手法について説明するためのグラフである。 ヒステリシスが生じる実際の皿ばねの荷重特性を表すグラフであり、(A)は使用範囲の振幅が所定の大きさの場合、(B)は使用範囲の振幅が(A)の場合よりも小さい場合のグラフである。
符号の説明
1…下側ばね(下側弾性部材)、2…上側ばね(上側弾性部材)、2A,2B…当接部、10,20…本体部、10A,20A…孔部、11,21…第1円筒部(筒状部)、12,22…第2円筒部(筒状部)、13,23…第1角部(角部)、14,24…第2角部(角部)、100…締結機構、101…ブラケット(第1部材)、102…車体(第2部材)、103…振動源、104…ボルト(固定治具)、α,β…角度

Claims (5)

  1. 第1部材と第2部材とを固定する固定治具と、前記第1部材の上側および下側に配置される上側弾性部材および下側弾性部材とを備え、
    前記上側弾性部材の上側には、前記第2部材および前記固定治具の一端部のうちの一方が配置されるとともに、前記下側弾性部材の下側には、前記第2部材および前記固定治具の一端部のうちの他方が配置され、
    前記固定治具の一端部によって前記上側弾性部材および前記下側弾性部材による前記第1部材の被狭持状態を維持するとともに、前記固定治具の他端部を前記第2部材に固定する締結機構において、
    前記上側弾性部材および前記下側弾性部材は金属製であり、
    前記上側弾性部材とその上下側に配置されている前記部材との当接部、および、前記下側弾性部材とその上下側に配置されている前記部材との当接部のうち少なくとも前記上側弾性部材の前記当接部が固定され
    前記上側弾性部材は、初期状態において上下方向の引張荷重を受けるように設定されていることを特徴とする締結機構。
  2. 前記上側弾性部材および下側弾性部材が示す荷重特性が一致していることを特徴とする請求項1に記載の締結機構。
  3. 前記上側弾性部材および下側弾性部材は、孔部を有する本体部と、前記本体部の内周部および外周部のうちの少なくとも一方の周部に設けられた筒状部と、前記本体部と前記筒状部との境界部に形成された角部とを有するばねであり、
    前記ばねの本体部は、そのばねの上下側に位置する前記部材からの押圧力の方向に交差する方向に延在し、
    前記ばねの筒状部は、前記本体部の前記周部から前記ばねの上下側に位置する前記部材のいずれかに向けて突出し、
    前記ばねの角部は、その角度が前記押圧力に応じて変化するように弾性変形可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の締結機構。
  4. 前記第1部材、前記第2部材、および、前記締結機構を備えた系の固有振動数をf、前記第1部材および前記第2部材のいずれかの振動の振動数をfとすると、数式1を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の締結機構。
    Figure 0005112226
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の締結機構を備えていることを特徴とする防振装置。
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