JP5973272B2 - ろ過システムの運転方法およびろ過システム - Google Patents

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Description

本発明は、ろ過システムの運転方法およびろ過システムに関し、特には、浮上ろ材よりなる浮上ろ材層を有し、下水の処理に好適に用いられるろ過システムの運転方法およびろ過システムに関するものである。
従来、下水等の原水をろ過してろ過水を得るろ過システムとして、発泡高分子製の多数の浮上ろ材よりなる浮上ろ材層と、浮上ろ材層の上側に配置されて浮上ろ材の流出を防止するスクリーンと、浮上ろ材層の下側に配置された原水流入口および逆洗排水排出口と、スクリーンの上側に位置するろ過水貯留部とを備える、上向流式のろ過システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、近年では、地面等を掘削して形成した縦穴内に上述した浮上ろ材層、スクリーン、原水流入口、逆洗排水排出口およびろ過水貯留部を配置してろ過システムを形成することにより、合流式下水道の越流水等をオンサイト(その場)で処理可能とすることなども提案されている(例えば、特許文献2参照)。
そして、浮上ろ材を用いた上記従来のろ過システムでは、原水流入口から流入した原水を浮上ろ材層に上向流で通水することにより、夾雑物(例えば、ごみ、異物など)や浮遊性懸濁物質が除去されたろ過水を得ている。また、上記従来のろ過システムでは、ろ過の継続に伴い浮上ろ材層に夾雑物や浮遊性懸濁物質が補足されてろ過抵抗が増加すると、ろ過水貯留部に貯留したろ過水を自然流下させることにより、下向流で浮上ろ材層を逆流洗浄(以下「逆洗」と称することがある。)している。
ここで、上記従来のろ過システムでは、図5(a)に逆洗中のろ過システムのろ過槽1内の状態を示すように、浮上ろ材層2を構成する浮上ろ材3を下向流により下方に展開させて浮上ろ材層2を逆洗している。そのため、図5(b)に逆洗終了直後のろ過システムのろ過槽1内の状態を示すように、逆洗終了直後の浮上ろ材層2では、浮上ろ材が均一に整列せずに偏った状態で集合し、その結果、ろ過槽1内で浮上ろ材層2の厚みに分布が生じてしまうことがある。そして、厚みが不均一な浮上ろ材層2で原水をろ過すると、特に浮上ろ材層2の厚みが薄い部分において得られるろ過水の性状が悪化し、ろ過システムのろ過性能が低下する可能性がある。
なお、図5中、符号4は原水流入口を示し、符号5は逆洗排水排出口を示し、符号6はスクリーンを示し、符号7はろ過水貯留部を示し、符号8は後述する空気供給用ノズルを示し、符号9は開閉自在な弁を示す。
そこで、従来のろ過システムでは、浮上ろ材層の下側に空気供給用ノズルを配置し、浮上ろ材層の逆洗終了後であってろ過を再開する前に空気供給用ノズルから空気を供給して、浮上ろ材を整列させている。具体的には、上記従来のろ過システムでは、逆洗終了後、ろ過を再開する前に空気供給用ノズルから浮上ろ材層に対して空気を噴出し、空気の噴出により発生する水流により浮上ろ材を流動させて整列させることにより、浮上ろ材層の厚みを均一化し、浮上ろ材層の不均一な厚みに起因したろ過システムのろ過性能の低下を抑制している。
特許第3853738号公報 特開2010−221197号公報
ここで、浮上ろ材層の逆洗が終了した後のろ過槽内に存在する水は、逆洗に使用した水に最初から含まれていた有機物や、逆洗時に浮上ろ材層から排出された有機物などの有機物を含んでいる。また、逆洗終了後の浮上ろ材層にも、逆洗時に除去しきれなかった若干の有機物(夾雑物や浮遊性懸濁物質)が残存している。
そのため、浮上ろ材層等を配置したろ過槽に換気用の開口部が設けられていない場合や、ろ過槽に配設された換気用の開口部の数が少ない場合や、地面を掘削して形成した縦穴内に浮上ろ材層等を配置してろ過システムを構成した場合等には、逆洗終了後、ろ過を再開するまでの間にろ過槽内の水に含まれる有機物が嫌気性微生物により分解され(嫌気的発酵が起こり)、硫化水素(HS)等が発生することがある。なお、硫化水素(HS)等は、逆洗終了後、ろ過を再開するまでの時間が長い場合(例えば、逆洗終了後、ろ過システムの運転を直ぐには再開せずにろ過システムを待機状態にする場合など)に特に発生し易い。
ここで、有機物の分解により発生する硫化水素等は、微量であるため、通常はろ過槽内の水に溶解した状態で存在している。
そのため、上記従来のろ過システムでは、逆洗終了後、ろ過を再開する前に空気供給用ノズルから浮上ろ材層に対して空気を噴きつけて浮上ろ材を整列させると、水中に溶存していた硫化水素などがろ過槽内に供給された空気中に放出され、気体状態でろ過槽外へと流出する可能性がある。そして、硫化水素等が気体状態でろ過槽外へと流出すると、悪臭などの問題が発生する虞がある。また、気体状態の硫化水素等によりろ過槽の内外で腐食が起こる虞もある。
そこで、この発明は、浮上ろ材層の逆洗終了後に浮上ろ材層に対して空気を噴きつけて浮上ろ材を整列させる場合であっても、硫化水素等が気体状態でろ過槽外へと流出したり、気体状態の硫化水素等により腐食が発生したりするのを抑制することができるろ過システムの運転方法およびろ過システムを提供することを目的とする。
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のろ過システムの運転方法は、浮上ろ材からなる浮上ろ材層と、前記浮上ろ材層の上側に配置されて前記浮上ろ材の流出を防止するスクリーンと、前記浮上ろ材層より下側に設置された原水流入口および逆洗排水排出口と、前記スクリーンの上側に設けられたろ過水貯留部とを備えるろ過槽を有するろ過システムの運転方法であって、前記原水流入口から原水を流入させ、流入させた原水を前記浮上ろ材層に上向流で通水することにより原水をろ過するろ過工程と、前記ろ過工程の後、前記ろ過槽内の水を前記逆洗排水排出口から排出し、前記浮上ろ材層を下向流で逆流洗浄する逆洗工程と、前記逆洗工程の後、前記ろ過槽内に置換水を供給して前記ろ過槽内の水の少なくとも一部を置換する水置換工程と、前記水置換工程の、前記浮上ろ材層に対して気体を噴きつけて浮上ろ材層を構成する浮上ろ材を整列させる浮上ろ材整列工程とを含むことを特徴とする。このように、浮上ろ材整列工程の前に水置換工程を実施すれば、逆洗工程の終了後にろ過槽内の水に含まれる有機物が嫌気性微生物により分解され、硫化水素等が発生している場合でも、硫化水素等を含む水を置換水で置換してから浮上ろ材整列工程を実施することができる。従って、浮上ろ材層の逆洗終了後に浮上ろ材層に対して空気を噴きつけて浮上ろ材を整列させる場合であっても、硫化水素等が気体状態でろ過槽外へと流出したり、気体状態の硫化水素等により腐食が発生したりするのを抑制することができる。
ここで、本発明のろ過システムの運転方法は、前記水置換工程において、前記ろ過槽内の水の酸化還元電位が所定値以上になるまで、または、前記ろ過槽内の水の溶存酸素量が所定値以上になるまで、前記置換水を前記ろ過槽内に供給することが好ましい。このように、ろ過槽内の水の酸化還元電位や溶存酸素量が所定値以上になるまで置換水を供給すれば、嫌気度が高く、酸化還元電位や溶存酸素量が低い水(有機物が嫌気性微生物により分解された水)を水置換工程において十分に置換してから浮上ろ材整列工程を実施することができる。従って、浮上ろ材整列工程において硫化水素等が気体状態でろ過槽外へと流出したり、気体状態の硫化水素等により腐食が発生したりするのを十分に抑制することができる。
更に、本発明のろ過システムの運転方法は、前記水置換工程において、前記ろ過槽内の水の酸化還元電位が前記置換水の酸化還元電位と等しくなるまで、または、前記ろ過槽内の水の溶存酸素量が前記置換水の溶存酸素量と等しくなるまで、前記置換水を前記ろ過槽内に供給することが好ましい。このように、ろ過槽内の水の酸化還元電位や溶存酸素量が置換水の酸化還元電位や溶存酸素量と等しくなるまで置換水を供給すれば、嫌気度が高く、酸化還元電位や溶存酸素量が低い水(有機物が嫌気性微生物により分解された水)を水置換工程において十分に置換してから浮上ろ材整列工程を実施することができる。従って、浮上ろ材整列工程において硫化水素等が気体状態でろ過槽外へと流出したり、気体状態の硫化水素等により腐食が発生したりするのを十分に抑制することができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のろ過システムは、浮上ろ材からなる浮上ろ材層と、前記浮上ろ材層の上側に配置されて前記浮上ろ材の流出を防止するスクリーンと、前記浮上ろ材層より下側に設置された原水流入口および逆洗排水排出口と、前記スクリーンの上側に設けられたろ過水貯留部とを備えるろ過槽と、前記ろ過槽内に置換水を供給する置換水供給機構と、前記浮上ろ材層に対して気体を噴出し、前記浮上ろ材を整列させる浮上ろ材整列機構と、前記ろ過槽内の水を前記逆洗排水排出口から排出して前記浮上ろ材層を逆流洗浄した後、前記置換水供給機構および前記浮上ろ材整列機構を順次起動して、前記ろ過槽内の水の少なくとも一部を前記置換水で置換した後に前記浮上ろ材を整列させる制御装置とを有することを特徴とする。このように、制御装置を設け、浮上ろ材層の逆洗後に置換水供給機構と浮上ろ材整列機構とを順次起動させれば、逆洗終了後のろ過槽内の水に含まれる有機物が嫌気性微生物により分解され、硫化水素等が発生している場合でも、硫化水素等を含む水を置換水で置換してから浮上ろ材を整列させることができる。従って、浮上ろ材層の逆洗終了後に浮上ろ材層に対して空気を噴きつけて浮上ろ材を整列させる場合であっても、硫化水素等が気体状態でろ過槽外へと流出したり、気体状態の硫化水素等により腐食が発生したりするのを抑制することができる。
ここで、本発明のろ過システムは、前記ろ過槽内の水の酸化還元電位または溶存酸素量を測定するセンサを更に備え、前記制御装置が、前記センサの測定値が所定値以上になるまで前記置換水供給機構を運転させ、前記センサの測定値が所定値以上になった後に前記浮上ろ材整列機構を起動することが好ましい。ろ過槽内の水の酸化還元電位または溶存酸素量を測定するセンサを設け、制御装置が、ろ過槽内の水の酸化還元電位や溶存酸素量が所定値以上になるまで置換水供給機構を運転させれば、嫌気度が高く、酸化還元電位や溶存酸素量が低い水(有機物が嫌気性微生物により分解された水)を十分に置換してから浮上ろ材整列機構を起動することができる。従って、浮上ろ材整列機構を起動させた際に硫化水素等が気体状態でろ過槽外へと流出したり、気体状態の硫化水素等により腐食が発生したりするのを十分に抑制することができる。
更に、本発明のろ過システムは、前記ろ過槽内の水の酸化還元電位または溶存酸素量を測定するセンサと、前記置換水の酸化還元電位または溶存酸素量を測定する置換水センサとを更に備え、前記制御装置が、前記センサの測定値と、前記置換水センサの測定値とが等しくなるまで前記置換水供給機構を運転させ、前記センサの測定値と、前記置換水センサの測定値とが等しくなった後に前記浮上ろ材整列機構を起動することが好ましい。ろ過槽内の水の酸化還元電位または溶存酸素量を測定するセンサと、置換水の酸化還元電位または溶存酸素量を測定する置換水センサとを設け、制御装置が、センサの測定値と、置換水センサの測定値とが等しくなるまで置換水供給機構を運転させれば、嫌気度が高く、酸化還元電位や溶存酸素量が低い水(有機物が嫌気性微生物により分解された水)を十分に置換してから浮上ろ材整列機構を起動することができる。従って、浮上ろ材整列機構を起動させた際に硫化水素等が気体状態でろ過槽外へと流出したり、気体状態の硫化水素等により腐食が発生したりするのを十分に抑制することができる。
なお、本発明においては、センサと置換水センサとは、同一のパラメータを測定するものとする。即ち、センサが酸化還元電位を測定する場合には、置換水センサも酸化還元電位を測定し、センサが溶存酸素量を測定する場合には、置換水センサも溶存酸素量を測定するものとする。
本発明のろ過システムの運転方法およびろ過システムによれば、浮上ろ材層の逆洗終了後に浮上ろ材層に対して空気を噴きつけて浮上ろ材を整列させる場合であっても、硫化水素等が気体状態でろ過槽外へと流出したり、気体状態の硫化水素等により腐食が発生したりするのを抑制することができる。
本発明に従う代表的なろ過システムの設置位置の一例を示す説明図である。 本発明に従う代表的なろ過システムの概略構成を説明する説明図である。 図2に示すろ過システムの要部について逆洗工程、水置換工程および浮上ろ材整列工程を実施している状態を示す説明図であり、(a)は、逆洗工程を実施しているろ過システムの状態を示しており、(b)は、水置換工程を実施しているろ過システムの状態を示しており、(c)は、浮上ろ材整列工程を実施しているろ過システムの状態を示している。 本発明に従うろ過システムの変形例の概略構成を説明する説明図である。 従来のろ過システムのろ過槽内の状態を示す説明図であり、(a)は、浮上ろ材層を逆洗中のろ過槽内の状態を示しており、(b)は、浮上ろ材層の逆洗終了直後のろ過槽内の状態を示している。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において同一の符号を付したものは、同一の構成要素を示すものとする。
ここで、本発明のろ過システムは、特に限定されることなく、下水や、硫黄分および有機物を含む産業排水や、海水の処理等に用いることができる。具体的には、本発明のろ過システムは、図1にろ過システム100の設置位置の一例を示すように、雨水と汚水とを同一の管路で流す合流式下水道において、合流下水管111の近傍に配置して、計画遮集量nQを超えた、下水処理場にて処理しきれない越流水(nQ超過分)をその場(オンサイト)で処理する際に用いることができる。なお、「計画遮集量nQ」とは、下水処理場の処理能力に応じて設計される遮集管の計画遮集量であり、ここで、「n」は都市により異なる数値である。また、「Q」は晴天時時間最大汚水量である。
そして、図1に示す、本発明のろ過システム100を適用した合流式下水道では、合流下水管111に流入する雨水および汚水の量が計画遮集量を超えた場合に、越流水(原水)が合流下水管111に設けられた越流部(図示せず)を超えてろ過システム100へと流入し、処理される。ここで、越流部は、望ましくは既設の雨水吐き112の下流側に設けられる。但し、雨水吐き112の下流側への設置が困難な場合には、雨水吐き112や、雨水吐き112の上流側に設けても良い。そして、ろ過システム100でろ過されて水質が改善した越流水(ろ過水)は、河川114等に放流されることとなる。
ここで、図2に示すように、本発明の一例のろ過システム100は、地面Gの下に設置されており、浮上ろ材層12を有するろ過槽としての第1の縦穴10と、原水槽としての第2の縦穴20と、逆洗排水槽としての第3の縦穴30と、合流下水管111と第2の縦穴20とを接続する原水流路とを具えている。そして、ろ過システム100は、第1の縦穴10内に設置した浮上ろ材層12の逆洗終了後に浮上ろ材層12に空気を噴きつけて浮上ろ材層12を構成する浮上ろ材を整列させるに当たり、第1の縦穴10内に存在する水を置換水としての原水で置換してから浮上ろ材層12に空気を噴きつけることができるように構成したことを特徴とする。
なお、ろ過システム100の原水流路には、第2の縦穴20内への原水の流入を遮断する原水流入遮断機構としての流量調整弁115が設けられている。また、第1の縦穴10、第2の縦穴20および第3の縦穴30の地面Gへの開口部には、縦穴内への人や物の落下を防止する蓋(図示せず)が配置されている。
第1の縦穴10は、原水をろ過してろ過水を得るろ過槽として機能するものであり、第1の縦穴10としては、例えば、地面Gを掘削して形成した新設のマンホール等の構造物を利用することができる。そして、図2に示すように、第1の縦穴10内には、スクリーン11と、スクリーン11で支持された複数の浮上ろ材からなる浮上ろ材層12と、浮上ろ材層12の下側に設置された原水流入口13と、浮上ろ材層12の下側に設置された複数の逆洗排水排出口14と、スクリーン11の上側に設けられたろ過水貯留部15と、スクリーン11の上側に設けられたろ過水流出口16とが配置されている。
また、第1の縦穴10内の浮上ろ材層12の下側には、後に詳細に説明する浮上ろ材整列機構の一部を構成する空気噴出部51が配置されている。なお、空気噴出部51は、原水流入口13および逆洗排水排出口14よりも上側に位置している。
更に、第1の縦穴10のろ過水貯留部15の上部には、ろ過水の性状を測定する第1センサ81が配置されている。
ここで、浮上ろ材とは、原水よりも比重の小さい(即ち、原水中で浮く)ろ材である。そして、ろ過システム100では、浮上ろ材として、特許文献1や特許文献2に記載の発泡高分子製の粒子状の浮上ろ材などの既知の浮上ろ材を用いることができる。
また、浮上ろ材層12の上側に配置するスクリーン11としては、浮上ろ材の流出を防止し得るスクリーン、例えばパンチングメタル等を用いることができる。なお、浮上ろ材層12は、所定の高さまで水を入れた第1の縦穴10内に多数の浮上ろ材を投入した後、投入した浮上ろ材の上側にスクリーン11を設置することにより、第1の縦穴10内に設けることができる。
第1センサ81としては、第1の縦穴10内、より詳細にはろ過水貯留部15内に存在する水の嫌気度を把握することができる既知のセンサ、例えばDO(溶存酸素量)計や、ORP(酸化還元電位)計を用いることができる。そして、第1センサ81の測定値は、制御装置70へと送られている。
なお、第1センサ81は、第1の縦穴10内の水の嫌気度を把握することができれば、第1の縦穴10内の任意の位置に取り付けることができる。
ここで、浮上ろ材整列機構は、浮上ろ材層12に対して空気などの気体を噴出し、浮上ろ材層12を構成する浮上ろ材を整列させるためのものである。そして、このろ過システム100では、浮上ろ材整列機構は、空気噴出部51と、空気噴出部51に空気を供給する空気供給源としてのブロア(図示せず)と、ブロアと空気噴出部51とを連結する空気供給配管52と、空気供給配管52に設けられた空気供給配管弁53とで構成されている。
従って、ろ過システム100では、空気供給配管弁53を開き、ブロア(図示せず)を運転させることにより、空気供給配管52を介して第1の縦穴10内へと空気を送出し、浮上ろ材層12に空気を噴きつけることができる。なお、空気供給配管弁53の開閉は、制御装置70で制御することができる。
浮上ろ材整列機構の一部を構成する空気噴出部51は、浮上ろ材層12に対して空気を噴きつけることができる位置であれば、任意の位置に設置することができる。具体的には、空気噴出部51は、使用する浮上ろ材の材質や、ろ過条件や、逆洗条件などに応じて、逆洗終了後の浮上ろ材層12に対して空気を噴きつけ、浮上ろ材層12を構成する浮上ろ材を流動させることができる位置に設置することができる。より具体的には、空気噴出部51は、特に限定されることなく、線速度1000m/dayで原水を通水した後の浮上ろ材層12の下面から下方に例えば0〜120cmの場所であって、原水流入口13よりも上側に設置することができる。
なお、空気噴出部51は、ボルト等の既知の手段を用いて第1の縦穴10内に固定することができる。
また、空気噴出部51は、空気(気体)を噴出させることができれば、任意の形状とすることができる。そして、空気噴出部51としては、特に限定されることなく、複数の噴出ノズルを設けたパイプを格子状に組み合わせてなる格子状パイプ体を用いることができる。
なお、格子のサイズは、浮上ろ材よりも大きく、且つ、原水のろ過中に原水中の夾雑物により目詰まりが発生しないサイズとすることが好ましい。格子のサイズが浮上ろ材よりも小さい場合、浮上ろ材層12の逆洗時に浮上ろ材を下方に展開させることができないからである。また、第1の縦穴10の下部で目詰まりが発生すると、メンテナンスが困難だからである。
第2の縦穴20は、第1の縦穴10でろ過される原水を貯留する原水槽として機能するものであり、第2の縦穴20としては、第1の縦穴10と同様に、地面Gを掘削して形成した新設のマンホール等の構造物を利用することができる。そして、図2に示すように、第2の縦穴20の下部には、原水ポンプ21が配置されている。また、第2の縦穴20の上部は、流量調整弁115を有する原水流路を介して合流下水管111と連通している。更に、第2の縦穴20内には、第2の縦穴20内の水位を測定するための水位計(図示せず)が設置されている。なお、原水ポンプ21および水位計としては、既知のポンプおよび水位計を適宜選択して用いることができる。
また、第2の縦穴20の上部には、原水の性状を測定する第2センサ82が配置されている。
ここで、第2センサ82としては、第1センサ81と同種のセンサを用いることができる。即ち、第1センサ81としてORP(酸化還元電位)計を使用した場合には、第2センサ82としてORP(酸化還元電位)計を使用することができ、第1センサ81としてDO(溶存酸素量)計を使用した場合には、第2センサ82としてDO(溶存酸素量)計を使用することができる。そして、第2センサ82の測定値は、制御装置70へと送られている。
なお、第2センサ82は、第2の縦穴20内の原水の性状を測定することができれば、第2の縦穴20内の任意の位置に取り付けることができる。
そして、このろ過システム100では、原水ポンプ21の吸込口は、第2の縦穴20内に位置している。また、原水ポンプ21の吐出口は、原水配管41に接続されており、原水配管41は、原水ポンプ21の吐出口と、第1の縦穴10の原水流入口13とを接続している。なお、原水配管41は、原水配管弁42を有している。
従って、第2の縦穴20内に原水ポンプ21を配置したろ過システム100では、原水配管弁42を開き、原水ポンプ21を運転させることにより、原水配管41を介して第2の縦穴20内の原水を第1の縦穴10内へと送出することができる。なお、原水配管弁42の開閉は、制御装置70で制御することができる。
また、第3の縦穴30は、浮上ろ材層12の逆洗時に第1の縦穴10の逆洗排水排出口14から排出される逆洗排水を貯留する逆洗排水槽として機能するものであり、第3の縦穴30としては、第1の縦穴10および第2の縦穴20と同様に、地面Gを掘削して形成した新設のマンホール等の構造物を利用することができる。そして、図2に示すように、第3の縦穴30の下部には、排水ポンプ31が配置されている。また、第3の縦穴30内には、第3の縦穴30内の水位を測定するための水位計(図示せず)が設置されている。なお、排水ポンプ31および水位計としては、既知のポンプおよび水位計を適宜選択して用いることができる。
ここで、このろ過システム100では、排水ポンプ31の吸込口は、第3の縦穴30内に位置している。また、排水ポンプ31の吐出口は、排水配管を介して図1に示す遮集管113に接続されており、遮集管113は、下水処理場まで延在している。なお、排水配管は、原水(越流水)が合流下水管111から越流する越流部よりも下流側で合流下水管111に接続させてもよい。
また、ろ過システム100では、第1の縦穴10の下部に位置する複数の(図2では6つの)逆洗排水排出口14は、第1の縦穴10から逆洗排水を排出する集水配管61に接続されており、集水配管61は、第3の縦穴30の下部まで延在している。即ち、集水配管61は、逆洗排水排出口14と、第3の縦穴30とを接続している。なお、集水配管61は、集水配管弁62を有している。
従って、集水配管61を介して第1の縦穴10と第3の縦穴30とを連通させたろ過システム100では、第3の縦穴30内の水位が第1の縦穴10内の水位よりも低い場合、集水配管弁62を開くことにより、集水配管61を介して第1の縦穴10内の水を第3の縦穴30内へと送出することができる。そして、第3の縦穴内に送出された水(逆洗排水)は、排水ポンプ31を介して遮集管へと送出することができる。なお、集水配管弁62の開閉は、制御装置で制御することができる。
そして、このろ過システム100では、以下のようにして、合流下水管111から第2の縦穴20内に流入した越流水(原水)を第1の縦穴10の浮上ろ材層12でろ過する。また、このろ過システム100では、定期的に、或いは、ろ過抵抗が所定値以上に上昇すると、以下のようにして、第1の縦穴10内の浮上ろ材層12を逆洗する。そして、浮上ろ材層12の逆洗が終了した後は、原水のろ過を再開する前に、以下のようにして、第1の縦穴10内の水の少なくとも一部を置換水で置換し、その後、浮上ろ材層12に対して気体を噴きつけて浮上ろ材層12を構成する浮上ろ材を整列させる。
なお、浮上ろ材層12を逆洗した後は、任意に、ろ過を再開するまでろ過システム100を待機状態(各ポンプを運転せず、且つ、各弁を閉じた状態)としておいてもよい。因みに、逆洗終了後にろ過システム100を待機状態にする場合、置換水を用いた置換および浮上ろ材の整列は、ろ過を再開する直前に行うことが好ましい。ろ過を再開する直前に浮上ろ材を整列させれば、空気供給配管内に流入した水を排出してろ過することができるからである。また、浮上ろ材層の下面を洗浄することもできるからである。
<ろ過工程>
図2に示すように、ろ過システム100では、原水配管弁42を開き、空気供給配管弁53および集水配管弁62を閉じた状態で原水ポンプ21を運転させることにより、合流下水管111から原水流路を介して第2の縦穴20内へと流入した原水を第1の縦穴10の下部へと送水し、浮上ろ材層12に原水を上向流で通水して、ろ過水を得る。そして、得られたろ過水は、ろ過水貯留部15内を上向流で流れた後、ろ過水流出口16を介して河川等へ放流される。
なお、原水をろ過する場合、第1の縦穴10内を原水が上向流で流れれば、空気供給配管弁53および集水配管弁62を開いた状態としてもよいが、原水を効率的にろ過する観点からは、空気供給配管弁53および集水配管弁62を閉じた状態で原水をろ過することが好ましい。
ここで、原水のろ過時に、第2の縦穴20から原水配管41および原水流入口13を介して第1の縦穴10内へと送られる原水の流量が第2の縦穴20内に流入する原水の流量よりも大きい場合、即ち、原水ポンプ21の吐出量が原水の流入量よりも大きい場合には、第2の縦穴20内の水位LVが、例えば図2に実線で示す位置から二点鎖線で示す位置まで低下する。
そこで、ろ過システム100では、第2の縦穴20内の水位の低下により原水ポンプ21が空運転するのを防止するために、第2の縦穴20内の水位が所定の位置(例えば図2に二点鎖線で示す位置)まで低下した場合には、原水ポンプ21の運転を停止し、原水配管弁42を閉じて、原水のろ過を中止する。そして、第2の縦穴20内に再び原水が貯留され、第2の縦穴20内の水位が上昇すると、原水配管弁42を開き、原水ポンプ21の運転を再開して、原水のろ過を再開する。
<逆洗工程>
また、図3(a)に示すように、ろ過システム100では、定期的に、或いは、ろ過抵抗が所定値以上に上昇すると、原水配管弁42を閉じて原水ポンプ21を停止させ、少なくとも集水配管弁62を開いた状態で排水ポンプ31を運転させることにより、浮上ろ材層12を逆洗する。具体的には、集水配管61を介して第1の縦穴10内の水を第3の縦穴30の下部へと排出し、ろ過水貯留部15に貯留されたろ過水を浮上ろ材層12に下向流で通水して、浮上ろ材層12を構成する多数の浮上ろ材12Aを下方に展開させる。そして、浮上ろ材層12に補足されていた夾雑物や浮遊性懸濁物質を浮上ろ材層12から排出させ、浮上ろ材層12を逆洗する。また、第1の縦穴10内から第3の縦穴30内へと流入した水(浮上ろ材層12に補足されていた夾雑物や浮遊性懸濁物質を含む逆洗排水)を、排水ポンプ31を介して第3の縦穴30内から遮集管113へと送出する。そのため、第1の縦穴10内の水位は、例えば、図3(a)に二点鎖線で示す位置から実線で示す位置まで低下し、第3の縦穴30内の水位は、例えば、図3(a)に二点鎖線で示す位置から実線で示す位置まで上昇する。
なお、図3では、簡略化のため、一部の構成(例えば、各ポンプや各弁の動作を制御する制御装置70や、第1センサ81および第2センサ82)の図示を省略している。
ここで、ろ過システム100では、第3の縦穴30内の水位の低下により排水ポンプ31が空運転するのを防止するために、第3の縦穴30内の水位が所定の位置(例えば図3(a)に二点鎖線で示す位置)まで低下した場合には、第3の縦穴30内の水位が上昇するまで排水ポンプ31の運転を停止する。
また、ろ過システム100において、第1の縦穴10内の水を第3の縦穴30内へと高流速で自然流下させる場合、第3の縦穴30内の水位は、逆洗を開始する際の第1の縦穴10内の水位(通常は、ろ過水流出口16が設けられている位置)よりも下側にある必要がある。そこで、このろ過システム100では、第3の縦穴30内に設置した水位計で測定した第3の縦穴30内の水位が第1の縦穴10内の水位以下の場合にのみ浮上ろ材層12の逆洗を開始するように、制御装置70で、原水配管弁42、空気供給配管弁53および集水配管弁62の開閉を制御する。具体的には、第3の縦穴30内の水位が第1の縦穴10内の水位よりも下側に位置する場合にのみ、制御装置が、原水配管弁42および空気供給配管弁53を閉じ、集水配管弁62を開くことを許容する。
ここで、ろ過工程では浮上ろ材層12に原水が上向流で通水されているため、浮上ろ材層12を構成する浮上ろ材は、逆洗工程の開始時にはスクリーン11側に向かって圧密された状態にある。従って、浮上ろ材層12の逆洗開始時には、浮上ろ材は塊状のまま下方へ展開する。
そこで、特に限定されることなく、逆洗工程では、逆洗開始直後に、浮上ろ材12Aに対して空気噴出部51から空気を噴きつけることにより、塊状の浮上ろ材を分散させ、浮上ろ材層12の洗浄効率を向上させてもよい。具体的には、逆洗工程では、逆洗開始直後、所定の時間だけ、空気供給配管弁53を開き、ブロアを運転させることにより、空気噴出部51から上方に向けて空気を噴出させ、浮上ろ材を分散させてもよい。
なお、ろ過システム100では、水道水や、中水や、工水を第1の縦穴10の上部に供給する手段を設けて、水道水や、中水や、工水を用いて浮上ろ材層12の逆洗を行うようにしても良い。具体的には、ろ過システム100では、下記(1)〜(3)のようにして、ろ過水貯留部15に貯留したろ過水と、水道水とを使用して浮上ろ材層12を逆洗してもよい。
(1)まず、上述したようにして、ろ過水貯留部15に貯留したろ過水を浮上ろ材層12に下向流で通水し、浮上ろ材層12を逆洗した後、集水配管弁62を閉じる。
(2)次に、ろ過水貯留部15に水道水を供給し、ろ過水貯留部15内を水道水で満たす。
(3)最後に、集水配管弁62を開いた状態で排水ポンプ31を運転させることにより、ろ過水貯留部15に貯留された水道水を浮上ろ材層12に下向流で通水して、浮上ろ材層12を逆洗する。なお、浮上ろ材層12に通水させた水道水は、集水配管61を介して第3の縦穴30の下部へと排出した後、逆洗ポンプ31を用いて遮集管へと送出する。
<待機工程>
そして、ろ過システム100では、逆洗工程が終了すると、任意に、原水配管弁42、空気供給配管弁53および集水配管弁62を閉じ、原水ポンプ21、排水ポンプ31およびブロア(図示せず)の運転を停止した状態として、ろ過システム100の運転を停止する。
なお、この待機工程は、逆洗工程の終了後に、第1の縦穴10内への原水の流入が無い場合や、第1の縦穴10内への原水の流入量が少ない場合に実施する。
ここで、ろ過システム100では、逆洗工程において、浮上ろ材層12を構成する浮上ろ材12Aを下向流により下方に展開させて浮上ろ材層12を逆洗している。そのため、図3(b)に示すように、逆洗終了直後の浮上ろ材層12では、浮上ろ材が均一に整列せずに偏った状態で集合し、その結果、浮上ろ材層12の厚みに分布が生じてしまうことがある。そして、浮上ろ材層12の厚みが不均一な状態で原水のろ過を再開すると、特に浮上ろ材層12の厚みが薄い部分において得られるろ過水の性状が悪化し、ろ過システムのろ過性能が低下する可能性がある。
一方、第1の縦穴10は、地面Gを掘削して形成されており、また、第1の縦穴10の開口部には蓋が配置されているため、逆洗工程の終了後、第1の縦穴10内に滞留している水に含まれている有機物は、嫌気性微生物により分解される。そして、有機物の分解により発生した硫化水素等は、第1の縦穴10内に滞留している滞留水中に溶解する。そのため、ろ過システム100では、ろ過の再開前に、浮上ろ材を流動させて浮上ろ材層12の厚みを均一化させるために空気噴出部51から上方に向けて空気を噴出させると、滞留水に溶存していた硫化水素等が空気中に放出され、第1の縦穴10の外部へと流出する。
そこで、ろ過システム100では、後述する水置換工程および浮上ろ材整列工程を順次実施した後に、ろ過を再開する。
<水置換工程>
水置換工程では、図3(b)に示すように、原水配管弁42を開き、空気供給配管弁53および集水配管弁62を閉じた状態で原水ポンプ21を運転させることにより、置換水としての原水を第1の縦穴10の下部へと送水し、置換水としての原水を上向流で通水して、第1の縦穴10内の滞留水の少なくとも一部を原水で置換する。ここで、水置換工程では、原水を用いて滞留水を置換する際に原水が浮上ろ材層12を通過して得られたろ過水により、例えば、逆洗工程の終了時に二点鎖線の位置にあった水位が、実線で示す位置まで上昇する。そして、得られたろ過水は、ろ過水貯留部15内を上向流で流れた後、ろ過水流出口16を介して河川等へ放流される。
即ち、この水置換工程では、第2の縦穴20、原水ポンプ21、原水配管41および原水配管弁42が、第1の縦穴10内に置換水を供給する置換水供給機構として機能する。
なお、原水を用いて第1の縦穴10内の滞留水を置換する場合、第1の縦穴10内を原水が上向流で流れれば、集水配管弁62を開いた状態としてもよいが、滞留水を効率的に置換する観点からは、集水配管弁62を閉じた状態で原水を供給することが好ましい。
ここで、水置換工程では、浮上ろ材整列工程において浮上ろ材層12に空気を噴きつけた際に硫化水素等が放出されるのを確実に防止する観点から、硫化水素等が溶存している滞留水の全てを原水で置換することが好ましい。
そこで、このろ過システム100では、第1センサ81の測定値と、置換水センサとしての第2センサ82の測定値とが等しくなるまで第1の縦穴10内に原水を供給し、第1センサ81の測定値と第2センサ82の測定値とが等しくなると、制御装置が原水ポンプ21の運転を停止し、原水配管弁42を閉じる。即ち、ろ過システム100の水置換工程では、第1の縦穴10内の水の酸化還元電位が置換水としての原水の酸化還元電位と等しくなるまで、または、第1の縦穴10内の水の溶存酸素量が置換水としての原水の溶存酸素量と等しくなるまで、原水を第1の縦穴10内に供給し、滞留水の全てを原水で置換する。なお、制御装置は、原水ポンプ21の運転を停止し、原水配管弁42を閉じた後、空気供給配管弁53を開いてブロア(図示せず)を運転させることにより、浮上ろ材整列工程の実施を可能にする。
因みに、ろ過システム100の水置換工程では、第1センサ81および第2センサ82を使用することなく、第1の縦穴10の容量(=第1の縦穴10のうち、ろ過水流出口16を通る水平面よりも下側にある部分の体積)と等しい量の原水を第1の縦穴10内に供給した時点で自動的に原水の供給を停止するようにしてもよい。
また、一般に、酸化還元電位や溶存酸素量は水の嫌気度を示す指標になり、また、有機物が嫌気性微生物により分解された水は嫌気度が高く、酸化還元電位や溶存酸素量が低い。一方、有機物が嫌気性微生物により分解された水よりも嫌気度が低い原水は、酸化還元電位や溶存酸素量が高い。そのため、第1の縦穴10内の水の酸化還元電位や溶存酸素量の変化を測定すれば、第1の縦穴10内の水の置換度合いを把握することができる。
そこで、ろ過システム100の水置換工程では、第1センサ81で測定した第1の縦穴10内の水の酸化還元電位が所定値以上になるまで、または、第1の縦穴10内の水の溶存酸素量が所定値以上になるまで、原水を第1の縦穴10内に供給するようにしてもよい。即ち、ろ過システム100では、制御装置が、第1センサ81で測定した第1の縦穴10内の水の酸化還元電位または溶存酸素量が所定値以上となると、原水ポンプ21の運転を停止し、原水配管弁42を閉じて水置換工程を終了させるようにしてもよい。なお、所定値とは、溶存酸素量の場合には、例えば0mg/L超、好ましくは2.0mg/L以上とすることができる。
因みに、嫌気性微生物による硫化水素の発生は、溶存酸素量と特に関係が深い(溶存酸素の存在下では嫌気的発酵が起こらず、硫化水素は発生しない)ので、第1センサ81および第2センサ82としては、DO計を使用することが好ましい。DO計を使用すれば、置換の終了を確実に把握することができるからである。
<浮上ろ材整列工程>
水置換工程の後に実施する浮上ろ材整列工程では、図3(c)に示すように、制御装置が、水置換工程の終了直後に、空気供給配管弁53を開き、原水配管弁42および集水配管弁62を閉じた状態でブロア(図示せず)を運転させることにより、空気供給配管52および空気噴出部51を介して第1の縦穴10内に空気54を供給する。そして、偏って集合した浮上ろ材よりなる浮上ろ材層12に対して空気(気泡)54を噴きつけ、浮上ろ材層12を構成する浮上ろ材を整列させる。具体的には、空気の噴出により第1の縦穴10内に水流を発生させ、その水流により浮上ろ材を流動させることにより、浮上ろ材を整列させる。
なお、空気は、連続的に供給しても良いし、断続的(パルス的)に供給してもよい。また、空気を供給する時間は、浮上ろ材を整列させることができれば、任意の時間とすることができ、例えば、2〜10秒とすることができる。
また、浮上ろ材整列工程では、原水配管弁42を開き、原水ポンプ21を運転した状態のままで浮上ろ材層12に対して空気を噴きつけてもよい。即ち、浮上ろ材整列工程では、浮上ろ材層12に原水を通水しながら、浮上ろ材を整列させてもよい。
そして、このろ過システム100では、浮上ろ材整列工程の実施後に再びろ過工程を実施し、厚みが均一な浮上ろ材層12を用いて原水をろ過する。その後、任意に、逆洗工程、待機工程、水置換工程、浮上ろ材整列工程、ろ過工程を順次繰り返して行う。
ここで、このろ過システム100では、上述したように、逆洗工程の実施後、ろ過工程を再開する前に、水置換工程および浮上ろ材整列工程を順次実施しているので、例えば待機工程を実施した場合のように、逆洗工程の終了後に第1の縦穴10内の水に含まれる有機物が嫌気性微生物により分解され、硫化水素等が発生している場合でも、硫化水素等を含む水を原水で置換してから浮上ろ材整列工程を実施することができる。従って、浮上ろ材層12の逆洗終了後に浮上ろ材層12に対して空気を噴きつけて浮上ろ材を整列させる場合であっても、硫化水素等が気体状態で第1の縦穴10外へと流出したり、気体状態の硫化水素等により腐食が発生したりするのを抑制することができる。
なお、原水を用いて第1の縦穴10内の水を置換する際の原水の流量は、浮上ろ材整列工程において供給する空気の流量よりも少なく(即ち、線速度が遅く)、水置換工程では、水の押し出し流れにより硫化水素等を含む水が第1の縦穴10外へと排出されるので、水置換工程においては、気体状態の硫化水素等は殆ど発生しない。
また、このろ過システム100では、第1センサ81、第2センサ82および制御装置70を用いて、水置換工程の終了および浮上ろ材整列工程の開始のタイミングを制御しているので、第1の縦穴10内の滞留水を原水で確実に置換することができる。従って、浮上ろ材整列工程において硫化水素等が気体状態で第1の縦穴10外へと流出したり、気体状態の硫化水素等により腐食が発生したりするのを十分に抑制することができる。
更に、このろ過システム100では、逆洗時に、集水配管61を介して第1の縦穴10内の水を第3の縦穴30の下部へと送水し、第1の縦穴10内から第3の縦穴30内へと流入した水を、排水ポンプ31を介して第3の縦穴30内から遮集管113へと送出している。従って、ろ過システム100では、吐出量の大きいポンプを使用して第1の縦穴10内の水を引き抜かなくても、第1の縦穴10内の水位と第3の縦穴30内の水位との差(水頭差)を利用して第1の縦穴10内の水を第3の縦穴30内へと高流速で流入させることができる。よって、ろ過システム100によれば、浮上ろ材層12を高流速で効率的に逆洗することができる。
以上、一例を用いて本発明のろ過システムおよびろ過システムの運転方法について説明したが、本発明のろ過システムおよびろ過システムの運転方法は、上記一例に限定されることはなく、本発明のろ過システムおよびろ過システムの運転方法には、適宜変更を加えることができる。
具体的には、上記一例のろ過システム100では、地面Gを掘削して形成した縦穴を用いたが、本発明のろ過システムは、図4に示すように、地上に設置したろ過槽90等を用いて構成しても良い。なお、ろ過槽90の上部は、僅かな開口部を有するコンクリート壁(図示せず)で塞がれている。
ここで、図4に示すろ過システム200は、第1の縦穴10ではなく、地上に配置した水槽をろ過槽90として用いている点、原水ポンプ21が地上に設置されている点、地上に配置した原水槽(図示せず)から原水が供給される点、逆洗排水が、地上に配置した逆洗排水槽(図示せず)へと水頭差を利用して排出される点、並びに、置換水供給機構として、置換水槽(図示せず)、置換水ポンプ22、置換水配管43および置換水配管弁44を有している点において、先の一例のろ過システム100と構成が異なっている。
なお、置換水としては、硫化水素等を実質的に含まない水(例えば、曝気した際に気体状態の硫化水素等が発生しない水)を使用することができる。具体的には、置換水としては、水道水、中水、工水等を使用することができる。
そして、このろ過システム200では、原水配管弁42を開き、置換水配管弁44、空気供給配管弁53および集水配管弁62を閉じた状態で原水ポンプ21を運転させることにより、原水槽(図示せず)から原水を第1の縦穴10の下部へと送水し、浮上ろ材層12に原水を上向流で通水して、ろ過水を得る。
また、このろ過システム200では、原水配管弁42および置換水配管弁44を閉じ、集水配管弁62を開くことにより、浮上ろ材層12を逆洗する。なお、浮上ろ材層12の逆洗開始時には、空気供給配管弁53を開き、ブロア(図示せず)を運転させることにより、空気噴出部51から空気を噴出させ、塊状の浮上ろ材を分散させてもよい。
更に、このろ過システム200では、浮上ろ材層12の逆洗終了後に、置換水配管弁44を開き、原水配管弁42、空気供給配管弁53および集水配管弁62を閉じた状態で置換水ポンプ22を運転させることにより、ろ過槽90内の水を置換水で置換する。なお、置換水は、ろ過槽90の容量以上の量を供給する。
そして、このろ過システム200では、ろ過槽90内の水の置換終了後に、空気供給配管弁53を開き、原水配管弁42、置換水配管弁44および集水配管弁62を閉じた状態でブロア(図示せず)を運転させることにより、浮上ろ材層12を構成する浮上ろ材を整列させ、浮上ろ材層12の厚みを均一化する。
そして、このろ過システム200によれば、先の一例のろ過システム100と同様に、浮上ろ材層12の逆洗終了後に浮上ろ材層12に対して空気を噴きつけて浮上ろ材を整列させる場合であっても、硫化水素等が気体状態でろ過槽90外へと流出したり、気体状態の硫化水素等により腐食が発生したりするのを抑制することができる。
本発明によれば、浮上ろ材層の逆洗終了後に浮上ろ材層に対して空気を噴きつけて浮上ろ材を整列させる場合であっても、硫化水素等が気体状態でろ過槽外へと流出したり、気体状態の硫化水素等により腐食が発生したりするのを抑制することができる。
1 ろ過槽
2 浮上ろ材層
3 浮上ろ材
4 原水流入口
5 逆洗排水排出口
6 スクリーン
7 ろ過水貯留部
8 空気供給用ノズル
9 弁
10 第1の縦穴
11 スクリーン
12 浮上ろ材層
13 原水流入口
14 逆洗排水排出口
15 ろ過水貯留部
16 ろ過水流出口
20 第2の縦穴
21 原水ポンプ
22 置換水ポンプ
30 第3の縦穴
31 排水ポンプ
41 原水配管
42 原水配管弁
43 置換水配管
44 置換水配管弁
51 空気噴出部
52 空気供給配管
53 空気供給配管弁
54 気泡
61 集水配管
62 集水配管弁
70 制御装置
81 第1センサ(センサ)
82 第2センサ(置換水センサ)
90 ろ過槽
100 ろ過システム
111 合流下水管
112 雨水吐き
113 遮集管
114 河川
115 流量調整弁
200 ろ過システム

Claims (6)

  1. 浮上ろ材からなる浮上ろ材層と、前記浮上ろ材層の上側に配置されて前記浮上ろ材の流出を防止するスクリーンと、前記浮上ろ材層より下側に設置された原水流入口および逆洗排水排出口と、前記スクリーンの上側に設けられたろ過水貯留部とを備えるろ過槽を有するろ過システムの運転方法であって、
    前記原水流入口から原水を流入させ、流入させた原水を前記浮上ろ材層に上向流で通水することにより原水をろ過するろ過工程と、
    前記ろ過工程の後、前記ろ過槽内の水を前記逆洗排水排出口から排出し、前記浮上ろ材層を下向流で逆流洗浄する逆洗工程と、
    前記逆洗工程の後、前記ろ過槽内に置換水を供給して前記ろ過槽内の水の少なくとも一部を置換する水置換工程と、
    前記水置換工程の、前記浮上ろ材層に対して気体を噴きつけて浮上ろ材層を構成する浮上ろ材を整列させる浮上ろ材整列工程と、
    を含むことを特徴とする、ろ過システムの運転方法。
  2. 前記水置換工程において、前記ろ過槽内の水の酸化還元電位が所定値以上になるまで、または、前記ろ過槽内の水の溶存酸素量が所定値以上になるまで、前記置換水を前記ろ過槽内に供給することを特徴とする、請求項1に記載のろ過システムの運転方法。
  3. 前記水置換工程において、前記ろ過槽内の水の酸化還元電位が前記置換水の酸化還元電位と等しくなるまで、または、前記ろ過槽内の水の溶存酸素量が前記置換水の溶存酸素量と等しくなるまで、前記置換水を前記ろ過槽内に供給することを特徴とする、請求項1に記載のろ過システムの運転方法。
  4. 浮上ろ材からなる浮上ろ材層と、前記浮上ろ材層の上側に配置されて前記浮上ろ材の流出を防止するスクリーンと、前記浮上ろ材層より下側に設置された原水流入口および逆洗排水排出口と、前記スクリーンの上側に設けられたろ過水貯留部とを備えるろ過槽と、
    前記ろ過槽内に置換水を供給する置換水供給機構と、
    前記浮上ろ材層に対して気体を噴出し、前記浮上ろ材を整列させる浮上ろ材整列機構と、
    前記ろ過槽内の水を前記逆洗排水排出口から排出して前記浮上ろ材層を逆流洗浄した後、前記置換水供給機構および前記浮上ろ材整列機構を順次起動して、前記ろ過槽内の水の少なくとも一部を前記置換水で置換した後に前記浮上ろ材を整列させる制御装置と、
    を有することを特徴とする、ろ過システム。
  5. 前記ろ過槽内の水の酸化還元電位または溶存酸素量を測定するセンサを更に備え、
    前記制御装置が、前記センサの測定値が所定値以上になるまで前記置換水供給機構を運転させ、前記センサの測定値が所定値以上になった後に前記浮上ろ材整列機構を起動することを特徴とする、請求項4に記載のろ過システム。
  6. 前記ろ過槽内の水の酸化還元電位または溶存酸素量を測定するセンサと、
    前記置換水の酸化還元電位または溶存酸素量を測定する置換水センサと、
    を更に備え、
    前記制御装置が、前記センサの測定値と、前記置換水センサの測定値とが等しくなるまで前記置換水供給機構を運転させ、前記センサの測定値と、前記置換水センサの測定値とが等しくなった後に前記浮上ろ材整列機構を起動することを特徴とする、請求項4に記載のろ過システム。
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